説明

クリーニング装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】高速機であり、また、使用トナーが角のなお小粒径トナーであっても、クリーニング性を低下させることなく感光体の長寿命化を図ることができるクリーニング装置を提供する。
【解決手段】感光体の表面にエッジ部分を当接させてトナーを掻き取るブレード21を備えている。該ブレード21は、その本体部をなすブレード本体21dにおける感光体と当接するエッジ部位にフッ素系樹脂層30が形成されており、上記ブレード本体21dの滑らかな表面21bにおける凹凸21cには、フッ素系樹脂層30をなす樹脂材が充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用した画像形成装置に搭載され、感光体ドラム等の静電潜像担持体よりその表面に残留トナーを除去するクリーニング装置に関するものであり、より詳細には、静電潜像担持体に当接して表面よりトナーを掻き取るブレードを備えたクリーニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真方式を採用した画像形成装置には、静電潜像担持体である感光体上に残留するトナーを除去するためのクリーニング装置が設けられている。今日、クリーニング装置としては、省スペース化、設計容易性、機構簡易性等の理由にて、感光体表面に当接してトナーを掻き取るブレード(クリーニングブレード)を用いたタイプが多用されている。
【0003】
しかしながら、近年の画像形成装置が高速化されるに伴い、ブレード式のクリーニング装置を用いると、感光体の寿命が短くなるといった不具合がある。これは、高速化されてプロセス速度が速くなるために、ブレードと接触する感光体表面の磨耗(膜減り)が大きくなるためである。
【0004】
感光体表面の磨耗を抑える手法の一つとして、摩擦係数を低下させる手法があり、その先行技術として、例えば特許文献1〜3がある。特許文献1には、ブレードの感光体と接する部分に複数の切り込みを形成し、該切り込みの中に滑材(ステアリン酸亜鉛)を含浸させる技術が記載されている。また、感光体にアルミナや酸化チタンからなる無機微粒子を含有する保護層を設けることも記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、感光体の表面にある空隙を充塞するように感光体の最表層にフッ素系樹脂の層を設ける技術が記載されている。特許文献3には、ブレードの感光体に当接するエッジの画像領域部分に、フッ素系樹脂を内添する、或いはフッ素系塗料やシリコン系塗料を塗布して低摩擦化処理する技術が記載されている。
【0006】
また、近年、画像形成装置において近年主流となっている高速機やカラー機においては、粒径が5μm程度の小さいトナー(小粒径トナー)が用いられている。
【特許文献1】特開2005−70196号公報(平成17年3月17日公開)
【特許文献2】特開2004−86142号公報(平成16年3月18日公開)
【特許文献3】特開平5−72957号公報(平成5年3月26日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜3に開示された、従来の摩擦係数を低下させるための構成では、感光体の磨耗を低減させる効果が十分でなかったり、低減効果を持続できなかったり、クリーニング性が低下したり、或いは電子写真性能が低下したりといった問題がある。
【0008】
つまり、ブレードに切り込みを入れ、切り込みに滑材を含浸させる(特許文献1)構成は、切り込みと切り込みとの間に滑材の含浸されていない部分(幅1mmほど)が存在するため、摩擦係数の低減効果が低い。また、ブレードに細かい切り込みを入れるといった精度の高い加工が必要であるため、製造コストが高くなると共に、ブレードを損傷させやすいといった問題もある。
【0009】
また、感光体に保護層を設けたり(特許文献1)、感光体の最表面層としてフッ素系樹脂層を設けたり(特許文献2)といった、摩擦係数低減のために感光体を処理する構成は、感光体の本来の機能である電子写真性能を低下させるといった問題がある。
【0010】
また、ブレードのエッジにフッ素系樹脂を内添する(特許文献3)構成は、感光体に接触(圧接)されるブレードとしてエッジの精度が出にくく、クリーニング性が低下する。一方、ブレードのエッジにフッ素塗料を塗布する(特許文献3)構成は、エッジ周囲をコーティングできても、エッジそのものにコーティングを施すことができないため、低摩擦化効果が低く、また、薄層処理のため剥がれ等が生じやすく低減効果が持続しない。
【0011】
