説明

クラッチ装置におけるクラッチレリーズ機構

【課題】車両の運転者が変速装置のシフトチェンジに駆動力が急に繋がりまたは切れる感覚を強く受けることを抑えることによって、車両の運転操作を行ない易くすることができるクラッチ装置におけるクラッチレリーズ機構を提供する。
【解決手段】クラッチ装置100は、変速装置に対するシフトチェンジ操作に連動して駆動力の伝達状態を解除するクラッチレリーズ機構200を備えている。クラッチレリーズ機構200は、変速装置に対するシフトアップ操作時にカム用球体226が転動するシフトアップ時傾斜面と、シフトダウン操作時にカム用球体226が転動するシフトダウン時傾斜面とが形成された可動側カムプレート210および固定側カムプレート230を備えている。これらのシフトダウン時傾斜面はシフトアップ時傾斜面を構成する第1傾斜面より小さな傾斜角で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動軸の駆動力を従動軸に任意に断続的に伝えるクラッチ装置において、前記駆動力の伝達状態を解除するクラッチレリーズ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原動機が回転駆動する原動軸と同原動機によって回転駆動される従動軸との間に配置され、原動軸の駆動力を従動軸に任意に断続的に伝えるクラッチ装置がある。このようなクラッチ装置においては、変速装置に対するシフトアップ操作およびシフトダウン操作に連動して前記駆動力の伝達状態を解除するクラッチレリーズ機構を備えているものがある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、自動二輪車両の運転者によるチェンジペダルのシフトアップ操作およびシフトダウン操作に応じた回転方向に回転するとともに円錐状に窪んだ可動側カム凹部を有した可動側カムプレートと、同可動側カムプレートに対してカム用球体を介して配置されるとともに可動側カム凹部と同様の固定側カム凹部を有した固定側カムプレートとを備えたクラッチレリーズ機構が開示されている。そして、このクラッチレリーズ機構は、自動二輪車両の運転者によるチェンジペダルのシフトチェンジ操作によって回転する可動側カムプレートのスラスト方向への変位を利用してクラッチ装置における駆動力の伝達および遮断を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−177873号公報
【0005】
しかしながら、このような変速装置に対するシフトチェンジ操作に連動するクラッチレリーズ機構を備えたクラッチ装置においては、変速装置のシフトアップ時とシフトダウン時とで、全く同様の駆動力の伝達状態の形成および同伝達状態の解除、すなわち、クラッチ装置における駆動摩擦プレートと従動プレートとの接触および離隔の各作動が行われている。このため、本発明者らによる官能試験によれば、自動二輪車両の運転者が変速装置のシフトアップ操作時とシフトダウン操作時とで、駆動力の繋がり具合または切れ具合が異なる、より具体的には、シフトアップ操作時とシフトダウン操作時のどちらか一方で駆動力が急に繋がりまたは切れる感覚を強く受けるため運転操作が行い難いという試験結果を得た。
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、車両の運転者が変速装置のシフトアップ時またはシフトダウン時で駆動力が急に繋がりまたは切れる感覚を強く受けることを抑えることによって、車両の運転操作を行ない易くすることができるクラッチ装置におけるクラッチレリーズ機構を提供することにある。
【発明の概要】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、原動軸から従動軸に駆動力を任意に断続的に伝えるクラッチ装置において駆動力の伝達状態を解除するクラッチレリーズ機構であって、錐状に凹んだ可動側カム凹部を有し、変速装置に対するシフトアップ操作およびシフトダウン操作に連動して同各操作に対応する互いに反対方向にそれぞれ回転する可動側カムプレートと、可動側カムプレートに対向配置され、可動側カム凹部に対応した位置に錐状に凹んだ形状の固定側カム凹部を有した固定側カムプレートと、可動側カム凹部および固定側カム凹部に嵌まり込み、可動側カムプレートと固定側カムプレートとによって保持されるカム用球体とを備え、可動側カム凹部および固定側カム凹部は、変速装置に対するシフトアップ操作およびシフトダウン操作の各操作時にカム用球体がそれぞれ倣って変位するシフトアップ時傾斜面およびシフトダウン時傾斜面を有し、可動側カム凹部および固定側カム凹部のうちの少なくとも一方のシフトアップ時傾斜面およびシフトダウン時傾斜面は、シフトアップ時傾斜面およびシフトダウン時傾斜面における一方の傾斜角が他方の傾斜角より小さい傾斜角で形成されていることにある。
