説明

クリックばね付きシート及びこれを用いたスイッチ装置

【課題】 複数のスイッチのうちの所望のスイッチの操作感触を変えることができ、組立てを簡単に行えるクリックばね付きシート及びこれを用いたスイッチ装置を提供する。
【解決手段】 絶縁性フィルムからなり下面に粘着剤が設けられた粘着シート1と、この粘着シート1の下面側に貼着された第1クリックばね2と、この第1クリックばね2の下側に積層された第2クリックばね3とを備え、第2クリックばね3には、第1クリックばね2の外周縁部2aよりも外方へ延出する固着板7を設け、この固着板7で第2クリックばね3を粘着シート1の下面側に貼着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の電子機器の薄型操作パネル等に用いられるクリックばね付シート及びこれを用いたスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクリックばね付シート及びスイッチ装置の構造としては、円形ドーム状の複数のクリックばね(可動接点)を粘着シートに貼付けたクリックばね付シートを基板上に積層したシートタイプのスイッチ装置の構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来のクリックばね付シート及びスイッチ装置の構造を図8、9図に示す。図8は従来のクリックばね付シートの分解斜視図、図9は従来のクリックばね付シートを用いたスイッチ装置の要部断面図である。
【0004】
図において、複数個のクリックばね(可動接点)51は、ステンレス材やリン青銅等のバネ性を有する円形ドーム状の薄板の金属からなり、頂部からの押圧力に対して変位可能になっている。そして、クリックばね51は、ドーム状内に貫通する孔が存在せず、その中央部にはドーム状内に突出して形成された接点部51aを有している。
【0005】
粘着シート52は、ポリエステル樹脂等のフィルム材からなり、可撓性を有するシート状のシート部53と、このシート部53に設けられた複数個の孔52aと、この孔52aを除くシート部53の下面に形成された非粘着部からなる気道部55を除く部分に設けられた粘着剤54とから構成されている。
【0006】
気道部55は、粘着剤54をシート部53の下面にスクリーン印刷することによって形成されており、その少なくとも一端が、粘着シート52の孔52a、又は粘着シート52の外周端縁52bに位置する気道口56に繋がっている。そして、クリックばね51は、上面が粘着シート52の粘着剤54に貼着され、クリックばね51の上面、およびクリックばね51の端部51bの少なくとも一部が気道部55上に載置された状態で貼着されている。
【0007】
セパレータ57は、粘着シート52と略同形状のポリエステルフィルムからなり、その上下面に貫通して形成された複数個の孔57aを有している。また、セパレータ57は、粘着シート52の粘着剤54によって、粘着シート52の孔52aと孔57aが対向し、重なり合うように、粘着シート52の下面に貼着されている。そして、このセパレータ57は、粘着シート52とでクリックばね51を挟持すると共に、クリックばね51の下面を保護することによって、クリックばね付シート58を構成している。
【0008】
粘着シート52の孔52aは、図示せぬ発光ダイオード(LED)等の発光素子を露出させるための孔であり、可動接点51を押圧操作する操作体(図示せず)を、シート部53で光を効率よく反射させて照光できる。
【0009】
図9はスイッチ装置(押釦スイッチ)を示し、絶縁基板59は、ポリイミドフィルム等のフレキシブル基板からなり、その表面には、銅箔からなる円形をした第一の固定接点59aと、この第一の固定接点59aを取り囲む略C字状をした第二の固定接点59bがエッチングにて形成されている。
【0010】
そして、クリックばね付シート58の粘着シート52の下面に貼着されたセパレータ57を剥がすことにより、粘着シート52の粘着剤54を露出させ、クリックばね51の端部51bを第二の固定接点59bに対向させて、粘着シート52が絶縁基板59の上面に貼着される。この時、クリックばね51は、端部51bの周縁が第二の固定接点59bに常時接触する状態で、絶縁基板59の表面に載置された状態となる。
【0011】
