説明

クライオスタット熱負荷を低減するための貫通チューブアセンブリ

【課題】貫通チューブアセンブリが生じさせるクライオスタットに対する熱負荷を有利に低減させる一方で、クライオクーラの寿命を強化している貫通チューブアセンブリのロバストな設計を開発すること。
【解決手段】クライオスタット向けの貫通アセンブリを提示する。本貫通アセンブリは、第1の端部及び第2の端部を有すると共にその熱有効長を変更するように構成された壁部材を含んでおり、該壁部材の第1の端部は高温領域と連絡可能に結合されておりかつ該壁部材の第2の端部はクライオスタットの冷媒容器の内部に配置された冷媒と連絡可能に結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態はクライオスタットに関し、またより詳細にはクライオスタット内で用いるための貫通チューブアセンブリであって、貫通チューブアセンブリが生じさせるクライオスタットに対する熱負荷を低減するように構成された貫通チューブアセンブリの設計に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像(MRI)システムや核磁気共鳴(NMR)撮像システムのための超伝導マグネットを収容するためには、例えば液体冷媒を包含した周知のクライオスタットが使用される。典型的にはクライオスタットは、内側クライオスタット容器と、複数の超伝導コイルを含んだマグネットカートリッジを囲繞するヘリウム容器と、を含む。さらにマグネットカートリッジを囲繞するヘリウム容器は典型的には、マグネットを冷却するための液体ヘリウムで満たされている。さらにこのヘリウム容器を熱放射シールドが囲繞している。さらにこの高温熱放射シールドを外側クライオスタット容器、真空容器が囲繞している。さらに外側クライオスタット容器は一般に排気されている。
【0003】
さらにクライオスタットは一般に、容器壁を通過する少なくとも1つの貫通を含んでおり、該貫通はヘリウム容器に対する様々な接続を容易にするように構成されている。これらの貫通は、真空容器とヘリウム容器の間の真空を維持しながら真空容器とヘリウム容器の間の熱伝導を最小化するように設計されることに留意されたい。さらにこうした貫通は、真空容器とヘリウム容器の熱膨張及び収縮の差を補償することが望ましい。さらにこうした貫通によって、マグネットクエンチの場合にヘリウムガスのフロー経路も提供できる。
【0004】
貫通があると潜在的に、室温から極低温までクライオスタットに対する熱負荷が増加する。熱負荷のメカニズムには典型的には、熱伝導、マクロ及びマイクロの熱対流、熱放射、並びに熱マイクロ対流が含まれる。さらに熱負荷メカニズムにはまた、材料の熱伝導、コールドヘッドへの熱リンク、ヘリウムカラムの熱伝導、クライオスタットのサイドから上部への熱放射、及びクライオクーラへの熱接触リンクが含まれる。大気に対して開かれておりかつヘリウムガスのフローが逃げることにより冷却を受けるクライオスタット貫通と異なり、クライオスタット上の閉鎖式またはハーメチック封止式の貫通はクライオスタットにとって主要な熱入力源となる。さらに貫通には一般に、マグネットの突然のエネルギーダンプやクエンチあるいは真空不良や結氷閉塞(ice blockage)の場合における冷媒気体の迅速かつ安全な放出を保証するための安全手段が装備されている。
【0005】
従来における初期のNMR及びMRIシステムは、クライオスタットのヘリウム浴からのボイルオフを利用すると共に、このボイルオフ気体を貫通の周りまたはその中を通過させて熱交換をしていた。貫通内部に熱交換気体を存在させることは、効率のよい冷却に利用することが可能である。具体的には、設計が適正であれば、熱交換気体が存在することによって冷媒システムに対する熱負荷が実質的に最小化される。しかしNMR及びMRIマグネットシステム並びに別の冷媒用途では、コストの理由から貫通を通じた気体の大気への放出が許容されない。さらにヘリウムコストのかなりの上昇のために、冷媒システムはボイルオフ気体を完全に再凝縮させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7791229号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、気体ストリームの冷却が利用可能でないことにより、貫通は全熱負荷予算をかなり増大させる。さらに、貫通に関する寄生(parasitic)熱負荷は、クライオスタットに対する総熱負荷の20〜40%程度の高さになる可能性がある。この熱負荷は、クライオクーラに対する不都合かつ高価な早期の交換や改装に繋がるので不利である。クライオクーラ交換があると次いで、例えばMRIマグネットの寿命サイクルコストが増大する。
【0008】
さらに、貫通チューブアセンブリにより生じるクライオスタット熱負荷を低減するために目下利用可能な別のある技法では、ヒートシンクの役割をするコールドヘッド冷却段とリンクさせたヒートステーションを用いて貫通チューブアセンブリを冷却することが必要である。しかしながら、これらの技法を用いるとコールドヘッドの冷却力が低下する。さらに別の技法は貫通チューブアセンブリが生じさせるクライオスタット熱負荷の冷却の問題に対して、貫通チューブアセンブリの物理的寸法を最小化することによって対処している。しかし貫通チューブアセンブリの寸法の最小化は、内部圧力が設計圧力よりかなり高くまで増大するに至ることによって高いクエンチレートでクライオスタットにマイナスの影響を及ぼす可能性がある。さらに従来では貫通チューブとしてべローズを用いており、べローズの回旋部によって追加の熱的長さが提供されていた。しかし、追加の熱的長さがある場合であっても、べローズからヘリウム容器までの熱伝導負荷は有意となる可能性がある。
【0009】
したがって貫通チューブアセンブリが生じさせるクライオスタットに対する熱負荷を有利に低減させる一方で、クライオクーラの寿命を強化している貫通チューブアセンブリのロバストな設計を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本技法の態様によるクライオスタット向けの貫通アセンブリを提示する。本貫通アセンブリは、第1の端部及び第2の端部を有すると共にその熱有効長を変更するように構成された壁部材を含んでおり、該壁部材の第1の端部は高温領域と連絡可能に結合されておりかつ該壁部材の第2の端部はクライオスタットの冷媒容器内部に配置された冷媒と連絡可能に結合されている。
【0011】
本技法の態様によるクライオスタット向けの貫通アセンブリの別の実施形態を提示する。本貫通アセンブリは、第1の端部及び第2の端部を有すると共にその熱有効長を変更するように構成された壁部材を含んでおり、該壁部材は互いの内部にネスト構造にした複数のチューブを含んでおり該複数のチューブのうちの各チューブは少なくとも1つの別のチューブと直列に動作可能に結合されており、かつ該複数のチューブは波形付きチューブを用いることなく壁部材の熱有効長を変更するように構成されている。