なお、磨耗量は、ブレードを感光体に押し付ける圧力(以下、線圧)に依存するため、線圧を下げることで小さくできるが、線圧を下げるとトナーが擦り抜けやすくなり、クリーニング性が低下する。しかしながら、逆に、クリーニング性を優先させるべく、線圧を大きくすると、ブレードが反転するブレードめくれ現象が起こり、結局クリーニング性が低下する。
【0012】
また、近年、画像の高解像度化のために小粒子径トナーが使用されるようになってきている。特に、小粒子径トナーの中でも、例えば重合法で製造された小粒子径トナーは球形であり、クリーニング性を考慮するための形状制御が容易であることから広く使用されている。
【0013】
従来、小粒径トナーのクリーニングには、ブレードの動きは感光体の回転に敏感に追随する、つまり、反発係数の高いほうが好適とされている。しかしながら、感光体との摩擦係数が高いために、ブレードが飛び跳ねる挙動となり、クリーニング性を確保できなくなることもわかってきた。
【0014】
本願発明は、上記課題に鑑みなされたもので、その目的は、高速機であり、また、使用トナーが角のない小粒径トナーであっても、クリーニング性を低下させることなく感光体の長寿命化を図ることができるクリーニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明におけるクリーニング装置のブレードは、上記課題を解決するために、静電潜像担持体の表面より現像剤を除去するクリーニング装置に備えられるブレードであって、ブレード本体における静電潜像担持体と当接するエッジ部位にフッ素系樹脂層が形成されており、該フッ素系樹脂層をなす樹脂材は、上記ブレード本体の滑らかな表面における凹凸に充填されていることを特徴としている。
【0016】
これによれば、ブレード本体の表面における静電潜像担持体と接触するエッジ部位には、フッ素系樹脂層が設けられているので、静電潜像担持体との摩擦係数を低減することができ、静電潜像担持体の磨耗を低減することができる。また、特許文献1の切り込みに滑材を含浸させる構成とは異なり、静電潜像担持体と接触するエッジ部位に全体的に成膜されているので、静電潜像担持体との摩擦係数の低減効果は高い。
【0017】
そして、静電潜像担持体との摩擦係数を効果的に低減できることで、ブレードが小刻みでスムーズなスティック・スリップ動作を行うようになり、角のない小粒径トナーよりなる現像剤のクリーニング性を上げることができる。なお、スティック・スリップ動作については、後述する。
【0018】
しかも、この場合、フッ素系樹脂層をなす樹脂材は、ブレード本体の表面の滑らかな表面における凹凸、つまり、ブレード本体の表面がもつ微小な凹凸に充填されているので、たとえフッ素系樹脂層が静電潜像担持体との摩擦により徐々に削り取られたとしても、凹凸に充填されている部分はブレード本体の凹凸に守られ、削り取られ難いので、摩擦係数低減効果を長く維持することができる。
【0019】
これにより、本発明のブレードを用いることで、搭載される画像形成装置が、角のない小粒径トナーを用いた高速機であっても、静電潜像担持体の長寿命化を図りながら、クリーニング性を確保することができるクリーニング装置を提供できる。
【0020】
上記ブレード本体としては、ウレタンゴム、シリコンゴム、クロロプレンゴム、或いはブタジエンゴムを用いることができる。また、上記ブレード本体における凹凸を有する滑らかな表面の表面粗さは、十点平均粗さRzで0.1〜10μmである。より好ましくは0.5〜8μmである。表面粗さが10μmより大きいと、ブレードの稜線部を静電潜像担持体に圧接しても当接した稜線部変形では足りずに静電潜像担持体の表面に部分的に当接しないところが生じて、トナーのクリーニング性が低下する場合がある。また、表面粗さが0.1μmよりも小さいと、静電潜像担持体とブレードとの稜線部の密着力が増して、目的とする低摩擦な摺動性を確保できなくなる場合がある。これらを考慮して、ブレード本体の表面粗さを0.1μm〜10μmにすることが好ましい。
【0021】
また、本発明のクリーニング装置のブレードにおいては、上記ブレード本体の反発弾性が40〜70%である構成とすることがより好ましく、45〜65%がより好ましい。
【0022】
反発弾性が40%を下回ると、ブレードのエッジ部分が静電潜像担持体と接触することで潰れてしまい、ブレードと静電潜像担持体とが広範囲で接触し、静電潜像担持体の磨耗が進んでしまう惧れがある。また、反発弾性が70%超えると、スティック・スリップ動作による振動が大きくなり、ブレードが飛び跳ねるような挙動を示し、現像剤の擦り抜けが発生する惧れがある。
【0023】
ブレード本体における反発弾性を上記の範囲とすることで、ブレードは、角がある状態で静電潜像担持体と接触すると共に、スティック・スリップ動作にてブレードが飛び跳ねるような挙動を示すこともなく、小刻みでスムーズなスティック・スリップ動作を確実に行うようになる。
【0024】
