説明

クラッタ分別方法およびクラッタ分別システム

【課題】消去器によって消え残った固定クラッタを抑圧できるクラッタ分別方法およびシステムを提供する。
【解決手段】入力信号から固定クラッタ成分を消去する消去器1から出力される信号を帯域毎に通過させるための通過中心周波数が異なる複数の帯域フィルタ2−0〜2−Nと、複数の帯域フィルタのうちの通過中心周波数がゼロの帯域フィルタ2−0から出力される信号の振幅値と通過中心周波数がゼロの帯域フィルタ以外の帯域フィルタ2−1〜2−Nから出力される信号の振幅値との比率を算出する比率算出器5−1〜5−Nと、通過中心周波数がゼロの帯域フィルタ以外の帯域フィルタから出力される信号のうちの比率算出器で算出された比率が所定のしきい値を越えている信号をクラッタと判断し、入力信号からクラッタによる信号を分別するクラッタ処理手段6−1〜6−N、8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ信号処理の分野において、目標とクラッタとを分別するクラッタ分別方法およびクラッタ分別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目標と目標以外からの不要反射信号であるクラッタを分別するレーダ信号処理装置が知られている(例えば、特許文献1の従来の技術の欄参照)。図9はこの種の従来のレーダ信号処理装置の一例の構成を示すブロック図である。
【0003】
このレーダ信号処理装置は、消去器1、N個(Nは正の整数、以下においても同じ)のフィルタ2−1〜2−N、N個のクラッタ抑圧器3−1〜3−Nおよび最大値選択器4を有して構成されている。
【0004】
消去器1は、入力ビデオ信号からドップラ成分を含まない固定クラッタ成分を消去する。入力ビデオ信号は、I成分およびQ成分から成るディジタルビデオ信号である。消去器1によって固定クラッタ成分が消去されたビデオ信号は、N個のフィルタ2−1〜2−Nに送られる。
【0005】
N個のフィルタ2−1〜2−Nは、通過中心周波数が異なるN個の帯域フィルタから構成されている。N個のフィルタ2−1〜2−Nは、消去器1から送られてくる固定クラッタ成分が消去されたビデオ信号に含まれる目標と例えば雲のようなドップラ変移を有するクラッタとを周波数分離するために使用される。N個のフィルタ2−1〜2−Nの出力は、N個のクラッタ抑圧器3−1〜3−Nにそれぞれ送られる。
【0006】
N個のクラッタ抑圧器3−1〜3−Nは、各周波数帯のドップラ変移を有するクラッタを抑圧する。N個のクラッタ抑圧器3−1〜3−Nの各々では、クラッタを抑圧するための処理として、一般に、誤警報確率を一定かつ低く抑えることのできるCFAR(Constant False Alarm Rate)処理が採用される。N個のクラッタ抑圧器3−1〜3−Nの出力は、最大値選択器4に送られる。
【0007】
最大値選択器4は、N個のクラッタ抑圧器3−1〜3−Nから送られてくる、固定クラッタ成分が消去され且つドップラ変移を有するクラッタが抑圧された信号の振幅値を同一レンジビン毎に比較し、振幅の最大値を選択する。そして、最大値選択器4は、各レンジビンの振幅の最大値を合成し、出力ビデオ信号として出力する。
【0008】
従来のレーダ信号処理装置によれば、ドップラ変移を有しない固定クラッタ成分を消去器1で消去でき、また、ドップラ変移を有するクラッタであっても、レンジ方向にある程度の広がりを有するクラッタであれば、クラッタ抑圧器3−1〜3−Nで抑圧することができる。
【特許文献1】特許第2865084号公報
【非特許文献1】吉田孝監修、「改訂レーダ技術」、電子情報通信学会、1996.
