クリップ
【課題】略同一の形状および幅寸法で幅広い種類の対象物を数多く挟み留めることができるとともに、挟み留めるべき対象物の種類やその数にかかわらず挟持力を略一定に保つことができる抜き差しし易い安価なクリップを提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るクリップ1は、挟み留めるべき対象物20を複数の付勢部4,5からの分散挟圧によって所定の支持点P1,P2,P3で支持する。付勢部4は折り返し部で形成し、もう1つの付勢部5は蛇腹状の山部で形成することができる。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るクリップ1は、挟み留めるべき対象物20を複数の付勢部4,5からの分散挟圧によって所定の支持点P1,P2,P3で支持する。付勢部4は折り返し部で形成し、もう1つの付勢部5は蛇腹状の山部で形成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、ファイル、メジャー、ペンなどを含む対象物を抜き差し自在に挟み留めるためのクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特に紙やファイルなどを束ねて挟み留めるためのクリップは良く知られている。そのようなクリップは、様々な構造・形態のものが数多く提案されているが、一般的には、一対の挟持部を拡開させることにより、それらの挟持部間に対象物を挟み留めるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−139057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来から市場に提供されてきたクリップは、一般に、挟み留めるべき対象物や数に応じて、形状、幅、機構等がある程度異なっていた。すなわち、例えば枚数の多い紙束や厚手の硬質ファイルなどの対象物を挟み留めるためには、幅の大きい挟持力の強いクリップが使用され、一方、枚数の少ない紙束や薄手の軟質なファイルなどの対象物を挟み留めるためには、幅の小さい挟持力の弱いクリップが使用されている。
【0005】
また、従来のクリップでは、その機構や形状等に起因して、1つ(1種類)のクリップ毎に、拡開度合いに限度があり、したがって、挟み留めることができる対象物の数も限られていた。また、この場合、挟み留める対象物の数が増大すればするほど、挟持力も必然的に大きくなり、したがって、挟み込んでいる対象物を局所的に過度に圧迫して傷付けてしまう場合もあった。また、挟み留める対象物の数が増大すればするほど、クリップを拡開するために必要な力も大きくなり、クリップに対する対象物の抜き差しが困難となる場合もあった。
【0006】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、略同一の形状および幅寸法で幅広い種類の対象物を数多く挟み留めることができるとともに、挟み留めるべき対象物の種類やその数にかかわらず挟持力を略一定に保つことができる抜き差しし易い安価なクリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、対象物を抜き差し自在に挟み留めるためのクリップであって、挟み留めるべき対象物を複数の付勢部からの分散挟圧によって所定の支持点で支持することを特徴とする。
【0008】
この請求項1に記載の発明によれば、複数の付勢部からの分散挟圧によって対象物を挟み留めるための挟持力が分散されるため、挟み込んでいる対象物を局所的に過度に圧迫して傷付けてしまうことがなく、クリップに対する対象物の抜き差しがし易くなるとともに、挟み留めるべき対象物の種類やその数にかかわらず挟持力を略一定に保つことができる。また、複数の付勢部によって対象物を支持点に対して押し付けて支持するため、安定した挟持力を得ることができ、同じ形状で幅広い用途に適用できるとともに、クリップ材料の材質によって機能が大きく左右されない。そのため、金属や樹脂を含む様々な材料によってクリップを形成することができる(例えば、リサイクル回収が容易であるため、リサイクル材で安価に製造(再生)できる)とともに、略同一の形状および幅寸法であっても幅広い種類の対象物を数多く挟み留めることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、板材を略U字状に折り返すことにより形成されるクリップ本体と、前記クリップ本体を形成し、前記付勢部によって閉じる方向に付勢される拡開可能な一対の脚部とを有し、前記付勢部は、前記脚部の一部を蛇腹状に屈曲形成して成るバネ力を付与する第1のバネ付勢部と、前記クリップ本体の折り返し部によって形成されるバネ力を付与する第2のバネ付勢部とを有するとともに、第1および第2のバネ付勢部によって一対の脚部を閉じる方向に付勢することにより、挟み留めるべき対象物が対向する両方の脚部上の複数の異なる支持点に対して付勢されて支持されるようにすることを特徴とする。
【0010】
この請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、第1および第2のバネ付勢部によって一対の脚部を閉じる方向に付勢することにより、対向する両方の脚部上の複数の異なる支持点で対象物を支持するため、挟み留めることができる対象物の数を多く設定するべく脚部同士の開口幅(対象物を一対の脚部間に導入するために一対の脚部端に形成される導入開口の幅)をある程度大きくても、あるいは、挟持空間の幅をある程度大きくても、対象物を確実且つ安定に挟持できる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、対象物を抜き差し自在に挟み留めるためのクリップであって、請求項1または請求項2に記載の複数のクリップが分離自在に結合されて成ることを特徴とする。
【0012】
この請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、様々な幅の対象物を同時に混在した状態で挟み留めることができるとともに、状況に応じて分離して個別に使用することもでき、状況に応じた使い分けをすることができ、機能性および適応性に優れる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、略同一の形状および幅寸法で幅広い種類の対象物を数多く挟み留めることができるとともに、挟み留めるべき対象物の種類やその数にかかわらず挟持力を略一定に保つことができる抜き差しし易い安価なクリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るクリップを示しており、(a)はクリップの平面図、(b)はクリップの側面図、(c)はクリップの正面図である。
【図2】図1のクリップの作用を説明するための斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るクリップを示しており、(a)はクリップの平面図、(b)はクリップの側面図、(c)はクリップの正面図である。
【図4】図3のクリップの作用を説明するための斜視図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るクリップを示しており、(a)はクリップの平面図、(b)はクリップの側面図、(c)はクリップの正面図である。
【図6】図5のクリップの作用を説明するための斜視図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るクリップを示しており、(a)はクリップの平面図、(b)はクリップの側面図、(c)はクリップの正面図である。
【図8】図7のクリップの作用を説明するための斜視図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係るクリップを示しており、(a)はクリップの平面図、(b)はクリップの側面図、(c)はクリップの正面図である。
【図10】図9のクリップの作用を説明するための斜視図である。
【図11】本発明の第6の実施形態に係るクリップを示しており、(a)はクリップの斜視図、(b)はクリップに対象物及び紐状部材が保持された状態を示す斜視図である。
【図12】本実施形態に係るクリップの側面図である。
【図13】本実施形態に係るクリップの使用例を説明するための正面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1および図2は本発明の第1の実施形態に係るクリップ1を示している。図示のように、本実施形態のクリップ1は、挟み留めるべき紙やファイルなどの対象物20を抜き差し自在に挟み留めるために使用されるものであり、対象物20を2つの付勢部4,5からの分散挟圧によって3つの支持点P1,P2,P3で支持するようになっている。
【0016】
具体的には、クリップ1は、金属や樹脂などの板材を略U字状に折り返すことにより形成されるクリップ本体から成る。このクリップ本体は、拡開可能な一対の脚部2,3と、一対の脚部2,3同士を接続する所定の曲率の折り返し部4とから成り、また、折り返し部4は、脚部2,3にバネ力を付与する前述した付勢部の一方(第2のバネ付勢部)4を形成している。
【0017】
また、一方の第1の脚部2は、その途中に、前述した他方の付勢部5を有している。この付勢部5は、脚部2の一部を蛇腹状に屈曲形成して成るものであり、脚部2にバネ力を付与する第1のバネ付勢部として機能する。なお、本実施形態において、第1のバネ付勢部5は、波状に並ぶ形状寸法がほぼ同じ4つの山部(凸部)5aから構成されている。
【0018】
