説明

クルクミノイドを含む栄養組成物および製造方法

クルクミン、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミンの組合せを含む、脂肪、タンパク質および炭水化物を含む栄養組成物およびこの組成物を調製する方法が開示され、この組合せは、約0.7から約14のHLB値を有する極性油に可溶化され、ビスデメトキシクルクミン対クルクミンの重量比は約1:1から約1:7であり、ビスデメトキシクルクミン対デメトキシクルクミンの重量比は約1:1から約1:2.5である。この組成物は、改良された生物学的活性、生体利用能を有し、色の影響が低減されたクルクミノイドの選択された比を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年3月26日出願の米国仮出願番号第61/163,688号および第61/163,683号の優先権を主張するものであり、これらの開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、クルクミノイドと極性油との組合せを含む栄養組成物およびこのような組成物の作製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
クルクミノイドは、様々な医学的および栄養的適用のために長年研究されている。これらの研究の多くは、クルクミノイドが著しい抗酸化特性および抗炎症特性を有することができ、さらには特定の種類の癌の成長を抑制し得ることを示唆している。
【0004】
クルクミン、デメトキシクルクミン(DSMC)およびビスデメトキシクルクミン(BMC)などのクルクミノイドは、薬草クルクマ・ロンガ・リン(Curcuma longa Linn)の根茎に由来する使用頻度の高い周知の香辛料であるウコンにおいて一般に見出されるポリフェノールである。これらのクルクミノイドは、ウコンにその鮮黄色を付与するものであり、色を添加するために様々な栄養食品に少量で添加されることが多い。
【0005】
これらの天然抽出物に関連する健康上の利益を消費者に提供するのに十分高い濃度でクルクミノイドを含む栄養製品を配合するために、相当な研究が長年行われている。しかし、クルクミノイドにはいくつかの特徴があり、この特徴によってかかる製品へのクルクミノイドの配合が問題のあるものとなっている。クルクミノイドは、一般に、経口摂取した場合の生体利用能が低く、したがって所望の全身送達を達成するために、それらの固有の生体利用能の低さに対処するべく高濃度で配合すると、製品が強烈な黄色を呈することが多い。これは特に、水性エマルジョンおよび他の液体栄養製品において顕著である。
【0006】
さらに、クルクミノイドの溶解性プロファイルにより、栄養製品への配合、特に水性エマルジョンまたは液体の形態の栄養製品への配合が特に困難となる。クルクミノイドは、多くの栄養液体またはエマルジョンにとって一般的な、酸性から中性のpH範囲内の水性系への溶解性が低い。クルクミノイドは、ジメチルスルホキシド、アセトンおよびエタノールなどの担体には溶解するが、水性の栄養エマルジョンの配合に一般に使用される水および多くの種類の食用脂質への溶解性は低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、製品の色に対するクルクミノイドの影響を最小限に抑えると同時に、所望の生体利用能および生物活性を送達する経口上許容されるビヒクル中にクルクミノイドを含む水性および他の栄養組成物、ならびにこれらの組成物の調製方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
一実施形態は、クルクミン、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミンの組合せが、約0.7から約14のHLB値を有する極性油に可溶化されており、ビスデメトキシクルクミン対クルクミンの重量比が約1:1から約1:7であり、ビスデメトキシクルクミン対デメトキシクルクミンの重量比が約1:1から約1:2.5である、クルクミン、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミンの組合せを含む、脂肪、タンパク質および炭水化物を含む組成物を対象とする。
【0009】
別の一実施形態は、クルクミン、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミンの組合せを含む水性エマルジョンの形態の、脂肪、タンパク質および炭水化物を含む組成物を対象とし、この組合せは、約0.7から約14のHLB値を有する少なくとも1つの極性油を有する油相に可溶化されており、ビスデメトキシクルクミン対クルクミンの重量比は約1:1から約1:7であり、ビスデメトキシクルクミン対デメトキシクルクミンの重量比は約1:1から約1:2.5である。
【0010】
