説明

クリーニングブラシ製造法及びクリーニングブラシ

【課題】パイル糸カット処理を不要とし、クリーニングブラシの製品価値を高め、且つ、クリーニングブラシの製造効率を向上させる。
【解決手段】経糸15b,15aと緯糸16b,16aにより上地側基布12a、下地側基布12bを帯状に織り上げるとき、上地側基布12a、下地側基布12bの中に夫々上地側パイル糸13a、下地側パイル糸13bを織り込んで切断予定部17を形成し、且つ、上地側基布12aと下地側基布12b間に前記パイル糸13a,13bを交互に織り込んで毛羽部18を形成する。この後、パイル糸13a,13bの各中間部を切断して上地側基布12aと下地側基布12bを互いに分離する。次に、基布12a,12bの各裏面に粘着テープ14を貼り付けて切断予定部17にて切断することで、パイル糸端末カット処理不要なクリーニングブラシ11を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクリーニングブラシ製造法及びクリーニングブラシに関するものであり、特に、プリンター、複写機等のトナー用プラテンロールなどを清掃するためのクリーニングブラシ製造法及びクリーニングブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、此種クリーニングブラシとしては、図7に示すように、基布1の表面に毛羽部であるパイル糸2を略直立に製織し、且つ、該基布1の裏面に粘着テープ3を貼り付けて成る織物製のクリーニングブラシ4が知られている。該クリーニングブラシ4を製造する際は、先ず、図8に示すように、上地側経糸5aと上地側緯糸6aにより帯状の上地側基布1aを織り上げると共に、下地側経糸5bと下地側緯糸6bにより帯状の下地側基布1bを織り上げる。その際、上地側基布1aと下地側基布1bを夫々織り上げながら、該上地側基布1aと下地側基布1bの間に、毛羽部となる上地側パイル糸2a、下地側パイル糸2bを交互に織り込んで、該上地側パイル糸2a、下地側パイル糸2bにより上地側基布1aと下地側基布1bを相互に連結する。
【0003】
次に、前記上地側パイル糸2a、下地側パイル糸2bの各中間部をカットラインC−Cに沿ってカッター等にて切断して、帯状に織成された上地側基布1aと下地側基布1bを互いに上下分離する。分離後、該上地側基布1a、下地側基布1bの各裏面に粘着テープ3を貼り付けると共に、図9に示すように、該上地側基布1a、下地側基布1bを所定のブラシ長さに切断する。
【0004】
このあと、該基布1a,1bの切断両端部に略直立するパイル糸2a,2bの抜け発生対策のため、図10中符号Sで示すように、該パイル糸2a,2bの略直立部分を1.5ミリ乃至2.0ミリ程ハサミで切り取る。斯くして、前記基布1a,1bの片面に毛羽部としてのパイル糸2a,2bを有する織物製のクリーニングブラシ4が製造される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−104072号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術は、粘着テープ3が貼着された基布1a,1bを所定の長さに切断した後、該基布1a,1bの切断端部のパイル糸2a,2bをハサミ等でカットする必要があるが、該パイル糸カット処理を行う際にパイル糸2a,2bの切断片(以下、糸屑と称する)が発生する。該発生した糸屑の一部は、粘着テープ3の切断表面などに付着して見栄えを悪くするため、該付着した糸屑を人手作業にて丹念に除去する必要がある。従って、該糸屑の除去作業に多くの手間を要し、クリーニングブラシ4の製造効率が低下するという欠点があった。
【0006】
又、前記糸屑の他の一部は、前記基布1a,1b表面に略直立するパイル糸2a,2bの中に混入するため、該混入した糸屑も人手作業にて除去する必要があるが、該糸屑を全て完全に除去することはできない。従って、毛羽部であるパイル糸2a,2bの中に除去できない糸屑が残存して、クリーニングブラシ4の製品価値を低下させるという問題があった。
【0007】
そこで、基布切断端部におけるパイル糸カット作業等を不要にし、クリーニングブラシの製造効率を向上させ、且つ、クリーニングブラシの製品価値を高めるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、互いに所定間隔を有する上地側基布と下地側基布を夫々経糸及び緯糸により織成するとき、切断予定部においてはパイル糸と前記経糸とによって経糸部を形成して該経糸部と前記緯糸とにより織成し、且つ、毛羽部においては前記パイル糸を前記上地側基布と下地側基布間に交互に織り込む工程と、前記毛羽部を形成するパイル糸の中間部を切断して前記上地側基布と下地側基布を互いに分離する工程と、該分離した各基布の裏面に粘着テープを貼り付けて、該基布を前記切断予定部にて所定のブラシ長さに切断する工程とを含み、前記基布の切断端部において前記パイル糸が突出しないように製織されているクリーニングブラシ製造法を提供する。
【0009】
この製造法によれば、切断予定部はパイル糸によって前記経糸とともに経糸部を形成して該経糸部と緯糸とより織成する一方、毛羽部は該パイル糸を上地側基布と下地側基布間に交互に織り込んで形成する。そして、該毛羽部であるパイル糸の中間部にて上地側基布と下地側基布を切離し、各基布の裏面に粘着テープを貼り付けて該基布を切断予定部にて切断する。斯くして、該切断端部のパイル糸は、前記基布表面から突出しないように製織される。