【0012】
本技法のさらに別の態様では、磁気共鳴撮像のためのシステムを提示する。本システムは画像データ標本を収集するように構成された収集サブシステムを含んでおり、該収集サブシステムはその内部に患者を受け入れるように構成された超伝導マグネット及び該超伝導マグネットをその内部に包含する冷媒容器を含んだクライオスタットを含んでおり、該クライオスタットは、第1の端部及び第2の端部を有すると共にその熱有効長を変更するように構成された壁部材であって該壁部材の第1の端部は高温領域と連絡可能に結合されておりかつ該壁部材の第2の端部はクライオスタットの冷媒容器内部に配置された冷媒と連絡可能に結合されている壁部材を含んでいる熱負荷最適化貫通チューブアセンブリを含む。さらに本システムは、収集サブシステムと動作可能に関連付けされると共に収集画像データを処理するように構成された処理サブシステムを含む。
【0013】
本発明に関するこれらの特徴、態様及び利点、並びにその他の特徴、態様及び利点については、同じ参照符号が図面全体を通じて同じ部分を表している添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことによってより理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】クライオスタット構造の部分断面図である。
【図2】本技法の態様による図1のクライオスタット内で用いるための貫通チューブアセンブリの壁部材の一実施形態の軸方向断面像の一部を表した概要図である。
【図3】本技法の態様による図1のクライオスタット内で用いるための貫通チューブアセンブリの壁部材の別の実施形態の軸方向断面像の一部を表した概要図である。
【図4】本技法の態様による図1のクライオスタット内で用いるための貫通チューブアセンブリの壁部材のさらに別の実施形態の軸方向断面像の一部を表した概要図である。
【図5】本技法の態様による図1のクライオスタット内で用いるための貫通チューブアセンブリの壁部材の別の実施形態の軸方向断面像の一部を表した概要図である。
【図6】本技法の態様による図1のクライオスタット内で用いるための貫通チューブアセンブリの壁部材の別の実施形態の軸方向断面像の一部を表した概要図である。
【図7】本技法の態様による図1のクライオスタット内で用いるための貫通チューブアセンブリの壁部材の別の実施形態の軸方向断面像の一部を表した概要図である。
【図8】本技法の態様による図1のクライオスタット内で用いるための貫通チューブアセンブリの壁部材のさらに別の実施形態の軸方向断面像の一部を表した概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書の以下で詳細に説明することにするが、クライオスタット内で用いるための貫通チューブアセンブリに関して該貫通チューブアセンブリの熱有効長を増強するように構成させた様々な実施形態を提示する。具体的には、貫通チューブアセンブリに関するこの様々な実施形態によれば、貫通チューブアセンブリの熱有効長の増強によって貫通チューブアセンブリが生じさせるクライオスタットに対する熱負荷が低減される。以下に記載する貫通アセンブリの利用によって、貫通によって生じるクライオスタット熱負荷を劇的に低減することができる。
【0016】
図1を参照すると、クライオスタット101を含んだ磁気共鳴撮像(MRI)システムの断面像100を表した概要図を示している。クライオスタット101は超伝導マグネット102を含む。さらにクライオスタット101は、マグネットカートリッジ102を囲繞すると共にマグネットの冷却のための冷媒118で満たされている環状冷媒容器104を含む。冷媒容器104はまた、クライオスタット101の内側壁と呼ぶこともある。クライオスタット101はさらに、冷媒容器104を囲繞している環状熱放射シールド106を含む。さらにクライオスタット101は、熱放射シールド106を囲繞すると共に典型的には排気されている環状真空容器または外側真空チェンバー(OVC)108を含む。OVCはまた、クライオスタット101の外側壁と呼ぶこともある。さらにクライオスタット101は、冷媒容器104と外側真空チェンバー108と熱放射シールド106とを貫通し、これによって電気リード線向けのアクセスを提供している貫通チューブアセンブリ110を含む。図1に示した実施形態では貫通チューブアセンブリ110は、ある種の実施形態においてカバープレート112を有する閉鎖型の貫通アセンブリである。さらに参照番号126は全体として貫通チューブアセンブリ110内の開口部を示している。
【0017】
さらに参照番号114は全体として貫通チューブアセンブリ110の壁部材を示している。壁部材114の第1の端部をOVC108と動作可能に結合させることがある一方、壁部材114の第2の端部を冷媒容器104と動作可能に結合させることがあることに留意されたい。したがって、壁部材114の第1の端部を約300度ケルビン(K)の第1の温度とすることがある一方、壁部材114の第2の端部を約4度Kの温度とすることがある。
【0018】
さらに冷媒容器104内の冷媒118は、ある種の実施形態においてヘリウムを含むことがある。しかしある種の別の実施形態ではその冷媒118は、液体水素、液体ネオン、液体窒素、あるいはこれらの組み合わせを含むことがある。本明細書において様々な実施形態を冷媒118としたヘリウムに関連して記載することに留意されたい。したがって、冷媒容器とヘリウム容器という用語を区別なく用いることがある。
【0019】
さらに図1に示したように、MRIシステム100はスリーブ116を含む。ある種の実施形態では、このスリーブ116内にクライオクーラ120を配置させることがある。クライオクーラ120は、冷媒容器104内の冷媒118を冷却し液化するために利用される。さらに参照番号122は全体として患者ボアを示している。スキャン手技の間に患者ボア124内部に患者124が位置決めされるのが典型的である。
【0020】
上で指摘したように、何らかの貫通があると室温から極低温までのクライオスタットに対する熱負荷の増加に繋がる可能性がある。本技法の態様では、図1のクライオスタット101などのクライオスタット内に用いられる貫通チューブアセンブリに関してクライオスタット101に対する熱負荷を低減するように構成された様々な実施形態を提示する。具体的には、本明細書の以下に提示する貫通チューブアセンブリは、貫通チューブアセンブリの熱有効長を増強することによってクライオスタットに対する熱負荷を低減するように構成されている。
【0021】
