クリーンユニット、連結クリーンユニット、クリーンユニットの運転方法およびクリーン作業室
【課題】巨大なクリーンルームを用いることなく、極めて簡単な構成でクラス1またはそれ以上の極めて高い清浄度のクリーンな環境を容易に得ることができるクリーンユニットを提供する。
【解決手段】クリーンな環境に維持する循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットにおいて、循環型フィルターが、ろ材が互いに異なるか、またはろ材の孔径が互いに異なる複数のアクティブ塵埃フィルターを直列および/または並列に設けたものを少なくとも一部に含むようにする。
【解決手段】クリーンな環境に維持する循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットにおいて、循環型フィルターが、ろ材が互いに異なるか、またはろ材の孔径が互いに異なる複数のアクティブ塵埃フィルターを直列および/または並列に設けたものを少なくとも一部に含むようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クリーンユニット、連結クリーンユニット、クリーンユニットの運転方法およびクリーン作業室に関し、特に、粉塵や菌などのダスト微粒子の混入のないクリーンエア(空気)環境の実現に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
電子工業・精密機械工業・精密印刷などの用途の精密製品の高品質化と歩留まり向上とを図るために塵埃を除去するクリーンルームが必要とされている。国際半導体技術ロードマップ(International Technology Roadmap for Semiconductor, ITRS)によれば、局所クリーン化の進展により2018年には通常の大気レベルの環境までクリーンルームの要求清浄度は緩和されるとしているが、現時点ではまだそれからはほど遠い。
【0003】
クリーンルームを用いることなくクリーンな作業空間を提供する技術については従来より提案されている。例えば、クリーンな環境での作業を可能とする作業台として、作業空間の開口部から外気を取り入れ、この空気をフィルターでろ過して作業空間の上部から作業空間内に吹き出す作業台であって、作業空間の側面または背面に作業空間と外部とを連通する連通路を設け、この連通路に物体収納空間を形成し、物体空間の両側に外部と作業空間とを仕切る開閉手段を設けたものが提案されている(特許文献1参照。)。
【0004】
また、無塵状態で作業するクリーンベンチにおいて、側面にチャッキング機構を有する開口部を設け、複数のクリーンベンチの連結を可能としたものが提案されている(特許文献2参照。)。また、内部をクリーンな環境にして移動可能な箱であって、この箱には複数のフィルターと送風機とを備えたものにおいて、上部に粗フィルターと高捕集フィルターとを設け、下部にすのこ板と下部フィルターとを設け、一方の側面に被加工物を出し入れする開閉蓋を設け、他の側面にグローブを設けるとともに、前記粗フィルターと高捕集フィルターとの間に前記送風機を設けたポータブルクリーンボックスが提案されている(特許文献3参照。)。
【0005】
また、感染病原菌を処理、取り扱いするためのクリーンボックスにおいて、複数本の殺菌用加熱管と作業箱内の空気を加熱管内に強制的に送り込む手段とを有する加熱殺菌装置付クリーンボックスが提案されている(特許文献4参照。)
また、箱状ケーシングの一面に吹出口を、他面のうち少なくとも二面に格別の吸込口を形成し、それらを吸込口から取り入れた気体を前記吹出口から吐き出させるファン、および、前記吹出口から吐き出させる気体を浄化するフィルターを前記ケーシングに内装し、前記吸込口のそれぞれを選択的に閉じるための蓋に対する固定具を設けた気体浄化ユニットが提案されている(特許文献5参照。)
【0006】
また、複数の隔室を連結したクリーンスペーステクノロジーの製作ライン用の製作装置が提案されている(特許文献6参照。)
また、クリーンモジュールを多数個連結してクリーン空間を形成した、クリーントンネルと称するものが提案されている(特許文献7参照。)。これは、クリーンモジュール間に分割板を挿入することにより最小限の外部開放にとどめ、クリーン環境の破壊を最小にとどめようとする工夫である。
また、複数のクリーンベンチユニットを連結手段によって気密的に連結し、各クリーンベンチユニット内の作業空間を連結してクリーンルーム環境を備えた気密通路を長さ方向に調整可能に形成したクリーンベンチモジュールシステムが提案されている(特許文献8参照。)
また、モジュールにより構成されるマルチチェンバー装置が提案されている(特許文献9参照。)
【0007】
上記の特許文献1〜8で提案された作業台、クリーンベンチ、クリーンボックス、グローブボックスなどのクリーンユニットの中には、クラス10のクリーン環境を得ることができるものがあるが、このクリーンユニット自体がある程度(クラス1000程度)の清浄環境に置かれることが必要であり、また、これらの単独のクリーンユニットでは、その内部で閉じた完結作業しかできなかった。
また、上記の特許文献1、2、6、7、8には、クリーンな環境を維持したまま複数のプロセスを行うために、複数のクリーンユニットを連結することが提案されているが、いずれもクリーンユニットを左右方向に連結する単一直線状の配置しか取ることができなかった。このため、トータルな一連のプロセスに必要な数のクリーンユニットを連結しようとすると、その方向に長い設置スペースが必要であり、このクリーンユニットシステムを収容する建物の長さもそれに応じて大きくならざるを得なかった。
【0008】
また、上記の特許文献9に記載されたマルチチェンバー装置は各モジュールについては一方向の接続しかできず、モジュール間接続の拡張性やフレキシビリティーに乏しい。
また、トータルな一連のプロセスにおいて最上流のプロセスから最下流のプロセスに至る間には、例えば、レジスト塗布、マスク合わせ、露光、現像、エッチングなどのプロセスが、間に他のプロセスを挟んで繰り返し現れることが多い。このような場合に、これらのプロセスを行うクリーンユニットを何個も上記の単一直線状配置で連結するのでは、クリーンユニットシステムを構成するクリーンユニットの数が膨大になり、かえってクリーンルームを用意した方が、同じ製造装置の使い回しができるため有利であるということになってしまい、巨大設備投資の呪縛から逃れられない。
【0009】
さらに、単一直線状のクリーンユニット配置を維持したまま、しかも、同種のプロセスには同じクリーンユニットを何度も使い回すということを頑迷に実行しようとすると、上記の単一直線状のクリーンユニット配置において、何度も上流のクリーンユニットと下流のクリーンユニットとの間で行き来させねばならず、作業効率の低下がはなはだしい。これに加えて、クリーンユニット同士の連結部を通して基板などの被処理物を搬送する際に落下などの思わぬ事故も起こりかねず、歩留まりが低下するおそれがある。
【0010】
最近、上記の特許文献1〜9が有する課題の解決が可能なクリーンユニットが提案されている(特許文献10参照。)。これによれば、クリーンな環境に維持することができる作業室の後部、上部および下部のうちの少なくとも一つならびに少なくとも一方の側部にそれぞれ連結部を設けたクリーンユニットの作業室の上部にアクティブな防塵フィルター(HEPA(high efficiency particulate air)フィルター)を一つ設けるとともに、作業室の側面などに気密性を有する管を直結し、かつ上記の防塵フィルターの入り口に繋げることにより気体が循環するように構成する。このクリーンユニットの清浄度の平均値および最高値はクラス10並の値が得られている。また、このクリーンユニットは、その連結部を利用して、実行しようとするプロセスに応じて、折れ線状配置、ループ状配置などで複数連結することにより所望のクリーンユニットシステムを容易に構成することができる。上記のようにクリーンユニットを循環型に構成することにより高い清浄度が達成されるメカニズムについては報告されている(非特許文献1、2参照。)。
【0011】
【特許文献1】特開平2−15984号公報
【特許文献2】特開平1−171646号公報
【特許文献3】特開平2−107348号公報
【特許文献4】実開昭51−156692号公報
【特許文献5】実開昭61−145240号公報
【特許文献6】特開平3−7838号公報
【特許文献7】特許第2517112号明細書
【特許文献8】特開平5−157302号公報
【特許文献9】特開平6−267806号公報
【特許文献10】国際公開第04/114378号パンフレット
【非特許文献1】A.Ishibashi,H.Kaiju,Y.Yamagata and N.Kawaguchi:Electron.Lett.41,735(2005)
【非特許文献2】H.Kaiju,N.Kawaguchi and A.Ishibashi:Rev.Sci.Instrum.76,085111(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記の特許文献10で提案されたクリーンユニットは、到達可能な清浄度については必ずしも十分ではなく、清浄度の一層の向上が求められていた。
また、防塵フィルターとして用いられるHEPAフィルターやULPA(ultra low penetration air)フィルターは、フィルター部が直接外気に接するタイプのものしか存在しなかったが、本発明者らが独自に行った実験により得た知見によれば、フィルター部が直接外気に接することが清浄度のさらなる向上を妨げている一因であることが分かった。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、以上のような状況に鑑み、従来のように大掛かりで小回りが効かず、巨大な設備投資や固定資産負担が必要な巨大なクリーンルームを用いることなく、極めて簡単な構成でクラス1またはそれ以上の極めて高い清浄度のクリーンな環境を容易に得ることができ、また、一直線状にしか連結できない従来のクリーンユニットの持つ空間利用効率の悪さを解決し、トータルのパフォーマンスを投資的にも作業効率的にも部屋の面積有効利用的にも最大化することができ、目的に応じたトータルな一連のプロセスフローに対応してプロセスを高いフレキシビリティーを持って低コストで簡便に実行することができる連結クリーンユニットおよびこれに用いて好適なクリーンユニットを提供することである。
【0013】
この発明が解決しようとする他の課題は、作業空間における塵や菌などのダスト微粒子をそのあらゆるサイズに亘って1個以下、あるいは0.1個以下に抑えることができできる、すなわちあらゆるサイズに対して無塵、無菌環境を提供することである。
そして、この発明が解決しようとする最終課題は、従来全く別々の建物や部屋で行われていたナノテクノロジー、バイオテクノロジー、植物工場などの各分野の技術を一つの融合プラットフォーム上で統合的に一体処理することができる環境を提供することである。
上記課題およびその他の課題は、添付図面を参照した本明細書の以下の記述により明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、第1の発明は、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、
上記循環型フィルターが、ろ材が互いに異なるか、またはろ材の孔径が互いに異なる複数のアクティブ塵埃フィルターを直列および/または並列に設けたものを少なくとも一部に含むことを特徴とするものである。
このように、ろ材が互いに異なるか、またはろ材の孔径が互いに異なる複数のアクティブ塵埃フィルターを直列および/または並列に設けることは、本発明者らの知る限り、これまで何ら提案されていない。
【0015】
第2の発明は、
クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットが複数連結された連結クリーンユニットにおいて、
少なくとも一つのクリーンユニットが、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、上記循環型フィルターが、ろ材が互いに異なるか、またはろ材の孔径が互いに異なる複数のアクティブ塵埃フィルターを直列および/または並列に設けたものを少なくとも一部に含むものであることを特徴とするものである。
【0016】
第1および第2の発明において、ろ材としては、例えば、ガラス繊維やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを用いることができる。この場合、これらのアクティブ塵埃フィルターは、好適には、下流のアクティブ塵埃フィルターほど、除去可能なダスト微粒子の最小径がより小さくなるようにする。好適には、複数のアクティブ塵埃フィルターのうちの少なくとも一つは無自己発塵フィルター(例えば、ろ材としてポリテトラフルオロエチレンを用いたULPAフィルター)を用いる。好適な一つの例では、ガラス繊維をろ材に用いたアクティブ塵埃フィルター(HEPAフィルター)とポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたアクティブ塵埃フィルター(ULPAフィルター)とを直列に設け、前者が上流側に、後者が下流側になるようにクリーンユニットに設置する。
【0017】
第3の発明は、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、
上記循環型フィルターが、少なくともその一部に、除去可能なダスト微粒子の最小径が第1の粒径である第1のアクティブ塵埃フィルターと除去可能なダスト微粒子の最小径が上記第1の粒径より小さい第2の粒径である第2のアクティブ塵埃フィルターとを有し、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが上記クリーンユニットに対して並列に設けられており、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが切り替え可能に構成されていることを特徴とするものである。
ここで、第1のアクティブ塵埃フィルターは、例えば、ガラス繊維をろ材に用いたHEPAフィルターであり、第2のアクティブ塵埃フィルターは、例えば、ポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたULPAフィルターであるが、これらに限定されるものではない。例えば、第1のアクティブ塵埃フィルターおよび第2のアクティブ塵埃フィルターのろ材として同一のものを用い、第2のアクティブ塵埃フィルターのろ材の孔径(メッシュの孔径)を第2のアクティブ塵埃フィルターのろ材の孔径より小さくしてもよい。
【0018】
第4の発明は、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットの運転方法であって、
上記循環型フィルターが、少なくともその一部に、除去可能なダスト微粒子の最小径が第1の粒径である第1のアクティブ塵埃フィルターと除去可能なダスト微粒子の最小径が上記第1の粒径より小さい第2の粒径である第2のアクティブ塵埃フィルターとを有し、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが上記クリーンユニットに対して並列に設けられており、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが切り替え可能に構成されており、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターにより上記第1の粒径以上のダスト微粒子を除去した後、上記第1のアクティブ塵埃フィルターから上記第2のアクティブ塵埃フィルターに切り替えて上記第2の粒径以上のダスト微粒子を除去するようにしたことを特徴とするものである。
好適には、第1のアクティブ塵埃フィルターおよび第2のアクティブ塵埃フィルターによりダスト微粒子を除去した後、作業室内に希ガスや窒素ガス等の不活性ガスを導入して空気を置換するようにする。こうすることで、作業室内の環境を高清浄度でしかも非酸素雰囲気にすることができる。
【0019】
第5の発明は、
クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットが複数連結された連結クリーンユニットにおいて、