さらに別の実施形態は、(a)クルクミン、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミンを含むクルクミノイドを、約0.7から約14のHLBを有する極性油と組み合わせるステップ、(b)クルクミノイドと極性油との組合せを、極性油にクルクミノイドの一部分を可溶化させるのに十分な温度まで加熱するステップ、(c)加熱した組合せから、非可溶化クルクミノイド部分を除去して、約0.7から約14のHLBを有し、重量比約1:1から約1:7の可溶化ビスデメトキシクルクミンと可溶化クルクミンおよび重量比約1:1から約1:2.5のビスデメトキシクルクミンとデメトキシクルクミンを含む極性油を形成するステップ、次いで、(d)極性油と可溶化クルクミノイド部分との組合せを、脂肪、タンパク質および炭水化物と配合して、栄養組成物を形成するステップを含む、栄養組成物の生成方法を対象とする。
【0011】
ここで、クルクミノイドは、約0.7から約14のHLBを有する油(すなわち極性油)に選択的に可溶化させることができ、したがってこの油に可溶化させたクルクミノイドの結果として生じる分布は、天然のクルクミノイド供給源よりも生理活性が高く、良好な生体利用能を有することが見出された。さらに、極性油に可溶化させたクルクミノイドのこの新しい分布は、天然のクルクミノイドの分布よりも製品の色に対する影響が少なく、すなわち色単位当たりの生物活性およびまたは生体利用能が高い。この新しい分布は、最も一般的には、クルクミン、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミンを約10.7対2.6対1の重量比で含有するウコンなどの天然のクルクミノイド供給源に見出されるものとは著しく異なる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書の組成物および方法は、規定のHLB値を有する極性油に可溶化クルクミノイドの変化した分布を含む栄養組成物を対象とする。様々な実施形態におけるこれらおよび他の必須または任意の要素または特徴を、以下に詳説する。
【0013】
用語「栄養組成物」は、脂肪、タンパク質および炭水化物を含み、ヒトへの経口投与に適した参照材料を意味する。栄養組成物はさらに、ビタミン、ミネラルおよび他の成分を含むことができ、唯一の、主要な、または補足的な栄養供給源であってもよい。
【0014】
すべての百分率、部および比は、本明細書で使用される場合、別段特定されない限り全組成物の重量に対するものである。すべてのかかる重量は、列挙した成分にこれらが関する場合、活性なレベルを基にしており、したがって別段特定されない限り市販の材料に含まれ得る溶媒または副生成物を含まない。
【0015】
すべての数値範囲は、本明細書で使用される場合、用語「約」が明らかに先行しているか否かを問わず、別段指定されない限りこの用語が先行していることを企図し、またそのように理解される。
【0016】
本明細書の組成物および方法は、本明細書に記載の任意の場合による、または他の成分または特徴を含まなくてもよいが、残りの式は本明細書に記載の必須の成分または特徴を含有するものとする。この文脈では、用語「含まない」は、選択された組成物または方法が、機能的な量未満の、一般に0.1重量%未満の成分または特徴を含有する、または対象とすることを意味し、0重量パーセントのかかる成分または特徴を含むことも意味する。
【0017】
数値範囲は、本明細書で使用される場合、具体的に開示されているか否かを問わず、この範囲に含まれるすべての数および各数値の部分集合を含むことを企図する。さらにこれらの数値範囲は、この範囲内の任意の数または各数値の部分集合を対象とする特許請求の範囲を支持するものと解釈すべきである。例えば、1から10の開示は、2から8、3から7、5から6、1から9、3.6から4.6、3.5から9.9等の範囲を支持するものと解釈すべきである。
【0018】
本開示の単数の特徴または制限への任意の言及は、その言及がなされる文脈によって別段特定されない限り、またはそれに反することが明示されない限り、対応する複数の特徴または制限を含むものとし、その逆も同じである。
【0019】
方法または方法ステップの任意の組合せは、本明細書で使用される場合、その組合せが言及される文脈によって別段特定されない限り、またはそれに反することが明示されない限り、任意の順序で実施することができる。
【0020】
栄養組成物および方法は、本明細書に記載の開示の要素および特徴、ならびに本明細書に記載のまたはその他で栄養上の適用において有用な任意の追加のまたは場合による成分、構成成分または特徴を含み、それからなり、または本質的にそれからなることができる。
【0021】
製品の形態
栄養組成物は、任意の公知のまたはその他で適切な経口形態に配合し、投与することができる。固体、液体または粉末形態の組合せまたは変形形態を含む任意の固体、液体または粉末形態は、かかる形態によって、やはり本明細書に定義の必須成分を安全で有効に個体に経口送達することができるならば、本明細書における使用に適している。