また、本実施形態において、第1の脚部2は、蛇腹状の第1のバネ付勢部5からクリップの内側に向けて斜めに延びる第1の屈曲部2aを有し、一方、第2の脚部3は、第2のバネ付勢部である折り返し部4から第1のバネ付勢部5へ向けてクリップの内側へと延びた後、第1のバネ付勢部5の略中間位置からクリップの外側へと第1の屈曲部2aと略平行に延びる第2の屈曲部3aを形成しており、これにより、屈曲部2a,3a間にクリップ開口12が形成されるとともに、脚部2,3間に対象物20を挟み留めるための挟持空間Sが形成される。なお、挟持空間Sは、第2のバネ付勢部である折り返し部4の内側で最大幅に設定される。
【0019】
また、本実施形態において、第1および第2のバネ付勢部5,4は、協働して、一対の脚部2,3を閉じる方向に付勢しており、そのように付勢することにより、挟み留めるべき対象物20が対向する両方の脚部2,3上の3つの異なる支持点P1,P2,P3に対して付勢されて支持されるようにする。具体的には、本実施形態では、図1の(b)および図2に明確に示されるように、対象物20は、クリップ開口12付近で第1の脚部2の第1の屈曲部2a上に位置する第1の支持点P1で支持されるとともに、第1の脚部2と対向する第2の脚部3上(第1のバネ付勢部5と対向する部位)の第2の支持点P2で支持され、また、折り返し部4付近で第1の脚部2上の第3の支持点P3で支持される。つまり、対象物20は、互い違いに位置して三角形の頂点を形成するように配置される3つの異なる支持点P1,P2,P3に対して付勢されて支持される。
【0020】
なお、本実施形態において、クリップ1の挟持力は、蛇腹の数(第1のバネ付勢部5の山部5aの数)や折り返し部4の曲率(挟持空間Sの設定幅)によって調整できる。
【0021】
以上のように、本実施形態のクリップ1によれば、2つの付勢部4,5からの分散挟圧によって対象物20を挟み留めるための挟持力が分散されるため、挟み込んでいる対象物20を局所的に過度に圧迫して傷付けてしまうことがなく、クリップ1に対する対象物20の抜き差しがし易くなるとともに、挟み留めるべき対象物20の種類やその数にかかわらず挟持力を略一定に保つことができる。また、2つの付勢部4,5によって対象物20を3つの支持点P1,P2,P3に対して押し付けて支持するため、安定した挟持力を得ることができ、同じ形状で幅広い用途に適用できるとともに、クリップ材料の材質によって機能が大きく左右されない。そのため、金属や樹脂を含む様々な材料によってクリップを形成することができる(例えば、リサイクル回収が容易であるため、リサイクル材で安価に製造(再生)できる)とともに、略同一の形状および幅寸法であっても幅広い種類の対象物20を数多く挟み留めることができる。特に、本実施形態では、第1および第2のバネ付勢部5,4によって一対の脚部2,3を閉じる方向に付勢することにより、対向する両方の脚部2,3上の3つの異なる支持点P1,P2,P3で対象物20を支持するため、対象物20の数を多く設定するべく脚部2,3同士の開口12の幅(対象物を一対の脚部間に導入するために一対の脚部端に形成される導入開口の幅)をある程度大きくても、あるいは、挟持空間Sの幅をある程度大きくても、対象物20を確実且つ安定に挟持できる。
【0022】
図3および図4は本発明の第2の実施形態に係るクリップ30を示している。図示のように、本実施形態のクリップ30は、挟み留めるべき紙やファイルなどの対象物40を抜き差し自在に挟み留めるために使用されるものであり、対象物40を2つの付勢部34,35からの分散挟圧によって3つの支持点P1,P2,P3で支持するようになっている。
【0023】
具体的には、クリップ30は、金属や樹脂などの板材を略U字状に折り返すことにより形成されるクリップ本体から成る。このクリップ本体は、拡開可能な一対の脚部32,33と、一対の脚部32,33同士を接続する所定の曲率の折り返し部34とから成り、また、折り返し部34は、脚部32,33にバネ力を付与する前述した付勢部の一方(第2のバネ付勢部)34を形成している。
【0024】
また、一方の第1の脚部33は、その途中に、前述した他方の付勢部35を有している。この付勢部35は、脚部33の一部を蛇腹状に屈曲形成して成るものであり、脚部33にバネ力を付与する第1のバネ付勢部として機能する。なお、本実施形態において、第1のバネ付勢部35は、波状に並ぶ大きさの異なる2つの山部(凸部)35aから構成されている。
【0025】
また、本実施形態において、第1の脚部33は、蛇腹状の第1のバネ付勢部35から対向する第2の脚部32にほぼ至るまでクリップの内側に向けて延びた後に直線状に延在し、一方、第2の脚部32は、第2のバネ付勢部である折り返し部34から略円弧状を成してクリップの内側へと延びた後に第1の脚部33の直線延在部分と合流するように終端しており、これにより、脚部32,33間に幅狭のクリップ開口42が形成されるとともに、脚部32,33間に対象物40を挟み留めるための挟持空間Sが形成される。
【0026】
また、本実施形態において、第1および第2のバネ付勢部35,34は、協働して、一対の脚部32,33を閉じる方向に付勢しており、そのように付勢することにより、挟み留めるべき対象物40が対向する両方の脚部32,33上の3つの異なる支持点P1,P2,P3に対して付勢されて支持されるようにする。具体的には、本実施形態では、図3の(b)および図4に明確に示されるように、対象物40は、クリップ開口42付近で第2の脚部32上に位置する第1の支持点P1で支持されるとともに、第2の脚部32と対向する第1の脚部33の第1のバネ付勢部35上の第2の支持点P2で支持され、また、折り返し部34付近で第1の脚部33上の第3の支持点P3で支持される。つまり、対象物40は、ほぼ三角形の頂点を形成するように配置される3つの異なる支持点P1,P2,P3に対して付勢されて支持される。
【0027】
なお、本実施形態においても、クリップ30の挟持力は、蛇腹の数(第1のバネ付勢部35の山部35aの数)や折り返し部34の曲率(挟持空間Sの設定幅)によって調整できる。
【0028】
以上のように、本実施形態のクリップ30も、2つの付勢部34,35からの分散挟圧によって対象物40を挟み留めるための挟持力が分散されるため、挟み込んでいる対象物40を局所的に過度に圧迫して傷付けてしまうことがなく、クリップ30に対する対象物40の抜き差しがし易くなるとともに、挟み留めるべき対象物40の種類やその数にかかわらず挟持力を略一定に保つことができる。また、2つの付勢部34,35によって対象物40を3つの支持点P1,P2,P3に対して押し付けて支持するため、安定した挟持力を得ることができ、同じ形状で幅広い用途に適用できるとともに、クリップ材料の材質によって機能が大きく左右されない。そのため、金属や樹脂を含む様々な材料によってクリップを形成することができる(例えば、リサイクル回収が容易であるため、リサイクル材で安価に製造(再生)できる)とともに、略同一の形状および幅寸法であっても幅広い種類の対象物40を数多く挟み留めることができる。つまり、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0029】
図5および図6は本発明の第3の実施形態に係るクリップ50を示している。図示のように、本実施形態のクリップ50は、挟み留めるべき紙やファイルなどの対象物60を抜き差し自在に挟み留めるために使用されるものであり、対象物60を2つの付勢部54,55からの分散挟圧によって3つの支持点P1,P2,P3で支持するようになっている。
【0030】
具体的には、クリップ50は、金属や樹脂などの板材を略U字状に折り返すことにより形成されるクリップ本体から成る。このクリップ本体は、拡開可能な一対の脚部52,53と、一対の脚部52,53同士を接続する所定の曲率の折り返し部54とから成り、また、折り返し部54は、脚部52,53にバネ力を付与する前述した付勢部の一方(第2のバネ付勢部)54を形成している。
【0031】
また、一方の第1の脚部52は、その途中に、前述した他方の付勢部55を有している。この付勢部55は、脚部52の一部を蛇腹状に屈曲形成して成るものであり、脚部52にバネ力を付与する第1のバネ付勢部として機能する。なお、本実施形態において、第1のバネ付勢部55は、波状に並ぶ形状寸法がほぼ同じ4つの山部(凸部)55aから構成されている。
【0032】
また、本実施形態において、第1の脚部52は、蛇腹状の第1のバネ付勢部55からクリップの外側に向けて斜めに延びる第1の屈曲部52aを有し、一方、第2の脚部53は、第2のバネ付勢部である折り返し部54から第1の脚部52と略平行に延びた後、第1の脚部52の第1の屈曲部52aと合流するようにクリップの内側へ向けて延びて第1の屈曲部52aと接触し、その後、その接触点からクリップの外側へと斜めに延びて第2の屈曲部53aを形成しており、これにより、屈曲部52a,53a間に常時閉じられるクリップ開口62が形成されるとともに、脚部52,53間に対象物60を挟み留めるための挟持空間Sが形成される。なお、挟持空間Sは、第2のバネ付勢部である折り返し部54の内側で最大幅に設定される。
【0033】
また、本実施形態において、第1および第2のバネ付勢部55,54は、協働して、一対の脚部52,53を閉じる方向に付勢しており、そのように付勢することにより、挟み留めるべき対象物60が対向する両方の脚部52,53上の3つの異なる支持点P1,P2,P3に対して付勢されて支持されるようにする。具体的には、本実施形態では、図5の(b)および図6に明確に示されるように、対象物60は、クリップ開口62の接触点(屈曲部52a,53a同士の接触点)に位置する第1の支持点P1で支持されるとともに、第2の脚部53の第2の屈曲部53a上(第1のバネ付勢部55とほぼ対向する部位)の第2の支持点P2で支持され、また、第1のバネ付勢部55の端縁付近で第1の脚部52上の第3の支持点P3で支持される。つまり、対象物60は、互い違いに位置して三角形の頂点を形成するように配置される3つの異なる支持点P1,P2,P3に対して付勢されて支持される。
