説明

クランプ装置

【課題】段替え時間を短縮できるクランプ装置を提供する。
【解決手段】コンロッド100を固定するクランプ装置10であって、コンロッド100が載置されるカセット治具20と、カセット治具20が装着されるプレート治具11と、を具備し、カセット治具20は、コンロッド100のカセット治具20上での基準位置を決め、かつ、コンロッド100を該基準位置に固定する側面クランプ30および小端孔クランプ40と、を具備し、プレート治具11に脱着可能な構成とされ、側面クランプ30および小端孔クランプ40は、カセット治具20に載置するコンロッド100の形状に対応するようにカセット治具20に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークを固定するときに用いるクランプ装置は公知となっている。クランプ装置は、組み立てをするためにワークを固定する、あるいは、切削加工するためにワークを固定する、など種々の機能を有し、生産工程で用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1は、エンジン部品の1つであるコンロッドを固定するクランプ装置を開示している。コンロッドは、エンジンの種類によって様々な形状を有しているワークである。特許文献1に代表されるような従来のクランプ装置は、クランプ位置をコンロッドの形状が変わる毎に変更する構成であった。このようなクランプ装置は、生産工程の段替え時間が長くなるため、生産効率が良くなかった。なお、段替え時間とは、生産工程において、形状の異なるコンロッドを製造する設定に変更する作業が必要なときに発生する作業時間である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−084771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、段替え時間を短縮できるクランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、ワークを固定するクランプ装置であって、前記ワークが載置されるカセット治具と、前記カセット治具が装着されるプレート治具と、を具備し、前記カセット治具は、前記ワークの前記カセット治具上での基準位置を決め、かつ、該ワークを該基準位置に固定するクランプ部を具備し、前記プレート治具に脱着可能な構成とされ、前記クランプ部は、前記カセット治具に載置するワークの形状に対応するように前記カセット治具に配置されるものである。
【0008】
請求項2においては、大端孔が形成される大端孔部と小端孔が形成される小端孔部とを具備するコンロッドを固定するクランプ装置であって、前記コンロッドが載置されるカセット治具と、前記カセット治具が装着されるプレート治具と、を具備し、前記カセット治具は、前記コンロッドの前記カセット治具上での基準位置を決め、かつ、該ワークを該基準位置に固定するクランプ部を具備し、前記プレート治具に脱着可能な構成とされ、前記クランプ部は、前記大端孔部の基準位置を決め、かつ、該大端孔部の両側面を把持することによって、該大端孔部を該大端孔部の基準位置に固定する側面クランプと、前記小端孔の基準位置を決め、かつ、該小端孔の内径に接することによって、該小端孔を該小端孔の基準位置に固定する小端孔クランプと、を具備し、前記側面クランプおよび前記小端孔クランプは、前記カセット治具に載置するコンロッドの形状に対応するように前記カセット治具にそれぞれ配置されるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のクランプ装置によれば、段替え時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るクランプ装置の全体的な構成を示した平面図および正面図。
【図2】同じくコンロッドの全体的な構成を示した平面図。
【図3】同じく治具プレートの全体的な構成を示した平面図。
【図4】側面クランプおよび小端孔クランプの全体的な構成を示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を用いて、本発明の実施形態であるクランプ装置10について説明する。
なお、図1(A)はクランプ装置10の平面図を示し、図1(B)はクランプ装置10の正面図を示している。
クランプ装置10は、ワークとしてのコンロッド100を切削加工するために固定する装置である。コンロッド100は、エンジンの一構成部品であって、クランクシャフトとの連動により、ピストンの往復直線運動を回転運動へ変換するものである。なお、コンロッド100は、エンジンの種類によって様々な形状を有している。
【0012】
クランプ装置10は、プレート治具11と、カセット治具20と、コントローラ(図示略)と、を具備している。プレート治具11は、油圧シリンダおよび油圧配管等を内蔵している。油圧シリンダおよび油圧配管等は、後述する側面クランプ30および小端孔クランプ40を駆動する油圧回路である。コントローラは、側面クランプ30および小端孔クランプ40を駆動する油圧回路を制御するものである。なお、油圧回路については、本実施形態では説明を省略する。