【0022】
栄養組成物は、最も適切には、油中水エマルジョン、水中油エマルジョン、または複合の(例えば、油中水中油エマルジョン)もしくは他のエマルジョン系を含む水性エマルジョンとして配合される。本明細書の栄養組成物に適用する場合、栄養エマルジョンの実施形態は、最も一般的には、本明細書に記載のクルクミノイドおよび極性油成分を含む内部のまたは不連続の油相を含む水中油エマルジョンである。
【0023】
エマルジョンの実施形態には、1ミクロン超、および1.2ミクロンから5ミクロンを含む0.8ミクロンを超える液滴の平均直径を有する従来のエマルジョンが含まれる。
【0024】
極性油
栄養組成物は極性油を含み、この極性油は組成物中の全脂肪のすべてまたは一部であってよい。極性油は、最終的には適切な処理温度の場合による選択と共に、本明細書に記載の個々の有益な比のクルクミノイドの溶解にとって有利な選択されたHLB値によって定義される。
【0025】
HLB値は、材料が親水性およびまたは親油性である度合いの周知の測定値であり、化学分野または配合分野で周知のいくつかの方法のいずれか1つによって決定することができる。HLB値は、界面活性剤、乳化剤または類似の他の材料が、油または水への溶解性に有利となり得る相対的な程度を特徴付けるために使用されることが多い。より高いHLB値を有する材料は、水への溶解性に有利となる傾向があるのに対し、低いHLB値を有する材料は油への溶解性に有利となる傾向がある。
【0026】
クルクミノイドは特定の油に溶解することができ、溶解することによって、一般的な処理温度内で、クルクミノイドのより有益な分布または重量比をもたらすことが見出された。より具体的には、これらの特定の油(本明細書では「極性油」と呼ぶ)は、本明細書に記載の範囲内のHLB値を有する油であることが見出された。この範囲未満のHLB値を有する油は、クルクミノイドを十分に可溶化させないが、この範囲を超えるHLB値を有する油は、本明細書に定義の正常な処理温度内で、クルクミノイド分布が有益な範囲(クルクミノイド比について)より容易に超えてしまう。
【0027】
しかし、これらの極性油の多くは、クルクミノイド分布が望ましいクルクミノイド分布範囲を超え、クルクミノイドのすべてを100%溶解するのに十分高い温度で未だ処理され得ることに留意されたい。むしろ、組成物が極性油とクルクミノイドの組合せを含有するだけでは十分ではない。その代わり、この組合せは、本明細書に定義の所望のクルクミノイド比も含まなければならず、この比は、クルクミノイド抽出物を極性油に溶解させる間、処理温度を制御し、制限することによって最も容易に得られる。記載のクルクミノイド分布は、本発明のエマルジョンの実施形態の栄養組成物または油相中において見出すことができることにも留意されたい。油相については、栄養エマルジョンは、本明細書に記載の範囲内の全体のクルクミノイド分布を含有してもよく、または含有しなくてもよいが、栄養エマルジョンは、本明細書に定義の選択されたクルクミノイド分布を実際に含有する内部油相を含むものとする。
【0028】
本明細書における使用に適した極性油は、約1から約8、および約3から約7を含む約0.7から約14のHLB値を有する。これらの油、ならびに本明細書に記載の任意の他の栄養分の選択は、本組成物に適用される経口投与に適していなければならないことも理解されよう。
【0029】
適切な極性油の非限定的な例には、中鎖トリグリセリド(MCT)油が含まれる。本明細書で使用される場合、用語「中鎖トリグリセリド」、「中鎖トリグリセリド油」および「MCT油」は、交換可能に使用され、これにはC6−C12、より一般的にはC6−10脂肪酸のトリアシルグリセロールエステルが含まれる。異なる脂肪エステルの相対比は変わり得る。例えば、本明細書における使用にも適しているヤシ油に由来する市販のMCT油におけるこれらの脂肪酸の近似の比は、2(C6):55(C8):42(C10):1(C12)である。
【0030】
本組成物における使用に適した極性油の他の非限定的な例には、C4−C18脂肪酸、C6−C18モノグリセリド、C8−C18ジグリセリド、C4−C14トリグリセリド、およびそれらの混合物または異形が含まれる。適切な極性油のもう1つの例は、Datem(モノグリセリド(monglyceride)のジアセチル酒石(酸)エステル)である。しかし、こうした油はすべて、本明細書における極性油としての使用に有効な必須のHLB値も有していなければならないことは理解されよう。
【0031】
栄養組成物において使用される極性油の量は、溶解させるクルクミノイドの所望の量、溶解中に用いられる処理温度、および組成物中の他の成分の化学的性質を含むいくつかの因子に応じて変わる。しかし極性油は、最も一般的には、組成物の重量の約0.3%から約5%を含む約0.1%から約10%である。
【0032】
