クライオポンプ
プロセスガスを流入させるプロセスチャンバ10内で使用される、1段パネル、熱シールド板24及び2段パネル28を備えたクライオポンプ20において、前記熱シールド板24に、気体分子の流入を可能とするための切り欠きと、常温であるクライオポンプ容器からの輻射による入熱を防止するための追加シールド34を設けて、クライオポンプ容器と熱シールド板との間に入り込むプロセスガスによるクライオポンプの性能低下を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライオポンプに係り、特に、スパッタリング装置や半導体製造装置に用いるのに好適な、プロセスガスを流入させるプロセスチャンバ内で使用される、熱シールド板を備えたクライオポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
真空容器であるプロセスチャンバ内で行なうスパッタリング作業は、まず機械的な回転ポンプで粗く1Paまで真空引きし、次に、特開平5−321832号公報に記載されているようなクライオポンプを運転して、プロセスチャンバ内を10−7Pa程度の高真空にする。その後、スパッタリング作業を行なうため、Ar、N2等のプロセスガスを導入するが、余剰なプロセスガスが運転と共にクライオポンプに凝縮し、クライオポンプの性能が低下する。
【0003】
即ち、従来は、クライオポンプによって余剰のプロセスガスを凝縮していたが、クライオポンプの構造上、ポンプ容器と熱シールド板との間にプロセスガスが入り込む。すると、常温であるクライオポンプ容器と熱シールド板との間のプロセスガスが、気体分子として常温からの熱伝導を起こし、熱シールド板の温度を上昇させ、冷凍能力の低下を引き起こし、凝縮性能を低下させてしまっていた。
【0004】
横型冷凍機を用いた従来技術の一例を、図1を参照して詳細に説明する。
【0005】
プロセスチャンバとなる真空容器10は、機械的な回転ポンプである粗引きポンプ12と、クライオポンプ20と、プロセスガス導入口14を接続して気密に形成され、内部でスパッタリング等のプロセスを行なうため、ターゲット16やウェハ18を設置し、スパッタリング加工を行なう。
【0006】
加工手順は次のとおりである。
【0007】
(1)粗引きポンプ12で粗く1Paまで真空引きを行なう。
【0008】
クライオポンプ20は、ある程度の真空以上でなければ、気体分子の熱伝導により、常温からの入熱量が大きく、冷却ができない。又、気体分子(特にH2O)等が付着し過ぎて上手く作動しないために、必ず機械的なポンプで真空引きをする必要がある。更に、機械的な回転ポンプだけで高真空を実現するには、高速回転をしなければならない等、ポンプに係る負荷が大きく、又、長時間運転の信頼性の点からも、高真空の長時間運転には、クライオポンプ20が欠かせない。
【0009】
(2)次にクライオポンプ20を運転して、プロセスチャンバ10内を10−7Pa程度の高真空にする。
【0010】
クライオポンプ20は、ルーバー26、クライオパネル(2段(冷却)ステージ22に接続されるので2段パネルとも称する)28等を気体分子の固化温度以下に冷却し、そこへ気体分子の凝縮固化、又は、活性炭の冷却による気体分子の吸着により、高真空を実現する。該クライオポンプ20を構成する横型冷凍機30の運転は、機械的なポンプに比べて負荷が低いことから、信頼性の高い高真空の長時間運転に向いている。
【0011】
(3)スパッタリング作業を行なうため、Ar、N2等のプロセスガスをプロセスガス導入口14より導入する。
【0012】
クライオポンプ20には、通常、2段式のGM(ギフォード・マクマホン式)冷凍機30が使用され、温度が高い1段(冷却)ステージ21には熱シールド板24を設け、2段(冷却)ステージ22を被覆している。熱シールド板24は、常温から来る輻射熱を遮断する目的で設けられ、2段ステージ22への入熱を抑え、冷凍能力を向上させている。更に、熱シールド板24の先端にルーバー26等を設置し、気体分子の入口を設けている。又、ルーバー26は、熱シールド板24によって冷却されているので、比較的固化する温度の高い気体分子(特にH2O)等を凝縮する。一方、2段ステージ22は、10K程度まで冷却されるので、水素、酸素、窒素等の凝縮を行なう。又、クライオパネル28に含まれる吸着材としての活性炭を冷却し、該活性炭の微細穴にもガスの吸着を行なう。
【0013】
しかしながら、この際、真空容器10と熱シールド板24の間のシールド容器空間25にAr、N2等のプロセスガスが矢印Aに示す如く入り込み、このプロセスガスの気体分子が常温から熱シールド板24への熱伝導を起こし、熱シールド板24の温度を上昇させ、2段ステージ22の冷凍能力の低下を引き起こし、凝縮性能を低下させてしまっていた。
【0014】