【0009】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1の従来の技術の欄に記載されているレーダ信号処理装置では、クラッタ抑圧器はレンジ方向にある程度の広がりを有するクラッタに対してのみ有効であり、レンジ方向の広がりが小さいクラッタは抑圧されず、出力ビデオ信号に含まれて出力されるという欠点がある。
【0011】
また、特許文献1に開示されているクラッタ分離方法およびこれを用いたクラッタ分離システムでは、レンジ方向の広がりが小さく且つ周波数方向にある程度の広がりを有するクラッタに対して有効であるが、レンジ方向の広がりが小さく且つ周波数方向への広がりの小さなクラッタは抑圧されず、出力ビデオ信号に含まれて出力される。
【0012】
このようなレンジ方向の広がりが小さく且つ周波数方向への広がりも小さなクラッタの具体例としては、消去器から出力される僅かなドップラ変移を有する固定クラッタの消え残りが挙げられる。この消え残った固定クラッタは、レンジ方向の広がりが小さいため、後段のクラッタ抑圧器でも抑圧されない。実際に、固定クラッタといえども、僅かなドップラ変移を有していることが知られており、消去器は、固定クラッタを完全に消去することはできず、消え残った固定クラッタが出力ビデオ信号に含まれて出力される。その結果、目標とクラッタとを分別できないという欠点がある。
【0013】
本発明は、上述した欠点を解消するためになされたものであり、消去器によって消え残った固定クラッタを抑圧できるクラッタ分別方法およびクラッタ分別システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、僅かなドップラ変移を有する固定クラッタは、消去器によっても完全に消去されることなく消去器から出力されるが、そのエネルギーは、中心周波数がゼロの近傍に集中しているため、通過中心周波数がゼロの帯域フィルタの出力により、消え残った固定クラッタの有無を判定することができるという点に着目してなされたものである。
【0015】
即ち、第1の発明に係るクラッタ分別方法は、上記課題を解決するために、入力信号から固定クラッタ成分が消去された信号を、通過中心周波数が異なる複数の帯域毎に通過させるフィルタリングステップと、フィルタリングステップで通過中心周波数がゼロの帯域を通過した信号の振幅値と通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過した信号の振幅値との比率を算出する比率算出ステップと、通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過した信号のうちの比率算出ステップで算出された比率が所定のしきい値を越えている信号をクラッタと判断し、入力信号からクラッタによる信号を分別するクラッタ処理ステップとを備えたことを特徴とする。
【0016】
また、第2の発明に係るクラッタ分別方法は、通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過した信号からドップラ変移を有するクラッタを抑圧するクラッタ抑圧ステップをさらに備え、クラッタ処理ステップは、通過中心周波数がゼロの帯域を通過した信号の振幅値に応じてしきい値を設定するしきい値設定ステップと、比率算出ステップで算出された比率としきい値設定ステップで設定されたしきい値とを比較した結果、比率がしきい値を越えている場合に選択禁止信号を生成する比較ステップと、クラッタ抑圧ステップでクラッタが抑圧された信号のうち比較ステップで生成された選択禁止信号に対応する信号以外の信号の振幅の最大値を合成して出力信号を生成するステップを備えたことを特徴とする。
【0017】
また、第3の発明に係るクラッタ分別方法は、第1の発明に係るクラッタ分別方法において、通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過した信号からドップラ変移を有するクラッタを抑圧するクラッタ抑圧ステップをさらに備え、クラッタ処理ステップは、通過中心周波数がゼロの帯域を通過した信号の振幅値に応じてしきい値を設定するしきい値設定ステップと、比率算出ステップで算出された比率としきい値設定ステップで設定されたしきい値とを比較した結果、比率がしきい値を越えている場合に選択禁止信号を生成する比較ステップと、クラッタ抑圧ステップでクラッタが抑圧された信号のうち比較ステップで生成された選択禁止信号に対応する信号に基づく目標の検出を禁止し、選択禁止信号以外の信号に基づき目標を検出する目標検出ステップとを備えたことを特徴とする。
【0018】
また、第4の発明に係るクラッタ分別方法は、第1の発明に係るクラッタ分別方法において、比率算出ステップは、複数の帯域フィルタのうちの通過中心周波数がゼロの帯域を通過した信号の振幅値と通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域であって、通過中心周波数がゼロの近傍の帯域を通過した信号の振幅値との比率を算出することを特徴とする。
【0019】
