説明

クリーニングブレード

【課題】球形トナーに対しても良好なクリーニング性能を有するクリーニングブレードを提供する。
【解決手段】トナー担持体に当接して残留トナーを除去するためのポリウレタンエラストマーからなるクリーニングブレードであって、下記条件(1)から(4)を満たすことを特徴とするクリーニングブレード。(1)100%モジュラスが4.0MPa以上、6.0MPa以下、(2)引張り試験における切断時伸びが250%以下、(3)25℃における反発弾性率が15%以上、27%以下、(4)硬度(IRHD)が70°以上、80°以下。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等の静電転写プロセスを利用した画像形成装置に用いられるクリーニングブレードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機やレーザービームプリンターは、感光ドラム上に形成された静電潜像上にトナーを付着させて、これを複写紙に転写させて複写を行うものである。その複写後に感光ドラム上に残ったトナーを除去する方法の一つにポリウレタンエラストマーからなるブレード部分と支持金具(ホルダー)から構成されるクリーニングブレードが実用化されて用いられている。
【0003】
従来、このクリーニングブレードに用いられる材料としては、耐磨耗性等の機械的強度に優れ、かつクリープ性(当接応力による永久変形)の少ないポリエステル系ウレタンエラストストマー、中でも熱硬化性ウレタンエラストマーが用いられてきた。このポリエステル系ウレタンエラストマーは、ポリイソシアネート、ポリオール、鎖延長剤および触媒を用い、プレポリマー法、セミワンショット法、ワンショット法等により製造される。例えば、プレポリマー法によりクリーニングブレードを製造する場合は、ポリイソシアネートとポリオールを用いてプレポリマーを調整し、このプレポリマーに鎖延長剤及び触媒を添加したのち、これを成形用の金型に注入して硬化することにより製造される。
【0004】
クリーニングブレードが、残留トナーを完全に除去するためには感光ドラム外周面上へのブレード部材の接触が、常に一定の状態に保たれている必要がある。このため、クリーニングブレードと感光ドラムの位置関係を規制したり、支持金具をバネで加圧したりする方法が一般的に行われている。しかしながら、近年、電子写真複写機、レーザービームプリンターの高画質化に伴い、従来よりも粒径が小さい球形のトナーが使用されるようになった。これに伴い、従来に比べてトナーが感光ドラムとクリーニングブレードの間をすり抜け易くなり、クリーニング不良が発生し易くなっている。
【0005】
そこで、球形トナーに対するクリーニング不良を防止する対策として例えば、感光ドラム表面にかかるブレードエッジ部の線圧を上昇させる方法が挙げられる。しかし、単なる線圧の上昇による対策では、ブレードエッジ部の磨耗またはクリーニングブレードの当接によるドラムの磨耗が促進されたり、ブレードのビビリ振動による異音が発生する等の技術的問題がある。
【0006】
また、球形トナーと不定形トナーとを特定の割合で混合させて使用することにより、これらの技術的問題の発生を防止することを目的とした方法(特許文献1,2)が提案されている。しかしながら、このような方法を用いた場合であっても、球形トナーが不定形トナーの隙間をすり抜けブレードエッジ部に進んですり抜けることがあるため、球形トナーに対するクリーニング不良の改善は未だ十分になされていないのが現状である。
【特許文献1】特開平08−62893号公報
【特許文献2】特開平08−95286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明者は、球形トナーに対して良好なクリーニング性能を有するクリーニングブレードを得るため、種々の検討を行った。その結果、球形トナーに対するクリーニング性能にはクリーニングブレードの弾性、機械的強度及び硬度が大きく影響していることを発見した。すなわち、(1)引張り試験における100%モジュラス、(2)破断時の伸び、(3)25℃における反発弾性率、(4)硬度を所定範囲に設定することにより、球形トナーに対して良好なクリーニング性能を達成できることを見出し本発明に至ったものである。
【0008】
本発明はクリーニングブレードが、特定の特性を有することにより、球形トナーに対しても良好なクリーニング性能を有するクリーニングブレードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有することを特徴とする。
1.トナー担持体に当接して残留トナーを除去するためのポリウレタンエラストマーを含有するクリーニングブレードであって、
下記条件(1)から(4)を満たすことを特徴とするクリーニングブレード。
(1)100%モジュラスが4.0MPa以上、6.0MPa以下
(2)引張り試験における切断時伸びが250%以下
