説明

クリーニング装置および画像形成装置

【課題】回収部材および掻き取り部材の偏磨耗を抑制することができるクリーニング装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】逆帯電トナー回収ローラ105が回転すると、逆帯電トナー回収ローラ105の軸に取り付けられたカム板116が回転し、各掻き取りブレード103,106,109が、回収ローラ102,105,108の軸方向に往復移動する。これにより、掻き取りブレードの回収ローラ表面と摺擦する箇所が、軸方向で変化する。その結果、回収ローラの周方向の平均硬さが硬い部分が、掻き取りブレードの軟らかい部分と常に摺擦したり、回収ローラの周方向の平均硬さが軟らかい部分が、掻き取り部分の硬い部分と常に摺擦したりすることがなくなり、回収ローラおよび掻き取りブレードの偏磨耗を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に採用されるクリーニング装置として、弾性部材よりなるクリーニングブレードを被清掃体たる像担持体上の周面に押し当てて像担持体上のトナーを掻き落として除去するブレードクリーニング方式が知られている。ブレードクリーニング方式は、構成が簡易で性能が安定していることから広く用いられている。
【0003】
また、近年、画像品質向上の要求が強まっており、その要求に応えるべく、トナーの小粒径化、球形化が進められている。小粒径化により、より高精度で高精細な高解像度の画像を得ることができ、球形化により現像性、転写性の向上を図ることができる。
【0004】
しかしながら、小粒径化、球形化が進んだトナーを用いた場合には、一般的なクリーニングブレード方式では良好なクリーニングを行うことが難しくなってくる。これは、次に説明する理由による。即ち、クリーニングブレードは像担持体表面を摺擦しながらトナーを除去するが、像担持体との摩擦抵抗によりクリーニングブレードのエッジの部分が変形する、所謂、スティックスリップのため、像担持体とクリーニングブレードとの間に微小な空間が生じてしまう。小粒径のトナーであるほど、この空間に侵入しやすく、侵入したトナーが球形に近い形状であるほど、トナーに回転モーメントが発生してこの空間で転がり易い。このため、小粒径化、球形化が進んだトナーは、クリーニングブレードを押し上げて、クリーニングブレードと像担持体との間にもぐり込み易くなってしまうためである。
【0005】
小粒径化、球形化が進んだトナーを用いる場合には、像担持体に対するクリーニングブレードの押し当て力(線圧)を強め、トナーのもぐり込みを阻止することが考えられる。しかしながら、押し当て力を強めて高い荷重を付加すると、像担持体やクリーニングブレードの磨耗が進み、寿命が極端に短くなってしまう。近年、装置の高寿命化が求められるため、このような耐久性に関わる不具合は避けなければならない。
【0006】
特許文献1に記載のクリーニング装置のように、静電クリーニング方式を採用すれば、重合法によるトナーであっても良好にクリーニングすることができる。具体的には、特許文献1に記載のクリーニング装置は、被清掃体たる像担持体に当接しながら回転するクリーニングブラシと、これに当接しながら回転する回収ローラと、回収ローラに当接する掻き取りブレードとを有している。そして、クリーニングブラシには、トナーの正規帯電極性とは逆極性のクリーニング電圧を印加している。また、回収ローラには、クリーニング電圧と同極性で且つクリーニング電圧よりも値の大きな回収電圧を印加している。像担持体の表面上に付着している付着物たる転写残トナーは、クリーニングブラシのブラシによって引っ掻かれながら、クリーニング電圧によってベルト表面からブラシに静電転移する。その後、クリーニングブラシから回収ローラに静電転移した後、掻き取りブレードによって回収ローラ表面から掻き落とされる。球形に近く且つ小径であることから、クリーニングブレードによるクリーニングが困難な重合法によるトナーであっても、静電転移によって像担持体表面から良好に除去することができる。
【0007】
上記回収ローラとしては、導電性で磨耗しづらい材質ということで金属ローラを採用している。また、上記掻き取りブレードとしては、潤滑剤なしでブレードめくれが生じず、摩耗が少ない材質として金属ブレードを採用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、回収ローラとして金属ローラを用い、掻き取りブレードとして金属ブレードを用いた場合、金属ブレードや回収ローラ表面が偏磨耗する場合があった。偏磨耗が生じると、この偏磨耗した部分にトナー、ブラシ粉などの粉体が進入し、これらの粉体が砥石材となり、さらに偏磨耗の進行を加速させてしまう。そして、最終的には、掻き取りブレードで良好に回収ローラ表面のトナーを掻き取ることができず、掻き取り不良が生じてしまう。このように、回収ローラに掻き取り不良が生じると、回収ローラの掻き取り不良が生じた部分にトナーが付着せず、回収ローラのトナー回収能力が低下する。その結果、クリーニングブラシに回収ローラにより回収されず、クリーニングブラシに残留する未回収トナーが増え、最終的には、クリーニングブラシに付着するトナー量が減り、クリーニング不良となってしまう。
【0009】
そこで、本発明者らは、金属ブレードや回収ローラ表面が偏磨耗する理由について、鋭意研究した結果、次のことがわかった。すなわち、金属ブレードには、金属組織の強いところと弱いところがあり、金属組織の強いところは硬く、金属組織の弱いところは軟らかい。その結果、掻き取り部材の硬さが軸方向各位置で異なる。また、金属ローラの表面にも、上述と同様な理由により、硬いところと軟らかいところとが存在することがわかった。その結果、回収ローラ表面の回収ローラ周方向の平均硬さが軸方向各位置で異なる。このことから、回収ローラの周方向の平均硬さが硬い部分が、掻き取りブレードの軟らかい部分と摺擦すると、掻き取りブレードが偏磨耗し、回収ローラの周方向の平均硬さが軟らかい部分が、掻き取りブレードの硬い部分と摺擦すると、回収ローラ表面に偏磨耗が生じることがわかったのである。
【0010】
本発明は以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、回収部材および掻き取り部材の偏磨耗を抑制することができるクリーニング装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、表面移動する被清掃体上のトナーを静電的に自らの表面に移動させて除去する表面移動可能なクリーニング部材と、上記クリーニング部材上のトナーを静電的に自らの表面に移動させて回収する表面移動可能な回収部材と、上記回収部材表面に摺擦して上記回収部材上のトナーを掻き取る掻き取り部材とを備えたクリーニング装置において、上記回収部材を、上記掻き取り部材に対して相対的に上記回収部材軸方向に往復移動させる移動手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のクリーニング装置において、上記回収部材および上記掻き取り部材を、金属材料で形成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2のクリーニング装置において、上記被清掃体上のトナーの正規帯電極性に帯電した正規帯電トナーを除去する正規帯電トナークリーニング部材と、該正規帯電トナークリーニング部材に付着した正規帯電トナーを回収する正規帯電トナー回収部材と、該正規帯電トナー回収部材の正規帯電トナーを掻き取る正規帯電トナー掻き取り部材とを備えた正規帯電トナークリーニング部と、上記被清掃体上のトナーの正規帯電極性と反対極性に帯電した逆帯電トナーを除去する逆帯電トナークリーニング部材と、該逆帯電トナークリーニング部材に付着した逆帯電トナーを回収する逆帯電トナー回収部材と、該逆帯電トナー回収部材の逆帯電トナーを掻き取る逆帯電トナー掻き取り部材とを備えた逆帯電トナークリーニング部とを備え、上記移動手段は、上記正規帯電トナー回収部材を、上記正規帯電トナー掻き取り部材に対して相対的に上記正規帯電トナー回収部材軸方向に往復移動させ、かつ、上記逆帯電トナー回収部材を、上記逆帯電トナー掻き取り部材に対して相対的に上記逆帯電トナー回収部材軸方向に往復移動させることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3のクリーニング装置において、上記移動手段を、上記正規帯電トナー回収部材の上記正規帯電トナー掻き取り部材に対する相対的な上記正規帯電トナー回収部材軸方向の往復移動と、上記逆帯電トナー回収部材の上記逆帯電トナー掻き取り部材に対する相対的な上記逆帯電トナー回収部材軸方向の往復移動との位相が異なるよう、構成したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のクリーニング装置において、上記移動手段は、カム機構を用いて往復移動させることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、像担持体上に形成されたトナー像を該像担持体上から最終的に記録材上へ転写することで、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、転写後に上記像担持体上に残留した転写残トナーをクリーニングするためのクリーニング装置として、請求項1乃至5いずれかのクリーニング装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の画像形成装置において、上記トナーとして、形状係数SF1が100以上150以下、平均粒径が6μm以下のトナーを用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回収部材を、掻き取り部材に対して相対的に回収部材軸方向に往復移動させることによって、回収部材の表面移動方向の平均硬さが硬い部分が、掻き取り部材の軟らかい部分と常に摺擦するのを抑制することができ、掻き取り部材の偏磨耗を抑制することができる。また、回収部材の表面移動方向の平均硬さが軟らかい部分が、掻き取り部材の硬い部分と常に摺擦するのを抑制することができ、回収部材の偏磨耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図。
【図2】階調パターンと光学センサとを示した中間転写ベルト近傍の拡大概略構成図。
【図3】同中間転写ベルトに形成されるシェブロンパッチを示す拡大模式図。
【図4】同プリンタのベルトクリーニング装置とその周囲とを拡大して示す拡大構成図。
【図5】ベルトクリーニング装置と移動機構とを示す概略構成図。
【図6】図5のA−A断面図。
【図7】各掻き取りブレードの往復運動について説明する図。
【図8】検証実験後の掻き取りブレードを先端面方向から観察したときの概念図。
【図9】回収ローラ表面の粗さの測定結果を示す図。
【図10】変形例1のベルトクリーニング装置の要部概略構成図。
【図11】変形例2のベルトクリーニング装置の要部概略構成図。
【図12】トナー粒子の2次元平面に対する投影像の最大径MXLNGと平面積AREAとを説明する模式図。
【図13】トナー粒子の2次元平面に対する投影像の周長PERIと平面積AREAとを説明する模式図。
【図14】(a)、(b)、(c)はそれぞれトナーの形状を模式的に示す図。
【図15】タンデム型直接転写方式のプリンタの要部を示す概略構成図。
【図16】モノクロプリンタの要部を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した画像形成装置の実施形態として、いわゆるタンデム型中間転写方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)について説明する。まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタの要部を示す概略構成図である。本プリンタは、イエロー,マゼンタ,シアン,黒(以下、Y,M,C,Kと記す)のトナー像を生成するための4つのプロセスユニット6Y,M,C,Kを備えている。4つのプロセスユニット6Y,M,C,Kは、ドラム状の感光体1Y,M,C,Kをそれぞれ有している。感光体1Y,M,C,Kの回りにはそれぞれ帯電装置2Y,M,C,K、現像装置5Y,C,M,K、ドラムクリーニング装置4Y,M,C,K、除電装置(不図示)等を有している。プロセスユニット6Y,M,C,Kは、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。プロセスユニット6Y,M,C,Kの上方には、感光体1Y,M,C,Kの表面に対してレーザー光Lを照射して静電潜像を書き込むための図示しない光書込ユニットが配設されている。
【0015】
プロセスユニット6Y,M,C,Kの下方には、ベルト部材たる無端状の中間転写ベルト8を具備するベルト装置としての転写ユニット7が配設されている。中間転写ベルト8の他、そのループ内側に配設された複数の張架ローラや、ループ外側に配設された2次転写ローラ18、テンションローラ16、ベルトクリーニング装置100、潤滑剤塗布装置200などを有している。
【0016】