図2には、図1のクライオスタット101などのクライオスタット内で用いるための例示的な貫通チューブアセンブリ200の一実施形態を表している。具体的に図2は、クライオスタット101内で用いるための貫通チューブアセンブリの壁部材204(図1の壁部材114など)の一実施形態の軸方向断面像の一部を表した概要図である。より具体的に図2は、貫通チューブアセンブリ200のうち貫通チューブアセンブリの対称軸202の一方の側に配置された部分を表している。一実施形態では、貫通チューブアセンブリは、薄壁の円形断面を有する円筒状のチューブを含むことがある。本技法の態様では例示的な貫通チューブアセンブリ200は、熱有効長を増強するように構成された壁部材204を含んでおり、これにより貫通チューブアセンブリが生じさせるクライオスタットに対する熱負荷の低減が支援される。熱有効長(effective thermal length)という用語は一般に、壁部材204の熱伝導経路の長さを示すために用いている。一実施形態ではその貫通チューブアセンブリ200は、熱伝導経路の長さを約50mmから約300mmの範囲で増強するように構成されることがある。
【0022】
具体的に図2に示した実施形態では、貫通チューブアセンブリ200は第1の端部206及び第2の端部208を有する壁部材204を含む。一実施形態ではその壁部材204の第1の端部206を、第1のフランジ210を用いてOVC108(図1参照)に結合させることがある。さらに、壁部材204の第2の端部208は、クライオスタット101の冷媒容器104(図1参照)に結合させることがある。一実施形態では、壁部材204の第2の端部208は、第2のフランジ212を用いて冷媒容器104に結合させることがある。一実施形態では、第1のフランジ210及び第2のフランジ212はステンレス鋼フランジを含むことがある。しかし、第1及び第2のフランジ210、212の形成のために銅またはアルミニウムを用いることもある。
【0023】
上で指摘したように、壁部材204の第1の端部206はOVC108に結合させている。したがって、壁部材204の第1の端部206は高温領域と連絡可能に結合されている。同様に、壁部材204の第2の端部208はクライオスタット101の冷媒容器104の内部に配置させた冷媒118(図1参照)と連絡可能に結合されているため、壁部材204の第2の端部208は低温領域に連絡可能に結合されている。さらに高温領域は、約80度ケルビン(K)〜約300度Kの範囲の温度を有することがある。したがって、高温領域に連絡可能に結合された壁部材204の第1の端部206は、約80度K〜約300度Kの範囲の温度とすることがある。
【0024】
冷媒は、液体ヘリウム、液体水素、液体ネオン、液体窒素、あるいはこれらの組み合わせを含み得ることに留意されたい。さらに、壁部材204の第2の端部208がクライオスタット101の冷媒容器104の内部に配置させた冷媒と動作可能に関連付けされているため、第2の端部208を低温領域に結合させることができる。この低温領域は、ある種の用途では約4度K〜約77度Kの範囲の温度とすることがある。一例として、その冷媒118が液体水素であれば、低温領域を約4度K〜約20度Kの範囲の温度とすることがある。さらにその冷媒118が液体ネオンであれば、低温領域を約4度K〜約27度Kの範囲の温度とすることがある。さらに別の冷媒では、低温領域を約4度K〜約77度Kの範囲の温度とすることがある。
【0025】
本技法の態様では貫通チューブアセンブリ200の壁部材204は、貫通チューブアセンブリ200の熱有効長を変更またさらに具体的には増強し、これによりクライオスタット101に対して貫通チューブアセンブリが生じさせる熱負荷を低減するように構成されている。具体的には壁部材204は、貫通チューブアセンブリ200の熱有効長を約50mmから約300mmまでの範囲で変更するように構成されている。このために図2の実施形態では壁部材204は、互いの内部にネスト構造にした複数のチューブを含む。目下企図される構成では壁部材204は、第1のチューブ214、第2のチューブ216及び第3のチューブ218を互いの内部にネスト構造を成して含む。具体的には各チューブは、少なくとも1つの別のチューブと直列に動作可能に結合されている。一例として、第1のチューブ214の第2の端部を第1のジョイント220の位置において第2のチューブ216の第1の端部と動作可能に結合させている。同様の方式で第2のチューブ216の第2の端部を、第2のジョイント222の位置において第3のチューブ218の第1の端部と動作可能に結合させている。第1のチューブ214の第2のチューブ216へのこの結合並びに第2のチューブ216の第3のチューブ218へのこの結合によって1つの直列接続が形成されている。したがって3つのチューブ214、216、218は1本の長いチューブではなく直列に互いの内部にネスト構造と成している。
【0026】
引き続き図2を参照するとある種の実施形態では、第1のチューブ214及び第3のチューブ218をステンレス鋼を用いて形成させることがある一方、第2のチューブ216の形成にはガラス繊維強化エポキシを用いることがある。さらにある種の別の実施形態では、チューブ214、216、218を形成するために、TiAl64や同様のTi合金あるいはアルミニウムが利用されることがある。
【0027】
さらに別の実施形態では第1のフランジ210は、第1のジョイント220の熱シールド106への結合を可能にするようにOVC108に結合させることがある。一例として、第1のジョイント220を熱シールド106に結合させるために中間リンク(図2では図示せず)を利用することがある。熱シールド106は約45度Kの温度であることに留意されたい。中間リンクは、銅リングに結合させた柔軟な編み組または銅ワイヤを含み、これをさらに熱シールド106に結合させることがある。中間リンクの使用によって、中間リンクを約45度Kの温度にある熱シールド106に結合させたときに300度Kから4度Kまでの熱負荷の低減が支援される。
【0028】
さらに貫通チューブアセンブリ200は、1つまたは複数のスペーサ素子224を含む。これらのスペーサ素子224は、壁部材204内で3つのチューブ214、216、218の各々の間である決定された間隔が維持されるように構成されている。スペーサ素子224を使用することによってチューブ214、216、218が撓んで熱短絡に繋がり得るように別のチューブとの接触が無いように保証することが支援される。さらにスペーサ素子224は、熱不伝導材料を用いて形成させることがある。一実施形態ではそのスペーサ素子224は、ナイロン製スペーサ素子を含むことがある。ある種の実施形態ではそのスペーサ素子224は、クエンチ中の圧力平衡を可能にするために不連続リングを含むことがあることに留意されたい。さらにある種の実施形態ではそのスペーサ素子224は、チューブ214、216、218を冷媒容器104の圧力にすることを可能にする穴を含むことがある。さらにある種の別の実施形態では、チューブ214、216、218上に多層式絶縁(MLI)(図2では図示せず)を配置させることがある。MLIは、熱ブランケットの役割をして冷媒の対流を減少させ、これが次いでクライオスタット101に対する熱負荷を低減させる。