なお、特開昭60−228779号公報には、真空容器と熱シールド板の間へのガス流入を防止するべく、リブやフランジを設けて隙間を狭くしたり、あるいは、断熱パネルで入口を塞いでしまうことが記載されている。
【発明の開示】
【0015】
しかしながら、機構が複雑となったり、あるいはクライオパネルと熱シールド板を接触させてしまった場合には、熱の伝搬を防ぐのが大変であり、コストアップを伴うという問題点を有していた。
【0016】
本発明は、極低温冷凍機と、該極低温冷凍機の1段ステージで冷却される1段パネル及び熱シールド板と、該熱シールド板に内包され、前記極低温冷凍機の2段ステージで冷却される、吸着材を有する2段パネルと、を備えたクライオポンプにおいて、前記熱シールド板に設けられた、気体分子の流入を可能とするための切り欠きと、常温であるクライオポンプ容器から前記2段パネルへの輻射による入熱を防止するための追加シールドと、を更に備えることにより、前記課題を解決したものである。
【0017】
又、前記切り欠き及び追加シールドの位置を、前記2段パネルを包囲した熱シールド板上としたものである。
【0018】
又、前記追加シールドが、追加シールド支持部材を介して前記熱シールド板に支持されるようにしたものである。
【0019】
又、前記冷凍機が横型であり、前記追加シールドを、該冷凍機部分を欠いた断面C字形状としたものである。
【0020】
又、前記追加シールドを、その断面C字形状部分が2段パネルを覆う長さとしたものである。
【0021】
又、前記冷凍機が横型又は縦型であり、前記追加シールドを筒状としたものである。
【0022】
又、前記追加シールドが、前記熱シールド板に設けられた凹部又は凸部であり、その側面に気体分子の流入を可能とするための開口を設けたものである。
【0023】
本発明は、又、前記クライオポンプを備えたことを特徴とするスパッタリング装置や半導体製造装置を提供するものである。
【0024】
本発明によれば、プロセスチャンバと熱シールド板との間に入ったプロセスガスは、熱シールド板の内側に入り込み、2段パネルに凝縮固化され、又は、活性炭等の吸着剤に吸着され、プロセスガスの気体分子が常温から熱シールド板への熱伝導を起さないため、熱シールド板の温度を上昇させることはなく、冷凍機の冷凍能力を低下させず、凝縮性能に影響がない。又、クライオポンプ容器内、特に、2段パネルへの輻射熱の侵入もない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来のプロセスチャンバに配設されたクライオポンプの一例の構成を示す断面図
【図2】本発明に係るクライオポンプの第1実施形態がプロセスチャンバに配設された状態を示す断面図
【図3】第1実施形態で用いられている熱シールド板の形状を示す斜視図
【図4】熱シールド板部分の構成を示す斜視図
【図5】図4のV−V線に沿う横断面図
【図6】本発明に係るクライオポンプの第2実施形態の要部を示す正面図
【図7】同じく斜視図
【図8】本発明に係るクライオポンプの第3実施形態の要部を示す正面図
【図9】本発明に係るクライオポンプの第4実施形態の要部を示す正面図
【図10】同じく斜視図
【図11】同じく追加シールド部分の平面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0027】
本発明の第1実施形態は、図1に示した従来例と同様のクライオポンプにおいて、図2に示す如く、熱シールド板24に、気体分子の流入を可能とするための切り欠きを設けると共に、その内側に、例えばブロック状の追加シールド支持部材32により支持される追加シールド34を設けて、熱シールド板24が、常温であるクライオポンプ容器からの輻射熱を防止し、且つ、該熱シールド板24内部に矢印Bに示す如く気体分子の流入を可能としたものである。
【0028】
前記熱シールド24と追加シールド34と2段パネル28との位置関係は、あたかも2段パネル28への直射光の入射を防止する位置と同一である。
【0029】
即ち、図3に詳細に示すように、熱シールド板24の中央部を、横型冷凍機30の1段ステージ21への接続部分(図の右側)を残してカットする。この際、2段ステージ22に接続してある2段パネル28に対応する高さ(図2の破線C)の直下をカットして、気体分子を引きやすくする。
【0030】
次に、追加シールド34を熱シールド板24よりやや小さい外径で形成し、図4に示す如く、例えば4本の追加シールド支持部材32によって熱シールド板24の内部に設置する。追加シールド34は、図5に示す如く、断面がC字形で、冷凍機30の部分を切り欠いて形成する。前記追加シールド34及び追加シールド支持部材32の材質は銅とし、蝋付け等により、それぞれ良く熱伝導するよう密着して接合する。又、熱シールド板24と追加シールド34とは、やや上下方向に少し重なるようにオーバーラップを持たせ、直射光の入射を防ぐ位置関係として、輻射熱の侵入を防止する。
