説明

クリップ

【課題】取付部材を相手部材に結合する際に、取付部材に仮止めすることができるクリップを得る。
【解決手段】クリップ10の雌部材12の隣接する切割片18の間からは、それぞれ雄部材14の係止突部17における山頂部17B及び山頂部17B側の上り傾斜面17Cと下り傾斜面17Dとが径方向外側に突出している。このため、クリップ10を取付部材の被取付孔に挿入すると、雌部材12の鍔板40の下面部40Bが、取付部材の被取付孔における挿入側の周縁部に当接すると共に、雄部材14の係止突部17の下り傾斜面17Dが取付部材の被取付孔の内周部に係合するようになっている。この結果、クリップ10を取付部材の被取付孔に仮止めすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材同士を結合するクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、部材同士を結合するクリップとしては、例えば、特許文献1がある。この従来技術のクリップでは、ピン部材の軸部を、グロメットの軸脚部に形成された中空部に挿入することにより、グロメットの弾性片を拡径し、2つの部材を結合するようになっている。また、ピン部材の仮止め片と、グロメットの隣り合う弾性片の間に形成されたスリット基端の係合受部とが係合し、グロメットからのピン部材の脱落を防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4105832号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のクリップでは、グロメットからのピン部材の脱落を防止することはできるが、クリップによって取付部材を相手部材に結合する際に、クリップを取付部材に仮止めできない。このため、取付部材を相手部材に結合する際には、取付部材の被取付孔に取付部材の取付孔を合わせた状態でクリップを被取付孔と取付孔との双方に挿入する必要があり、組付け作業性が良くない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、取付部材を相手部材に結合する際に、取付部材に仮止めすることができるクリップを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明のクリップは、相手部材の取付孔と、前記相手部材に取付けられる取付部材の被取付孔と、に挿入可能とされ、筒体を軸方向に沿った複数のスリットで周方向に分割し径方向へ弾性変形可能とされた複数の切割片と、前記複数の切割片の一方の端部に設けられ前記被取付孔より大径とされると共に前記複数の切割片が構成する中空部と連通する円孔が形成された鍔板と、を有する雌部材と、前記雌部材の円孔より大径な頭部と、前記頭部から延出され前記中空部内を軸方向へ移動可能な脚部と、前記脚部に設けられ前記雌部材の複数の切割片の間から径方向外側に突出している仮止め部と、前記脚部に設けられ前記複数の切割片を押し拡げる幅広部と、を有する雄部材と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の発明のクリップでは、取付部材を相手部材に取付ける際に、取付部材の被取付孔より大径とされているクリップの雌部材の鍔板が取付部材の被取付孔の周囲に当接すると共に、クリップの雄部材の脚部に設けられ、雌部材の複数の切割片の間から径方向外側に突出している仮止め部が、取付部材の被取付孔に係合する。このため、クリップを取付部材に仮止めすることができる。また、相手部材の取付孔へ雄部材と雌部材とを挿入し、雄部材を雌部材に押込み、雌部材の円孔より大径となっている雄部材の頭部から延出された脚部を雌部材の中空部内で軸方向へ移動すると、脚部に設けた幅広部が雌部材の複数の切割片を押し拡げ、雌部材の鍔部と雌部材の切割片とで取付部材と相手部材とを挟持する。
【0008】
請求項2記載の発明は請求項1に記載のクリップにおいて、前記仮止め部は、径方向へ弾性変形可能である。
【0009】
請求項2記載のクリップでは、前記仮止が径方向へ弾性変形可能であるため、仮止め部の径方向外側への弾性力によってクリップを取付部材に確実に仮止めすることができる。
【0010】
請求項3記載の発明は請求項1または請求項2に記載のクリップにおいて、前記仮止め部は、変形量を増加させるための中空部を径方向内側に有する。
【0011】
請求項3記載のクリップでは、仮止め部が変形量を増加させるための中空部を径方向内側に有するため、仮止め部の径方向内側への変形範囲が広くなる。この結果、係合可能な穴径の許容範囲を広げることができる。
【0012】
請求項4記載の発明は請求項1〜3の何れか1項に記載のクリップにおいて、前記雌部材に前記雄部材を挿入した状態で前記被取付孔に取付け、前記雌部材の鍔部と前記雄部材の仮止め部とで前記被取付孔の周囲を挟持する。
【0013】