また、第5の発明に係るクラッタ分別システムは、入力信号から固定クラッタ成分を消去する消去器と、消去器から出力される信号を帯域毎に通過させるための通過中心周波数が異なる複数の帯域フィルタと、複数の帯域フィルタのうちの通過中心周波数がゼロの帯域フィルタから出力される信号の振幅値と通過中心周波数がゼロの帯域フィルタ以外の帯域フィルタから出力される信号の振幅値との比率を算出する比率算出器と、通過中心周波数がゼロの帯域フィルタ以外の帯域フィルタから出力される信号のうちの比率算出器で算出された比率が所定のしきい値を越えている信号をクラッタと判断し、入力信号からクラッタによる信号を分別するクラッタ処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
また、第6の発明に係るクラッタ分別システムは、第5の発明に係るクラッタ分別システムにおいて、通過中心周波数がゼロの帯域フィルタ以外の帯域フィルタを通過した信号からドップラ変移を有するクラッタを抑圧するクラッタ抑圧器をさらに備え、クラッタ処理手段は、通過中心周波数がゼロの帯域フィルタから出力される信号の振幅値に応じてしきい値を設定するしきい値設定器と、比率算出器で算出された比率としきい値設定器で設定されたしきい値とを比較した結果、比率がしきい値を越えている場合に選択禁止信号を生成する比較器と、クラッタ抑圧器から出力される信号のうち比較器から出力される選択禁止信号に対応する信号以外の信号の振幅の最大値を合成して出力信号を生成する選択禁止機能付最大値選択器とを備えたことを特徴とする。
【0021】
また、第7の発明に係るクラッタ分別システムは、第5の発明に係るクラッタ分別システムにおいて、複数の帯域フィルタのうちの通過中心周波数がゼロの帯域フィルタ以外の帯域フィルタを通過した信号からドップラ変移を有するクラッタを抑圧するクラッタ抑圧器をさらに備え、クラッタ処理手段は、通過中心周波数がゼロの帯域フィルタから出力される信号の振幅値に応じてしきい値を設定するしきい値設定器と、比率算出器で算出された比率としきい値設定器で設定されたしきい値とを比較した結果、比率がしきい値を越えている場合に選択禁止信号を生成する比較器と、クラッタ抑圧器から出力される信号のうち比較器から出力される選択禁止信号に対応する信号に基づく目標の検出を禁止し、選択禁止信号以外の信号に基づき目標を検出する目標検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0022】
また、第8の発明に係るクラッタ分別システムは、第5の発明に係るクラッタ分別システムにおいて、比率算出器は、複数の帯域フィルタのうちの通過中心周波数がゼロの帯域フィルタから出力される信号の振幅値と通過中心周波数がゼロの帯域フィルタ以外の帯域フィルタであって、通過中心周波数がゼロの近傍の帯域フィルタから出力される信号の振幅値との比率を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
第1の発明に係るクラッタ分別方法によれば、入力信号から固定クラッタ成分が消去された信号を、通過中心周波数が異なる複数の帯域毎に通過させ、通過中心周波数がゼロの帯域を通過した信号の振幅値と通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過した信号の振幅値との比率を算出し、通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過した信号のうちの比率が所定のしきい値を越えている信号をクラッタと判断して分別するので、入力信号から固定クラッタ成分を消去する際に消え残って通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過することとなった信号はクラッタと判断されて分別できる。従って、分別されたクラッタを抑圧することにより、入力信号から固定クラッタ成分を消去する際に消え残った固定クラッタを抑圧できる。
【0024】
また、第2の発明に係るクラッタ分別方法によれば、通過中心周波数がゼロの帯域を通過した信号の振幅値に応じたしきい値と比率とを比較した結果、比率がしきい値を越えている場合に選択禁止信号を生成し、通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過した信号からドップラ変移を有するクラッタを抑圧した信号のうち選択禁止信号に対応する信号以外の信号の振幅の最大値を合成して出力信号を生成するので、選択禁止信号に対応する信号、換言すれば、入力信号から固定クラッタ成分を消去する際に消え残った信号は、出力信号の合成から除外される。従って、入力信号から固定クラッタ成分を消去する際に消え残った固定クラッタを抑圧できる。
【0025】
また、第3の発明に係るクラッタ分別方法によれば、通過中心周波数がゼロの帯域を通過した信号の振幅値に応じたしきい値と比率とを比較した結果、比率がしきい値を越えている場合に選択禁止信号を生成し、通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過した信号からドップラ変移を有するクラッタを抑圧した信号のうちの選択禁止信号に対応する信号に基づく目標の検出を禁止し、選択禁止信号以外の信号に基づき目標を検出するので、選択禁止信号に対応する信号、換言すれば、入力信号から固定クラッタ成分を消去する際に消え残った信号は、目標検出の対象から除外される。従って、入力信号から固定クラッタ成分を消去する際に消え残った固定クラッタに起因する目標の誤検出を防止できる。
【0026】