中間転写ベルト8のループ内側には、4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kと、従動ローラ10と、駆動ローラ11と、2次転写対向ローラ12と、3つのクリーニング対向ローラ13、14、15と、塗布ブラシ対向ローラ17とが配設されている。これらローラは何れも、自らの周面の一部に中間転写ベルト8を掛け回してベルト張架を行う張架ローラとして機能している。なお、クリーニング対向ローラ13、14、15としての必要条件として必ずしも一定の張力を付与する働きをもたなければならないということはなく、中間転写ベルト8の回転にともなって従動回転するものでもよい。中間転写ベルト8は、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転駆動される駆動ローラ11の回転により、図中時計回り方向に無端移動せしめられる。
【0017】
ベルトループ内側に配設された4つの1次転写ローラ9Y,M,C,Kは、感光体1Y,M,C,Kとの間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8のおもて面と、感光体1Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。なお、1次転写ローラ9Y,M,C,Kには、それぞれ図示しない電源によってトナーとは逆極性の1次転写バイアスが印加される。
【0018】
また、ベルトループ内側に配設された2次転写対向ローラ12は、ベルトループ外側に配設された2次転写ローラ18との間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8のおもて面と、2次転写ローラ18とが当接する2次転写ニップが形成されている。なお、2次転写ローラ18には、図示しない電源によってトナーとは逆極性の2次転写バイアスが印加される。また、2次転写ローラと数本の支持ローラと駆動ローラにより紙搬送ベルトを架け渡し、二次転写ローラ18と、二次転写対向ローラ12との間に、中間転写ベルト8及び紙搬送ベルトを挟み込んだ構成としてもよい。
【0019】
また、ベルトループ内側に配設された3つのクリーニング対向ローラ13、14、15は、ベルトループ外側に配設されたベルトクリーニング装置100のクリーニングブラシローラ101、104、107との間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8のおもて面と、各クリーニングブラシローラ101、104、107とが当接するクリーニングニップが形成されている。ベルトクリーニング装置100は中間転写ベルト8と一体的に交換可能になっているが、ベルトクリーニング装置100と中間転写ベルト8とで寿命設定が異なる場合には、ベルトクリーニング装置100を中間転写ベルト8とは独立してプリンタ本体に着脱可能としてもよい。ベルトクリーニング装置100の詳細については、後述する。
【0020】
本プリンタは、記録紙Pを収容する給紙カセットや、給紙カセットから記録紙Pを給紙路に給紙する給紙ローラなどを有する図示しない給紙部を備えている。また、給紙部から送られてきた記録紙を受け入れて2次転写ニップに向けて所定のタイミングで送り出す図示しないレジストローラ対を、上述した2次転写ニップの図中右側方に備えている。また、2次転写ニップから送り出される記録紙Pを受け入れてその記録紙Pに対してトナー像の定着処理を施す図示しない定着装置を、上述した2次転写ニップの図中左側方に備えている。また、必要に応じて、現像装置5Y,M,C,Kに対してY,M,C,Kトナーを補給する図示しないY,M,C,K用のトナー補給装置も備えている。
【0021】
近年、記録紙として従来広く用いられてきた普通紙に加え、デザインとして表面に凹凸を有する特殊紙やアイロンプリントなどの熱転写に用いる特殊な記録紙が用いられることが増えている。このような特殊紙を用いると、従来の普通紙の場合よりもカラートナーを重ね合わせた中間転写ベルト8上のトナー像を紙に2次転写する際に転写不良が発生し易くなる。そこで、本プリンタでは、中間転写ベルト8に硬度の低い弾性層を設け、転写ニップ部でトナー層や平滑性の悪い記録紙に対して変形できるようにしている。中間転写ベルト8に硬度の低い弾性層を設け、中間転写ベルト8に弾性をもたせることにより、中間転写ベルト8表面が局部的な凸凹に追従して変形できる。これにより、過度にトナー層に対して転写圧を高めることなく、良好な密着性が得られ、文字の転写中抜けがなく、また、平滑性の悪い用紙等に対しても転写ムラのない、均一性に優れた転写画像を得ることができる。
【0022】
本プリンタでは、中間転写ベルト8は、少なくとも基層、弾性層、表面のコート層から構成される。
【0023】
中間転写ベルト8の弾性層に用いられる材料としては、弾性材ゴム、エラストマー等の弾性部材が挙げられ、具体的には、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではない。
【0024】
弾性層の厚さは、硬度及び層構成にもよるが、0.07〜0.5[mm]の範囲が好ましい。さらに好ましくは0.25〜0.5[mm]の範囲がよい。又、中間転写ベルト8の厚さが0.07[mm]以下と薄いと、二次転写ニップ部で中間転写ベルト8上のトナーに対する圧力が高くなり、転写中抜けが発生しやすくなり、さらに、トナーの転写率が低下する。
【0025】
また、弾性層の硬度は、10°≦HS≦65°(JIS−A)であることが好ましい。中間転写ベルト8の層厚によって最適な硬度は異なるものの、硬度が10°JIS−Aより低いと転写中抜けが生じやすい。これに対して硬度が65°JIS−Aより高いものは、ローラヘの張架が困難となり、また、長期の張架によって延伸するために耐久性が無く早期の交換が必要になる。
【0026】
中間転写ベルト8の基層は、伸びの少ない樹脂で構成している。具体的に、基層に用いられる材料としては、ポリカーボネート、フッ素樹脂(ETFE、PVDF等)、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ピニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではない。
【0027】
また、伸びの大きなゴム材料などからなる弾性層の伸びを防止するために、基層と弾性層との間に帆布などの材料で構成された芯体層を設けてもよい。芯体層に用いられる伸びを防止する材料としては、例えば、綿、絹、などの天然繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアセタール繊維、ポリフロロエチレン繊維、フェノール繊維などの合成繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維、鉄繊維、銅繊維等の金属繊維からなる群より選ばれる1種あるいは2種以上を用い、糸状あるいは織布状のものを使用することができる。もちろん、上記材料に限定されるものではない。上記の糸は1本または複数のフィラメントを撚ったもの、片撚糸、諸撚糸、双糸等、どのような撚り方であってもよい。また、例えば上記材料群から選択された材質の繊維を混紡してもよい。もちろん糸に適当な導電処理を施して使用することもできる。一方織布は、メリヤス織り等どのような織り方の織布でも使用可能であり、もちろん交織した織布も使用可能であり、導電処理を施すことも可能である。
【0028】
中間転写ベルト8表面のコート層は、弾性層の表面をコーティングするためのものであり、平滑性のよい層からなるものである。コート層に用いられる材料としては、特に制限はないが、一般的に、中間転写ベルト8表面へのトナーの付着カを小さくして二次転写性を高める材料が用いられる。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等の1種類あるいは2種類以上、又は、表面エネルギーを小さくし潤滑性を高める材料、たとえばフッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、酸化チタン、シリコンカーバイド等の粒子を1種類あるいは2種類以上、又は必要に応じて粒径を変えたものを分散させて使用することができる。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行うことで表面にフッ素層を形成させ、表面エネルギーを小さくさせたものを使用することもできる。
【0029】
また、必要に応じて、基層、弾性層又はコート層は、抵抗を調整する目的で、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物等を用いることができる。ここで、導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。ただし、上記材料に限定されるものではない。
【0030】
中間転写ベルト8の表面は、ベルト表面を保護するために、潤滑剤塗布装置200により潤滑剤が塗布されている。潤滑剤塗布装置200は、ステアリン酸亜鉛塊などの固形潤滑剤202と、固形潤滑剤と当接し、回転によって固形潤滑剤から掻き取って得た潤滑剤粉末を中間転写ベルト8表面に塗布する塗布部材たる塗布ブラシローラ201とを備えている。
【0031】
パーソナルコンピュータ等から画像情報が送られてくると、本プリンタは、駆動ローラ11を回転駆動して、中間転写ベルト8を無端移動させる。駆動ローラ11以外の張架ローラについては、ベルトに従動回転させる。同時に、プロセスユニット6Y,M,C,Kの感光体1Y,M,C,Kを回転駆動する。また、感光体1Y,M,C,Kの表面を帯電装置2Y,M,C,Kによって一様に帯電させながら、帯電後の表面に対してレーザー光Lの照射によって静電潜像を形成する。そして、感光体1Y,M,C,Kの表面に形成した静電潜像を現像装置5Y,M,C,Kによって現像することで、感光体1Y,M,C,K上にY,M,C,Kトナー像を得る。Y,M,C,Kトナー像は、上述したY,M,C,K用の1次転写ニップにて、中間転写ベルト8のおもて面に重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト8のおもて面には4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0032】
一方、不図示の給紙部では、給紙ローラによって給紙カセットから記録紙Pを1枚づつ送り出してレジストローラ対まで搬送する。そして、中間転写ベルト8上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで、レジストローラ対を駆動して記録紙Pを2次転写ニップに送り込んで、ベルト上の4色重ね合わせトナー像を記録紙Pに一括2次転写する。これにより、記録紙Pの表面にフルカラー画像を形成する。フルカラー画像形成後の記録紙Pについては、2次転写ニップから定着装置に搬送してトナー像の定着処理を施す。
【0033】
Y,M,C,Kトナー像を中間転写ベルト8に1次転写した後の感光体1Y,M,C,Kについては、ドラムクリーニング装置4Y,M,C,Kによって転写残トナーのクリーニング処理を施す。その後、図示しない除電ランプで除電した後、帯電装置2Y,M,C,Kで一様に帯電せしめて、次の画像形成に備える。また、記録紙Pに一次転写した後の中間転写ベルト8については、ベルトクリーニング装置100によって転写残トナーのクリーニング処理を施す。
【0034】
K用のプロセスユニット6Kの図中右側方には、光学センサユニット150が中間転写ベルト8のおもて面に対して所定の間隙を介して対向するように配設されている。この光学センサユニット150は、図2に示すように、中間転写ベルト8の幅方向に並ぶY光学センサ151Y、C光学センサ151C、M光学センサ151M、K光学センサ151Kを有している。これらセンサは何れも反射型フォトセンサからなり、図示しない発光素子から発した光を中間転写ベルト8のおもて面やベルト上のトナー像で反射させ、その反射光量を図示しない受光素子によって検知する。図示しない制御部は、これらセンサからの出力電圧値に基づいて、中間転写ベルト8上のトナー像を検知したり、その画像濃度(単位面積あたりのトナー付着量)を検知したりすることができる。
【0035】
本プリンタにおいては、電源投入時あるいは所定枚数のプリントを行う度に、各色の画像濃度を適正化するための画像濃度制御を実行する。
画像濃度制御は、まず、図2に示すような、各色の階調パターンSk、Sm、Sc、Syを中間転写ベルト8上における各光学センサ151Y、M、C、Kに対向する位置に自動形成する。各色の階調パターンは、10個の画像濃度が異なる2[cm]×2[cm]の面積のトナーパッチからなっている。各色の階調パターンSk、Sm、Sc、Syを作成するときの、感光体1Y,M,C,Kの帯電電位は、プリントプロセスにおける一様なドラム帯電電位とは異なり、値を徐々に大きくする。そして、レーザー光の走査によって階調パターン像を形成するための複数のパッチ静電潜像を感光体1Y,M,C,Kにそれぞれ形成せしめながら、それらをY,M,C,K用の現像装置5Y,M,C,Kによって現像する。この現像の際、Y,M,C,K用の現像ローラに印加される現像バイアスの値を徐々に大きくしていく。このような現像により、感光体1Y,M,C,K上にはY,M,C,Kの階調パターン像が形成される。これらは、中間転写ベルト8の主走査方向に所定の間隔で並ぶように1次転写される。このときの、各色の階調パターンにおけるトナーパッチのトナー付着量は最小で0.1[mg/cm]、最大で0.55[mg/cm]ほどあり、また、トナーQ/d分布を測定すると、ほぼ正規帯電極性にそろっている。