【0031】
従来のクライオポンプにおいて、プロセスガスが入り込む前は、熱シールド板24は通常80K程度まで冷却できるが、プロセスガスが入り込むと、熱伝導で120K程度まで上昇してしまう。これに対し、本発明の第1実施形態による熱シールド板24と追加シールド34を設けた場合には、プロセスガスの無い状態である80K程度まで冷却できた。
【0032】
本実施形態においては、熱シールド板24の全周に亘って切欠きを設けていたので、大量の気体分子を熱シールド板の内部に導くことができる。
【0033】
なお、熱シールド板の構成はこれに限定されず、図6(全体図)及び図7(蓋部分を示す斜視図)に示す第2実施形態のように、熱シールド板24の周上に1箇所若しくは複数箇所の開口40を設け、該開口40の外側又は内側に、支持部材42により、該開口40を覆う蓋44を設けて、直射光の侵入を防止する位置関係として輻射熱の侵入を防止し、その側面の開口46から矢印Dに示す如く気体分子が流入するようにしてもよい。
【0034】
あるいは、図8に示す第3実施形態のように、断面がU字状の蓋50を用いて、その側面に開口52を設け、該開口52から矢印Eに示す如く気体分子が流入するようにしてもよい。
【0035】
前記実施形態においては、いずれも、本発明が、横型冷凍機を備えたクライオポンプに適用されていたが、図9(クライオポンプ部分の断面図)及び図10(同じく斜視図)に示す第4実施形態のように、縦型冷凍機31を備えたクライオポンプにも適用することができる。この場合、追加シールド34は断面をC字型とする必要はなく、図11に示すような筒状で良い。
【0036】
なお、前記実施形態においては、いずれも開口が熱シールド板24の側面に設けられていたが、開口を設ける位置はこれに限定されず、熱シールド板24の底面に設けてもよい。又、クライオパネル28に備える吸着材も活性炭に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、スパッタリング装置や半導体製造装置だけでなく、ガスプロセスでクライオポンプを作動させる、あらゆる設備に適用可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライオポンプに係り、特に、スパッタリング装置や半導体製造装置に用いるのに好適な、プロセスガスを流入させるプロセスチャンバ内で使用される、熱シールド板を備えたクライオポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
真空容器であるプロセスチャンバ内で行なうスパッタリング作業は、まず機械的な回転ポンプで粗く1Paまで真空引きし、次に、特開平5−321832号公報に記載されているようなクライオポンプを運転して、プロセスチャンバ内を10−7Pa程度の高真空にする。その後、スパッタリング作業を行なうため、Ar、N2等のプロセスガスを導入するが、余剰なプロセスガスが運転と共にクライオポンプに凝縮し、クライオポンプの性能が低下する。
【0003】
即ち、従来は、クライオポンプによって余剰のプロセスガスを凝縮していたが、クライオポンプの構造上、ポンプ容器と熱シールド板との間にプロセスガスが入り込む。すると、常温であるクライオポンプ容器と熱シールド板との間のプロセスガスが、気体分子として常温からの熱伝導を起こし、熱シールド板の温度を上昇させ、冷凍能力の低下を引き起こし、凝縮性能を低下させてしまっていた。
【0004】
横型冷凍機を用いた従来技術の一例を、図1を参照して詳細に説明する。
【0005】
プロセスチャンバとなる真空容器10は、機械的な回転ポンプである粗引きポンプ12と、クライオポンプ20と、プロセスガス導入口14を接続して気密に形成され、内部でスパッタリング等のプロセスを行なうため、ターゲット16やウェハ18を設置し、スパッタリング加工を行なう。
【0006】
加工手順は次のとおりである。
【0007】
(1)粗引きポンプ12で粗く1Paまで真空引きを行なう。
【0008】
クライオポンプ20は、ある程度の真空以上でなければ、気体分子の熱伝導により、常温からの入熱量が大きく、冷却ができない。又、気体分子(特にH2O)等が付着し過ぎて上手く作動しないために、必ず機械的なポンプで真空引きをする必要がある。更に、機械的な回転ポンプだけで高真空を実現するには、高速回転をしなければならない等、ポンプに係る負荷が大きく、又、長時間運転の信頼性の点からも、高真空の長時間運転には、クライオポンプ20が欠かせない。
【0009】
(2)次にクライオポンプ20を運転して、プロセスチャンバ10内を10−7Pa程度の高真空にする。
【0010】