【0034】
なお、本実施形態において、クリップ50の挟持力は、蛇腹の数(第1のバネ付勢部55の山部55aの数)や折り返し部54の曲率(挟持空間Sの設定幅)によって調整できる。
【0035】
以上のように、本実施形態のクリップ50も、2つの付勢部54,55からの分散挟圧によって対象物60を挟み留めるための挟持力が分散されるため、挟み込んでいる対象物60を局所的に過度に圧迫して傷付けてしまうことがなく、クリップ50に対する対象物60の抜き差しがし易くなるとともに、挟み留めるべき対象物60の種類やその数にかかわらず挟持力を略一定に保つことができる。また、2つの付勢部54,55によって対象物60を3つの支持点P1,P2,P3に対して押し付けて支持するため、安定した挟持力を得ることができ、同じ形状で幅広い用途に適用できるとともに、クリップ材料の材質によって機能が大きく左右されない。そのため、金属や樹脂を含む様々な材料によってクリップを形成することができる(例えば、リサイクル回収が容易であるため、リサイクル材で安価に製造(再生)できる)とともに、略同一の形状および幅寸法であっても幅広い種類の対象物60を数多く挟み留めることができる。つまり、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0036】
図7および図8は、本発明の第4の実施形態に係るクリップ70を示している。図示のように、本実施形態のクリップ70は、第3の実施形態に係る複数(図では6個)のクリップ50が分離ライン99で分離自在となるように結合されることによって構成される(なお、図では、クリップ50の第1のバネ付勢部55の山部55aが3つであるが、4つでも良いことは言うまでもない)。
【0037】
このような構成のクリップ70によれば、第3の実施形態と同様の作用効果が得られるとともに、幅の異なる対象物60A,60B(図8参照)を同時に混在した状態で挟み留めることができるとともに、状況に応じて分離して個別に使用することもでき、状況に応じた使い分けをすることができ、機能性および適応性に優れる。
【0038】
図9および図10は本発明の第5の実施形態に係るクリップ90を示している。図示のように、本実施形態のクリップ90は、第3の実施形態に係るクリップ50と類似しているが、その幅がクリップ50よりも広くなっている。
【0039】
具体的には、クリップ90は、金属や樹脂などの板材を略U字状に折り返すことにより形成されるクリップ本体から成る。このクリップ本体は、拡開可能な一対の脚部92,93と、一対の脚部92,93同士を接続する所定の曲率の折り返し部94とから成り、また、折り返し部94は、脚部92,93にバネ力を付与する前述した付勢部の一方(第2のバネ付勢部)94を形成している。
【0040】
また、一方の第1の脚部92は、その途中に、前述した他方の付勢部95を有している。この付勢部95は、脚部92の一部を蛇腹状に屈曲形成して成るものであり、脚部92にバネ力を付与する第1のバネ付勢部として機能する。なお、本実施形態において、第1のバネ付勢部95は、波状に並ぶ形状寸法がほぼ同じ4つの山部(凸部)95aから構成されている。
【0041】
また、本実施形態において、第1の脚部92は、蛇腹状の第1のバネ付勢部95からクリップの外側に向けて斜めに延びる第1の屈曲部92aを有し、一方、第2の脚部93は、第2のバネ付勢部である折り返し部94から第1の脚部92と略平行に延びた後、第1の脚部92の第1の屈曲部92aと合流するようにクリップの内側へ向けて延びて第1の屈曲部92aと接触し、その後、その接触点からクリップの外側へと斜めに延びて第2の屈曲部93aを形成しており、これにより、屈曲部92a,93a間に常時閉じられるクリップ開口102が形成されるとともに、脚部92,93間に対象物100を挟み留めるための挟持空間Sが形成される。なお、挟持空間Sは、第2のバネ付勢部である折り返し部94の内側で最大幅に設定される。
【0042】
また、本実施形態において、第1および第2のバネ付勢部95,94は、協働して、一対の脚部92,93を閉じる方向に付勢しており、そのように付勢することにより、挟み留めるべき対象物100が対向する両方の脚部92,93上の3つの異なる支持点P1,P2,P3に対して付勢されて支持されるようにする。具体的には、本実施形態では、図9の(b)および図10に明確に示されるように、対象物100は、クリップ開口102の接触点(屈曲部92a,93a同士の接触点)に位置する第1の支持点P1で支持されるとともに、第2の脚部93の第2の屈曲部93a上(第1のバネ付勢部95とほぼ対向する部位)の第2の支持点P2で支持され、また、第1のバネ付勢部95の端縁付近で第1の脚部92上の第3の支持点P3で支持される。つまり、対象物100は、互い違いに位置して三角形の頂点を形成するように配置される3つの異なる支持点P1,P2,P3に対して付勢されて支持される。
【0043】
なお、本実施形態において、クリップ90の挟持力は、蛇腹の数(第1のバネ付勢部95の山部95aの数)や折り返し部94の曲率(挟持空間Sの設定幅)によって調整できる。
【0044】
以上のように、本実施形態のクリップ90も、2つの付勢部94,95からの分散挟圧によって対象物100を挟み留めるための挟持力が分散されるため、挟み込んでいる対象物100を局所的に過度に圧迫して傷付けてしまうことがなく、クリップ90に対する対象物100の抜き差しがし易くなるとともに、挟み留めるべき対象物100の種類やその数にかかわらず挟持力を略一定に保つことができる。また、2つの付勢部94,95によって対象物100を3つの支持点P1,P2,P3に対して押し付けて支持するため、安定した挟持力を得ることができ、同じ形状で幅広い用途に適用できるとともに、クリップ材料の材質によって機能が大きく左右されない。そのため、金属や樹脂を含む様々な材料によってクリップを形成することができる(例えば、リサイクル回収が容易であるため、リサイクル材で安価に製造(再生)できる)とともに、略同一の形状および幅寸法であっても幅広い種類の対象物100を数多く挟み留めることができる。つまり、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
次に、本発明の第6の実施形態に係るクリップについて説明する。図11(a)は、本実施形態に係るクリップを示す斜視図であり、(b)はクリップに対象物及び紐状部材が保持された状態を示す斜視図である。図12は、本実施形態に係るクリップの側面図である。図13は、本実施形態に係るクリップの使用例を説明するための正面模式図であり、(a)はクリップを衣服に装着した状態を示し、(b)は衣服に装着されたクリップ近傍の拡大図である。本実施形態のクリップ110は、挟み留めるべき衣服等の布、合成繊維及び紙等の対象物120を抜き差し自在に挟み留めると共に、イヤホンコードやケーブル等の紐状部材121を挿通自在に保持するものであり、対象物120を2つの付勢部111,114からの分散狭圧によって支持すると共に紐状部材121を保持するようになっている。
【0046】
具体的には、図11及び図12に示すように、クリップ110は、金属又は樹脂などの弾性材料からなる板材を略U字状に折り返した形状のクリップ本体から成る。このクリップ本体は、拡開可能な一対の脚部112,113と、一対の脚部112,113同士を接続する折り返し部111と、から構成される。折り返し部111は、所定の曲率を有しており、脚部112,113にバネ力を付与する付勢部の一方(第2のバネ付勢部)として機能する。
【0047】
一方の脚部112は、折り返し部111から他方の脚部113に向かって延びた後、屈曲して他方の脚部113から離れるように延在するように形成されており、脚部112の延在方向の途中に、付勢部114が設けられている。この脚部112と他方の脚部113の先端部間にはクリップ開口116が形成されると共に、脚部112,113間には対象物120を挟み留めるための挟持空間Sが形成される。なお、挟持空間Sは、第2のバネ付勢部である折り返し部111の内側で最大幅に設定される。また、クリップ本体は、折り返し部111、脚部112及び脚部113等を別体に形成してもよく、又は一体に形成してもよい。
【0048】
付勢部114は、脚部112の一部を屈曲させて形成され、対峙するように形成された2つの屈曲部114a,114bと、2つの屈曲部114a,114bに接続する湾曲部114cとから構成されている。この付勢部114は、脚部112にバネ力を付与する第1のバネ付勢部として機能すると共に、紐状部材121を保持する保持手段としても機能する。屈曲部114aは、折り返し部111から延在する脚部112を、対向する脚部113から離間する外方に輪状に屈曲させている。湾曲部114cは、側面視略円形状に形成され、一端部が屈曲部114aに接続されると共に他端部が屈曲部114bに接続されている。屈曲部114bは、湾曲部114cの他端を屈曲させて、脚部112を対向する脚部113から徐々に離間する方向に延在させている。
【0049】