また、第4の発明に係るクラッタ分別方法によれば、複数の帯域フィルタのうちの通過中心周波数がゼロの帯域を通過した信号の振幅値と通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域であって、通過中心周波数がゼロの近傍の帯域を通過した信号の振幅値との比率を算出するので、入力信号から固定クラッタ成分を消去する際に消え残った固定クラッタが存在しない帯域、つまり通過中心周波数がゼロの近傍の帯域以外の帯域については比率の計算をする必要がない。従って、構成が簡単になるとともに、クラッタ分別のための処理を高速で行うことができる。
【0027】
さらに、第5〜第8の発明に係るクラッタ分別システムによれば、それぞれ上述した第1〜第4の発明に係るクラッタ分別方法と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明のクラッタ分別方法及びクラッタ分別システムの実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下においては、従来の技術の欄で説明した構成部分に相当する部分には、従来の技術の欄で使用した符号と同じ符号を用いて説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は本発明の実施例1に係るクラッタ分別システムの構成を示すブロック図である。このクラッタ分別システムは、消去器1、N+1個のフィルタ(F0)2−0〜フィルタ(FN)2−N、N個のクラッタ抑圧器3−1〜3−N、N個の比率算出器5−1〜5−N、N個の比較器6−1〜6−N、しきい値設定器7および選択禁止機能付最大値選択器8を有して構成されている。
【0030】
本発明の実施例1に係るクラッタ分別システムは、図9に示した従来のクラッタ分離システムに、通過中心周波数がゼロの帯域フィルタであるフィルタ(F0)2−0、比率算出器5−1〜5−N、比較器6−1〜6−Nおよびしきい値設定器7が追加されるとともに、最大値選択器4が選択禁止機能付最大値選択器8に置き換えられることにより構成されている。
【0031】
消去器1は、例えば2パルス・キャンセラ処理を実施することにより、入力ビデオ信号からドップラ成分を含まない固定クラッタ成分を消去する。入力ビデオ信号は、I成分およびQ成分から成るディジタルビデオ信号である。この消去器1による固定クラッタ成分の消去にも拘わらず僅かなドップラ変移を有する固定クラッタが消え残ったビデオ信号は、N+1個のフィルタ(F0)2−0〜フィルタ(FN)2−Nに送られる。
【0032】
N個のフィルタ(F1)2−1〜フィルタ(FN)2−Nは、中心周波数が異なるN個の帯域フィルタから構成されている。フィルタ2−1〜2−Nは、消去器1から送られてくる固定クラッタ成分が消去されたビデオ信号に含まれる目標と例えば雲のようなドップラ変移を有するクラッタとを周波数分離するために使用される。フィルタ(F1)2−1〜フィルタ(FN)2−Nの出力は、N個のクラッタ抑圧器3−1〜3−NおよびN個の比率算出器5−1〜5−Nにそれぞれ送られる。また、フィルタ(F0)2−0は、中心周波数がゼロの帯域フィルタから構成されている。このフィルタ(F0)2−0の出力は、N個の比率算出器5−1〜5−Nおよびしきい値設定器7に送られる。
【0033】
クラッタ抑圧器3−1〜3−Nは、各周波数帯のドップラ変移を有するクラッタを抑圧する。N個のクラッタ抑圧器3−1〜3−Nの各々では、クラッタを抑圧するための処理として、誤警報確率を一定かつ低く抑えることのできるCFAR(Constant False Alarm Rate)処理が採用されている。クラッタ抑圧器3−1〜3−Nの出力は、選択禁止機能付最大値選択器8に送られる。
【0034】
比率算出器5−1〜5−Nは、フィルタ(F1)2−1〜フィルタ(FN)2−Nから送られてくる固定クラッタ成分が消去され且つ周波数分離されたビデオ信号の振幅値AF1〜AFNと、フィルタ(F0)2−0から送られてくる固定クラッタ成分が消去され且つ中心周波数がゼロの成分を含むビデオ信号の振幅値AF0との比率AF0/AF1〜AF0/AFNをそれぞれ算出する。ここで、比率AF0/AF1〜AF0/AFNは、ビデオ信号の電力の比率と考えることができる。比率算出器5−1〜5−Nで算出された比率AF0/AF1〜AF0/AFNは、比較器6−1〜6−Nにそれぞれ送られる。
【0035】
しきい値設定器7は、フィルタ(F0)2−0から送られてくるビデオ信号の振幅値AF0に基づきしきい値を算出し、比較器6−1〜6−Nに設定する。この場合、ビデオ信号の振幅値AF0が雑音レベルに相当するくらい小さい場合は、消え残った固定クラッタが少ないと判断して、しきい値の値を低く設定する。また、ビデオ信号の振幅値AF0が大きい場合は、消え残った固定クラッタが抑圧されずに出力されるのを防ぐために、しきい値を高く設定する。なお、しきい値は、各フィルタの消え残った固定クラッタに対する抑圧度の違いを考慮して、フィルタ毎に異なった値TH1〜THNを設定するように構成できる。
【0036】
比較器6−1〜6−Nは、比率算出器5−1〜5−Nから送られてくる比率AF0/AF1〜AF0/AFNと、しきい値設定器7から送られてくるしきい値TH1〜THNとを入力して比較する。例えば、比較器6−1では、比率算出器5−1から送られてくる比率AF0/AF1としきい値設定器7から送られてくるしきい値TH1を比較し、比率AF0/AF1がしきい値TH1より大きい場合は、消え残った固定クラッタであると判断して、選択禁止機能付最大値選択器8に選択禁止信号を送る。
【0037】
