説明

クリーム菓子およびクリーム菓子原料

【課題】加熱してもクリームが長時間保形されるクリーム菓子およびクリーム菓子原料を提供する。
【解決手段】乳分と、摩砕してペースト状にした米粉とを加えて微温湯攪拌して溶解混合物を生成し、その溶解混合物に水酸化物を添加した後、加熱して得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳分を主成分とするクリームを使用するクリーム菓子およびクリーム菓子原料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
菓子のうち、乳分を主成分とするクリーム菓子は大変ポピュラーなものであり、主成分となるクリームの種類としては、例えば、ケーキに代表される焼き菓子類に使用されるホイップクリームや、ソフトクリームに使用されるソフトクリームミックス分などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−192067号公報
【特許文献2】特開2003−235458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クリーム菓子のほとんどは冷蔵して冷たく提供されており、クリームが温度上昇とともに保形が難しくなることに起因している。したがって、温かいコーヒーの上に螺旋状に捻り出された生クリームをのせて提供されるウインナーコーヒーのように、コーヒーを飲む前にその状態を視覚的に楽しむものや、大判焼きのようにモナカでクリームの外部全体を覆う態様のものなど、提供形態がごく限られてしまう問題点があった。
【0005】
本発明は、以上に述べたような実情に鑑みてなされてものであり、温かな状態でも長時間保形されるクリーム菓子および菓子原料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明は、乳分と、摩砕してペースト状にした米粉とを加えて微温湯攪拌して溶解混合物を生成し、その溶解混合物に水酸化物を添加した後、加熱して得ることを特徴とする。このようにすると、乳分を主成分とする溶解練成された菓子のベース分とペースト状(もち状、のり状とも表現できる)をなす米粉とが絡み合うことで粘性が高まり、結果、ホイップクリームやソフトクリームベース分と同等の柔らかく滑らかな食感を呈しながらも、湯気が立つような温かい状態で長時間保形されるクリーム菓子が形成される。ここで乳分とは、牛乳や豆乳などが挙げられる。
【0007】
本発明の請求項2記載の発明は、絞り袋内に、乳分と、摩砕してペースト状にした米粉とを入れるとともに水酸化物を添加して微温湯撹拌して溶解混合物を生成し、その混合物を入れた袋を加熱して得ることを特徴とする。ここで絞り袋とは、布または軟質の樹脂を素材とし、その袋の口に口金が取り付けられたものであり、口金を外すことで袋の内容物が出る構造となっている。
【0008】
本発明の請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の菓子原料に摩砕したペースト状のおから原料を加えたことを特徴とする。ここで、おからがペースト状であるとは、大豆から豆乳を搾り取った殻状のおからを磨砕したものを湿らせて含水させることで、「もち状」あるいは「のり状」としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のうち請求項1記載の発明によれば、ペースト状にした米粉が乳分と混合されることにより、粘性のあるクリーム状の混合物が形成される。そして、上記クリーム状の混合物を加熱することにより、乳分を主成分とする溶解練成された菓子のベース分と混合練成されたペースト状をなす米粉が絡み合って粘性が高まることで、湯気が立つような比較的高温(常温下では60℃程度)で温められた菓子として提供されるものであっても長時間保形できる。また、米粉と絡み合った乳分を主成分とするクリーム状の菓子ベース分が高温状態でも保形効果を有することで、一般的な認識として比較的冷たい口当たりのクリーム分が、イメージに反して温かい口当たりとなることから、ユーザーに新規の食感を与え、斬新なクリーム菓子として提供できる。
【0010】
本発明のうち請求項2記載の発明によれば、絞り口を有する袋内で米粉と絡み合った乳分を主成分とするクリーム状の菓子ベース分が形成され、これを袋ごと加熱してそのまま絞り口から抽出されることから、衛生的で且つ効率的にクリーム菓子を製造できるようになる。
【0011】
本発明のうち請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の菓子原料にペースト状のおからを加えることで、米粉の粘性とペースト状のおからが違和感なく絡み合い、一般的にパサパサとして食べにくいおからの食感が滑らかになることで、栄養価の高いクリーム菓子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施による菓子の常温下における製造後60分経過後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施による菓子および菓子原料について、以下に製造手順を説明する。
本実施形態(第一実施形態とする)では、冷やした状態で提供されるソフトクリームの態様とほぼ同じ、クリーム分をコーンの上に螺旋状に載せたクリームを使用する菓子として製造するものである。
おもな菓子原料の構成原料として、本実施のものでは。乳分として牛乳、そして、米粉の各原料を使用するものであるが、牛乳に対して後述する菓子製造に要する各成分を加えてクリームベース分を生成する。
ここで、前述した使用各構成原料のうち「米粉」と「クリームベース分」について具体的に説明する。

『米粉原料』
適量の水に、摩砕して目視レベルで米粒としての存在が確認されなくなった状態の粉末状の米粉150gを加え、加熱しながら混合してペースト状の米粉の初期原料を作成する。

