説明

クリック装置

【課題】カーエアコンなどの車載用制御装置の回転操作部等に用いられるクリック装置に関し、明確なクリック感触と大きなクリック節度を備えたものを提供することを目的とする。
【解決手段】中ケース22を介して対向した下ケース21と上ケース23の間に回転可能に保持された回転体24のフランジ部24Aの上下両面に、内周側と外周側の同心円周上それぞれの点対称な位置に内側凹凸部25、外側凹凸部26を設けたものとし、そして、上面視略二重リング状をしたクリックバネ27の内側弾接突起27Cと外側弾接突起27Dが、フランジ部24Aの上下両面のそれぞれ対応した内側凹凸部25と外側凹凸部26の各々に弾接するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーエアコンなどの車載用制御装置の回転操作部に用いられ、回転操作によりクリック感を発生するクリック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーエアコンなどの車載用制御装置の回転操作部には、操作性と操作後の設定位置がずれないようにクリック付き回転操作型電子部品が主として使用されており、振動等によるずれ防止や誤操作防止のために大きなクリック節度を有するものが要望されている。
【0003】
このようなクリック付き回転操作型電子部品に用いられる従来のクリック装置について、図20、図21を用いて説明する。
【0004】
図20は従来のクリック装置の断面図、図21は従来の他の形態のクリック装置の断面図である。
【0005】
図20において、1は下面開口のケースで、その中央から上方に突出した円筒状の軸受部1Aを備えており、その軸受部1Aには貫通孔1Bが設けられている。2は上記軸受部1Aの貫通孔1Bに回転可能に挿通された軸部2Aを有し、下方のフランジ部2Bが上記ケースの開口部内に位置した回転体で、上記フランジ部2Bの上面に内側凹凸部2Cと外側凹凸部2Dが円周上に形成されている。3は中央孔3Aを備えた蓋板で、その中央孔3Aに上記回転体2のフランジ部2Bから下方に突出した支持部2Eが回転可能に嵌め込まれ、上記ケース1の開口部下面を塞いでいる。4は金属板からなるカバーで、中孔4Aからケース1の軸受部1Aを上方に突出させ、ケース1の側壁を抱くように配されており、下方の端部が上記蓋板3を下方から押さえるように曲げかしめされている。
【0006】
そして、5はケース1の開口天面に固定されたリング状のクリックバネで、その対向する両側の円弧状部分が下方に折り曲げられており、曲げられた先端までの長さが長い方が第1バネ部5Aで、短い方が第2バネ部5Bとなされている。この第1バネ部5Aの先端は、上記回転体2のフランジ部2Bに設けられた外側凹凸部2Dに弾接しており、第2バネ部5Bの先端は、内側凹凸部2Cに弾接してクリック装置が構成されている。
【0007】
以上の構成において、回転体2の軸部2Aを回転操作すると、回転体2は、ケース1の軸受部1Aで軸部2Aが支持され、蓋板3の中央孔3Aで支持部2Eが支持されて回転する。この回転体2の回転により、フランジ部2B上面に弾接したクリックバネ5の第1バネ部5Aが、外側凹凸部2D上を摺動し、第2バネ部5Bが、内側凹凸部2C上を摺動することによって、クリック節度が生じる。
【0008】
このクリック装置は、第1バネ部5Aと第2バネ部5Bの2つを備えているので、フランジ部2Bの外側凹凸部2Dと内側凹凸部2Cの凹部と凸部の回転中心からの配置角度を同じにすれば、クリック節度は強いものが得られる。また、逆に、外側凹凸部2Dと内側凹凸部2Cの凹部と凸部の回転中心からの配置角度を1/2ずらした状態に配置すると、クリック節度は弱くなるが、クリック数を2倍にすることができる。
【0009】
次に、図21に示したクリック装置について説明する。
【0010】
このクリック装置は、図20に示したクリック装置のクリックバネの配置位置が異なる構成のものである。
【0011】
つまり、ケース11の下面開口部内に回転体12のフランジ部12Bが位置し、軸部12Aがケース11の軸受部11Aに回転可能に挿通されると共に、下方の支持部12Dが蓋板13の中央孔13Aに支持されており、カバー14がケース11を抱えるように曲げかしめされて、全体を組み合わせていることは同様であるが、リング状のクリックバネ15が蓋板13に固定されており、クリックバネ15の円弧状の両側がそれぞれ上方に向けて曲げられて第1バネ部15Aと第2バネ部15Bそれぞれの端部が回転体12のフランジ部12B下面に設けられた凹凸部12Cに弾接して構成されている。