極性油は、組成物中の脂肪のすべてまたは一部であってよいが、最も一般的には、水中油エマルジョンの実施形態の油相中の全脂肪の重量または全脂肪の代替重量の約20%から約95%、および約50%から約90%を含む約10%から100%となる。
【0033】
クルクミノイド
栄養組成物は、クルクミン、デメトキシクルクミン(DMC)およびビスデメトキシクルクミン(BDMC)の組合せを含み、これらは組成物の極性油成分または極性油成分を含む油相に、選択された比で可溶化されている。
【0034】
本明細書の栄養組成物における個々のクルクミノイドの比は、クルクミノイドを含有する植物および天然抽出物に自然に見出される比とは異なっている。これらの新しい比は、それらの集団生物学的活性を最適化すると同時に、栄養組成物の色に対するそれらの集団的な影響を最小限に抑えるように設計されている。これらの新しい比には、約1:1から約1:7、および約1:3から約1:7を含む、約1:8を超えるビスデメトキシクルクミン対クルクミンの重量比、ならびに約1:1から約1:2、約1:1.5から約1:1.9を含む、約1:2.5を超えるビスデメトキシクルクミン対デメトキシクルクミンの重量比が含まれる。
【0035】
栄養組成物中の全クルクミノイド濃度は、栄養組成物の重量の約0.002%から約1.0%、約0.005%から約0.8%、また0.03%から約0.3%、および約0.1%から約0.25%を含む、少なくとも約0.001%からの範囲であってよい。
【0036】
用語「全クルクミノイド」は、本明細書で使用される場合、やはり組成物に配合され得る任意の他のクルクミノイドを除く、クルクミン、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミンの組合せの量または濃度を意味する。
【0037】
栄養組成物はさらに、様々な種類のクルクミノイドを含むことができるが、これらの組成物は、かかる他の種類のクルクミノイドを含まなくてもよい。これらの組成物は、非可溶化クルクミン、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミンを含む非可溶化クルクミノイドを含まなくてもよい。
【0038】
栄養組成物中の全クルクミノイド濃度は、最も適切には、組成物中の任意のおよびすべてのクルクミノイドの重量の約80%から約98%を含む約50%から100%である。換言すれば、栄養組成物中の唯一のクルクミノイドとして、可溶化クルクミン、可溶化デメトキシクルクミン、および可溶化ビスデメトキシクルクミンを有することが望ましい。
【0039】
栄養組成物中の3種の個々のクルクミノイドは、様々な物理的および生物学的活性を有し、これらの活性は周知であり、文献に報告されている。クルクミンは、例えば、本開示の栄養組成物におけるよりも、ウコンにおいて高い天然分布を有する。クルクミンはまた、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミンと比較して、より強烈な黄色を有し、代謝的な回収、微小管集合の阻害、および結腸癌細胞による取込みも低い。それに対してビスデメトキシクルクミンは、クルクミンまたはデメトキシクルクミンよりも代謝的な回収、微小管集合の阻害、および結腸癌細胞による取込みが高い。これらの公知のクルクミノイド特性のいくつかを、以下に概説する。
【0040】
【表1】

【0041】
用語「代謝的な回収」は、本明細書で使用される場合、身体によって実際に代謝される摂取クルクミノイドの百分率を指す。用語「微小管集合の阻害」は、本明細書で使用される場合、癌細胞の成長/進行率を低下させるクルクミノイドの能力を指す。用語「癌細胞による取込み」は、本明細書で使用される場合、癌細胞に侵入するクルクミノイドの能力を指す。これらの最後の2つの特徴、微小管集合の阻害および癌細胞による取込みは、癌細胞成長の進行を緩慢にする作用をし得るという点で、有利な特性である。
【0042】
つまり、本明細書に記載のこれらの個々のクルクミノイドの分布または重量比を最適化することによって、それらの生物学的活性を最大限にすると同時に、栄養製品に付与される望ましくない黄色の強度を低減することができる。
【0043】
主要栄養素
栄養組成物は、脂肪、タンパク質および炭水化物の主要栄養素を含む。公知の、またはその他で経口栄養製品における使用に適したかかる栄養分の任意の供給源も、かかる栄養分が組成物中の選択された成分と相溶性があり、脂肪成分が本明細書に記載の極性油を含むならば、本明細書における使用に適している。
【0044】
組成物中の各主要栄養素の濃度または量は、所期の使用者の栄養上の必要に応じて変わり得るが、かかる濃度または量は、最も一般的には、以下に具体化した範囲A−Fのいずれかに当てはまる。
【0045】
【表2】

【0046】