『クリームベース分』
・主原料
牛乳1200cc、生クリーム300cc、グラニュー糖115g、卵白1個、バニラエッセンス約1〜3g程度を主成分とする。以上の各成分は、通常、氷菓子として提供されるソフトクリームの原料と同じである。

・クリームベース分の生成までの過程
(1) 上記した牛乳1200cc、生クリーム300cc、グラニュー糖115gを収容器(第1収容器)に入れて約80℃で加熱する。
(2) 別の収容器(第2収容器)に卵白1個分を入れて攪拌する。
(3) (1)の工程で生成された混合物を第2収容器に少しずつ投入して段階的に混合する。
(4) (3)の工程で生成された混合物を濾し器に投入して成分を整える。
(5) (4)の工程でペースト状になった段階でバニラエッセンスを投入し、クリームベース分の生成が完了する。
【0014】
次に、本実施による菓子の製造手順について説明する。
本実施による菓子原料は、上述のクリームベース分1600cc、米粉150gを主原料とする。
第一の工程として、米粉150gを300ccの蒸留水で攪拌して溶解させる。
第二の工程として、第一の工程で得られた米粉溶解物を60℃となるまで約3分間加熱して水分を飛ばし、粘性が出るまで攪拌する。
第三の工程として、第二の工程における加熱時の余熱を利用して約30〜40℃に放冷
されるまで米粉溶解物を攪拌し、米粉溶解物をペースト状にする。
第四の工程として、上記クリームベース分1600ccを加え、さらに、第一〜第三の工程で得られた米粉溶解物を加えて攪拌し、クリーム状の混合物を生成する。
以上、第一〜第四の工程を経て得られた混合物を生クリーム用の絞り袋の中に投入してコーン等に盛り付けることで、クリーム菓子を製造が完了する。
【0015】
以下に、本発明の他の実施形態(第二実施形態とする)として、上記のクリームベース分に豆乳を加えたものについて説明する。