【0008】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、クラッチレリーズ機構を構成する可動側カムプレートおよび固定側カムプレートは、変速装置に対するシフトアップ操作時にカム用球体が倣って変位するシフトアップ時傾斜面と、シフトダウン操作時にカム用球体が倣って変位するシフトダウン時傾斜面とを備えており、これらのシフトアップ時傾斜面およびシフトダウン時傾斜面は一方の傾斜角が他方の傾斜角より小さく形成されている。これにより、前記傾斜角が小さく形成されたシフトアップ時傾斜面またはシフトダウン時傾斜面をカム用球体が倣って変位する際においては、可動側カムプレートにおける周方向への回転変位量当たりのスラスト方向への変位量が少なくなる。このため、クラッチ装置における駆動力の伝達状態の解除および伝達状態の形成が徐々に行なわれるようになる。したがって、変速装置におけるシフトアップ操作時およびシフトダウン操作時で駆動力の繋がりまたは切れが急激に行なわれる側のシフトアップ時傾斜面またはシフトダウン時傾斜面の傾斜角度を他方の傾斜面、すなわち、シフトダウン時傾斜面またはシフアップ時傾斜面の傾斜角度より小さくすることにより、車両の運転者が変速装置のシフトアップ時とシフトダウン時とで駆動力が急に繋がりまたは切れる感覚を強く受けることを抑えることができ、その結果、車両の運転操作を行ない易くすることができる。
【0009】
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記クラッチレリーズ機構において、シフトダウン時傾斜面は、シフトアップ時傾斜面の傾斜角より小さい傾斜角で形成されていることにある。
【0010】
このように構成した請求項2に係る本発明の他の特徴によれば、可動側カム凹部および/または固定側カム凹部の少なくとも一方は、変速装置に対するシフトダウン操作時にカム用球体が倣って変位するシフトダウン時傾斜面がシフトアップ操作時にカム用球体が倣うシフトアップ時傾斜面の角度より小さい傾斜角で形成されている。これにより、クラッチレリーズ機構は、変速機構におけるシフトアップ時に比べて、シフトダウン時に駆動力が急に繋がりまたは切れる感覚を強く受けることを抑えることができる。
【0011】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記クラッチレリーズ機構において、可動側カム凹部および固定側カム凹部における各シフトアップ時傾斜面および各シフトダウン時傾斜面は、各シフトアップ時傾斜面および各シフトダウン時傾斜面における一方の傾斜角が他方の傾斜角より小さい傾斜角でそれぞれ形成されていることにある。
【0012】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、可動側カム凹部および固定側カム凹部は、共に、シフトアップ時傾斜面およびシフトダウン時傾斜面における一方の傾斜角が他方の傾斜角より小さい傾斜角でそれぞれ形成されている。これにより、可動側カム凹部および固定側カム凹部の一方に対して、シフトアップ時傾斜面およびシフトダウン時傾斜面の一方の傾斜角を他方の傾斜角に対して小さく形成する場合に比べて、クラッチ装置における駆動力の伝達状態の解除および伝達状態の形成がより穏やかに行なわれるようになる。
【0013】
また、請求項4に係る本発明の他の特徴は、前記クラッチレリーズ機構において、前記小さい傾斜角が形成されたシフトアップ時傾斜面またはシフトダウン時傾斜面は、前記小さい傾斜角で形成された小角傾斜面の外側に、同小さい傾斜角より大きい傾斜角で形成された大角傾斜面を備えていることにある。
【0014】
このように構成した請求項4に係る本発明の他の特徴によれば、前記小さい傾斜角が形成されたシフトアップ時傾斜面またはシフトダウン時傾斜面には、前記小さい傾斜角で形成された小角傾斜面の外側に、同小さい傾斜角より大きい傾斜角の大角傾斜面が形成されている。このため、小角傾斜面および大角傾斜面がそれぞれ形成されたシフトアップ時傾斜面またはシフトダウン時傾斜面をカム用球体が倣って変位する際においては、可動側カムプレートにおける周方向への回転変位量当たりのスラスト方向への変位量が途中で変化する。具体的には、カム用球体が小角傾斜面上を倣って変位する場合に比べて大角傾斜面上を倣って変位する場合の方が可動側カムプレートの周方向への回転変位量当たりのスラスト方向への変位量が増加する。これにより、クラッチ装置における駆動摩擦プレートと従動プレートとの間隔が所定以上に離隔した場合において、駆動摩擦プレートと従動プレートとの離隔作動および近接作動を素早くすることができる。また、駆動摩擦プレートと従動プレートとの離隔間隔を所定間隔以上に確保しつつ駆動摩擦プレートと従動プレートとを徐々に接触および離隔することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るクラッチレリーズ機構を備えるクラッチ装置の全体構成の概略を示す断面図である。
【図2】(A)は図1に示すクラッチ装置におけるクラッチレリーズ機構を構成する可動側カムプレートの可動側カム凹部を拡大して示す要部拡大断面図であり、(B)は、同クラッチレリーズ機構を構成する固定側カムプレートの固定側カム凹部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図3】図1に示すクラッチ装置におけるクラッチレリーズ機構に対するシフトアップ操作時の作動状態を示す断面図である。
【図4】図1に示すクラッチ装置におけるクラッチレリーズ機構のシフトチェンジ操作時の可動側カムプレートの回転量とプレッシャ体のスラスト方向へのスライド変位量との関係を説明するための説明図である。