【0012】
この構成のクリック装置は、第1バネ部15Aと第2バネ部15Bが同じ長さで曲げ形成されており、フランジ部12B下面に設けられた同じ凹凸部12C上を弾接摺動するものである。
【0013】
したがって、図21に示したように、フランジ部12B下面の凹凸部12Cの凹部と凸部が回転中心に対して対向する位置関係に形成されたものであると、クリック数が多く得られ、凹部と凸部が回転中心に対して同じ位置関係であるとクリック節度の強いクリック装置となる。
【0014】
この図21の形態のクリック装置についての動作は、図20のものと同様であるので、説明を省略する。
【0015】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、特許文献2が知られている。
【特許文献1】特開平9−63812号公報
【特許文献2】特開平8−222413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら上記従来のクリック装置においては、クリックバネ5、15の弾接力を受けた回転体2、12が回転すると、支持部材(図20の場合は、蓋板3の中央孔3A周囲上面であり、図21の場合は、ケース11の軸受部11A下面)との間で摩擦が発生するが、使用される機器の要望にあわせてクリック節度を大きくするためにクリックバネ5、15からの弾接力を大きくすると、回転体2、12が支持部材に与える圧力も大きくなり、その間の摩擦が大きくなって、明確なクリック感触が得られ難くなるという課題があった。
【0017】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、明確なクリック感触を確保し、かつ大きなクリック節度が得られるクリック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0019】
本発明の請求項1に記載の発明は、中孔を有した下ケースと、中央孔を有し、中空の中ケースを介して上記下ケースに対向配置された上ケースと、上面に、内側凹凸部と外側凹凸部が同心の円周上に凸凹関係を合わせて設けられ、かつ下面にも、上記上面と面対称な位置に上記内側凹凸部と上記外側凹凸部のそれぞれが同様に設けられたフランジ部が上記中ケースの中空部内に位置し、そのフランジ部の中央から下方に突出した支持部が上記下ケースの中孔に支持されると共に、上記中央から上方に突出した操作部が上記上ケースの中央孔に支持されて回転可能になされた回転体と、上記内側凹凸部上を弾接摺動する180度対向した2つの内側弾接突起と上記外側凹凸部上を弾接摺動する180度対向した2つの外側弾接突起を備えた弾性金属板からなる同じ2つのクリックバネが上記上ケース下面と上記下ケース上面のそれぞれに対向状態に取り付けられて構成され、上記操作部を回転操作すると、上記フランジ部上面と下面の上記内側凹凸部上と上記外側凹凸部上を上記クリックバネの2つの内側弾接突起と2つの外側弾接突起がそれぞれ弾接摺動してクリック節度を生じるクリック装置としたものであり、回転体の回転中心に対称で、かつフランジ部の上下両面の対称位置に同じクリックバネが弾接しているため、クリックバネからの弾接力がバランス良くフランジ部に加わる状態にでき、クリックバネの圧力による回転体と上ケース、下ケースとの間の摩擦の影響が殆どなく、また回転体の回転にこじりなどが生じないので、明確なクリック感触を発生させることができる。さらに、クリックバネの弾接する箇所を8箇所としたので、大きなクリック節度が得られるクリック装置を提供することができるという作用を有する。
【0020】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、回転体のフランジ部に設けられた外側凹凸部において、所定の角度範囲におよぶように凹部が設けられ、クリックバネの外側弾接突起が上記角度範囲内に位置する際に、上記外側弾接突起の外周側に延設された延設部が中ケースの受け部に当接して、上記外側弾接突起が上記角度範囲の領域では凹部面から浮いた状態となり、上記角度範囲内でクリック節度が弱くなるように構成したものであり、凹凸部の傾斜角度変更では難しいクリック節度の大きな変化を容易に実現することができるという作用を有する。