クライオポンプ20は、ルーバー26、クライオパネル(2段(冷却)ステージ22に接続されるので2段パネルとも称する)28等を気体分子の固化温度以下に冷却し、そこへ気体分子の凝縮固化、又は、活性炭の冷却による気体分子の吸着により、高真空を実現する。該クライオポンプ20を構成する横型冷凍機30の運転は、機械的なポンプに比べて負荷が低いことから、信頼性の高い高真空の長時間運転に向いている。
【0011】
(3)スパッタリング作業を行なうため、Ar、N2等のプロセスガスをプロセスガス導入口14より導入する。
【0012】
クライオポンプ20には、通常、2段式のGM(ギフォード・マクマホン式)冷凍機30が使用され、温度が高い1段(冷却)ステージ21には熱シールド板24を設け、2段(冷却)ステージ22を被覆している。熱シールド板24は、常温から来る輻射熱を遮断する目的で設けられ、2段ステージ22への入熱を抑え、冷凍能力を向上させている。更に、熱シールド板24の先端にルーバー26等を設置し、気体分子の入口を設けている。又、ルーバー26は、熱シールド板24によって冷却されているので、比較的固化する温度の高い気体分子(特にH2O)等を凝縮する。一方、2段ステージ22は、10K程度まで冷却されるので、水素、酸素、窒素等の凝縮を行なう。又、クライオパネル28に含まれる吸着材としての活性炭を冷却し、該活性炭の微細穴にもガスの吸着を行なう。
【0013】
しかしながら、この際、真空容器10と熱シールド板24の間のシールド容器空間25にAr、N2等のプロセスガスが矢印Aに示す如く入り込み、このプロセスガスの気体分子が常温から熱シールド板24への熱伝導を起こし、熱シールド板24の温度を上昇させ、2段ステージ22の冷凍能力の低下を引き起こし、凝縮性能を低下させてしまっていた。
【0014】
なお、特開昭60−228779号公報には、真空容器と熱シールド板の間へのガス流入を防止するべく、リブやフランジを設けて隙間を狭くしたり、あるいは、断熱パネルで入口を塞いでしまうことが記載されている。
【発明の開示】
【0015】
しかしながら、機構が複雑となったり、あるいはクライオパネルと熱シールド板を接触させてしまった場合には、熱の伝搬を防ぐのが大変であり、コストアップを伴うという問題点を有していた。
【0016】
本発明は、極低温冷凍機と、該極低温冷凍機の1段ステージで冷却される1段パネル及び熱シールド板と、該熱シールド板に内包され、前記極低温冷凍機の2段ステージで冷却される、吸着材を有する2段パネルと、を備えたクライオポンプにおいて、前記熱シールド板に設けられた、気体分子の流入を可能とするための切り欠きと、常温であるクライオポンプ容器から前記2段パネルへの輻射による入熱を防止するための追加シールドと、を更に備えることにより、前記課題を解決したものである。
【0017】
又、前記切り欠き及び追加シールドの位置を、前記2段パネルを包囲した熱シールド板上としたものである。
【0018】
又、前記追加シールドが、追加シールド支持部材を介して前記熱シールド板に支持されるようにしたものである。
【0019】
又、前記冷凍機が横型であり、前記追加シールドを、該冷凍機部分を欠いた断面C字形状としたものである。
【0020】
又、前記追加シールドを、その断面C字形状部分が2段パネルを覆う長さとしたものである。
【0021】
又、前記冷凍機が横型又は縦型であり、前記追加シールドを筒状としたものである。
【0022】
又、前記追加シールドが、前記熱シールド板に設けられた凹部又は凸部であり、その側面に気体分子の流入を可能とするための開口を設けたものである。
【0023】
本発明は、又、前記クライオポンプを備えたことを特徴とするスパッタリング装置や半導体製造装置を提供するものである。
【0024】
本発明によれば、プロセスチャンバと熱シールド板との間に入ったプロセスガスは、熱シールド板の内側に入り込み、2段パネルに凝縮固化され、又は、活性炭等の吸着剤に吸着され、プロセスガスの気体分子が常温から熱シールド板への熱伝導を起さないため、熱シールド板の温度を上昇させることはなく、冷凍機の冷凍能力を低下させず、凝縮性能に影響がない。又、クライオポンプ容器内、特に、2段パネルへの輻射熱の侵入もない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来のプロセスチャンバに配設されたクライオポンプの一例の構成を示す断面図
【図2】本発明に係るクライオポンプの第1実施形態がプロセスチャンバに配設された状態を示す断面図
【図3】第1実施形態で用いられている熱シールド板の形状を示す斜視図
【図4】熱シールド板部分の構成を示す斜視図
【図5】図4のV−V線に沿う横断面図
【図6】本発明に係るクライオポンプの第2実施形態の要部を示す正面図
【図7】同じく斜視図
