説明

クリーニング用具

【課題】皮革の起毛製品の汚れ除去に好適なクリーニング用具を提供すること。
【解決手段】メラミンフォームなどの連続気泡発泡成形体2の全体に、塩化ビニル系ポリマーなどのポリマー組成物を含浸させ、硬化させる。こうして得られるクリーニング用具1は、連続気泡発泡成形体2の脆弱性が改善されている。しかも、スエードなどの皮革の起毛製品に擦り付けることにより、起毛製品の表面に付着した汚れを効率よく除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング用具に関し、詳しくは、皮革の起毛製品の汚れ除去に用いられるクリーニング用具に関する。
【背景技術】
【0002】
スエード、ベロア、ヌバッグなどの皮革の起毛製品に付着した汚れは、一般に、天然ゴムの固形物や砥粒を練り込んだゴム固形物からなるクリーナで擦り落とすことにより除去されている。
一方、近年、自動車のボディ、家具類、食器類などの幅広い分野で、これら対象物に付着した汚れを除去するためのクリーニング用具として、メラミンフォームなどの連続気泡発泡成形体が用いられている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−128137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、スエード、ベロア、ヌバックなどの天然皮革を原料とする起毛製品は、素材が柔らかいため、上記のクリーナを擦り付けることで傷がついたり、起毛部が汚れとともに擦り落とされたりする不具合がある。
また、メラミンフォームなどの連続気泡発泡成形体は、汚れ除去性が良好で、柔らかい素材であるが、一般に脆弱であるため、起毛製品との摩擦によって極めて容易に崩壊し、汚れ除去の作業性が著しく低下する。
【0004】
本発明の目的は、皮革の起毛製品の汚れ除去に好適なクリーニング用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のクリーニング用具は、連続気泡発泡成形体の全体に、ポリマー組成物が含浸されていることを特徴としている。
連続気泡発泡成形体の全体に、ポリマー組成物が含浸されることで、連続気泡発泡成形体が本質的に備えているクリーニング性と、柔軟性とを維持しつつ、脆弱性を改善し、摩擦に伴う崩壊を抑制することができる。また、これにより、上記クリーニング用具を擦り付けても、皮革の起毛製品の損傷や、起毛部の欠落を抑制できる。
【0006】
上記クリーニング用具において、前記連続気泡発泡成形体は、アミノプラスト樹脂の発泡成形体であることが好適であり、とりわけ、メラミン樹脂の発泡成形体であることが好適である。
この場合、アミノプラスト樹脂の発泡成形体(とりわけ、メラミン樹脂発泡体、いわゆるメラミンフォーム)が本来有している極めて優れたクリーニング性と、柔軟性とを維持しつつ、アミノプラスト樹脂の発泡成形体の脆弱性を改善し、摩擦に伴う崩壊を抑制することができる。また、皮革の起毛製品の損傷や、起毛部の欠落を抑制しつつ、皮革の起毛製品の汚れを除去することができる。
【0007】
上記クリーニング用具においては、前記ポリマー組成物が、塩化ビニル系ポリマーと、可塑剤とを含んでいることが好適である。
塩化ビニル系ポリマーと、可塑剤とを含むポリマー組成物は、ゾル状で流動性に優れた組成物となり、連続気泡発泡成形体の空隙部に吸収、含浸されやすくなる。このため、本発明のクリーニング用具の製造原料として最適である。
【0008】
上記クリーニング用具は、皮革の起毛製品の汚れを除去するための用具として好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のクリーニング用具は、連続気泡発泡成形体本来のクリーニング性と、柔軟性とを備えており、摩擦に伴う崩壊が抑制されていることから、皮革の起毛製品に擦り付けて使用することで、その損傷や起毛部の欠落を抑制しつつ、汚れを除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明のクリーニング用具の一実施形態を示す斜視図である。
図1を参照して、クリーニング用具1は、連続気泡発泡成形体2の全体に、ポリマー組成物が含浸されている。
連続気泡発泡成形体2は、連続気泡構造を有する発泡成形体(フォーム)であればよい。
【0011】
連続気泡構造を有する発泡成形体を形成する樹脂としては、これに限定されないが、例えば、アミノプラスト樹脂が挙げられる。