【特許文献1】特開2001−160334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した従来のクリックばね付シート及びスイッチ装置においては、粘着シートに各スイッチに対応させてクリックばねを1枚ずつ貼り付けていることから、ひとつのシート上で所望のスイッチのみ操作荷重を重くしたい場合には、荷重の異なるクリックばねを用いる必要があり、1枚のクリックばねで対応できる荷重範囲には限りがあった。
そのため、あらかじめスイッチ基板側に1枚クリックばねを仮固定しておき、そのクリックばね上に粘着シートのクリックばねがもう1枚重なるように粘着テープを重ね合わせることで、クリックばねを2枚重ねに配置することが考えられる。しかしながら、重ね合わせるクリックばねの位置ずれが生じ操作感触を損なう可能性があり、スイッチの組立てが煩雑になるという問題があった。
【0013】
したがって、本発明では上述した問題点を解決し、複数のスイッチのうちの所望のスイッチの操作感触を変えることができ、組立てを簡単に行えるクリックばね付きシート及びこれを用いたスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明では第1の解決手段として、絶縁性フィルムからなり下面に粘着剤が設けられた粘着シートと、この粘着シートの下面側に貼着された第1クリックばねと、この第1クリックばねの下側に積層された第2クリックばねとを備え、前記第2クリックばねには、前記第1クリックばねの外周縁部よりも外方へ延出する固着板を設け、この固着板で前記第2クリックばねを前記粘着シートの下面側に貼着した構成とした。
【0015】
また、第2の解決手段として、前記第1及び第2クリックばねは、外周縁部から所定の角度で立ち上がるスカート部と、このスカート部に連設する反転可能なドーム状の膨出部とを有し、前記外周縁部に前記固着板を延出して形成した構成とした。
また、第3の解決手段として、前記固着板を、反転可能なドーム状の膨出部を有するクリックばねで形成し、該クリックばねを前記第1及び第2のクリックばねとは独立して作動する第3クリックばねとした構成とした。
また、第4の解決手段として、前記粘着シートには、積層されて貼着された前記第1及び第2クリックばねを挟んで両脇に、1枚のクリックばねからなる前記第3クリックばねを配置した構成とした。
【0016】
また、第5の解決手段として、前記第2クリックばねと前記第3クリックばねとを平面状に3個連結して一体的に形成した構成とした。
また、第6の解決手段として、前記第2クリックばねには、前記膨出部の内面に固定接点と接触可能な接点部を形成した構成とした。
また、第7の解決手段として、前記接点部を、前記膨出部の内面に設けられた突部で形成した構成とした。
【0017】
また、第8の解決手段として、第1乃至第5の解決手段の何れかに記載のクリックばね付きシートと、このクリックばね付きシートが積層されると共に、少なくとも前記第2クリックばねの下方に配置される一対の対向された接点部を有するスイッチ基台とを備えたスイッチ装置とした。
また、第9の解決手段として、第6、又は第7の解決手段に記載のクリックばね付シートと、このクリックばね付シートに貼着された前記第2クリックばねの外周縁部が載置される周辺固定接点と、この周辺固定接点に隣接して配設され、前記第2クリックばねのドーム状の膨出部の内面に設けられた前記接点部と接離可能に対向して配置された中央固定接点と、前記周辺固定接点、及び前記中央固定接点が配設された絶縁基板とを備えたスイッチ装置とした。
【発明の効果】
【0018】
上述したように、本発明のクリックばね付シートは、絶縁性フィルムからなり下面に粘着剤が設けられた粘着シートと、この粘着シートの下面側に貼着された第1クリックばねと、この第1クリックばねの下側に積層された第2クリックばねとを備え、第2クリックばねには、第1クリックばねの外周縁部よりも外方へ延出する固着板を設け、この固着板で第2クリックばねを粘着シートの下面側に貼着したことから、粘着シートの下面に位置ずれすることなしに第1及び第2クリックばねを2枚重ねて配置することができるので、複数のスイッチキーのうち所望のスイッチキーの操作荷重を重くして操作感触を自由に変えることができる。また、スイッチの組立ても位置ずれすることなく簡単に行える。
【0019】