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の発明において、回転体のフランジ部に設けられた凹凸部の隣り合う凸部と凹部の間で構成される傾斜面において、少なくとも一つの傾斜面を他の傾斜面と異なる傾きにしたものであり、クリック節度の強弱を回転方向による指定も含めて、任意の位置で設定することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によれば、回転体のフランジ部の上下両面の同じ位置にクリックバネの圧力がバランス良く加わるので、回転体の傾きが生じることがなく、またクリックバネの圧力も上下両面で8箇所にそれぞれ加わるため、回転体と支持部材との間の摩擦を増大させることがなく、明確なクリック感触と大きなクリック節度を備えたクリック装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図19を用いて説明する。
【0024】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるクリック装置の断面図、図2は同クリック装置の中ケースの外観図、図3は同クリック装置の回転体の平面図、図4は同クリック装置のクリックバネの平面図、図5は図3中のA−A断面図、図6は図3中のB−B断面図である。
【0025】
図1において、21は中央に円形の中孔21Aを有した略四角形の平板状の下ケース、22はその下ケース21の上に位置し、円形の中空部22Aを有し略四角形の枠状に形成された中ケースで、図2に示すように、円形の中空部22Aを形成する内壁に所定角度範囲で内側に突出した係止部22Bが備えられ、枠状の対向する2辺の上下両面には所定幅で同じ深さの窪み部22Cがそれぞれ設けられている。23は上記中ケース22を介して下ケース21に対向するように位置され、その平板部23Aの中央から、円形の貫通孔23Cを有した円筒状の軸受部23Bが上方に突出形成された上ケースである。
【0026】
そして、24は回転体で、上記中ケース22の中空部22Aにフランジ部24Aが位置され、そのフランジ部24Aの中央から下方向に突出した支持部24Bが下ケース21の中孔21Aに回転可能に嵌合支持され、フランジ部24Aの中央から上方向に突出した軸部24Cが上ケース23の軸受部23Bの貫通孔23Cに回転可能に挿通されて、先端が操作部24Dとして貫通孔23Cから上方に突出している。
【0027】
この回転体24のフランジ部24Aの外縁部は、図3に示すように、所定の角度範囲が切り欠かれた形状となっている。そして、その切り欠かれた部分に上記中ケース22の係止部22Bが位置するように組み合わされることにより、回転体24は所定の回転角度範囲で回転可能となっている。本実施の形態では、回転体24の回転角度範囲は100度に設定している。
【0028】
そして、このフランジ部24Aには、同心円周上の内周側と外周側それぞれに凹凸部が設けられており、それら内周側と外周側それぞれの凹凸部は、回転中心に点対称な位置で、かつ上記回転角度範囲と同じ角度範囲で設けられている。さらに、それらはフランジ部24Aの上下両面に設けられており、上面の凹凸部と下面の凹凸部とは、フランジ部24Aの厚み中心の水平面に面対称な位置関係で設けられている。
【0029】
つまり、このフランジ部24Aに設けられた凹凸部は、上面において、同じ角度範囲の内周と外周に近接して配され、かつそれぞれは点対称位置の4箇所に設けられ、下面においても同様に、同じ角度範囲の内周と外周で、かつ点対称位置の4箇所に設けられて、全部で8箇所に設けられており、それらは、回転中心に点対称で、フランジ部24Aの上下で面対称となっている。
【0030】
そして、27は弾性金属板からなるクリックバネで、図4に示すように、上面視略二重リング状をしており、180度対向した位置の2箇所が連結部27Aで繋がった平板状の取り付け部27Bとなり、その取り付け部27Bで下ケース21と上ケース23の対向する面それぞれに向かい合って固定されている。
【0031】
そして、その取り付け部27Bを挟むように内側、外側のリング状部分の両側部それぞれが対向する方向に曲げ起こされて、その曲げ起こされた先端部には、内側弾接突起27Cと外側弾接突起27Dがそれぞれ設けられている。これらの内側弾接突起27Cは、上記回転体24のフランジ部24A上下面の内側凹凸部25に弾接し、また、これらの外側弾接突起27Dは、フランジ部24A上下面の外側凹凸部26に弾接するものとしている。
【0032】