アミノプラスト樹脂としては、公知のアミノ樹脂が挙げられ、具体的には、例えば、メラミン−ホルマリン樹脂、メラミン−グリオキザール樹脂などのメラミン樹脂、例えば、尿素−ホルマリン樹脂、尿素−グリオキザール樹脂などの尿素樹脂、例えば、カルバミド−ホルマリン樹脂、ベンゾグアナミン−ホルマリン樹脂、グリコールウリル樹脂などが挙げられる。
【0012】
アミノプラスト樹脂は、上記例示の樹脂のなかでも特に、メラミン樹脂が好ましい。なお、以下の記載において、メラミン樹脂の発泡成形体は、「メラミンフォーム」という。
また、連続気泡構造を有する発泡成形体としては、メラミンフォームなどのアミノプラスト樹脂の発泡成形体以外に、例えば、軟質ウレタンフォーム、連続気泡ポリエチレンフォーム、EVAフォーム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)フォームなどが挙げられる。
【0013】
さらに、連続気泡発泡成形体2には、硬質ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリ塩化ビニルフォームなどの独立気泡構造を有する発泡成形体の気泡壁を各種の物理的または化学的処理で破壊することにより、発泡成形体内に連通孔を形成させたものであってもよい。
連続気泡発泡成形体2は、上記例示のなかでも、メラミンフォーム、軟質ウレタンフォームが好適であり、とりわけ、メラミンフォームが好適である。
【0014】
連続気泡発泡成形体は、公知の製造方法によって得られる。例えば、メラミンフォームは、例えば、メラミン樹脂の形成材料中に、発泡剤と、さらに必要に応じて、整泡剤、難燃剤、着色剤などとを配合し、加熱により発泡させながら樹脂化することにより得られる。軟質ウレタンフォームは、例えば、ポリオール成分と、イソシアネート成分と、発泡剤と、触媒と、さらに必要に応じて、整泡剤、難燃剤、着色剤などとを配合し、加熱により発泡させながら樹脂化することにより得られる。
【0015】
連続気泡発泡成形体2には、市販品を使用できる。例えば、メラミンフォームの市販品としては、例えば、BASF社製のメラミン樹脂発泡体「バソテクト(登録商標)」シリーズなどが挙げられる。ウレタンフォームの市販品としては、例えば、アキレス株式会社製の軟質ウレタンフォーム、商品名「アキロスエアロン」シリーズや、株式会社イノアックコーポレーションのポリウレタンフォーム、商品名「RS」などが挙げられる。
【0016】
連続気泡発泡成形体2の見かけ密度は、JIS K 7222:2005(発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の求め方)に記載の測定方法(見かけ密度、または単に、密度の測定方法として、以下同じ。)で、好ましくは、5〜15kg/mであり、さらに好ましくは、7〜12kg/mである。密度が上記範囲を下回ると、クリーニング用具の汚れの除去効果が低下するおそれがある。一方、密度が上記範囲を上回ると、クリーニング用具が脆くなるおそれがある。
【0017】
連続気泡発泡成形体2の引張強さは、ISO 1798に記載の試験方法(引張強さの試験方法として、以下同じ。)で、好ましくは、20〜80kPaであり、さらに好ましくは、30〜70kPaである。引張強さが上記範囲を下回ると、皮革の起毛製品に擦り付けたときにクリーニング用具が崩壊しやすくなるおそれがある。一方、引張強さが上記範囲を上回ると、皮革の起毛製品に傷を付けやすくなるおそれがある。
【0018】
連続気泡発泡成形体2に含浸されるポリマー組成物としては、連続気泡発泡成形体に含浸可能な流動性を備え、かつ硬化した状態で適度な弾性を有するものであればよい。
上記ポリマー組成物に含有されるポリマーとしては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、多液硬化性樹脂(二液硬化型など)、触媒硬化性樹脂などの各種の樹脂、例えば、各種の熱可塑性エラストマー、例えば、各種のゴム、などが挙げられる。なかでも、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーは、硬化に伴う収縮が生じず、いわゆる肉痩せが生じにくいため、好適である。
【0019】
上記ポリマーの具体例としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン−酢酸ビニル共重合体などの、塩化ビニル系樹脂または塩化ビニル系エラストマー、例えば、エチレン−酢酸ビニルなどの、酢酸ビニル系樹脂または酢酸ビニル系エラストマー、例えば、スチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。なかでも、好ましくは、塩化ビニル系樹脂または塩化ビニル系エラストマーや、スチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマーが挙げられ、さらに好ましくは、塩化ビニル系エラストマーが挙げられる。