なお本発明で用いられる物性値の測定は、JISK6301加硫ゴム物理試験法に準じた。
【0025】
また、本発明のクリーニング装置のブレードにおいては、上記フッ素系樹脂層を、減圧下においてブレード本体をフッ素系樹脂が分散する水性分散液中に浸漬する、或いは、フッ素系樹脂が分散する水性分散液をスプレー塗布法によりブレード本体に塗布し、その後、加熱することで形成することができる。
【0026】
本発明のクリーニング装置は、上記課題を解決するために、画像形成装置に備えられ、静電潜像担持体の表面より現像剤を除去するクリーニング装置であって、静電潜像担持体の表面にエッジ部分を当接させて現像剤を掻き取るブレードが備えられ、該ブレードの本体部をなすブレード本体における静電潜像担持体と当接するエッジ部位にフッ素系樹脂層が形成され、該フッ素系樹脂層をなす樹脂材は、上記ブレード本体の滑らかな表面における凹凸に充填されていることを特徴としている。
【0027】
ブレードとして既に説明したように、本発明のクリーニング装置は、上記した本発明のブレードを用いているので、角のない小粒径トナーを用いた高速機であっても、静電潜像担持体の長寿命化を図りながら、クリーニング性を確保できる。
【0028】
本発明のクリーニング装置においては、さらに、上記ブレードにおける静電潜像担持体の回転方向上流側に、静電潜像担持体に接触して回転する回転ブラシが備えられている構成とすることが好ましい。
【0029】
これによれば、回転ブラシが静電潜像担持体に付着した現像剤に当たることで現像剤が解されてブレードによる掻き取りがより効果的に行われるので、クリーニング性をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明におけるクリーニング装置のブレードは、以上のように、静電潜像担持体の表面より現像剤を除去するクリーニング装置に備えられるブレードであって、ブレード本体における静電潜像担持体と当接するエッジ部位にフッ素系樹脂層が形成されており、該フッ素系樹脂層をなす樹脂材は、上記ブレード本体の滑らかな表面における凹凸に充填されていることを特徴としている。
【0031】
本発明のクリーニング装置は、以上のように、画像形成装置に備えられ、静電潜像担持体の表面より現像剤を除去するクリーニング装置であって、静電潜像担持体の表面にエッジ部分を当接させて現像剤を掻き取るブレードが備えられ、該ブレードの本体部をなすブレード本体における静電潜像担持体と当接するエッジ部位にフッ素系樹脂層が形成され、該フッ素系樹脂層をなす樹脂材は、上記ブレード本体の滑らかな表面における凹凸に充填されていることを特徴としている。
【0032】
これにより、角のない小粒径トナーを用いた高速機であっても、静電潜像担持体の長寿命化を図りながら、クリーニング性を確保することができるクリーニング装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の一実施形態について図1ないし図8に基づいて説明すると以下の通りである。
【0034】
まず、図2に基づいて、本実施の形態であるクリーニング装置6を搭載した画像形成装置(電子写真装置)41の全体構成を説明する。なお、図2は、画像形成装置41を正面側より見た縦断面図である。
【0035】
画像形成装置41は、用紙に画像データに応じた画像(ここではモノクロ画像)を形成するものである。画像形成装置41は、感光体(静電潜像担持体)1を備え、その周囲に、周知のカールソンプロセスを実施するための構成である、帯電装置2、露光装置3、2成分の現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び除電装置7を備えている。
【0036】
感光体1はドラム状をなし、回転に伴いその表面は、帯電装置2にて所定の電位に均一に帯電され、露光装置3によって画像データに応じた静電潜像が書き込まれ、現像装置4が、該静電潜像をトナーで顕像化する。顕像化された像は、給紙トレイ9よりピックアップローラ10にて給紙され、レジストローラ11に画像の先端合わせが行われた用紙上に、転写装置5にて転写され、その後、定着装置14へと送られる。トナー像は定着装置14を通過することで溶融されて用紙上に定着される。トナー像が定着された用紙は、その後、積載トレイ17上に排出される。
【0037】
一方、トナー像を用紙へと転写した後の感光体1は、詳細については後述するクリーニング装置6によって表面に残留するトナーが除去された後、除電装置7にて残留する電荷が除去され、再び帯電装置2にて帯電されることとなる。
【0038】
なお、これ以上の説明は行わないが、画像形成装置41は、用紙をスイッチバック搬送することで用紙の表裏両面に画像を形成できるようになっている。また、図3に示すように、オプション機器として、画像読取装置42、自動原稿搬送装置48、後処理装置45、中継搬送装置44、記録材再供給装置43、記録材供給装置46・47等を付設することが可能である。