【0036】
中間転写ベルト8に形成され各トナーパターン(Sk、Sm、Sc、Sy)は、中間転写ベルト8の無端移動に伴って、光学センサ151との対向位置を通過する。この際、光学センサ151は、各階調パターンのトナーパッチに対する単位面積あたりのトナー付着量に応じた量の光を受光する。
【0037】
次に、各色トナーパッチを検知したときの光学センサ151の出力電圧と、付着量変換アルゴリズムとから、各色のトナーパターンの各トナーパッチにおける付着量を算出し、算出した付着量に基づき作像条件を調整する。具体的には、トナーパッチにおけるトナー付着量を検知した結果と、各トナーパッチを作像したときの現像ポテンシャルとに基づいてその直線グラフを示す関数(y=ax+b)を回帰分析によって計算する。そして、この関数に画像濃度の目標値を代入することで適切な現像バイアス値を演算し、Y、M、C、K用の現像バイアス値を特定する。
【0038】
メモリ内には、数十通りの現像バイアス値と、それぞれに個別に対応する適切なドラム帯電電位とが予め関連付けられている作像条件データテーブルが格納されている。各プロセスユニット6Y,M,C,Kについて、それぞれこの作像条件テーブルの中から、特定した現像バイアス値に最も近い現像バイアス値を選び出し、これに関連付けられたドラム帯電電位を特定する。
【0039】
また、本プリンタは、電源投入時あるいは所定枚数のプリントを行う度に、色ずれ量補正処理も実施するようになっている。そして、この色ずれ量補正処理において、中間転写ベルト8の幅方向の一端部と他端部とにそれぞれ、図3に示すようなシェブロンパッチPVと呼ばれるY,M,C,Kの各色トナー像からなる色ずれ検知用画像を形成する。シェブロンパッチPVは、図3に示すように、Y,M,C,Kの各色のトナー像を主走査方向から約45[°]傾けた姿勢で、副走査方向であるベルト移動方向に所定ピッチで並べたラインパターン群である。このシェブロンパッチPVの付着量は、0.3[mg/cm]ほどである。
【0040】
中間転写ベルト8の幅方向の両端部にそれぞれ形成したシェブロンパッチPV内の各色トナー像を検知することで、各色トナー像における主走査方向(感光体軸線方向)の位置、副走査方向(ベルト移動方向)の位置、主走査方向の倍率誤差、主走査方向からのスキューをそれぞれ検出する。ここで言う主走査方向とは、ポリゴンミラーでの反射に伴ってレーザー光が感光体表面上で位相する方向を示している。このようなシェブロンパッチPV内のY,M,Cトナー像について、Kトナー像との検知時間差を光学センサ151で読み取っていく。同図では、紙面上下方向が主走査方向に相当し、左から順に、Y,M,C,Kトナー像が並んだ後、これらとは姿勢が90[°]異なっているK,C,M,Yトナー像が更に並んでいる。基準色となるKとの検出時間差tyk、tmk、tckについての実測値と理論値との差に基づいて、各色トナー像の副走査方向のズレ量、即ちレジストズレ量を求める。そして、そのレジストズレ量に基づいて、不図示の光書込ユニットのポリゴンミラー1面おき、即ち、1走査ラインピッチを1単位として、感光体1に対する光書込開始タイミングを補正して、各色トナー像のレジストズレを低減する。また、ベルト両端部間での副走査方向ズレ量の差に基づいて、各色トナー像の主走査方向からの傾き(スキュー)を求める。そして、その結果に基づいて、光学系反射ミラーの面倒れ補正を実施して、各色トナー像のスキューズレを低減する。以上のように、シェブロンパッチPV内における各トナー像を検知したタイミングに基づいて光書込開始タイミングや面倒れを補正してレジストズレやスキューズレを低減する処理が、色ずれ補正処理である。このような色ずれ補正処理により、温度変化などで各色トナー像の中間転写ベルト8に対する形成位置が経時的にずれていくことに起因する画像の色ずれの発生を抑えることができる。
【0041】
また、低画像面積の画像形成動作が続くと、現像装置内に長時間とどまりつづける古いトナーが増えてくるため、トナー帯電特性が劣化し画像形成に用いると画像品質が悪くなる(現像能力低下、転写性低下)。このような古いトナーが現像装置内に滞留しないように一定のタイミングで感光体1の非画像領域に吐き出させ、吐き出し後にトナー濃度が低下した現像装置に新しいトナーを補給して現像装置内をリフレッシュするリフレッシュモードを備えている。
【0042】
不図示の制御部は、各現像装置5Y,M,C,Kのトナー消費量と、各現像装置5Y,M,C,Kの動作時間とを記憶しておき、所定のタイミングで、現像装置の所定期間の動作時間に対して、トナー消費量が閾値以下である否かを各現像装置について調べ、閾値以下の現像装置について、リフレッシュモードを実行する。
【0043】
リフレッシュモードが実行されると、感光体の紙間に対応する非画像形成領域にトナー消費パターンが作成され、中間転写ベルト8に転写される。トナー消費パターンの付着量は、現像装置の所定期間の動作時間に対するトナー消費量に基づき決定され、単位面積当りの最大付着量が、1.0[mg/cm]ほどになることがある。また、中間転写ベルト8に転写されたトナー消費パターンのトナーQ/d分布を測定すると、ほぼ正規帯電極性に揃っている。
【0044】
中間転写ベルト8に形成された各色階調パターン、シェブロンパッチ、トナー消費パターンは、ベルトクリーニング装置100によって回収される。このとき、ベルトクリーニング装置100は、大量のトナーを中間転写ベルト8から除去しなければならない。しかしながら、従来の極性制御手段とブラシローラとからなるクリーニング装置や、正極性のトナーを除去するブラシローラと、負極性のトナーを除去するブラシローラとを備えたクリーニング装置では、各色階調パターン、シェブロンパッチ、トナー消費パターンなどの未転写のトナー像を一度で除去することができなかった。このような場合には、クリーニングしきれなかった中間転写ベルト8上トナーが次のプリント動作時に記録紙上に転写され、異常画像となる場合があった。
【0045】
そこで、本プリンタのベルトクリーニング装置100においては、各色階調パターン、シェブロンパッチ、トナー消費パターンなどの未転写のトナー像を一度で除去することができるよう構成している。
【0046】
また、中間転写ベルト上のトナーは、トナーの正規帯電極性と逆極性(正極性)の転写電界を受けることにより記録紙に転写されるが、そのまま中間転写ベルト上に付着して転写残トナーとなるものがある。転写残トナーは、二次転写部で印加された正極性の電荷注入を受けるなどして、電荷量が正極性側にシフトする。このため、中間転写ベルト上の転写残トナーは、正極性のトナーと負極性のトナーとが混在したブロードな帯電分布となる。
【0047】
よって、本実施形態のベルトクリーニング装置は、中間転写ベルト上の正規帯電帯電極性(負極性)の正規帯電トナートナーを静電的に除去する正規帯電トナークリーニング部と、中間転写ベルト上の正規帯電極性と反対極性(正極性)のトナーを静電的に除去する逆帯電トナークリーニング部とを備え、さらに、中間転写ベルトの表面移動方向に関して、正規帯電極性のトナーを静電的に除去するプレクリーニング部を設けている。
【0048】
図4は、本プリンタの特徴点であるベルトクリーニング装置100とその周囲とを拡大して示す拡大構成図である。
同図において、ベルトクリーニング装置100は、中間転写ベルト8上の未転写のトナー像を大まかに除去するためのプレクリーニング部100aと、中間転写ベルト8上の正規帯電極性(負極性)と反対極性(正極性)に帯電したトナーを除去する逆帯電トナークリーニング部100bと、中間転写ベルト8上の正規帯電極性に帯電したトナーを除去する正規帯電トナークリーニング部100cとを備えている。
【0049】
プレクリーニング部100aには、プレクリーニング部材たるプレクリーニングブラシローラ101を有している。また、プレクリーニングブラシローラ101に付着したトナーを回収するプレ回収部材としてのプレ回収ローラ102、プレ回収ローラ102に当接してローラ表面からトナーを掻き取るプレ掻き取り部材としてのプレ掻き取りブレード103を有している。
【0050】
未転写のトナー像を構成するトナーのほとんどは、正規帯電極性(負極性)に帯電しているので、正規帯電極性と反対極性(正極性)の電圧をプレクリーニングブラシローラ101に印加して、中間転写ベルト8上の負極性トナーを静電的除去するよう構成されている。また、プレ回収ローラ102には、プレクリーニングブラシローラ101よりも大きな正極性の電圧が印加されている。本ベルトクリーニング装置100においては、未転写トナー像の90[%]が、プレクリーニングブラシローラ101により除去されるよう、プレクリーニングブラシローラ101に印加する電圧などが設定されている。
【0051】
また、プレクリーニング部100aには、画像形成装置本体に備えられた廃トナータンク(図示省略)に搬送するための搬送手段としての搬送スクリュ110が備えられている。
【0052】
逆帯電トナークリーニング部100bは、プレクリーニング部100aよりも中間転写ベルト8移動方向下流側に配置され、トナーの正規帯電極性(負極性)と反対極性(正極性)に帯電したトナーを静電的に除去する逆帯電トナークリーニング部材たる逆帯電トナークリーニングブラシローラ104を有している。また、逆帯電トナークリーニングブラシローラ104に付着した逆帯電トナーを回収する逆帯電トナー回収部材としての逆帯電トナー回収ローラ105、逆帯電トナー回収ローラ105に当接してローラ表面から逆帯電トナーを掻き取る逆帯電トナー掻き取り部材としての逆帯電トナー掻き取りブレード106を備えている。逆帯電トナークリーニングブラシローラ104には、負極性の電圧が印加されており、逆帯電トナー回収ローラ105には、逆帯電トナークリーニングブラシローラ104よりも大きな負極性の電圧が印加されている。また、この逆帯電トナークリーニング部100bは、中間転写ベルト8上のトナーに負極性の電荷を付与して、中間転写ベルト8上のトナーの帯電極性を、正規帯電極性(負極性)に揃える極性制御手段としての機能も有している。
【0053】
正規帯電トナークリーニング部100cは、逆帯電トナークリーニング部100bよりも中間転写ベルト8移動方向下流側に配置され、正規帯電極性に帯電したトナーを静電的に除去する正規帯電トナークリーニング部材たる正規帯電トナークリーニングブラシローラ107を有している。また、正規帯電トナークリーニングブラシローラ107に付着した正規帯電トナーを回収する正規帯電トナー回収部材としての正規帯電トナー回収ローラ108、正規帯電トナー回収ローラ108に当接してローラ表面から正規帯電トナーを掻き取る正規帯電トナー掻き取り部材としての正規帯電トナー掻き取りブレード109を備えている。正規帯電トナークリーニングブラシローラ107には、正極性の電圧が印加されており、正規帯電トナー回収ローラ108には、正規帯電トナークリーニングブラシローラ107よりも大きな正極性の電圧が印加されている。
【0054】
プレクリーニング部100aと逆帯電トナークリーニング部100bとは、第1絶縁性シール部材112により仕切られており、第1絶縁性シール部材112は、プレクリーニングブラシローラ101と当接している。プレクリーニング部100aと逆帯電トナークリーニング部100bとを第1絶縁性シール部材112で仕切ることにより、プレクリーニングブラシローラ101と逆帯電トナークリーニングブラシローラ104との間で放電が発生したり、逆帯電トナークリーニング部100bで除去したトナーがプレクリーニングブラシに再付着したりするのを抑制することができる。
【0055】
また、逆帯電トナークリーニング部100bと正規帯電トナークリーニング部100cとは、第2絶縁性シール部材により仕切られており、第2絶縁性シール部材113は、逆帯電トナークリーニングブラシローラ104と当接している。逆帯電トナークリーニング部100bと正規帯電トナークリーニング部100cとを第2絶縁性シール部材113で仕切ることにより、逆帯電トナークリーニングブラシローラ104と正規帯電トナークリーニングブラシローラ107との間で放電が発生したり、正規帯電トナークリーニング部100cで除去したトナーが逆帯電トナークリーニングブラシローラ104に再付着したりするのを抑制することができる。
【0056】
また、クリーニング装置100の出口部には、正規帯電トナークリーニングブラシローラ107と当接する第3絶縁性シール部材114が設けられている。これにより、正規帯電トナークリーニングブラシローラ107とテンションローラ16との間で放電が発生するのを抑制することができる。
【0057】
また、ベルトクリーニング装置100には、入口シール111、廃トナーケース115が備えられている。廃トナーケース115は、逆帯電トナークリーニング部100bおよび正規帯電トナークリーニング部100cで除去したトナーを貯留するものである。また、廃トナーケース115は、ベルトクリーニング装置100に対して着脱可能に取り付けられており、メンテナンスなどのときに、廃トナーケース115をクリーニング装置100から取り外して廃トナーケース115に溜まったトナーを除去できるようになっている。
【0058】