(3)25℃における反発弾性率が15%以上、27%以下
(4)硬度(IRHD)が70°以上、80°以下
2.トナー担持体に当接して残留トナーを除去するためのポリウレタンエラストマーを含有するクリーニングブレードであって、
前記ポリウレタンエラストマーが、下記(A)から(E)の材料を含有し、かつ下記式(I)で算出される(A)ポリイソシアネートの濃度が1.08ミリモル/g以上、1.30ミリモル/g以下であることを特徴とする上記1に記載のクリーニングブレード。
(A)ポリイソシアネート
(B)数平均分子量が2000以上、4000以下のポリオール
(C)分子量が200以下の鎖延長剤
(D)数平均分子量が200より大きく2000より小さいポリオール
(E)硬化用触媒
(I) (A)ポリイソシアネートの濃度(ミリモル/g)
=Wiso/(Mniso×Wall)×1000
(ただし、式(I)中、Wisoは(A)ポリイソシアネートの仕込み量(g)、Mnisoは(A)ポリイソシアネートの数平均分子量、Wallは(A)から(E)の材料の合計質量(g)を表す)。
【0010】
3.前記(A)ポリイソシアネートが、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートであることを特徴とする上記2に記載のクリーニングブレード。
4.前記(D)ポリオールは、数平均分子量が500以上、1500以下のポリへキシレンアジペートポリオールであることを特徴とする上記2又は3に記載のクリーニングブレード。
5.前記(E)硬化用触媒として、酢酸カリウム及び末端に1つの水酸基を有するアミン系化合物を含むことを特徴とする上記2から4の何れか1項に記載のクリーニングブレード。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、球形トナーに対しても良好なクリーニング性能を有するクリーニングブレードを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(クリーニングブレード)
図1に、本発明のクリーニングブレードを備えたクリーニング手段の一例を示す。図1では、クリーニング手段は、金属製のホルダー(剛性板状体)21に本発明のクリーニングブレード22が取り付けられて構成されている。このクリーニングブレード22の一つの端部が端部稜線部23を構成し、この端部稜線部23を介してクリーニングブレードはトナー担持体に当接し、この端部稜線部23によってトナー担持体上の残留トナーを掻き出し、除去する。
【0013】
本発明のクリーニングブレードは、下記条件(1)から(4)を満たし、ポリウレタンエラストマーを含有するクリーニングブレードである。
(1)100%モジュラスが4.0MPa以上、6.0MPa以下
(2)引張り試験における切断時伸びが250%以下
(3)25℃における反発弾性率が15%以上、27%以下
(4)硬度(IRHD)が70°以上、80°以下。
以下、実施形態のクリーニングブレードについて詳細に説明する。
【0014】
本実施形態のクリーニングブレードは、(1)100%モジュラスが4.0MPa以上、6.0MPa以下である。100%モジュラスが4.0MPa未満の場合、感光ドラム表面にかかるブレードエッジ部の線圧が不十分であり、トナーがすり抜け、クリーニング不良が発生し易くなる。また、ブレードエッジが変形しやすくなるため、欠けを生じ易くなる。一方、100%モジュラスが6.0MPaを超える場合、感光ドラム等(トナー担持体)の表面にかかるブレードエッジの線圧が高くなり、ブレードエッジまたは感光ドラム表面の磨耗が発生しやすくなる。100%モジュラスは、4.5MPa以上、5.5MPa以下が好ましい。100%モジュラスがこれらの範囲内にあることによって、より優れた耐久性を有するクリーニングブレードとすることができる。
【0015】
(2)引張り試験における切断時伸びが250%以下の必要がある。引張り試験時の切断時伸びが250%を超える場合、感光ドラムとの摺擦によるブレードエッジの欠けが生じた際、欠けが大きくなり易く、クリーニング不良の発生原因となる。引張り試験時の伸びは230%以下であることが好ましい。引張り試験時の伸びがこれらの範囲内にあることによって、より効果的にクリーニング不良を防止することができる。
【0016】
(3)25℃における反発弾性率が15%以上、27%以下となっている。反発弾性率が15%未満の場合、ブレードエッジの動きが鈍くなり、十分なクリーニング性能が得られない。一方、反発弾性率が27%を超える場合、感光ドラムとブレードエッジとの摺擦において、ブレードエッジの動き(振動)が大きくなりすぎ、トナーがすり抜け易くなる。25℃における反発弾性率は20%以上、25%以下であることが好ましい。25℃における反発弾性率がこれらの範囲内にあることによって、より十分なクリーニング性能を有することができる。
【0017】