また、外側のリング状部の2箇所の外側弾接突起27Dの外側を囲むようにその両側から外周側に延設部27Eがそれぞれ延設されており、この延設部27Eの方向は、上記中ケース22の窪み部22Cの方向に合わせて組み合わされている。
【0033】
なお、上記各弾接突起27C、27Dは、クリックバネ27の材料である弾性金属板を凸状に突き出し加工により形成しても良いが、本実施の形態の各弾接突起27C、27Dは、絶縁樹脂をクリックバネ27にアウトサート成形して弾接面を滑らかな球面状にそれぞれ形成したものとしており、これによりクリック感触の向上が図れる。
【0034】
そして、28は上ケース23の平板部23A上に載置された金属板からなるカバーで、中央孔28Aから上ケース23の軸受部23Bを上方に突出させて、上ケース23の両側部から下方に向いた脚部28Bの先端部が下ケース21下面に向けて曲げ加工されて、全体を抱え込むように取り付けられている。
【0035】
ここで、上記回転体24のフランジ部24Aの上下面に設けられた8箇所の凹凸部についての形状説明をするが、上述したことからも判るように、それぞれの内側凹凸部25と外側凹凸部26は全て同じ形状で形成されており、このため、図3において下方側に図示した上面側の内側凹凸部25と外側凹凸部26の1箇所ずつを代表とし、以下にその形状を、図3に加え図5および図6を用いて説明することとする。
【0036】
まず、図3や図5からわかるように、内側凹凸部25の凹部は連続して6箇所設けられ、図5における左端が第1凹部25Aで右に向かって順次第2凹部25B、第3凹部25C、第4凹部25D、第5凹部25E、第6凹部25Fで、凹部間が凸部となっている。なお、後述するが、第2凹部25Bと第3凹部25Cとの間の凸部のみその傾斜面の傾きが異なり、他の凹部間の凸部形状は同じ形状に形成されている。
【0037】
そして、第1凹部25Aの最深部と第6凹部25Fの最深部間の回転中心からの角度が、回転体24の回転角度範囲と同じ100度となり、第1凹部25Aから第6凹部25Fまでの各凹部間は、等間隔の20度で設けられている。
【0038】
そして、図3や図6からわかるように、外側凹凸部26は図5に示した内側凹凸部25の第2凹部25Bの最深部と第3凹部25Cの最深部との間で構成される凸部と同じ角度範囲に1つの外側凸部26Aが設けられ、その外側凸部26Aの両側は底部が平面状に長い凹部となされている。
【0039】
また、上述した第2凹部25B右側の傾斜面は、他の凹部の右側の傾斜面より緩やかな傾斜面に形成されており、逆に、第3凹部25Cの左側の傾斜面は、他の凹部の左側の傾斜面よりきつい傾斜面に形成されている。そして、この内側凹凸部25の第2凹部25Bと第3凹部25Cの間の凸部に対応している外側凹凸部26の外側凸部26Aも、上記説明の緩やかな傾斜面ときつい傾斜面に傾斜角度を合わせて形成されている。
【0040】
なお、図5、図6に示すように、回転体24のフランジ部24A下面の内側凹凸部25および外側凹凸部26は、フランジ部24Aの厚み中心の水平面に面対称な位置関係で同様に設けられている。
【0041】
以上のように構成されたクリック装置において、その動作を説明する。
【0042】
上記説明のように、回転体24のフランジ部24Aに設けられた凹凸部は、上下合わせて、内側凹凸部25が4箇所、外側凹凸部26が4箇所設けられ、そしてそれら凹凸部に対応して弾接するクリックバネ27の弾接突起も内側弾接突起27Cが4つ、外側弾接突起27Dが4つ設けられており、かつ点対称および面対称な位置関係であるので、動作の説明についても、それぞれ図5、図6の断面位置で示したフランジ部24Aの特に上面側の凹凸部で代表して行う。
【0043】
まず、図1の断面図に示す初期状態は、上ケース23の軸受部23Bから突出した軸部24C上方の操作部24Dを上面視反時計方向に回転(以下、CCW回転と言う)させて、回転体24のフランジ部24Aの切り欠かれた端部が中ケース22の係止部22Bに当接した状態である。
【0044】
この操作部24DをCCW回転の回し切り位置における回転体24と中ケース22の関係を示す上面図を図7に示す。また、内側弾接突起27Cと外側弾接突起27Dの位置それぞれを図中に破線で示している。
【0045】
この状態では、図8に示すようにクリックバネ27の内側弾接突起27Cは、回転体24フランジ部24Aの内側凹凸部25の第1凹部25Aに位置しているが、外側弾接突起27Dは、図9に示すように、外側凸部26A左側の底部が平面状に長い凹部の部分に位置しており、その凹部底面から浮いている。これは、図1に示すように、クリックバネ27の外側弾接突起27Dの外周を囲むように設けられた延設部27E下面が中ケース22の窪み部22C上面に当接して維持状態となっているためである。