選択禁止機能付最大値選択器8では、比較器6−1〜6−Nから出力される選択禁止信号と、クラッタ抑圧器3−1〜3−Nの出力とを入力し、クラッタ抑圧器3−1〜3−Nの出力のうちの選択禁止信号に対応しない信号の振幅値を同一レンジビン毎に比較し、その最大値を選択する。そして、選択禁止機能付最大値選択器8は、各レンジビンの振幅の最大値を合成し、出力ビデオ信号として出力する。
【0038】
次に、上記のように構成される本発明の実施例1に係るクラッタ分別システムの動作を、図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0039】
まず、固定クラッタ成分の消去が行われる(ステップS10)。即ち、消去器1は、入力ビデオ信号から固定クラッタ成分を消去し、フィルタ(F0)2−0〜フィルタ(FN)2−Nに送る。この場合、消去器1では、固定クラッタ成分は完全に除去されず、僅かなドップラ変移を有する固定クラッタが消え残った信号がフィルタ(F0)2−0〜フィルタ(FN)2−Nに送られる。
【0040】
次に、フィルタリングが行われる(ステップS11)。即ち、フィルタ(F0)2−0は中心周波数がゼロの帯域の信号を通過させ、フィルタ(F1)〜フィルタ(FN)2−Nは、それ以外の各周波数帯域の信号を通過させる。
【0041】
次に、フィルタ(F0)を通過した信号であるかどうかが調べられる(ステップS12)。ここで、フィルタ(F0)を通過した信号であることが判断されると、しきい値設定が行われる(ステップS13)。即ち、しきい値設定器7は、フィルタ(F0)2−0から送られてくるビデオ信号の振幅値AF0に基づきしきい値を算出し、比較器6−1〜6−Nに設定する。その後、シーケンスはステップS15に進む。
【0042】
一方、ステップS12で、フィルタ(F0)を通過した信号でない、つまりフィルタ(F1)2−1〜フィルタ(FN)2−Nを通過した信号であることが判断されると、比率算出が行われる(ステップS14)。具体的には、比率算出器5−1〜5−Nは、フィルタ(F1)2−1〜フィルタ(FN)2−Nから送られてきた信号の振幅値AF1〜AFNと、フィルタ(F0)2−0から送られてきた信号の振幅値AF0との比率AF0/AF1〜AF0/AFNをそれぞれ算出する。その後、シーケンスはステップS15に進む。
【0043】
ステップS15では、選択禁止信号の生成が行われる。即ち、比較器6−1〜6−Nは、比率算出器5−1〜5−Nから送られてくる比率AF0/AF1〜AF0/AFNと、しきい値設定器7から送られてくるしきい値TH1〜THNとを入力して個々に比較する。この比較の結果、比率AF0/AF1〜AF0/AFNがしきい値TH1〜THNより大きい信号については、消え残った固定クラッタであると判断して、選択禁止信号を生成する。この選択禁止信号は、選択禁止機能付最大値選択器8に送られる。
【0044】
次に、クラッタ抑圧が行われる(ステップS16)。即ち、クラッタ抑圧器3−1〜3−Nは、フィルタ(F1)2−1〜フィルタ(FN)2−Nから送られてくる信号に含まれる各周波数帯のドップラ変移を有するクラッタをそれぞれ抑圧する。なお、このクラッタ抑圧は、上記フィルタリングが行われた後の任意のステップで行うことができる。
【0045】
次に、出力ビデオ信号が生成される(ステップS17)。即ち、選択禁止機能付最大値選択器8は、ステップS15において比較器6−1〜6−Nから出力される選択禁止信号と、ステップS16においてクラッタ抑圧器3−1〜3−Nから出力される信号とを入力し、クラッタ抑圧器3−1〜3−Nから出力される信号のうちの選択禁止信号に対応しない信号の振幅値を同一レンジビン毎に比較し、その最大値を選択する。そして、選択禁止機能付最大値選択器8は、各レンジビンの振幅の最大値を合成し、出力ビデオ信号として出力する。これにより、消去器1の出力において、僅かなドップラ変移を有する固定クラッタの消え残りが発生しても、それを含まない出力ビデオ信号が出力される。
【0046】
次に、上記のように構成されるクラッタ分別システムでクラッタ分別の動作をシミュレーションしたので、その結果を説明する。
【0047】
今、図3(a)に示すような周波数方向にある程度の広がりを有する固定クラッタを含む入力ビデオ信号が、図3(b)に示すような中心周波数がゼロにおいて利得が最小になるフィルタ特性を有する消去器1に入力された場合を考える。この場合、図3(c)に示すように、通過中心周波数がゼロの部分は消去されるが、その前後に存在する僅かにドップラ変移をもった固定クラッタは消え残る。その結果、フィルタ(F0)の前後のフィルタ(F1)およびフィルタ(FN)から消え残りの固定クラッタ(図3(c)中の斜線部分)が出力される。この固定クラッタは、レンジ方向に広がりを有しないため、クラッタ抑圧器3−1〜3−Nで抑圧されずに、そのまま出力される。
【0048】
従来の技術の欄で説明したクラッタ分離システムでは、クラッタ抑圧器3−1〜3−Nから出力される消え残りの固定クラッタを含む信号の振幅値を同一レンジビン毎に比較し、振幅の最大値を選択し、各レンジビンの振幅の最大値を合成し、出力ビデオ信号として出力する。
【0049】
従って、目標でないクラッタによるエコーが観測されてしまうという問題がある。これに対して、本発明の実施例1に係るクラッタ分別システムでは、クラッタ抑圧器3−1〜3−Nから出力される消え残りの固定クラッタを含む信号を除外した残りの信号の振幅値を同一レンジビン毎に比較し、振幅の最大値を選択し、各レンジビンの振幅の最大値を合成し、出力ビデオ信号として出力する。従って、目標でないクラッタによるエコーは観測されない。