【0029】
図2を参照して記載したようにして貫通アセンブリを実現すると貫通アセンブリのコンパクト設計を提供できる。具体的には図2の貫通アセンブリでは、300度Kから4度Kにある貫通チューブアセンブリの総経路全長をより短く維持しながら有効熱伝導経路の長さの増強が提供される。このためマグネットのクエンチ時の貫通チューブアセンブリ200の利用可能断面積を追加の熱負荷ペナルティなしに増大させている。貫通チューブアセンブリ200の利用可能断面積のこの増加によって次いで、熱放散の増強が容易となり、これにより貫通チューブアセンブリ200が生じさせるクライオスタット101に対する熱負荷を低減することができる。さらに図2の壁部材204によれば、従来から熱有効長の増強に使用されているべローズ及び/または波形付きチューブを用いることなく貫通チューブアセンブリ200の熱有効長が増強されるので有利である。
【0030】
さらにこれらのネスト構造チューブ214、216、218は、マグネットのクエンチ時の貫通チューブの収縮及び/または膨張に関して最適化することができる。一例として第1のチューブ214が上方向で収縮することがあり、第2のチューブ216が下方向で収縮することがあり、一方第3のチューブ218もまた上方向で収縮することがある。チューブ214、216、218を本明細書の上で記載したようにネスト構造にすることによって、総収縮の約33%の補償が可能となる。さらにネスト構造のチューブ214、216、218はまた、クライオスタット101の運搬に関して最適化することができる。一例として壁部材204の設計またさらに具体的にはチューブ214、216、218の設計を、チューブの収縮を最小化するような適当な材料の組み合わせを用いて最適化することができる。一例として、4度Kまで冷却したときに膨張する「Dyneema」と呼ばれる材料が利用されることがあり、これにより貫通チューブアセンブリ全体の総収縮をさらに最小化することが可能である。
【0031】
さらに一実施形態ではそのチューブ214、216、218は、直径の異なるステンレス鋼チューブを含むことがある。しかしチューブを形成するためには、チタンの合金、インコネル、非金属エポキシ及び炭素ベースのチューブ(ただし、これらに限らない)などの別の材料を用いることもある。ある種の実施形態ではその第1のジョイント220及び第2のジョイント222をリング形状とし得ることに留意されたい。さらに一例として、冷媒容器104がアルミニウム容器であればリング形状の第2のジョイント222をアルミニウムから形成させることがある。さらに第1のジョイント220をステンレス鋼チューブに対して摩擦溶接することがある。さらに第1及び第2のジョイント220、222は、熱シールド106への熱リンク用の箇所として用いる場合に、摩擦溶接した銅から形成させることがある。しかしチューブ214、216、218が非金属チューブを含む場合は、ジョイントリングを金属製リング上に接着させることがある。
【0032】
ここで図3を参照すると、クライオスタット内で用いるように構成した貫通チューブアセンブリの例示的な壁部材302の別の実施形態300を表している。具体的に図3は、クライオスタット101(図1参照)で用いるための貫通チューブアセンブリの壁部材302に関する別の実施形態の軸方向断面像の一部を表した概要図である。さらに参照番号304は全体として貫通チューブの対称軸を示している。壁部材302は第1の固定端部306及び第2の固定端部308を有する。さらに、壁部材302を形成するために不伝導性の複合材料を利用することがある。図3の実施形態では、壁部材302はガラス繊維強化プラスチック(GRP)チューブを含む。別法としてその壁部材302は、ある種の実施形態により炭素繊維複合材(CFC)チューブを含むことがある。
【0033】
さらに、壁部材302を形成するために外側GRPチューブ表面上に薄いステンレス製テープ310を巻き付けている。外側チューブ表面上にステンレス鋼テープ310を巻き付けることによって、GRPまたはCFCタイプの貫通チューブを通るヘリウムガスの透過を最小化することが支援される。ステンレス鋼テープ310はしたがって、効率よい透過バリアの役割をする。さらにステンレス鋼テープ310は、GRPチューブの補強のためにも利用される。さらにステンレス鋼テープ310は、クエンチ中の内部圧力の蓄積に由来するGRPチューブの膨張の防止も支援する。ステンレス鋼テープ310はまた、チューブの周りに編み組み層メッシュを施すことによって薄壁のチューブの圧力支持力も増強する。さらに一実施形態ではそのステンレス鋼テープ310は、約1ミル〜約5ミルの範囲の厚さを有することがある。
【0034】
さらにある種の実施形態ではその壁部材302はまたヒートステーションリング312も含むことがある。ヒートステーションリング312は、一実施形態では銅を用いて形成させることがある。さらにヒートステーションリング312は、図1のクライオクーラ120などのクライオクーラへの熱リンクを提供する。具体的にはヒートステーションリング312は、マグネットのクエンチ中の内部チューブ圧力の蓄積に由来するGRPチューブの座屈(buckling)の防止を支援するように構成及び位置決めされる。ヒートステーションリング312はまた、図1のクライオスタット101の熱シールド106(図1参照)と動作可能に結合されることがある。ヒートステーションリング312を熱シールド106と動作可能に結合させると共に貫通チューブアセンブリから外への熱の伝達を可能にするように1つまたは複数の柔軟な編み組(図3では図示せず)を利用することがある。ある種の実施形態では、その柔軟な編み組は銅編み組を含むことがある。さらに、壁部材302の熱シールド106への結合を容易にするために銅リング(図3では図示せず)を用いることがある。一実施形態ではその銅リングを壁部材302内に埋め込むことがある。さらに、熱シールド106に対して図1のクライオクーラ120などのクライオクーラを結合させ、このクライオクーラを用いて約45度Kの熱シールド温度が維持されることがある。
【0035】
壁部材302の第2の端部308は第1のフランジ314を介して冷媒容器104(図1参照)に結合されている。さらに図3の目下企図される構成では、壁部材302の第1の端部306は波形付きチューブ部材316と動作可能に結合させることがある。次いで波形付きチューブ部材316は、第2のフランジ318を介してクライオスタット101の冷媒容器104に結合させている。ある種の実施形態ではその第1のフランジ314及び第2のフランジ318をステンレス鋼、アルミニウムまたは銅を用いて形成させることがある。
【0036】