少なくとも一つのクリーンユニットが、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、上記循環型フィルターが、少なくともその一部に、除去可能なダスト微粒子の最小径が第1の粒径である第1のアクティブ塵埃フィルターと除去可能なダスト微粒子の最小径が上記第1の粒径より小さい第2の粒径である第2のアクティブ塵埃フィルターとを有し、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが上記クリーンユニットに対して並列に設けられており、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが切り替え可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
第6の発明は、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、
上記循環型フィルターのアクティブ塵埃フィルターの上下にゲートバルブが設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
第7の発明は、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットの運転方法であって、
上記循環型フィルターのアクティブ塵埃フィルターの上下にゲートバルブを設け、
上記アクティブ塵埃フィルターによりダスト微粒子を除去した後、上記ゲートバルブを閉めるようにしたことを特徴とするものである。
このようにアクティブ塵埃フィルターの上下(あるいは入口および出口)にゲートバルブを設けることは、本発明者らの知る限り、これまで何ら提案されていない。
好適には、アクティブ塵埃フィルターによりダスト微粒子を除去した後、作業室内に不活性ガスを導入して空気を置換するようにする。
【0022】
第8の発明は、
クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットが複数連結された連結クリーンユニットにおいて、
少なくとも一つのクリーンユニットが、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、上記循環型フィルターのアクティブ塵埃フィルターの上下にゲートバルブが設けられていることを特徴とするものである。
第6〜第8の発明においては、好適には、アクティブ塵埃フィルターによりダスト微粒子を除去した後、これらのゲートバルブを閉めるようにする。この場合、アクティブ防塵フィルターによりダスト微粒子を除去した後、作業室内に不活性ガスを導入して空気を
置換するようにしてもよい。
【0023】
第9の発明は、
エア循環機構を有する、クリーンな環境に維持することができる非真空のクリーン作業室であって、その内部における粒径0.01μm以上のダスト微粒子の総数が1個未満であることを特徴とするものである。
好適には、粒径0.01μm以上のダスト微粒子の総数が0.1個未満である。
ここで、クリーン作業室の内部における粒径0.01μm以上のダスト微粒子の総数を1個未満とすることができることは、これまで報告されておらず、本発明者らが初めて達成したものである。
第1〜第9の発明において、循環型フィルターまたはエア循環機構は、典型的には、アクティブ防塵フィルターと循環ダクトとにより構成される。
【0024】
ここで、第1〜第9の発明による清浄化プロセスについて説明する。今、クリーンユニットの作業室またはクリーン作業室において、アクティブ防塵フィルターおよび循環ダクトを設けた場合(ターボシステム)を考える。このとき、作業室内のダスト密度n(t)は、防塵フィルターの風量をV、作業室の体積をV0 、内面積をS、単位面積・単位時間当たりのダスト微粒子の脱離レートをσ、設置環境のダスト密度をN0 、防塵フィルターのダスト捕集率をγとして
【数1】
で記述される。このとき、
【数2】
および
【数3】
と定義すると、ダスト微粒子密度は
【数4】
となり、時間が十分たてば、第2項は急速にゼロに近づくため、第1項、すなわちαn /βn =(Sσ/V0 )/(γV/V0 )=Sσ/γVのみが残る。この項は外気のダスト密度を含まないため、このクリーンユニットの設置環境によらず、究極の清浄度が得られることがわかる。ここで特徴的なことは、ターボシステムを用いないクリーンユニットでは、作業室の清浄度は1−γあるいはそのべき乗(1−γ)n で支配されるのに対し、ターボシステムを用いるクリーンユニットでは、作業室の清浄度は1/γで支配されることである。また、Sσ/γVを最小化することが重要である。
【0025】
第1〜第9の発明において、クリーンユニットまたはクリーン作業室の形状は、種々の形状であってよく、必要に応じて選ばれるが、具体例を挙げると、直方体状または立方体状、直方体または立方体を変形した形状、球状、半球状、楕円体状、円筒状などであってよい。また、作業室の内部の大きさは、基本的には使用目的などに応じて設計により適宜決定するものであるが、例えば、オペレーターがグローブなどを用いて作業室の内部で各種の作業(プロセスの実行、クリーニングなどのメンテナンスの実施など)を行うことができるようにするためには、作業室内に外部から手を入れて作業空間のほぼ全体に届く大きさであることが望ましく、一般的には幅、高さ、奥行きとも1m以内に選ばれるが、これに限定されるものではない。一方、作業室の大きさがあまりに小さすぎると、作業に支障を来すおそれがあるため、一般的には30cm程度以上に選ばれるが、これに限定されるものではない。作業室内に外部から手を入れて作業を行う必要がない場合、例えば作業を自動化する場合、あるいは、クリーンユニットを試料などを入れたまま携帯する場合などには、作業室の大きさをより小さくすることが可能である。このクリーンユニットは、例えば、材料処理に用いることができる。この材料処理には、無機材料、有機材料、生体材料などの各種の材料の処理が含まれる。複数のクリーンユニットを連結する場合、例えば、トータルな一連のプロセスフローの中で複数回現れる同種類のプロセスを、上記の複数のクリーンユニットに、ループ状配置でクリーンユニットが連結された部分を設けることにより、同一のクリーンユニットにおいて実行可能となる。
クリーンユニットまたはクリーン作業室は、非真空でよいため、板状のハードな部材により構成するほか、風船あるいはバルーン状のソフトな材料を用いて構成してもよい。
クリーンユニットまたはクリーン作業室の内壁からの発塵を抑えるために、例えば、この内壁の全部または一部にポリテトラフルオロエチレンのコーティングを施すようにしてもよい。
【0026】
複数のクリーンユニットまたはクリーン作業室を連結する場合、この連結クリーンユニットには、例えば、ナノテクノロジープロセスユニットおよび/またはバイオテクノロジープロセスユニットを含む。
連結を行う場合、作業室の後部、上部および下部のうちの少なくとも一つならびに少なくとも一方の側部にそれぞれ連結部が設けられる。作業室の連結部を後部、上部、下部および二つの側部のどこに設けるかは、クリーンユニットを二次元的(平面的)または三次元的(立体的)にどのように配置するかに応じて適宜決められる。例えば、連結クリーンユニットを水平面内に配置する場合、連結の自由度を大きくし、連結クリーンユニットのフレキシビリティーを高めるためには、好適には、連結部は、作業室の後部および両側部にそれぞれ設けられる。この場合、一つのクリーンユニットに対し、後部および両側部に合計三つのクリーンユニットを連結することが可能である。また、クリーンユニットを鉛直面内に配置する場合、連結の自由度を大きくし、連結クリーンユニットのフレキシビリティーを高めるためには、好適には、連結部は、作業室の上部または下部および両側部にそれぞれ設けられる。この場合、一つのクリーンユニットに対し、上部または下部および両側部に合計三つのクリーンユニットを連結することが可能である。連結部は、例えば、作業室の壁に設けられた開口部とこの開口部を開閉可能に設けられた遮断板とを有する。この遮断板は、開閉可能である限り、基本的にはどのようなものであってもよいが、典型的には、引き戸や扉などである。この遮断板の開閉は、手動で行ってもよいし、光センサーなどのセンサーを作業室内部に取り付けるとともに、遮断板の開閉機構を設け、オペレーターの手や試料が遮断板に近づいた時に自動的に開閉するようにしてもよい。また、作業室にベルトコンベアーなどの搬送機構を設け、入り口と出口との間でこの搬送機構により試料を搬送する場合には、試料が搬送機構により出口付近まで搬送された時、これをセンサーにより検知して遮断板を開閉機構により開閉するようにしてもよい。遮断板または作業室の壁面にパッキンなどのシール部材を設けて遮断時の気密性を高めるようにしてもよい。
【0027】
クリーンユニットの内部(作業室の内部)には、使用目的に応じて、コンパクトな装置を収めることができる。この装置は、具体的には、例えば、各種のプロセス装置、ラッピング装置、解析装置(例えば、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)などの走査プローブ顕微鏡(SPM)など)、反応装置、マイクロケミカルシステム、マイクロケミカルリアクター、露光装置、エッチング装置、成長装置、加工装置、殺菌装置、粒径フィルター、人工光源、バイオ装置、食品加工装置、検査装置、メディカルデバイス、内視鏡部品、コンタクトレンズ作製機器、透析機器、医用ディスポーザル製造装置、製薬装置などである。人工光源は、例えば、細胞系の育成、植物体の育成、遺伝子実験などを行う場合に用いられる。細胞系の育成や植物体の育成を行う場合、人工光源としては、好適には、スペクトル半値幅が30nm以下の発光ダイオードや半導体レーザ、特にパルス駆動半導体レーザが用いられる。
また、クリーンユニットの作業室の内部環境は様々な方式で制御することができる。この内部環境の制御手段は、例えば、温度制御装置、湿度制御装置、気体成分制御装置、吸着装置、除害装置、特定波長照明器、密閉/開球環境選択機構などである。内部環境は、例えばコンピュータにより制御することができる。
【0028】
上記の連結クリーンユニットによれば、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、植物工場技術などの分野に亘ってトータルな一連のプロセスフローに対応して各種の材料の処理プロセスを高いフレキシビリティーを持って低コストで簡便に実行することができる材料処理方法、トータルな一連のプロセスフローに対応して無機材料または有機材料を用いた各種の素子(LSI、発光ダイオード、半導体レーザなど)の製造プロセスを高いフレキシビリティーを持って低コストで簡便に実行することができる素子製造方法、トータルな一連のプロセスフローに対応して植物体育成プロセスを高いフレキシビリティーを持って低コストで簡便に実行することができる植物体育成方法などの実現が可能となる。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、循環型フィルターが、ろ材が互いに異なるか、またはろ材の孔径が互いに異なる複数のアクティブ塵埃フィルターを含むことにより、クリーンユニット内のエアをまず大きなダスト微粒子を除去することができるアクティブ塵埃フィルターを用いて清浄化した後、より小さいダスト微粒子を除去することができるアクティブ塵埃フィルターを用いて清浄化することにより、後者のアクティブ塵埃フィルターに負担を与えることなく、極めて清浄度の高いエア環境を得ることができる。特に、クリーンユニットあるいはクリーン作業室の内部における粒径0.01μm以上のダスト微粒子の総数が1個未満、あるいは0.1個未満という極限清浄環境を実現することが可能である。
【0030】
そして、この発明によれば、これまで解決困難であった様々な課題を解決することができる。すなわち、従来の、半導体LSI、液晶ディスプレイなどの電子素子・電子機器製造用クリーンルーム、バイオ・食品用クリーンルーム、人工光源利用植物工場は、全体として大きな箱状の空間を用いていた結果、大規模でコストが高い、高額な機器が必要、小回りが効かない、植物育成が最適化されていない、などの問題があったが、これらの問題が一挙に解決される。
例えば、超LSIに代表される半導体素子などの高機能素子の製造には、材料投入から始まり、膜形成、UV(紫外線)あるいはEUV(極紫外線)を用いたフォトリソグラフィーや電子線リソグラフィーなどのリソグラフィー、エッチング、熱処理などの様々なプロセスを経て製品アウトプットに至る一貫プロセスが必要である。この製造プロセスは従来、高度に管理された巨大なクリーンルームの中に配置された成膜装置、リソグラフィー装置、エッチング装置、熱処理装置などの大型、高価かつ高度に精密な製造装置間で基板を受け渡すことで実現されてきた。したがって、従来の高機能素子の製造は、広大な敷地に巨大な建物を建設することが必要であるばかりでなく、各種の製造装置を生産する装置産業に立脚している。また、同様な問題は、上記製造装置をバイオ技術や食品加工に関連する装置に置き換えれば、そのままバイオクリーンリーム、食品加工のクリーンルームについても生じている。このような理由により、一般に、ナノテクベンチャーやバイオベンチャーなど製造業ベンチャーは、ITベンチャーに比べ、固定資産など設備投資が重くのしかかり、損益分岐点が上昇してしまい、企業化の成功確率は高くなかった。これは一般に、基礎研究と産業化との間に横たわる「デス・バレー(death valley)」として深く憂慮されてきた。すなわち、従来の高機能素子を製造する産業においては、IT、特にソフトウエア産業と比べて設備投資や固定資産維持の負担が大きく、ナノテクノロジーを主業務とする製造業ベンチャーがなかなか興り難い状況にあると言える。ナノテクノロジーがその本来の可能性を開花させるには、LSIのムーアの法則などに代表される、素子の微細化の進展には巨大精密インフラおよび装置が必要である、とのパラダイムからの脱却を図る必要がある。
このような既存の技術が有する課題は、この発明によるクリーンユニット、連結クリーンユニットあるいはクリーン作業室を用いることにより、ソフトウエアベンチャー並に固定資産の維持の負担が低いハードウエアべンチャーを興すことを可能にする安価で小回りが効き、クリーンルームを必要としない小規模の製造装置あるいはミニファブシステムを容易に構築することができるようになることで、解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の第1の実施形態によるクリーンユニットの正面図、図2AおよびBはこのクリーンユニットの上面図および側面図(アクティブ防塵フィルター45a、45bの図示は省略)である。
図1および図2に示すように、このクリーンユニットは六面体形状の箱状の作業室41を有する。この作業室41の両側面は互いに平行、上面および底面も互いに平行、両側面と上面、底面、前面および背面とは互いに直角であるが、前面は背面に対して非平行でその上部が背面に近づく向きに所定の角度、例えば70〜80°だけ傾斜しているが、これに限定されるものではない。作業室41の前面は取り外し可能になっており、前面を取り外した状態でその中にプロセス装置や観察装置などの必要な装置を入れることができるようになっている。
【0032】
作業室41の左側面および背面にそれぞれ、クリーンユニット間のコネクターおよび搬送路を兼用するトランスファーボックス42、43が着脱自在に設けられている。図1および図2には図示されていないが、これらのトランスファーボックス42、43が取り付けられている部分の作業室41の壁には開口部が設けられている。これらのトランスファーボックス42、43を用いて左側面および背面の二方向から他のクリーンユニットを連結することができるようになっているとともに、これらのトランスファーボックス42、43を通して試料などの搬送を行うことができるようになっている。トランスファーボックス42、43は、典型的には、作業室41の壁に設けられた開口部とこの開口部を開閉可能に設けられた遮断板とを有する。この遮断板は、開閉可能である限り、基本的にはどのようなものであってもよいが、典型的には引き戸や扉などである。この遮断板の開閉は、手動で行ってもよいし、光センサーなどのセンサーを作業室41の内部に取り付けるとともに、遮断板の開閉機構を設け、オペレーターの手や試料が遮断板に近づいた時に自動的に開閉するようにしてもよい。また、作業室にベルトコンベアーなどの搬送機構を設け、入り口と出口との間でこの搬送機構により試料を搬送する場合には、試料が搬送機構により出口付近まで搬送された時、これをセンサーにより検知して遮断板を開閉機構により開閉するようにしてもよい。遮断板または作業室の壁面にパッキンなどのシール部材を設けて遮断時の気密性を高めるようにしてもよい。トランスファーボックス42、43の寸法は例えば15〜20cmであるが、これに限定されるものではない。
【0033】