また、本実施形態のクリーニングブレードは、(4)硬度(IRHD)が70°以上、80°以下となっている。硬度が70°(IRHD)未満の場合、ブレードエッジがやわらかくトナーがすり抜けやすくなる。一方、硬度が80°(IRHD)を超える場合、ブレードエッジが固くなりすぎ、感光ドラムの磨耗が早くなる。硬度は72°以上、76°以下であることが好ましい。硬度がこれらの範囲内にあることによって、クリーニングブレードの耐久性とクリーニング性能について最適化させることができる。
【0018】
そして、上記のように(1)100%モジュラス、(2)切断時伸び、(3)反発弾性率及び(4)硬度を総合的に制御することにより球形トナーに対しても、良好なクリーニング性能を有するクリーニングブレードを得ることができる。
【0019】
ここで、クリーニングブレードを構成するポリウレタンエラストマーは、下記(A)から(E)の材料を含有し、且つ下記式(I)で算出される(A)ポリイソシアネートの濃度が1.08ミリモル/g以上、1.30ミリモル/g以下であることが好ましい。
(A)ポリイソシアネート
(B)数平均分子量が2000以上、4000以下のポリオール
(C)分子量が200以下の鎖延長剤
(D)数平均分子量が200より大きく、2000より小さいポリオール
(E)硬化用触媒
(I) (A)ポリイソシアネートの濃度(ミリモル/g)
=Wiso/(Mniso×Wall)×1000
(ただし、式(I)中、Wisoは(A)ポリイソシアネートの仕込み量(g)、Mnisoは(A)ポリイソシアネートの数平均分子量、Wallは(A)から(E)の材料の合計質量(g)を表す)。
【0020】
ここで、(A)ポリイソシアネートの濃度が、1.08ミリモル/g未満であるとポリウレタンエラストマー中のハードセグメント量が少なくなり軟らかくなるため、上記条件(1)〜(4)を満たさなくなる場合がある。一方、(A)ポリイソシアネート濃度が1.30ミリモル/gを超えると、ポリウレタンエラストマー中のハードセグメント量が多くなり過ぎ、硬くなるため、上記条件(1)〜(4)の物性を満たさなくなる場合がある。このため、(A)ポリイソシアネートの濃度は、1.08ミリモル/g以上、1.30ミリモル/g以下が好ましく、1.10ミリモル/g以上、1.20ミリモル/g以下がより好ましく、1.11ミリモル/g以上、1.16ミリモル/g以下が更に好ましい。(A)ポリイソシアネートの濃度がこれらの範囲内にあることによって、クリーニングブレードは適度な硬度を有することができ、優れたクリーニング性能を達成することができる。
【0021】
(B)ポリオールの数平均分子量は2000以上、4000以下が好ましく、2300以上、2700以下がより好ましい。(B)ポリオールの数平均分子量がこれらの範囲内にあることによって、クリーニングブレードは優れた硬度とクリーニング性能を有することができる。
【0022】
(D)ポリオール数平均分子量は200より大きく、2000より小さいのが好ましく、500以上、1500以下が好ましい。(D)ポリオールの数平均分子量がこれらの範囲内にあることによって、クリーニングブレードは優れた耐久性とクリーニング性能を有することができる。
【0023】
また、(C)鎖延長剤の分子量は200以下が好ましく、150以下がより好ましい。鎖延長剤の分子量は、クリーニングブレードの弾性、機械的強度及び硬度に大きく影響しており、分子量がこれらの範囲内にあることによって、トナーのすり抜け及びクリーニングブレードの磨耗を効果的に防止することができる。
【0024】
また、本実施形態では上記(A)〜(E)の材料を含有するポリウレタンエラストマー用材料を用いることにより、金型への流れ性がよく収縮ムラに起因する表面模様が発生しなくなる。このため、クリーニングブレードの生産効率を高めることができる。
【0025】
ポリウレタンエラストマー中の上記ポリウレタンエラストマー用材料(A)〜(E)の好ましい含量を以下に記載する。
(A)ポリイソシアネート:27質量%以上、32質量%以下
(B)ポリオール:50質量%以上、58質量%以下
(C)鎖延長剤:3.4質量%以上、4.6質量%以下
(D)ポリオール:10質量%以上、15質量%以下
(E)硬化用触媒:0.01質量%以上、0.07質量%以下。
以下に、上記材料(A)〜(E)について更に詳細に説明する。
【0026】
(A)ポリイソシアネート
(A)ポリイソシアネートとしては、特に制限されるものではなく以下のポリイソシアネートを使用できる。例えば、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジイソシアネート、ポリメチレンフェニルポリイソシアネート、オルトトルイジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、ジメチルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を併用して用いてもよい。中でも、反応性、安全性等の点で4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを用いるのがこのましい。