クライオスタットの通常動作時では貫通チューブアセンブリの長さ全体にわたって約300度Kから約4度Kまでの温度勾配が存在することが理解されよう。しかしクエンチ中ではこの温度勾配が衰退し、このため貫通チューブアセンブリの長さ全体にわたって実質的に均一の温度が存在することになり、チューブ温度は約5度K〜約10度Kの範囲まで低下する。温度勾配のこの消失は貫通チューブアセンブリの応力及び歪みを増大させるので不利であると共に、マグネットのクエンチ中に壁部材302のGRPチューブの収縮を生じさせことになりかねない。図3の実施形態では、波形付き外側壁部材316は、壁部材302の熱有効長の増強を支援するように構成されている。具体的には波形付きチューブ部材316は、クエンチ時のGRPチューブの収縮を補償し、これにより貫通チューブアセンブリ内部の軸方向応力集中を実質的に最小化するために利用される。波形付きチューブ部材316はまた、運搬時の貫通チューブアセンブリの熱膨張の補償を支援する。図3に示したような貫通チューブアセンブリの実現によって、クライオスタット101に対して貫通チューブアセンブリが生じさせる熱負荷が実質的に最小化される。
【0037】
図4は、図1のクライオスタットなどのクライオスタット内で用いるための貫通チューブアセンブリの壁部材402のさらに別の実施形態400を表している。具体的に図4は、クライオスタット内で用いるための貫通チューブアセンブリの壁部材402の別の実施形態の軸方向断面像の一部を表した概要図である。さらに参照番号408は全体として貫通チューブの対称軸を示している。壁部材402は、第1の端部404及び第2の端部406を有すると共に壁部材402の熱有効長を増強するように構成されている。図4に示した実施形態では、壁部材402は波形付きチューブを含む。この波形付きチューブは、壁部材402の熱有効長の増強を支援する。
【0038】
さらに貫通チューブアセンブリ400は、壁部材402の近傍に配置された薄壁のチューブ410を含む。ある種の実施形態ではその薄壁のチューブ410は、エポキシチューブを含むことがある。別法としてある種の別の実施形態では、薄壁のチューブ410はステンレス鋼チューブを含むことがある。さらに薄壁のチューブ410はある種の実施形態において平滑なチューブとし、これによりクエンチ気体フローの増強を支援することがある。ある種の実施形態では、薄壁のチューブ410も波形付きチューブとすることがある。
【0039】
さらに本技法の態様では、薄壁のエポキシチューブ410と壁部材402の間の環状の空間内にフォイル412を配置させることがある。フォイル412は、マイラー(Mylar)フォイル、ナイロンフォイル、ポリエチレンタイプフォイル、その他を含むことがあることに留意されたい。フォイル412は、チューブ402と410の間の対流及び伝導によって熱交換を最小化するように構成させることがある。一例としてフォイル412は、ベルナール型の気体マイクロ対流によって熱交換を最小化するように構成させることがある。このタイプの対流は典型的には、異なる温度に維持された平行な2つの水平表面間に現れる。波形部内部のマイクロ対流は潜在的に熱経路長を「ショート(short out)」させ、このために熱経路長が実質的に短縮されて熱負荷が室温から約4度Kまで上昇する可能性がある。
【0040】
さらに一実施形態では、波形付きチューブ壁部材402と薄壁のエポキシチューブ410の間に1つまたは複数のスペーサ素子414を配置させることがある。これらのスペーサ素子414は、波形付き壁部材402と薄壁のステンレス鋼またはエポキシチューブ410の間の均一間隔の維持を支援する。スペーサ素子414は、ある種の実施形態において貫通穴を有するナイロンスペーサ素子を含むことがある。さらにスペーサ素子414はまた、フォイル412に対する構造支持体の役割もする。さらにスペーサ素子414の配置によって熱シールド106への熱リンクの形成が可能となる。具体的にはその熱リンクを吸熱用(thermal sinking)ステーションとすることがある。一実施形態ではその熱リンクを、スペーサ素子414を熱シールド106に結合させているリング形状フランジとすることがある。別法としてその熱リンクは、柔軟な銅編み組を含むことがある。参照番号416は全体として波形付きチューブ壁部材402の第1の端部404のOVC108(図1参照)への結合を支援するフランジを示している。
【0041】
さらに波形付き壁部材402の第2の端部406は、丸みのあるエントリ部フランジ418を用いて冷媒容器104(図1参照)と動作可能に結合させている。ある種の実施形態ではその丸みのあるエントリ部フランジ418を、冷媒容器104内の開口部に溶接している。丸みのあるエントリ部フランジ418は、入口フロー抵抗を低下させ、これによりクエンチ気体フローを増強すると共にヘリウム容器内の圧力蓄積を低減するように構成されている。貫通チューブアセンブリを図4に示したようにして実現することによって、波形付きチューブ壁部材402が一実施形態においてスペーサ素子414を介して熱シールド106と動作可能に結合されるため、チューブ402、410が構造的に安定化される。
【0042】
ここで図5を見ると、図1のクライオスタットなどのクライオスタット内で用いるための貫通チューブアセンブリの壁部材502の別の実施形態500を表している。具体的に図5は、クライオスタット内で用いるための貫通チューブアセンブリの壁部材502の別の実施形態の軸方向断面像の一部を表した概要図である。一実施形態ではその壁部材502を図4の薄壁のチューブ410で示すことがある。さらに参照番号516は全体として貫通チューブの対称軸を示している。図5に示した実施形態では、薄壁のエポキシチューブの全体を参照番号502で表すことがある。さらに薄壁のエポキシチューブ502は第1の端部504及び第2の端部506を有する。薄壁のエポキシチューブ502の第1の端部504は第1のフランジ508を介してOVC108(図1参照)に結合される一方、薄壁のエポキシチューブ502の第2の端部506は第2のフランジ510を介してクライオスタット101の冷媒容器104(図1参照)に結合されている。ある種の実施形態ではその第1及び第2のフランジ508、510を、ステンレス鋼、銅またはアルミニウムを用いて形成させることがある。
【0043】
さらに本技法の態様では、薄壁のエポキシチューブ502は波形付きチューブ部材512を含む。波形付きチューブ部材512は、マグネットのクエンチ中における壁部材502の熱有効長の増強を支援する。具体的には波形付きチューブ部材512は、クエンチ中の壁部材502の突然の収縮を補償するように構成されている。さらに一実施形態ではその薄壁のチューブ502は、TiAl64を用いて形成させることがある。薄壁のチューブ502の形成にTiAl64を用いることによって、薄壁のチューブ502の圧力支持力が実質的に増強される。
【0044】