【図5】図1に示すクラッチ装置におけるクラッチレリーズ機構に対するシフトダウン操作時の一つの作動状態を示す断面図である。
【図6】図1に示すクラッチ装置におけるクラッチレリーズ機構に対するシフトダウン操作時の他の一つの作動状態を示す断面図である。
【図7】(A),(B)は本発明の変形例に係るクラッチレリーズ機構の一部を示しており、(A)はクラッチレリーズ機構を構成する可動側カムプレートの可動側カム凹部を拡大して示す要部拡大断面図であり、(B)は、同クラッチレリーズ機構を構成する固定側カムプレートの固定側カム凹部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図8】図7に示す本発明の変形例に係るクラッチレリーズ機構のシフトチェンジ操作時の可動側カムプレートの回転量とプレッシャ体のスラスト方向へのスライド変位量との関係を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るクラッチ装置におけるクラッチレリーズ機構の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るクラッチレリーズ機構200を備えたクラッチ装置100の全体構成を示す断面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。このクラッチ装置100は、自動二輪車両(オートバイ)における原動機であるエンジン(図示せず)の駆動力を従動体である車輪(図示せず)に任意に断続的に伝えるための機械装置であり、同エンジンと変速装置(トランスミッション)(図示せず)との間に配置されるものである。また、本発明に係るクラッチレリーズ機構200を備えたクラッチ装置100は、所謂バギー車などの自動四輪車両や自動三輪車両にも適用できることは言うまでもない。
【0017】
(クラッチレリーズ機構200の構成)
クラッチ装置100は、アルミニウム合金製のアウターケース101を備えている。アウターケース101は、有底円筒状に形成されており、クラッチ装置100の筐体の一部を構成する部品である。このアウターケース101における図示左側側面には、入力ギア102がリベット102aによって一体的に固定されている。入力ギア102は、エンジンの駆動により回転駆動する図示しないクランク軸に設けられた駆動ギアと噛合って回転駆動する。
【0018】
アウターケース101における内周面には、嵌合溝101aが形成されているとともに同嵌合溝101aに噛合った状態で複数枚(本実施形態においては3枚)の駆動摩擦プレート103が設けられている。嵌合溝101aは、アウターケース101の軸線方向に沿って切欠かれた溝であり、アウターケース101の内周面の周方向に沿って複数形成されている。
【0019】
駆動摩擦プレート103は、後述する従動プレート106に押し付けられて摩擦接触するための摩擦材を備えた鋼板製の平板環状部材である。本実施形態においては、駆動摩擦プレート103は、冷間圧延鋼板材からなる薄板材を略環状に打ち抜いて成形された芯金上に摩擦材および油溝が形成されて構成される。この駆動摩擦プレート103は、台形歯状に形成された外周部がアウターケース101の嵌合溝101aに嵌まり込んで互いに噛合うことにより、アウターケース101に対して軸線方向に沿って変位可能、かつ同アウターケース101と一体回転可能な状態で保持される。
【0020】
アウターケース101の内部には、略円盤リング状に形成されたプレートホルダ104がアウターケース101と同心で配置されている。このプレートホルダ104の内周面には、プレートホルダ104の軸線方向に沿って多数のスプライン溝が形成されており、同スプライン溝に従動シャフト105がスプライン勘合している。従動シャフト105は、中実状の丸軸体であり、一方(図示右側)の端部側がブッシュ105aを介して入力ギア102およびアウターケース101を回転自在に支持するとともに、前記スプライン勘合するプレートホルダ104をナット105bを介して固定的に支持する。すなわち、プレートホルダ104は、従動シャフト105とともに一体的に回転する。一方、従動シャフト105における他方(図示左側)の端部は、二輪自動車における図示しない変速装置に連結されている。
【0021】
プレートホルダ104の外周面には、複数枚(本実施形態においては2枚)の従動プレート106が前記駆動摩擦プレート103の間に配置されて、プレートホルダ104の軸線方向に沿って変位可能、かつ同プレートホルダ104と一体回転可能な状態でスプライン嵌合によってそれぞれ保持されている。従動プレート106は、前記駆動摩擦プレート103が押し付けられる鋼板製の平板環状部材である。本実施形態においては、従動プレート106は、冷間圧延鋼板材からなる薄板材を環状に打ち抜いて成形される。
【0022】
また、アウターケース101の内部には、プレートホルダ104と対向した状態で略円盤リング状に形成されたプレッシャ体107がアウターケース101と同心で配置されている。プレッシャ体107は、駆動摩擦プレート103および従動プレート106を押圧するための部材であり、従動プレート106の外径と略同じ大きさの外径に形成されているとともに、駆動摩擦プレート103に対して接触および離隔する方向(従動シャフト105の軸線方向)に沿って摺動可能に組み付けられている。このプレッシャ体107は、押圧プレート108を介してリングスプリング110によって駆動摩擦プレート103を押圧する方向(図示右側)に押圧されている。