また、第1及び第2クリックばねは、外周縁部から所定の角度で立ち上がるスカート部と、このスカート部に連設する反転可能なドーム状の膨出部とを有し、外周縁部に固着板を延出して形成したことから、粘着シートに固着板を貼着しても第2クリックばねの膨出部の反転を阻害することがないので、良好な操作感触を得ることができる。
また、固着板を、反転可能なドーム状の膨出部を有するクリックばねで形成し、該クリックばねを第1及び第2のクリックばねとは独立して作動する第3クリックばねとしたことから、粘着シートに複数のスイッチキーを配置する場合に固着板を第3クリックばねで兼用することができるので、キーピッチを狭くできスイッチ全体の小型化が図れる。
また、粘着シートには、積層されて貼着された第1及び第2クリックばねを挟んで両脇に、1枚のクリックばねからなる第3クリックばねを配置したことから、両脇のクリックばねの操作荷重に対して中央のクリックばねの操作荷重を重くできるので、操作性を向上することができる。
【0020】
また、第2クリックばねと第3クリックばねとを平面状に3個連結して一体的に形成したことから、第2クリックばねを両脇の第3クリックばねで両側から粘着シートへ確実に保持することができ、組み立てが容易となる。
また、第2クリックばねには、膨出部の内面に固定接点と接触可能な接点部を形成したことから、クリックばねとスイッチの可動接点を兼用できるので、部品点数が削減され構成が簡単となり安価化が図れる。
また、接点部を、膨出部の内面に設けられた突部で形成したことから、突部先端が固定接点と接触することになるので、耐防塵性が向上される。
【0021】
また、第1乃至第5の解決手段の何れかに記載のクリックばね付きシートと、このクリックばね付きシートが積層されると共に、少なくとも第2クリックばねの下方に配置される一対の対向された接点部を有するスイッチ基台とを備えたスイッチ装置としたことから、スイッチ基台を共通として、クリック付きシートの操作荷重を適宜変えることができるので、所望のスイッチの操作感触を容易に得ることができる。
また、第6、又は第7の解決手段に記載のクリックばね付シートと、このクリックばね付シートに貼着された第2クリックばねの外周縁部が載置される周辺固定接点と、この周辺固定接点に隣接して配設され、第2クリックばねのドーム状の膨出部の内面に設けられた接点部と接離可能に対向して配置された中央固定接点と、周辺固定接点、及び中央固定接点が配設された絶縁基板とを備えたスイッチ装置としたことから、スイッチ装置を簡単に構成することができ、組み立てが容易であると共に、スイッチ装置の薄型化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明のクリックばね付シート及びスイッチ装置の実施形態を図1乃至図7に示す。図1は本発明の5連結時のクリックばね付シートのクリックばねを示す斜視図、図2は本発明の3連結時のクリックばね付シートのクリックばねを示す斜視図、図3は本発明の5連結及び3連結時のクリックばね付シートを示す断面図、図4は本発明の単キー積層時のクリックばね付シートのクリックばねを示す斜視図、図5は本発明の単キー積層時のクリックばね付シートのクリックばねの他の実施例を示す斜視図、図6は本発明のクリックばね付シートをスイッチ基台の固定接点上に積層したスイッチ装置を示す斜視図、図7は本発明のクリックばね付シートを一対の対向された接点部を有するスイッチ基台に積層したスイッチ装置を示す断面図である。
【0023】
図1乃至図3において、本発明のクリックばね付きシートは、絶縁性フィルムからなり下面に粘着剤が設けられた粘着シート1と、この粘着シート1の下面側に貼着された第1クリックばね2と、この第1クリックばね2の下側に積層された第2クリックばね3と、この第2クリックばね3の外周縁部と連結され、両脇の2方向あるいは十字方向の4方向に配置された複数の第3クリックばね4と、第2及び第3クリックばね3、4の下面側を覆う剥離シート5とから主に構成されている。
【0024】
粘着シート1は、ポリエステル樹脂等の絶縁性のフィルム材からなり、略方形状の可撓性を有するシート状に形成され、下面には一面に粘着剤(図示せず)が塗布されている。また、前記粘着シート1の下面側には、第1乃至第3クリックばね2〜4が一部積層されて貼着されている。
【0025】