【0020】
上記ポリマー組成物は、例えば、上記ポリマーと可塑剤との配合によって得られるゾルとして、連続気泡発泡成形体2に含浸される。
ゾルとしてのポリマー組成物は、例えば、上記ポリマーと、可塑剤と、安定剤とを含有し、さらに必要に応じて、充填剤、着色剤、香料、界面活性剤、粘度調整剤、石油系溶剤などを含有する。このようなゾルの調製に好適なポリマー成分としては、これに限定されないが、例えば、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル系エラストマー、スチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0021】
可塑剤としては、上記ポリマーを可塑化するための各種の可塑剤が挙げられる。具体的には、例えば、二塩基酸系可塑剤(例えば、フタレート系可塑剤、アジペート系可塑剤など)、エポキシ系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、パラフィン系オイルなどの各種の可塑剤が挙げられる。
塩化ビニル系樹脂または塩化ビニル系エラストマーをゾル化するための可塑剤としては、各種可塑剤のなかでも特に、ジオクチルフタレート、ジヘプチルフタレートなどのフタレート系可塑剤が好ましい。これらフタレート系可塑剤は、塩化ビニル系樹脂または塩化ビニル系エラストマーとの混和性に優れており、ブリードが生じにくい利点がある。
【0022】
また、スチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマーをゾル化するための可塑剤としては、各種可塑剤の中でも特に、流動パラフィンなどのパラフィン系溶剤が挙げられる。
安定剤としては、上記ポリマーと可塑剤とからなる混合物をゾル状態で安定させるための各種の安定剤が挙げられる。具体的に、塩化ビニル系樹脂または塩化ビニル系エラストマーと、可塑剤とからなるゾルに配合される安定剤としては、各種安定剤のなかでも、例えば、バリウム−亜鉛系、マグネシウム−亜鉛系、カルシウム−亜鉛系などの金属石鹸系安定剤、例えば、ジブチル錫ジラウレート系、ジブチル錫マレート系、ジブチル錫メルカプト系などのブチル錫系安定剤、例えば、ジオクチル錫ジラウレート系、ジオクチル錫マレート系、ジオクチル錫メルカプト系などのオクチル錫系安定剤、例えば、エポキシ化大豆油などのエポキシ系安定剤、例えば、有機リン系安定剤、例えば、ワックス系(ポリエチレンワックス、パラフィンワックスなど)、高級アルコール系、脂肪酸液などの滑剤系安定剤が好ましい。
【0023】
充填剤は、クリーニング用具の機械的強度を適宜調整するために、必要に応じて配合される。充填剤の具体例としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、タルク、クレー、珪藻土、石英粉、アルミナ、アルミナシリケート、マイカなどが挙げられる。
着色剤は、クリーニング用具の意匠性を向上させるために、必要に応じて配合される。着色剤の具体例としては、特に限定されず、有機顔料、無機顔料、蛍光顔料などの各種顔料や各種染料が挙げられる。
【0024】
香料は、クリーニング用具の嗜好性を向上させるために、必要に応じて配合される。香料の具体例としては、特に限定されず、各種の香料から適宜選択できる。
界面活性剤としては、特に限定されず、各種のアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、および両性界面活性剤の中から、適宜選択できる。
粘度調整剤としては、特に限定されず、各種の粘度調整剤が挙げられる。
【0025】
石油系溶剤としては、例えば、脂肪族系溶剤(例えば、モービル石油株式会社製の商品名「ペガゾール3040」など。)、ナフテン系溶剤(例えば、エクソン化学株式会社製の商品名「エクソールD40」など。)、イソパラフィン系溶剤(例えば、エクソン化学株式会社製の商品名「アイソパーG」など)、などの各種石油系溶剤が挙げられる。
ゾルとしてのポリマー組成物は、例えば、上記ポリマー100重量部に対し、可塑剤を、好ましくは、100〜200重量部、さらに好ましくは、120〜180重量部配合し、安定剤を、好ましくは、5重量部以下、さらに好ましくは、0.1〜2重量部配合し、さらに、充填剤、着色剤、香料、界面活性剤、粘度調整剤などの成分を適宜の分量で配合し、攪拌混合することにより調製する。