【0013】
カセット治具20には、コンロッド100が載置される。クランプ装置10には、プレート治具表側11Aに4台のカセット治具20Aが、プレート治具裏側11Bに4台のカセット治具20Bが、装着されている。カセット治具20Aおよびカセット治具20Bは、プレート治具11に脱着可能に構成されている。
【0014】
本実施形態では、プレート治具表側11Aに4台のカセット治具20Aが、プレート治具裏側に4台のカセット治具20Bが、装着される構成としたが、これに限定されない。また、カセット治具20Aとカセット治具20Bとは、それぞれ異なる形状のコンロッド100に対応する構成とされている。異なる形状のコンロッド100に対応する構成とは、カセット治具20Aとカセット治具20Bとは、載置するコンロッド100の形状に対応して、後述する側面クランプ30または小端孔クランプ40の配置が異なることをいう。以下では、カセット治具20Aおよびカセット治具20Bに共通する説明については、単にカセット治具20として説明する。
【0015】
図2を用いて、コンロッド100について説明する。
コンロッド100は、大端孔101Pと、大端孔101Pが形成される大端孔部101と、小端孔102Pと、小端孔102Pが形成される小端孔部102と、大端孔部101と小端孔部102とを接続するコラム部103と、を具備している。以下では、コンロッド100は、大端孔101Pの中心から小端孔102Pの中心に向かう方向を長手方向と定義し、平面視において長手方向と直交する方向を短手方向と定義する。
【0016】
図3を用いて、カセット治具20について説明する。
カセット治具20には、コンロッド100が載置される。カセット治具20は、クランプ部としての側面クランプ30と、側面基準部31と、クランプ部としての小端孔クランプ40と、を具備している。側面基準部31および小端孔クランプ40については、詳細な説明は後述する。側面基準部31は、コンロッド100の短手方向の基準位置を決めるものである。つまり、側面基準部31の側面クランプ30側の端面の位置が大端孔部101の短手方向の基準位置となる。
【0017】
図4を用いて、側面クランプ30および小端孔クランプ40について説明する。
なお、図4(A)は、側面クランプ30を示し、図4(B)は、小端孔クランプ40を示している。
側面クランプ30は、カセット治具20に立設して配置されている。側面クランプ30は、クランプ部35と、上下移動部36と、を具備している。クランプ部35は、プレート治具11に内蔵される油圧回路によって、上下移動部36を介して、短手方向および上下方向に移動するように構成されている。クランプ部35の側面クランプ30側の端面は、側面クランプ30により大端孔部101をクランプする際に、大端孔部101に当接する部分である。
【0018】
小端孔クランプ40は、カセット治具20に立設して配置されている。小端孔クランプ40は、突起部41と、拡径部42と、底面基準部46と、を具備している。突起部41は、油圧回路によって上下方向に移動する構成とされている。拡径部42は、突起部41の一部分であって、油圧回路によって、突起部41内に収納された状態と突起部41の外周から突出した状態とを切換可能に構成されている。
【0019】
突起部41は小端孔102Pが係合可能に構成されており、小端孔102Pが突起部41に係合した状態で、拡径部42が突起部41の外周から突出したときには、小端孔102Pが小端孔クランプ40によって固定される。つまり、拡径部42が突起部41の外周から突出して、小端孔102Pが小端孔クランプ40によって固定された状態では、突起部41の中心位置が小端孔部102の短手方向および長手方向の基準位置となる。
【0020】
底面基準部46は、コンロッド100がカセット治具20に固定された状態で、クランプ部35が位置する基準平面である。つまり、底面基準部46は、小端孔部102の上下方向の基準位置となる。
【0021】
本実施形態のクランプ装置10の作用について説明する。
まず、クランプ装置10をコンロッド100をクランプする前の初期状態とする。すなわち、側面クランプ30では、クランプ部35を短手方向において側面基準部31との距離が大きくなる方向に移動させ、上下方向において上方へ移動させた状態にする。小端孔クランプ40では、拡径部42を突起部41内に収納させ、突起部41を上方へ移動させた状態とする。作業者は、このような状態のカセット治具20にコンロッド100を載置する。このとき、コンロッド100の大端孔部101を側面クランプ30と側面基準部31との間に配置し、コンロッド100の小端孔102Pは突起部41に係合させる。
【0022】
コントローラは、油圧回路によって、拡径部42を突起部41の外周より突出させる。このとき、突起部41に係合されていた小端孔102Pは、拡径部42によって押圧されることによってその係合位置を固定される。さらに、コントローラは、油圧回路によって、突起部41を上下方向の下向きに移動させる。このとき、コンロッド100は、クランプ部35が底面基準部46に移動する位置まで押圧される。