請求項4記載のクリップでは、雌部材に雄部材を挿入した状態で被取付孔に取付け、雌部材の鍔部と雄部材の仮止め部とで被取付孔の周囲を挟持するため、クリップを取付部材に容易に仮止めすることができる。
【0014】
請求項5記載の発明は請求項4に記載のクリップにおいて、前記取付孔へ前記雄部材と前記雌部材とを挿入し、前記雄部材を前記雌部材に押込み、前記雌部材の鍔部と前記雌部材の切割片とで前記取付部材と前記相手部材とを挟持する。
【0015】
請求項5記載のクリップでは、取付孔へ雄部材と雌部材とを挿入し、雄部材を雌部材に押込み、雌部材の鍔部と雌部材の切割片とで取付部材と相手部材とを挟持するため、取付部材を相手部材に容易に結合できる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の本発明のクリップは、上記構成としたので、取付部材に仮止めすることができる。
【0017】
請求項2に記載の本発明のクリップは、上記構成としたので、取付部材に確実に仮止めすることができる。
【0018】
請求項3に記載の本発明のクリップは、上記構成としたので、係合可能な穴径の許容範囲を広げることができる。
【0019】
請求項4に記載の本発明のクリップは、上記構成としたので、取付部材に容易に仮止めすることができる。
【0020】
請求項5に記載の本発明のクリップは、上記構成としたので、取付部材を相手部材に容易に結合できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るクリップを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るクリップを示す下方から見た平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るクリップの仮止め状態を示す図2の3−3断面線に沿った断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るクリップの仮止め状態を示す図2の4−4断面線に沿った断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るクリップの本止め状態を示す図3に対応する断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るクリップの本止め状態を示す図4に対応する断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るクリップの他の仮止め状態を示す図3に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明のクリップの一実施形態を図1〜7に従って説明する。なお、図中矢印UPはクリップの上方方向を示す。
【0023】
(クリップの構成)
図1に示すように、本実施形態に係るクリップ10は、雌部材12とこの雌部材12に装着される雄部材14とを備えている。また、クリップ10の雄部材14は円板状の頭部20を備えており、頭部20の中央からは下方(先端)へ向って脚部16が延出されている。
【0024】
図2に示すように、雄部材14の脚部16には4本の仮止め部としての係止突部17が形成されており、これらの係止突部17は下方から見て十字状に配置されている。
【0025】
図5に示すように、雄部材14の脚部16の先端側となる雄部材14の下端部には当り部15が形成されており、当り部15は下端に向かって先細りした円錐形状となっている。また、各係止突部17の下端部17Aはそれぞれ当り部15の外周部に連結されており、当り部15の中央からは上方に向かって凸部15Aが立設されている。なお、凸部15Aの上端15Bは脚部16の下端16Aに隙間を開けて対向している。
【0026】
従って、当り部15が上方へ移動した場合には、凸部15Aの上端15Bと、脚部16の下端16Aとが当接して、当り部15のさらなる上方への移動を阻止するようになっている。
【0027】
各係止突部17は下端部17Aから上方に向かって径方向外側に側面視において山状に突出しており、山頂部17Bより下方の部位が上方に向かって上り傾斜面17Cとなっている。また、山頂部17Bより上方の部位が上方向に向かって下り傾斜面17Dとなっており、下り傾斜面17Dの上部はクリップ10の軸心10Aと平行な垂直面17Eとなっている。この垂直面17Eの上端には、クリップ10の径方向内側に伸びる延設部17Fが形成されており、延設部17Fの径方向内側端には、頭部20に達するクリップ10の軸心10Aと平行な垂直面17Gが形成されている。
【0028】
また、各係止突部17の径方向内側には中空部21が形成されており、これらの中空部21によって係止突部17の径方向内側方向(図5の矢印A方向)への変形量を増加させることができるようになっている。
【0029】