栄養組成物は、本明細書に記載の極性油成分を含む脂肪供給源を含む。極性油は、脂肪供給源のすべてまたはごく一部であってよい。極性油に加えて、使用に適した脂肪の非限定的な例には、ヤシ油、分留ヤシ油、大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油、ベニバナ油、高オレインベニバナ油、ヒマワリ油、高オレインヒマワリ油、パームおよびパーム核油、パームオレイン、キャノーラ油、魚油、綿実油、ならびにこれらの組合せが含まれる。用語「脂肪」は、本明細書で使用される場合、別段特定されない限り、固体または液体の脂肪および油の両方が含まれる。
【0047】
栄養組成物はまた、炭水化物の供給源を含む。適切な炭水化物の非限定的な例には、加水分解または加工デンプンまたはコーンスターチ、グルコースポリマー、トウモロコシシロップ、トウモロコシシロップの固体、コメ由来の炭水化物、グルコース、フルクトース、ラクトース、高フルクトーストウモロコシシロップ、難消化性オリゴ糖(例えば、フラクトオリゴ糖)、蜂蜜、糖アルコール(例えば、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール)、およびこれらの組合せが含まれる。
【0048】
栄養組成物はまた、タンパク質供給源を含む。適切なタンパク質供給源の非限定的な例には、加水分解型、部分加水分解型、または非加水分解型タンパク質またはタンパク質供給源が含まれ、それらは、乳(例えば、カゼイン、乳清)、動物(例えば、肉、魚)、穀類(例えば、コメ、トウモロコシ)、野菜(例えば、大豆)、またはこれらの組合せなどの任意の公知のまたはその他で適切な供給源由来のものであってよい。かかるタンパク質の非限定的な例には、乳タンパク質分離物、カゼインタンパク質分離物、乳タンパク質濃縮物、全牛乳、部分的にまたは完全に脱脂した乳、大豆タンパク質分離物等が含まれる。
【0049】
任意成分
栄養組成物はさらに、製品の物理的、化学的、審美的もしくは処理的な特徴を改変することができ、または標的集団において使用される場合には医薬品用の成分もしくは追加の栄養成分として働くことができる場合による他の成分を含むことができる。多くのかかる場合による成分は公知であり、またはその他で栄養製品における使用に適しており、かかる場合による成分が投与にとって安全で有効であり、組成物中の必須成分および他の選択された成分と相容性があるならば、本明細書の組成物において使用することができる。
【0050】
このような他の任意成分の非限定的な例には、保存剤、抗酸化剤、緩衝液、医薬品用活性剤(active)、甘味剤、着色剤、香味剤、香味増強剤、増粘剤および安定剤、乳化剤、滑沢剤等が含まれる。
【0051】
栄養組成物はさらに、1つまたは複数のミネラルを含むことができ、その非限定的な例には、リン、ナトリウム、塩化物、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、ヨウ素、カルシウム、カリウム、クロム、モリブデン、セレン、およびこれらの組合せが含まれる。
【0052】
栄養組成物はまた、1つまたは複数のビタミンを含むことができ、その非限定的な例には、カロテノイド(例えば、β−カロテン、ゼアキサンチン、ルテイン、リコペン)、ビオチン、コリン、イノシトール、葉酸、パントテン酸、コリン、ビタミンA、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、ピリドキシン(ビタミンB6)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、およびこれらの様々な塩、エステルまたは他の誘導体、ならびにこれらの組合せが含まれる。
【0053】
製造方法
栄養組成物は、本明細書の方法に従って調製することができ、または個々の構成成分、成分および/もしくは特徴を、最終的な栄養製品にまとめ上げるための任意の公知のもしくはその他で適切な技術によって調製することができる。
【0054】
組成物を調製する方法は、以下の、
(a)クルクミン、デメトキシクルクミン(DMC)およびビスデメトキシクルクミン(BDMC)を含むクルクミノイドを、本明細書に定義の極性油と組み合わせるステップ、
(b)クルクミノイドと極性油との組合せを、極性油中のクルクミノイドのすべてではないが一部分を可溶化させるのに十分な温度に加熱するステップ(加熱して得られる組合せは、可溶化クルクミノイドおよび非可溶化クルクミノイドを含む)、
(c)この組合せから、非可溶化クルクミノイド部分の少なくとも一部、最も一般的には、約75重量%から約100重量%、および80重量%から95重量%を含む、約25重量%から100重量%除去して、極性油ならびに可溶化クルクミン、可溶化デメトキシクルクミンおよび可溶化ビスデメトキシクルクミンを本明細書に定義の重量比以内で含む溶液を形成するステップ、
(d)極性油および可溶化クルクミノイドを含む溶液を、本明細書に定義の栄養組成物に導入、添加またはその他の方法で配合するステップを含むことができる。
【0055】