作業室41の内壁からのダストあるいは粉塵の放出を最小化するために、好適には、作業室41の内壁の少なくとも一部に粘着シートを貼り付け、例えば一定期間使用したら貼り替える。粘着シートを多層化したものを使用した場合には、粘着シートを一枚ずつ剥がすことで清浄なシート面を出すことができる。また、作業室41の内壁表面について、空間周波数において、作業室41から除去しようとするダスト微粒子の径と同じオーダーの表面凹凸のフーリエ成分を持たないように平滑加工することによって、この粒径を有するダスト微粒子の作業室41の内壁表面への吸着を最小限に抑えることができる。作業室41の内壁からのダストあるいは粉塵の放出を抑えるために、例えば、この内壁表面の全部または一部にポリテトラフルオロエチレンのコーティングを施すようにしてもよい。
【0034】
作業室41の前面の壁には二つの円形の開口部が設けられており、これらの開口部に一対の手作業用グローブ44が装着されている。そして、これらの手作業用グローブ44にオペレーターが両手を入れて、作業室41内で必要な作業を行うことができるようになっている。
作業室41の大きさはその中に必要なプロセス装置などを収容することができ、かつ、オペレーターが手作業用グローブ44に両手を入れて作業室41内で必要な作業を行うことができる大きさに選ばれる。作業室41の寸法の具体例を挙げると、奥行きa=50〜70cm、幅b=70〜90cm、高さh=50〜100cmであるが、これに限定されるものではない。また、作業室41を構成する材料としては、好適には、外部から内部を見ることができるようにするため、透明材料、例えばアクリル樹脂板が用いられるが、これに限定されるものではない。機械的補強のため、このアクリル樹脂板を金属枠に取り付けるようにしてもよい。
【0035】
作業室41の上面には送風動力を有する二つのアクティブ防塵フィルター45a、45bが直列に接続されて取り付けられ、上流側のアクティブ防塵フィルター45aと作業室41とを連結するように循環ダクト47が取り付けられており、作業室41の内部を例えばクラス0.00001ないしクラス0.1程度の高清浄環境に維持することができるようになっている。アクティブ防塵フィルター45a、45bは、除去可能なダスト微粒子の最小径が互いに異なり、アクティブ防塵フィルター45aに比べてアクティブ防塵フィルター45bの方が除去可能なダスト微粒子の最小径が小さい。アクティブ防塵フィルター45aとしては、例えば、ガラス繊維をろ材に用いたHEPAフィルターを用い、アクティブ防塵フィルター45bとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたULPAフィルターを用いる。
【0036】
次に、このクリーンユニットの運転方法の一例について説明する。ここでは、最初、作業室41の内部が通常の室内環境のような低清浄度であるとする。
アクティブ防塵フィルター45a、45bの両者を作動させると、作業室41内のエアは循環ダクト47を通ってアクティブ防塵フィルター45aに入り、粒径が大きいダスト微粒子が除去される。次に、こうして粒径が大きいダスト微粒子が除去されたエアがアクティブ防塵フィルター45aから出てきてアクティブ防塵フィルター45bに入り、より粒径が小さいダスト微粒子の除去が除去されて清浄化が行われる。
【0037】
以上のように、この第1の実施形態によれば、アクティブ塵埃フィルター45aにより粒径が大きいダスト微粒子を除去してから、より粒径が小さいダスト微粒子の除去が可能なアクティブ防塵フィルター45bを使用して清浄化を行うことができるため、最初からアクティブ防塵フィルター45bを使用して清浄化を行う場合に比べて、アクティブ防塵フィルター45bの目詰まりなどを起こすことなく、作業室41をアクティブ防塵フィルター45bにより到達可能な清浄度に清浄化することができる。また、アクティブ防塵フィルター45bの寿命の向上を図ることができる。また、このクリーンユニットは、密閉構造であるため、設置環境に依存せず、清浄度が低い通常のオフィス環境に設置しても内部の高清浄度環境を維持することができることから、従来のように巨大なクリーンルーム内に設置する必要がなく、設備コストの大幅な低減を図ることができる。
【0038】
図3は、このクリーンユニットの清浄度のダスト微粒子の粒径依存性を示す。このクリーンユニットの内部においては、発塵を抑えるために、既に述べたように内壁の処理などを行っている。図3中、△、□、○はHEPAフィルターを用いたときの値、◎はアクティブ塵埃フィルター45aとしてガラス繊維をろ材に用いたHEPAフィルター、アクティブ防塵フィルター45bとしてポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたULPAフィルター(自己無発塵フィルター)を用いたときの値である。単位面積・単位時間当たりのダスト微粒子の脱離レートσ(粒径0.1μm)は、図3中△の値については10.3m-2s-1、□の値については4.17m-2s-1、○の値については0.83m-2s-1である。また、作業室41の体積は0.3m3 である。図3の◎で示すように、クラス0.0001(ISO class−1)〜クラス0.00001(ISO class−2)の極限的高清浄度が得られている。クラス0.0001(ISO class−1)の清浄度はITRSのロードマップでは2018年の技術レベルであり、約12年も先取りしていることになる。なお、ダストカウンターとしては、東京ニュークリアサービス(株)のLasair110、カノマックスの装置(WPS 100XP)を使用した。
【0039】
図4に示すように、粒径0.1μm以下のダスト微粒子では、ブラウン運動が激しくなるため、ダスト微粒子のカウント数の上昇は頭打ちになることが知られている(粒径0.1μm付近で最大になるとされている)。ただし、図4中、△は手作業用グローブ44として天然ゴムであるポリイソプロピレン(PI)製のもの、循環ダクト47としてアルミニウム(Al)製の蛇腹を用いたときの値、□は手作業用グローブ44としてポリエチレン(PE)製のもの、循環ダクト47としてAl製の蛇腹を用いたときの値、○は手作業用グローブ44としてポリエチレン製のもの、循環ダクト47としてポリ塩化ビニル(PVC)製のものを用いたときの値である。図4を併せ考えると、アクティブ塵埃フィルター45aとしてガラス繊維をろ材に用いたHEPAフィルター、アクティブ防塵フィルター45bとしてポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたULPAフィルターを用いた上記のクリーンユニットにより得られる清浄度は、ダスト微粒子の全サイズに亘ってISO class−1の清浄度レベルを上回っていると結論される。このことから、このクリーンユニットの作業室41の内部には、粒径0.01μm以上の全ダスト微粒子(塵埃・菌など)の総数が0.03個以下しか存在せず、その粒径を問わずダスト微粒子がほぼ全く存在しないことがわかる。微生物(microbes)の大きさは、原生動物(Protozoa) は数μm〜数十μm、カビ(mold)は数μm、細菌(bacteria)は1μm程度、リケッチア(rickettsias)は0.3μm程度、ウイルス(viruses)は0.01−0.2μmであることから、殺菌などの方法にたよることなく、作業室41の内部における細菌の存在を完全に抑えることができる。この完全無菌環境は、このクリーンユニットにより、初めて達成されたものである。
【0040】
次に、この発明の第2の実施形態によるクリーンユニットについて説明する。
図5はこのクリーンユニットを示す。図5に示すように、このクリーンユニットにおいては、作業室41の上面に送風動力を有する二つのアクティブ防塵フィルター45a、45bが並列に取り付けられ、さらにこれらのアクティブ防塵フィルター45a、45bと作業室41とを連結するように循環ダクト47が取り付けられており、作業室41の内部を例えばクラス0.0001ないしクラス0.1程度の高清浄環境に維持することができるようになっている。アクティブ防塵フィルター45a、45bは、除去可能なダスト微粒子の最小径が互いに異なり、アクティブ防塵フィルター45aに比べてアクティブ防塵フィルター45bの方が除去可能なダスト微粒子の最小径が小さい。アクティブ防塵フィルター45aとしては、例えば、ガラス繊維をろ材に用いたHEPAフィルターを用い、アクティブ防塵フィルター45bとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたULPAフィルターを用いる。循環ダクト47は切り替えバルブ49を介して二つの分岐部47a、47bに分岐しており、分岐部47aがアクティブ防塵フィルター45aと接続され、分岐部47bがアクティブ防塵フィルター45bと接続されている。このクと接続されている。
このクリーンユニットのその他の構成は、第1の実施形態によるクリーンユニットと同様である。
【0041】
次に、このクリーンユニットの運転方法の一例について説明する。ここでは、最初、作業室41の内部が通常の室内環境のような低清浄度であるとする。
まず、切り替えバルブ49の操作により循環ダクト47と分岐部47aとを繋げ、循環ダクト47と分岐部47bとを互いに遮断した状態でアクティブ防塵フィルター45aを作動させて清浄化を行う。こうして清浄化を行って清浄度が一定レベルに達した時点で切り替えバルブ49を切り替えて循環ダクト47と分岐部47bとを繋げ、循環ダクト47と分岐部47aとを互いに遮断した状態でアクティブ防塵フィルター45bを作動させて清浄化を行う。
【0042】
以上のように、この第2の実施形態によれば、アクティブ塵埃フィルター45aにより粒径が大きいダスト微粒子を除去してある清浄度まで清浄化を行ってから、より粒径が小さいダスト微粒子の除去が可能なアクティブ防塵フィルター45bを使用して清浄化を行うため、最初からアクティブ防塵フィルター45bを使用して清浄化を行う場合に比べて、アクティブ防塵フィルター45bの目詰まりなどを起こすことなく、作業室41をアクティブ防塵フィルター45bにより到達可能な清浄度に清浄化することができる。また、アクティブ防塵フィルター45bの寿命の向上を図ることができる。
【0043】
次に、この発明の第3の実施形態によるクリーンユニットについて説明する。
図6はこのクリーンユニットを示す。図6に示すように、このクリーンユニットにおいては、作業室41に送風動力を有するアクティブ防塵フィルター45および循環ダクト47が取り付けられており、作業室41の内部を例えばクラス0.01ないしクラス1程度の高清浄環境に維持することができるようになっている。この場合、アクティブ防塵フィルター45の上下に、互いに独立して開閉可能なゲートバルブ50a、50bが取り付けられている。そして、ゲートバルブ50aを介してアクティブ防塵フィルター45が作業室41の上面に取り付けられ、ゲートバルブ50bを介して循環ダクト47がアクティブ防塵フィルター45と接続されている。ゲートバルブ50a、50bはあらかじめアクティブ防塵フィルター45と一体に設けられていてもよいし、そうでなくてもよい。
このクリーンユニットのその他の構成は、例えば、第1の実施形態のクリーンユニットと同様である。
【0044】
次に、このクリーンユニットの運転方法の一例について説明する。ここでは、最初、作業室41の内部が通常の室内環境のような低清浄度であるとする。
まず、ゲートバルブ50a、50bを何れも開いた状態でアクティブ防塵フィルター45を作動させて清浄化を行う。こうして作業室41の清浄度が所期のレベルに到達したらゲートバルブ50a、50bを何れも閉めてアクティブ防塵フィルター45と作業室41との間を遮断し、その後アクティブ防塵フィルター45の運転を停止する。こうすることで、停止時のアクティブ防塵フィルター45からダスト微粒子が脱離して作業室41に逆流することによる汚染を防止することができる。
【0045】
図7は、アクティブ防塵フィルター45を作動させて作業室41の清浄化を行った後、ゲートバルブ50a、50bを何れも閉めてからアクティブ防塵フィルター45の運転を停止した場合と、ゲートバルブ50a、50bを何れも閉めないでアクティブ防塵フィルター45の運転を停止した場合とについて、作業室41の清浄度の経時変化を測定した結果を示す。図7より、ゲートバルブ50a、50bを何れも閉めないでアクティブ防塵フィルター45の運転を停止した場合には、時間の経過とともに、ダスト微粒子のカウント数が速やかに上昇するのに対し、ゲートバルブ50a、50bを何れも閉めてからアクティブ防塵フィルター45の運転を停止した場合には、ダスト微粒子のカウント数の上昇は極めて有効に抑えられていることがわかる。これは、ゲートバルブ50a、50bを何れも閉めてからアクティブ防塵フィルター45の運転を停止することにより、アクティブ防塵フィルター45から作業室41へのダスト微粒子の逆流を防止することができるためである。
以上のように、この第3の実施形態によれば、アクティブ防塵フィルター45の運転停止後の作業室41の逆汚染を有効に防止することができ、完全に消費エネルギーゼロの状態で作業室41の高清浄度を維持することができる。
【0046】
次に、この発明の第3の実施形態によるクリーンユニットについて説明する。
図8はこのクリーンユニットを示す。図8に示すように、このクリーンユニットにおいては、第4の実施形態によるクリーンユニットと同様な構成に加えて、作業室41にガス供給管Pを介してガスボンベBが接続されている。ガスボンベBには、希ガスや窒素ガスなどの不活性ガスが詰められている。図示は省略するが、ガス供給管Pの途中には外部から開閉を制御可能なバルブが設けられており、このバルブを開いたときにガスボンベBから不活性ガスを作業室41に導入することができるようになっている。ただし、作業室41への不活性ガスの供給は、ガスボンベBを用いず、他の方法により行うようにしてもよい。また、作業室41にはリークバルブVが設けられており、このリークバルブVを開くことにより作業室41を大気に開放することができるようになっている。
【0047】
次に、このクリーンユニットの運転方法の一例について説明する。ここでは、最初、作業室41の内部が通常の室内環境のような低清浄度であるとする。
まず、ゲートバルブ50a、50bを何れも開いた状態でアクティブ防塵フィルター45を作動させて清浄化を行う。こうして作業室41の清浄度が所期のレベルに到達したらゲートバルブ50a、50bを何れも閉めてアクティブ防塵フィルター45と作業室41との間を遮断し、その後アクティブ防塵フィルター45の運転を停止する。次に、ガス供給管Pの途中に設けられたバルブを開くと同時にリークバルブVを開き、ガスボンベBから不活性ガスを作業室41に導入してリークバルブVから内部の空気を外部に押し出す。こうして、作業室41の内部の空気が不活性ガスにより置換される。
この第4の実施形態によれば、アクティブ防塵フィルター45の運転停止後の作業室41の逆汚染を有効に防止することができるだけでなく、作業室41の内部の空気を不活性ガスにより置換することで非酸素雰囲気にすることができるため、作業室41を高清浄度でしかも非酸素雰囲気に維持することができる。このため、塗布などの各種の方法による半導体薄膜等の成長やその他の各種のプロセスをダスト微粒子による汚染や酸素による酸化を防止しながら実行することができる。
【0048】
次に、この発明の第5の実施形態による連結クリーンユニットについて説明する。
図9は第1〜第4の実施形態によるクリーンユニットの一種または二種以上のものを複数連結した連結クリーンユニットを示す。図9に示すように、この連結クリーンユニットにおいては、三方向接続可能なクリーンユニット121〜128がトランスファーボックス129を介して連結されている。この場合、クリーンユニット122〜127はループ状配置で連結されている。
【0049】