【0046】
次に操作部24Dを上面視時計方向に回転(以下、CW回転と言う)させると、内側弾接突起27Cは第1凹部25Aの右側傾斜面を乗り越えて、第2凹部25Bの最深部に安定位置する。
【0047】
ここで、回転体24を回転させることで生じるクリック節度について、CW回転によるものと、CCW回転によるものとを区別するためにそれぞれCWクリック節度、CCWクリック節度と表現する。
【0048】
この内側弾接突起27Cが第2凹部25Bに至る過程で凸部を乗り越える際の感触がクリック感触となり、また、乗り越えるための操作部24Dに加える力がクリックトルクとなる。したがって、このクリック装置で発生するクリックトルクは、4箇所の内側凹凸部25でそれぞれ生じるクリックトルクの和(この実施例の場合は、4倍)がCW第1クリックトルクとなる。
【0049】
さらに、第2凹部25Bから第3凹部25Cに向けて操作部24Dを回転させると、図10、図11に示すように、内側弾接突起27Cが第2凹部25Bの右側の傾斜面を乗り越えるように動作すると共に、外側弾接突起27Dも傾斜面を上っていき、凸部の頂点部を乗り越えると、内側弾接突起27Cはそのばね圧力で急激に第3凹部25Cの最深部に至り、外側弾接突起27Dも同様に凸部の頂点部を乗り越えると右側の傾斜面を急激に下る。なお、外側弾接突起27Dは、その外周を囲むように設けられた延設部27Eが中ケース22の窪み部22C上面に弾接して保持された状態となる。
【0050】
この内側弾接突起27Cが第2凹部25Bの最深部から第3凹部25Cの最深部に移動すると共に、同時に外側弾接突起27Dが外側凸部26Aを乗り越える際に発生するCW第2クリックトルクは、全部で8箇所の弾接突起27C、27Dによって発生するため、CW第2クリックトルクは、CW第1クリックトルクより大きな値になるが、内側凹凸部25の第2凹部25Bの右側傾斜面および外側凹凸部26の外側凸部26Aの左側傾斜面は、上記CW第1クリックトルクと同じクリックトルクとなるように、傾斜面が緩やかに形成されている。そして、この緩やかな傾斜面に形成されていることによって、第2凹部25Bと第3凹部25Cの間の凸部の頂点部および外側凸部26Aの頂点部は、CW回転方向(図の右方向)にずれた位置になっている。
【0051】
さらに、操作部24DをCW回転させると、内側弾接突起27Cは、第3凹部25Cの最深部から第4凹部25Dの最深部に移動するが、外側弾接突起27Dは、外側凸部26A右側の底部が平面状に長い凹部の部分に位置して、その凹部底面から浮いている。これも上述のように、クリックバネ27の外側弾接突起27Dの外周を囲むように設けられた延設部27E下面が中ケース22の窪み部22C上面に弾接して保持された状態となっているためであり、以降のCW回転範囲ではこの状態が維持される。
【0052】
このCW回転におけるCW第3クリックトルクは、内側弾接突起27Cによる4つのクリックトルクの和であり、CW第1クリックトルクと同じ値である。
【0053】
そして、内側弾接突起27Cが第4凹部25Dの最深部から第5凹部25Eの最深部に移動する際の動作、さらには、第5凹部25Eの最深部から第6凹部25Fの最深部に移動する際の動作も同様であり、その動作で生じるCW第4クリックトルクおよびCW第5クリックトルクもCW第1クリックトルク、CW第3クリックトルクと同じ値であるので、詳細説明は省略する。
【0054】
この第6凹部25Fの最深部に内側弾接突起27Cが位置した図12〜図14に示す状態で、回転体24のフランジ部24Aの切り欠かれた端部が中ケース22の係止部22Bに当接し、これ以上CW回転しない状態に規制される。
【0055】
次に、図12〜図14に示すCW回転回し切りの状態から、回転体24の操作部24Dを逆方向のCCW回転を行うときについて説明する。
【0056】
このCCW回転の動作は、上記説明の逆の動作をし、まず、第6凹部25Fの最深部から第5凹部25Eの最深部に内側弾接突起27Cが移動することによりクリック感触が生じると共に、4つのクリックトルクの和であるCCW第1クリックトルクが生じる。このCCW第1クリックトルクは、第2凹部25B、第3凹部25Cを除く、第1凹部25A、第4凹部25D、第5凹部25E、第6凹部25Fが同じ形状であり、相互の間の凸部を構成する傾斜面も同じであるので、CW第5クリックトルク、CW第4クリックトルク、CW第3クリックトルク、CW第1クリックトルクと同じ値である。