本ベルトクリーニング装置100では、逆帯電トナークリーニング部100bおよび正規帯電トナークリーニング部100cで除去したトナーを廃トナーケース115に貯留させているが、この構成に限られない。例えば、ベルトクリーニング装置100の底部に搬送スクリュ110へトナーを搬送する搬送部材を設けたり、底部を搬送スクリュ110に向かう傾斜面にしたりして、逆帯電トナークリーニング部100bおよび正規帯電トナークリーニング部100cで除去したトナーも、搬送スクリュ110によって画像形成装置本体に備えられた廃トナータンク(図示省略)に搬送してもよい。また、搬送スクリュとは別に、逆帯電トナークリーニング部100bおよび正規帯電トナークリーニング部100cで除去したトナーを画像形成装置本体に備えられた廃トナータンク(図示省略)に搬送する第2の搬送スクリュを設けてもよい。
【0059】
各クリーニングブラシローラ101,104,107は、回転自在に支持される金属製の回転軸部材と、これの周面に立設せしめられた複数のブラシ繊維からなるブラシ部とを具備している。ブラシ繊維は、アクリル、PET、ポリエステルなどに導電材を混入させた導電性ブラシであることが必須である。この時の導電材の構造はブラシ表面に単に分散させたものや、内部に挿入して表面に露出されない芯鞘構造でも良い。ブラシ抵抗は10E4〜10E9Ωが好適で、抵抗が小さいとトナーに電荷を注入し易く、又,抵抗が大きいと電界強度が小さくなって高電圧を印加しないとトナーを吸引する為の電界が確保出来なくなる。また、トナーとの接触確率を上げるために植毛密度も重要な因子で7万本/in以上で好ましくは10万本/in以上がさらに好ましい。
【0060】
また、各クリーニングブラシローラ101,104,107は、図示しない駆動手段によって、中間転写ベルトとの当接部でブラシ繊維が、中間転写ベルト8移動方向とは逆方向(カウンター方向)に移動するよう回転する。当接部において、ブラシをカウンター方向に移動するよう回転させることで、クリーニングブラシローラと中間転写ベルト8との線速差を大きくすることができる。これにより、中間転写ベルト8のある箇所が、クリーニングブラシローラとの当接範囲を抜けるまでの間における起毛との接触確率が増え、良好に中間転写ベルト8からトナーを除去することができる。クリーニングブラシローラの線速S1、中間転写ベルトの線速S2としたとき、線速比(S1/S2)を、0.5以上にすることで、良好な接触確率を得ることができる。
【0061】
また、各クリーニングブラシローラ101,104,107のブラシ繊維を、回転軸部材の法線方向に対して傾斜した姿勢で植毛されたいわゆる斜毛にしてもよい。ブラシ繊維を斜毛とすることによって、ブラシ繊維が軸部材の法線方向に延びるいわゆる直毛にした場合に比べて、中間転写ベルトとブラシとの間の接触ムラを抑制することができ、良好に中間転写ベルト8からトナーを除去することができる。
【0062】
本ベルトクリーニング装置100においては、各回収ローラ102,105,108として、SUSローラを用いた。
【0063】
各回収ローラ102,105,108は、クリーニングブラシローラから回収ローラ表面へトナーを吸着させて回収する機能と、回収ローラ表面に付着したトナーを、表面に担持して掻き取りブレードへ搬送する機能とを有している。クリーニングブラシローラから回収ローラへトナーを回収するうえで重要な要因となるのは、クリーニングブラシローラからトナーを回収ローラへ静電的に移送する力と、回収ローラに付着したトナーを表面に保持する物理的な力である。トナーを回収ローラへ静電的に移送する力は、トナー自身の帯電量およびブラシローラと回収ローラと間の電界強度によって決まる。トナーを表面に保持する物理的な力は、回収ローラに付着したトナーが、回収ローラとブラシとの接触領域を抜けるまでの間に再びブラシへ移動しない為の保持する力である。この力は回収ローラ表面粗度と大きな関係がある。回収ローラ表面粗度が良く、例えば、鏡面のような状態であると、保持力が小さく、ブラシの摺擦力で再びブラシに付着するという不具合がある。逆に回収ローラの表面粗度が悪く、凹凸の大きい状態であると掻き取りブレードによるクリーニング不良が生じる。各回収ローラ102,105,108の表面粗さRa0.08〜1.6μmであることが好ましい。更に放電や摺擦に対して傷がつかないことが必須である。また、各回収ローラ102,105,108は、ブラシローラから回収ローラへ移動させるために芯金から供給された電位を維持するために金属で構成される。回収ローラを金属で構成することにより、ブラシローラからトナーが回収ローラ表面へ移動しやすく且つ掻き取りブレードによって除去され易い。
【0064】
各掻き取りブレード103,106,109は、回収ローラからトナーを除去して、静電クリーニングシステムを成立させる重要な働きをする部品である。従来は、掻き取りブレードとしては、ウレタンブレードが主に使用されてきたが、パーツの高寿命が要求されるに伴い磨耗量が少ない材質のニーズが高まってきた。よって、掻き取りブレードとして金属でステンレス、リン青銅が使用される。さらに、高寿命化のために、金属材にクロムなどのメッキをして硬度を高めて、磨耗量を下げるようにしてもよい。
【0065】
次に本ベルトクリーニング装置100のクリーニング動作について説明する。
図4に示すように、2次転写部を通過した転写残トナーおよび未転写トナー像は入口シール111の当接部を越え、プレクリーニングブラシローラ101の位置に中間転写ベルト8の回転により移送される。プレクリーニングブラシローラ101には、トナーの正規帯電極性と反対極性(正極性)の電圧が印加されており、中間転写ベルト8とプレクリーニングブラシローラ101表面電位との電位差で形成される電界により、中間転写ベルト8上の負極性に帯電したトナーを静電的に吸着してプレクリーニングブラシローラ101へ移動させる。プレクリーニングブラシローラ101に移動した負極性のトナーは、プレクリーニングブラシローラ101よりも値が大きな正極性の電圧が印加されたプレ回収ローラ102との当接位置まで移送される。そして、プレクリーニングブラシローラ101の表面電位とプレ回収ローラ102の表面電位との電位差で形成される電界により、プレクリーニングブラシローラ101上に移動したトナーを静電的に吸着してプレ回収ローラ102上へ移動させ、プレ回収ローラ102に移動した負極性のトナーは、プレ掻き取りブレード103により回収ローラ表面から掻き落とされる。プレ掻き取りブレード103により掻き落とされたトナーは、搬送スクリュ110で装置外に排出される。
【0066】
プレクリーニングブラシローラ101により除去できたかった中間転写ベルト8上の未転写トナー像の負極性トナーや正極性トナー、正極性の転写残トナーは、逆帯電トナークリーニングブラシローラ104の位置に移送される。逆帯電トナークリーニングブラシローラ104には、トナーの正規帯電極性と同極性(負極性)の電圧が印加されており、中間転写ベルト8と逆帯電トナークリーニングブラシローラ104表面電位との電位差で形成される電界により、中間転写ベルト8上の正極性に帯電したトナーを静電的に吸着して逆帯電トナークリーニングブラシローラ104へ移動させる。逆帯電トナークリーニングブラシローラ104に移動した正極性のトナーは、逆帯電トナークリーニングブラシローラ104よりも値が大きな負極性の電圧が印加された逆帯電トナー回収ローラ105との当接位置まで移送される。そして、逆帯電トナークリーニングブラシローラ104の表面電位と逆帯電トナー回収ローラ105の表面電位との電位差で形成される電界により、逆帯電トナークリーニングブラシローラ104上に移動したトナーを静電的に吸着して逆帯電トナー回収ローラ105上へ移動させる。逆帯電トナー回収ローラ105に移動した正極性のトナーは、逆帯電トナー掻き取りブレード106により回収ローラ表面から掻き落とされる。
【0067】
次に、プレクリーニングブラシローラ101により除去できたかった負極性のトナーが、正規帯電トナークリーニングブラシローラ107に移送される。プレクリーニングブラシローラ101や逆帯電トナークリーニングブラシローラ104によって中間転写ベルト8上のトナーは、ほとんど除去されている。このため、この正規帯電トナークリーニングブラシローラ107へ移送されるトナーは、ごく少量である。この正規帯電トナークリーニングブラシローラ107へ移送された、ごく少量の中間転写ベルト8上のトナーは、トナーの正規帯電極性と反対極性(正極性)の電圧が印加されている正規帯電トナークリーニングブラシローラ107に静電的に付着し、正規帯電トナー回収ローラ108により回収され、正規帯電トナー掻き取りブレード109により、正規帯電トナー回収ローラ108から掻き落とされる。
【0068】
このように、本ベルトクリーニング装置100によれば、プレクリーニングブラシローラ101を設けることによって、プレクリーニングブラシローラ101で未転写のトナー像の大部分をしめる負極性のトナーが大まかに除去される。これにより、逆帯電トナークリーニングブラシローラ104や正規帯電トナークリーニングブラシローラ107に入力されるトナー量を減らすことができる。これにより、中間転写ベルト8上の大量のトナーが、正極性トナーが逆帯電トナークリーニングブラシローラ104に付着するのを阻害することがなくなり、逆帯電トナークリーニングブラシローラ104で、正極性のトナーを良好に中間転写ベルト8から除去することができる。また、ベルト移動方向最下流の正規帯電トナークリーニングブラシローラ107へ移送される中間転写ベルト上のトナーは、プレクリーニングブラシローラ101、逆帯電トナークリーニングブラシローラ104で除去されなかったものであり、トナー量としては、ごく少量である。よって、正規帯電トナークリーニングブラシローラ107で、残りのトナーを良好に除去することができる。これにより、中間転写ベルト8に大量のトナーが付着している未転写トナー像でも、良好に中間転写ベルト8から除去することができる。
また、未転写トナー像よりもトナー量が少ない転写残トナーは、これら3つのクリーニングブラシローラ101,104,107によって良好に除去することができる。
【0069】
上述のベルトクリーニング装置100は、正規帯電トナークリーニング部100cをベルト移動方向最下流に設けているが、逆帯電トナークリーニング部100bをベルト移動方向最下流に設けてもよい。また、本ベルトクリーニング装置100では、各回収ローラ102,105,108、各クリーニングブラシローラ101,104,107に電圧を印加しているが、各回収ローラ102,105,108にのみ電圧を印加する構成でもよい。この場合は、クリーニングブラシローラの繊維抵抗による電位降下によって、回収ローラとの接触部を介する形態で、回収ローラに印加されたバイアス電圧よりも幾分低いバイアス電圧がクリーニングブラシローラに印加されている状態となる。これにより、回収ローラとクリーニングブラシローラとの間に電位差が形成され、回収ローラ方向へ電位勾配によりクリーニングブラシローラから回収ローラへトナーを静電的に移動させることができる。
【0070】
また、本実施形態のベルトクリーニング装置100は、上述したように、各掻き取りブレード103,106,109を、金属ブレードとし、各回収ローラ102,105,108を、金属ローラとしている。金属は、金属組織が強く硬いところと、金属組織が弱く軟らかいとことが存在するため、金属ブレードの硬さが、軸方向で異なってしまう。また、金属ローラ表面においても、周方向の平均硬さが軸方向に異なる。その結果、金属ブレードの硬い部分が、金属ローラ表面の周方向の平均硬さが軟らかい部分と常に摺擦すると、金属ローラ表面のその部分が、他の部分よりも早く磨耗し、偏磨耗となってしまう。同様に、金属ブレードの軟らかい部分が、金属ローラ表面の周方向の平均硬さが硬い部分と常に摺擦すると、その部分が、他の部分よりも早く磨耗していき、偏磨耗となってしまう。このように、掻き取りブレードとして、金属ブレードを用い、回収ローラとして金属ローラを用いた場合、掻き取りブレードや回収ローラ表面に偏磨耗が生じてしまう。
【0071】
そこで、本実施形態のベルトクリーニング装置100は、各掻き取りブレード103,106,109を、軸方向に往復移動させることで、各回収ローラ102,105,108を各掻き取りブレードに対して軸方向に往復移動させる移動手段たる移動機構を備えている。
【0072】
図5は、ベルトクリーニング装置100と移動機構とを示す概略構成図であり、図6は、図5のA−A断面図である。
図6に示すように、移動機構は、カム板116を備えており、カム板116は、逆帯電トナー回収ローラ105の軸の図中右側端部に固定されている。掻き取りブレード103,106,109を保持する各ホルダ103a,106a,109aの両端には、支持部103b,106b,109bを有しており、これら支持部103b,106b,109bが、クリーニング装置の両側板117a,117bに支持されている。図中左側の支持部には、スプリング103c,106c,109cが挿入されており、スプリングの一端は、図中左側板117aに当接し、他端は、ホルダに当接して、掻き取りブレードを図中右側へ付勢している。各掻き取りブレードの図中右側の支持部は、右側板117bを貫通しており、端部には、カム当接部103d,106d,109dを有している。カム板116の右側板117bの対向面には、カム板116の回転中心を中心とする円状の3つのカム部116a,116b,116cを有している。各カム部116a,116b,116cは、頂部と底部とを有しており、底部から頂部に向かうにつれて徐々にカム板の面からの高さが高くなっている。プレ掻き取りブレードのカム当接部103dは、カム板116の端部に設けられたプレカム部116aと当接し、逆帯電トナー掻き取りブレードのカム当接部106dは、カム板116の逆帯電トナーカム部116bと当接している。また、正規帯電トナー掻き取りブレードのカム当接部109dは、カム板116の正規帯電トナーカム部116cと当接している。