各クリーンユニット121〜128で行われる作業は例えば次のとおりである。まず、クリーンユニット121は保管ユニットで、試料保管庫(例えば、基板を収納したウエハーカセット130)が設置され、連結に使用されていない右側面のトランスファーボックス129は試料投入口、同じく連結に使用されていない背面のトランスファーボックス129は非常時試料取出口である。クリーンユニット122は化学ユニットで、化学前処理システム131が設置され、化学前処理が行われる。クリーンユニット123はレジストプロセスユニットで、スピンコータ132および現像装置133が設置され、レジストのコーティングや現像が行われる。クリーンユニット124はリソグラフィーユニットで、露光装置134が設置され、連結に使用されていない右側面のトランスファーボックス128は非常時試料取出口である。クリーンユニット125は成長/メタライゼーションユニットで、電気化学装置135およびマイクロリアクターシステム136が設置され、連結に使用されていない右側面のトランスファーボックス128は非常時試料取出口である。クリーンユニット126はエッチングユニットで、エッチング装置137が設置されている。このクリーンユニット126の背面のトランスファーボックス129は、中継ボックス138を介して、クリーンユニット123の背面のトランスファーボックス129と連結されている。クリーンユニット127はアセンブリユニットで、顕微鏡139およびプローバー140が設置されている。クリーンユニット128は走査プローブ顕微鏡(SPM)観察ユニットで、卓上STM141および卓上AFM142が設置され、連結に使用されていない右側面のトランスファーボックス129は試料取出口、同じく連結に使用されていない背面のトランスファーボックス129は非常時試料取出口である。クリーンユニット123のスピンコータ132、クリーンユニット124の露光装置134、クリーンユニット125の電気化学装置135およびマイクロリアクターシステム136、クリーンユニット126のエッチング装置137、クリーンユニット127のプローバー140等は電源143に接続されていて電源が供給されるようになっている。また、クリーンユニット125の電気化学装置135は信号ケーブル144により電気化学装置制御器145と接続されており、この電気化学装置制御器145により制御されるようになっている。さらに、クリーンユニット127の顕微鏡139、クリーンユニット128の卓上STM141および卓上AFM142による観察画像は、液晶モニター146に映し出すことができるようになっている。
【0050】
この図9に示す連結クリーンユニットにおいて、例えば、第1〜第4の実施形態によるクリーンユニットの何れかを小型化してポータブルとしたポータブルクリーンユニット200の作業室内に試料(例えば、半導体ウェハー)を保管したまま、このポータブルクリーンユニット200のトランスファーボックスをクリーンユニット128の試料取り出し口に取り付けて連結する。そして、この状態でトランスファーボックス92を経由してクリーンユニット200からクリーンユニット128に試料を搬送し、卓上STM141または卓上AFM142により観察を行う。
【0051】
この第5の実施形態によれば、次のような多くの利点を得ることができる。すなわち、化学前処理、レジスト塗布、露光、現像、成長/メタライゼーション、エッチング、プロービング、表面観察など、通常巨大なクリーンルームの中に設えられた装置群を駆使して行われるほぼあらゆる工程を、クリーンな局所空間を包むクリーンユニットを連結した連結クリーンユニットにおいてループ状配置などを取ることによって、クリーンルームを用いることなく通常の実験室規模の部屋の中において簡便かつコンパクトに実現することができる。
【0052】
次に、この発明の第6の実施形態について説明する。この第6の実施形態においては、図10に示すような太陽電池を製造する場合について説明する。
まず、この太陽電池の構成について説明する。
図10A、BおよびCはこの太陽電池を示す。ここで、図10Aは表面図、図10Bは裏面図、図10Cは側面図である。図10A、BおよびCに示すように、この太陽電池は、アノード電極1151とカソード電極1152とが、間にp型半導体層とn型半導体層とからなるpn接合1153をはさんで渦巻き状に形成されたもので、全体として薄い円板の形状を有する。これらのp型半導体層およびn型半導体層は無機半導体でも有機半導体でもよい。符号1155はカソード電極1152の取り出し電極を示す。
【0053】
図11にこの太陽電池の詳細構造を模式的に示す。図11において、符号1191がp型半導体層、1192がn型半導体層を示す。図11に示すように、アノード電極1151とカソード電極1152とが背中合わせになる部位には樹脂などの各種の絶縁体からなる絶縁膜1193が設けられており、この絶縁膜1193によりアノード電極1151とカソード電極1152とが互いに電気的に絶縁されている。この場合、カソード電極1152は全面電極であり、n型半導体層1192とオーミック接触しているのに対し、アノード電極1151は円板の厚さ(W)方向に互いに分離された細長いn個の微小アノード電極1511−1〜1511−nからなる。これらの微小アノード電極1151−1〜1151−nの幅はそれぞれW1 、W2 、…、Wn であり、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0054】
p型半導体層1191およびn型半導体層1192のバンドギャップEg は、光入射面から円板の厚さ方向にn段階(n≧2)に段階的に減少しており、光入射面側から順にEg1、Eg2、…、Egn(Eg1>Eg2>…>Egn)となっている。p型半導体層1191およびn型半導体層1192のうちのバンドギャップEg がEgk(1≦k≦n)の領域をEgk領域と呼ぶ。このEgk領域のp型半導体層1191と微小アノード電極1151−kとがオーミック接触している。これらのEgk領域は一体になっていても互いに分離されていてもよい。微小アノード電極1151−kとカソード電極1152との間にEgk領域が挟まれた構造が微小太陽電池を構成し、カソード電極1152を共通電極としたこれらのn個の微小太陽電池によりこの太陽電池が構成されている。
【0055】
Egkは次のように設定することができる。例えば、AM1.5太陽光スペクトルの全波長範囲またはその主要な波長範囲(入射エネルギーが高い部分を含む範囲)において、波長をn個の区間に分ける。そして、これらの区間に短波長側(高エネルギー側)から順に1、2、…、nというように番号を付け、k番目の区間の最小光子エネルギーに等しくEgkを選ぶ。こうすることで、k番目の区間の光子エネルギーを有する光子がEgk領域に入射すると電子−正孔対が発生し、光電変換が行われる。また、この場合、このk番目の区間の光子エネルギーを有する光子が各Egk領域に到達して十分に吸収されるように、光入射面からこのEgk領域までの深さを選ぶ。これによって、この太陽電池の光入射面に入射する太陽光は、まずEg1領域に入射してそのスペクトルのうち光子エネルギーがEg1以上のものが吸収されて光電変換され、続いてEg2領域に入射してそのスペクトルのうち光子エネルギーがEg2以上でEg1より小さいものが吸収されて光電変換され、最終的にEgn領域に入射してそのスペクトルのうち光子エネルギーがEgn以上でEgn-1より小さいものが吸収されて光電変換される。この結果、太陽光スペクトルのほぼ全範囲あるいは主要な波長範囲の光を光電変換に使用することができる。
【0056】
各Egkの設定は、各Egk領域を構成する半導体の組成を変えることにより行うことができる。具体的には、各Egk領域を別種の半導体により構成する。無機半導体を用いる場合について具体例をいくつか挙げると次のとおりである。n=2の最も簡単な場合には、例えば、Eg1領域をGaAs(Eg =1.43eV)、Eg2領域をSi(Eg =1.11eV)により構成する。また、n=3の場合には、例えば、Eg1領域をGaP(Eg =2.25eV)、Eg2領域をGaAs(Eg =1.43eV)、Eg3領域をSi(Eg =1.11eV)により構成する。また、n=4の場合には、例えば、Eg1領域をGaP(Eg =2.25eV)、Eg2領域をGaAs(Eg =1.43eV)、Eg3領域をSi(Eg =1.11eV)、Eg4領域をGe(Eg =0.76eV)により構成する。さらには、GaInNx As1-x やGaInNx P1-x を用いてxの制御だけでn〜10の場合のEgk領域を構成することも可能である。加えて、Teを含ませると大きなボウイング(bowing)を示すことが知られているII−VI族化合物半導体を用いてEgk領域を構成してもよい。
【0057】
この太陽電池は、例えば次のようにして製造することができる。
まず、ローラに、例えば所定幅の薄い平坦なテープ状の樹脂製ベースフィルムを巻き付けておき、この樹脂製ベースフィルムの一方の面に、必要に応じて塗布や蒸着などによりバンドギャップが互いに異なる複数種類のn型半導体層を形成し、次に同様にして複数種類のp型半導体層を形成し、次に同様にしてアノード電極用の金属を形成してアノード電極1151−1〜1151−nを形成し、次に同様にして絶縁材料を形成して絶縁膜1193を形成した後、同様にしてカソード電極用の金属を形成してカソード電極1152を形成した後、この積層膜付き樹脂製ベースフィルムをローラ状の取り出し電極1155で巻き取っていく。
塗布や蒸着などによって形成される上記の各層が渦巻き状に形成される際に樹脂製ベースフィルムが巻き込まれないようにするため、巻き込まれる直前にこの樹脂製ベースフィルムの裏面に高温に加熱されたローラを押し付けたり、この裏面に光を照射したりすることにより樹脂製ベースフィルムを剥離する。
【0058】
この第6の実施形態においては、第1〜第4の実施形態によるクリーンユニットのいずれかのクリーンユニット内において、上記の塗布や蒸着などのプロセスを実行する。そして、この際、塗布面あるいは蒸着面の面積ベクトルdSとマクロな風流ベクトルVとの内積dS・Vが0となるように設定する。こうすることで、極めて高い清浄度環境下で塗布や蒸着などのプロセスを実行することができ、高い歩留まりで太陽電池を製造することができる。
この第6の実施形態によれば、例えば従来のアモルファスSi太陽電池では太陽光スペクトルのうち光子エネルギーが1.12eVより小さい波長の光は利用することができないのに対し、Egk領域の設計により、太陽光スペクトルの全部または主要部の光を光電変換に利用することができ、光電変換効率が極めて高い太陽電池を高い歩留まりで製造することができる。
【0059】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において挙げた数値、材料、形状、配置などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、材料、形状、配置などを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の第1の実施形態によるクリーンユニットを示す正面図である。
【図2】この発明の第1の実施形態によるクリーンユニットの上面図および側面図である。
【図3】第1の実施形態によるクリーンユニットにより得られる清浄度の測定結果の例を示す略線図である。
【図4】第1の実施形態によるクリーンユニットにより得られる清浄度の測定結果の例を示す略線図である。
【図5】この発明の第2の実施形態によるクリーンユニットを示す正面図である。
【図6】この発明の第3の実施形態によるクリーンユニットを示す正面図である。
【図7】この発明の第3の実施形態によるクリーンユニットによる高清浄度の維持効果を説明するための略線図である。
【図8】この発明の第4の実施形態によるクリーンユニットを示す正面図である。
【図9】この発明の第1〜第4の実施形態によるクリーンユニットの使用例を説明するための略線図である。
【図10】この発明の第6の実施形態により製造される太陽電池を示す表面図、裏面図および側面図である。
【図11】この発明の第6の実施形態により製造される太陽電池を示す略線図である。
【符号の説明】
【0061】
41…作業室、42、43…トランスファーボックス、45、45a、45b…アクティブ防塵フィルター、47…循環ダクト、50a、50b…ゲートバルブ、P…ガス供給管、B…ガスボンベ、V…リークバルブ
【技術分野】
【0001】
この発明は、クリーンユニット、連結クリーンユニット、クリーンユニットの運転方法およびクリーン作業室に関し、特に、粉塵や菌などのダスト微粒子の混入のないクリーンエア(空気)環境の実現に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
電子工業・精密機械工業・精密印刷などの用途の精密製品の高品質化と歩留まり向上とを図るために塵埃を除去するクリーンルームが必要とされている。国際半導体技術ロードマップ(International Technology Roadmap for Semiconductor, ITRS)によれば、局所クリーン化の進展により2018年には通常の大気レベルの環境までクリーンルームの要求清浄度は緩和されるとしているが、現時点ではまだそれからはほど遠い。
【0003】
クリーンルームを用いることなくクリーンな作業空間を提供する技術については従来より提案されている。例えば、クリーンな環境での作業を可能とする作業台として、作業空間の開口部から外気を取り入れ、この空気をフィルターでろ過して作業空間の上部から作業空間内に吹き出す作業台であって、作業空間の側面または背面に作業空間と外部とを連通する連通路を設け、この連通路に物体収納空間を形成し、物体空間の両側に外部と作業空間とを仕切る開閉手段を設けたものが提案されている(特許文献1参照。)。
【0004】
また、無塵状態で作業するクリーンベンチにおいて、側面にチャッキング機構を有する開口部を設け、複数のクリーンベンチの連結を可能としたものが提案されている(特許文献2参照。)。また、内部をクリーンな環境にして移動可能な箱であって、この箱には複数のフィルターと送風機とを備えたものにおいて、上部に粗フィルターと高捕集フィルターとを設け、下部にすのこ板と下部フィルターとを設け、一方の側面に被加工物を出し入れする開閉蓋を設け、他の側面にグローブを設けるとともに、前記粗フィルターと高捕集フィルターとの間に前記送風機を設けたポータブルクリーンボックスが提案されている(特許文献3参照。)。
【0005】
また、感染病原菌を処理、取り扱いするためのクリーンボックスにおいて、複数本の殺菌用加熱管と作業箱内の空気を加熱管内に強制的に送り込む手段とを有する加熱殺菌装置付クリーンボックスが提案されている(特許文献4参照。)
また、箱状ケーシングの一面に吹出口を、他面のうち少なくとも二面に格別の吸込口を形成し、それらを吸込口から取り入れた気体を前記吹出口から吐き出させるファン、および、前記吹出口から吐き出させる気体を浄化するフィルターを前記ケーシングに内装し、前記吸込口のそれぞれを選択的に閉じるための蓋に対する固定具を設けた気体浄化ユニットが提案されている(特許文献5参照。)
【0006】
また、複数の隔室を連結したクリーンスペーステクノロジーの製作ライン用の製作装置が提案されている(特許文献6参照。)
また、クリーンモジュールを多数個連結してクリーン空間を形成した、クリーントンネルと称するものが提案されている(特許文献7参照。)。これは、クリーンモジュール間に分割板を挿入することにより最小限の外部開放にとどめ、クリーン環境の破壊を最小にとどめようとする工夫である。
また、複数のクリーンベンチユニットを連結手段によって気密的に連結し、各クリーンベンチユニット内の作業空間を連結してクリーンルーム環境を備えた気密通路を長さ方向に調整可能に形成したクリーンベンチモジュールシステムが提案されている(特許文献8参照。)
また、モジュールにより構成されるマルチチェンバー装置が提案されている(特許文献9参照。)
【0007】
上記の特許文献1〜8で提案された作業台、クリーンベンチ、クリーンボックス、グローブボックスなどのクリーンユニットの中には、クラス10のクリーン環境を得ることができるものがあるが、このクリーンユニット自体がある程度(クラス1000程度)の清浄環境に置かれることが必要であり、また、これらの単独のクリーンユニットでは、その内部で閉じた完結作業しかできなかった。
また、上記の特許文献1、2、6、7、8には、クリーンな環境を維持したまま複数のプロセスを行うために、複数のクリーンユニットを連結することが提案されているが、いずれもクリーンユニットを左右方向に連結する単一直線状の配置しか取ることができなかった。このため、トータルな一連のプロセスに必要な数のクリーンユニットを連結しようとすると、その方向に長い設置スペースが必要であり、このクリーンユニットシステムを収容する建物の長さもそれに応じて大きくならざるを得なかった。
【0008】
また、上記の特許文献9に記載されたマルチチェンバー装置は各モジュールについては一方向の接続しかできず、モジュール間接続の拡張性やフレキシビリティーに乏しい。
また、トータルな一連のプロセスにおいて最上流のプロセスから最下流のプロセスに至る間には、例えば、レジスト塗布、マスク合わせ、露光、現像、エッチングなどのプロセスが、間に他のプロセスを挟んで繰り返し現れることが多い。このような場合に、これらのプロセスを行うクリーンユニットを何個も上記の単一直線状配置で連結するのでは、クリーンユニットシステムを構成するクリーンユニットの数が膨大になり、かえってクリーンルームを用意した方が、同じ製造装置の使い回しができるため有利であるということになってしまい、巨大設備投資の呪縛から逃れられない。