【0027】
(B)ポリオール、(D)ポリオール
上記(A)ポリイソシアネートとともに用いられる(B)ポリオール及び(D)ポリオールとしては例えば、ポリエチレンアジペートポリオール、ポリブチレンアジペートポリオール、ポリヘキシレンアジペートポリオール、(ポリエチレン/ポリプロピレン)アジペートポリオール、(ポリエチレン/ポリブチレン)アジペートポリオール、(ポリエチレン/ポリネオペンチレン)アジペートポリオールなどのアジペート系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。また、カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトン系ポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオールが挙げられる。また、ポリカーボネートジオールを用いても良い。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
なお、(B)ポリオールと(D)ポリオールとしては同じポリオールを用いても異なるポリオールを用いても良いが、これらのポリオールの数平均分子量の範囲は異なる。中でも(D)ポリオールとしては、成形性、物性の点から、数平均分子量500以上、1500以下のポリヘキシレンアジペートポリオールが好ましい。
【0029】
(C)鎖延長剤
上記(C)鎖延長剤としては例えば、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、へキサンジオール、1,4−シクロへキサンジオール、1,4−シクロへキサンジメタノール、キシリレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,2,6−へキサントリオール等の数平均分子量が200以下のポリオールが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0030】
(E)硬化用触媒
上記硬化用触媒としては、三級アミン等のアミン系化合物、有機金属化合物等が挙げられる。三級アミンとしては、トリエチルアミン等のトリアルキルアミンや、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン等のテトラアルキルジアミンや、ジメチルエタノールアミン等のアミノアルコールや、エトキシル化アミンや、エトキシル化ジアミンや、ビス(ジエチルエタノールアミン)アジペート等のエステルアミンやトリエチルジアミンやN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン等のシクロヘキシルアミン誘導体や、N−メチルホルマリン、N−(2−ヒドロキシプロピル)−ジメチルモルホリン等のモルホリン誘導体や、N,N’−ジエチル−2−メチルピペラジン、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルピペラジン等のピペラジン誘導体が挙げられる。
【0031】
この中では、反応性とともに、成形後にブルームして他の部品に影響を及ぼすことのない末端に1つの水酸基を有するアミン系化合物が好ましい。アミン系化合物としては、N、N,N’−トリメチルアミノプロピルエタノールアミンが好ましい。
上記有機金属触媒としては、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、酢酸カリウム等が挙げられる。好ましくは、酢酸カリウムが挙げられる。
【0032】
(クリーニングブレードの製造方法)
本実施形態のクリーニングブレードは、上記各材料(A)〜(E)を用い、常法に準じて製造することができる。具体的には、プレポリマー法、セミワンショット法、ワンショット法に準じて製造できる。
【0033】
本発明では、プレポリマー法に準じて例えば、次のようにしてクリーニングブレードを製造する。まず、クリーニングブレード用成形型を準備する。次にポリオール(好ましくは、(A)ポリイソシアネートと(B)ポリオール)を部分的に重合したポリウレタンエラストマー用プレポリマー、(D)ポリオール、(E)硬化用触媒及び(C)鎖延長剤を投入し、ミキシングチャンバー内で攪拌し液状混合物を得る。これを上記成形型内に注入、反応硬化させ、次いで硬化物を脱型し、所定の寸法に切断することにより、クリーニングブレードを製造することができる。
【0034】
(電子写真装置)
本発明のクリーニングブレードを組み込んだ電子写真装置の一例の概略図を図2に示す。
この電子写真装置は、感光体2、帯電手段である帯電器1、露光手段であるROS(潜像書込装置)13、現像手段である四体の現像器31〜34を有する現像ロール4を備える。また、転写手段である中間転写ベルト40及び二次転写器48、クリーニング手段であるクリーナ50、定着器64、及び給排紙システム60〜62、65等を有する。