第1クリックばね2は、ステンレス材やばね用リン青銅等のばね性を有する薄板金属板からなり、円形に形成されており、円形の外周縁部2aから所定の角度で立ち上がるスカート部2bと、このスカート部2bに連設する反転可能なドーム状の膨出部2cとを有している。この第1クリックばね2は、前記膨出部2cが前記粘着シート1の適宜位置に、粘着シート1の下面に塗布された粘着剤によって貼着されて配設されている。
【0026】
第2クリックばね3は、同じくステンレス材やばね用リン青銅等のばね性を有する薄板金属板からなり、略円形に形成されており、円形の外周縁部3aから所定の角度で立ち上がるスカート部3bと、このスカート部3bに連設する反転可能なドーム状の膨出部3cとを有している。この第2クリックばね3は、前記第1クリックばね2の下側に重合した状態で積層されており、前記第1クリックばね2の押圧操作時には、第1クリックばね2と共に反転駆動されるものとなっている。
【0027】
また、前記第2クリックばね3の外周縁部3aには、外方へ延出する複数の桟部3dを介して複数の第3クリックばね4が連結されている。この第3クリックばね4は、同じくステンレス材やばね用リン青銅等のばね性を有する薄板金属板からなり、略円形に形成されており、円形の外周縁部4aから所定の角度で立ち上がるスカート部4bと、このスカート部4bに連設する反転可能なドーム状の膨出部4cとを有している。そして、前記桟部3dと外周縁部4aが接続されて一体に形成されている。
【0028】
図1に示すのは、前記第3クリックばね4が、前記第2クリックばね3の外周縁部3aの外側に十字状に4個配置された5連結のクリックばねの構成を示している。また、図2に示すのは、前記第3クリックばね4が、前記第2クリックばね3の外周縁部3aの外側の両脇に2個配置された3連結のクリックばねの構成を示している。これらの第3クリックばね4は、前記膨出部4cが前記粘着シート1の適宜位置に、粘着シート1の下面に塗布された粘着剤によって貼着されて配設されるものとなっている。
【0029】
この時、前記第2クリックばね3の上側には前記第1クリックばね2が重合されて積層されており、すなわち、第1クリックばね2が前記粘着シート1に貼着された下面に前記第2クリックばね3が位置するように重合して積層されており、前記第2クリックばね3は、前記第3クリックばね4によって十字状の4方向あるいは両脇の2方向を確実に保持され、前記粘着シート1の下面に、前記第1クリックばね1と共に積層されて保持されるものとなる。
【0030】
このように、粘着シート1に、積層されて貼着された第1及び第2クリックばね2、3を挟んで両脇に、1枚のクリックばねからなる第3クリックばね4を配置すれば、両脇の第3クリックばね4の操作荷重に対して中央の第1と第2クリックばね2、3の操作荷重を重くできるので、他のクリックばねとの押圧操作感触を明確に識別でき、操作性や寿命を向上することができるものとなる。また、第2クリックばね3と第3クリックばね4とを平面状に3個連結して一体的に形成すれば、第2クリックばね3を両脇の第3クリックばね4、4で両側から粘着シート1へ確実に保持することができ、容易に組み立てが行えるものとなっている。
【0031】
図3に示すのは、前記粘着シート1の下面に貼着された前記第1、第2、第3クリックばね2、3、4の下面側を剥離シート5で覆った状態を示している。この場合、剥離シート5はポリエステル樹脂等の絶縁性のフィルム剤からなり、同じく、略方形のシート状をしており、その上面には剥離剤が塗布されて、離型処理がなされている。また、この剥離シート5は、前記粘着シート1の粘着剤によって、粘着シート1の下面に貼着されている。そして、この剥離シート5と前記粘着シート1とで前記第1、第2、第3クリックばね2、3、4を上下方向から挟持すると共に、ドーム状の膨出部2c、3c、4c内にゴミ、異物等が入らないように第1、第2、第3クリックばね2、3、4の下面を保護している。
【0032】
また、図3に示すように、本実施例では、前記第2クリックばね3、及び第3クリックばね4の各膨出部3c、4cの内面に後述するスイッチ基台の固定接点と接触可能な接点部が形成されている。この接点部は、各膨出部3c、4cの内面から下方へ突出する複数(本実施例では3個)の突部3e、4dから形成されている。
【0033】