【0073】
逆帯電トナー回収ローラ105が回転すると、カム板116が回転する。カム板116が回転すると、各カム当接部103d,106d,109dが、カム板116のカム部116a,116b,116cを摺動する。カム当接部が、カム部の底部から頂部の間を摺動するときは、掻き取りブレードが、図中左側へ移動する。カム当接部が、カム部の頂部から底部の間を摺動するときは、掻き取りブレードが、図中右側へ移動する。これにより、各掻き取りブレード103,106,109が、回収ローラの軸方向に往復移動する。このときのストロークは0.3から0.6mm位が適当である。このように、掻き取りブレードが、回収ローラの軸方向に往復移動することにより、掻き取りブレードの回収ローラ表面と摺擦する箇所が、軸方向で変化する。これにより、掻き取りブレードが、回収ローラの軸方向同じ箇所と常に摺擦することがない。その結果、回収ローラの周方向の平均硬さが硬い部分が、掻き取りブレードの軟らかい部分と常に摺擦することがなくなり、掻き取りブレードの偏磨耗を抑制することができる。また、回収ローラの周方向の平均硬さが軟らかい部分が、掻き取り部分の硬い部分と常に摺擦することがなくなり、回収ローラ表面の偏磨耗を抑制することができる。
【0074】
また、複数の掻き取りブレードの往復運動を同期させると、ベルトクリーニング装置100に軸方向の負荷が加わり、側板を含むベルトクリーニング装置の構成部品が振動する。このとき発生した振動数が、ベルトクリーニング装置の構成部品のいずれかの固有振動数と同じなった場合、その構成部品が共振運動してしまう。共振振動すると、構成部品を支持する側板117a,117bが歪んで、各掻き取りブレードに捩れなどが発生する。その結果、掻き取りブレードの回収ローラに対する食い込み量が、軸方向に異なってしまい、食い込み量が大きくなったところは、回収ローラへの当接圧が大きくなって磨耗量が増加する。一方、食い込み量が小さくなったところは、当接圧が小さくなって磨耗量が減少する。その結果、掻き取りブレードの磨耗が、軸方向にばらついてしまう。そこで、各掻き取りブレード103,106,109の往復運動に位相差を持たせるのが好ましい。これにより、掻き取りブレードが、順次左右端へ移動するようになり、複数の掻き取りブレードの往復運動を同期させた場合に比べて、共振振動が発生するのを抑制することができ、掻き取りブレードの軸方向の摩耗バラツキを減少することができる。位相差をもたせた時の各掻き取りブレード103,106,109の往復移動の一例を図7に示す。プレ掻き取りブレード103と逆帯電トナー掻き取りブレード106との位相差と、逆帯電トナー掻き取りブレード106と正規帯電トナー掻き取りブレード109との位相差は、同じとなるようすることが望ましいい。
【0075】
次に、検証実験について、説明する。
各掻き取りブレードをストローク0.5mmで往復運動させて、A4サイズ800K通紙実験を行なったときの各掻き取りブレードと各回収ローラ表面の磨耗量と、各掻き取りブレードを往復運動させずに、A4サイズ800K通紙実験を行なったときの各掻き取りブレードと各回収ローラ表面の磨耗量を調べた。具体的な実験条件を、以下に示す。
・各クリーニングブラシローラ101,104,107の条件
材質:導電性PET繊維
外径:φ15mm
芯金径:φ6mm
抵抗:10の7乗Ωcm
植毛密度:10万本/インチ平方
回転速度:250mm/s
回転方向:中間転写ベルトに対しカウンター方向
食い込み量:1mm
印加電圧:1.6KV
・各回収ローラ102,105,108の条件
材質:SUS
外径:φ14mm
表面粗さ:Ra0.5
回転速度:250mm/S
回転方向:ブラシローラに対しカウンター
食い込み量:1.5mm
印加電圧:2.0KV
・各掻き取りブレード103,106,109の条件
材質:SUS
厚さ:0.1mm
自由長:8mm
表面粗さ:Ra0.55
回収ローラへの押し付け量:1mm
・その他条件
カム板116
材質:POM
カム偏移量:0.5mm
【0076】
図8は、検証実験後のプレ掻き取りブレード103を先端面(プレ回収ローラ102と当接する先端稜線部を一辺にもち、プレ掻き取りブレード103の厚み方向に平行な面)方向からVK8000(キーエンス製)で観察したときの概念図である。(a)は、プレ掻き取りブレード103の往復運動を行わなかった場合の概念図であり、(b)は、プレ掻き取りブレード103の往復運動を行った場合の概念図を示している。
図8(a)に示すように、プレ掻き取りブレード103の往復運動を行わなかった方は、磨耗幅が、最小で40μm、最大で80μmあり、軸方向の磨耗のばらつきを大きいことがわかる。これは、プレ掻き取りブレード103の軟らかいところが、プレ回収ローラ102表面の周方向平均硬度が硬い部分と常に摺擦したため、その部分が早期に磨耗し、偏磨耗したと考えられる。そして、プレ掻き取りブレード103の偏磨耗した部分にトナーやブラシ粉などが進入し、これら粉体が砥石材となり、さらにその部分の磨耗の進行を加速させ、磨耗幅の最大が80μmの部分が生じたと考えられる。なお、逆帯電トナー掻き取りブレード106、正規帯電トナー掻き取りブレード109は、図示してないが、プレ掻き取りブレード103と同様な結果が得られた。
【0077】
一方、図8(b)に示すように、プレ掻き取りブレード103の往復運動を行った場合は、磨耗幅が、最小で40μm、最大で45μmであり、最大磨耗量や磨耗ばらつきが共に減少している。これは、プレ掻き取りブレード103の往復運動を行ったので、プレ回収ローラ102表面の周方向平均硬度が硬い部分と軟らかい部分とが平均的に、プレ掻き取りブレード103と摺擦したことで、掻き取りブレードのある箇所に、偏磨耗が生じることなく、平均的に磨耗していったと考えられる。また、逆帯電トナー掻き取りブレード106、正規帯電トナー掻き取りブレード109については、図示してないが、往復運動を行うことで、同様に、最大磨耗量や磨耗ばらつきが共に減少する結果が得られた。
【0078】
図9は、プレ回収ローラ102表面の粗さの測定結果を示す図である。プレ回収ローラ表面粗さは、サーフコム1500DX(東京精密製)で測定した。図9(a)は、プレ掻き取りブレード103の往復運動を行わなかった場合のプレ回収ローラ表面粗さの測定結果であり、図9(b)は、プレ掻き取りブレード103の往復運動を行わなかった場合のプレ回収ローラ表面粗さの測定結果である。
図9(a)に示すように、プレ掻き取りブレードの往復運動を行わなかった方は、プレ回収ローラ表面の最大高さRmax=1.0μmであったが、図9(b)に示すように、プレ掻き取りブレード103の往復運動を行った場合は、プレ回収ローラ表面の最大高さRmax=0.2μmであり、非常に小さくなっている。これは、プレ掻き取りブレード103の往復運動を行わなかった方は、プレ掻き取りブレード103の硬い部分が、常にプレ回収ローラ表面の周方向平均硬度が軟らかい部分と常に摺擦したため、プレ回収ローラ102の軸方向ある部分に偏磨耗が生じた結果、最大高さが大幅に高くなったと考えられる。一方、プレ掻き取りブレード103の往復運動を行った方は、プレ掻き取りブレード103の硬い部分と軟らかい部分とが平均的にプレ回収ローラ表面と摺擦したため、プレ回収ローラ軸方向のある箇所に、偏磨耗が生じることなく、平均的に磨耗していったと考えられる。逆帯電トナー回収ローラ105,正規帯電トナー回収ローラ108も同様に、掻き取りブレードの往復運動を行うことによって、偏磨耗を抑制することができた。
【0079】
また、各掻き取りブレード103,106,109の往復運動を行わなかった方は、約400kあたりから、印刷記録紙面にクリーニング不良が発生した。これは、図8(a)、図9(a)に示すように、掻き取りブレードのある部分や、回収ローラ表面の軸方向ある部分が、偏磨耗したため、その部分から、トナーが摺り抜け、回収ローラから良好にトナーを掻き取ることができなくなったためと考えられる。すなわち、回収ローラから良好にトナーを掻き取ることができなくなった結果、各回収ローラ102,105,108の回収の能力が低下し、各回収ローラ102,105,108に付着する新たなトナーが減る。各回収ローラ102,105,108の回収の能力が低下すると、回収ローラに回収されずクリーニングブラシローラ101,104,107に残留するトナーが増える。各クリーニングブラシローラ101,104,107に残留するトナーが増えると、中間転写ベルト8から新たにクリーニングブラシローラ101,104,107へ付着するトナーが減少する。その結果、各クリーニング100a,100b,100cのクリーニング性が低下し、最終的に、クリーニング不良が生じたと考えられる。
【0080】
一方、各掻き取りブレード101,104,107の往復運動を行った方は、800kまでクリーニング不良は発生しなかった。これは、各回収ローラ表面の偏磨耗や、各掻き取りブレードの偏磨耗を抑えることができたので、経時にわたり良好に各回収ローラ表面に付着したトナーを各掻き取りブレード103,106,109で掻き取ることができたからと考えられる。これにより、各回収ローラ102,105,108の回収能力が経時にわたり維持され、各クリーニングブラシ101,104,107のクリーニング性を長期にわたり維持することができたと考えられる。その結果、経時にわたり良好なクリーニング性を維持することができたと考えられる。
【0081】
次に、ベルトクリーニング装置の変形例について、説明する。
【0082】
[変形例1]
図10は、変形例1のベルトクリーニング装置100−1の要部概略構成図である。
図10に示すように、この変形例1のベルトクリーニング装置100−1は、各回収ローラ102,105,108にカム板121,122,123を設けたものである。図に示すように、各カム板のカム部は、それぞれ、対応する掻き取りブレードのホルダの端部と当接している。
【0083】
各回収ローラを回転させると、各カム板が回転し、その結果、各掻き取りブレードが、回収ローラの軸方向に往復移動する。このような構成でも、回収ローラが、掻き取りブレードに対して相対的に往復移動し、掻き取りブレードの回収ローラの表面との摺擦箇所が軸方向で変化させることができる。よって、掻き取りブレードや回収ローラ表面の偏磨耗を抑制することができる。
【0084】
[変形例2]
図11は、変形例2のベルトクリーニング装置100−2の要部概略構成図である。
この変形例2のベルトクリーニング装置100−2は、各回収ローラ102,105,108を軸方向に往復移動させるものである。
図11に示すように、各回収ローラ102,105,108の図中左側の軸には、スプリング102b,105b,108bが挿入されている。各スプリング102b,105b,108bの一端は、左側板117aと当接しており、他端は、対応する回収ローラの図中左側フランジに当接し、各回収ローラを図中右側に付勢している。
各回収ローラ102,105,108の図中右側フランジには、カム部102a,105a,108aが形成されており、各カム部102a,105a,108aは、図中右側板117bに設けられた対応するカム当接部131,132,133と当接している。
【0085】
各回収ローラ102,105,108が回転すると、各回収ローラ102,105,108の図中右側フランジに設けられたカム部102a,105a,108aが、対応するカム当接部と摺動する。これにより、各回収ローラが、図中左右(回収ローラ軸方向)に往復移動する。この変形例2のクリーニング装置100bにおいても、各回収ローラ102,105,108が往復移動することによって、回収ローラが、掻き取りブレードに対して相対的に往復移動し、掻き取りブレードの回収ローラの表面との摺擦箇所が軸方向で変化させることができる。よって、掻き取りブレードや回収ローラ表面の偏磨耗を抑制することができる。
【0086】
次に、本プリンタに好適に使用されるトナーについて説明する。
本プリンタに好適に使用されるトナーは、600dpi以上の微少ドットを再現するために、トナーの体積平均粒径が3〜6[μm]のものが好ましい。また、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が、1.00〜1.40の範囲にあるトナーが好ましい。(Dv/Dn)が1.00に近いほど粒径分布がシャープであることを示す。このような小粒径で粒径分布の狭いトナーでは、トナーの帯電量分布が均一になり、地肌かぶりの少ない高品位な画像を得ることができ、また、静電転写方式では転写率を高くすることができる。
【0087】
トナーの形状係数SF−1は100〜150、形状係数SF−2は100〜180の範囲にあることが好ましい。図12は、形状係数SF−1を説明するためにトナーの形状を模式的に表した図である。形状係数SF−1は、トナー形状の丸さの割合を示すものであり、下記式(1)で表される。トナーを2次元平面に投影してできる形状の最大長MXLNGの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