【0023】
押圧プレート108は、プレッシャ体107にボルト109によって一体的に組み付けられた平板リング状のアルミニウム合金製の部材である。この押圧プレート108は、その外周端部がプレートホルダ104の外側側面に配置されたリングスプリング110の内側端部によって図示右側に押圧されている。また、押圧プレート108の内周面には、レリーズベアリング111が嵌め込まれている。リングスプリング110は、プレッシャ体107を駆動摩擦プレート103に押圧させるためのリング状のバネ部材であり、押圧プレート108を介してプレッシャ体107を常時押圧するとともに、後述するクラッチレリーズ機構200を構成する可動側カムプレート210を位置に応じて一時的に押圧する。また、レリーズベアリング111は、クラッチレリーズ機構200を構成する可動側カムプレート210のプッシュ部211を押圧プレート108に対して回転自在に保持する軸受け部材である。
【0024】
押圧プレート108の図示右側には、クラッチレリーズ機構200が設けられている。クラッチレリーズ機構200は、クラッチ装置100を駆動力の伝達状態と同伝達の遮断状態とを互いに切り替えるための機構であり、主として、可動側カムプレート210、クラッチアーム221、保持スリーブ223、調節シャフト224、カム用球体226および固定側カムプレート230によって構成されている。
【0025】
これらのうち、可動側カムプレート210は、有底円筒状に形成されたプッシュ部211の周囲に板状のカム部212が鍔状に張り出して形成された略フランジ形状の部材である。この可動側カムプレート210のプッシュ部211は、外径の異なる2つの円筒部で構成されており、先端部を構成する小径の円筒部が前記レリーズベアリング111に嵌合している。一方、前記小径の円筒部より大きな外径の円筒部は、円筒状の保持スリーブ223の外側に同保持スリーブ220の軸線方向に沿って摺動自在かつ同保持スリーブ223の周方向に回転摺動自在な状態で嵌合している。
【0026】
カム部212は、固定側カムプレート230とともにカム用球体226を保持する部分であり、同固定側カムプレート230に対向する平面上に3つの可動側カム凹部213(1つのみ図示)がそれぞれ均等配置された状態で形成されている。3つの可動側カム凹部213は、それぞれカム用球体226が嵌まり込む略円錐状の窪みである。これらの可動側カム凹部213は、深部214、シフトアップ時傾斜面215およびシフトダウン時傾斜面216によって構成され、それぞれ同じ形状に形成されている。
【0027】
これらのうち、深部214は、可動側カム凹部213における最も深い位置を形成する球面部であり、カム用球体226の表面の曲率と略同等以下の曲率で形成されている。シフトアップ時傾斜面215は、変速装置(図示せず)に対するシフトアップ操作によってカム用球体226が転がりながら変位(以下、「転動」ということがある)する傾斜面であり、深部214に対してシフトアップ操作時の可動側カムプレート210の回転方向下流側(図示右側)に形成されている。このシフトアップ時傾斜面215は、傾斜角θ1で形成された環状の第1傾斜面215aと、同第1傾斜面215aの外側にて傾斜角θ1より小さい傾斜角θ2で形成された環状の第2傾斜面215bとによって構成されている。なお、傾斜角θ1,θ2および後述する傾斜角θ3,θ4は、可動側カムプレート210と固定側カムプレート230とが互いに対抗する平面に平行な軸線に対しての角度である。
【0028】
一方、シフトダウン時傾斜面216は、変速装置に対するシフトダウン操作によってカム用球体226が転動する傾斜面であり、深部214に対してシフトダウン操作時の可動側カムプレート210の回転方向下流側(図示左側)に形成されている。このシフトダウン時傾斜面216は、前記傾斜角θ1より小さい傾斜角θ3で形成されている。なお、本実施形態においては、傾斜角θ1は20°であり、傾斜角θ2は10°であり、傾斜角θ3は17°である。また、本実施形態においては、傾斜角θ3は、前記傾斜角θ2よりも大きな傾斜角に形成されているが、傾斜角θ3は傾斜角θ1より小さい傾斜角であれば傾斜角θ2より小さい傾斜角であってもよい。なお、これらの傾斜角θ1〜θ3および後述する傾斜角θ4の各角度は、クラッチ装置100の仕様に応じて前記条件内で適宜決定されるものであり、本実施形態に限定されるものではない。
【0029】
このカム部212の外周部の一部は、図示下方に延びて形成されており、連結ピン220を介してクラッチアーム221に回動自在な状態で連結されている。クラッチアーム221は、可動側カムプレート210と、このクラッチ装置100が搭載される自動二輪車両(図示せず)のシフトチェンジペダル(図示せず)から延びるチェンジシャフト222とを連結する部材である。チェンジシャフト222は、運転者による自動二輪車両への運転操作に起因する直接的(例えば、チェンジペダルの操作)または間接的(例えば、アクセル操作などの他の操作に連動した自動的な操作)なシフトアップ操作およびシフトダウン操作によって各操作に対応する2つの回転方向(図示矢印U,D方向)にそれぞれ回転する軸体である。なお、図1、図3、図5および図6においては、可動側カム凹部213および固定側カム凹部231の理解を容易にするため、可動側カム凹部213および固定側カム凹部231をクラッチ装置100の本体部とは異なる断面位置で示している。