【0057】
そこで、回転体24がCCW回転されて、内側弾接突起27Cが第5凹部25Eの最深部から第4凹部25Dの最深部に移動することによるCCW第2クリックトルク、同様に、第4凹部25Dの最深部から第3凹部25Cの最深部に移動することによるCCW第3クリックトルクそして第2凹部25Bの最深部から第1凹部25Aの最深部に移動することによるCCW第5クリックトルクは、それぞれの凹部間の傾斜面の条件が同じなので、それらのクリックトルクも同じ値が得られる。
【0058】
しかし、図15、図16に示す内側弾接突起27Cが第3凹部25Cの最深部から第2凹部25Bの最深部に移動する際は、傾斜面がきつい傾斜面となり、かつ同時に外側弾接突起27Dも外側凸部26Aの右側のきつい傾斜面を同様に乗り越える力も加わるため、CCW第4クリックトルクは大きな値となる。この実施の形態のものは、他のクリックトルクの約2倍のクリックトルクが得られるように形成している。
【0059】
つまり、他のクリックトルクを生じる箇所では、内側弾接突起27Cだけが凹部間の凸部を乗り越えるものであるので、全体として4つの内側弾接突起27Cによるクリックトルクの和であり、CCW第4クリックトルクは、4つの内側弾接突起27Cと4つの外側弾接突起27Dによる8つのクリックトルクの和として発生する。
【0060】
上記説明のCW回転操作時の各クリックトルクを縦軸とし、回転角度を横軸として、その関係をグラフにしたものが、図17であり、同様にCCW回転操作時の各クリックトルクと回転角度の関係をグラフにしたものが、図18である。
【0061】
図17、図18において、中央の横軸がクリックトルク値0を表しており、このクリックトルク値0状態は、内側弾接突起27Cが各凹部の最深部に安定位置している状態である。
【0062】
図17のグラフは、図中矢印のように左から右に向かって推移しており、まず、CW第1クリックトルクの部分を説明すると、回転体24のCW回転に伴って、内側弾接突起27Cが内側凹凸部25の第1凹部25Aの最深部から傾斜面を上っていくにしたがってクリックトルクが増加し、この傾斜面の頂点部を乗り越えるとクリックバネ27の弾接力により次の第2凹部25Bの左側の傾斜面を勢いよく下るため、図中のマイナス側に表れている逆向きのトルクが瞬間的に生じた後に第2凹部25Bの最深部で安定位置する。
【0063】
そして、さらに回転体24を回転すると内側弾接突起27Cは第2凹部25Bの右側の傾斜面を上っていくと共に、外側弾接突起27Dが外側凸部26Aの左側の傾斜面を上っていく。そのため、クリックトルクに影響する弾接突起27C、27Dがフランジ部24A凹凸面に弾接する箇所は8箇所となる。
【0064】
しかし、上述のようにクリックトルクが他と同じクリックトルクになるように、弾接突起27C、27Dが弾接する傾斜面を緩やかな傾斜面としているので、CW回転における各クリックトルクが同じ値で5箇所のクリック節度が得られる。なお、第3凹部25Cの左側の傾斜面と外側凸部26Aの右側の傾斜面は急勾配であるため、CW第2クリックトルクのピーク発生直後にマイナス側に表れている逆向きのトルクも瞬間的に大きなものが生じる。また、CW第3クリックトルク〜CW第5クリックトルクは、上記CW第1クリックトルクと同じ動作をするので、同じ変化グラフとなる。
【0065】
次に、図18のグラフについて説明する。この図では図中の矢印で示すように、クリックトルクは右から左に向かって推移している。
【0066】
まず、CW回転の回し切り状態から回転体24をCCW回転させると、内側凹凸部25の第6凹部25Fの最深部からその左側の傾斜面を内側弾接突起27Cが上っていき、CCW第1クリックトルクが得られる。そして、さらに回転させると同じ大きさのCCW第2クリックトルクおよびCCW第3クリックトルクが続いて得られる。それらのCCW第1クリックトルクからCCW第3クリックトルクまでは、CW第5クリックトルクからCW第3クリックトルクまでと同じであるので説明を省略する。
【0067】
そして、図15に示す内側弾接突起27Cが第3凹部25Cの最深部からその左側の傾斜面を上っていくように、回転体24の操作部24DをCCW回転させると、きつい傾斜面によってクリックトルクが大きなものになり、さらに図16に示す外側弾接突起27Dも同時に外側凸部26Aの右側のきつい傾斜面を上っていくので大きなクリックトルクが発生する。