この方法のステップ(a)によれば、極性油は、単独で、または他の油と組み合わせて使用することができる。しかし、他の油と併用する場合、かかる組合せは、この方法の最中にクルクミノイドの少なくとも一部分を、本明細書に定義の相対的なクルクミノイド重量比以内まで最終的に可溶化できなければならない。
【0056】
またこの方法のステップ(a)によれば、ステップ(b)の加熱の前に、クルクミノイドと極性油との得られた組合せは、クルクミノイドを約0.4重量%から約5重量%、また約1.5重量%から約3.5重量%を含む、約0.25重量%から約17重量%含むことができる。
【0057】
またステップ(a)によれば、クルクミノイドの組合せは、ウコンまたは他の天然クルクミノイド供給源由来の天然抽出物の形態であってよく、したがって、クルクミン、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミン以外の他のクルクミノイドをさらに含むことができる。
【0058】
この方法のステップ(b)によれば、クルクミノイドと極性油との組合せは、クルクミノイドのすべてではないが所望の一部分を可溶化するのに十分な温度および時間で加熱される。しかし、加熱によってクルクミノイドの一部分の溶解が可能になるならば、極性油は、クルクミノイド供給源の添加の前、最中またはその後に加熱し得ることを理解されたい。油の温度は、約20℃から約75℃、また約40℃から約65℃を含む、最大約90℃の範囲であってよい。約55℃の油の温度が非常に有効である。
【0059】
可溶性部分内の個々の可溶化クルクミノイドの分布(すなわち相対的な重量比)は、ステップ(b)の極性油の温度を調節することによってさらに変更することができる。換言すれば、極性油におけるクルクミン、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミンは異なる溶解性プロファイルを有するためにより、ステップ(b)の温度は、極性油中の可溶化クルクミノイドの所望の比を変更し、達成するように選択することができる。例えば組成物中の主なクルクミノイドであるクルクミンは、95℃未満の温度のMCT油にそれほど溶解できないが、ここで極性油における完全なクルクミノイドの溶解性は、特に極性油が約163℃のMCT油を含む場合に達成されると予測される。
【0060】
代謝的な回収、微小管タンパク質集合の阻害、および癌細胞による取込みなどの栄養組成物の望ましい特性に対する最も高い効率(すなわち、色単位当たりの特性または活性)は約55℃で達成され、この温度で栄養組成物中のビスデメトキシクルクミンを最も濃縮することができる。したがって、最終的な栄養組成物におけるクルクミノイドの最適な溶解性と効率の平衡を保って、クルクミノイドと極性油との組合せを本明細書の方法で加熱する温度を決定する。
【0061】
この方法のステップ(c)によれば、クルクミノイドと極性油との組合せを十分に加熱し、可溶化させると、この組合せの非可溶化クルクミノイド部分は極性油組成物から除去され、または他の方法で分離される。非可溶化部分は、非可溶化固体を油から除去するための任意の公知の、またはその他で適切な技術を使用して、極性油組成物から除去または分離することができる。例えば、非可溶化部分は、遠心分離または濾過を使用して除去することができる。より具体的には、一実施形態では、非可溶化部分は、約15℃から約90℃の温度を維持できる温度制御能を有するサーモスタット付き(thermostatted)遠心分離機を使用して除去することができる。
【0062】
この方法はさらに、可溶化クルクミノイド部分を、脂肪、タンパク質および炭水化物を含む栄養組成物に配合するステップを含むことができる。これは、栄養水性エマルジョンを含む栄養組成物に脂肪を添加するための任意の公知の、またはその他で適切な方法によって達成することができる。成分が組み合わさると、これらの成分は適切な装置に移され、安定な水中油エマルジョンを形成するためにホモジナイズされることが多い。
【0063】
先の方法は、栄養組成物について本明細書に記載の他の配合または他の特徴の任意の1つまたは複数を含むことができる。
【実施例】
【0064】
以下の例は、栄養組成物およびまたは方法の具体的な実施形態およびまたは特徴を例示するものである。これらの例は、その多くの変形形態が本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく可能であるため、単に例示目的で提供されるものであり、限定的なものと解釈されるべきではない。
【0065】
(実施例1)
NEOBEE(登録商標)1053(イリノイ州ノースフィールド、Stepan Company製のMCT油)中、CURCUMIN C3 COMPLEX(登録商標)(ユタ州ペイスン、Sabinsa Corporation)を2.4重量%含む懸濁液を調製する。懸濁液を55℃から165℃の温度に加熱し、その間に温度をそれぞれ55℃、65℃、75℃、85℃、95℃および165℃で約2分間維持する。2分間の定常温度のそれぞれの懸濁液から一定分量を採取し、15,000×gで5分間遠心分離機にかけることによって、懸濁液から非可溶化固体を除去する。ここで遠心分離機にかけた一定分量は、可溶化クルクミノイドを含む溶液であり、これをジメチルスルホキシドで2:100の体積比に希釈し、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してクルクミノイド含量について試験する。結果を以下に概説する。