このように、第2クリックばね3、及び第3クリックばね4の各膨出部3c、4cの内面に固定接点と接触可能な接点部を形成したことから、クリックばねとスイッチの可動接点を兼用できるので、部品点数が削減され構成が簡単となり安価化が図れるものとなる。また、接点部に前記突部3e、4dを設けることにより、前記第2クリックばね3、及び第3クリックばね4の各膨出部3c、4cの反転時には、前記突部3e、4dが固定接点と接触することにより、接触が安定し耐防塵性が向上されるものとなる。
尚、接点部は積層される下側の第2クリックばね3に設けられるので、上側の第1クリックばね2には銀めっきや、突部3e、4dなどの接点部を設けなくても良い。いずれの場合も、安価にでき、後者では更に薄型化もできる。
【0034】
尚、上記実施例では、前記第3クリックばね4が、前記第2クリックばね3の外周縁部3aの外側に十字状に4個配置された5連結のクリックばねの構成、及び、前記第3クリックばね4が、前記第2クリックばね3の外周縁部3aの外側の両脇に2個配置された3連結のクリックばねの構成としたが、これに限らず、前記第3クリックばね4が、前記第2クリックばね3の外周縁部3aの外側に1個配置された2連結のもの、また、5個以上配置された6連結以上のものにも適用が可能である。
このように、本発明のクリックばね付きシートは構成されている。
【0035】
図4は、単キー積層時の第2クリックばね6の構成を示している。この場合、前記第1クリックばね2の下面に重合して積層される第2クリックばね6は、同じくステンレス材やばね用リン青銅等のばね性を有する薄板金属板からなり、略円形に形成されて、円形の外周縁部6aから所定の角度で立ち上がるスカート部6bと、このスカート部6bに連設する反転可能なドーム状の膨出部6cとを有しており、この第2クリックばね6が、前記第1クリックばね2の下側に重合した状態で積層されて、前記第1クリックばね2の押圧操作時には、第1クリックばね2と共に反転駆動される点では上記実施例の構成と同じである。
【0036】
しかしながら、前記第2クリックばね6の外周縁部6aには、外方へ延出する桟部6dを介して前記第3クリックばね4は連結されておらず、第3クリックばね4の代わりに、前記第1クリックばね2の外周縁部2aよりも外方へ延出する固着板7が設けられている。そして、この固着板7で前記第2クリックばね6を前記粘着シート1の粘着剤によって粘着シート1の下面側に貼着されるものとなっている。このようにすることにより、単キーのスイッチキーでも容易にクリックばねを重合して積層することができ、適宜操作感触を変えることができ長寿命化できる。
【0037】
また、図5に示すのは、第2クリックばね6の膨出部6c下面に形成された接点部6eを示しており、この場合、接点部6eは膨出部6c中央に設けられた貫通孔6fの下面内周縁で構成されている。この場合にも、膨出部6cの反転時には貫通孔6fの下面内周縁の環状の縁部が固定接点と接触することにより、接触が安定し耐防塵性が向上されるものとなる。
【0038】
上記構成によれば、第2クリックばね6には、第1クリックばね2の外周縁部2aよりも外方へ延出する固着板7を設け、この固着板7で第2クリックばね6を粘着シート1の下面側に貼着したことから、粘着シート1の下面に位置ずれすることなしに第1及び第2クリックばね2、6を2枚重ねて配置することができるので、複数のスイッチキーのうち所望のスイッチキーの操作荷重を重くして操作感触を自由に変えることができる。また、スイッチの組立ても位置ずれすることなく簡単に行えるものとなっている。
【0039】
また、第1のクリックばね2、及び第2クリックばね6は、外周縁部6aから所定の角度で立ち上がるスカート部6bと、このスカート部6bに連設する反転可能なドーム状の膨出部6cとを有し、外周縁部6aに固着板7を延出して形成したことから、粘着シート1に固着板7を貼着しても第2クリックばね6の膨出部6cの反転を阻害することがないので、良好な操作感触を得ることができるものとなっている。また、固着板7を、反転可能なドーム状の膨出部を有する第3クリックばね4で形成し、この第3クリックばね4を、第1及び第2のクリックばね2、3とは独立して作動する第3クリックばね4とした構成によれば、粘着シート1に複数のスイッチキーを配置する場合に固着板7を第3クリックばね4で兼用することができるので、キーピッチを狭くできスイッチ全体の小型化が図れるものとなっている。
【0040】