図1及び図2に示すように、クリップ10の雌部材12は複数(本実施形態では4つ)の切割片18を備えており、複数の切割片18の上端部には取付部材30の被取付孔32より大径とされた円形の鍔板40が設けられている。また、切割片18は、筒体を軸方向に沿った複数のスリットで周方向に4分割した形状となっており、クリップ10の径方向へ弾性変形可能とされている。また、クリップ10の雌部材12の隣接する切割片18の間からは、それぞれ雄部材14の係止突部17における山頂部17B及び山頂部17B側の上り傾斜面17Cと下り傾斜面17Dとが径方向外側に突出している。
【0030】
従って、図3に示すように、クリップ10を取付部材30の被取付孔32に挿入することで、雌部材12の鍔板40の下面部40Bが、取付部材30の被取付孔32における挿入側の周縁部32Aに当接すると共に、隣接する切割片18の間から径方向外側に突出している係止突部17の下り傾斜面17Dが取付部材30の被取付孔32の内周部32Bに係合する。この結果、クリップ10を取付部材30の被取付孔32に仮止めすることができるようになっている。
【0031】
なお、クリップ10を仮止めする側の部材を取付部材とし、取付部材が結合される部材を相手部材とする。
【0032】
図4に示すように、雌部材12の切割片18と対向する雄部材14の脚部16の部位には幅広部16Bが形成されており、幅広部16Bの下端には下方へ伸びる小幅部16Cが形成されている。また、脚部16の幅広部16Bにおける下端近傍の外周部には、係合凹部23が形成されている。
【0033】
図6に示すように、雌部材12の切割片18は、取付部材30の被取付孔32と相手部材34の取付孔36とに挿入可能とされている。また、クリップ10の雌部材12の鍔板40には、切割片18が構成する中空部19と連通する挿入孔42が形成されている。この挿入孔42は雄部材14の頭部20に比べて小径となっている。また、挿入孔42の上側周縁部は拡径され、座ぐり部44が形成されている。この座ぐり部44には鍔板40の外周壁部40Aに沿って環状の溝46が形成されている。
【0034】
図4に示すように、雌部材12の切割片18の先端部18Aの肉厚M1は、切割片18の上部の肉厚M2に比べて厚く(M1>M2)なっており、中空部19は、先端に向かってすり鉢状となっている。このため、切割片18の内周部に雌部材12の当り部15を挿入すると、当り部15の傾斜面が切割片18の内壁と摺動して切割片18の中心へ案内されるようになっている。また、切割片18の先端部18Aの外周には、軸線に向かう傾斜面が形成されている。この傾斜面の作用で、切割片18を取付部材30の被取付孔32と、相手部材34の取付孔36とへ容易に挿入できるようになっている。
【0035】
図6に示すように、雌部材12の切割片18の先端上部には、内壁の一部を径方向内側へ突出した凸部37が形成されている。これらの凸部37は側面視において山状に突出しており、雄部材14の脚部16の幅広部16Bに形成した係合凹部23と係合して、雄部材14を本止め位置にロックするようになっている。
【0036】
(結合作業の手順)
次に、本実施例に係るクリップ10で、取付部材30を相手部材34に結合する作業手順について説明する。
【0037】
先ず、雄部材14へ雌部材12を挿入して、雄部材14の当り部15が、雄部材14が切割片18の間を通過すると雄部材14の先端部が雌部材12の先端部に係合する。
【0038】
図4に示すように、雌部材12と雄部材14とが係合した状態で、クリップ10を取付部材30の被取付孔32に挿入すると、雌部材12の鍔板40の下面部40Bが、取付部材30の被取付孔32における挿入側の周縁部32Aに当接すると共に、隣接する切割片18の間から径方向外側に突出している係止突部17の下り傾斜面17Dが取付部材30の被取付孔32の内周部32Bに係合する。この結果、クリップ10を取付部材30の被取付孔32に仮止めすることができる。
【0039】
次に、図3及び図4に二点鎖線で示すように、相手部材34の取付孔36と、取付部材30の被取付孔32とを重ね、クリップ10を相手部材34の取付孔36に挿入する。
【0040】
次に、図5及び図6に示すように、雄部材14を雌部材12にさらに押し込むと、図6に示すように、雌部材12の切割片18は内側から雄部材14の脚部16の幅広部16Bで押し拡げられる。これによって、切割片18が拡径して、切割片18の外周面が相手部材34の取付孔36の内周部36Aに係合する。この結果、雌部材12の鍔板40と切割片18とで取付部材30と相手部材34が強固に挟持される。
【0041】
このとき、雌部材12の切割片18の凸部37が、雄部材14の脚部16の係合凹部23と係合して、雄部材14が雌部材12にロックされる。
【0042】
(作用及び効果)