【0009】
さらに、単一直線状のクリーンユニット配置を維持したまま、しかも、同種のプロセスには同じクリーンユニットを何度も使い回すということを頑迷に実行しようとすると、上記の単一直線状のクリーンユニット配置において、何度も上流のクリーンユニットと下流のクリーンユニットとの間で行き来させねばならず、作業効率の低下がはなはだしい。これに加えて、クリーンユニット同士の連結部を通して基板などの被処理物を搬送する際に落下などの思わぬ事故も起こりかねず、歩留まりが低下するおそれがある。
【0010】
最近、上記の特許文献1〜9が有する課題の解決が可能なクリーンユニットが提案されている(特許文献10参照。)。これによれば、クリーンな環境に維持することができる作業室の後部、上部および下部のうちの少なくとも一つならびに少なくとも一方の側部にそれぞれ連結部を設けたクリーンユニットの作業室の上部にアクティブな防塵フィルター(HEPA(high efficiency particulate air)フィルター)を一つ設けるとともに、作業室の側面などに気密性を有する管を直結し、かつ上記の防塵フィルターの入り口に繋げることにより気体が循環するように構成する。このクリーンユニットの清浄度の平均値および最高値はクラス10並の値が得られている。また、このクリーンユニットは、その連結部を利用して、実行しようとするプロセスに応じて、折れ線状配置、ループ状配置などで複数連結することにより所望のクリーンユニットシステムを容易に構成することができる。上記のようにクリーンユニットを循環型に構成することにより高い清浄度が達成されるメカニズムについては報告されている(非特許文献1、2参照。)。
【0011】
【特許文献1】特開平2−15984号公報
【特許文献2】特開平1−171646号公報
【特許文献3】特開平2−107348号公報
【特許文献4】実開昭51−156692号公報
【特許文献5】実開昭61−145240号公報
【特許文献6】特開平3−7838号公報
【特許文献7】特許第2517112号明細書
【特許文献8】特開平5−157302号公報
【特許文献9】特開平6−267806号公報
【特許文献10】国際公開第04/114378号パンフレット
【非特許文献1】A.Ishibashi,H.Kaiju,Y.Yamagata and N.Kawaguchi:Electron.Lett.41,735(2005)
【非特許文献2】H.Kaiju,N.Kawaguchi and A.Ishibashi:Rev.Sci.Instrum.76,085111(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記の特許文献10で提案されたクリーンユニットは、到達可能な清浄度については必ずしも十分ではなく、清浄度の一層の向上が求められていた。
また、防塵フィルターとして用いられるHEPAフィルターやULPA(ultra low penetration air)フィルターは、フィルター部が直接外気に接するタイプのものしか存在しなかったが、本発明者らが独自に行った実験により得た知見によれば、フィルター部が直接外気に接することが清浄度のさらなる向上を妨げている一因であることが分かった。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、以上のような状況に鑑み、従来のように大掛かりで小回りが効かず、巨大な設備投資や固定資産負担が必要な巨大なクリーンルームを用いることなく、極めて簡単な構成でクラス1またはそれ以上の極めて高い清浄度のクリーンな環境を容易に得ることができ、また、一直線状にしか連結できない従来のクリーンユニットの持つ空間利用効率の悪さを解決し、トータルのパフォーマンスを投資的にも作業効率的にも部屋の面積有効利用的にも最大化することができ、目的に応じたトータルな一連のプロセスフローに対応してプロセスを高いフレキシビリティーを持って低コストで簡便に実行することができる連結クリーンユニットおよびこれに用いて好適なクリーンユニットを提供することである。
【0013】
この発明が解決しようとする他の課題は、作業空間における塵や菌などのダスト微粒子をそのあらゆるサイズに亘って1個以下、あるいは0.1個以下に抑えることができできる、すなわちあらゆるサイズに対して無塵、無菌環境を提供することである。
そして、この発明が解決しようとする最終課題は、従来全く別々の建物や部屋で行われていたナノテクノロジー、バイオテクノロジー、植物工場などの各分野の技術を一つの融合プラットフォーム上で統合的に一体処理することができる環境を提供することである。
上記課題およびその他の課題は、添付図面を参照した本明細書の以下の記述により明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、第1の発明は、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、
上記循環型フィルターが、ろ材が互いに異なるか、またはろ材の孔径が互いに異なる複数のアクティブ塵埃フィルターを直列および/または並列に設けたものを少なくとも一部に含むことを特徴とするものである。
このように、ろ材が互いに異なるか、またはろ材の孔径が互いに異なる複数のアクティブ塵埃フィルターを直列および/または並列に設けることは、本発明者らの知る限り、これまで何ら提案されていない。
【0015】
第2の発明は、
クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットが複数連結された連結クリーンユニットにおいて、
少なくとも一つのクリーンユニットが、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、上記循環型フィルターが、ろ材が互いに異なるか、またはろ材の孔径が互いに異なる複数のアクティブ塵埃フィルターを直列および/または並列に設けたものを少なくとも一部に含むものであることを特徴とするものである。
【0016】
第1および第2の発明において、ろ材としては、例えば、ガラス繊維やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを用いることができる。この場合、これらのアクティブ塵埃フィルターは、好適には、下流のアクティブ塵埃フィルターほど、除去可能なダスト微粒子の最小径がより小さくなるようにする。好適には、複数のアクティブ塵埃フィルターのうちの少なくとも一つは無自己発塵フィルター(例えば、ろ材としてポリテトラフルオロエチレンを用いたULPAフィルター)を用いる。好適な一つの例では、ガラス繊維をろ材に用いたアクティブ塵埃フィルター(HEPAフィルター)とポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたアクティブ塵埃フィルター(ULPAフィルター)とを直列に設け、前者が上流側に、後者が下流側になるようにクリーンユニットに設置する。
【0017】
第3の発明は、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、
上記循環型フィルターが、少なくともその一部に、除去可能なダスト微粒子の最小径が第1の粒径である第1のアクティブ塵埃フィルターと除去可能なダスト微粒子の最小径が上記第1の粒径より小さい第2の粒径である第2のアクティブ塵埃フィルターとを有し、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが上記クリーンユニットに対して並列に設けられており、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが切り替え可能に構成されていることを特徴とするものである。
ここで、第1のアクティブ塵埃フィルターは、例えば、ガラス繊維をろ材に用いたHEPAフィルターであり、第2のアクティブ塵埃フィルターは、例えば、ポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたULPAフィルターであるが、これらに限定されるものではない。例えば、第1のアクティブ塵埃フィルターおよび第2のアクティブ塵埃フィルターのろ材として同一のものを用い、第2のアクティブ塵埃フィルターのろ材の孔径(メッシュの孔径)を第2のアクティブ塵埃フィルターのろ材の孔径より小さくしてもよい。
【0018】
第4の発明は、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットの運転方法であって、
上記循環型フィルターが、少なくともその一部に、除去可能なダスト微粒子の最小径が第1の粒径である第1のアクティブ塵埃フィルターと除去可能なダスト微粒子の最小径が上記第1の粒径より小さい第2の粒径である第2のアクティブ塵埃フィルターとを有し、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが上記クリーンユニットに対して並列に設けられており、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが切り替え可能に構成されており、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターにより上記第1の粒径以上のダスト微粒子を除去した後、上記第1のアクティブ塵埃フィルターから上記第2のアクティブ塵埃フィルターに切り替えて上記第2の粒径以上のダスト微粒子を除去するようにしたことを特徴とするものである。
好適には、第1のアクティブ塵埃フィルターおよび第2のアクティブ塵埃フィルターによりダスト微粒子を除去した後、作業室内に希ガスや窒素ガス等の不活性ガスを導入して空気を置換するようにする。こうすることで、作業室内の環境を高清浄度でしかも非酸素雰囲気にすることができる。
【0019】
第5の発明は、
クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットが複数連結された連結クリーンユニットにおいて、
少なくとも一つのクリーンユニットが、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、上記循環型フィルターが、少なくともその一部に、除去可能なダスト微粒子の最小径が第1の粒径である第1のアクティブ塵埃フィルターと除去可能なダスト微粒子の最小径が上記第1の粒径より小さい第2の粒径である第2のアクティブ塵埃フィルターとを有し、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが上記クリーンユニットに対して並列に設けられており、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが切り替え可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
第6の発明は、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、
上記循環型フィルターのアクティブ塵埃フィルターの上下にゲートバルブが設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
第7の発明は、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットの運転方法であって、
上記循環型フィルターのアクティブ塵埃フィルターの上下にゲートバルブを設け、
上記アクティブ塵埃フィルターによりダスト微粒子を除去した後、上記ゲートバルブを閉めるようにしたことを特徴とするものである。
このようにアクティブ塵埃フィルターの上下(あるいは入口および出口)にゲートバルブを設けることは、本発明者らの知る限り、これまで何ら提案されていない。
好適には、アクティブ塵埃フィルターによりダスト微粒子を除去した後、作業室内に不活性ガスを導入して空気を置換するようにする。
【0022】
第8の発明は、
クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットが複数連結された連結クリーンユニットにおいて、
少なくとも一つのクリーンユニットが、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、上記循環型フィルターのアクティブ塵埃フィルターの上下にゲートバルブが設けられていることを特徴とするものである。
第6〜第8の発明においては、好適には、アクティブ塵埃フィルターによりダスト微粒子を除去した後、これらのゲートバルブを閉めるようにする。この場合、アクティブ防塵フィルターによりダスト微粒子を除去した後、作業室内に不活性ガスを導入して空気を
置換するようにしてもよい。
【0023】
第9の発明は、
エア循環機構を有する、クリーンな環境に維持することができる非真空のクリーン作業室であって、その内部における粒径0.01μm以上のダスト微粒子の総数が1個未満であることを特徴とするものである。
好適には、粒径0.01μm以上のダスト微粒子の総数が0.1個未満である。
ここで、クリーン作業室の内部における粒径0.01μm以上のダスト微粒子の総数を1個未満とすることができることは、これまで報告されておらず、本発明者らが初めて達成したものである。
第1〜第9の発明において、循環型フィルターまたはエア循環機構は、典型的には、アクティブ防塵フィルターと循環ダクトとにより構成される。
【0024】
ここで、第1〜第9の発明による清浄化プロセスについて説明する。今、クリーンユニットの作業室またはクリーン作業室において、アクティブ防塵フィルターおよび循環ダクトを設けた場合(ターボシステム)を考える。このとき、作業室内のダスト密度n(t)は、防塵フィルターの風量をV、作業室の体積をV0 、内面積をS、単位面積・単位時間当たりのダスト微粒子の脱離レートをσ、設置環境のダスト密度をN0 、防塵フィルターのダスト捕集率をγとして
【数1】
で記述される。このとき、
【数2】
および
【数3】
と定義すると、ダスト微粒子密度は
【数4】
となり、時間が十分たてば、第2項は急速にゼロに近づくため、第1項、すなわちαn /βn =(Sσ/V0 )/(γV/V0 )=Sσ/γVのみが残る。この項は外気のダスト密度を含まないため、このクリーンユニットの設置環境によらず、究極の清浄度が得られることがわかる。ここで特徴的なことは、ターボシステムを用いないクリーンユニットでは、作業室の清浄度は1−γあるいはそのべき乗(1−γ)n で支配されるのに対し、ターボシステムを用いるクリーンユニットでは、作業室の清浄度は1/γで支配されることである。また、Sσ/γVを最小化することが重要である。
【0025】
第1〜第9の発明において、クリーンユニットまたはクリーン作業室の形状は、種々の形状であってよく、必要に応じて選ばれるが、具体例を挙げると、直方体状または立方体状、直方体または立方体を変形した形状、球状、半球状、楕円体状、円筒状などであってよい。また、作業室の内部の大きさは、基本的には使用目的などに応じて設計により適宜決定するものであるが、例えば、オペレーターがグローブなどを用いて作業室の内部で各種の作業(プロセスの実行、クリーニングなどのメンテナンスの実施など)を行うことができるようにするためには、作業室内に外部から手を入れて作業空間のほぼ全体に届く大きさであることが望ましく、一般的には幅、高さ、奥行きとも1m以内に選ばれるが、これに限定されるものではない。一方、作業室の大きさがあまりに小さすぎると、作業に支障を来すおそれがあるため、一般的には30cm程度以上に選ばれるが、これに限定されるものではない。作業室内に外部から手を入れて作業を行う必要がない場合、例えば作業を自動化する場合、あるいは、クリーンユニットを試料などを入れたまま携帯する場合などには、作業室の大きさをより小さくすることが可能である。このクリーンユニットは、例えば、材料処理に用いることができる。この材料処理には、無機材料、有機材料、生体材料などの各種の材料の処理が含まれる。複数のクリーンユニットを連結する場合、例えば、トータルな一連のプロセスフローの中で複数回現れる同種類のプロセスを、上記の複数のクリーンユニットに、ループ状配置でクリーンユニットが連結された部分を設けることにより、同一のクリーンユニットにおいて実行可能となる。
クリーンユニットまたはクリーン作業室は、非真空でよいため、板状のハードな部材により構成するほか、風船あるいはバルーン状のソフトな材料を用いて構成してもよい。
クリーンユニットまたはクリーン作業室の内壁からの発塵を抑えるために、例えば、この内壁の全部または一部にポリテトラフルオロエチレンのコーティングを施すようにしてもよい。