図6は、クリックばね付きシートを用いたスイッチ装置の構成を示しており、基台となる絶縁基板8は、フェノール樹脂などの積層板から形成され、この絶縁基板8の上面には、カーボンあるいは銀箔などの導電性の材料で印刷された第1及び第2の固定接点9、10が形成されている。この第1及び第2の固定接点9、10は、中央に設けられた第1及び第2の中央固定接点9a、10aと、この第1及び第2の中央固定接点9a、10aを挟んで両側に対向して配設された第1及び第2の周辺固定接点9b、10bとから構成されている。
尚、第1及び第2の周辺固定接点9b、10bは一対対向して配置しても、櫛歯状もしくは環状に連結して配置しても良い。また、第1及び第2の周辺固定接点9b、10bは一対対向せずに一ヶ所だけに配置するようにしても良い。
【0041】
前記絶縁基板8上に、上述したクリックばね付きシートが載置される際には、前記剥離シート5が前記粘着シート1の粘着部(下面側)から剥離され、粘着シート1の粘着部によって粘着シート1が絶縁基板8に貼着されるものとなる。この時、前記第2クリックばね3の外周縁部3aが、前記第1の周辺固定接点9bに当接されると共に、スカート部3bに連続するドーム状の膨出部3cの接点部(突部)3eが、前記第1の中央固定接点9aと離間された状態で対向されて配置されるものとなる。また、前記第3クリックばね4の外周縁部4aが、前記第2の周辺固定接点10bに当接されると共に、スカート部4bに連続するドーム状の膨出部4cの接点部4dが、前記第2の中央固定接点10aと離間された状態で対向されて配置されるものとなる。
【0042】
上記構成のスイッチ装置の動作を説明すると、初期の状態では第1及び第2の両固定接点間9a、9b及び10a、10bは非導通でスイッチはオフ状態となっている。ここで、図示しない電子機器などの操作部11で粘着シート1の上面側が押圧されると、まず、第1クリックばね2の上面が押されたときには、ドーム状の膨出部2cが下側に押され、これと共に重合された第2クリックばね3の膨出部3cも同時に下側に押されて、一緒に反転するものとなり、この反転によって第2クリックばね3の膨出部3cの内面の接点部(突部)3eが対向して配置された第1の中央固定接点9aと接触して、第2クリックばね3を介して第1の中央固定接点9aと第1の周辺固定接点9bとが電気的に導通されオン状態となり信号が出力されるものとなる。
【0043】
次に、上記状態から、前記粘着シート1の押圧が解除されると、第1及び第2クリックばね2、3が自身のばね力で上方向へ反転し、この反転によって第2クリックばね3の膨出部3cの内面の接点部(突部)3eが第1の中央固定接点9aから離間して、第1の中央固定接点9aと第1の周辺固定接点9bとが電気的に遮断されオフ状態となる。
【0044】
一方、第3クリックばね4の上面が押されたときには、同じく第3クリックばね4のドーム状の膨出部4cが下側に押されて反転するものとなり、この反転によって膨出部4cの内面側の接点部(突部)4dが対向して配置された第2の中央固定接点10aと接触して、第3クリックばね4を介して第2の中央固定接点10aと第2の周辺固定接点10bとが電気的に導通されオン状態となり信号が出力されるものとなる。
【0045】
次に、上記状態から、前記粘着シート1の押圧が解除されると、第3クリックばね4が自身のばね力で上方向へ反転し、この反転によって膨出部4cの内面の接点部(突部)4dが第2の中央固定接点10aから離間して、第2の中央固定接点10aと第2の周辺固定接点10bとが電気的に遮断されオフ状態となる。
【0046】
この場合、上記第1クリックばね2の上面が押された時の操作荷重は、上記第3クリックばね4の上面が押された時の操作荷重に比較して、重く設定することができるため、5連結あるいは3連結等の複数のクリックばねを配置したクリックばね付きシートの、複数のスイッチのうちの所望のスイッチの操作感触を適宜変えることができるものとなっている。この場合、所望のスイッチと他のスイッチとの操作感触を明確に異ならせることができ、誤操作を防止できる。また、使用頻度の高いスイッチのクリックばねを積層する設定とすることもでき、長寿命化が図れる。
【0047】