【0010】
請求項2記載の発明は、互いに所定間隔を有する上地側基布と下地側基布を夫々経糸及び緯糸により織成するとき、切断予定部においてはパイル糸と前記経糸とによって経糸部を形成して該経糸部と前記緯糸とにより織成し、且つ、毛羽部においては前記パイル糸を前記上地側基布と下地側基布間に交互に織り込み、前記毛羽部を形成するパイル糸の中間部を切断して前記上地側基布と下地側基布を互いに分離し、該分離した各基布の裏面に粘着テープを貼り付けて、該基布を前記切断予定部にて所定のブラシ長さに切断することにより、前記基布の切断端部において前記パイル糸が突出しないように製織して成るクリーニングブラシを提供する。
【0011】
この構成によれば、切断予定部においてはパイル糸によって経糸とともに経糸部を形成して該経糸部と記緯糸とより織成した後、該切断予定部を切断して所定長さのクリーニングブラシを得る。従って、該クリーニングブラシ切断端部のパイル糸は、基布の中に織り込まれるため、該基布表面から突出しないように製織される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明は、前記基布の切断端部においてパイル糸が突出しないように織成されるので、該切断端部におけるパイル糸カット処理が不要になると共に、従来必要であったパイル糸の切断屑(糸屑)の除去作業も不要になる。従って、クリーニングブラシの製造効率が従来方法に比べて大幅に向上する。
【0013】
請求項2記載の発明は、基布の切断端部においてパイル糸カット処理を行う必要がないので、従来のように糸屑が発生して該糸屑が毛羽部に混入したり、又は、粘着テープに糸屑が付着することがなく、クリーニングブラシの製品価値が従来品に比べて高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、基布切断端部におけるパイル糸カット作業等を不要にし、クリーニングブラシの製造効率が向上させ、且つ、クリーニングブラシの製品価値を高めるという目的を、互いに所定間隔を有する上地側基布と下地側基布を夫々経糸及び緯糸により織成するとき、切断予定部においてはパイル糸と前記経糸とによって経糸部を形成して該経糸部と前記緯糸とにより織成し、且つ、前記毛羽部においては前記パイル糸を前記上地側基布と下地側基布間に交互に織り込む工程と、前記毛羽部を形成するパイル糸の中間部を切断して前記上地側基布と下地側基布を互いに分離する工程と、該分離した各基布の裏面に粘着テープを貼り付けて、該基布を前記切断予定部にて所定のブラシ長さに切断する工程とを含み、前記基布の切断端部においてパイル糸が突出しないように製織されていることにより実現した。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図6に従って説明する。図1は本実施例に係るパイル織物製のクリーニングブラシ11を示し、毛羽部の両側に切断予定部が設けられ、該クリーニングブラシ11の基部は、所要の耐久性及び耐熱製を有する基布12により構成されている。又、該基布12の表面には、毛羽部である多数本のパイル糸13が略直立して織製され、且つ、該基布12の背面には粘着テープ(両面テープ又は片面テープ)14が貼着されている。
【0016】
前記クリーニングブラシ11は、例えばプリンター、ファクシミリ、複写機等のOA機器のトナー用プラテンロール表面にパイル糸13の先端部が接触するように取り付けられ、該ローラの回転により、該プラテンロール表面に付着したトナー等がパイル糸13によって清拭・除去される。
【0017】
次に、上記クリーニングブラシ11の製造方法を図2乃至図6を参照しながら詳述する。尚、該クリーニングブラシ11は、例えば、ジャガード装置又はドビー装置等を用いて製織される。先ず、図2又は図3に示すように、上地側基布12aと下地側基布12bは、互いに所定間隔を有して対峙するように、所要寸法の細幅又は広幅を有する帯状に平織り又は綾織りする。この場合、上地側基布12aは経糸15a及び緯糸16aにより織り上げるとともに、下地側基布12bは経糸15b及び緯糸16bにより織り上げる。
【0018】
本発明では、上地側基布12aと下地側基布12bを織り上げるとき、所定長さの切断予定部17と毛羽部18は、上地側基布12a、下地側基布12bの長さ方向Lにおいて交互に連続して形成される。その際、前記切断予定部17は、上地側パイル糸13a、下地側パイル糸13bと前記経糸15a,経糸15bとによって経糸部を形成して、該経糸部と前記緯糸16a,緯糸16bとより上地側基布12a,下地側基布12bを織成する。斯くして、該上地側基布12a、下地側基布12b表面から上地側パイル糸13a、下地側パイル糸13bが突出しないように製織される。
【0019】
又、前記毛羽部18は、該上地側パイル糸13aと下地側基布13b間に上地側パイル糸13a及び下地側パイル糸13bを交互に所定回数だけ繰り返し織り込むことにより、該上地側パイル糸13aと下地側基布13bが毛羽部であるパイル糸13a,13bによって相互連結される。
【0020】