また、脚部113との対向面側において、屈曲部114a,114b及び湾曲部114cの内面には、脚部112の幅方向に沿って延在する略筒状の保持空間S1が形成されており、この保持空間S1内で、紐状部材121が脚部112の幅方向に挿通自在に保持される。すなわち、屈曲部114a,114b及び湾曲部114cの内面部114dは、紐状部材121を保持する保持手段として機能する。対峙する2つの屈曲部114a,114b間は、保持空間S1の内径よりも幅狭に形成され、通常の保持状態において、紐状部材121が屈曲部114a,114bに接触した程度では、紐状部材121が当該屈曲部114a,114b間から容易に抜け出ることがない(脱落することがない)程度の保持力を有することが望ましい。保持空間S1内への紐状部材121の出し入れの際には、紐状部材121により押し広げられて屈曲部114a,114bが外方に僅かに撓み、保持空間S1内に紐状部材121が入り込む、又は抜け出るように構成されている。このような保持力を有することにより、保持空間S1内に保持された紐状部材121は、保持空間S1外に容易に脱落することなく確実に保持される。また、本実施形態では、湾曲部114cを略円形状に湾曲させて保持空間S1を形成したが、保持空間S1の形状はこれに限定されるものではなく、保持空間S1内部で紐状部材121を保持可能であって、保持空間S1内の対向する内面間の距離よりも屈曲部114a,114b間の距離が狭いものであればよい。さらに、本実施形態では、1つの湾曲部114cを設ける構成としたが、上記実施形態のように複数の湾曲部114cを蛇腹状に設け、複数の保持空間S1を形成する構成も可能である。この場合、クリップ110の挟持力は、蛇腹の数(第1のバネ付勢部114の湾曲部114cの数)や折り返し部111の曲率(挟持空間Sの設定幅)によって調整可能である。
【0050】
図13に示すように、他方の脚部113は、任意の形状に形成可能であり、クリップ本体の装着の際に正面側に位置して装飾用部材として機能する。本実施形態では、脚部113は、折り返し部111から屈曲することなく直線状に延在するように形成され、正面視略ハート形状に形成されている。なお、脚部113の形状はこの構成に限定されるものではなく、例えば、脚部113全体を、企業等のロゴ、商品等のマーク、動物及び野菜等のキャラクタの形状に模し、立体的又は平面的に形成することが可能である。また,脚部113の正面側を平面状に形成し、この正面部113aにシール等を貼り付けて装飾を施すようにしてもよい。このように構成された脚部113は、対象物120となる衣服等のポケット部分などに、装飾部分が外部から視認可能な状態で装着される。これにより、クリップ110を衣服等の対象物120に装着した際の意匠性を向上させることができる。なお、図13では、クリップ110をシャツの表前立部分に装着した場合を示しているが、シャツ又はパンツのポケット部分や、シャツよりも厚い生地で構成されるコート等、又は鞄等のポケット部分やハンドル部分に装着することが可能である。これは、本実施形態に係るクリップ110が、複数の付勢部111,114からの分散挟圧によって対象物120を挟み留めるための挟持力を分散させるので、対象物120が薄いものから厚いものであっても、つまり対象物120の厚さに関わらず挟持力を略一定に保つことができるためである。
【0051】
また、脚部113の背面側には、脚部112側に突出した突出部113bが形成されている(図12(a))。図12(a)に示すクリップ110では、対象物120は、クリップ開口116付近で脚部113上の突出部113bの支持点P1、突出部113b近傍の脚部112上の支持点P2、屈曲部114bに対向する脚部113上の支持点P3及び屈曲部114a近傍の支持点P4で支持される。なお、本実施形態では、脚部113の開放端部近傍に突出部113bが形成されているが、複数の付勢部111,114により分散狭圧されるものであれば、突出部113bの数、構成及び形成位置はこの構成に限定されるものではなく、例えば、突出部113bを屈曲部114a,114bに対峙する位置に形成してもよい。さらに、図12(b)に示すように、対象物120が比較的厚いもの(脚部113と屈曲部114bとの間隔以上)の場合には、複数の支持点を設けない構成も可能である。
【0052】
次に、図13を用いて、クリップ110の作用について説明する。ここでは、図12(a)に示すクリップ110を用いて、イヤホンコード(紐状部材)121を保持するクリップ110を対象物120であるシャツ等の衣服に装着する場合を例に説明する。
【0053】
まず、クリップ開口116を形成する脚部112,113の先端部を拡開させ、イヤホンコード121を脚部112,113間に入り込ませる。次に、屈曲部114a,114b間からイヤホンコード121を押し入れ、その押圧力により屈曲部114a,114bが互いに離間する方向に撓ませて、保持空間S1内にイヤホンコード121を入り込ませる。イヤホンコード121が保持空間S1内に完全に入り込むと、外方に撓んだ屈曲部114a,114bは、保持空間S1の内径より幅狭となる初期位置に復帰する。これにより、イヤホンコード121を、保持空間S1から保持空間S1外に容易に脱落することなく脚部112の幅方向に挿通可能に保持することができ、イヤホンコード121の絡みを防止することができる。そして、このイヤホンコード121が保持された状態で、装着者はイヤホンを耳に装着し、クリップ110の対象物120への装着位置を考慮しながら、クリップ110及びイヤホンコード121を相対移動させて、所望の保持位置(例えば、イヤホンコード121が弛まない位置)に調整する。このイヤホンコード121に対するクリップ110の保持位置が確定した状態で、クリップ110を所望の装着位置(例えば、シャツ120の前立て部分)に移動させ、脚部113の正面部113aを前面側に向け、一対の脚部112,113の先端部側をシャツ120の前立て部分に差し入れる。このとき、2つのバネ付勢部111,114が協働して、一対の脚部112,113を閉じる方向に付勢するので、シャツ120が両脚部112,113上の複数の支持点に対して付勢されて支持される。ここでは、シャツ120は、クリップ開口116付近で脚部113上の突出部113bの支持点P1、突出部113b近傍の脚部112上の支持点P2、屈曲部114bに対向する脚部113上の支持点P3及び屈曲部114a近傍の支持点P4で支持される。これにより、所望の装着位置において、イヤホンコード121を保持したクリップ110をシャツ120に確実に挟み留めることができる。
【0054】
以上のように、本実施形態のクリップ110によれば、イヤホンコード等の紐状部材121を保持空間S1内から脱落させることなく当該保持空間S1内で挿通自在に保持するので、クリップ110を対象物120に装着した際のイヤホンコード121の絡みを防止することができる。また、クリップ110の装着の際に、正面側に配置される脚部113を任意の形状に形成可能にすると共に装飾可能に構成したので、クリップ110を対象物120に装着した際の意匠性を向上させることができる。さらに、紐状部材121が保持されたクリップ110を、2つの付勢部111,114からの分散挟圧によって対象物120を一定の圧力で挟み留めるので、対象物120の厚みに関わらず、クリップ110を対象物120の任意の位置に挟み留めることができる。
【0055】
本実施形態に係るクリップ110は、挟み留めるべき対象物120を複数の付勢部111,114からの分散挟圧によって抜き差し自在に挟み留めると共に、一方の付勢部114で紐状部材121を保持することを特徴とする。すなわち、クリップ110は、弾性材料からなる板材を折り返すことにより形成されるクリップ本体と、クリップ本体を形成すると共に付勢部によって閉じる方向に付勢される拡開可能な一対の脚部112,113と、を備え、付勢部は、脚部112の一部を略輪状に湾曲形成して成るバネ力を付与する第1のバネ付勢部114と、クリップ本体の折り返し部111によって形成されるバネ力を付与する第2のバネ付勢部111と、第1のバネ付勢部114を形成する湾曲部114c内部で紐状部材121を脚部112の幅方向に挿通自在に保持する保持手段と、を有し、第1および第2のバネ付勢部111,114によって一対の脚部112,113を閉じる方向に付勢して対象物120を付勢支持すると共に、保持手段によって湾曲部114c内部から脱落しないように紐状部材121を弾性保持するものを含む。
【0056】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることは言うまでもない。例えば、前述した実施形態では、挟み留められるべき対象物が紙、ファイル、衣服等の布や合成繊維であったが、本発明のクリップによって挟み留められるべき対象物としては、それ以外に、ペンや、建設作業現場などで使用されるメジャー(スケール)などが挙げられる。
【符号の説明】
【0057】
1,30,50,70,90,110 クリップ
2,3,32,33,52,53,92,93,112,113 脚部
4,5,34,35,54,55,94,95,111,114 付勢部
20,40,60,100,120 対象物
114a,114b 屈曲部
114c 湾曲部
114d 内面部
121 紐状部材
P1,P2,P3,P4 支持点
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、ファイル、メジャー、ペンなどを含む対象物を抜き差し自在に挟み留めるためのクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特に紙やファイルなどを束ねて挟み留めるためのクリップは良く知られている。そのようなクリップは、様々な構造・形態のものが数多く提案されているが、一般的には、一対の挟持部を拡開させることにより、それらの挟持部間に対象物を挟み留めるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−139057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来から市場に提供されてきたクリップは、一般に、挟み留めるべき対象物や数に応じて、形状、幅、機構等がある程度異なっていた。すなわち、例えば枚数の多い紙束や厚手の硬質ファイルなどの対象物を挟み留めるためには、幅の大きい挟持力の強いクリップが使用され、一方、枚数の少ない紙束や薄手の軟質なファイルなどの対象物を挟み留めるためには、幅の小さい挟持力の弱いクリップが使用されている。