【0030】
保持スリーブ223は、円筒状に形成されており、その外周面にて前記可動側カムプレート210を摺動自在な状態で支持するとともに固定側カムプレート230を固定的に支持する。この保持スリーブ223の内周面には、図示しない雌ネジが形成されており、調節シャフト224の外周面に形成された雄ネジに噛合った状態で同調節シャフト224に組み付けられている。調節シャフト224は、クラッチ装置100や変速装置(図示せず)を覆うサイドカバー225に組み付けられて可動側カムプレート210および固定側カムプレート230を支持する棒状部材である。また、カム用球体226は、可動側カムプレート210と固定側カムプレート230とによって保持された状態でその表面(可動側カム凹部213および固定側カム凹部231)上に倣って変位する鋼球である。このカム用球体226は、可動側カムプレート210および固定側カムプレート230にそれぞれ形成される可動側カム凹部213および固定側カム凹部231に嵌まり込んだ状態でそれぞれ配置される。
【0031】
固定側カムプレート230は、可動側カムプレート210とともにカム用球体226を保持する平板リング状に形成された部材であり、同可動側カムプレート210に対向する平面上に3つの固定側カム凹部231(1つのみ図示)それぞれ均等配置された状態で形成されている。3つの固定側カム凹部231は、可動側カム凹部213と同様に、それぞれカム用球体226が嵌まり込む略円錐状の窪みである。これらの固定側カム凹部231は、前記可動側カム凹部213における深部214、シフトアップ時傾斜面215およびシフトダウン時傾斜面215にそれぞれ対応する深部232、シフトアップ時傾斜面233およびシフトダウン時傾斜面234によって構成され、それぞれ同じ形状に形成されている。
【0032】
すなわち、深部232は、固定側カム凹部231における最も深い位置を形成する球面部であり、カム用球体226の表面の曲率と略等しい曲率で形成されている。また、シフトアップ時傾斜面233は、変速装置に対するシフトアップ操作によってカム用球体226が転動する傾斜面であり、深部232に対してシフトアップ操作時の可動側カムプレート210の回転方向上流側(図示左側)に形成されている。このシフトアップ時傾斜面233は、前記傾斜角θ1で形成された環状の第1傾斜面233aと、同第1傾斜面233aの外側にて傾斜角θ1より小さい前記傾斜角θ2で形成された環状の第2傾斜面233bとによって構成されている。
【0033】
一方、シフトダウン時傾斜面234は、変速装置に対するシフトダウン操作によってカム用球体226が転動する傾斜面であり、深部232に対してシフトダウン操作時の可動側カムプレート210の回転方向上流側(図示右側)に形成されている。このシフトダウン時傾斜面234は、前記傾斜角θ3、すなわち、前記傾斜角θ1より小さい傾斜角で形成されている。
【0034】
この固定側カムプレート230は、保持スリーブ223の外周面に固定的に嵌合して支持されているととともに、固定側カムプレート230の外周部の一部が図示上側に延びて形成されており、固定凸部227を介してサイドカバー225に固定されている。すなわち、固定側カムプレート230は、可動側カムプレート210に対して固定側プレート230の軸線方向、径方向および周方向にそれぞれ変位不能な固定状態で組み付けられている。
【0035】
(クラッチレリーズ機構200の作動)
次に、上記のように構成したクラッチレリーズ機構200の作動について説明する。このクラッチレリーズ機構200を備えたクラッチ装置100は、前記したように、自動二輪車両におけるエンジンと変速装置との間に配置されるものである。そして、このクラッチ装置100は、自動二輪車両の運転者が行なう運転操作に起因する直接的または間接的なシフトアップ操作およびシフトダウン操作によるシフトチェンジ(ギアチェンジ)動作に連動してエンジンの駆動力の変速装置への伝達状態の解除および同伝達状態への復帰の一連の動作を実行する。
【0036】
まず、自動二輪車両の走行時において運転者がシフトアップ操作を行った場合について説明する。自動二輪車両の運転者がシフトチェンジペダルを操作しない走行時においては、クラッチ装置100は、リングスプリング110の弾性力によってプレッシャ体107が駆動摩擦プレート103を押圧するため、同駆動摩擦プレート103と従動プレート106とが摩擦接触することによりエンジンの駆動力を従動シャフト105に伝える伝達状態にある。
【0037】
この場合、クラッチレリーズ機構200におけるカム用球体226は、可動側カムプレート210の可動側カム凹部213および固定側カムプレート230の固定側カム凹部231における各深部214,232上において可動側カム凹部213と固定側カム凹部231とに挟まれて静止状態にある。より具体的には、カム用球体226は、深部214,232上においてシフトアップ時傾斜面215の第1傾斜面215aに押圧されて同第1傾斜面215aとシフトアップ時傾斜面233の第1傾斜面233aとに挟まれた状態で位置決めされる(図1参照)。
【0038】