【0039】
次に、上記クリーニング装置6について詳細に説明する。図4に、上記クリーニング装置6の構成を示す。図4において、参照符号21が、感光体1表面に残留するトナーを掻き落とすブレード(クリーニングブレード)である。ブレード21は、感光体1の軸方向を長手方向とする長尺状のゴム部材であり、一方の長辺がケース24に設けられた開口部における感光体1の回転方向下流側に取り付けられ、他方の長辺のエッジ(角)21aが感光体1の表面に接触するよう配置されている。
【0040】
上記ケース24内には、ブラシローラ22とトナー搬送スクリュー25とが収容されている。ブラシローラ22は、感光体1表面にあるトナーを散らし(解し)、ブレード21により掻き取りが効率よく行われるようにするものである。また、ブラシローラ22は、ブレード21にて掻き落とされたトナーをブラシ先端の掻き取り力で感光体表面から機械的に除去してケース21内へと回収する機能も有している。ブラシローラ22は、ブラシの先端が感光体1表面に接触するように、また、ブレード21で掻き落とされ、堰き止められたトナーを回収し得る位置に配されており、感光体1の回転方向と順方向(回転方向は逆)に回転されるようになっている。また、ブラシローラ22には、フリッカー23が設けられ、付着したトナーがフリッカー23に接触することでケース24内に落下するようになっている。
【0041】
トナー搬送スクリュー25は、ケース24の底面側に配されており、ケース24外部の図示しない廃トナーボックスへと、回収されたトナーを送り出すものである。なお、ケース24の開口部における感光体1の回転方向上流側にはシール材26が取り付けら、ケース24内より回収したトナーが再び漏れ出すのを阻止するようになっている。
【0042】
なお、図4では、ブラシローラ22が設けられたクリーニング装置6を例示したが、本発明は、図5に示すように、ブラシローラ22が設けられていない構成のクリーニング装置6’であってもよい。
【0043】
ここで、注目すべきは、クリーニング装置6のブレード21の構成である。本画像形成装置のクリーニング装置6に搭載されたブレード21は、板状弾性部材よりなるブレード本体における感光体1と当接するエッジ21a部分にフッ素系樹脂層30が形成されており、該フッ素系樹脂層30をなす樹脂材であるフッ素系樹脂が、ブレード本体21dの表面21bにおける凹凸21cに充填された構成を有している。
【0044】
図1に、ブレード21におけるエッジ21a部分の断面構造を示す。ブレード本体21dの表面21bは凹凸21cを有しており、この凹凸21cを埋めるように、フッ素系樹脂層30が形成されている。ブレード本体21dの表面21bは、滑らかな表面であり、該表面21bに設けられた凹凸21cは、前述した切り込みとは異なり、ゴム部材の滑らかな表面にある微細な凹凸である。この表面粗さは、十点平均粗さRz0.1〜10μm(JIS B 0601-1994)であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8μmである。表面粗さが10μmより大きいと、ブレード21の稜線部を感光体1に圧接しても当接した稜線部変形では足りずに感光体1の表面に部分的に当接しないところが生じて、トナーのクリーニング性が低下する場合がある。また、表面粗さが0.1μmよりも小さいと、感光体1とブレード21との稜線部の密着力が増して、目的とする低摩擦な摺動性を確保できなくなる場合がある。これらを考慮して、ブレード本体21dの表面21bの表面粗さRzを、0.1μm〜10μmにすることが好ましい。因みに、感光体1の最外面の表面粗さRzは0.1〜1.5μm程度である。
【0045】
上記ブレード21では、ブレード本体21dの表面21bにおける感光体1と接触するエッジ部位にフッ素系樹脂層30が設けられているので、感光体1との摩擦係数を低減することができ、感光体1の磨耗を低減することができる。しかも、特許文献1の切り込みに滑材を含浸させる構成とは異なり、フッ素系樹脂層30は、感光体1と接触するエッジ部位に全体的に成膜されているので、感光体1との摩擦係数の低減効果は高い。
【0046】
そして、感光体1との摩擦係数を効果的に低減できることで、ブレード21が小刻みでスムーズなスティック・スリップ動作を行うようになり、角のない小粒径トナーよりなる現像剤のクリーニング性を上げることができる。スティック・スリップ動作とは、図6に示すように、ブレード21における感光体1との接触部分が、感光体1の表面の動きにつられて感光体1の回転方向に移動する動作と、ブレード21自身の弾性力にて基の位置に戻る動作とを繰り返す動きであり、ブレード21のエッジ21aが、感光体1の表面を摺動する動作である。