【0005】
また、従来のクリップでは、その機構や形状等に起因して、1つ(1種類)のクリップ毎に、拡開度合いに限度があり、したがって、挟み留めることができる対象物の数も限られていた。また、この場合、挟み留める対象物の数が増大すればするほど、挟持力も必然的に大きくなり、したがって、挟み込んでいる対象物を局所的に過度に圧迫して傷付けてしまう場合もあった。また、挟み留める対象物の数が増大すればするほど、クリップを拡開するために必要な力も大きくなり、クリップに対する対象物の抜き差しが困難となる場合もあった。
【0006】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、略同一の形状および幅寸法で幅広い種類の対象物を数多く挟み留めることができるとともに、挟み留めるべき対象物の種類やその数にかかわらず挟持力を略一定に保つことができる抜き差しし易い安価なクリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、対象物を抜き差し自在に挟み留めるためのクリップであって、挟み留めるべき対象物を複数の付勢部からの分散挟圧によって所定の支持点で支持することを特徴とする。
【0008】
この請求項1に記載の発明によれば、複数の付勢部からの分散挟圧によって対象物を挟み留めるための挟持力が分散されるため、挟み込んでいる対象物を局所的に過度に圧迫して傷付けてしまうことがなく、クリップに対する対象物の抜き差しがし易くなるとともに、挟み留めるべき対象物の種類やその数にかかわらず挟持力を略一定に保つことができる。また、複数の付勢部によって対象物を支持点に対して押し付けて支持するため、安定した挟持力を得ることができ、同じ形状で幅広い用途に適用できるとともに、クリップ材料の材質によって機能が大きく左右されない。そのため、金属や樹脂を含む様々な材料によってクリップを形成することができる(例えば、リサイクル回収が容易であるため、リサイクル材で安価に製造(再生)できる)とともに、略同一の形状および幅寸法であっても幅広い種類の対象物を数多く挟み留めることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、板材を略U字状に折り返すことにより形成されるクリップ本体と、前記クリップ本体を形成し、前記付勢部によって閉じる方向に付勢される拡開可能な一対の脚部とを有し、前記付勢部は、前記脚部の一部を蛇腹状に屈曲形成して成るバネ力を付与する第1のバネ付勢部と、前記クリップ本体の折り返し部によって形成されるバネ力を付与する第2のバネ付勢部とを有するとともに、第1および第2のバネ付勢部によって一対の脚部を閉じる方向に付勢することにより、挟み留めるべき対象物が対向する両方の脚部上の複数の異なる支持点に対して付勢されて支持されるようにすることを特徴とする。
【0010】
この請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、第1および第2のバネ付勢部によって一対の脚部を閉じる方向に付勢することにより、対向する両方の脚部上の複数の異なる支持点で対象物を支持するため、挟み留めることができる対象物の数を多く設定するべく脚部同士の開口幅(対象物を一対の脚部間に導入するために一対の脚部端に形成される導入開口の幅)をある程度大きくても、あるいは、挟持空間の幅をある程度大きくても、対象物を確実且つ安定に挟持できる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、対象物を抜き差し自在に挟み留めるためのクリップであって、請求項1または請求項2に記載の複数のクリップが分離自在に結合されて成ることを特徴とする。
【0012】
この請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、様々な幅の対象物を同時に混在した状態で挟み留めることができるとともに、状況に応じて分離して個別に使用することもでき、状況に応じた使い分けをすることができ、機能性および適応性に優れる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、略同一の形状および幅寸法で幅広い種類の対象物を数多く挟み留めることができるとともに、挟み留めるべき対象物の種類やその数にかかわらず挟持力を略一定に保つことができる抜き差しし易い安価なクリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るクリップを示しており、(a)はクリップの平面図、(b)はクリップの側面図、(c)はクリップの正面図である。
【図2】図1のクリップの作用を説明するための斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るクリップを示しており、(a)はクリップの平面図、(b)はクリップの側面図、(c)はクリップの正面図である。
【図4】図3のクリップの作用を説明するための斜視図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るクリップを示しており、(a)はクリップの平面図、(b)はクリップの側面図、(c)はクリップの正面図である。
【図6】図5のクリップの作用を説明するための斜視図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るクリップを示しており、(a)はクリップの平面図、(b)はクリップの側面図、(c)はクリップの正面図である。
【図8】図7のクリップの作用を説明するための斜視図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係るクリップを示しており、(a)はクリップの平面図、(b)はクリップの側面図、(c)はクリップの正面図である。
【図10】図9のクリップの作用を説明するための斜視図である。
【図11】本発明の第6の実施形態に係るクリップを示しており、(a)はクリップの斜視図、(b)はクリップに対象物及び紐状部材が保持された状態を示す斜視図である。
【図12】本実施形態に係るクリップの側面図である。
【図13】本実施形態に係るクリップの使用例を説明するための正面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1および図2は本発明の第1の実施形態に係るクリップ1を示している。図示のように、本実施形態のクリップ1は、挟み留めるべき紙やファイルなどの対象物20を抜き差し自在に挟み留めるために使用されるものであり、対象物20を2つの付勢部4,5からの分散挟圧によって3つの支持点P1,P2,P3で支持するようになっている。
【0016】
具体的には、クリップ1は、金属や樹脂などの板材を略U字状に折り返すことにより形成されるクリップ本体から成る。このクリップ本体は、拡開可能な一対の脚部2,3と、一対の脚部2,3同士を接続する所定の曲率の折り返し部4とから成り、また、折り返し部4は、脚部2,3にバネ力を付与する前述した付勢部の一方(第2のバネ付勢部)4を形成している。
【0017】
また、一方の第1の脚部2は、その途中に、前述した他方の付勢部5を有している。この付勢部5は、脚部2の一部を蛇腹状に屈曲形成して成るものであり、脚部2にバネ力を付与する第1のバネ付勢部として機能する。なお、本実施形態において、第1のバネ付勢部5は、波状に並ぶ形状寸法がほぼ同じ4つの山部(凸部)5aから構成されている。
【0018】
また、本実施形態において、第1の脚部2は、蛇腹状の第1のバネ付勢部5からクリップの内側に向けて斜めに延びる第1の屈曲部2aを有し、一方、第2の脚部3は、第2のバネ付勢部である折り返し部4から第1のバネ付勢部5へ向けてクリップの内側へと延びた後、第1のバネ付勢部5の略中間位置からクリップの外側へと第1の屈曲部2aと略平行に延びる第2の屈曲部3aを形成しており、これにより、屈曲部2a,3a間にクリップ開口12が形成されるとともに、脚部2,3間に対象物20を挟み留めるための挟持空間Sが形成される。なお、挟持空間Sは、第2のバネ付勢部である折り返し部4の内側で最大幅に設定される。
【0019】
また、本実施形態において、第1および第2のバネ付勢部5,4は、協働して、一対の脚部2,3を閉じる方向に付勢しており、そのように付勢することにより、挟み留めるべき対象物20が対向する両方の脚部2,3上の3つの異なる支持点P1,P2,P3に対して付勢されて支持されるようにする。具体的には、本実施形態では、図1の(b)および図2に明確に示されるように、対象物20は、クリップ開口12付近で第1の脚部2の第1の屈曲部2a上に位置する第1の支持点P1で支持されるとともに、第1の脚部2と対向する第2の脚部3上(第1のバネ付勢部5と対向する部位)の第2の支持点P2で支持され、また、折り返し部4付近で第1の脚部2上の第3の支持点P3で支持される。つまり、対象物20は、互い違いに位置して三角形の頂点を形成するように配置される3つの異なる支持点P1,P2,P3に対して付勢されて支持される。
【0020】
なお、本実施形態において、クリップ1の挟持力は、蛇腹の数(第1のバネ付勢部5の山部5aの数)や折り返し部4の曲率(挟持空間Sの設定幅)によって調整できる。
【0021】