そして、このような走行状態において運転者がシフトチェンジペダルをシフトアップ操作すると、シフトチェンジペダルに連結されたチェンジシャフト222がシフトアップ操作に対応する回転方向(図示矢印U方向)に回転する。これにより、可動側カムプレート210は、チェンジシャフト222と同様の回転方向(図示矢印U方向)に回転する。この場合、図3に示すように、可動側カム凹部213および固定側カム凹部231の深部214,232上に保持されたカム用球体226は、シフトアップ時傾斜面215,233の第1傾斜面215a,233aをそれぞれ乗り上げて第2傾斜面215b,233b上に変位する。
【0039】
これにより、可動側カムプレート210が押圧プレート108側(図示左側)にスライド変位して押圧プレート108を入力ギア102側(図示左側)に押圧するため、この押圧プレート108に連結されたプレッシャ体107がリングスプリング110の弾性力に抗しながら入力ギア102側(図示左側)に変位して駆動摩擦プレート103から離隔する。この場合、カム用球体226が第1傾斜面215a,233aを転動する範囲において、可動側カムプレート210の回転変位量に対する同可動側カムプレート210のスライド変位量、換言すれば、可動側カムプレート210の回転変位量に対するプレッシャ体107のスラスト方向への変位量は、図4に示すように、後述するシフトダウン時に比べて多い。このため、シフトアップ操作時におけるクラッチ装置100は、シフトダウン操作時に比べて早期に駆動力の伝達状態が解除される。そして、このクラッチ装置100における駆動力の伝達状態の解除動作とともに、変速装置(図示せず)におけるシフトチェンジ(シフトアップ)動作が行われて自動二輪車両は変速される。
【0040】
このシフトチェンジ動作の後、運転者がシフトチェンジペダルに対するシフトアップ操作を終了すると、シフトチェンジペダルに連結されたチェンジシャフト222が逆転して回転変位前の元の回転位置に復帰するため、可動側カムプレート210も回転変位前の元の回転位置に復帰する。これにより、カム用球体226は、シフトアップ時傾斜面215,233の第1傾斜面215a,233a上を深部214,232に向かって変位した後、同深部214,232上にて前記静止状態に復帰する。この結果、クラッチ装置100は、リングスプリング110の弾性力によってプレッシャ体107が駆動摩擦プレート103を押圧するため、同駆動摩擦プレート103と従動プレート106とが摩擦接触することによりエンジンの駆動力を従動シャフト105に伝える伝達状態に復帰する。この場合においても、可動側カムプレート210の回転変位量に対するプレッシャ体107の変位量が後述するシフトダウン時に比べて多いため(図4参照)、シフトアップ操作時におけるクラッチ装置100は、シフトダウン操作時に比べて早期に駆動力の伝達状態に復帰する。
【0041】
次に、自動二輪車両の走行時において運転者がシフトダウン操作を行った場合について説明する。自動二輪車両の走行状態において運転者がシフトチェンジペダルをシフトダウン操作すると、シフトチェンジペダルに連結されたチェンジシャフト222がシフトダウン操作に対応する回転方向(図示矢印D方向)に回転する。これにより、可動側カムプレート210は、チェンジシャフト222と同様の回転方向(図示矢印D方向)に回転する。この場合、図5および図6に示すように、可動側カム凹部213および固定側カム凹部231の深部214,232上に保持されたカム用球体226は、シフトダウン時傾斜面216,234上を倣って変位する。
【0042】
この場合、シフトダウン時傾斜面216,234は、その傾斜角θ3がシフトアップ時傾斜面215,233の第1傾斜面215a,233aの傾斜角θ1より小さい傾斜角で形成されている。このため、図4に示すように、カム用球体226がシフトダウン時傾斜面216,234を転動する範囲において可動側カムプレート210の回転量に対するスライド変位量は、シフトアップ時における可動側カムプレート210の回転量に対するスライド変位量よりも少ない。したがって、可動側カムプレート210は、前記シフトアップ操作時に比べてゆっくりと押圧プレート108側(図示左側)にスライド変位して押圧プレート108を入力ギア102(図示左側)側に押圧する。
【0043】
これにより、クラッチ装置100は、プレッシャ体107が前記シフトアップ時に比べてゆっくりと変位して駆動摩擦プレート103から離隔されるためエンジンの駆動力の伝達は徐々に遮断される。この結果、自動二輪車両の運転者は、シフトダウン操作時に駆動力が急に切れた感覚を大きく受けることなく運転を続行することができる。そして、このクラッチ装置100における駆動力の伝達状態の解除動作とともに、変速装置(図示せず)におけるシフトチェンジ(シフトダウン)動作が行われて自動二輪車両は変速される。
【0044】
このシフトチェンジ動作の後、運転者がシフトチェンジペダル対するシフトダウン操作を終了すると、シフトチェンジペダルに連結されたチェンジシャフト222が逆転して回転変位前の元の回転位置に復帰するため、可動側カムプレート210も回転変位前の元の回転位置に復帰する。この場合においても、シフトダウン時傾斜面216,234の傾斜角θ3が第1傾斜面215a,233aの傾斜角θ1より小さい傾斜角で形成されているため、カム用球体226は、前記シフトアップ時に比べてゆっくりとシフトダウン時傾斜面216,234上を深部214,232に向かって変位した後、同深部214,232上にて前記静止状態に復帰する。