このように、本実施形態のクリップ10では、雌部材12の隣接する切割片18の間から、雄部材14の係止突部17における山頂部17B及び山頂部17B側の上り傾斜面17Cと下り傾斜面17Dとが径方向外側に突出している。このため、雌部材12に雄部材14を挿入した状態で、クリップ10を被取付孔32に取付けると、雌部材12の鍔板40の下面部40Bが、取付部材30の被取付孔32における挿入側の周縁部32Aに当接すると共に、雄部材14の係止突部17の下り傾斜面17Dが取付部材30の被取付孔32の内周部32Bに係合する。この結果、クリップ10を取付部材30の被取付孔32に容易に仮止めすることができる。
【0043】
このため、取付部材30にクリップ10を仮止めした状態で、相手部材34の取付孔36と、取付部材30の被取付孔32とを重ね、クリップ10を相手部材34の取付孔36に挿入し、雄部材14を雌部材12にさらに押し込むことで、取付部材30を相手部材34に容易に結合することができる。
【0044】
この結果、取付部材30を相手部材34に結合する作業が、目視し難い位置等の困難な場合でも、作業性を向上することができると。
【0045】
また、本実施形態のクリップでは、雄部材14に設けた複数の係止突部17が、雌部材12の複数の切割片18の間から径方向外側に突出している。このため、係止突部17をクリップ10の周方向に沿った複数の箇所に形成することができる。この結果、クリップ10を取付部材30に確実に仮止めすることができる。
【0046】
また、本実施形態のクリップ10では、係止突部17が径方向へ弾性変形可能である。このため、図3と図7に示すように、取付部材30の被取付孔32の穴径が異なる場合にも、雄部材14の係止突部17の撓み量が弾性変形によって変化する。このため、クリップ10を取付部材30の被取付孔32に確実に仮止めすることができる。
【0047】
また、本実施形態のクリップ10では、係止突部17が変形量を増加させるための中空部21を径方向内側に有している。このため、係止突部17の径方向内側への変形範囲が広くなる。この結果、係合可能な被取付孔32の穴径の許容範囲を広げることができる。
【0048】
(その他の実施形態)
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、仮止め部としての係止突部17の数を4本としたが、係止突部17の数は4本に限定されず3本等の他の数でもよい。また、仮止め部は係止突部17に限定されず、クリップ10の雌部材12の隣接する切割片18の間から径方向外側に突出し、雌部材12の鍔板40とで取付部材30の被取付孔32の周囲を挟持する構成であれば、係止爪等の他の仮止め部でもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 クリップ
12 クリップの雌部材
14 クリップの雄部材
15 雄部材の当り部
15A 当り部の凸部
16 雄部材の脚部
16B 雄部材の脚部の幅広部
17 係止突部(仮止め部)
18 雌部材の切割片
20 雄部材の頭部
21 雄部材の中空部
30 取付部材
32 被取付孔
34 相手部材
36 取付孔
40 雌部材の鍔板
42 雌部材の挿入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手部材の取付孔と、前記相手部材に取付けられる取付部材の被取付孔と、に挿入可能とされ、筒体を軸方向に沿った複数のスリットで周方向に分割し径方向へ弾性変形可能とされた複数の切割片と、前記複数の切割片の一方の端部に設けられ前記被取付孔より大径とされると共に前記複数の切割片が構成する中空部と連通する円孔が形成された鍔板と、を有する雌部材と、
前記雌部材の円孔より大径な頭部と、前記頭部から延出され前記中空部内を軸方向へ移動可能な脚部と、前記脚部に設けられ前記雌部材の複数の切割片の間から径方向外側に突出している仮止め部と、前記脚部に設けられ前記複数の切割片を押し拡げる幅広部と、を有する雄部材と、
を備えたクリップ。
【請求項2】
前記仮止め部は、径方向へ弾性変形可能である請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記仮止め部は、変形量を増加させるための中空部を径方向内側に有する請求項1または請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記雌部材に前記雄部材を挿入した状態で前記被取付孔に取付け、前記雌部材の鍔部と前記雄部材の仮止め部とで前記被取付孔の周囲を挟持する請求項1〜3の何れか1項に記載のクリップ。
【請求項5】
前記取付孔へ前記雄部材と前記雌部材とを挿入し、前記雄部材を前記雌部材に押込み、前記雌部材の鍔部と前記雌部材の切割片とで前記取付部材と前記相手部材とを挟持する請求項4に記載のクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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