以上のように、本実施形態のクリップ1によれば、2つの付勢部4,5からの分散挟圧によって対象物20を挟み留めるための挟持力が分散されるため、挟み込んでいる対象物20を局所的に過度に圧迫して傷付けてしまうことがなく、クリップ1に対する対象物20の抜き差しがし易くなるとともに、挟み留めるべき対象物20の種類やその数にかかわらず挟持力を略一定に保つことができる。また、2つの付勢部4,5によって対象物20を3つの支持点P1,P2,P3に対して押し付けて支持するため、安定した挟持力を得ることができ、同じ形状で幅広い用途に適用できるとともに、クリップ材料の材質によって機能が大きく左右されない。そのため、金属や樹脂を含む様々な材料によってクリップを形成することができる(例えば、リサイクル回収が容易であるため、リサイクル材で安価に製造(再生)できる)とともに、略同一の形状および幅寸法であっても幅広い種類の対象物20を数多く挟み留めることができる。特に、本実施形態では、第1および第2のバネ付勢部5,4によって一対の脚部2,3を閉じる方向に付勢することにより、対向する両方の脚部2,3上の3つの異なる支持点P1,P2,P3で対象物20を支持するため、対象物20の数を多く設定するべく脚部2,3同士の開口12の幅(対象物を一対の脚部間に導入するために一対の脚部端に形成される導入開口の幅)をある程度大きくても、あるいは、挟持空間Sの幅をある程度大きくても、対象物20を確実且つ安定に挟持できる。
【0022】
図3および図4は本発明の第2の実施形態に係るクリップ30を示している。図示のように、本実施形態のクリップ30は、挟み留めるべき紙やファイルなどの対象物40を抜き差し自在に挟み留めるために使用されるものであり、対象物40を2つの付勢部34,35からの分散挟圧によって3つの支持点P1,P2,P3で支持するようになっている。
【0023】
具体的には、クリップ30は、金属や樹脂などの板材を略U字状に折り返すことにより形成されるクリップ本体から成る。このクリップ本体は、拡開可能な一対の脚部32,33と、一対の脚部32,33同士を接続する所定の曲率の折り返し部34とから成り、また、折り返し部34は、脚部32,33にバネ力を付与する前述した付勢部の一方(第2のバネ付勢部)34を形成している。
【0024】
また、一方の第1の脚部33は、その途中に、前述した他方の付勢部35を有している。この付勢部35は、脚部33の一部を蛇腹状に屈曲形成して成るものであり、脚部33にバネ力を付与する第1のバネ付勢部として機能する。なお、本実施形態において、第1のバネ付勢部35は、波状に並ぶ大きさの異なる2つの山部(凸部)35aから構成されている。
【0025】
また、本実施形態において、第1の脚部33は、蛇腹状の第1のバネ付勢部35から対向する第2の脚部32にほぼ至るまでクリップの内側に向けて延びた後に直線状に延在し、一方、第2の脚部32は、第2のバネ付勢部である折り返し部34から略円弧状を成してクリップの内側へと延びた後に第1の脚部33の直線延在部分と合流するように終端しており、これにより、脚部32,33間に幅狭のクリップ開口42が形成されるとともに、脚部32,33間に対象物40を挟み留めるための挟持空間Sが形成される。
【0026】
また、本実施形態において、第1および第2のバネ付勢部35,34は、協働して、一対の脚部32,33を閉じる方向に付勢しており、そのように付勢することにより、挟み留めるべき対象物40が対向する両方の脚部32,33上の3つの異なる支持点P1,P2,P3に対して付勢されて支持されるようにする。具体的には、本実施形態では、図3の(b)および図4に明確に示されるように、対象物40は、クリップ開口42付近で第2の脚部32上に位置する第1の支持点P1で支持されるとともに、第2の脚部32と対向する第1の脚部33の第1のバネ付勢部35上の第2の支持点P2で支持され、また、折り返し部34付近で第1の脚部33上の第3の支持点P3で支持される。つまり、対象物40は、ほぼ三角形の頂点を形成するように配置される3つの異なる支持点P1,P2,P3に対して付勢されて支持される。
【0027】
なお、本実施形態においても、クリップ30の挟持力は、蛇腹の数(第1のバネ付勢部35の山部35aの数)や折り返し部34の曲率(挟持空間Sの設定幅)によって調整できる。
【0028】
以上のように、本実施形態のクリップ30も、2つの付勢部34,35からの分散挟圧によって対象物40を挟み留めるための挟持力が分散されるため、挟み込んでいる対象物40を局所的に過度に圧迫して傷付けてしまうことがなく、クリップ30に対する対象物40の抜き差しがし易くなるとともに、挟み留めるべき対象物40の種類やその数にかかわらず挟持力を略一定に保つことができる。また、2つの付勢部34,35によって対象物40を3つの支持点P1,P2,P3に対して押し付けて支持するため、安定した挟持力を得ることができ、同じ形状で幅広い用途に適用できるとともに、クリップ材料の材質によって機能が大きく左右されない。そのため、金属や樹脂を含む様々な材料によってクリップを形成することができる(例えば、リサイクル回収が容易であるため、リサイクル材で安価に製造(再生)できる)とともに、略同一の形状および幅寸法であっても幅広い種類の対象物40を数多く挟み留めることができる。つまり、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0029】
図5および図6は本発明の第3の実施形態に係るクリップ50を示している。図示のように、本実施形態のクリップ50は、挟み留めるべき紙やファイルなどの対象物60を抜き差し自在に挟み留めるために使用されるものであり、対象物60を2つの付勢部54,55からの分散挟圧によって3つの支持点P1,P2,P3で支持するようになっている。
【0030】
具体的には、クリップ50は、金属や樹脂などの板材を略U字状に折り返すことにより形成されるクリップ本体から成る。このクリップ本体は、拡開可能な一対の脚部52,53と、一対の脚部52,53同士を接続する所定の曲率の折り返し部54とから成り、また、折り返し部54は、脚部52,53にバネ力を付与する前述した付勢部の一方(第2のバネ付勢部)54を形成している。
【0031】
また、一方の第1の脚部52は、その途中に、前述した他方の付勢部55を有している。この付勢部55は、脚部52の一部を蛇腹状に屈曲形成して成るものであり、脚部52にバネ力を付与する第1のバネ付勢部として機能する。なお、本実施形態において、第1のバネ付勢部55は、波状に並ぶ形状寸法がほぼ同じ4つの山部(凸部)55aから構成されている。
【0032】
また、本実施形態において、第1の脚部52は、蛇腹状の第1のバネ付勢部55からクリップの外側に向けて斜めに延びる第1の屈曲部52aを有し、一方、第2の脚部53は、第2のバネ付勢部である折り返し部54から第1の脚部52と略平行に延びた後、第1の脚部52の第1の屈曲部52aと合流するようにクリップの内側へ向けて延びて第1の屈曲部52aと接触し、その後、その接触点からクリップの外側へと斜めに延びて第2の屈曲部53aを形成しており、これにより、屈曲部52a,53a間に常時閉じられるクリップ開口62が形成されるとともに、脚部52,53間に対象物60を挟み留めるための挟持空間Sが形成される。なお、挟持空間Sは、第2のバネ付勢部である折り返し部54の内側で最大幅に設定される。
【0033】
また、本実施形態において、第1および第2のバネ付勢部55,54は、協働して、一対の脚部52,53を閉じる方向に付勢しており、そのように付勢することにより、挟み留めるべき対象物60が対向する両方の脚部52,53上の3つの異なる支持点P1,P2,P3に対して付勢されて支持されるようにする。具体的には、本実施形態では、図5の(b)および図6に明確に示されるように、対象物60は、クリップ開口62の接触点(屈曲部52a,53a同士の接触点)に位置する第1の支持点P1で支持されるとともに、第2の脚部53の第2の屈曲部53a上(第1のバネ付勢部55とほぼ対向する部位)の第2の支持点P2で支持され、また、第1のバネ付勢部55の端縁付近で第1の脚部52上の第3の支持点P3で支持される。つまり、対象物60は、互い違いに位置して三角形の頂点を形成するように配置される3つの異なる支持点P1,P2,P3に対して付勢されて支持される。
【0034】
なお、本実施形態において、クリップ50の挟持力は、蛇腹の数(第1のバネ付勢部55の山部55aの数)や折り返し部54の曲率(挟持空間Sの設定幅)によって調整できる。
【0035】
以上のように、本実施形態のクリップ50も、2つの付勢部54,55からの分散挟圧によって対象物60を挟み留めるための挟持力が分散されるため、挟み込んでいる対象物60を局所的に過度に圧迫して傷付けてしまうことがなく、クリップ50に対する対象物60の抜き差しがし易くなるとともに、挟み留めるべき対象物60の種類やその数にかかわらず挟持力を略一定に保つことができる。また、2つの付勢部54,55によって対象物60を3つの支持点P1,P2,P3に対して押し付けて支持するため、安定した挟持力を得ることができ、同じ形状で幅広い用途に適用できるとともに、クリップ材料の材質によって機能が大きく左右されない。そのため、金属や樹脂を含む様々な材料によってクリップを形成することができる(例えば、リサイクル回収が容易であるため、リサイクル材で安価に製造(再生)できる)とともに、略同一の形状および幅寸法であっても幅広い種類の対象物60を数多く挟み留めることができる。つまり、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0036】
図7および図8は、本発明の第4の実施形態に係るクリップ70を示している。図示のように、本実施形態のクリップ70は、第3の実施形態に係る複数(図では6個)のクリップ50が分離ライン99で分離自在となるように結合されることによって構成される(なお、図では、クリップ50の第1のバネ付勢部55の山部55aが3つであるが、4つでも良いことは言うまでもない)。
【0037】