【0045】
この場合においても、クラッチ装置100は、プレッシャ体107が前記シフトアップ操作時に比べてゆっくりと駆動摩擦プレート103を押圧するため、駆動摩擦プレート103と従動プレート106とが徐々に摩擦接触してエンジンの駆動力を従動シャフト105に伝える伝達状態に徐々に復帰する。この結果、自動二輪車両の運転者は、シフトダウン時に駆動力が急に繋がった感覚、すなわちシフトショックを大きく受けることなく運転を続行することができる。
【0046】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、クラッチレリーズ機構100を構成する可動側カムプレート210および固定側カムプレート230は、変速装置に対するシフトアップ操作時にカム用球体226が転動するシフトアップ時傾斜面215,233と、シフトダウン操作時にカム用球体226が転動するシフトダウン時傾斜面216,234とで構成されており、これらのシフトダウン時傾斜面216,234はシフトアップ時傾斜面215,233を構成する第1傾斜面215a,233aより小さな傾斜角で形成されている。これにより、シフトダウン時傾斜面216,234をカム用球体226が転動する際においては、可動側カムプレート210における周方向への回転変位量当たりのスラスト方向への変位量が少なくなる。このため、クラッチ装置100における駆動力の伝達状態の解除および伝達状態の形成が徐々に行なわれるようになる。これにより、車両の運転者が変速装置のシフトダウン時に駆動力が急に繋がりまたは切れる感覚を大きく受けることを防止して運転操作を行ない易くすることができる。
【0047】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記に示す各変形例においては、上記実施形態におけるクラッチ装置100と同様の構成部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0048】
例えば、上記実施形態においては、変速装置に対するシフトダウン操作時にカム用球体226が転動するシフトダウン時傾斜面216,234の傾斜角θ3を、同変速装置に対するシフトアップ操作時にカム用球体226が転動するシフトアップ時傾斜面215,233における第1傾斜面215a,233の傾斜角θ1より小さい傾斜角とした。しかし、可動側カム凹部213および固定側カム凹部231において、シフトアップ時傾斜面215,233およびシフトダウン時傾斜面216,234のどちらの傾斜角を小さく形成するかは、駆動力が急に繋がりまたは切れる感覚を抑えたい側に対応する。
【0049】
すなわち、上記実施形態においては、クラッチレリーズ機構を備えるクラッチ装置が搭載される車両が自動二輪車両の場合、変速装置のシフトアップ時に比べてシフトダウン時にシフトショック(変速ショック)を感じることが多いことから、シフトダウン時傾斜面216,234の傾斜角θ3を、シフトアップ時傾斜面215,233における第1傾斜面215a,233の傾斜角θ1より小さい傾斜角とした。しかし、変速装置のシフトアップ時に駆動力が急に繋がりまたは切れる感覚を抑えたい場合には、シフトアップ時傾斜面215,233における第1傾斜面215a,233の傾斜角θ1をシフトダウン時傾斜面216,234の傾斜角θ3より小さい傾斜角に形成すればよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、シフトアップ時傾斜面215,233を傾斜角θ1の第1傾斜面215a,233aと傾斜角θ2の215b,233bとで構成した。しかし、シフトアップ時傾斜面215,233は、1つの傾斜角θ1で構成することもできる。
【0051】
また、上記実施形態においては、シフトアップ時傾斜面215,233より小さい傾斜角のシフトダウン時傾斜面216,234を傾斜角θ3からなる1つの傾斜面で構成した。しかし、シフトダウン時傾斜面216,234をシフトアップ時傾斜面215,233と同様に、2つの傾斜角からなる2つの傾斜面で構成することもできる。
【0052】
具体的には、例えば、図7に示すように、シフトダウン時傾斜面216,234をシフトアップ時傾斜面215,233の第1傾斜面215a,233aの傾斜角θ1より小さい傾斜角θ3の傾斜面で構成された小角傾斜面216a,234aと、同小角傾斜面216a,234aの外側に傾斜角θ3より大きい傾斜角θ4の傾斜面で構成された大角傾斜面216b,234bとで構成することができる。
【0053】
これによれば、小角傾斜面216a,234aおよび大角傾斜面216b,234bがそれぞれ形成されたシフトダウン時傾斜面216,234をカム用球体226が転動する際においては、可動側カムプレート210における周方向への回転変位量当たりのスラスト方向へのスライド変位量が途中で変化する。具体的には、図8に示すように、カム用球体226が小角傾斜面216a,234aを転動する場合に比べて大角傾斜面216b,234bを転動する場合の方が可動側カムプレート210の周方向への回転変位量当たりのスライド変位量が増加する。これにより、クラッチ装置100における駆動摩擦プレート103と従動プレート106との間隔が所定以上に離隔した場合において、駆動摩擦プレート103と従動プレート106との離隔作動および近接作動を素早くすることができる。また、駆動摩擦プレート103と従動プレート106との離隔間隔を所定間隔以上に確保しつつ駆動摩擦プレート103と従動プレート106とを徐々に接触および離隔することができる。