【図8】本発明に係るクライオポンプの第3実施形態の要部を示す正面図
【図9】本発明に係るクライオポンプの第4実施形態の要部を示す正面図
【図10】同じく斜視図
【図11】同じく追加シールド部分の平面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0027】
本発明の第1実施形態は、図1に示した従来例と同様のクライオポンプにおいて、図2に示す如く、熱シールド板24に、気体分子の流入を可能とするための切り欠きを設けると共に、その内側に、例えばブロック状の追加シールド支持部材32により支持される追加シールド34を設けて、熱シールド板24が、常温であるクライオポンプ容器からの輻射熱を防止し、且つ、該熱シールド板24内部に矢印Bに示す如く気体分子の流入を可能としたものである。
【0028】
前記熱シールド24と追加シールド34と2段パネル28との位置関係は、あたかも2段パネル28への直射光の入射を防止する位置と同一である。
【0029】
即ち、図3に詳細に示すように、熱シールド板24の中央部を、横型冷凍機30の1段ステージ21への接続部分(図の右側)を残してカットする。この際、2段ステージ22に接続してある2段パネル28に対応する高さ(図2の破線C)の直下をカットして、気体分子を引きやすくする。
【0030】
次に、追加シールド34を熱シールド板24よりやや小さい外径で形成し、図4に示す如く、例えば4本の追加シールド支持部材32によって熱シールド板24の内部に設置する。追加シールド34は、図5に示す如く、断面がC字形で、冷凍機30の部分を切り欠いて形成する。前記追加シールド34及び追加シールド支持部材32の材質は銅とし、蝋付け等により、それぞれ良く熱伝導するよう密着して接合する。又、熱シールド板24と追加シールド34とは、やや上下方向に少し重なるようにオーバーラップを持たせ、直射光の入射を防ぐ位置関係として、輻射熱の侵入を防止する。
【0031】
従来のクライオポンプにおいて、プロセスガスが入り込む前は、熱シールド板24は通常80K程度まで冷却できるが、プロセスガスが入り込むと、熱伝導で120K程度まで上昇してしまう。これに対し、本発明の第1実施形態による熱シールド板24と追加シールド34を設けた場合には、プロセスガスの無い状態である80K程度まで冷却できた。
【0032】
本実施形態においては、熱シールド板24の全周に亘って切欠きを設けていたので、大量の気体分子を熱シールド板の内部に導くことができる。
【0033】
なお、熱シールド板の構成はこれに限定されず、図6(全体図)及び図7(蓋部分を示す斜視図)に示す第2実施形態のように、熱シールド板24の周上に1箇所若しくは複数箇所の開口40を設け、該開口40の外側又は内側に、支持部材42により、該開口40を覆う蓋44を設けて、直射光の侵入を防止する位置関係として輻射熱の侵入を防止し、その側面の開口46から矢印Dに示す如く気体分子が流入するようにしてもよい。
【0034】
あるいは、図8に示す第3実施形態のように、断面がU字状の蓋50を用いて、その側面に開口52を設け、該開口52から矢印Eに示す如く気体分子が流入するようにしてもよい。
【0035】
前記実施形態においては、いずれも、本発明が、横型冷凍機を備えたクライオポンプに適用されていたが、図9(クライオポンプ部分の断面図)及び図10(同じく斜視図)に示す第4実施形態のように、縦型冷凍機31を備えたクライオポンプにも適用することができる。この場合、追加シールド34は断面をC字型とする必要はなく、図11に示すような筒状で良い。
【0036】
なお、前記実施形態においては、いずれも開口が熱シールド板24の側面に設けられていたが、開口を設ける位置はこれに限定されず、熱シールド板24の底面に設けてもよい。又、クライオパネル28に備える吸着材も活性炭に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、スパッタリング装置や半導体製造装置だけでなく、ガスプロセスでクライオポンプを作動させる、あらゆる設備に適用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温冷凍機と、
該極低温冷凍機の1段ステージで冷却される1段パネル及び熱シールド板と、
該熱シールド板に内包され、前記極低温冷凍機の2段ステージで冷却される、吸着材を有する2段パネルと、
を備えたクライオポンプにおいて、
前記熱シールド板に設けられた、気体分子の流入を可能とするための切り欠きと、
常温であるクライオポンプ容器から前記2段パネルへの輻射による入熱を防止するための追加シールドと、
を更に備えたことを特徴とするクライオポンプ。
【請求項2】