【0047】
しかも、この場合、フッ素系樹脂層30をなす樹脂材は、ブレード本体21dの滑らかな表面21bにおける凹凸21cに充填されているので、たとえフッ素系樹脂層30が感光体1との摩擦により徐々に削り取られたとしても、凹凸21cに充填されている部分はブレード本体21dの凹凸21cに守られ、削り取られ難いので、摩擦係数低減効果を長く維持することができる。
【0048】
これにより、上記クリーニング装置6は、搭載される画像形成装置が、角のない小粒径トナーを用いた高速機であっても、感光体1の長寿命化を図りながら、クリーニング性を確保することができる。
【0049】
上記角のない小粒径トナーとは、電荷集中しやすい突部またはストレスにより摩損しやすい突部を実質的に有しないトナー粒子である。すなわち、トナー粒子の長径をLとするときに、半径(L/10)の円で、トナー粒子の周囲線に対し1点で内側に接しつつ内側をころがした場合に、当該円がトナーの外側に実質的にはみださない場合を角のないトナー粒子という。実質的にはみ出さない場合とは、はみ出す円が存在する突起が1箇所以下である場合をいう。また、トナー粒子の長径とは、当該トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線で挟んだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。
【0050】
ここでは、角がないトナー粒子の確認は次のようにして行った。つまり、まず、走査型電子顕微鏡によりトナー粒子を拡大した写真を撮影し、さらに拡大して15,000倍の写真像を得る。次いで、この写真像について前記の突部の有無を判定する。
【0051】
角のないトナーを得る方法は特に限定されるものではない。例えば、トナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、またはトナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、あるいはトナーを溶解しない溶媒中に添加し、旋回流を付与することによって得ることができる。
【0052】
また、樹脂粒子を会合あるいは融着させることで形成する重合法トナーにおいては、融着停止段階では融着粒子表面には多くの凹凸があり、表面は平滑でないが、形状制御工程での温度、攪拌翼の回転数および攪拌時間等の条件を適当なものとすることによって、角のないトナーが得られる。これらの条件は、構成樹脂の物性により変わるものであるが、例えば、構成樹脂のガラス転移点温度以上で、より高回転数とすることにより、表面は滑らかとなり、角のないトナーを作製できる。本発明での小粒子径トナーとは、体積平均粒子径で4〜8μmを有するトナーを示す。
【0053】
また、ここで高速機とは、プロセス速度300mm/s以上をさす。
【0054】
上記ブレード本体21dとして使用可能な材質としては、ウレタンゴム、シリコンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム等からなる板状弾性部材を挙げることができる。
【0055】
また、上記ブレード本体21dは、永久のびが1%以下、引張り強度が30〜40MPa、反発弾性が40〜70%であることが好ましい。反発弾性が40%を下回ると、ブレード21のエッジ部分が感光体1と接触することで潰れてしまい、ブレード21と感光体1とが広範囲で接触し、感光体1の磨耗が進んでしまう惧れがある。また、反発弾性が70%超えると、スティック・スリップ動作による振動が大きくなり、ブレード21が飛び跳ねるような挙動を示し、トナーの擦り抜けが発生する惧れがある。
【0056】
ブレード本体21dにおける反発弾性を上記の範囲とすることで、ブレード21は、角がある状態で感光体1と接触すると共に、スティック・スリップ動作にてブレードが飛び跳ねるような挙動を示すこともなく、小刻みでスムーズなスティック・スリップ動作を確実に行うようになる。
【0057】
ここで、上記ブレード21の製造方法について説明する。ブレード21は、ブレード本体21dにフッ素系樹脂を含浸させ、含浸されたフッ素系樹脂にてブレード本体21dをコーティングすることで製造されている。
【0058】
用いられるフッ素系樹脂としては、テトラフルオロエチレン(4フッ化エチレン)と各種の炭化水素系ビニルエーテルとの交互共重合体、3フッ化1塩化エチレンと各種の炭化水素系ビニルエーテルとの交互共重合体、フッ化ビニリデンと各種の炭化水素系ビニルエーテルとのコポリマー等が挙げられ、これらの中でも、テトラフルオロエチレンを含む交互共重合体が好ましい。
【0059】