SF−1={(MXLNG)/AREA}×(100π)/4・・・式(1)
SF−1の値が100の場合トナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。
【0088】
また、図13は、形状係数SF−2を説明するためにトナーの形状を模式的に表した図である。形状係数SF−2は、トナーの形状の凹凸の割合を示すものであり、下記式(2)で表される。トナーを2次元平面に投影してできる図形の周長PERIの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
SF−2={(PERI)/AREA}×100/(4π)・・・式(2)
SF−2の値が100の場合トナー表面に凹凸が存在しなくなり、SF−2の値が大きくなるほどトナー表面の凹凸が顕著になる。
【0089】
形状係数の測定は、具体的には、走査型電子顕微鏡(S−800:日立製作所製)でトナーの写真を撮り、これを画像解析装置(LUSEX3:ニレコ社製)に導入して解析して計算した。トナーの形状が球形に近くなると、転写率は高くなる。具体的に説明すると、トナーが感光体に付着すると感光体表面に作用する主な力として、鏡映力とファンデルワールス力がある。鏡映力は電荷量とその距離に大きく依存する。従来の粉砕によって生成される粉砕トナーなど、その表面に凹凸がある形状のトナーの場合、摩擦帯電により、凸部が集中的に帯電されるこのように、表面に凹凸のあるトナーにおいては、凸部に電荷が集中して存在するため、凸部が感光体表面と接触または非常に近接していた場合鏡映力が増大する。一方、表面が球形又は球形に近い形状を有するトナーは、表面が均一に帯電される。また、像担持体との接触状態はほとんど点状になり、かつ、感光体表面と接触または非常に近接した部分の電荷量も少なく、鏡映力が小さくなる。また、表面形状が球状であるためトナーはほとんど点で接触するため、ファンデルワールス力も小さくなる。このように、接触力の観点から、球形に近いトナーの場合、感光体に対する鏡映力、ファンデルワールス力、つまり付着力が小さくなり転写率が高くなるのである。転写率を高くすることによって、転写残トナーが少なくトナー消費量が小さくなって経済性の向上となる。形状係数SF−1が150、SF−2が180を超えると、転写率が低下するため好ましくない。
【0090】
また、カラープリンタに好適に使用されるトナーは、少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマーと、ポリエステルと、着色剤と、離型剤とを有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系溶媒中で架橋及び/又は伸長反応させて得られるトナーである。以下に、トナーの構成材料及び製造方法について説明する。
【0091】
(ポリエステル)
ポリエステルは、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物との重縮合反応によって得られる。
多価アルコール化合物(PO)としては、2価アルコール(DIO)および3価以上の多価アルコール(TO)が挙げられ、(DIO)単独、または(DIO)と少量の(TO)との混合物が好ましい。2価アルコール(DIO)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上の多価アルコール(TO)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0092】
多価カルボン酸(PC)としては、2価カルボン酸(DIC)および3価以上の多価カルボン酸(TC)が挙げられ、(DIC)単独、および(DIC)と少量の(TC)との混合物が好ましい。2価カルボン酸(DIC)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上の多価カルボン酸(TC)としては、炭素数9〜20の芳香族多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、多価カルボン酸(PC)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いて多価アルコール(PO)と反応させてもよい。
【0093】
多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の重縮合反応は、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧しながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。ポリエステルの水酸基価は5以上であることが好ましく、ポリエステルの酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすく、さらには記録紙への定着時、記録紙とトナーの親和性がよく低温定着性が向上する。しかし、酸価が30を超えると帯電の安定性、特に環境変動に対し悪化傾向がある。また、重量平均分子量1万〜40万、好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量が1万未満では、耐オフセット性が悪化するため好ましくない。また、40万を超えると低温定着性が悪化するため好ましくない。
【0094】
ポリエステルには、上記の重縮合反応で得られる未変性ポリエステルの他に、ウレア変性のポリエステルが好ましく含有される。ウレア変性のポリエステルは、上記の重縮合反応で得られるポリエステルの末端のカルボキシル基や水酸基等と多価イソシアネート化合物(PIC)とを反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得、これとアミン類との反応により分子鎖が架橋及び/又は伸長されて得られるものである。多価イソシアネート化合物(PIC)としては、脂肪族多価イソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−イソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアネート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。多価イソシアネート化合物(PIC)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5/1を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1/1未満では、ウレア変性ポリエステルを用いる場合、そのエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の多価イソシアネート化合物(PIC)構成成分の含有量は、通常0.5〜40wt%、好ましくは1〜30wt%、さらに好ましくは2〜20wt%である。0.5wt%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40wt%を超えると低温定着性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有されるイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0095】
次に、ポリエステルプレポリマー(A)と反応させるアミン類(B)としては、2価アミン化合物(B1)、3価以上の多価アミン化合物(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
【0096】
2価アミン化合物(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上の多価アミン化合物(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0097】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2/1超や、1/2未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0098】
また、ウレア変性ポリエステル中には、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0099】
ウレア変性ポリエステルは、ワンショット法、などにより製造される。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧しながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これに多価イソシアネート(PIC)を反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得る。さらにこの(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア変性ポリエステルを得る。
【0100】
(PIC)を反応させる際、及び(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(PIC)に対して不活性なものが挙げられる。
【0101】
また、ポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との架橋及び/又は伸長反応には、必要により反応停止剤を用い、得られるウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0102】
ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステル等の数平均分子量は、先の未変性ポリエステルを用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。ウレア変性ポリエステルを単独で使用する場合は、その数平均分子量は、通常2000〜15000、好ましくは2000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー画像形成装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0103】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを併用することで、低温定着性およびフルカラー画像形成装置に用いた場合の光沢性が向上するので、ウレア変性ポリエステルを単独で使用するよりも好ましい。尚、未変性ポリエステルはウレア結合以外の化学結合で変性されたポリエステルを含んでも良い。
【0104】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは、少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは類似の組成であることが好ましい。
【0105】
また、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとの重量比は、通常20/80〜95/5、好ましくは70/30〜95/5、さらに好ましくは75/25〜95/5、特に好ましくは80/20〜93/7である。ウレア変性ポリエステルの重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0106】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを含むバインダー樹脂のガラス転移点(Tg)は、通常45〜65℃、好ましくは45〜60℃である。45℃未満ではトナーの耐熱性が悪化し、65℃を超えると低温定着性が不十分となる。
【0107】
また、ウレア変性ポリエステルは、得られるトナー母体粒子の表面に存在しやすいため、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
【0108】
(着色剤)
着色剤としては、公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR1、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブ
ルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
【0109】
着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造、またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体、あるいはこれらとビニル化合物との共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
【0110】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては公知のものが使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSYVP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージNEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LR1−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。このうち、特にトナーを負極性に制御する物質が好ましく使用される。