【0068】
そして、最後に、内側弾接突起27Cが第2凹部25Bの最深部を脱出して第1凹部25Aの最深部に至る際に、CCW第5クリックトルクが発生するが、このCCW第5クリックトルクは、CCW第1クリックトルクなどと同じ大きさである。
【0069】
以上のように本実施の形態によれば、回転体24のフランジ部24Aの上下両面の面対称な位置に同じ構成のクリックバネ27それぞれの弾接突起27C、27Dを弾接させた構成であるため、クリックバネ27からの弾接力が加わっていても回転体24が上下方向で中立した状態となってバランスがとれ、回転体24が傾くような状態で回転することがないため、明確なクリック感触を得ることができる。
【0070】
さらに、回転体24のフランジ部24Aには、内周側に内側凹凸部25とその外周側に外側凹凸部26が設けられ、かつそれらが面対称に上下両面に設けられたものであり、クリックバネ27の4つの弾接突起27C、27Dのうち上記内側凹凸部25の180度対向位置に2つの内側弾接突起27Cが弾接し、上記外側凹凸部26の180度対向位置に残りの2つの外側弾接突起27Dが弾接して、全部で8つの弾接突起27C、27Dにより、クリックトルクを発生するため、従来になく大きなクリック節度を得ることができる。
【0071】
また、フランジ部24Aの4箇所の外側凹凸部26の凹部を所望の角度範囲で円周上に長い凹部とし、その角度範囲では、クリックバネ27の外側弾接突起27Dの外周を囲む延設部27Eが中ケース22の窪み部22Cに当接保持されて4箇所の外側弾接突起27Dがフランジ部24A上に弾接しない構成としたので、凹凸部の傾斜角度の変更では難しいクリック節度の大きな変化を容易に実現することができる。
【0072】
なお、本実施の形態では、4箇所の外側弾接突起27Dすべてが当接保持されるようにしたが、1箇所から4箇所までの任意の箇所で実施しても良い。
【0073】
さらに、8箇所の弾接突起27C、27Dが作用する内側凹凸部25の第2凹部25Bの右側の傾斜面とその傾斜面に対応する外側凹凸部26に設けた外側凸部26Aの左側の傾斜面を緩やかな傾斜にし、第3凹部25Cの左側の傾斜面と外側凸部26Aの右側の傾斜面をきつい傾斜にしたので、全体でCW回転時のクリックトルクはどの位置でも同じ値であり、CCW回転時のクリックトルクは、他の位置の約2倍のクリックトルクが得られるものにできる。
【0074】
つまり、少なくとも一つの傾斜面を他の傾斜面と異なる傾きにすることで、クリック節度の強弱を一方の回転方向では同じで、他方の回転方向では異なるように差を設けることができ、また任意の位置で設定することができる。本実施の形態であれば、傾斜角度の変更に加えて、凹凸部に作用する弾接突起27C、27Dの数の変更も併せて行っているため、回転方向によるクリック節度の強弱の差を大きく変化させることができる。
【0075】
なお、図19は本願発明のクリック装置を備えた回転操作型電子部品であり、回転操作型電子部品30の本体機能部は、その輪郭を破線で示しており、中央に位置した筐体31から下方に向けて外部接続用の端子33が設けられ、また、その筐体31の上方中央部から回転軸32が突出している。
【0076】
そして、クリック装置については、上述したものと同様であるが、下ケース21の中孔21Aに保持された回転体29の支持部29Bに係止用孔29Aが設けられたものとしており、その係止用孔29Aに上記回転操作型電子部品30の回転軸32が挿入係止されて組み合わせられており、クリック装置の上ケース23の軸受部23Bから上方に突出した回転体29の操作部29Dを回転操作すると、上述のようなクリック節度が得られると共に、所定の回転位置において、所定の電気信号が端子33から出力されるものである。
【0077】
このような構成にすることにより、搭載される電子機器の機能に応じてCW回転およびCCW回転における、従来にない大きなクリック節度を実現したり、所望のクリック位置でクリック節度の強弱を設けたりすることができる。
【0078】
例えば、車のライト関連の設定用、エアコンの温度設定用などで、無意識に操作しても、途中の基準となる位置で一旦止まるように、クリック節度を極端に大きくすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によるクリック装置は、複数のクリックバネの圧力が回転体のフランジ部の上下両面の同じ位置に同じ圧力で加わるので、バネ圧力のバランスがとれて回転体の傾きが生じないため、明確なクリック感触が得られると共に、クリックバネの弾接箇所が8箇所でそれぞれ加わるので、大きなクリック節度を備えたクリック装置を実現することができるという特徴を有し、カーエアコンなどの車載用制御装置の回転操作部等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施の形態によるクリック装置の断面図