また、フッ素系樹脂層30の耐久性及びブレード本体21dへの密着性を確保するために、テトラフルオロエチレンと各種の炭化水素系ビニルエーテルの交互共重合体に架橋剤を合わせてもよい。
【0060】
ブレード本体21dにフッ素系樹脂を含浸させるには、水性媒体中にフッ素系樹脂の微粒子を分散させた水性分散液として用いることが製造上簡便であり、さらにその水性分散液に溶剤等を含有していてもよい。溶剤を含有させることにより、ブレードへのフッ素系樹脂の濡れ性を向上させ、ブレード表面を膨潤させる効果があるため、フッ素系樹脂のブレード本体21dの表面21bの凹凸21c空隙への充填を促進することができる。使用溶剤としては、芳香族溶剤、アルコール等が挙げられる。フッ素系樹脂を分散させる水性媒体としては、例えば純水に界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤などを配合したものを用いることができる。
【0061】
そして、ブレード本体21dを、減圧下においてフッ素系樹脂が分散する水性分散液中に浸漬することで、フッ素系樹脂をブレード本体21dの表面21bの凹凸21cに充填させることができる(浸漬含浸法)。このときの圧力は、好ましくは600Torr以下、さらに好ましくは300Torr以下である。また、充填速度を向上させるために、ブレード本体21dを浸漬させた状態で超音波を照射してもよい。なお、水性分散液(フッ素系樹脂分散液)に浸漬する前に、ブレード本体21に対し、60〜90℃程度の乾燥炉内で約1時間加熱してアニール処理を施すようにしてもよい。アニール処理を施すことで、水性分散液が含浸しやすくなる。
【0062】
浸漬含浸法以外には、上記水性分散液をスプレー塗装法によりブレード本体21dにフッ素系樹脂を付着させ、50℃以上、好ましくは60℃以上に加熱することで表面21bの凹凸21cにフッ素系樹脂を充填することもできる。
【0063】
このようにして得られるフッ素系樹脂層30の厚さは、感光体1表面の付着物(トナー等)を除去するための十分な弾性と密着性を確保できれば特に制限されるものではない。
【0064】
このようなブレード21は、例えば自由端長(短辺の長さ)9.0mm、厚み2.0mm、全長(長辺の長さ)326mmで形成され、Φ80mmの感光体1に対してリーディング方式の定荷重方式で当接される。また、ブレード21の感光体1に対する線圧は、0.5〜2.5gf/mm(0.05〜0.25N/cm)、クリーニング角度は8〜17°、食い込み量0.3〜1.5mmとなるように設定することが好ましい。
【0065】
ブレード21のクリーニング角度とは、図6に示す、ブレードホルダーを通して負荷されたブレード21のエッジ21aが摺動する感光体1の表面とブレード21の感光体1側の面とが、感光体1の回転方向下流側に成す角θである。クリーニング角度θは、大きいほどブレード21における感光体1と接触する先端部(エッジ21a部分)の摺動方向への動きの自由度が大きくなるため、スティック・スリップ運動にとっては有利であり、なめらかなスティック・スリップ運動が実現する。しかしながら、クリーニング角度θが大きすぎるとブレード21と感光体1の面との摩擦があまりにも大きくなるような環境その他の条件では、感光体1のトルクの上昇や、ブレード21のめくれ現象、或いはブレード21のエッジ21aにダメージが生じやすくなる。
【0066】
そこで、本実施の形態では、クリーニング角度θを上記範囲としている。これにより、スティック・スリップ運動を問題なく実現すると共に、ブレード21と感光体1の面との摩擦が非常に大きくなるような環境その他の条件であっても、上記した不具合の招来を回避することができる。
【0067】
また、ブレード21の線圧であるが、これも、高いほど、感光体1の表面に付着したトナーによってブレード21が押し上げられ難くなるため、トナーの受ける力反力は確実に生じる。しかしながら、線圧が高すぎると、スティック・スリップ運動には妨げとなるため、クリーニングにとっては有利とはいえない。
【0068】
そこで、本実施の形態では、線圧を上記範囲としている。これにより、効果的なスティック・スリップ運動を実施しながら、ブレード21と感光体1との間をトナーが通り抜けることを確実に阻止して、クリーニング性を良好にできる。
【0069】
次に、本発明のクリーニング装置の実施例と比較例について説明する。実施例では、ブレード本体に反発弾性が異なるものを用意し、該ブレード本体21dを予め80℃の乾燥炉内で約1時間加熱し、次いでチャンバー内で、フッ素系樹脂と硬化剤とを0.1μm程度に分散、アルコールを含有させてなる水性分散液中に浸漬し、300Torrの減圧下、10分間浸漬した。その後、常圧に解放し、表面に付着した水性分散液を除去し、40℃で3時間乾燥してブレードを得た(浸漬含浸法)。
【0070】