【0054】
また、上記実施形態においては、可動側カムプレート210および固定側カムプレート230の各シフトダウン時傾斜面216,234の傾斜角θ3をシフトアップ時傾斜面215,233における第1傾斜面215a,233の傾斜角θ1より小さい傾斜角とした。しかし、シフトダウン時傾斜面216,234は、必ずしも両方のシフトダウン時傾斜面216,234をシフトアップ時傾斜面215,233における第1傾斜面215a,233の傾斜角θ1より小さい傾斜角に形成する必要はない。すなわち、シフトダウン時傾斜面216,234は、シフトダウン時傾斜面216およびシフトダウン時傾斜面234のどちらか一方の傾斜角θ3をシフトアップ時傾斜面215,233における第1傾斜面215a,233の傾斜角θ1より小さい傾斜角に形成することもできる。これによっても、プレッシャ体107の駆動摩擦プレート103に対する離隔変位および押圧変位を穏やかにすることができ、上記実施形態と同様の作用効果を期待できる。
【符号の説明】
【0055】
100…クラッチ装置、101…アウターケース、101a…嵌合溝、102…入力ギア、102a…リベット、103…駆動摩擦プレート、104…プレートホルダ、105…従動シャフト、105a…ブッシュ、105b…ナット、106…従動プレート、107…プレッシャ体、108…押圧プレート、109…ボルト、110…リングスプリング、111…レリーズベアリング、
200…クラッチレリーズ機構、210…可動側カムプレート、211…プッシュ部、212…カム部、213…可動側カム凹部、214…深部、215…シフトアップ時傾斜面、215a…第1傾斜面、215b…第2傾斜面、216…シフトダウン時傾斜面、216a…小角傾斜面、216b…大角傾斜面、220…連結ピン、221…クラッチアーム、223…保持スリーブ、224…調節シャフト、225…サイドカバー、226…カム用球体、227…固定凸部、230…固定側カムプレート、231…固定側カム凹部、232…深部、233…シフトアップ時傾斜面、234…シフトダウン時傾斜面、234a…小角傾斜面、234b…大角傾斜面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動軸から従動軸に駆動力を任意に断続的に伝えるクラッチ装置において前記駆動力の伝達状態を解除するクラッチレリーズ機構であって、
錐状に凹んだ可動側カム凹部を有し、変速装置に対するシフトアップ操作およびシフトダウン操作に連動して同各操作に対応する互いに反対方向にそれぞれ回転する可動側カムプレートと、
可動側カムプレートに対向配置され、前記可動側カム凹部に対応した位置に錐状に凹んだ形状の固定側カム凹部を有した固定側カムプレートと、
前記可動側カム凹部および前記固定側カム凹部に嵌まり込み、前記可動側カムプレートと前記固定側カムプレートとによって保持されるカム用球体とを備え、
前記可動側カム凹部および前記固定側カム凹部は、
前記変速装置に対する前記シフトアップ操作および前記シフトダウン操作の各操作時に前記カム用球体がそれぞれ倣って変位するシフトアップ時傾斜面およびシフトダウン時傾斜面を有し、
前記可動側カム凹部および前記固定側カム凹部のうちの少なくとも一方の前記シフトアップ時傾斜面および前記シフトダウン時傾斜面は、
前記シフトアップ時傾斜面および前記シフトダウン時傾斜面における一方の傾斜角が他方の傾斜角より小さい傾斜角で形成されていることを特徴とするクラッチレリーズ機構。
【請求項2】
請求項1に記載したクラッチレリーズ機構において、
前記シフトダウン時傾斜面は、
前記シフトアップ時傾斜面の傾斜角より小さい傾斜角で形成されていることを特徴とするクラッチレリーズ機構。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したクラッチレリーズ機構において、
前記可動側カム凹部および前記固定側カム凹部における前記各シフトアップ時傾斜面および前記各シフトダウン時傾斜面は、
前記各シフトアップ時傾斜面および前記各シフトダウン時傾斜面における一方の傾斜角が他方の傾斜角より小さい傾斜角でそれぞれ形成されていることを特徴とするクラッチレリーズ機構。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したクラッチレリーズ機構において、
前記小さい傾斜角が形成された前記シフトアップ時傾斜面または前記シフトダウン時傾斜面は、
前記小さい傾斜角で形成された小角傾斜面の外側に、同小さい傾斜角より大きい傾斜角で形成された大角傾斜面を備えていることを特徴とするクラッチレリーズ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−62992(P2012−62992A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209477(P2010−209477)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000128175)株式会社エフ・シー・シー (109)
【Fターム(参考)】