【図2】同クリック装置の中ケースの外観図
【図3】同クリック装置の回転体の平面図
【図4】同クリック装置のクリックバネの平面図
【図5】図3中のA−A断面図
【図6】図3中のB−B断面図
【図7】CCW回転の回し切り位置における回転体と中ケースの上面図
【図8】図7の位置における内側凹凸部の断面図
【図9】図7の位置における外側凹凸部の断面図
【図10】内側弾接突起の動作を説明する断面図
【図11】外側弾接突起の動作を説明する断面図
【図12】CW回転の回し切り位置における回転体と中ケースの上面図
【図13】図12の位置における内側凹凸部と内側弾接突起の関係断面図
【図14】図12の位置における外側凹凸部と外側弾接突起の関係断面図
【図15】内側弾接突起が第3凹部に位置している状態の断面図
【図16】図15の状態における外側弾接突起の断面図
【図17】CW回転操作時のクリックトルクのグラフ
【図18】CCW回転操作時のクリックトルクのグラフ
【図19】本発明の一実施の形態によるクリック装置を備えた回転操作型電子部品の構成概略図
【図20】従来のクリック装置の断面図
【図21】従来の他の形態のクリック装置の断面図
【符号の説明】
【0081】
21 下ケース
21A 中孔
22 中ケース
22A 中空部
22B 係止部
22C 窪み部
23 上ケース
23A 平板部
23B 軸受部
23C 貫通孔
24、29 回転体
24A フランジ部
24B、29B 支持部
24C 軸部
24D、29D 操作部
25 内側凹凸部
25A 第1凹部
25B 第2凹部
25C 第3凹部
25D 第4凹部
25E 第5凹部
25F 第6凹部
26 外側凹凸部
26A 外側凸部
27 クリックバネ
27A 連結部
27B 取り付け部
27C 内側弾接突起
27D 外側弾接突起
27E 延設部
28 カバー
28A 中央孔
28B 脚部
29A 係止用孔
30 回転操作型電子部品
31 筐体
32 回転軸
33 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中孔を有した下ケースと、中央孔を有し、中空の中ケースを介して上記下ケースに対向配置された上ケースと、上面に、内側凹凸部と外側凹凸部が同心の円周上に凸凹関係を合わせて設けられ、かつ下面にも、上記上面と面対称な位置に上記内側凹凸部と上記外側凹凸部のそれぞれが同様に設けられたフランジ部が上記中ケースの中空部内に位置し、そのフランジ部の中央から下方に突出した支持部が上記下ケースの中孔に支持されると共に、上記中央から上方に突出した操作部が上記上ケースの中央孔に支持されて回転可能になされた回転体と、上記内側凹凸部上を弾接摺動する180度対向した2つの内側弾接突起と上記外側凹凸部上を弾接摺動する180度対向した2つの外側弾接突起を備えた弾性金属板からなる同じ2つのクリックバネが上記上ケース下面と上記下ケース上面のそれぞれに対向状態に取り付けられて構成され、上記操作部を回転操作すると、上記フランジ部上面と下面の上記内側凹凸部上と上記外側凹凸部上を上記クリックバネの2つの内側弾接突起と2つの外側弾接突起がそれぞれ弾接摺動してクリック節度を生じるクリック装置。
【請求項2】
回転体のフランジ部に設けられた外側凹凸部において、所定の角度範囲におよぶように凹部が設けられ、クリックバネの外側弾接突起が上記角度範囲内に位置する際に、上記外側弾接突起の外周側に延設された延設部が中ケースの受け部に当接して、上記外側弾接突起が上記角度範囲の領域では凹部面から浮いた状態となり、上記角度範囲内でクリック節度が弱くなるように構成した請求項1記載のクリック装置。
【請求項3】
回転体のフランジ部に設けられた凹凸部の隣り合う凸部と凹部の間で構成される傾斜面において、少なくとも一つの傾斜面を他の傾斜面と異なる傾きにした請求項1記載のクリック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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