【0111】
荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を超える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、荷電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。
【0112】
(離型剤)
離型剤としては、融点が50〜120℃の低融点のワックスが、バインダー樹脂との分散の中でより離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これにより定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布することなく高温オフセットに対し効果を示す。このようなワックス成分としては、以下のものが挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス、及びおよびパラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス等が挙げられる。また、これら天然ワックスの外に、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス等が挙げられる。さらに、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド及び、低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等も用いることができる。
【0113】
荷電制御剤、離型剤はマスターバッチ、バインダー樹脂とともに溶融混練することもできるし、もちろん有機溶剤に溶解、分散する際に加えても良い。
【0114】
(外添剤)
トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤として、無機微粒子が好ましく用いられる。この無機微粒子の一次粒子径は、5×10−3〜2[μm]であることが好ましく、特に5×10−3〜0.5[μm]であることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500[m/g]であることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5wt%であることが好ましく、特に0.01〜2.0wt%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。中でも、流動性付与剤としては、疎水性シリカ微粒子と疎水性酸化チタン微粒子を併用するのが好ましい。特に両微粒子の平均粒径が5×10−4μm以下のものを使用して攪拌混合を行った場合、トナーとの静電力、ファンデルワールス力は格段に向上することより、所望の帯電レベルを得るために行われる現像装置内部の攪拌混合によっても、トナーから流動性付与剤が脱離することなく、ホタルなどが発生しない良好な画像品質が得られて、さらに転写残トナーの低減が図られる。酸化チタン微粒子は、環境安定性、画像濃度安定性に優れている反面、帯電立ち上がり特性の悪化傾向にあることより、酸化チタン微粒子添加量がシリカ微粒子添加量よりも多くなると、この副作用の影響が大きくなることが考えられる。しかし、疎水性シリカ微粒子及び疎水性酸化チタン微粒子の添加量が0.3〜1.5wt%の範囲では、帯電立ち上がり特性が大きく損なわれず、所望の帯電立ち上がり特性が得られ、すなわち、コピーの繰り返しを行っても、安定した画像品質が得られる。
【0115】
次に、トナーの製造方法について説明する。ここでは、好ましい製造方法について示すが、これに限られるものではない。
【0116】
(トナーの製造方法)
(1)着色剤、未変性ポリエステル、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー、離型剤を有機溶媒中に分散させトナー材料液を作る。
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、トナー母体粒子形成後の除去が容易である点から好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。有機溶媒の使用量は、ポリエステルプレポリマー100重量部に対し、通常0〜300重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは25〜70重量部である。
【0117】
(2)トナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。
水系媒体は、水単独でも良いし、アルコール(メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などの有機溶媒を含むものであってもよい。
【0118】
トナー材料液100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー材料液の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。
【0119】
また、水系媒体中の分散を良好にするために、界面活性剤、樹脂微粒子等の分散剤を適宜加える。
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0120】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0121】
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0122】
また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0123】
樹脂微粒子は、水系媒体中で形成されるトナー母体粒子を安定化させるために加えられる。このために、トナー母体粒子の表面上に存在する被覆率が10〜90%の範囲になるように加えられることが好ましい。例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子1[μm]、及び3[μm]、ポリスチレン微粒子0.5[μm]及び2[μm]、ポリ(スチレン―アクリロニトリル)微粒子1[μm]、商品名では、PB−200H(花王社製)、SGP(総研社製)、テクノポリマーSB(積水化成品工業社製)、SGP−3G(総研社製)、ミクロパール(積水ファインケミカル社製)等がある。また、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等の無機化合物分散剤も用いることができる。
【0124】
上記の樹脂微粒子、無機化合物分散剤と併用して使用可能な分散剤として、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸−β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−β−ヒドロキシエチル、アクリル酸−β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの含窒素化合物、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0125】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。この中でも、分散体の粒径を2〜20[μm]にするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000[rpm]、好ましくは5000〜20000[rpm]である。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。
【0126】
(3)乳化液の作製と同時に、アミン類(B)を添加し、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)との反応を行わせる。
この反応は、分子鎖の架橋及び/又は伸長を伴う。反応時間は、ポリエステルプレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)との反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0127】
(4)反応終了後、乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。
有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に層流の攪拌状態で昇温し、一定の温度域で強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うことで紡錘形のトナー母体粒子が作製できる。また、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、トナー母体粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
【0128】
(5)上記で得られたトナー母体粒子に、荷電制御剤を打ち込み、ついで、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機微粒子を外添させ、トナーを得る。 荷電制御剤の打ち込み、及び無機微粒子の外添は、ミキサー等を用いた公知の方法によって行われる。
【0129】
これにより、小粒径であって、粒径分布のシャープなトナーを容易に得ることができる。さらに、有機溶媒を除去する工程で強い攪拌を与えることで、真球状からラクビーボール状の間の形状を制御することができ、さらに、表面のモフォロジーも滑らかなものから梅干形状の間で制御することができる。
【0130】
またトナーの形状は略球形状であり、以下の形状規定によって表すことができる。図14(a),(b),(c)はトナーの形状を模式的に示す図である。図14(a),(b),(c)において、略球形状のトナーを長軸r1、短軸r2、厚さr3(但し、r1≧r2≧r3とする。)で規定するとき、トナーは、長軸と短軸との比(r2/r1)(図14(b)参照)が0.5〜1.0で、厚さと短軸との比(r3/r2)(図14(c)参照)が0.7〜1.0の範囲にあることが好ましい。長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5未満では、真球形状から離れるためにドット再現性及び転写効率が劣り、高品位な画質が得られなくなる。また、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7未満では、扁平形状に近くなり、球形トナーのような高転写率は得られなくなる。特に、厚さと短軸との比(r3/r2)が1.0では、長軸を回転軸とする回転体となり、トナーの流動性を向上させることができる。
【0131】
なお、r1、r2、r3は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、視野の角度を変えて写真を撮り、観察しながら測定した。
【0132】
また、本発明のクリーニング装置は、逆帯電トナークリーニング部100bと、正規帯電トナークリーニング部100cとを備えたクリーニング装置にも適用できる。また、中間転写ベルト上のトナーの極性を揃える極性制御手段と、極性制御手段よりも中間転写ベルト移動方向下流側に、極性制御手段で揃えた極性のトナーを除去するクリーニング部とを備えた構成のクリーニング装置にも適用できる。この場合、クリーニング部は、クリーニングブラシローラに、極性制御手段で揃えた極性と反対極性の電圧をクリーニングブラシに印加し、金属ローラからなる回収ローラに、クリーニングブラシの印加電圧と同極性で、値の大きな電圧を印加する。そして、金属ブレードからなる掻き取りブレードで回収ローラの表面に付着したトナーを掻き取ることで、静電クリーニングが成立する。極性制御手段として、導電性ブラシ、導電性ブレードなどの導電性部材を中間転写ベルトに当接させて、この導電性部材に電圧を印加することで、中間転写ベルト上のトナー極性を揃えてもよいし、コロナチャージャーなどを用いて、中間転写ベルト上のトナーの極性を揃えてもよい。また、極性制御手段よりも中間転写ベルト移動方向上流側に上述したプレクリーニング部を設けてもよい。
【0133】