【0026】
複数のクリーンユニットまたはクリーン作業室を連結する場合、この連結クリーンユニットには、例えば、ナノテクノロジープロセスユニットおよび/またはバイオテクノロジープロセスユニットを含む。
連結を行う場合、作業室の後部、上部および下部のうちの少なくとも一つならびに少なくとも一方の側部にそれぞれ連結部が設けられる。作業室の連結部を後部、上部、下部および二つの側部のどこに設けるかは、クリーンユニットを二次元的(平面的)または三次元的(立体的)にどのように配置するかに応じて適宜決められる。例えば、連結クリーンユニットを水平面内に配置する場合、連結の自由度を大きくし、連結クリーンユニットのフレキシビリティーを高めるためには、好適には、連結部は、作業室の後部および両側部にそれぞれ設けられる。この場合、一つのクリーンユニットに対し、後部および両側部に合計三つのクリーンユニットを連結することが可能である。また、クリーンユニットを鉛直面内に配置する場合、連結の自由度を大きくし、連結クリーンユニットのフレキシビリティーを高めるためには、好適には、連結部は、作業室の上部または下部および両側部にそれぞれ設けられる。この場合、一つのクリーンユニットに対し、上部または下部および両側部に合計三つのクリーンユニットを連結することが可能である。連結部は、例えば、作業室の壁に設けられた開口部とこの開口部を開閉可能に設けられた遮断板とを有する。この遮断板は、開閉可能である限り、基本的にはどのようなものであってもよいが、典型的には、引き戸や扉などである。この遮断板の開閉は、手動で行ってもよいし、光センサーなどのセンサーを作業室内部に取り付けるとともに、遮断板の開閉機構を設け、オペレーターの手や試料が遮断板に近づいた時に自動的に開閉するようにしてもよい。また、作業室にベルトコンベアーなどの搬送機構を設け、入り口と出口との間でこの搬送機構により試料を搬送する場合には、試料が搬送機構により出口付近まで搬送された時、これをセンサーにより検知して遮断板を開閉機構により開閉するようにしてもよい。遮断板または作業室の壁面にパッキンなどのシール部材を設けて遮断時の気密性を高めるようにしてもよい。
【0027】
クリーンユニットの内部(作業室の内部)には、使用目的に応じて、コンパクトな装置を収めることができる。この装置は、具体的には、例えば、各種のプロセス装置、ラッピング装置、解析装置(例えば、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)などの走査プローブ顕微鏡(SPM)など)、反応装置、マイクロケミカルシステム、マイクロケミカルリアクター、露光装置、エッチング装置、成長装置、加工装置、殺菌装置、粒径フィルター、人工光源、バイオ装置、食品加工装置、検査装置、メディカルデバイス、内視鏡部品、コンタクトレンズ作製機器、透析機器、医用ディスポーザル製造装置、製薬装置などである。人工光源は、例えば、細胞系の育成、植物体の育成、遺伝子実験などを行う場合に用いられる。細胞系の育成や植物体の育成を行う場合、人工光源としては、好適には、スペクトル半値幅が30nm以下の発光ダイオードや半導体レーザ、特にパルス駆動半導体レーザが用いられる。
また、クリーンユニットの作業室の内部環境は様々な方式で制御することができる。この内部環境の制御手段は、例えば、温度制御装置、湿度制御装置、気体成分制御装置、吸着装置、除害装置、特定波長照明器、密閉/開球環境選択機構などである。内部環境は、例えばコンピュータにより制御することができる。
【0028】
上記の連結クリーンユニットによれば、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、植物工場技術などの分野に亘ってトータルな一連のプロセスフローに対応して各種の材料の処理プロセスを高いフレキシビリティーを持って低コストで簡便に実行することができる材料処理方法、トータルな一連のプロセスフローに対応して無機材料または有機材料を用いた各種の素子(LSI、発光ダイオード、半導体レーザなど)の製造プロセスを高いフレキシビリティーを持って低コストで簡便に実行することができる素子製造方法、トータルな一連のプロセスフローに対応して植物体育成プロセスを高いフレキシビリティーを持って低コストで簡便に実行することができる植物体育成方法などの実現が可能となる。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、循環型フィルターが、ろ材が互いに異なるか、またはろ材の孔径が互いに異なる複数のアクティブ塵埃フィルターを含むことにより、クリーンユニット内のエアをまず大きなダスト微粒子を除去することができるアクティブ塵埃フィルターを用いて清浄化した後、より小さいダスト微粒子を除去することができるアクティブ塵埃フィルターを用いて清浄化することにより、後者のアクティブ塵埃フィルターに負担を与えることなく、極めて清浄度の高いエア環境を得ることができる。特に、クリーンユニットあるいはクリーン作業室の内部における粒径0.01μm以上のダスト微粒子の総数が1個未満、あるいは0.1個未満という極限清浄環境を実現することが可能である。
【0030】
そして、この発明によれば、これまで解決困難であった様々な課題を解決することができる。すなわち、従来の、半導体LSI、液晶ディスプレイなどの電子素子・電子機器製造用クリーンルーム、バイオ・食品用クリーンルーム、人工光源利用植物工場は、全体として大きな箱状の空間を用いていた結果、大規模でコストが高い、高額な機器が必要、小回りが効かない、植物育成が最適化されていない、などの問題があったが、これらの問題が一挙に解決される。
例えば、超LSIに代表される半導体素子などの高機能素子の製造には、材料投入から始まり、膜形成、UV(紫外線)あるいはEUV(極紫外線)を用いたフォトリソグラフィーや電子線リソグラフィーなどのリソグラフィー、エッチング、熱処理などの様々なプロセスを経て製品アウトプットに至る一貫プロセスが必要である。この製造プロセスは従来、高度に管理された巨大なクリーンルームの中に配置された成膜装置、リソグラフィー装置、エッチング装置、熱処理装置などの大型、高価かつ高度に精密な製造装置間で基板を受け渡すことで実現されてきた。したがって、従来の高機能素子の製造は、広大な敷地に巨大な建物を建設することが必要であるばかりでなく、各種の製造装置を生産する装置産業に立脚している。また、同様な問題は、上記製造装置をバイオ技術や食品加工に関連する装置に置き換えれば、そのままバイオクリーンリーム、食品加工のクリーンルームについても生じている。このような理由により、一般に、ナノテクベンチャーやバイオベンチャーなど製造業ベンチャーは、ITベンチャーに比べ、固定資産など設備投資が重くのしかかり、損益分岐点が上昇してしまい、企業化の成功確率は高くなかった。これは一般に、基礎研究と産業化との間に横たわる「デス・バレー(death valley)」として深く憂慮されてきた。すなわち、従来の高機能素子を製造する産業においては、IT、特にソフトウエア産業と比べて設備投資や固定資産維持の負担が大きく、ナノテクノロジーを主業務とする製造業ベンチャーがなかなか興り難い状況にあると言える。ナノテクノロジーがその本来の可能性を開花させるには、LSIのムーアの法則などに代表される、素子の微細化の進展には巨大精密インフラおよび装置が必要である、とのパラダイムからの脱却を図る必要がある。
このような既存の技術が有する課題は、この発明によるクリーンユニット、連結クリーンユニットあるいはクリーン作業室を用いることにより、ソフトウエアベンチャー並に固定資産の維持の負担が低いハードウエアべンチャーを興すことを可能にする安価で小回りが効き、クリーンルームを必要としない小規模の製造装置あるいはミニファブシステムを容易に構築することができるようになることで、解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の第1の実施形態によるクリーンユニットの正面図、図2AおよびBはこのクリーンユニットの上面図および側面図(アクティブ防塵フィルター45a、45bの図示は省略)である。
図1および図2に示すように、このクリーンユニットは六面体形状の箱状の作業室41を有する。この作業室41の両側面は互いに平行、上面および底面も互いに平行、両側面と上面、底面、前面および背面とは互いに直角であるが、前面は背面に対して非平行でその上部が背面に近づく向きに所定の角度、例えば70〜80°だけ傾斜しているが、これに限定されるものではない。作業室41の前面は取り外し可能になっており、前面を取り外した状態でその中にプロセス装置や観察装置などの必要な装置を入れることができるようになっている。
【0032】
作業室41の左側面および背面にそれぞれ、クリーンユニット間のコネクターおよび搬送路を兼用するトランスファーボックス42、43が着脱自在に設けられている。図1および図2には図示されていないが、これらのトランスファーボックス42、43が取り付けられている部分の作業室41の壁には開口部が設けられている。これらのトランスファーボックス42、43を用いて左側面および背面の二方向から他のクリーンユニットを連結することができるようになっているとともに、これらのトランスファーボックス42、43を通して試料などの搬送を行うことができるようになっている。トランスファーボックス42、43は、典型的には、作業室41の壁に設けられた開口部とこの開口部を開閉可能に設けられた遮断板とを有する。この遮断板は、開閉可能である限り、基本的にはどのようなものであってもよいが、典型的には引き戸や扉などである。この遮断板の開閉は、手動で行ってもよいし、光センサーなどのセンサーを作業室41の内部に取り付けるとともに、遮断板の開閉機構を設け、オペレーターの手や試料が遮断板に近づいた時に自動的に開閉するようにしてもよい。また、作業室にベルトコンベアーなどの搬送機構を設け、入り口と出口との間でこの搬送機構により試料を搬送する場合には、試料が搬送機構により出口付近まで搬送された時、これをセンサーにより検知して遮断板を開閉機構により開閉するようにしてもよい。遮断板または作業室の壁面にパッキンなどのシール部材を設けて遮断時の気密性を高めるようにしてもよい。トランスファーボックス42、43の寸法は例えば15〜20cmであるが、これに限定されるものではない。
【0033】
作業室41の内壁からのダストあるいは粉塵の放出を最小化するために、好適には、作業室41の内壁の少なくとも一部に粘着シートを貼り付け、例えば一定期間使用したら貼り替える。粘着シートを多層化したものを使用した場合には、粘着シートを一枚ずつ剥がすことで清浄なシート面を出すことができる。また、作業室41の内壁表面について、空間周波数において、作業室41から除去しようとするダスト微粒子の径と同じオーダーの表面凹凸のフーリエ成分を持たないように平滑加工することによって、この粒径を有するダスト微粒子の作業室41の内壁表面への吸着を最小限に抑えることができる。作業室41の内壁からのダストあるいは粉塵の放出を抑えるために、例えば、この内壁表面の全部または一部にポリテトラフルオロエチレンのコーティングを施すようにしてもよい。
【0034】
作業室41の前面の壁には二つの円形の開口部が設けられており、これらの開口部に一対の手作業用グローブ44が装着されている。そして、これらの手作業用グローブ44にオペレーターが両手を入れて、作業室41内で必要な作業を行うことができるようになっている。
作業室41の大きさはその中に必要なプロセス装置などを収容することができ、かつ、オペレーターが手作業用グローブ44に両手を入れて作業室41内で必要な作業を行うことができる大きさに選ばれる。作業室41の寸法の具体例を挙げると、奥行きa=50〜70cm、幅b=70〜90cm、高さh=50〜100cmであるが、これに限定されるものではない。また、作業室41を構成する材料としては、好適には、外部から内部を見ることができるようにするため、透明材料、例えばアクリル樹脂板が用いられるが、これに限定されるものではない。機械的補強のため、このアクリル樹脂板を金属枠に取り付けるようにしてもよい。
【0035】
作業室41の上面には送風動力を有する二つのアクティブ防塵フィルター45a、45bが直列に接続されて取り付けられ、上流側のアクティブ防塵フィルター45aと作業室41とを連結するように循環ダクト47が取り付けられており、作業室41の内部を例えばクラス0.00001ないしクラス0.1程度の高清浄環境に維持することができるようになっている。アクティブ防塵フィルター45a、45bは、除去可能なダスト微粒子の最小径が互いに異なり、アクティブ防塵フィルター45aに比べてアクティブ防塵フィルター45bの方が除去可能なダスト微粒子の最小径が小さい。アクティブ防塵フィルター45aとしては、例えば、ガラス繊維をろ材に用いたHEPAフィルターを用い、アクティブ防塵フィルター45bとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたULPAフィルターを用いる。
【0036】
次に、このクリーンユニットの運転方法の一例について説明する。ここでは、最初、作業室41の内部が通常の室内環境のような低清浄度であるとする。
アクティブ防塵フィルター45a、45bの両者を作動させると、作業室41内のエアは循環ダクト47を通ってアクティブ防塵フィルター45aに入り、粒径が大きいダスト微粒子が除去される。次に、こうして粒径が大きいダスト微粒子が除去されたエアがアクティブ防塵フィルター45aから出てきてアクティブ防塵フィルター45bに入り、より粒径が小さいダスト微粒子の除去が除去されて清浄化が行われる。
【0037】
以上のように、この第1の実施形態によれば、アクティブ塵埃フィルター45aにより粒径が大きいダスト微粒子を除去してから、より粒径が小さいダスト微粒子の除去が可能なアクティブ防塵フィルター45bを使用して清浄化を行うことができるため、最初からアクティブ防塵フィルター45bを使用して清浄化を行う場合に比べて、アクティブ防塵フィルター45bの目詰まりなどを起こすことなく、作業室41をアクティブ防塵フィルター45bにより到達可能な清浄度に清浄化することができる。また、アクティブ防塵フィルター45bの寿命の向上を図ることができる。また、このクリーンユニットは、密閉構造であるため、設置環境に依存せず、清浄度が低い通常のオフィス環境に設置しても内部の高清浄度環境を維持することができることから、従来のように巨大なクリーンルーム内に設置する必要がなく、設備コストの大幅な低減を図ることができる。
【0038】
図3は、このクリーンユニットの清浄度のダスト微粒子の粒径依存性を示す。このクリーンユニットの内部においては、発塵を抑えるために、既に述べたように内壁の処理などを行っている。図3中、△、□、○はHEPAフィルターを用いたときの値、◎はアクティブ塵埃フィルター45aとしてガラス繊維をろ材に用いたHEPAフィルター、アクティブ防塵フィルター45bとしてポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたULPAフィルター(自己無発塵フィルター)を用いたときの値である。単位面積・単位時間当たりのダスト微粒子の脱離レートσ(粒径0.1μm)は、図3中△の値については10.3m-2s-1、□の値については4.17m-2s-1、○の値については0.83m-2s-1である。また、作業室41の体積は0.3m3 である。図3の◎で示すように、クラス0.0001(ISO class−1)〜クラス0.00001(ISO class−2)の極限的高清浄度が得られている。クラス0.0001(ISO class−1)の清浄度はITRSのロードマップでは2018年の技術レベルであり、約12年も先取りしていることになる。なお、ダストカウンターとしては、東京ニュークリアサービス(株)のLasair110、カノマックスの装置(WPS 100XP)を使用した。
【0039】