【0026】
上記ゾルの粘度は、特に限定されないが、JIS K 7117−1:1999(プラスチック−液状,乳濁状又は分散状の樹脂−ブルックフィールド形回転粘度計による見掛け粘度の測定方法)に記載のB型粘度計を用いた測定方法(ゾルの粘度の測定方法として、以下同じ。)で、好ましくは、500〜10000Pa・sであり、さらに好ましくは、1000〜6000Pa・sである。粘度が上記範囲を下回ると、連続気泡発泡成形体への含浸の作業性が低下するおそれがある。一方、粘度が上記範囲を上回ると、連続気泡発泡成形体への含浸が不十分になるおそれがある。
【0027】
連続気泡発泡成形体2へのポリマー組成物の含浸は、例えば、ポリマー組成物に連続気泡発泡成形体2を浸し、必要に応じて、連続気泡発泡成形体2を押圧して、ポリマー組成物を連続気泡発泡成形体2の全体に染み渡らせた後、ポリマー組成物を常法に従って硬化させることにより、達成される。また、ポリマー組成物の含浸は、連続気泡発泡成形体2をポリマー組成物に浸漬し、または、連続気泡発泡成形体2に対してポリマー組成物を塗布して、連続気泡発泡成形体2の全体にポリマー組成物を染み渡らせた後、ポリマー組成物を常法に従って硬化させることによっても達成される。
【0028】
連続気泡発泡成形体2へのポリマー組成物の含浸量または塗布量は、特に限定されないが、連続気泡発泡成形体に対し、重量比で、好ましくは、50〜200倍であり、さらに好ましくは、100〜150倍である。ポリマー組成物の含浸量または塗布量が上記範囲を下回ると、連続気泡発泡成形体2の脆弱性を改善する効果が低下するおそれがある。逆に、ポリマー組成物の含浸量が上記範囲を上回ると、連続気泡発泡成形体2本来のクリーニング性が十分に発揮されなくなるおそれがある。
【0029】
ポリマー組成物の硬化方法は、ポリマー組成物の組成に合わせて適宜選択されるが、通常、80〜200℃、好ましくは、100〜150℃で、5〜60分間、好ましくは、10〜40分間加熱すればよい。また、加熱時に、連続気泡発泡成形体2を圧縮機でプレスしてもよい。
クリーニング用具1の形状は、図1に示す形状に限定されるものではなく、例えば、連続気泡発泡成形体2を手で把持しやすいサイズや形状にカットしたり、連続気泡発泡成形体2の表面に凹凸を設けたりしてもよい。
【0030】
クリーニング用具1は、例えば、スエード、ベロア、ヌバッグなどの皮革の起毛製品の表面に押し当てて、擦り付けることにより使用される。これにより、上記起毛製品の表面に付着した汚れを効率よく除去することができる。
本発明のクリーニング用具は、例えば、スエード、ベロア、ヌバッグなどの皮革の起毛製品のクリーニング材として好適である。さらに、本発明のクリーニング用具は、例えば、自動車のボディ、家具類、食器類、洗面台、浴槽などの表面に付着した汚れをこすり落とすためのクリーニング材として使用することもできる。
【実施例】
【0031】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明のクリーニング用具を詳細に説明する。
実施例1
塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(新第一塩ビ株式会社製の商品名「ZEST P21」)40重量部と、可塑剤としてのジオクチルフタレート(花王株式会社製、フタル酸2−エチルヘキシル、商品名「ビニサイザー80」)59.5重量部と、安定剤(東京ファインケミカル株式会社製の塩化ビニール用安定剤、商品名「EMBILIZER(登録商標)R−23L」(マグネシウム−亜鉛系))0.5重量部とを配合し、攪拌、混合することにより、ゾル状のポリマー組成物を得た。
【0032】
次いで、連続気泡発泡成形体2としての立方体状のメラミンフォーム(BASF社製、商品名「バソテクト(登録商標)TG」、長さ30cm、幅30cm、厚さ3cm、密度7〜12kg/m、引張強さ50〜70kPa)0.15重量部の全体に、上記ゾル状のポリマー組成物20重量部を含浸させた。
含浸後、公知の圧縮機を用いて、上記ゾル状のポリマー組成物を含浸した連続気泡発泡成形体2を、120℃で20分間加熱プレスし、ポリマー組成物を硬化させた。さらに、ハンドリング性の観点より、連続気泡発泡成形体2を、長さ6cm、幅4cm、厚さ1.5cmの大きさにカットすることにより、クリーニング用具1を得た(図1参照)。
【0033】
このクリーニング用具1を使用し、下記の評価方法に従って、クリーニング用具のクリーニング性、傷つけやすさ、目詰まり性、および耐久性についての評価をした。評価結果を下記の表1に示す。
実施例2
スチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマー(旭化成ケミカルズ株式会社製の商品名「アサプレン T−415」)39.5重量部と、可塑剤としての流動パラフィン(商品名「モスコバイオレスU−7」)60重量部と、安定剤(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製の酸化防止剤、商品名「イルガノックス1010」)0.5重量部とを配合し、攪拌、混合することにより、ゾル状のポリマー組成物を得た。
【0034】
次いで、連続気泡発泡成形体2としての立方体状のメラミンフォーム(商品名「バソテクト(登録商標)TG」、長さ30cm、幅30cm、厚さ3cm)0.15重量部の全体に、上記ゾル状のポリマー組成物20重量部を含浸させた。
含浸後、実施例1と同様にして、連続発泡成形体2を加熱プレスし、さらに、ポリマー組成物の硬化後、適宜カットすることにより、クリーニング用具1を得た(図1参照)。
【0035】
このクリーニング用具1を使用し、下記の評価方法に従って、クリーニング用具のクリーニング性、傷つけやすさ、目詰まり性、および耐久性についての評価をした。評価結果を下記の表1に示す。
実施例3
連続発泡成形体2としての立方体状の軟質ウレタンフォーム(アキレス社製、商品名「アキレスエアロンR」、長さ30cm、幅30cm、厚さ3cm)0.15重量部の全体に、上記実施例1で得られたゾル状のポリマー組成物20重量部を含浸させた。
【0036】
含浸後、実施例1と同様にして、連続発泡成形体2を加熱プレスし、さらに、ポリマー組成物の硬化後、適宜カットすることにより、クリーニング用具1を得た(図1参照)。
このクリーニング用具1を使用し、下記の評価方法に従って、クリーニング用具のクリーニング性、傷つけやすさ、目詰まり性、および耐久性についての評価をした。評価結果を下記の表1に示す。
【0037】
比較例1
上記実施例1で得られたゾル状のポリマー組成物のみを、立方体状の容器に充填し、公知の圧縮機を用いて、上記ポリマー組成物を120℃で20分間加熱プレスすることにより、長さ30cm、幅30cm、厚さ3cmの立方体状の硬化物(長さ30cm、幅30cm、厚さ3cm)を得た。
【0038】
次いで、ハンドリング性の観点より、上記硬化物を、長さ6cm、幅4cm、厚さ1.5cmの大きさにカットして、比較用のクリーニング用具とした。
このクリーニング用具を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、クリーニング用具のクリーニング性、傷つけやすさ、目詰まり性、および耐久性についての評価をした。
比較例2
上記立方体状のメラミンフォーム(商品名「バソテクト(登録商標)TG」、長さ30cm、幅30cm、厚さ3cm)を、そのままの状態で、比較用のクリーニング用具とした。
【0039】
さらに、このクリーニング用具を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、クリーニング用具のクリーニング性、傷つけやすさ、目詰まり性、および耐久性についての評価をした。
比較例3
比較用のクリーニング用具として、コロンブス(COLUMBUS)社製のスエードクリーニング用具、「COLUMBUS スエードRUB−RUB」クリーナ)を使用した。このクリーニング用具は、天然ゴムを固めた製品(天然ゴム100%)である。
【0040】
さらに、このクリーニング用具を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、クリーニング用具のクリーニング性、傷つけやすさ、目詰まり性、および耐久性についての評価をした。
評価方法
天然皮革のスエードの表面を、上記実施例1〜3および比較例1〜3のクリーニング用具でクリーニングし、そのクリーニング性、傷つけやすさ、目詰まり性、および耐久性を、下記の基準で評価した。クリーニングの対象となるスエードの表面には、予め泥汚れを付着させた。
【0041】
(1)クリーニング性
スエード表面の泥汚れが付着している箇所に、クリーニング用具を押し当てて、往復100回程度擦り付けた。その後、擦りつけた部位を目視で観察し、泥汚れが除去された程度を下記の基準で評価した。
◎:泥汚れを極めて容易にかつ完全に除去することができた。クリーニング性は、極めて良好であった。
○:泥汚れを容易にかつほぼ完全に除去することができた。クリーニング性は、良好であった。
△:泥汚れを概ね除去することができた。クリーニング性は、概ね合格レベルであった。
×:泥汚れの除去に時間がかかり、しかも十分に除去できない場合があった。クリーニング性は、不良であった。