また、芳香族溶剤を含有するフッ素系樹脂を分散させた水性分散液をスプレー塗布法を用いてブレード本体に吹き付け、その後、80℃、1時間加熱乾燥してブレード21を得た(スプレー含浸法)。
【0071】
図9に、ブレード本体にフッ素処理を施したブレード、及びフッ素処理を施していない未処理のブレードそれぞれの、感光体との動摩擦係数を調べた結果を示す。フッ素処理は、処理液のフッ素系樹脂含有率30%、45%の2種類で行った。用いたブレード本体の物性値は、硬度(JISAスケール)70°、反発弾性50%、ヤング率6.4MPa、引張り強度33.3MPaである。
【0072】
図9より、未処理のブレードの動摩擦係数に比べ、フッ素処理を施したブレードの動摩擦係数が大きく低減されていることがわかる。そして、処理液のフッ素系樹脂含有率の高いものほど、動摩擦係数の低減効果が高いことがわかる。
【0073】
このようにして得たブレード21を、図4に示したブラシローラ22を有するタイプのクリーニング装置6と、図5に示したブラシローラ22を持たないタイプのクリーニング装置6’とに搭載させ、これらクリーニング装置6・6’を、画像形成装置に組み込んで、クリーニング性、感光体磨耗性、印刷画質、総合評価を行った。画像形成装置のプロセス速度は395mm/secとした。
【0074】
一方、比較例としては、実施例と同様のブレード本体21dを、フッ素系樹脂層を形成することなく、或いは、実施例と同様のブレード本体21dに、予めブレード本体21dを加熱処理することなくフッ素系塗料を刷毛などにて塗る、一般的な塗布法によりブレード21dに付着させることにより作成し、これを図4のクリーニング装置6に搭載し、かつ、実施例と同様に、画像形成装置に組み込んで、クリーニング性、感光体磨耗性、印刷画質、総合評価を行った。画像形成装置のプロセス速度は395mm/secとした。
【0075】
なお、実施例、比較例ともに、ブレード本体21dのサイズを、自由端長(短辺の長さ)9.0mm、厚み2.0mm、全長(長辺の長さ)326mmとし、Φ80mmの感光体1に対してリーディング方式の定荷重方式で当接させた。
【0076】
ここで、クリーニング性の評価は、300K(30万)枚の印字(画像形成)を行っても、感光体1表面に回収し切れなかったトナーによる筋が現れなかった場合に「○」、300Kにて部分的に筋が現れた場合に「△」、1K(1千)枚にて広範囲に筋が現れた場合に「×」とした。
【0077】
感光体磨耗性の評価は、初期膜厚30μmの感光体を用い、100K(10万枚)当たりの磨耗量が3μm以下であって、かつ、傷のない場合に「○」、100K(10万枚)当たりの磨耗量が3〜5μm以下であって、かつ、傷のない場合に「△」、100K(10万枚)当たりの磨耗量が5μm以上であって、かつ、傷のある場合に「×」とした。
【0078】
印字画質の評価は、目視観察にて良好な場合に「○」、若干の筋状欠陥のある場合に「△」、欠陥がある場合に「×」とした。総合評価は、優良「◎」、良「○」、実用上問題のないものを可「△」、実使用できないものを不可「×」とした。
【0079】
図7に、実施例及び比較例の各条件と評価結果とを示す。フッ素コート法の欄における括弧書きの%は、水性分散液におけるフッ素系樹脂の含有量を表している。また、ブラシの欄の「なし」は、ブラシローラ22を有さないタイプの図5のクリーニング装置6’に搭載された場合の結果であり、ブラシの欄におけるdは、ブラシ毛の太さを現しており、6dは6デニールである。また、ブラシ欄におけるf/inchは、ブラシの毛の密度を示し、60kf/inchは、inchあたり6万本のブラシが植毛されている状態を表している。
【0080】
実施例同士を比較すると明らかなように、ブラシローラ22を配置することでクリーニング性が向上する。また、ブレード本体の反発弾性が17%と低い実施例7は、総合的には実用可能であるが、ブラシローラ22を設けてもクリーニング性は「△」で、かつ、感光体磨耗性も反発弾性の高いブレードに比べて低い。
【0081】
また、比較例と実施例とを比較すると明らかなように、フッ素コート処理を施さなかったブレードは、ブレード本体の反発弾性が上記した好ましい値であっても、全ての項目において「×」であった。また、一般的なコーティング法にてフッ素系樹脂層を形成したブレードは、感光体磨耗性は「△」の評価であったが、ブラシローラ22を設けたにもかかわらず、クリーニング性は「×」であり、実用に耐えなかった。
【0082】
図8に、比較例3,4の一般的なコーティング法でフッ素系樹脂層100を形成したブレードの断面構成を示す。フッ素系樹脂層100は、ブレード21の表面21bの凹凸21cにまで充填されることはなく、凹凸21cに空気101がつまった状態で、表面21bを凹凸21cの空気101ごと覆うようにして形成されている。このようなフッ素系樹脂層100では、感光体1との摩擦にて磨耗し、凹凸21cが表面に露出すると、未処理の状態と同等になり、凹凸21cが離出した時点で摩擦係数が急激に増加する。