図6のスイッチ装置の構成によれば、クリックばね付シートに貼着された第2クリックばね3の外周縁部3aが載置される周辺固定接点9bと、この周辺固定接点9bに隣接して配設され、第2クリックばね3のドーム状の膨出部3cの内面に設けられた接点部3eと接離可能に対向して配置された中央固定接点9aと、前記周辺固定接点9b、及び前記中央固定接点9aが配設された絶縁基板8とを備えたスイッチ装置としたことから、スイッチ装置を簡単に構成することができ、組み立てが容易であると共に、スイッチ装置の薄型化が図れるものとなっている。
【0048】
図7は、本発明のクリックばね付シートを一対の対向された接点部を有するスイッチ基台(例えば、メンブレンスイッチ等)に積層したスイッチ装置を示している。尚、この場合には、図7に示すように第2、及び第3クリックばね3、4の各膨出部3c、4cの内面には接点部(突部)は設けられておらず、第1、第2、第3クリックばね2、3、4で押圧操作時のクリック感触のみ得られるものとなっている。
【0049】
メンブレンスイッチ12は、図示しないスペーサにより一定の空間を有して対向して配設されたポリエステル樹脂等の絶縁性のフィルム材からなり、可撓性を有するシート状に形成された上シート13、及び下シート14からなり、上シート13、及び下シート14には、適宜位置に、対向して配設された接点部13a、14aが設けられている。
【0050】
前記メンブレンスイッチ12上に、上述したクリックばね付きシートが載置される際には、同じく剥離シート5が前記粘着シート1の粘着部(下面側)から剥離され、粘着シート1の粘着部によって粘着シート1が上シート13上に貼着されるものとなる。この時、前記第2クリックばね3、及び第3クリックばね4ののドーム状の膨出部3c、4cの下面と、前記接点部13a、14aとが対向された状態で配置されるものとなる。
【0051】
尚、上記構成のスイッチ装置の動作を説明すると、初期の状態では前記各接点部13aと14aは非導通でスイッチはオフ状態となっている。ここで、図示しない電子機器などの操作部11で粘着シート1の上面側が押圧されると、まず、第1クリックばね2の上面が押されたときには、ドーム状の膨出部2cが下側に押され、これと共に重合された第2クリックばね3の膨出部3cも同時に下側に押されて、一緒に反転するものとなり、この反転によって第2クリックばね3の膨出部3cの下面が上シート13を押圧して下方に撓むことにより、接点部13aと下シート14に対向して配置された接点部14aとが接触して、電気的に導通されオン状態となり信号が出力されるものとなる。
【0052】
次に、上記状態から、前記粘着シート1の押圧が解除されると、第1及び第2クリックばね2、3が自身のばね力で上方向へ反転し、この反転によって上シート13が自身が有する可撓性により上方へ復帰し、接点部13aが14aから離間して、電気的に遮断されオフ状態となる。
尚、第3クリックばね4の上面が押されたときにも、同様な動作となるためここでは説明を省略する。
【0053】
この場合においても、上記第1クリックばね2の上面が押された時の操作荷重は、上記第3クリックばね4の上面が押された時の操作荷重に比較して、重く設定することができるため、5連結あるいは3連結等の複数のクリックばねを配置したクリックばね付きシートの、複数のスイッチのうちの所望のスイッチの操作感触を適宜変えることができ長寿命化できるものとなっている。
【0054】
図7のスイッチ装置の構成によれば、クリックばね付きシートが積層されると共に、少なくとも第2クリックばね3の下方に配置される一対の対向された接点部13a、14aを有するスイッチ基台(メンブレンスイッチ)とを備えたスイッチ装置としたことから、スイッチ基台を共通として、クリック付きシートの操作荷重を適宜変えることができるので、所望のスイッチの操作感触を容易に得ることができ長寿命化できるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の5連結時のクリックばね付シートのクリックばねを示す斜視図である。
【図2】本発明の3連結時のクリックばね付シートのクリックばねを示す斜視図である。
【図3】本発明の5連結及び3連結時のクリックばね付シートを示す断面図である。
【図4】本発明の単キー積層時のクリックばね付シートのクリックばねを示す斜視図である。
【図5】本発明の単キー積層時のクリックばね付シートのクリックばねの他の実施例を示す斜視図である。
【図6】本発明のクリックばね付シートをスイッチ基台の固定接点上に積層したスイッチ装置を示す斜視図である。