【0042】
(2)傷つけやすさ
スエード表面の泥汚れが付着していない箇所に、クリーニング用具を軽く押し当てて、往復100回程度擦り付けた。その後、擦り付けた部位を目視で観察し、スエード表面に生じた傷の程度を下記の基準で評価した。
◎:スエードの表面の擦り傷や、起毛部の損傷は、全く観察されなかった。
○:スエードの表面の擦り傷や、起毛部の損傷は、ほとんど観察されなかった。
△:スエードの表面の擦り傷や、起毛部の損傷がわずかに観察された。
×:スエードの表面の擦り傷や、起毛部の損傷が顕著であった。
【0043】
(3)目詰まり性
スエード表面の泥汚れが付着している箇所に、クリーニング用具を軽く押し当てて、往復100回程度擦り付けた。その後、クリーニング用具を目視で観察し、クリーニング用具の表面部分に泥汚れや、削り屑・粉などが付着している程度(目詰まりの程度)を下記の基準で評価した。
◎:クリーニング用具に目詰まりは観察されなかった。
○:クリーニング用具に目詰まりが観察されたが、その程度はわずかであった。
△:クリーニング用具に目詰まりが観察された。目詰まりの程度は、評価○の場合よりも顕著であったが、実用上問題がない程度であった。また、その後も、一定のクリーニング効果が発揮された。
×:クリーニング用具に目詰まりが顕著であった。また、目詰まりが原因となって、クリーニング効果を発揮できなかった。
【0044】
(4)耐久性
スエード表面の泥汚れが付着していない箇所に、クリーニング用具を軽く押し当てて、往復100回程度擦り付けた。その後、クリーニング用具を目視で観察し、連続気泡発泡体2の磨耗および崩壊の程度を下記の基準で評価した。
○:クリーニング用具の磨耗量は比較的少なく、崩壊は全く観察されなかった。
△:クリーニング用具の磨耗量はそれほど多くなく、崩壊はほとんど観察されなかった。
×:クリーニング用具の磨耗量が極めて多く、崩壊が顕著であった。
【0045】
【表1】

【0046】
表1より明らかなように、実施例1〜3のクリーニング用具は、上記評価項目がいずれも良好であった。特に、実施例1のクリーニング用具は、クリーニング性、傷つけやすさ、および目詰まり性のいずれの評価項目についても、極めて優れた結果を示した。
これに対し、塩化ビニル系熱可塑性エラストマーのみを硬化させた比較例1のクリーニング用具では、クリーニング性が劣っており、傷つけやすさや目詰まり性の評価が実用上不十分であった。連続気泡発泡体のみからなる比較例2のクリーニング用具では、耐久性の評価が実用上不十分であった。また、市販品のクリーニング用具である比較例3は、いずれもスエード表面を傷つけやすいという問題があった。
【0047】
本発明は、以上の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲において、種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のクリーニング用具の一実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1:クリーニング用具、 2:連続気泡発泡成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気泡発泡成形体の全体に、ポリマー組成物が含浸されていることを特徴とする、クリーニング用具。
【請求項2】
前記連続気泡発泡成形体が、アミノプラスト樹脂の発泡成形体であることを特徴とする、請求項1に記載のクリーニング用具。
【請求項3】
前記アミノプラスト樹脂が、メラミン樹脂であることを特徴とする、請求項2に記載のクリーニング用具。
【請求項4】
前記ポリマー組成物が、塩化ビニル系ポリマーと、可塑剤とを含んでいることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のクリーニング用具。
【請求項5】
皮革の起毛製品の汚れを除去するための用具であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のクリーニング用具。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−227901(P2009−227901A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77649(P2008−77649)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000227331)株式会社ソフト99コーポレーション (84)
【Fターム(参考)】