前記切り欠き及び追加シールドの位置は、前記2段パネルを包囲した熱シールド板上であることを特徴とする請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項3】
前記追加シールドが、追加シールド支持部材を介して前記熱シールド板に支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクライオポンプ。
【請求項4】
前記冷凍機が横型であり、前記追加シールドが、該冷凍機部分を欠いた断面C字形状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のクライオポンプ。
【請求項5】
前記追加シールドは、その断面C字形状部分が2段パネルを覆う長さであることを特徴とする請求項4に記載のクライオポンプ。
【請求項6】
前記冷凍機が横型又は縦型であり、前記追加シールドが筒状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のクライオポンプ。
【請求項7】
前記追加シールドが、前記熱シールド板に設けられた凹部又は凸部であり、その側面に気体分子の流入を可能とするための開口が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクライオポンプ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のクライオポンプを備えたことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載のクライオポンプを備えたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項1】
極低温冷凍機と、
該極低温冷凍機の1段ステージで冷却される1段パネル及び熱シールド板と、
該熱シールド板に内包され、前記極低温冷凍機の2段ステージで冷却される、吸着材を有する2段パネルと、
を備えたクライオポンプにおいて、
前記熱シールド板に設けられた、気体分子の流入を可能とするための切り欠きと、
常温であるクライオポンプ容器から前記2段パネルへの輻射による入熱を防止するための追加シールドと、
を更に備えたことを特徴とするクライオポンプ。
【請求項2】
前記切り欠き及び追加シールドの位置は、前記2段パネルを包囲した熱シールド板上であることを特徴とする請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項3】
前記追加シールドが、追加シールド支持部材を介して前記熱シールド板に支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクライオポンプ。
【請求項4】
前記冷凍機が横型であり、前記追加シールドが、該冷凍機部分を欠いた断面C字形状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のクライオポンプ。
【請求項5】
前記追加シールドは、その断面C字形状部分が2段パネルを覆う長さであることを特徴とする請求項4に記載のクライオポンプ。
【請求項6】
前記冷凍機が横型又は縦型であり、前記追加シールドが筒状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のクライオポンプ。
【請求項7】
前記追加シールドが、前記熱シールド板に設けられた凹部又は凸部であり、その側面に気体分子の流入を可能とするための開口が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクライオポンプ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のクライオポンプを備えたことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載のクライオポンプを備えたことを特徴とする半導体製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【国際公開番号】WO2005/050018
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515617(P2005−515617)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017052
【国際出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/017052
【国際出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
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