図4に示すように、粒径0.1μm以下のダスト微粒子では、ブラウン運動が激しくなるため、ダスト微粒子のカウント数の上昇は頭打ちになることが知られている(粒径0.1μm付近で最大になるとされている)。ただし、図4中、△は手作業用グローブ44として天然ゴムであるポリイソプロピレン(PI)製のもの、循環ダクト47としてアルミニウム(Al)製の蛇腹を用いたときの値、□は手作業用グローブ44としてポリエチレン(PE)製のもの、循環ダクト47としてAl製の蛇腹を用いたときの値、○は手作業用グローブ44としてポリエチレン製のもの、循環ダクト47としてポリ塩化ビニル(PVC)製のものを用いたときの値である。図4を併せ考えると、アクティブ塵埃フィルター45aとしてガラス繊維をろ材に用いたHEPAフィルター、アクティブ防塵フィルター45bとしてポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたULPAフィルターを用いた上記のクリーンユニットにより得られる清浄度は、ダスト微粒子の全サイズに亘ってISO class−1の清浄度レベルを上回っていると結論される。このことから、このクリーンユニットの作業室41の内部には、粒径0.01μm以上の全ダスト微粒子(塵埃・菌など)の総数が0.03個以下しか存在せず、その粒径を問わずダスト微粒子がほぼ全く存在しないことがわかる。微生物(microbes)の大きさは、原生動物(Protozoa) は数μm〜数十μm、カビ(mold)は数μm、細菌(bacteria)は1μm程度、リケッチア(rickettsias)は0.3μm程度、ウイルス(viruses)は0.01−0.2μmであることから、殺菌などの方法にたよることなく、作業室41の内部における細菌の存在を完全に抑えることができる。この完全無菌環境は、このクリーンユニットにより、初めて達成されたものである。
【0040】
次に、この発明の第2の実施形態によるクリーンユニットについて説明する。
図5はこのクリーンユニットを示す。図5に示すように、このクリーンユニットにおいては、作業室41の上面に送風動力を有する二つのアクティブ防塵フィルター45a、45bが並列に取り付けられ、さらにこれらのアクティブ防塵フィルター45a、45bと作業室41とを連結するように循環ダクト47が取り付けられており、作業室41の内部を例えばクラス0.0001ないしクラス0.1程度の高清浄環境に維持することができるようになっている。アクティブ防塵フィルター45a、45bは、除去可能なダスト微粒子の最小径が互いに異なり、アクティブ防塵フィルター45aに比べてアクティブ防塵フィルター45bの方が除去可能なダスト微粒子の最小径が小さい。アクティブ防塵フィルター45aとしては、例えば、ガラス繊維をろ材に用いたHEPAフィルターを用い、アクティブ防塵フィルター45bとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたULPAフィルターを用いる。循環ダクト47は切り替えバルブ49を介して二つの分岐部47a、47bに分岐しており、分岐部47aがアクティブ防塵フィルター45aと接続され、分岐部47bがアクティブ防塵フィルター45bと接続されている。このクと接続されている。
このクリーンユニットのその他の構成は、第1の実施形態によるクリーンユニットと同様である。
【0041】
次に、このクリーンユニットの運転方法の一例について説明する。ここでは、最初、作業室41の内部が通常の室内環境のような低清浄度であるとする。
まず、切り替えバルブ49の操作により循環ダクト47と分岐部47aとを繋げ、循環ダクト47と分岐部47bとを互いに遮断した状態でアクティブ防塵フィルター45aを作動させて清浄化を行う。こうして清浄化を行って清浄度が一定レベルに達した時点で切り替えバルブ49を切り替えて循環ダクト47と分岐部47bとを繋げ、循環ダクト47と分岐部47aとを互いに遮断した状態でアクティブ防塵フィルター45bを作動させて清浄化を行う。
【0042】
以上のように、この第2の実施形態によれば、アクティブ塵埃フィルター45aにより粒径が大きいダスト微粒子を除去してある清浄度まで清浄化を行ってから、より粒径が小さいダスト微粒子の除去が可能なアクティブ防塵フィルター45bを使用して清浄化を行うため、最初からアクティブ防塵フィルター45bを使用して清浄化を行う場合に比べて、アクティブ防塵フィルター45bの目詰まりなどを起こすことなく、作業室41をアクティブ防塵フィルター45bにより到達可能な清浄度に清浄化することができる。また、アクティブ防塵フィルター45bの寿命の向上を図ることができる。
【0043】
次に、この発明の第3の実施形態によるクリーンユニットについて説明する。
図6はこのクリーンユニットを示す。図6に示すように、このクリーンユニットにおいては、作業室41に送風動力を有するアクティブ防塵フィルター45および循環ダクト47が取り付けられており、作業室41の内部を例えばクラス0.01ないしクラス1程度の高清浄環境に維持することができるようになっている。この場合、アクティブ防塵フィルター45の上下に、互いに独立して開閉可能なゲートバルブ50a、50bが取り付けられている。そして、ゲートバルブ50aを介してアクティブ防塵フィルター45が作業室41の上面に取り付けられ、ゲートバルブ50bを介して循環ダクト47がアクティブ防塵フィルター45と接続されている。ゲートバルブ50a、50bはあらかじめアクティブ防塵フィルター45と一体に設けられていてもよいし、そうでなくてもよい。
このクリーンユニットのその他の構成は、例えば、第1の実施形態のクリーンユニットと同様である。
【0044】
次に、このクリーンユニットの運転方法の一例について説明する。ここでは、最初、作業室41の内部が通常の室内環境のような低清浄度であるとする。
まず、ゲートバルブ50a、50bを何れも開いた状態でアクティブ防塵フィルター45を作動させて清浄化を行う。こうして作業室41の清浄度が所期のレベルに到達したらゲートバルブ50a、50bを何れも閉めてアクティブ防塵フィルター45と作業室41との間を遮断し、その後アクティブ防塵フィルター45の運転を停止する。こうすることで、停止時のアクティブ防塵フィルター45からダスト微粒子が脱離して作業室41に逆流することによる汚染を防止することができる。
【0045】
図7は、アクティブ防塵フィルター45を作動させて作業室41の清浄化を行った後、ゲートバルブ50a、50bを何れも閉めてからアクティブ防塵フィルター45の運転を停止した場合と、ゲートバルブ50a、50bを何れも閉めないでアクティブ防塵フィルター45の運転を停止した場合とについて、作業室41の清浄度の経時変化を測定した結果を示す。図7より、ゲートバルブ50a、50bを何れも閉めないでアクティブ防塵フィルター45の運転を停止した場合には、時間の経過とともに、ダスト微粒子のカウント数が速やかに上昇するのに対し、ゲートバルブ50a、50bを何れも閉めてからアクティブ防塵フィルター45の運転を停止した場合には、ダスト微粒子のカウント数の上昇は極めて有効に抑えられていることがわかる。これは、ゲートバルブ50a、50bを何れも閉めてからアクティブ防塵フィルター45の運転を停止することにより、アクティブ防塵フィルター45から作業室41へのダスト微粒子の逆流を防止することができるためである。
以上のように、この第3の実施形態によれば、アクティブ防塵フィルター45の運転停止後の作業室41の逆汚染を有効に防止することができ、完全に消費エネルギーゼロの状態で作業室41の高清浄度を維持することができる。
【0046】
次に、この発明の第3の実施形態によるクリーンユニットについて説明する。
図8はこのクリーンユニットを示す。図8に示すように、このクリーンユニットにおいては、第4の実施形態によるクリーンユニットと同様な構成に加えて、作業室41にガス供給管Pを介してガスボンベBが接続されている。ガスボンベBには、希ガスや窒素ガスなどの不活性ガスが詰められている。図示は省略するが、ガス供給管Pの途中には外部から開閉を制御可能なバルブが設けられており、このバルブを開いたときにガスボンベBから不活性ガスを作業室41に導入することができるようになっている。ただし、作業室41への不活性ガスの供給は、ガスボンベBを用いず、他の方法により行うようにしてもよい。また、作業室41にはリークバルブVが設けられており、このリークバルブVを開くことにより作業室41を大気に開放することができるようになっている。
【0047】
次に、このクリーンユニットの運転方法の一例について説明する。ここでは、最初、作業室41の内部が通常の室内環境のような低清浄度であるとする。
まず、ゲートバルブ50a、50bを何れも開いた状態でアクティブ防塵フィルター45を作動させて清浄化を行う。こうして作業室41の清浄度が所期のレベルに到達したらゲートバルブ50a、50bを何れも閉めてアクティブ防塵フィルター45と作業室41との間を遮断し、その後アクティブ防塵フィルター45の運転を停止する。次に、ガス供給管Pの途中に設けられたバルブを開くと同時にリークバルブVを開き、ガスボンベBから不活性ガスを作業室41に導入してリークバルブVから内部の空気を外部に押し出す。こうして、作業室41の内部の空気が不活性ガスにより置換される。
この第4の実施形態によれば、アクティブ防塵フィルター45の運転停止後の作業室41の逆汚染を有効に防止することができるだけでなく、作業室41の内部の空気を不活性ガスにより置換することで非酸素雰囲気にすることができるため、作業室41を高清浄度でしかも非酸素雰囲気に維持することができる。このため、塗布などの各種の方法による半導体薄膜等の成長やその他の各種のプロセスをダスト微粒子による汚染や酸素による酸化を防止しながら実行することができる。
【0048】
次に、この発明の第5の実施形態による連結クリーンユニットについて説明する。
図9は第1〜第4の実施形態によるクリーンユニットの一種または二種以上のものを複数連結した連結クリーンユニットを示す。図9に示すように、この連結クリーンユニットにおいては、三方向接続可能なクリーンユニット121〜128がトランスファーボックス129を介して連結されている。この場合、クリーンユニット122〜127はループ状配置で連結されている。
【0049】
各クリーンユニット121〜128で行われる作業は例えば次のとおりである。まず、クリーンユニット121は保管ユニットで、試料保管庫(例えば、基板を収納したウエハーカセット130)が設置され、連結に使用されていない右側面のトランスファーボックス129は試料投入口、同じく連結に使用されていない背面のトランスファーボックス129は非常時試料取出口である。クリーンユニット122は化学ユニットで、化学前処理システム131が設置され、化学前処理が行われる。クリーンユニット123はレジストプロセスユニットで、スピンコータ132および現像装置133が設置され、レジストのコーティングや現像が行われる。クリーンユニット124はリソグラフィーユニットで、露光装置134が設置され、連結に使用されていない右側面のトランスファーボックス128は非常時試料取出口である。クリーンユニット125は成長/メタライゼーションユニットで、電気化学装置135およびマイクロリアクターシステム136が設置され、連結に使用されていない右側面のトランスファーボックス128は非常時試料取出口である。クリーンユニット126はエッチングユニットで、エッチング装置137が設置されている。このクリーンユニット126の背面のトランスファーボックス129は、中継ボックス138を介して、クリーンユニット123の背面のトランスファーボックス129と連結されている。クリーンユニット127はアセンブリユニットで、顕微鏡139およびプローバー140が設置されている。クリーンユニット128は走査プローブ顕微鏡(SPM)観察ユニットで、卓上STM141および卓上AFM142が設置され、連結に使用されていない右側面のトランスファーボックス129は試料取出口、同じく連結に使用されていない背面のトランスファーボックス129は非常時試料取出口である。クリーンユニット123のスピンコータ132、クリーンユニット124の露光装置134、クリーンユニット125の電気化学装置135およびマイクロリアクターシステム136、クリーンユニット126のエッチング装置137、クリーンユニット127のプローバー140等は電源143に接続されていて電源が供給されるようになっている。また、クリーンユニット125の電気化学装置135は信号ケーブル144により電気化学装置制御器145と接続されており、この電気化学装置制御器145により制御されるようになっている。さらに、クリーンユニット127の顕微鏡139、クリーンユニット128の卓上STM141および卓上AFM142による観察画像は、液晶モニター146に映し出すことができるようになっている。
【0050】
この図9に示す連結クリーンユニットにおいて、例えば、第1〜第4の実施形態によるクリーンユニットの何れかを小型化してポータブルとしたポータブルクリーンユニット200の作業室内に試料(例えば、半導体ウェハー)を保管したまま、このポータブルクリーンユニット200のトランスファーボックスをクリーンユニット128の試料取り出し口に取り付けて連結する。そして、この状態でトランスファーボックス92を経由してクリーンユニット200からクリーンユニット128に試料を搬送し、卓上STM141または卓上AFM142により観察を行う。
【0051】
この第5の実施形態によれば、次のような多くの利点を得ることができる。すなわち、化学前処理、レジスト塗布、露光、現像、成長/メタライゼーション、エッチング、プロービング、表面観察など、通常巨大なクリーンルームの中に設えられた装置群を駆使して行われるほぼあらゆる工程を、クリーンな局所空間を包むクリーンユニットを連結した連結クリーンユニットにおいてループ状配置などを取ることによって、クリーンルームを用いることなく通常の実験室規模の部屋の中において簡便かつコンパクトに実現することができる。
【0052】
次に、この発明の第6の実施形態について説明する。この第6の実施形態においては、図10に示すような太陽電池を製造する場合について説明する。
まず、この太陽電池の構成について説明する。
図10A、BおよびCはこの太陽電池を示す。ここで、図10Aは表面図、図10Bは裏面図、図10Cは側面図である。図10A、BおよびCに示すように、この太陽電池は、アノード電極1151とカソード電極1152とが、間にp型半導体層とn型半導体層とからなるpn接合1153をはさんで渦巻き状に形成されたもので、全体として薄い円板の形状を有する。これらのp型半導体層およびn型半導体層は無機半導体でも有機半導体でもよい。符号1155はカソード電極1152の取り出し電極を示す。
【0053】
図11にこの太陽電池の詳細構造を模式的に示す。図11において、符号1191がp型半導体層、1192がn型半導体層を示す。図11に示すように、アノード電極1151とカソード電極1152とが背中合わせになる部位には樹脂などの各種の絶縁体からなる絶縁膜1193が設けられており、この絶縁膜1193によりアノード電極1151とカソード電極1152とが互いに電気的に絶縁されている。この場合、カソード電極1152は全面電極であり、n型半導体層1192とオーミック接触しているのに対し、アノード電極1151は円板の厚さ(W)方向に互いに分離された細長いn個の微小アノード電極1511−1〜1511−nからなる。これらの微小アノード電極1151−1〜1151−nの幅はそれぞれW1 、W2 、…、Wn であり、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0054】
p型半導体層1191およびn型半導体層1192のバンドギャップEg は、光入射面から円板の厚さ方向にn段階(n≧2)に段階的に減少しており、光入射面側から順にEg1、Eg2、…、Egn(Eg1>Eg2>…>Egn)となっている。p型半導体層1191およびn型半導体層1192のうちのバンドギャップEg がEgk(1≦k≦n)の領域をEgk領域と呼ぶ。このEgk領域のp型半導体層1191と微小アノード電極1151−kとがオーミック接触している。これらのEgk領域は一体になっていても互いに分離されていてもよい。微小アノード電極1151−kとカソード電極1152との間にEgk領域が挟まれた構造が微小太陽電池を構成し、カソード電極1152を共通電極としたこれらのn個の微小太陽電池によりこの太陽電池が構成されている。
【0055】
Egkは次のように設定することができる。例えば、AM1.5太陽光スペクトルの全波長範囲またはその主要な波長範囲(入射エネルギーが高い部分を含む範囲)において、波長をn個の区間に分ける。そして、これらの区間に短波長側(高エネルギー側)から順に1、2、…、nというように番号を付け、k番目の区間の最小光子エネルギーに等しくEgkを選ぶ。こうすることで、k番目の区間の光子エネルギーを有する光子がEgk領域に入射すると電子−正孔対が発生し、光電変換が行われる。また、この場合、このk番目の区間の光子エネルギーを有する光子が各Egk領域に到達して十分に吸収されるように、光入射面からこのEgk領域までの深さを選ぶ。これによって、この太陽電池の光入射面に入射する太陽光は、まずEg1領域に入射してそのスペクトルのうち光子エネルギーがEg1以上のものが吸収されて光電変換され、続いてEg2領域に入射してそのスペクトルのうち光子エネルギーがEg2以上でEg1より小さいものが吸収されて光電変換され、最終的にEgn領域に入射してそのスペクトルのうち光子エネルギーがEgn以上でEgn-1より小さいものが吸収されて光電変換される。この結果、太陽光スペクトルのほぼ全範囲あるいは主要な波長範囲の光を光電変換に使用することができる。