【0035】
現像器31は、K(黒)の二成分現像剤を収容する現像容器37aと、現像容器37aに設けられた現像スリーブ35aを有する。また、現像スリーブ35a上に担持される現像剤を規制してスリーブ上に形成される磁気ブラシの穂高を規制する規制ブレード36aを有する。現像器32はY(イエロー)の現像剤、現像器33にはM(マゼンタ)の現像剤、現像器34はC(シアン)の現像剤が収容されているおり、収容される現像剤以外は現像器31と同様に構成されている。
【0036】
感光体クリーナ50は、感光体2の表面に当接するクリーニングブレード52と、クリーニングブレードによって除去されたトナー粒子等を収容するクリーニング容器51とを有する。感光体2は矢印Da方向に回転しており、その表面は帯電器1により一様に帯電された後、ROS13からのレーザービームLにより露光走査されて静電潜像が形成される。フルカラー画像を形成する場合は、K(黒)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の四色の画像に対応した静電潜像が順次形成され、モノクロ画像の場合はK(黒)画像に対応した静電潜像のみが形成される。現像器31〜34は、現像ロール4の回転によって現像位置へ搬送され、現像領域Bを通過する感光体2表面上の静電潜像をトナー像にする。
【0037】
一次転写後、感光体2表面上の残留トナーは、クリーニングブレード52により除去される。給紙トレイ60に収容された記録シートSは、所定のタイミングでピックアップロール61により取り出され、レジロール対62に搬送される。レジロール対62は、一次転写された多重トナー像または単色トナー像が二次転写領域Eに移動するのにタイミングを合わせて、二次転写領域Eに記録シートSを搬送する。二次転写領域Eにおいて二次転写器48は、中間転写ベルト40上のトナー像を記録シートSに静電的に一括して二次転写する。二次転写後の中間転写ベルト40はベルトクリーナ47によりクリーニングされ、ベルト上の残留トナーが除去される。
【0038】
トナー像が二次転写された記録シートSは、シート搬送ベルト63により定着器64に搬送され、定着器64により加熱定着される。トナー像が定着された記録シートSは、記録シート排出トレイ65に排出される。
【0039】
この電子写真装置において、上記クリーニングブレード52として本発明のクリーニングブレードを使用することができる。この場合、感光体2がトナー担持体となる。
本発明の電子写真用クリーニングブレードはその他、複写機、レーザービームプリンタ、エルイーディープリンタ(LEDプリンタ)、電子写真製版システムなどの電子写真技術を応用した電子写真装置のクリーニングブレードとして用いることができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明の実施例および比較例を示す。本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
(ポリウレタンエラストマー用材料の調整)
表1に示す割合にて、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI:(A)ポリイソシアネート)とポリブチレンアジペートポリオール(PBA,数平均分子量2000:(B)ポリオール)を80℃窒素雰囲気下で120分間反応させ、プレポリマーを得た。また、表1に示す割合にて、1,4−ブタンジオール(1,4−BD:(C)鎖延長剤)、トリメチロールプロパン(TMP:(C)鎖延長剤)、ポリへキシレンアジペートポリオール(PHA,数平均分子量1000:(D)ポリオール)および(E)硬化用触媒を混合し、硬化剤を得た。
上記プレポリマーと上記硬化剤とを成形を行うときに混合し、ポリウレタンエラストマー用材料を調整した。
【0041】
(クリーニングブレードの成形)
あらかじめ、支持部材としてホルダーを用意し、このホルダーの片端面に接着剤を塗布した。上型と下型で構成されるクリーニングブレード用成形型に、上記ホルダーに接着剤を塗布した片端部がキャビティ内に突出した状態で配置した。次に、上記ポリウレタンエラストマー用材料をキャビティ内に注入した。これを130℃の加熱温度で反応硬化させ、ついで硬化物を脱型し所定の寸法に切断してクリーニングブレードを作製した。
【0042】
このように作製したクリーニングブレードについて、下記のようにしてポリイソシアネート濃度の計算、100%モジュラス、切断時伸び、反発弾性率、硬度(IRHD)の測定および画像評価を行った。
【0043】
[ポリイソシアネート濃度]
得られたクリーニングブレードのポリイソシアネート濃度は、下記式(I)により計算した。この結果を表1,2に示す。
(I) (A)ポリイソシアネート濃度(ミリモル/g)=Wiso/(Mniso×Wall)×1000