【0066】
【表3】

【0067】
先の表は、油の温度の関数として、0.7および11の間のHLB値を有する油(例えば、1.4のHLB値を有するMCT油)と組み合わせた場合の、CURCUMIN C3 COMPLEX(登録商標)におけるクルクミノイド比が変化する程度を例示するものである。一定分量FおよびGは、本明細書に定義の有益な範囲を超えてクルクミノイドを可溶化させた。しかし、得られた一定分量A−Eのそれぞれは、必須のクルクミノイド比以内であり、したがってBDMC対DMCおよびBDMC対クルクミンの相対的な量の増大にとって有利な溶解性の変化により、生物活性および生体利用能を増大する。同時に、得られた溶液A−Eのそれぞれは、色味に乏しいBDMCにとって有利な可溶性の変化により、色の影響も低減する(すなわち、色単位当たりの生物活性の増大)。生物活性、生体利用能および色の影響にとって最も適したクルクミノイド比は、約55℃で生じる。
【0068】
(実施例2−5)
実施例2−5は、水中油エマルジョンとして配合した本開示の栄養組成物を例示するものである。各例示的な組成物の成分を、以下の表に記載する。すべての成分量は、別段特定されない限り製品の1000kgバッチ当たりのkgとして列挙する。
【0069】
【表4】

【0070】
例示した例において使用するクルクミノイドブレンドは、可溶化クルクミン、デメトキシクルクミン(DMC)およびビスデメトキシクルクミン(BDMC)を含み、非可溶化クルクミノイドは含まない。
【0071】
クルクミノイドブレンドは、まず、粉末形態のCURCUMIN C3 COMPLEX(登録商標)(ユタ州ペイスン、Sabinsa Corporation)を、極性油(NEOBEE(登録商標)1053)と合せることによって調製する。最初の組合せは、CURCUMIN C3 COMPLEXを0.25重量%から17重量%含む。次いで、最初の組合せを所望の温度(22℃、55℃、65℃または75℃)に加熱して、クルクミノイドの一部分を極性油に可溶化させるが、ここで加熱して得られる組合せは、可溶化クルクミノイドおよび非可溶化クルクミノイドを含む。次いで、非可溶化クルクミノイドまたは固体を、加熱した組合せから遠心分離によって除去して、この組合せから、極性油、ならびに可溶化クルクミン、可溶化デメトキシクルクミンおよび可溶化ビスデメトキシクルクミンを含む溶液を形成するが、ここで可溶化ビスデメトキシクルクミン対可溶化デメトキシクルクミンの重量比は1:1および1:2.5の間であり、可溶化ビスデメトキシクルクミン対クルクミンの重量比は1:1および1:7の間である。実施例2−5で使用したクルクミノイドブレンドのそれぞれは、実施例1に記載した、対応する実施例1の一定分量について記載のBDMC対DMCおよびBDMC対クルクミン比を有する。
【0072】
実施例2−5に記載の栄養エマルジョンのそれぞれは、本明細書に記載の方法に従って調製することができる。一般に、クルクミノイドブレンドを調製したら(前述の通り)、異なる成分の必要に応じて少なくとも3つの別個のスラリー(先のクルクミノイドブレンドを含む、炭水化物−ミネラルスラリー、タンパク質スラリー、脂肪スラリー)を形成することによって、クルクミノイドブレンドおよび他の成分を所望の栄養に配合し、次いで様々なスラリーを一緒に混合し、加熱処理し、得られたブレンドをホモジナイズし、次いで標準化することができる。次いで、得られた組成物を香味付けし、瓶に無菌でパッケージし、またはレトルト無菌化する。
【0073】
得られた栄養エマルジョンは、クルクミノイドブレンドの色の影響を最小限に有する水中油エマルジョンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クルクミン、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミンの組合せが、約0.7から約14のHLB値を有する極性油に可溶化されており、ビスデメトキシクルクミン対クルクミンの重量比が約1:1から約1:7であり、ビスデメトキシクルクミン対デメトキシクルクミンの重量比が約1:1から約1:2.5である、クルクミン、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミンの組合せを含む、脂肪、タンパク質および炭水化物を含む組成物。
【請求項2】
極性油が、約1から約8のHLB値を有し、組成物中の脂肪の約10重量%から100重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