【0050】
図4はフィルタ(F0)2−0〜フィルタ(FN)2−Nの特性を示す。但し、説明を簡単にするために、N=1の場合、即ち、フィルタ(F0)2−0およびフィルタ(F1)2−1のみが存在する場合を示している。フィルタ(F0)2−0は、中心周波数がゼロの時に最大の利得になるように構成されており、フィルタ(F1)2−1は中心周波数が±0.5のときに最大の利得になるように構成されている。
【0051】
従って、フィルタ(F0)2−0は、消え残った固定クラッタが存在する場合は、その固定クラッタをほぼそのまま出力するので、消え残った固定クラッタを取り出すために使用される。一方、フィルタ(F1)2−1は、消え残った固定クラッタが存在しても、その固定クラッタを殆ど出力せず、他の帯域の信号を出力するので、目標を取り出すために使用される。
【0052】
図5は図4に示した特性を有するフィルタ(F0)2−0およびフィルタ(F1)2−1を備えたクラッタ分別システムに、目標とノイズが含まれる信号を入力した場合のシミュレーション結果を示す。
【0053】
図5(a)は目標とノイズを含む入力信号であって、横軸は周波数をスイープした信号を示している。図5(b)は図5(a)に示す入力信号が入力された場合にフィルタ(F0)2−0から出力される信号の振幅値AF0とフィルタ(F1)2−1から出力される信号の振幅値AF1とを示している。
【0054】
図5(b)に示す振幅値AF0の波形は、次のような意味を有する。即ち、フィルタ(F0)2−0の利得は、図4に示すように、周波数が「0」の位置で最大になるが、その位置に出現する信号は、消去器1による消え残った固定クラッタであるので、振幅値AF0は小さくなる。また、フィルタ(F0)2−0の利得は、周波数が「0.5」の位置で最小になるので、その位置で振幅値AF0は小さくなる。一方、図5(b)に示す振幅値AF1の波形は、次のような意味を有する。即ち、フィルタ(F1)2−1の利得は、図4に示すように、周波数が「0.5」の位置で最大になり、周波数が「0」の位置で最小になるので、振幅値AF1は、周波数が「0(1.0も同じ)」の位置で小さくなる。
【0055】
図5(c)は比率算出器5−1から出力される比率AF0/AF1を示す。この比率AF0/AF1がしきい値設定器7からのしきい値TH1より大きい場合に、クラッタと判断される。
【0056】
図6は図4に示した特性を有するフィルタ(F0)2−0およびフィルタ(F1)2−1を備えたクラッタ分別システムに、クラッタとノイズが含まれる信号を入力した場合のシミュレーション結果を示す。
【0057】
図6(a)はクラッタとノイズを含む入力信号であって、横軸はサンプル数(時間)を示している。図6(b)は図6(a)に示す入力信号が入力された場合にフィルタ(F0)2−0から出力される信号の振幅値AF0とフィルタ(F1)2−1から出力される信号の振幅値AF1とを示している。
【0058】
図6(b)に示す振幅値AF0の波形は、次のような意味を有する。即ち、フィルタ(F0)2−0の出力は、フィルタ(F0)2−0が消去器1による消え残った固定クラッタをそのまま通過させるので、高いレベルを示している。一方、フィルタ(F1)2−1の出力は、フィルタ(F1)2−1が消去器1による消え残った固定クラッタの一部しか通過させないので、フィルタ(F0)2−0の出力に比べて低いレベルになる。
【0059】
図6(c)は比率算出器5−1から出力される比率AF0/AF1を示す。この比率AF0/AF1がしきい値設定器からのしきい値TH1より大きい場合に、クラッタと判断される。
【0060】
以上説明したように、本発明の実施例1に係るクラッタ分別システムによれば、入力信号から固定クラッタ成分が消去された信号を、通過中心周波数が異なる複数の帯域毎に通過させ、通過中心周波数がゼロの帯域を通過した信号の振幅値と通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過した信号の振幅値との比率を算出し、この比率と通過中心周波数がゼロの帯域を通過した信号の振幅値に応じたしきい値とを比較し、比率がしきい値を越えている場合に選択禁止信号を生成し、通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過した信号からドップラ変移を有するクラッタを抑圧した信号のうち選択禁止信号に対応する信号以外の信号の振幅の最大値を合成して出力信号を生成する。
【0061】
従って、選択禁止信号に対応する信号、換言すれば、入力信号から固定クラッタ成分を消去する際に消え残った信号は、出力信号の合成から除外される。その結果、入力信号から固定クラッタ成分を消去する際に消え残った固定クラッタを抑圧できる。
【0062】
また、通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過した信号のうちの比率が所定のしきい値を越えている信号をクラッタと判断して分別するので、入力信号から固定クラッタ成分を消去する際に消え残って通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過することとなった信号はクラッタと判断されて分別できる。従って、この分別されたクラッタを抑圧することにより、入力信号から固定クラッタ成分を消去する際に消え残った固定クラッタを抑圧できる。
【実施例2】
【0063】
本発明の実施例2に係るクラッタ分別システムは、実施例1に係るクラッタ分別システムを目標検出装置に適用したものである。