このような構成のクリップ70によれば、第3の実施形態と同様の作用効果が得られるとともに、幅の異なる対象物60A,60B(図8参照)を同時に混在した状態で挟み留めることができるとともに、状況に応じて分離して個別に使用することもでき、状況に応じた使い分けをすることができ、機能性および適応性に優れる。
【0038】
図9および図10は本発明の第5の実施形態に係るクリップ90を示している。図示のように、本実施形態のクリップ90は、第3の実施形態に係るクリップ50と類似しているが、その幅がクリップ50よりも広くなっている。
【0039】
具体的には、クリップ90は、金属や樹脂などの板材を略U字状に折り返すことにより形成されるクリップ本体から成る。このクリップ本体は、拡開可能な一対の脚部92,93と、一対の脚部92,93同士を接続する所定の曲率の折り返し部94とから成り、また、折り返し部94は、脚部92,93にバネ力を付与する前述した付勢部の一方(第2のバネ付勢部)94を形成している。
【0040】
また、一方の第1の脚部92は、その途中に、前述した他方の付勢部95を有している。この付勢部95は、脚部92の一部を蛇腹状に屈曲形成して成るものであり、脚部92にバネ力を付与する第1のバネ付勢部として機能する。なお、本実施形態において、第1のバネ付勢部95は、波状に並ぶ形状寸法がほぼ同じ4つの山部(凸部)95aから構成されている。
【0041】
また、本実施形態において、第1の脚部92は、蛇腹状の第1のバネ付勢部95からクリップの外側に向けて斜めに延びる第1の屈曲部92aを有し、一方、第2の脚部93は、第2のバネ付勢部である折り返し部94から第1の脚部92と略平行に延びた後、第1の脚部92の第1の屈曲部92aと合流するようにクリップの内側へ向けて延びて第1の屈曲部92aと接触し、その後、その接触点からクリップの外側へと斜めに延びて第2の屈曲部93aを形成しており、これにより、屈曲部92a,93a間に常時閉じられるクリップ開口102が形成されるとともに、脚部92,93間に対象物100を挟み留めるための挟持空間Sが形成される。なお、挟持空間Sは、第2のバネ付勢部である折り返し部94の内側で最大幅に設定される。
【0042】
また、本実施形態において、第1および第2のバネ付勢部95,94は、協働して、一対の脚部92,93を閉じる方向に付勢しており、そのように付勢することにより、挟み留めるべき対象物100が対向する両方の脚部92,93上の3つの異なる支持点P1,P2,P3に対して付勢されて支持されるようにする。具体的には、本実施形態では、図9の(b)および図10に明確に示されるように、対象物100は、クリップ開口102の接触点(屈曲部92a,93a同士の接触点)に位置する第1の支持点P1で支持されるとともに、第2の脚部93の第2の屈曲部93a上(第1のバネ付勢部95とほぼ対向する部位)の第2の支持点P2で支持され、また、第1のバネ付勢部95の端縁付近で第1の脚部92上の第3の支持点P3で支持される。つまり、対象物100は、互い違いに位置して三角形の頂点を形成するように配置される3つの異なる支持点P1,P2,P3に対して付勢されて支持される。
【0043】
なお、本実施形態において、クリップ90の挟持力は、蛇腹の数(第1のバネ付勢部95の山部95aの数)や折り返し部94の曲率(挟持空間Sの設定幅)によって調整できる。
【0044】
以上のように、本実施形態のクリップ90も、2つの付勢部94,95からの分散挟圧によって対象物100を挟み留めるための挟持力が分散されるため、挟み込んでいる対象物100を局所的に過度に圧迫して傷付けてしまうことがなく、クリップ90に対する対象物100の抜き差しがし易くなるとともに、挟み留めるべき対象物100の種類やその数にかかわらず挟持力を略一定に保つことができる。また、2つの付勢部94,95によって対象物100を3つの支持点P1,P2,P3に対して押し付けて支持するため、安定した挟持力を得ることができ、同じ形状で幅広い用途に適用できるとともに、クリップ材料の材質によって機能が大きく左右されない。そのため、金属や樹脂を含む様々な材料によってクリップを形成することができる(例えば、リサイクル回収が容易であるため、リサイクル材で安価に製造(再生)できる)とともに、略同一の形状および幅寸法であっても幅広い種類の対象物100を数多く挟み留めることができる。つまり、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
次に、本発明の第6の実施形態に係るクリップについて説明する。図11(a)は、本実施形態に係るクリップを示す斜視図であり、(b)はクリップに対象物及び紐状部材が保持された状態を示す斜視図である。図12は、本実施形態に係るクリップの側面図である。図13は、本実施形態に係るクリップの使用例を説明するための正面模式図であり、(a)はクリップを衣服に装着した状態を示し、(b)は衣服に装着されたクリップ近傍の拡大図である。本実施形態のクリップ110は、挟み留めるべき衣服等の布、合成繊維及び紙等の対象物120を抜き差し自在に挟み留めると共に、イヤホンコードやケーブル等の紐状部材121を挿通自在に保持するものであり、対象物120を2つの付勢部111,114からの分散狭圧によって支持すると共に紐状部材121を保持するようになっている。
【0046】
具体的には、図11及び図12に示すように、クリップ110は、金属又は樹脂などの弾性材料からなる板材を略U字状に折り返した形状のクリップ本体から成る。このクリップ本体は、拡開可能な一対の脚部112,113と、一対の脚部112,113同士を接続する折り返し部111と、から構成される。折り返し部111は、所定の曲率を有しており、脚部112,113にバネ力を付与する付勢部の一方(第2のバネ付勢部)として機能する。
【0047】
一方の脚部112は、折り返し部111から他方の脚部113に向かって延びた後、屈曲して他方の脚部113から離れるように延在するように形成されており、脚部112の延在方向の途中に、付勢部114が設けられている。この脚部112と他方の脚部113の先端部間にはクリップ開口116が形成されると共に、脚部112,113間には対象物120を挟み留めるための挟持空間Sが形成される。なお、挟持空間Sは、第2のバネ付勢部である折り返し部111の内側で最大幅に設定される。また、クリップ本体は、折り返し部111、脚部112及び脚部113等を別体に形成してもよく、又は一体に形成してもよい。
【0048】
付勢部114は、脚部112の一部を屈曲させて形成され、対峙するように形成された2つの屈曲部114a,114bと、2つの屈曲部114a,114bに接続する湾曲部114cとから構成されている。この付勢部114は、脚部112にバネ力を付与する第1のバネ付勢部として機能すると共に、紐状部材121を保持する保持手段としても機能する。屈曲部114aは、折り返し部111から延在する脚部112を、対向する脚部113から離間する外方に輪状に屈曲させている。湾曲部114cは、側面視略円形状に形成され、一端部が屈曲部114aに接続されると共に他端部が屈曲部114bに接続されている。屈曲部114bは、湾曲部114cの他端を屈曲させて、脚部112を対向する脚部113から徐々に離間する方向に延在させている。
【0049】
また、脚部113との対向面側において、屈曲部114a,114b及び湾曲部114cの内面には、脚部112の幅方向に沿って延在する略筒状の保持空間S1が形成されており、この保持空間S1内で、紐状部材121が脚部112の幅方向に挿通自在に保持される。すなわち、屈曲部114a,114b及び湾曲部114cの内面部114dは、紐状部材121を保持する保持手段として機能する。対峙する2つの屈曲部114a,114b間は、保持空間S1の内径よりも幅狭に形成され、通常の保持状態において、紐状部材121が屈曲部114a,114bに接触した程度では、紐状部材121が当該屈曲部114a,114b間から容易に抜け出ることがない(脱落することがない)程度の保持力を有することが望ましい。保持空間S1内への紐状部材121の出し入れの際には、紐状部材121により押し広げられて屈曲部114a,114bが外方に僅かに撓み、保持空間S1内に紐状部材121が入り込む、又は抜け出るように構成されている。このような保持力を有することにより、保持空間S1内に保持された紐状部材121は、保持空間S1外に容易に脱落することなく確実に保持される。また、本実施形態では、湾曲部114cを略円形状に湾曲させて保持空間S1を形成したが、保持空間S1の形状はこれに限定されるものではなく、保持空間S1内部で紐状部材121を保持可能であって、保持空間S1内の対向する内面間の距離よりも屈曲部114a,114b間の距離が狭いものであればよい。さらに、本実施形態では、1つの湾曲部114cを設ける構成としたが、上記実施形態のように複数の湾曲部114cを蛇腹状に設け、複数の保持空間S1を形成する構成も可能である。この場合、クリップ110の挟持力は、蛇腹の数(第1のバネ付勢部114の湾曲部114cの数)や折り返し部111の曲率(挟持空間Sの設定幅)によって調整可能である。
【0050】
図13に示すように、他方の脚部113は、任意の形状に形成可能であり、クリップ本体の装着の際に正面側に位置して装飾用部材として機能する。本実施形態では、脚部113は、折り返し部111から屈曲することなく直線状に延在するように形成され、正面視略ハート形状に形成されている。なお、脚部113の形状はこの構成に限定されるものではなく、例えば、脚部113全体を、企業等のロゴ、商品等のマーク、動物及び野菜等のキャラクタの形状に模し、立体的又は平面的に形成することが可能である。また,脚部113の正面側を平面状に形成し、この正面部113aにシール等を貼り付けて装飾を施すようにしてもよい。このように構成された脚部113は、対象物120となる衣服等のポケット部分などに、装飾部分が外部から視認可能な状態で装着される。これにより、クリップ110を衣服等の対象物120に装着した際の意匠性を向上させることができる。なお、図13では、クリップ110をシャツの表前立部分に装着した場合を示しているが、シャツ又はパンツのポケット部分や、シャツよりも厚い生地で構成されるコート等、又は鞄等のポケット部分やハンドル部分に装着することが可能である。これは、本実施形態に係るクリップ110が、複数の付勢部111,114からの分散挟圧によって対象物120を挟み留めるための挟持力を分散させるので、対象物120が薄いものから厚いものであっても、つまり対象物120の厚さに関わらず挟持力を略一定に保つことができるためである。