【図7】本発明のクリックばね付シートを一対の対向された接点部を有するスイッチ基台に積層したスイッチ装置を示す断面図である。
【図8】従来のクリックばね付シートの分解斜視図である。
【図9】従来のクリックばね付シートを用いたスイッチ装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1:粘着シート
2:第1クリックばね
2a:外周縁部
2b:スカート部
2c:膨出部
3:第2クリックばね
3a:外周縁部
3b:スカート部
3c:膨出部
3d:桟部
3e:突部(接点部)
4:第3クリックばね
4a:外周縁部
4b:スカート部
4c:膨出部
4d:突部(接点部)
5:剥離シート
6:第2クリックばね
6a:外周縁部
6b:スカート部
6c:膨出部
6d:桟部
6e:接点部
6f:貫通孔
7:固着板
8:絶縁基板
9:第1の固定接点
9a:中央固定接点
9b:周辺固定接点
10:第2の固定接点
10a:中央固定接点
10b:周辺固定接点
11:操作部
12:メンブレンスイッチ
13:上シート
13a:接点部
14:下シート
14a:接点部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性フィルムからなり下面に粘着剤が設けられた粘着シートと、この粘着シートの下面側に貼着された第1クリックばねと、この第1クリックばねの下側に積層された第2クリックばねとを備え、前記第2クリックばねには、前記第1クリックばねの外周縁部よりも外方へ延出する固着板を設け、この固着板で前記第2クリックばねを前記粘着シートの下面側に貼着したことを特徴とするクリックばね付きシート。
【請求項2】
前記第1及び第2クリックばねは、外周縁部から所定の角度で立ち上がるスカート部と、このスカート部に連設する反転可能なドーム状の膨出部とを有し、前記外周縁部に前記固着板を延出して形成したことを特徴とする請求項1記載のクリックばね付きシート。
【請求項3】
前記固着板を、反転可能なドーム状の膨出部を有するクリックばねで形成し、該クリックばねを前記第1及び第2のクリックばねとは独立して作動する第3クリックばねとしたことを特徴とする請求項1、又は2記載のクリックばね付きシート。
【請求項4】
前記粘着シートには、積層されて貼着された前記第1及び第2クリックばねを挟んで両脇に、1枚のクリックばねからなる前記第3クリックばねを配置したことを特徴とする請求項3記載のクリックばね付きシート。
【請求項5】
前記第2クリックばねと前記第3クリックばねとを平面状に3個連結して一体的に形成したことを特徴とする請求項4記載のクリックばね付きシート。
【請求項6】
前記第2クリックばねには、前記膨出部の内面に固定接点と接触可能な接点部を形成したことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のクリックばね付きシート。
【請求項7】
前記接点部を、前記膨出部の内面に設けられた突部で形成したことを特徴とする請求項6記載のクリックばね付きシート。
【請求項8】
請求項1乃至5の何れかに記載のクリックばね付きシートと、このクリックばね付きシートが積層されると共に、少なくとも前記第2クリックばねの下方に配置される一対の対向された接点部を有するスイッチ基台とを備えたことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項9】
請求項6、又は7記載のクリックばね付シートと、このクリックばね付シートに貼着された前記第2クリックばねの外周縁部が載置される周辺固定接点と、この周辺固定接点に隣接して配設され、前記第2クリックばねのドーム状の膨出部の内面に設けられた前記接点部と接離可能に対向して配置された中央固定接点と、前記周辺固定接点、及び前記中央固定接点が配設された絶縁基板とを備えたことを特徴とするスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−164551(P2006−164551A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349765(P2004−349765)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】