【0083】
これに対し、図1に示した本実施形態のブレード21では、表面21bの凹凸21cまでフッ素系樹脂層30が充填されているので、感光体1との摩擦にてフッ素系樹脂層30が磨耗し、凹凸21cが表面に露出したとしても、未処理の状態と同等になるようなことはなく、摩擦係数が急激に増加することはない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、クリーニング装置に搭載されるブレードにおける感光体と接触する部位の断面図である。
【図2】上記クリーニング装置が搭載された画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図3】図2の画像形成装置にオプション機器が付設された状態を示す断面図である。
【図4】上記クリーニング装置の構成を示す図面である。
【図5】図1のブレードを搭載した別のクリーニング装置の構成を示す図面である。
【図6】クリーニング装置のブレードのスティック・スリップ動作を説明する図面である。
【図7】本発明の実施例及び比較例における各条件及び評価結果を示す図面である。
【図8】比較例である従来構成のブレードにおける感光体と接触する部位の断面図である。
【図9】ブレードにおけるフッ素処理と、感光体との動摩擦係数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0085】
1 感光体(静電潜像担持体)
6 クリーニング装置
6’ クリーニング装置
21 ブレード
21a エッジ
21b 表面
21c 凹凸
21d ブレード本体
22 ブラシローラ
30 フッ素系樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体の表面より現像剤を除去するクリーニング装置に備えられるブレードであって、
ブレード本体における静電潜像担持体と当接するエッジ部位にフッ素系樹脂層が形成されており、該フッ素系樹脂層をなす樹脂材は、上記ブレード本体の滑らかな表面における凹凸に充填されていることを特徴とするクリーニング装置のブレード。
【請求項2】
上記ブレード本体におけるエッジ部位の表面粗さであって十点平均粗さRzが0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置のブレード。
【請求項3】
上記ブレード本体の反発弾性が40〜70%であることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置のブレード。
【請求項4】
上記フッ素系樹脂層は、減圧下においてブレード本体をフッ素系樹脂が分散する水性分散液中に浸漬することで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置のブレード。
【請求項5】
上記フッ素系樹脂層は、フッ素系樹脂が分散する水性分散液をスプレー塗布法によりブレード本体に塗布し、その後、加熱することで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置のブレード。
【請求項6】
上記ブレード本体は、ウレタンゴム、シリコンゴム、クロロプレンゴム、或いはブタジエンゴムからなることを特徴とする請求項1に記載のクリーニンド装置のブレード。
【請求項7】
画像形成装置に備えられ、静電潜像担持体の表面より現像剤を除去するクリーニング装置であって、
静電潜像担持体の表面にエッジ部分を当接させて現像剤を掻き取るブレードが備えられ、
該ブレードの本体部をなすブレード本体における静電潜像担持体と当接するエッジ部位にフッ素系樹脂層が形成され、該フッ素系樹脂層をなす樹脂材は、上記ブレード本体の滑らかな表面における凹凸に充填されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項8】
上記ブレードにおける静電潜像担持体の回転方向上流側に、静電潜像担持体に接触して回転する回転ブラシが備えられていることを特徴とする請求項7に記載のクリーニング装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のクリーニング装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−148036(P2007−148036A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342761(P2005−342761)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】