【0064】
図7は本発明の実施例2に係るクラッタ分別システムの構成を示すブロック図である。このクラッタ分別システムは、図1に示した実施例1に係るクラッタ分別システムの選択禁止機能付最大値選択器8が検出禁止機能付目標検出器9−1〜9−Nに置き換えられることにより構成されている。
【0065】
検出禁止機能付目標検出器9−1〜9−Nは、クラッタ抑圧器3−1〜3−Nの出力と、比較器6−1〜6−Nから出力される選択禁止信号とをそれぞれ入力し、選択禁止信号が入力されていない検出禁止機能付目標検出器のみが検出情報を出力する。
【0066】
以上説明したように、本発明の実施例2に係るクラッタ分別システムによれば、比較器6−1〜6−Nから選択禁止信号を受け取った検出禁止機能付目標検出器は検出情報を出力しないので、入力ビデオ信号から固定クラッタ成分を消去する際に消え残った固定クラッタを含む信号は目標検出の対象から除外される。従って、入力信号から固定クラッタ成分を消去する際に消え残った固定クラッタに起因する目標の誤検出を防止できる。
【実施例3】
【0067】
本発明の実施例3に係るクラッタ分別システムにおいては、入力ビデオ信号から固定クラッタ成分を消去する際に消え残った固定クラッタは、通過中心周波数がゼロのフィルタの前後に出現する点に着目し、実施例1に係るクラッタ分別システムにおける選択禁止機能付最大値選択器8の選択禁止処理を、通過中心周波数がゼロのフィルタの前後のフィルタの出力に対してのみ行うようにしたものである。
【0068】
図8は本発明の実施例3に係るクラッタ分別システムの構成を示すブロック図である。このクラッタ分別システムは、図1に示した実施例1に係るクラッタ分別システムから、比率算出器5−2〜5−(N−1)および比較器6−2〜6−(N−1)が除去されて構成されている。
【0069】
実施例3に係るクラッタ分別システムの動作は、クラッタ抑圧器3−1およびクラッタ抑圧器3−Nの出力のみが、選択禁止機能付最大値選択器8における選択可否の対象になる点を除けば、実施例1に係るクラッタ分別システムの動作と同じである。
【0070】
以上説明したように、本発明の実施例3に係るクラッタ分別システムによれば、フィルタ(F0)2−0を通過した信号の振幅値と、フィルタ(F0)2−0の前後のフィルタ(F1)2−1およびフィルタ(FN)2−Nを通過した信号の振幅値との比率を算出し、この比率としきい値とを比較してフィルタ(F1)2−1およびフィルタ(FN)2−Nを通過した信号のみに対する選択禁止信号を生成するようにしたので、比率算出器5−2〜5−(N−1)および比較器6−2〜6−(N−1)が不要になる。
【0071】
その結果、実施例1に係るクラッタ分別システムとほぼ同様の効果を得ることができ、また、クラッタ分別システムの構成が簡単になり、さらには、クラッタ分別のための処理を高速に行える。
【0072】
なお、実施例3に係るクラッタ分別システムでは、フィルタ(F0)2−0の前後の2つのフィルタ(F1)2−1およびフィルタ(FN)2−Nのみを選択禁止信号の生成に使用したが、フィルタ(F0)2−0の近傍の3つ以上のフィルタを選択禁止信号の生成に使用するように構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、固定クラッタを消去するための消去器を備えるレーダ装置やソナー装置などに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施例1に係るクラッタ分別システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係るクラッタ分別システムの動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例1に係るクラッタ分別システムの動作を説明するための図である。
【図4】本発明の実施例1に係るクラッタ分別システムで使用されるフィルタの特性を示す図である。
【図5】本発明の実施例1に係るクラッタ分別システムに目標とノイズを含む信号が入力された場合のシミュレーション結果を示す図である。
【図6】本発明の実施例1に係るクラッタ分別システムにクラッタとノイズを含む信号が入力された場合のシミュレーション結果を示す図である。
【図7】本発明の実施例2に係るクラッタ分別システムの構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施例3に係るクラッタ分別システムの構成を示すブロック図である。
【図9】従来のレーダ信号処理装置の一例の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0075】
1 消去器
2−0〜2−N フィルタ
3−1〜3−N クラッタ抑圧器
4 最大値選択器
5−1〜5−N 比率算出器
6−1〜6−N 比較器
7 しきい値設定器
8 選択禁止機能付最大値選択器
9−1〜9−N 検出禁止機能付目標検出器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号から固定クラッタ成分が消去された信号を、通過中心周波数が異なる複数の帯域毎に通過させるフィルタリングステップと、
前記フィルタリングステップで通過中心周波数がゼロの帯域を通過した信号の振幅値と前記通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過した信号の振幅値との比率を算出する比率算出ステップと、