【0023】
コントローラは、油圧回路によって、側面クランプ30の上下移動部36を短手方向の側面基準部31に向けて移動させる。このとき、側面クランプ30と側面基準部31との間に配置された大端孔部101は、上下移動部36によって押圧されて固定される。コントローラは、油圧回路によって、側面クランプ30のクランプ部35を上下方向の下向きに移動させる。このとき、コンロッド100は、底面基準部46に移動する位置まで押圧される。
【0024】
本実施形態のクランプ装置10の効果について説明する。
コンロッド100は、エンジンの種類によって様々な形状を有しているワークである。従来のクランプ装置は、クランプ位置をコンロッドの形状が変わる毎に変更する構成であった。このようなクランプ装置は、生産工程の段替え時間が長くなるため、生産効率が良くなかった。なお、段替え時間とは、生産工程において、形状の異なるコンロッドを製造する設定に変更する作業が必要なときに発生する作業時間である。
【0025】
本実施形態のクランプ装置10によれば、カセット治具20は、プレート治具11に脱着可能に構成されている。また、カセット治具20は、コンロッド100の形状に対応した構成とされている。そのため、異なる形状のコンロッド100の生産に変更する場合には、コンロッド100の形状に対応したカセット治具20を変更するのみで良い。つまり、クランプ装置10は、クランプ位置をコンロッド100の形状が変わる毎に変更する必要がない。このようにして、生産工程の段替え時間を短くすることができる。
【0026】
また、従来のクランプ装置は、コンロッド100を上下方向の上側よりクランプする構成であった。また、コンロッド100の加工するときの横荷重は、上側のクランプ力とコンロッド100とクランプ装置との摩擦力で受ける構成であった。そのため、大きなクランプ力が必要となり、油圧回路のシリンダは大容量なものが必要とされていた。
【0027】
本実施形態のクランプ装置10によれば、カセット治具20に載置されたコンロッド100は、側面クランプ30および小端孔クランプ40によって、カセット治具20に固定される。そのため、上側よりクランプする構成と比較して、側面クランプ30および小端孔クランプ40のクランプ力を低減することができる。
【0028】
側面クランプ30および小端孔クランプ40のクランプ力を低減できるため、油圧回路の油圧シリンダの容量を小さい容量のものとし、油圧回路のスペースを小さいものとすることができる。そのため、プレート治具表側11Aとプレート治具裏側11Bとに、カセット治具20Aとカセット治具20Bとを設置することができる。
【0029】
プレート治具表側11Aとプレート治具裏側11Bとに、カセット治具20Aとカセット治具20Bとを装着する構成とすることで、カセット治具20Aとカセット治具20Bとは、それぞれ異なる形状のコンロッド100に対応する構成とすることができる。そのため、クランプ装置10を裏返すのみの工程によって、異なる形状のコンロッド100に対応することができる。このようにして、さらに生産工程の段替え時間を短くすることができる。
【符号の説明】
【0030】
10 クランプ装置
11 プレート治具
20 カセット治具
30 側面クランプ
40 小端孔クランプ
100 コンロッド
101 大端孔部
102 小端孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを固定するクランプ装置であって、
前記ワークが載置されるカセット治具と、
前記カセット治具が装着されるプレート治具と、
を具備し、
前記カセット治具は、
前記ワークの前記カセット治具上での基準位置を決め、かつ、該ワークを該基準位置に固定するクランプ部を具備し、
前記プレート治具に脱着可能な構成とされ、
前記クランプ部は、前記カセット治具に載置するワークの形状に対応するように前記カセット治具に配置される、
クランプ装置。
【請求項2】
大端孔が形成される大端孔部と小端孔が形成される小端孔部とを具備するコンロッドを固定するクランプ装置であって、
前記コンロッドが載置されるカセット治具と、
前記カセット治具が装着されるプレート治具と、
を具備し、
前記カセット治具は、
前記コンロッドの前記カセット治具上での基準位置を決め、かつ、該ワークを該基準位置に固定するクランプ部を具備し、
前記プレート治具に脱着可能な構成とされ、
前記クランプ部は、
前記大端孔部の基準位置を決め、かつ、該大端孔部の両側面を把持することによって、該大端孔部を該大端孔部の基準位置に固定する側面クランプと、
前記小端孔の基準位置を決め、かつ、該小端孔の内径に接することによって、該小端孔を該小端孔の基準位置に固定する小端孔クランプと、
を具備し、
前記側面クランプおよび前記小端孔クランプは、
前記カセット治具に載置するコンロッドの形状に対応するように前記カセット治具にそれぞれ配置される、
クランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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