(ただし、上記(I)式中、Wisoは(A)ポリイソシアネートの仕込み量(g)、Mnisoは(A)ポリイソシアネートの数平均分子量、Wallは(A)〜(E)の材料の合計質量(g)を表す。なお、(A)ポリイソシアネートの仕込み量(g)とは、クリーニングブレード製造のためにポリウレタンエラストマー用材料中に実際に加えた(A)ポリイソシアネートの量(g)を表す。また、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)用の単分散ポリスチレンをGPCにより、そのピークカウント数と単分散ポリスチレンの数平均分子量との検量線を作成し、常法に従って算出する。かかるサンプルの測定条件は、カラム:G3000PWXL×2本(東ソー社製)、溶出溶媒:20mMリン酸緩衝液、検出器:示差屈折計、流速:0.5mL/分、試料溶液使用量:10μL、およびカラム温度:45℃とした。)
[(1)100%モジュラスの測定]
作製したクリーニングブレードに上島製作所製の引張り試験機(ユニトロン TS−3013)を用い、JIS K 6251に基づいて測定を行った。結果を表3に示す。
[(2)引張り試験における切断時伸びの測定]
作製したクリーニングブレードに上島製作所製の引張り試験機(ユニトロン TS−3013)を用い、JIS K 6251に基づいて測定を行った。結果を表3に示す。
【0044】
[(3)反発弾性率の測定]
作製したクリーニングブレードに上島製作所製のリュプケ式反発弾性試験装置を用い、JIS K 6255に基づいて25℃での測定を行った。結果を表3に示す。
[(4)硬度(IRHD)]
作製したクリーニングブレードにウォーレス(H.W.WALLACE)社製の硬度計を用い、JIS K 6253に基づいて測定を行った。結果を表3に示す。
【0045】
[画像評価]
作製したクリーニングブレードをLASER SHOT LBP−2510に組み込んでクリーニング性の試験を行い、クリーニング不良の有無を観察した。ここで、クリーニング性が良好なもの(クリーニング不良発生無し)を○、クリーニング不良が発生したものについてその程度が軽度のものについて△、クリーニング不良の程度が重度であったものを×で示した。結果を表3に示す。
【0046】
(実施例2)
(B)ポリオールに数平均分子量2000のポリブチレンアジペートポリオールを使用し、表1に示す配合でプレポリマーおよび硬化剤を調整した以外は、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製し、評価を行った。この結果を表3に示す。
【0047】
(実施例3)
(B)ポリオールに数平均分子量2600のポリへキシレンアジペートポリオールを使用し、表1に示す配合でプレポリマーおよび硬化剤を調整した以外は、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製し、評価を行った。この結果を表3に示す。
【0048】
(比較例1)
(B)ポリオールに数平均分子量2000のポリブチレンアジペートポリオールを使用し、硬化剤中に(B)ポリオールの数平均分子量より小さく(C)鎖延長剤の分子量より大きい数平均分子量を有する(D)ポリオールを添加しなかった。また、表2に示す配合でプレポリマーおよび硬化剤を調整した以外は、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製し、評価を行った。結果を表4に示す。
【0049】
(比較例2)
(B)ポリオールに数平均分子量2000のポリブチレンアジペートポリオールを使用し、(B)ポリオールの数平均分子量より小さく(C)鎖延長剤の分子量より大きい数平均分子量を有する(D)ポリオールとして数平均分子量1000のポリブチレンアジペートを使用した。そして、表2に示す配合でプレポリマーおよび硬化剤を調整した以外は、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製し、評価を行った。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
なお、表1および表2中の1、4−BD、TMPの欄中の数字は(質量部)を表す。また、(E)硬化用触媒欄中の数字は、硬化体(クリーニングブレード)中の含量(質量%)を表す。
【0053】
また、上記各構成材料としては以下のものを用いた。
ポリイソシアネート(MDI):ミリオネートMT(商品名)、日本ポリウレタン工業(株)社製
ポリブチレンアジペートポリオール(PBA−2000):ニッポラン4010(商品名)、日本ポリウレタン工業(株)社製
ポリブチレンアジペートポリオール(PBA−1000):ニッポラン4009(商品名)
ポリへキシレンアジペートポリオール(PHA−2000):ニッポラン4073(商品名)
1、4−ブタンジオール(1、4−BD:分子量90.1):三菱化学(株)社製
トリメチロールプロパン(TMP:分子量134):三菱ガス化学(株)社製