水性エマルジョンである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
クルクミン、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミンの組合せが、組成物の約0.002重量%から約1.0重量%である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
極性油が中鎖トリグリセリド油を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
中鎖トリグリセリド油を約0.1重量%から約17重量%含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
ビスデメトキシクルクミン対クルクミンの重量比が約1:3から約1:7である、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
ビスデメトキシクルクミン対デメトキシクルクミンの重量比が約1:1から約1:2.0である、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
非可溶化クルクミン、非可溶化デメトキシクルクミン、および非可溶化ビスデメトキシクルクミンを含まない、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミンおよびクルクミン以外のクルクミノイドを含まない、請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
(a)クルクミン、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミンを含むクルクミノイドを、約0.7から約14のHLBを有する極性油と組み合わせるステップ、
(b)クルクミノイドと極性油との組合せを、極性油にクルクミノイドの一部分を可溶化させるのに十分な温度に加熱するステップ、
(c)加熱した組合せから、非可溶化クルクミノイド部分を除去して、重量比約1:1から約1:7の可溶化ビスデメトキシクルクミンと可溶化クルクミンおよび重量比約1:1から約1:2.5のビスデメトキシクルクミンとデメトキシクルクミンを含む極性油を形成するステップ、次いで
(d)極性油と可溶化クルクミノイド部分との組合せを、脂肪、タンパク質および炭水化物と配合して、栄養組成物を形成するステップ
を含む、栄養組成物の生成方法。
【請求項12】
クルクミノイドと極性油との組合せが、約20℃から約90℃の温度に加熱される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
クルクミノイドと極性油との組合せが、約40℃から約65℃の温度に加熱される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
極性油が約1から約8のHLBを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
極性油が中鎖トリグリセリド油である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
クルクミノイドと極性油との組合せが、クルクミノイドを約0.4重量%から約17重量%含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
極性油が、約1から約8のHLB値を有し、組成物中の脂肪の約10重量%から100重量%である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
組成物が、中鎖トリグリセリド油を約0.1重量%から約5重量%含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
ビスデメトキシクルクミン対クルクミンの重量比が約1:3から約1:7である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
ビスデメトキシクルクミン対デメトキシクルクミンの重量比が約1:1から約1:2.0である、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2012−521431(P2012−521431A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502100(P2012−502100)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/027477
【国際公開番号】WO2010/111070
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】