さらに本技法の態様では薄壁のチューブ502は、薄壁のチューブ502と動作可能に結合された1つまたは複数の補強体または補強用素子514を含む。これらの補強用素子514は、ある種の実施形態においてステンレス鋼から形成させることがある。しかしある種の別の実施形態ではその補強用素子514をTiAl64を用いて形成させることがある。さらに補強用素子514は、薄壁のチューブ502の圧力支持力を増強するように構成されている。具体的には補強用素子514は、薄壁のチューブ502に対して内部にある圧力と薄壁のチューブ502に対して外部にある圧力とによって実質的に同様の方式で作用する。さらに補強用素子514を用いることは、クライオスタット101に対する熱負荷に大きな悪影響を及ぼさない。補強用素子514を含むように薄壁のチューブ502を実現することによって、厚さを抑えた薄壁のチューブの利用が可能となる。
【0045】
ここで図6を参照すると、図1のクライオスタット101の貫通チューブアセンブリで用いるように構成された壁部材602の別の実施形態600を表している。具体的には図6は、クライオスタット内で用いるための貫通チューブアセンブリの壁部材602の別の実施形態の軸方向断面像の一部を表した概要図である。さらに参照番号608は全体として貫通チューブの対称軸を示している。図6に示した実施形態では、壁部材602は柔軟なチューブ604を含む。柔軟なチューブ604は、ポリエチレン塩化ビニル(Polyethylenvinylchloride)PVC、ナイロン、ポリアミド、ポリスチロール、ポリエチレン、炭素またはエポキシ複合材構造、あるいはこれらの組み合わせを用いて形成させることがある。さらに壁部材602は、柔軟なチューブ604の上または周りに配置させた柔軟ならせん状チューブ部材606を含む。柔軟ならせん状チューブ部材606は、ある種の実施形態においてステンレス鋼ワイヤを含むことがある。柔軟なチューブ604は、圧力下において膨張するように構成されており、かつ柔軟な複合材チューブ604の周りに巻き付けたらせん状チューブ部材606によって支持されている。図6の実施形態の設計によって、クエンチ中に柔軟なチューブ604の周りに配置させたらせん状チューブ系606により強化を受けた比較的薄壁の柔軟なチューブ604の使用が可能となる。さらに図6の壁部材602によれば壁部材602は、柔軟なチューブ部材604の周りに配置させた柔軟ならせん状チューブ系606のためにクエンチ後の開いた直径を迅速に低減することが可能となる。
【0046】
さらに壁部材602の第1の端部は第1のフランジ612を介してOVC108(図1参照)に結合される一方、壁部材602の第2の端部は第2のフランジ614を介して冷媒容器104(図1参照)に結合されている。第1及び第2のフランジ612、614は、ステンレス鋼、銅またはアルミニウムを用いて形成させることがある。
【0047】
図7は、クライオスタットの貫通チューブアセンブリ内で用いるように構成された壁部材702のさらに別の実施形態700を表している。具体的に図7は、クライオスタット内で用いるための貫通チューブアセンブリの壁部材702の別の実施形態の軸方向断面像の一部を表した概要図である。さらに参照番号716は全体として貫通チューブの対称軸を示している。この実施形態では壁部材702は、第1の端部706及び第2の端部708を有する薄壁のチューブ704を含む。薄壁のチューブ702の第1の端部704は第1のフランジ718を介してOVC108に結合されており、また薄壁のチューブ702の第2の端部706は第2のフランジ720を介してクライオスタット101の冷媒容器104に結合されている。ある種の実施形態では、第1及び第2のフランジ718、720をステンレス鋼を用いて形成させることがある。
【0048】
薄壁のチューブ704は、低熱伝導率を有する材料を用いて形成させることがある。一例としてこの低熱伝導率材料は、インバール、インコネル、チタン合金、またはガラス繊維強化エポキシや炭素繊維複合材構造(ただし、これらに限らない)などの複合材タイプ材料を含むことがある。
【0049】
さらに本技法の態様では壁部材702は、薄壁のチューブ704の外側壁表面上に配置された編み組みスリーブ710を含む。編み組みスリーブ710は、薄壁のチューブ704を強化するように構成されている。さらに編み組みスリーブ710は、低熱伝導率を有する材料を用いて形成させることがある。一例として編み組みスリーブ710を形成するために、ポリエチレン、ナイロン、ポリアミド、GRP、CFC、その他を利用することがある。クエンチ中にクライオスタット101内に圧力が蓄積されると、薄壁のチューブ704は座屈に至る傾向がある。薄壁のチューブ704上に編み組みスリーブ710を用いることによって、クエンチ中の薄壁のチューブ704の内部圧力の低減が支援される。
【0050】
さらに、薄壁のチューブ704の第1の端部706に第1の波形付き部材712を結合させることがあり、一方薄壁のチューブ704の第2の端部708に第2の波形付き部材714を結合させることがある。これらの波形付き部材712、714はまた、クエンチ中における壁部材702の熱有効長の増強、また同時にチューブ内における軸方向応力蓄積の最小化を支援する。さらにクエンチ中において、冷媒118(図1参照)は冷媒容器104から薄壁のチューブ704内の開口部722を通ってOVC108まで流れる。図7に示した実施形態にはヒートステーションリングが無い。しかしある種の実施形態では、ヒートステーションリングの利用も想定される。貫通チューブアセンブリを図7に示したようにして実現することによって壁部材704の熱有効長が増強され、これによりクライオスタット101に対して貫通チューブアセンブリが生じさせる熱負荷が低減される。さらに編み組みスリーブ710を用いることによって、薄壁のチューブ704の圧力支持力が増強される。
【0051】
ここで図8を見ると、図1のクライオスタット101の貫通チューブアセンブリ内で用いるように構成された壁部材802の別の実施形態800を表している。目下企図される構成では壁部材802は一体にコイル状にした1対の柔軟な波形付きチューブ系804を含む。具体的には柔軟な波形付きチューブ系804は、チューブのすべての断面積によってクエンチ気体の放出が可能となるように選択される。さらに柔軟なチューブ系804は、壁部材802の全熱有効長が増強されるようにらせん形態で製作される。さらに柔軟なコイルチューブ系804は、クエンチされた気体の放出を支援するために膨張や収縮するように構成されている。ある種の実施形態ではその壁部材802は非円筒状のチューブを含み得ることに留意されたい。
【0052】
さらに、図1の貫通チューブアセンブリ110の比較的広い開口部は、比較的より小さい1つまたは複数の開口部に区画分けされており、これによりクライオスタット101に対して貫通チューブアセンブリが生じさせる熱負荷が低減される。具体的に図8に示した実施形態では、貫通チューブアセンブリ800は閉じた第1の端部と閉じた第2の端部を有する。さらに壁部材802また具体的には柔軟な波形付きチューブ系804は、第1の端部806及び第2の端部808を有する。壁部材802の第1の端部806は第1のフランジ810を介してOVC108(図1参照)に結合されており、一方壁部材802の第2の端部808は第2のフランジ812を介して冷媒容器104(図1参照)に結合されている。上で指摘したように第1及び第2のフランジ810、812は、ステンレス鋼、銅またはアルミニウムを用いて形成させることがある。