硬化用触媒(アミン触媒):POLYCAT 17(商品名)、東ソー(株)社製
硬化用触媒(酢酸カリウム):P15(商品名)、エアプロダクツジャパン社製
【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
表3、4から分かるように、実施例1〜3では画像評価が「○」であり、クリーニング不良が発生せず良好なクリーニング性能を示している。これに対して、比較例1では(D)ポリオールを含んでおらず、100%モジュラスが3.7MPaとなっており本発明の範囲外となっている。また、比較例2では(A)ポリイソシアネートの濃度が1.07(ミリモル/g)、反発弾性率が28%となっており本発明の範囲外となっている。このため、比較例1、2は画像評価がそれぞれ「△」、「×」となっており、クリーニング不良が発生していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のクリーニングブレードを備えたクリーニング手段の一例を説明する模式図である。
【図2】本発明のクリーニングブレードを組み込んだ電子写真装置の一例を表す概略図である。
【符号の説明】
【0058】
1 帯電器
2 感光体
3 前露光装置
4 現像ロール
10 原稿台ガラス
11 光源
12 CCD
13 潜像書込装置(ROS)
21 ホルダー
22 クリーニングブレード
23 端部稜線部
30 現像ロール回転軸
31〜34 現像器
35a〜d 現像スリーブ
36a〜d 規制ブレード
37a〜d 現像容器
40 中間転写ベルト
41 位置センサ
42 一次転写ロール
43 テンションロール
44 二次転写用バックアップロール
45 ベルト駆動ロール
46、47 アイドラロール
48 二次転写器
49 ベルトクリーナ
50 感光体クリーナ
51 クリーニング容器
52 クリーニングブレード
60 給紙トレイ
61 ピックアップロール
62 レジロール対
63 シート搬送ベルト
64a〜b 定着器
65 記録シート排出トレイ
A 潜像書込位置
B 現像領域
D 一次転写領域
Da 感光体の回転方向
E 二次転写領域
G 原稿
L ROSからのレーザービーム
L1 硬化層の自由長方向の長さ
L2 硬化層のクリーニングブレードの厚み方向の長さ
S 記録シート
T 硬化層自体の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー担持体に当接して残留トナーを除去するためのポリウレタンエラストマーを含有するクリーニングブレードであって、
下記条件(1)から(4)を満たすことを特徴とするクリーニングブレード。
(1)100%モジュラスが4.0MPa以上、6.0MPa以下
(2)引張り試験における切断時伸びが250%以下
(3)25℃における反発弾性率が15%以上、27%以下
(4)硬度(IRHD)が70°以上、80°以下
【請求項2】
トナー担持体に当接して残留トナーを除去するためのポリウレタンエラストマーを含有するクリーニングブレードであって、
前記ポリウレタンエラストマーが、下記(A)から(E)の材料を含有し、かつ下記式(I)で算出される(A)ポリイソシアネートの濃度が1.08ミリモル/g以上、1.30ミリモル/g以下であることを特徴とする請求項1に記載のクリーニングブレード。
(A)ポリイソシアネート
(B)数平均分子量が2000以上、4000以下のポリオール
(C)分子量が200以下の鎖延長剤
(D)数平均分子量が200より大きく2000より小さいポリオール
(E)硬化用触媒
(I) (A)ポリイソシアネートの濃度(ミリモル/g)
=Wiso/(Mniso×Wall)×1000
(ただし、式(I)中、Wisoは(A)ポリイソシアネートの仕込み量(g)、Mnisoは(A)ポリイソシアネートの数平均分子量、Wallは(A)から(E)の材料の合計質量(g)を表す)。
【請求項3】
前記(A)ポリイソシアネートが、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートであることを特徴とする請求項2に記載のクリーニングブレード。
【請求項4】
前記(D)ポリオールは、数平均分子量が500以上、1500以下のポリへキシレンアジペートポリオールであることを特徴とする請求項2又は3に記載のクリーニングブレード。
【請求項5】
前記(E)硬化用触媒として、酢酸カリウム及び末端に1つの水酸基を有するアミン系化合物を含むことを特徴とする請求項2から4の何れか1項に記載のクリーニングブレード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−139744(P2008−139744A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328000(P2006−328000)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】