前記上地側パイル糸13a及び下地側パイル糸13bは、図4に例示するように、経糸15a,15bと同一方向に配列して、該パイル糸13a,13bを緯糸16a,16bに交錯させて織り込む。この場合、図2又は図3に示すように、毛羽部18を形成する前記パイル糸13a,13bの折り返し部分は、製品の寸法等に応じて緯糸16a,16bに対し、1本ずつ又は2本以上ずつ交互に絡合させて織成することができる。尚、説明の都合上、図2及び図3では緯糸16a,16bを拡大して示し、又、図3では経糸15a,15bを省略している。
【0021】
次に、毛羽部15を形成する上地側パイル糸13a、下地側パイル糸13bの各中間部をカットライン(C−C線)に沿ってカッター等にて切断して、帯状に織成された上地側基布12aと下地側基布12bを互いに上下分離する。分離後、図5に示すように、該上地側基布12a、下地側基布12bの各裏面に粘着テープ14を貼り付けると共に、該上地側基布12a、下地側基布12bを前記切断予定部17の中央位置Pにて切断して、上地側基布12a、下地側基布12bを所定のブラシ長さに整形する。
【0022】
斯くして、図6に示すように、該基布12の表側面に毛羽部たるパイル糸13を略直立して織製し、且つ、該基布12の裏側面に粘着テープ14を貼着して成るパイル織物製のクリーニングブラシ11が完成する。
【0023】
上述の如く本実施例は、基布12の裏面に粘着テープ14を貼着したのち、前記切断予定部17にて切断することにより、ブラシ長さの寸法安定性が高く、且つ、抜け毛や切れ毛のない高品質のクリーニングブラシ11が製造される。又、ブラシ両端部のパイル糸13は、基布12の中に織り込まれて表面に突出しないので、従来必要であったパイル糸カット処理が不要になる。
【0024】
本実施例によれば、糸屑が一切発生しないので、従来のように糸屑が粘着テープ14表面に付着したり、或いは、毛羽部であるパイル糸13の中に糸屑が混入することがない。従って、クリーニングブラシ11の見栄えが著しく向上して、高い製品価値を有するクリーニングブラシ11が安価に量産化される。又、パイル糸カット作業及び糸屑の除去作業などが不要となるので、製造時間が従来に比べて大幅に短縮して、クリーニングブラシ11の製造効率が著しく改善される。
【0025】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る実施例を示し、クリーニングブラシの概略斜視図。
【図2】図1のクリーニングブラシに係る基布の織り込み態様例を説明する正面図。
【図3】図1のクリーニングブラシに係る基布の他の織り込み態様例を説明する正面図。
【図4】本実施例に係る基布の経糸とパイル糸の織成関係を説明する要部斜視図。
【図5】本実施例に係る基布の切断予定部と毛羽部を説明する概略斜視図。
【図6】本実施例に係る基布を切断予定部にて切断した状態を説明する概略斜視図。
【図7】従来例を示し、クリーニングブラシの概略斜視図。
【図8】従来例のクリーニングブラシに係る基布の織込み態様例を説明する正面図。
【図9】従来例のクリーニングブラシのパイル糸カット処理を実施する前の状態を説明する正面図。
【図10】従来例のクリーニングブラシのパイル糸カット処理を実施した後の状態を説明する正面図。
【符号の説明】
【0027】
11 クリーニングブラシ
12 基布
12a 上地側基布
12b 下地側基布
13 パイル糸
13a 上地側パイル糸
13b 下地側パイル糸
14 粘着テープ
15a 上地側経糸
15b 下地側経糸
16a 上地側緯糸
16b 下地側緯糸
17 切断予定部
18 毛羽部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに所定間隔を有する上地側基布と下地側基布を夫々経糸及び緯糸により織成するとき、切断予定部においてはパイル糸と前記経糸とによって経糸部を形成して該経糸部と前記緯糸とにより織成し、且つ、毛羽部においては前記パイル糸を前記上地側基布と下地側基布間に交互に織り込む工程と、
前記毛羽部を形成するパイル糸の中間部を切断して前記上地側基布と下地側基布を互いに分離する工程と、
該分離した各基布の裏面に粘着テープを貼り付けて、該基布を前記切断予定部にて所定のブラシ長さに切断する工程とを含み、
該基布の切断端部において前記パイル糸が突出しないように製織されていることを特徴とするクリーニングブラシ製造法。
【請求項2】
互いに所定間隔を有する上地側基布と下地側基布を夫々経糸及び緯糸により織成するとき、切断予定部においてはパイル糸と前記経糸とによって経糸部を形成して該経糸部と前記緯糸とにより織成し、且つ、毛羽部においては前記パイル糸を前記上地側基布と下地側基布間に交互に織り込み、前記毛羽部を形成するパイル糸の中間部を切断して前記上地側基布と下地側基布を互いに分離し、該分離した各基布の裏面に粘着テープを貼り付けて、該基布を前記切断予定部にて所定のブラシ長さに切断することにより、該基布の切断端部において前記パイル糸が突出しないように製織したことを特徴とするクリーニングブラシ。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−298882(P2007−298882A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128604(P2006−128604)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(596035662)久保田織物株式会社 (2)
【Fターム(参考)】