【0053】
本技法の態様では、柔軟な波形付きチューブ系804の第1の端部806は開口部814を介してOVC108に対して開いている一方、柔軟な波形付きチューブ系804の第2の端部808は開口部816を介して冷媒容器104に対して開いている。具体的には貫通チューブアセンブリの閉じた第2の端部808を比較的小さい1つまたは複数の開口部816となるように区画分けしている。より具体的には閉じた第2の端部808は、柔軟な波形付きチューブ系804を通じた冷媒(図1参照)の冷媒容器104(図1参照)からOVC108(図1参照)までの移動を可能とさせる開口部816を有する。一例としてクエンチ中における冷媒容器104からのヘリウムなどの冷媒118は、開口部816を通って柔軟なチューブ804に入ると共に、チューブ804を通過して開口部814を通ってOVC108に向かって流れる。貫通チューブアセンブリを図8に示したようにして実現することによって、壁部材802のコイル状の幾何学形状に由来してクライオスタット101上に現れる熱負荷が極めて低くなる。
【0054】
本明細書の上で記載したクライオスタット内で使用するように構成された貫通チューブアセンブリの例示的な壁部材の様々な実施形態によれば、貫通チューブアセンブリの壁部材の熱有効長が増強されることによって貫通チューブアセンブリが生じさせるクライオスタットに対する熱負荷が劇的に低減される。クライオスタットに対する熱負担のこの低下によって、ライドスルー時間の増大、コールドヘッドサービス時間の延長及びコスト削減が得られるので有利である。一例としてこの貫通チューブアセンブリの簡略設計によればシステム全体のコストが低減される。さらにこの例示的な貫通チューブアセンブリを用いると、ある例ではコールドヘッドへの熱リンクが不要になる。さらに上で指摘したようにこうした貫通は、システムの熱負荷の少なくとも30〜40%を占める。本明細書の上で記載した例示的な貫通チューブアセンブリの利用に由来するクライオスタットに対する低熱負荷のため、クライオスタット内で要求される総ヘリウム在庫の低減の支援も可能となる。したがって本明細書の上で記載した貫通チューブアセンブリの様々な実施形態によって、好結果なクライオスタット設計にとっての主要因の1つである熱負荷を最適化した貫通が提示される。
【0055】
さらにある種の実施形態では、壁部材の熱有効長はべローズを用いることなく増強することができる。さらにこの例示的貫通チューブアセンブリによれば、自由通路を有効にすることによってマグネットのクエンチ時の気体フローの容易さが増強される。
【0056】
本発明のある種の特徴についてのみ本明細書において図示し説明してきたが、当業者によって多くの修正や変更がなされるであろう。したがって添付の特許請求の範囲が、本発明の真の精神の範囲に属するこうした修正や変更のすべてを包含させるように意図したものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0057】
100 MRIシステム
101 クライオスタット
102 超伝導マグネット
104 冷媒容器
106 熱シールド
108 外側真空チェンバー
110 貫通チューブアセンブリ
112 カバープレート
114 壁部材
116 スリーブ
118 冷媒
120 クライオクーラ
122 患者ボア
124 患者
126 貫通チューブアセンブリ内の開口部
200 貫通チューブアセンブリ
202 貫通チューブの対称軸
204 壁部材
206 壁部材の第1の端部
208 壁部材の第2の端部
210 フランジ
212 フランジ
214 第1のチューブ
216 第2のチューブ
218 第3のチューブ
220 第1のジョイント
222 第2のジョイント
224 スペーサ素子
300 貫通チューブアセンブリ
302 壁部材
304 貫通チューブの対称軸
306 壁部材の第1の端部
308 壁部材の第2の端部
310 ステンレス鋼テープ
312 ヒートステーション
314 フランジ
316 波形付きチューブ部材
318 フランジ
400 貫通チューブアセンブリ
402 壁部材
404 壁部材の第1の端部
406 壁部材の第2の端部
408 貫通チューブの対称軸
410 薄壁のエポキシチューブ
412 フォイル
414 スペーサ素子
416 フランジ
418 丸みのあるフランジ
500 貫通チューブアセンブリ
502 壁部材
504 壁部材の第1の端部
506 壁部材の第2の端部
508 フランジ
510 フランジ
512 波形付きチューブ部材
514 補強体素子
516 貫通チューブの対称軸
600 貫通チューブアセンブリ
602 壁部材
604 柔軟なチューブ
606 らせん状チューブ系
608 貫通チューブの対称軸
612 フランジ
614 フランジ
700 貫通チューブアセンブリ
702 壁部材
704 薄壁のチューブ
706 壁部材の第1の端部
708 壁部材の第2の端部
710 編み組みスリーブ
712 波形付き部材
714 波形付き部材
716 貫通チューブの対称軸
718 フランジ
720 フランジ
722 開口部
800 貫通チューブアセンブリ
802 壁部材
804 柔軟ならせん状チューブ系
806 第1の端部
808 第2の端部
810 第1のフランジ
812 第2のフランジ
814 開口部
816 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライオスタット向けの貫通チューブアセンブリであって、
第1の端部及び第2の端部を有すると共にその熱有効長を変更するように構成された壁部材であって、該壁部材の第1の端部は高温領域と連絡可能に結合されておりかつ該壁部材の第2の端部はクライオスタットの冷媒容器内部に配置された冷媒と連絡可能に結合されている壁部材を備える貫通チューブアセンブリ。
【請求項2】
前記高温領域は約80度K〜約300度Kの範囲の温度を有する、請求項1に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項3】
前記冷媒は、液体ヘリウム、液体水素、液体ネオン、液体窒素、あるいはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項4】
前記壁部材は、壁部材の熱有効長を約50mmから約300mmまでの範囲で変更するように構成されている、請求項1に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項5】