【0056】
各Egkの設定は、各Egk領域を構成する半導体の組成を変えることにより行うことができる。具体的には、各Egk領域を別種の半導体により構成する。無機半導体を用いる場合について具体例をいくつか挙げると次のとおりである。n=2の最も簡単な場合には、例えば、Eg1領域をGaAs(Eg =1.43eV)、Eg2領域をSi(Eg =1.11eV)により構成する。また、n=3の場合には、例えば、Eg1領域をGaP(Eg =2.25eV)、Eg2領域をGaAs(Eg =1.43eV)、Eg3領域をSi(Eg =1.11eV)により構成する。また、n=4の場合には、例えば、Eg1領域をGaP(Eg =2.25eV)、Eg2領域をGaAs(Eg =1.43eV)、Eg3領域をSi(Eg =1.11eV)、Eg4領域をGe(Eg =0.76eV)により構成する。さらには、GaInNx As1-x やGaInNx P1-x を用いてxの制御だけでn〜10の場合のEgk領域を構成することも可能である。加えて、Teを含ませると大きなボウイング(bowing)を示すことが知られているII−VI族化合物半導体を用いてEgk領域を構成してもよい。
【0057】
この太陽電池は、例えば次のようにして製造することができる。
まず、ローラに、例えば所定幅の薄い平坦なテープ状の樹脂製ベースフィルムを巻き付けておき、この樹脂製ベースフィルムの一方の面に、必要に応じて塗布や蒸着などによりバンドギャップが互いに異なる複数種類のn型半導体層を形成し、次に同様にして複数種類のp型半導体層を形成し、次に同様にしてアノード電極用の金属を形成してアノード電極1151−1〜1151−nを形成し、次に同様にして絶縁材料を形成して絶縁膜1193を形成した後、同様にしてカソード電極用の金属を形成してカソード電極1152を形成した後、この積層膜付き樹脂製ベースフィルムをローラ状の取り出し電極1155で巻き取っていく。
塗布や蒸着などによって形成される上記の各層が渦巻き状に形成される際に樹脂製ベースフィルムが巻き込まれないようにするため、巻き込まれる直前にこの樹脂製ベースフィルムの裏面に高温に加熱されたローラを押し付けたり、この裏面に光を照射したりすることにより樹脂製ベースフィルムを剥離する。
【0058】
この第6の実施形態においては、第1〜第4の実施形態によるクリーンユニットのいずれかのクリーンユニット内において、上記の塗布や蒸着などのプロセスを実行する。そして、この際、塗布面あるいは蒸着面の面積ベクトルdSとマクロな風流ベクトルVとの内積dS・Vが0となるように設定する。こうすることで、極めて高い清浄度環境下で塗布や蒸着などのプロセスを実行することができ、高い歩留まりで太陽電池を製造することができる。
この第6の実施形態によれば、例えば従来のアモルファスSi太陽電池では太陽光スペクトルのうち光子エネルギーが1.12eVより小さい波長の光は利用することができないのに対し、Egk領域の設計により、太陽光スペクトルの全部または主要部の光を光電変換に利用することができ、光電変換効率が極めて高い太陽電池を高い歩留まりで製造することができる。
【0059】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において挙げた数値、材料、形状、配置などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、材料、形状、配置などを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の第1の実施形態によるクリーンユニットを示す正面図である。
【図2】この発明の第1の実施形態によるクリーンユニットの上面図および側面図である。
【図3】第1の実施形態によるクリーンユニットにより得られる清浄度の測定結果の例を示す略線図である。
【図4】第1の実施形態によるクリーンユニットにより得られる清浄度の測定結果の例を示す略線図である。
【図5】この発明の第2の実施形態によるクリーンユニットを示す正面図である。
【図6】この発明の第3の実施形態によるクリーンユニットを示す正面図である。
【図7】この発明の第3の実施形態によるクリーンユニットによる高清浄度の維持効果を説明するための略線図である。
【図8】この発明の第4の実施形態によるクリーンユニットを示す正面図である。
【図9】この発明の第1〜第4の実施形態によるクリーンユニットの使用例を説明するための略線図である。
【図10】この発明の第6の実施形態により製造される太陽電池を示す表面図、裏面図および側面図である。
【図11】この発明の第6の実施形態により製造される太陽電池を示す略線図である。
【符号の説明】
【0061】
41…作業室、42、43…トランスファーボックス、45、45a、45b…アクティブ防塵フィルター、47…循環ダクト、50a、50b…ゲートバルブ、P…ガス供給管、B…ガスボンベ、V…リークバルブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、
上記循環型フィルターが、ろ材が互いに異なるか、またはろ材の孔径が互いに異なる複数のアクティブ塵埃フィルターを直列および/または並列に設けたものを少なくとも一部に含むことを特徴とするクリーンユニット。
【請求項2】
上記循環型フィルターが、ガラス繊維をろ材に用いたアクティブ塵埃フィルターとポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたアクティブ塵埃フィルターとを直列に設けたものを含むことを特徴とする請求項1記載のクリーンユニット。
【請求項3】
クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットが複数連結された連結クリーンユニットにおいて、
少なくとも一つのクリーンユニットが、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、上記循環型フィルターが、ろ材が互いに異なるか、またはろ材の孔径が互いに異なる複数のアクティブ塵埃フィルターを直列および/または並列に設けたものを少なくとも一部に含むものであることを特徴とする連結クリーンユニット。
【請求項4】
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、
上記循環型フィルターが、少なくともその一部に、除去可能なダスト微粒子の最小径が第1の粒径である第1のアクティブ塵埃フィルターと除去可能なダスト微粒子の最小径が上記第1の粒径より小さい第2の粒径である第2のアクティブ塵埃フィルターとを有し、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが上記クリーンユニットに対して並列に設けられており、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが切り替え可能に構成されていることを特徴とするクリーンユニット。
【請求項5】
上記第1のアクティブ塵埃フィルターはガラス繊維をろ材に用いたHEPAフィルターであり、上記第2のアクティブ塵埃フィルターはポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたULPAフィルターであることを特徴とする請求項4記載のクリーンユニット。
【請求項6】
クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットが複数連結された連結クリーンユニットにおいて、
少なくとも一つのクリーンユニットが、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、上記循環型フィルターが、少なくともその一部に、除去可能なダスト微粒子の最小径が第1の粒径である第1のアクティブ塵埃フィルターと除去可能なダスト微粒子の最小径が上記第1の粒径より小さい第2の粒径である第2のアクティブ塵埃フィルターとを有し、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが上記クリーンユニットに対して並列に設けられており、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが切り替え可能に構成されているものであることを特徴とする連結クリーンユニット。
【請求項7】
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、
上記循環型フィルターのアクティブ塵埃フィルターの上下にゲートバルブが設けられていることを特徴とするクリーンユニット。
【請求項8】
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットの運転方法であって、
上記循環型フィルターのアクティブ塵埃フィルターの上下にゲートバルブを設け、
上記アクティブ塵埃フィルターによりダスト微粒子を除去した後、上記ゲートバルブを閉めるようにしたことを特徴とするクリーンユニットの運転方法。
【請求項9】
上記アクティブ塵埃フィルターによりダスト微粒子を除去した後、作業室内に不活性ガスを導入して空気を置換するようにしたことを特徴とする請求項8記載のクリーンユニットの運転方法。
【請求項10】
クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットが複数連結された連結クリーンユニットにおいて、
少なくとも一つのクリーンユニットが、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、上記循環型フィルターのアクティブ塵埃フィルターの上下にゲートバルブが設けられていることを特徴とする連結クリーンユニット。
【請求項11】
エア循環機構を有する、クリーンな環境に維持することができる非真空のクリーン作業室であって、その内部における粒径0.01μm以上のダスト微粒子の総数が1個未満であることを特徴とするクリーン作業室。
【請求項12】
上記粒径0.01μm以上のダスト微粒子の総数が0.1個未満であることを特徴とする請求項11記載のクリーン作業室。
【請求項1】
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、
上記循環型フィルターが、ろ材が互いに異なるか、またはろ材の孔径が互いに異なる複数のアクティブ塵埃フィルターを直列および/または並列に設けたものを少なくとも一部に含むことを特徴とするクリーンユニット。
【請求項2】
上記循環型フィルターが、ガラス繊維をろ材に用いたアクティブ塵埃フィルターとポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたアクティブ塵埃フィルターとを直列に設けたものを含むことを特徴とする請求項1記載のクリーンユニット。
【請求項3】
クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットが複数連結された連結クリーンユニットにおいて、
少なくとも一つのクリーンユニットが、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、上記循環型フィルターが、ろ材が互いに異なるか、またはろ材の孔径が互いに異なる複数のアクティブ塵埃フィルターを直列および/または並列に設けたものを少なくとも一部に含むものであることを特徴とする連結クリーンユニット。
【請求項4】
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、
上記循環型フィルターが、少なくともその一部に、除去可能なダスト微粒子の最小径が第1の粒径である第1のアクティブ塵埃フィルターと除去可能なダスト微粒子の最小径が上記第1の粒径より小さい第2の粒径である第2のアクティブ塵埃フィルターとを有し、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが上記クリーンユニットに対して並列に設けられており、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが切り替え可能に構成されていることを特徴とするクリーンユニット。
【請求項5】
上記第1のアクティブ塵埃フィルターはガラス繊維をろ材に用いたHEPAフィルターであり、上記第2のアクティブ塵埃フィルターはポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたULPAフィルターであることを特徴とする請求項4記載のクリーンユニット。
【請求項6】
クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットが複数連結された連結クリーンユニットにおいて、
少なくとも一つのクリーンユニットが、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、上記循環型フィルターが、少なくともその一部に、除去可能なダスト微粒子の最小径が第1の粒径である第1のアクティブ塵埃フィルターと除去可能なダスト微粒子の最小径が上記第1の粒径より小さい第2の粒径である第2のアクティブ塵埃フィルターとを有し、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが上記クリーンユニットに対して並列に設けられており、
上記第1のアクティブ塵埃フィルターと上記第2のアクティブ塵埃フィルターとが切り替え可能に構成されているものであることを特徴とする連結クリーンユニット。
【請求項7】
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、
上記循環型フィルターのアクティブ塵埃フィルターの上下にゲートバルブが設けられていることを特徴とするクリーンユニット。
【請求項8】
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットの運転方法であって、
上記循環型フィルターのアクティブ塵埃フィルターの上下にゲートバルブを設け、
上記アクティブ塵埃フィルターによりダスト微粒子を除去した後、上記ゲートバルブを閉めるようにしたことを特徴とするクリーンユニットの運転方法。
【請求項9】
上記アクティブ塵埃フィルターによりダスト微粒子を除去した後、作業室内に不活性ガスを導入して空気を置換するようにしたことを特徴とする請求項8記載のクリーンユニットの運転方法。
【請求項10】
クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットが複数連結された連結クリーンユニットにおいて、
少なくとも一つのクリーンユニットが、
循環型フィルターを有し、クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットであって、上記循環型フィルターのアクティブ塵埃フィルターの上下にゲートバルブが設けられていることを特徴とする連結クリーンユニット。
【請求項11】
エア循環機構を有する、クリーンな環境に維持することができる非真空のクリーン作業室であって、その内部における粒径0.01μm以上のダスト微粒子の総数が1個未満であることを特徴とするクリーン作業室。
【請求項12】
上記粒径0.01μm以上のダスト微粒子の総数が0.1個未満であることを特徴とする請求項11記載のクリーン作業室。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−187436(P2007−187436A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349015(P2006−349015)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【分割の表示】特願2006−80998(P2006−80998)の分割
【原出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【分割の表示】特願2006−80998(P2006−80998)の分割
【原出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】
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