前記通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過した信号のうちの前記比率算出ステップで算出された比率が所定のしきい値を越えている信号をクラッタと判断し、前記入力信号からクラッタによる信号を分別するクラッタ処理ステップと、
を備えたことを特徴とするクラッタ分別方法。
【請求項2】
前記通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過した信号からドップラ変移を有するクラッタを抑圧するクラッタ抑圧ステップをさらに備え、
前記クラッタ処理ステップは、
前記通過中心周波数がゼロの帯域を通過した信号の振幅値に応じてしきい値を設定するしきい値設定ステップと、
前記比率算出ステップで算出された比率と前記しきい値設定ステップで設定されたしきい値とを比較した結果、前記比率がしきい値を越えている場合に選択禁止信号を生成する比較ステップと、
前記クラッタ抑圧ステップでクラッタが抑圧された信号のうち前記比較ステップで生成された選択禁止信号に対応する信号以外の信号の振幅の最大値を合成して出力信号を生成するステップと、
を備えたことを特徴とする請求項1記載のクラッタ分別方法。
【請求項3】
前記通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域を通過した信号からドップラ変移を有するクラッタを抑圧するクラッタ抑圧ステップをさらに備え、
前記クラッタ処理ステップは、
前記通過中心周波数がゼロの帯域を通過した信号の振幅値に応じてしきい値を設定するしきい値設定ステップと、
前記比率算出ステップで算出された比率と前記しきい値設定ステップで設定されたしきい値とを比較した結果、前記比率がしきい値を越えている場合に選択禁止信号を生成する比較ステップと、
前記クラッタ抑圧ステップでクラッタが抑圧された信号のうち前記比較ステップで生成された選択禁止信号に対応する信号に基づく目標の検出を禁止し、前記選択禁止信号以外の信号に基づき目標を検出する目標検出ステップと、
を備えたことを特徴とする請求項1記載のクラッタ分別方法。
【請求項4】
前記比率算出ステップは、
前記複数の帯域フィルタのうちの通過中心周波数がゼロの帯域を通過した信号の振幅値と前記通過中心周波数がゼロの帯域以外の帯域であって、前記通過中心周波数がゼロの近傍の帯域を通過した信号の振幅値との比率を算出することを特徴とする請求項1記載のクラッタ分別方法。
【請求項5】
入力信号から固定クラッタ成分を消去する消去器と、
前記消去器から出力される信号を帯域毎に通過させるための通過中心周波数が異なる複数の帯域フィルタと、
前記複数の帯域フィルタのうちの通過中心周波数がゼロの帯域フィルタから出力される信号の振幅値と前記通過中心周波数がゼロの帯域フィルタ以外の帯域フィルタから出力される信号の振幅値との比率を算出する比率算出器と、
前記通過中心周波数がゼロの帯域フィルタ以外の帯域フィルタから出力される信号のうちの前記比率算出器で算出された比率が所定のしきい値を越えている信号をクラッタと判断し、前記入力信号からクラッタによる信号を分別するクラッタ処理手段と、
を備えたことを特徴とするクラッタ分別システム。
【請求項6】
前記通過中心周波数がゼロの帯域フィルタ以外の帯域フィルタを通過した信号からドップラ変移を有するクラッタを抑圧するクラッタ抑圧器をさらに備え、
前記クラッタ処理手段は、
前記通過中心周波数がゼロの帯域フィルタから出力される信号の振幅値に応じてしきい値を設定するしきい値設定器と、
前記比率算出器で算出された比率と前記しきい値設定器で設定されたしきい値とを比較した結果、前記比率がしきい値を越えている場合に選択禁止信号を生成する比較器と、
前記クラッタ抑圧器から出力される信号のうち前記比較器から出力される選択禁止信号に対応する信号以外の信号の振幅の最大値を合成して出力信号を生成する選択禁止機能付最大値選択器と、
を備えたことを特徴とする請求項5記載のクラッタ分別システム。
【請求項7】
前記複数の帯域フィルタのうちの通過中心周波数がゼロの帯域フィルタ以外の帯域フィルタを通過した信号からドップラ変移を有するクラッタを抑圧するクラッタ抑圧器をさらに備え、
前記クラッタ処理手段は、
前記通過中心周波数がゼロの帯域フィルタから出力される信号の振幅値に応じてしきい値を設定するしきい値設定器と、
前記比率算出器で算出された比率と前記しきい値設定器で設定されたしきい値とを比較した結果、前記比率がしきい値を越えている場合に選択禁止信号を生成する比較器と、
前記クラッタ抑圧器から出力される信号のうち前記比較器から出力される選択禁止信号に対応する信号に基づく目標の検出を禁止し、前記選択禁止信号以外の信号に基づき目標を検出する目標検出手段と、
を備えたことを特徴とする請求項5記載のクラッタ分別システム。
【請求項8】
前記比率算出器は、
前記複数の帯域フィルタのうちの通過中心周波数がゼロの帯域フィルタから出力される信号の振幅値と前記通過中心周波数がゼロの帯域フィルタ以外の帯域フィルタであって、前記通過中心周波数がゼロの近傍の帯域フィルタから出力される信号の振幅値との比率を算出することを特徴とする請求項5記載のクラッタ分別システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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