【0051】
また、脚部113の背面側には、脚部112側に突出した突出部113bが形成されている(図12(a))。図12(a)に示すクリップ110では、対象物120は、クリップ開口116付近で脚部113上の突出部113bの支持点P1、突出部113b近傍の脚部112上の支持点P2、屈曲部114bに対向する脚部113上の支持点P3及び屈曲部114a近傍の支持点P4で支持される。なお、本実施形態では、脚部113の開放端部近傍に突出部113bが形成されているが、複数の付勢部111,114により分散狭圧されるものであれば、突出部113bの数、構成及び形成位置はこの構成に限定されるものではなく、例えば、突出部113bを屈曲部114a,114bに対峙する位置に形成してもよい。さらに、図12(b)に示すように、対象物120が比較的厚いもの(脚部113と屈曲部114bとの間隔以上)の場合には、複数の支持点を設けない構成も可能である。
【0052】
次に、図13を用いて、クリップ110の作用について説明する。ここでは、図12(a)に示すクリップ110を用いて、イヤホンコード(紐状部材)121を保持するクリップ110を対象物120であるシャツ等の衣服に装着する場合を例に説明する。
【0053】
まず、クリップ開口116を形成する脚部112,113の先端部を拡開させ、イヤホンコード121を脚部112,113間に入り込ませる。次に、屈曲部114a,114b間からイヤホンコード121を押し入れ、その押圧力により屈曲部114a,114bが互いに離間する方向に撓ませて、保持空間S1内にイヤホンコード121を入り込ませる。イヤホンコード121が保持空間S1内に完全に入り込むと、外方に撓んだ屈曲部114a,114bは、保持空間S1の内径より幅狭となる初期位置に復帰する。これにより、イヤホンコード121を、保持空間S1から保持空間S1外に容易に脱落することなく脚部112の幅方向に挿通可能に保持することができ、イヤホンコード121の絡みを防止することができる。そして、このイヤホンコード121が保持された状態で、装着者はイヤホンを耳に装着し、クリップ110の対象物120への装着位置を考慮しながら、クリップ110及びイヤホンコード121を相対移動させて、所望の保持位置(例えば、イヤホンコード121が弛まない位置)に調整する。このイヤホンコード121に対するクリップ110の保持位置が確定した状態で、クリップ110を所望の装着位置(例えば、シャツ120の前立て部分)に移動させ、脚部113の正面部113aを前面側に向け、一対の脚部112,113の先端部側をシャツ120の前立て部分に差し入れる。このとき、2つのバネ付勢部111,114が協働して、一対の脚部112,113を閉じる方向に付勢するので、シャツ120が両脚部112,113上の複数の支持点に対して付勢されて支持される。ここでは、シャツ120は、クリップ開口116付近で脚部113上の突出部113bの支持点P1、突出部113b近傍の脚部112上の支持点P2、屈曲部114bに対向する脚部113上の支持点P3及び屈曲部114a近傍の支持点P4で支持される。これにより、所望の装着位置において、イヤホンコード121を保持したクリップ110をシャツ120に確実に挟み留めることができる。
【0054】
以上のように、本実施形態のクリップ110によれば、イヤホンコード等の紐状部材121を保持空間S1内から脱落させることなく当該保持空間S1内で挿通自在に保持するので、クリップ110を対象物120に装着した際のイヤホンコード121の絡みを防止することができる。また、クリップ110の装着の際に、正面側に配置される脚部113を任意の形状に形成可能にすると共に装飾可能に構成したので、クリップ110を対象物120に装着した際の意匠性を向上させることができる。さらに、紐状部材121が保持されたクリップ110を、2つの付勢部111,114からの分散挟圧によって対象物120を一定の圧力で挟み留めるので、対象物120の厚みに関わらず、クリップ110を対象物120の任意の位置に挟み留めることができる。
【0055】
本実施形態に係るクリップ110は、挟み留めるべき対象物120を複数の付勢部111,114からの分散挟圧によって抜き差し自在に挟み留めると共に、一方の付勢部114で紐状部材121を保持することを特徴とする。すなわち、クリップ110は、弾性材料からなる板材を折り返すことにより形成されるクリップ本体と、クリップ本体を形成すると共に付勢部によって閉じる方向に付勢される拡開可能な一対の脚部112,113と、を備え、付勢部は、脚部112の一部を略輪状に湾曲形成して成るバネ力を付与する第1のバネ付勢部114と、クリップ本体の折り返し部111によって形成されるバネ力を付与する第2のバネ付勢部111と、第1のバネ付勢部114を形成する湾曲部114c内部で紐状部材121を脚部112の幅方向に挿通自在に保持する保持手段と、を有し、第1および第2のバネ付勢部111,114によって一対の脚部112,113を閉じる方向に付勢して対象物120を付勢支持すると共に、保持手段によって湾曲部114c内部から脱落しないように紐状部材121を弾性保持するものを含む。
【0056】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることは言うまでもない。例えば、前述した実施形態では、挟み留められるべき対象物が紙、ファイル、衣服等の布や合成繊維であったが、本発明のクリップによって挟み留められるべき対象物としては、それ以外に、ペンや、建設作業現場などで使用されるメジャー(スケール)などが挙げられる。
【符号の説明】
【0057】
1,30,50,70,90,110 クリップ
2,3,32,33,52,53,92,93,112,113 脚部
4,5,34,35,54,55,94,95,111,114 付勢部
20,40,60,100,120 対象物
114a,114b 屈曲部
114c 湾曲部
114d 内面部
121 紐状部材
P1,P2,P3,P4 支持点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を抜き差し自在に挟み留めるためのクリップであって、挟み留めるべき対象物を複数の付勢部からの分散挟圧によって所定の支持点で支持することを特徴とするクリップ。
【請求項2】
板材を略U字状に折り返すことにより形成されるクリップ本体と、
前記クリップ本体を形成し、前記付勢部によって閉じる方向に付勢される拡開可能な一対の脚部と、
を有し、
前記付勢部は、前記脚部の一部を蛇腹状に屈曲形成して成るバネ力を付与する第1のバネ付勢部と、前記クリップ本体の折り返し部によって形成されるバネ力を付与する第2のバネ付勢部とを有するとともに、第1および第2のバネ付勢部によって一対の脚部を閉じる方向に付勢することにより、挟み留めるべき対象物が対向する両方の脚部上の複数の異なる支持点に対して付勢されて支持されるようにする、
ことを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
対象物を抜き差し自在に挟み留めるためのクリップであって、請求項1または請求項2に記載の複数のクリップが分離自在に結合されて成ることを特徴とするクリップ。
【請求項1】
対象物を抜き差し自在に挟み留めるためのクリップであって、挟み留めるべき対象物を複数の付勢部からの分散挟圧によって所定の支持点で支持することを特徴とするクリップ。
【請求項2】
板材を略U字状に折り返すことにより形成されるクリップ本体と、
前記クリップ本体を形成し、前記付勢部によって閉じる方向に付勢される拡開可能な一対の脚部と、
を有し、
前記付勢部は、前記脚部の一部を蛇腹状に屈曲形成して成るバネ力を付与する第1のバネ付勢部と、前記クリップ本体の折り返し部によって形成されるバネ力を付与する第2のバネ付勢部とを有するとともに、第1および第2のバネ付勢部によって一対の脚部を閉じる方向に付勢することにより、挟み留めるべき対象物が対向する両方の脚部上の複数の異なる支持点に対して付勢されて支持されるようにする、
ことを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
対象物を抜き差し自在に挟み留めるためのクリップであって、請求項1または請求項2に記載の複数のクリップが分離自在に結合されて成ることを特徴とするクリップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−33184(P2011−33184A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261742(P2009−261742)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(509190750)株式会社 アパートメント (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(509190750)株式会社 アパートメント (1)
【Fターム(参考)】
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