前記壁部材は複数のチューブを互いの内部にネスト構造にして備えており、かつ該複数のチューブのうちの各チューブは少なくとも1つの別のチューブと直列に動作可能に結合されている、請求項1に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項6】
前記複数のチューブは、波形付きチューブを用いることなく壁部材の熱有効長を変更するように構成されている、請求項5に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項7】
前記複数のチューブは、ステンレス鋼チューブ、ガラス繊維強化エポキシチューブ、TiAl64チューブ、アルミニウムチューブ、あるいはこれらの組み合わせを含む、請求項5に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項8】
前記複数のチューブの中の各チューブ間の決定された間隔を維持するように構成された1つまたは複数のスペーサ素子をさらに備える請求項5に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項9】
前記壁部材は、
ガラス繊維強化プラスチックチューブと、
前記ガラス繊維強化プラスチックチューブの外側壁表面上に配置されたステンレス鋼テープと、
を備えている、請求項1に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項10】
前記ガラス強化プラスチックチューブに結合されると共にクライオスタットに対する熱負荷を減少させるように構成された熱リンクをさらに備える請求項9に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項11】
前記ガラス強化プラスチックチューブの第1の端部と動作可能に結合されると共に該ガラス強化プラスチックチューブの熱有効長を変更するように構成された波形付き区画をさらに備える請求項9に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項12】
前記壁部材は波形付きチューブを備えている、請求項1に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項13】
前記壁部材の近傍に配置された薄壁のチューブと、
前記薄壁のチューブと壁部材の間の環状の空間内に配置されると共に、冷媒と壁部材の間の熱交換を最小化するように構成されたフォイルと、
をさらに備える請求項12に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項14】
前記壁部材と薄壁のチューブの間に配置されると共に、該壁部材と薄壁のチューブの間の決定された間隔を維持するように構成された1つまたは複数のスペーサ素子をさらに備える請求項13に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項15】
前記壁部材に沿って配置されると共に、該壁部材の座屈を最小化するように壁部材の圧力支持力を上昇させかつ壁部材を強化するように構成された1つまたは複数の補強用素子をさらに備える請求項1に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項16】
前記1つまたは複数の補強用素子は、ステンレス鋼補強用素子、TiAl64補強用素子、あるいはこれらの組み合わせを含む、請求項15に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項17】
前記壁部材は、
薄壁のチューブと、
その上に配置された柔軟ならせん状チューブ系と、
を備えている、請求項1に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項18】
前記壁部材は、
薄壁のチューブと、
前記薄壁のチューブの外側表面上に配置された編み組みホースと、
を備えた複合材チューブを備えている、請求項1に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項19】
前記壁部材の第1の端部、第2の端部あるいは該第1の端部と第2の端部の両者と動作可能に結合された波形付き区画をさらに備える請求項18に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項20】
前記壁部材はらせんの形態でパターン形成された複数の柔軟なチューブを備えている、請求項1に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項21】
前記複数の柔軟なチューブの各々はクライオスタットの外側真空チェンバーの内部に開いた第1の端部と、クライオスタットの冷媒容器の内部に開いた第2の端部と、を備えると共に、該第2の端部によって柔軟なチューブを通り冷媒容器から該第1の端部を通り外側真空チェンバーまでの冷媒の流れを可能としている、請求項20に記載の貫通チューブアセンブリ。
【請求項22】
クライオスタット向けの貫通チューブアセンブリであって、
第1の端部及び第2の端部を有すると共にその熱有効長を変更するように構成された壁部材であって、該壁部材は複数のチューブを互いの内部にネスト構造にして備えおり、該複数のチューブのうちの各チューブは少なくとも1つの別のチューブと直列に動作可能に結合されており、かつ該複数のチューブは波形付きチューブを用いることなく壁部材の熱有効長を変更するように構成されている壁部材を備える貫通チューブアセンブリ。
【請求項23】
患者を表す画像データを収集するように構成された収集サブシステムであって、該収集サブシステムは、
その内部に患者を受け入れるように構成された超伝導マグネットと、
前記超伝導マグネットをその内部に包含する冷媒容器を備えている、熱負荷最適化貫通チューブアセンブリを備えたクライオスタットであって、第1の端部及び第2の端部を有すると共にその熱有効長を変更するように構成された壁部材であって、該壁部材の第1の端部は高温領域と連絡可能に結合されておりかつ該壁部材の第2の端部はクライオスタットの冷媒容器内部に配置された冷媒と連絡可能に結合されている壁部材を備えているクライオスタットと、
を備えている収集サブシステムと、
前記収集サブシステムと動作可能に関連付けされると共に収集した画像データを処理するように構成された処理サブシステムと、
を備える磁気共鳴撮像向けのシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−250032(P2012−250032A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−119194(P2012−119194)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】