また、本ベルトクリーニング装置100は、逆帯電トナークリーニングブラシローラ104で中間転写ベルト8上の正極性のトナーを除去しているが、逆帯電トナークリーニング部100bを極性制御部に変更して、中間転写ベルト8上の正極性のトナーを除去しない構成としてもよい。この場合、プレクリーニングブラシローラ101を通過した中間転写ベルト8上のトナーは、極性制御部により、負極性に揃えられて、極性制御部よりもベルト移動方向下流の正規帯電トナークリーニングブラシローラ107へ移送される。そして、正規帯電トナークリーニングブラシローラ107で、負極性のトナーを除去する。極性制御部で、中間転写ベルト8上のトナーに負極性の電荷を注入する手段としては、導電性ブラシ、導電性ブレード、コロナチャージャーなどでよい。また、トナーの帯電極性を負極性に揃えるのではなく、正極性に揃えるようにして、極性制御部よりもベルト移動方向下流に、負極性の電圧が印加されたクリーニングブラシローラを配置して、中間転写ベルト上の正極性に揃えられたトナーを除去する構成でもよい。このような、構成でも、プレクリーニングブラシローラ101で、中間転写ベルト8から未転写トナー像のトナーを大まかに除去するので、極性制御部へ移送されるトナー量は少なくなっている。よって、極性制御部で、中間転写ベルト8上のトナーを良好に、一方の極性に揃えることができる。その結果、極性制御部の下流に配置されたクリーニングブラシローラで中間転写ベルト8上のトナーを良好に静電的に除去できる。よって、大量のトナーが付着した未転写のトナー像がベルトクリーニング装置100に入力されても、良好にクリーニングすることができる。
【0134】
また、本発明のクリーニング装置は、中間転写ベルトのおもて面をクリーニングするベルトクリーニング装置100に限らず、図15に示すように、紙搬送ベルト51のクリーニング装置500にも適用することができる。図15に示すように、タンデム型直接転写方式の画像形成装置に用いられる被清掃体としての紙搬送ベルト51は、感光体1Y,M,C,Kにそれぞれ接触してY,M,C,K用の一次転写ニップを形成している。そして、記録紙Pを自らの表面に保持しながら、自らの無端移動に伴って図中左側から右側に向けて搬送する過程で、記録紙PをY,M,C,K用の一次転写ニップに順次送り込む。これにより、記録紙Pには、Y,M,C,Kトナー像が重ね合わせて一次転写される。K用の一次転写ニップを通過した後の紙搬送ベルト51に付着しているトナーなどの汚れは、搬送ベルトクリーニング装置500によって除去される。また、光学センサユニット150が紙搬送ベルト51のおもて面に対して所定の間隙を介して対向するように配設されている。図15に示すプリンタにおいても、所定のタイミングで画像濃度制御や位置ずれ量補正制御を実施し、紙搬送ベルト51に所定のトナーパターン(階調パターン、シェブロンパッチ)を形成し、光学センサユニット150で上記トナーパターンを検知し、検知結果に基づいて所定の補正処理を実行する。光学センサユニット150で検知後の未転写トナー像であるトナーパターンは、搬送ベルトクリーニング装置500で除去される。このように、紙搬送ベルト51は、トナー像を担持する像担持体としての機能を備えている。
【0135】
上記搬送ベルトクリーニング装置500に本発明のクリーニング装置を適用することで、回収ローラ、掻き取りブレードの偏磨耗を抑制することができ、長期にわたり、搬送ベルト表面を良好にクリーニングすることができる。
【0136】
また、本発明のクリーニング装置は、図16に示すように、ドラムクリーニング装置4にも適用できる。現像装置内をリフレッシュするリフレッシュモード実行した際のトナー消費パターンや、紙詰まりが発生した際の感光体上のトナー像などの未転写トナー像が、ドラムクリーニング装置4に入力される。ドラムクリーニング装置4に本発明のクリーニング装置を適用することによって回収ローラ、掻き取りブレードの偏磨耗を抑制することができ、長期にわたり、感光体表面を良好にクリーニングすることができる。
【0137】
以上、本実施形態のクリーニング装置によれば、表面移動する被清掃体たる中間転写ベルト8上のトナーを静電的に自らの表面に移動させて除去する表面移動可能なクリーニング部材たるクリーニングブラシローラと、クリーニングブラシローラ上のトナーを静電的に自らの表面に移動させて回収する表面移動可能な回収部材たる回収ローラと、回収ローラ表面に摺擦して回収ローラ上のトナーを掻き落として除去する掻き取り部材たる掻き取りブレードとを備えている。そして、回収ローラを、掻き取りブレードに対して相対的に回収ローラ軸方向に往復移動させる移動手段たる移動機構を設けた。これにより、掻き取りブレードが、回収ローラの軸方向同じ箇所と常に摺擦することがない。その結果、回収ローラの周方向の平均硬さが硬い部分が、掻き取りブレードの軟らかい部分と常に摺擦することがなくなり、掻き取りブレードの偏磨耗を抑制することができる。また、回収ローラの周方向の平均硬さが軟らかい部分が、掻き取り部分の硬い部分と常に摺擦することがなくなり、回収ローラ表面の偏磨耗を抑制することができる。
【0138】
また、回収ローラおよび掻き取りブレードを、金属材料で形成する。回収ローラを金属材料で構成することによって、回収ローラの表面とブラシとの間の電位差を良好に取ることができ、ブラシローラからトナーが回収ローラ表面へ移動しやすくすることができる。また、回収ローラをゴム材などの弾性体で構成した場合に比べて、回収ローラ表面のトナーが、掻き取りブレードによって除去され易くなる。また、掻き取りブレードを金属材料で構成することによって、ウレタンブレードに比べて磨耗を抑制することができ、掻き取りブレードの寿命を延ばすことができる。
また、回収ローラと掻き取りブレードとが金属の場合に生じやすいが、上記のように、回収ローラを、掻き取りブレードに対して相対的に回収ローラ軸方向に往復移動させることにより、効果的に偏磨耗を抑制することができる。
【0139】
また、中間転写ベルト上のトナーの正規帯電極性に帯電した正規帯電トナーを除去する正規帯電トナークリーニング部材たる正規帯電トナークリーニングブラシローラ107と、正規帯電トナークリーニングブラシローラ107に付着した正規帯電トナーを回収する正規帯電トナー回収部材たる正規帯電トナー回収ローラ108と、正規帯電トナー回収ローラ108の正規帯電トナーを掻き取る正規帯電トナー掻き取り部材とを備えた正規帯電トナークリーニング部100cを備えている。また、中間転写ベルト上のトナーの正規帯電極性と反対極性に帯電した逆帯電トナーを除去する逆帯電トナークリーニング部材たる逆帯電トナークリーニングブラシローラ104と、逆帯電トナークリーニングブラシローラに付着した逆帯電トナーを回収する逆帯電トナー回収部材たる逆帯電トナー回収ローラ105と、逆帯電トナー回収ローラの逆帯電トナーを掻き取る逆帯電トナー掻き取り部材たる逆帯電トナー掻き取りブレードとを備えた逆帯電トナークリーニング部を有している。これにより、中間転写ベルト上の正規帯電トナーと、逆帯電トナーとを除去することができ、中間転写ベルト上のトナーを良好に除去することができる。そして、正規帯電トナー回収ローラを、正規帯電トナー掻き取りブレードに対して相対的に正規帯電トナー回収ローラ軸方向に往復移動させる。これにより、正規帯電トナー回収ローラ、および正規帯電トナー掻き取りブレードの偏磨耗を抑制することができる。また、逆帯電トナー回収ローラを、上記逆帯電トナー掻き取りブレードに対して相対的に逆帯電トナー回収ローラ軸方向に往復移動させる。これにより、逆帯電トナー回収ローラ、および逆帯電トナー掻き取りブレードの偏磨耗を抑制することができる。
【0140】
また、正規帯電トナー回収ローラの正規帯電トナー掻き取りブレードに対する相対的な正規帯電トナー回収ローラ軸方向の往復移動と、逆帯電トナー回収ローラの逆帯電トナー掻き取りブレードに対する相対的な逆帯電トナー回収ローラ軸方向の往復移動との位相を異ならせた。これにより、共振振動を抑制することができ、磨耗のばらつきを抑制することができる。
【0141】
また、本実施形態のクリーニング装置は、カム機構を用いて回収ローラを、正規帯電トナー掻き取りブレードに対して相対的に回収ローラ軸方向に往復移動させる。カム機構を用いることで、回転運動を往復運動に変換することができ、回収ローラの回転駆動や、クリーニングブラシローラの回転駆動を用いて、回収ローラを、正規帯電トナー掻き取りブレードに対して相対的に回収ローラ軸方向に往復移動させることができる。これにより、往復移動させる別の駆動手段を新たに設けなくてもよくなり、部品点数を削減でき、コストダウンに繋がる。
【0142】
また、上述したクリーニング装置を画像形成装置の像担持体表面をクリーニングするクリーニング装置として用いることにより、経時にわたり良好なクリーニング性を維持することができ、経時にわたり良好な画像を得ることができる。
【0143】
また、トナーとして、形状係数SF1が100以上150以下、平均粒径が6μm以下のトナーを用いることにより、トナーの帯電量分布が均一になり、地肌かぶりの少ない高品位な画像を得ることができ、また、静電転写方式では転写率を高くすることができる。
【符号の説明】
【0144】
4:ドラムクリーニング装置
8:中間転写ベルト
51:紙搬送ベルト
100:ベルトクリーニング装置
100a:プレクリーニング部
100b:逆帯電トナークリーニング部
100c:正規帯電トナークリーニング部
101:プレクリーニングブラシローラ
102:プレ回収ローラ
103:プレ掻き取りブレード
104:逆帯電トナークリーニングブラシローラ
105:逆帯電トナー回収ローラ
106:逆帯電トナー掻き取りブレード
107:正規帯電トナークリーニングブラシローラ
108:正規帯電トナー回収ローラ
109:正規帯電トナー掻き取りブレード
116,121,122,123:カム板
500 搬送ベルトクリーニング装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0145】
【特許文献1】特開2006−58422号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面移動する被清掃体上のトナーを静電的に自らの表面に移動させて除去する表面移動可能なクリーニング部材と、
上記クリーニング部材上のトナーを静電的に自らの表面に移動させて回収する表面移動可能な回収部材と、
上記回収部材表面に摺擦して上記回収部材上のトナーを掻き取る掻き取り部材とを備えたクリーニング装置において、
上記回収部材を、上記掻き取り部材に対して相対的に上記回収部材軸方向に往復移動させる移動手段を設けたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1のクリーニング装置において、
上記回収部材および上記掻き取り部材を、金属材料で形成したことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項3】
請求項1または2のクリーニング装置において、
上記被清掃体上のトナーの正規帯電極性に帯電した正規帯電トナーを除去する正規帯電トナークリーニング部材と、該正規帯電トナークリーニング部材に付着した正規帯電トナーを回収する正規帯電トナー回収部材と、該正規帯電トナー回収部材の正規帯電トナーを掻き取る正規帯電トナー掻き取り部材とを備えた正規帯電トナークリーニング部と、
上記被清掃体上のトナーの正規帯電極性と反対極性に帯電した逆帯電トナーを除去する逆帯電トナークリーニング部材と、該逆帯電トナークリーニング部材に付着した逆帯電トナーを回収する逆帯電トナー回収部材と、該逆帯電トナー回収部材の逆帯電トナーを掻き取る逆帯電トナー掻き取り部材とを備えた逆帯電トナークリーニング部とを備え、
上記移動手段は、上記正規帯電トナー回収部材を、上記正規帯電トナー掻き取り部材に対して相対的に上記正規帯電トナー回収部材軸方向に往復移動させ、かつ、上記逆帯電トナー回収部材を、上記逆帯電トナー掻き取り部材に対して相対的に上記逆帯電トナー回収部材軸方向に往復移動させることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項4】
請求項3のクリーニング装置において、
上記移動手段を、上記正規帯電トナー回収部材の上記正規帯電トナー掻き取り部材に対する相対的な上記正規帯電トナー回収部材軸方向の往復移動と、上記逆帯電トナー回収部材の上記逆帯電トナー掻き取り部材に対する相対的な上記逆帯電トナー回収部材軸方向の往復移動との位相が異なるよう、構成したことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のクリーニング装置において、
上記移動手段は、カム機構を用いて往復移動させることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項6】
像担持体上に形成されたトナー像を該像担持体上から最終的に記録材上へ転写することで、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
転写後に上記像担持体上に残留した転写残トナーをクリーニングするためのクリーニング装置として、請求項1乃至5いずれかのクリーニング装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6の画像形成装置において、
上記トナーとして、形状係数SF1が100以上150以下、平均粒径が6μm以下のトナーを用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−191624(P2011−191624A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59142(P2010−59142)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】