『クリームベース分』
・主原料
豆乳1920cc、牛乳1280cc、生クリーム800cc、グラニュー糖300g、卵黄10個、バニラエッセンス1gを主成分とする。

・クリームベース分の生成までの過程
(1) 上記した豆乳1920cc、牛乳1280cc、生クリーム800cc、グラニュー糖300gを収容器(第1収容器)に入れて約80℃で加熱する。
(2) 別の収容器(第2収容器)に卵黄10個とグラニュー糖300gを入れて攪拌する。
(3) (1)の工程で生成された混合物を第2収容器に少しずつ投入して段階的に混合する。
(4) (3)の工程で生成された混合物を濾し器に投入して成分を整える。
(5) (4)の工程でペースト状になった段階で約18〜20℃の環境で放冷し、バニラエッセンスを投入してクリームベース分の生成が完了する。
【0016】
また、本発明による菓子原料については、小麦粉を加えることも可能である。具体的には、上記の小麦粉と、クリームベース分、米粉、水分を混合して得られた混合物である。
【0017】
以下に、上記小麦粉を原料に含むクリーム菓子の製造手順について説明する。
本実施による菓子は、上述のクリームベース分1200cc、米粉150g、小麦粉50gを主原料とする。
第一の工程として、米粉150gを300ccの蒸留水で攪拌して溶解させる。
第二の工程として、第一の工程で得られた米粉溶解物を60℃となるまで約3分間加熱して水分を飛ばし、粘性が出るまで攪拌する。
第三の工程として、米粉溶解物を攪拌して米粉溶解物をペースト状にする。
第四の工程として、上記クリームベース分1200cc、小麦粉300gを加え、さらに、第一〜第三の工程で得られた米粉溶解物を加えて攪拌し、クリーム状の混合物を生成する。
以上、第一〜第四の工程を経て得られた混合物を生クリーム用の絞り袋に投入してコーン等に盛り付けることで、クリーム菓子の製造が完了する。
【0018】
また、本発明の他の実施形態(第三実施形態とする)を説明する。
第一の工程として、クリームベース分1600cc、米粉150g、蒸留水300ccを、絞り袋に入れる。
第二の工程として、絞り袋内で上記第一の工程で示した各原料を撹拌し、クリーム状の混合物を生成する。
第三の工程として、第二の工程で得られた撹拌混合物が入った絞り袋をレンジ等の加熱装置で約3分間高温加熱し、クリーム状の混合物を生成する。
第四の工程として、以上、第一〜第三の工程を経て得られた高温の混合物を入れた絞り袋を絞り、その絞り口から混合物をコーン等に盛り付けることで、クリーム菓子を製造が完了する。
尚、本実施形態では、第一実施形態で使用した原料を挙げて説明しているが、第二実施形態の原料であっても同様に、クリーム菓子への盛り付けが可能なクリーム状の混合物を得ることができる。
【0019】
以上のように形成したクリーム菓子を製造し、デコレーションケーキやショートケーキ等に使用されるホイップクリーム(生クリームとも言う)により、螺旋状に煉り出してソフトクリームのように形作ったクリーム菓子と比較した。ホイップクリームで形成したものは、60℃以上に温くした状態ではほとんど原型を留めず、液状に溶け出しているのに対し、本実施によるクリーム菓子は、図1のように、ほぼ製造直後の形状を保っている。これは、クリームベース分とペースト状なす米粉が絡み合って粘性が高まり、この状態で60℃以上に加熱した場合にクリームベース分が溶け出しにくくなり、長時間保形できると推測されるためである。また、本実施による菓子原料は、クリームベース分に要する成分に替えて、牛乳もしくは牛乳と豆乳を混合したものに様々な成分を加えることで、ソフトクリームのような形態に限らない多様な形態で提供できる。また、第三実施形態のように、絞り袋内で混合物を生成し、そのまま絞り袋内から盛り付けてクリーム菓子として提供することにより、衛生面と作業効率化の両方が図れることとなる。
【0020】
本発明のクリーム菓子およびクリーム菓子原料は、上記したようなクリーム菓子として提供するときに、米粉を混合するベースとして牛乳や豆乳を用いているが、これに加えて様々な成分を加えてもよい。具体的に挙げられる菓子原料としては、例えば、穀類や豆類、根菜類、果菜類、葉菜類、果実、魚介類、動物性食品類、食用海藻類、酵母やキノコなどの微生物類、でんぷん、デキストリンやキチンなど多糖類やオリゴ糖、食用繊維やシルクパウダーその他、粉末状食品や繊維類、植物類の葉、茎、根などである。これらの成分を上記の原料を混合することにより、味覚、香り、色彩などバラエティ豊富な溶けない菓子が提供できる。
【0021】
そして、上述の米粉に加える様々な成分のうち、特に米粉との混合に適した成分である穀類、豆類について具体的に説明する。穀類と豆類は、他の成分と比較して無味無臭のものが多く、食品加工上、他の食品と混合して提供しやすい利点がある。まず、穀類としては、具体的に米、麦、とうもろこし、そば、あわ、ひえなどの雑穀を含む一般的な品目が挙げられる。そして、上記の穀類は、外皮と胚芽と胚乳とからなっており、外皮と胚芽には、タンパク質、ビタミン、リン、脂質が多く含まれている。ところが、外皮と胚芽は胚乳に比べて固く、独特の風味を有するため、食品として摂取する場合には、精白することで取り除かれていた。これを摩砕して細粉化し、さらに、ペースト状の米粉に混合錬成することで、クリームを使用する菓子としては違和感のある歯ごたえが滑らかな状態となり、混合練成によりのり状をなす米粉の粘性が保たれたままクリームベース分と絡み合うことで、穀類を加えない前の状態と同様に溶けにくく、しかも、滑らかな触感を呈して食べやすくなる。
【0022】
また、豆類としては、具体的に大豆、あずき、いんげん、そらまめなどの食用では一般的な品目が挙げられる。豆類は、全体の50〜70%を炭水化物が占めており、次に6〜14%の蛋白質が占めている。そして、豆類はビタミンB群やカルシウム、鉄が豊富に含まれており、しかも、栄養素の消化吸収率を高める効果が比較的高く、植物性の蛋白質を摂取する不可欠な食品である。これにより、ソフトクリームに似た態様の菓子として提供することから小児や幼児が食するのに適した食品となる。さらに、本発明の菓子および菓子原料にあっては、上記で挙げた豆類、根菜類、果菜類、葉菜類、果実、魚介類、食用海藻類などのうち、国や各都道府県、農業共同組合などが定める出荷規格(等級、サイズなど)に満たない規格品外種を原料とすることで、従来は、廃棄や肥料転換、あるいは生産者で消費されていた原料が菓子として提供される。これにより、食品リサイクル法に定められる食品関連事業者が、原料の廃棄に悩まされることなく、クリーム菓子と組み合わせることで地域の特産品などとして新規の事業展開を図ることもできるようになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳分と、摩砕してペースト状にした米粉とを加えて微温湯攪拌して溶解混合物を生成し、その溶解混合物に水酸化物を添加した後、加熱して得ることを特徴とするクリーム菓子およびクリーム菓子原料。
【請求項2】
絞り袋内に、乳分と、摩砕してペースト状にした米粉とを入れるとともに水酸化物を添加して微温湯撹拌して溶解混合物を生成し、その混合物を入れた袋を加熱して得ることを特徴とするクリーム菓子原料。
【請求項3】
摩砕したペースト状のおから原料を加えたことを特徴とする請求項1又は2記載のクリーム菓子およびクリーム菓子原料。


【図1】
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【公開番号】特開2013−85482(P2013−85482A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226119(P2011−226119)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(596091152)
【出願人】(501104775)
【出願人】(399054413)株式会社 加藤美蜂園本舗 (3)
【Fターム(参考)】