説明

クレアチンキナーゼ活性測定用試薬

【課題】CK(クレアチンキナーゼ)は、二つのサブユニットからなる二量体のリン酸化酵素であり、二種類のサブユニットの組み合せによって三種類のアイソザイムが存在する。心筋梗塞や筋ジストロフィーなどの疾患によって疾患の原因部位に存在するCKアイソザイムが血液中に逸脱するため、臨床検査において血清や血漿などの試料に含まれるCKの活性値は疾患を診断する際の重要な指標となる試薬溶液中のCK活性化剤の劣化を抑えることのできる物質を含有するCK活性測定用試薬を提供する。
【解決手段】アミノメタンスルホン酸と、CK活性化剤とを含有するCK活性測定用試薬を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に含まれるクレアチンキナーゼ(以下、CKとする)の活性を測定するための試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
CKは、二つのサブユニットからなる二量体のリン酸化酵素である。CKのサブユニットにはB型(脳型)及びM型(筋型)の二種類が存在する。CKには、二種類のサブユニットの組み合わせによって三種類のアイソザイム(CK−MM、CK−MB及びCK−BB)が存在する。CK−MMは骨格筋に多く含まれ、CK−MBは心筋に多く含まれ、CK−BBは脳に多く含まれる。心筋梗塞や筋ジストロフィーなどの疾患によって疾患の原因部位に存在するCKアイソザイムが血液中に逸脱するため、臨床検査において血清や血漿などの試料に含まれるCKの活性値は上記疾患を診断する際の重要な指標となる。
【0003】
CKは血液中で不活性化されるため、生体から採取した試料にCK活性化剤を添加してCKを活性化した後、活性測定を行なう。従って、CK活性測定用試薬には、CK活性化剤としてN−アセチル−L−システイン(以下、NACとする)やチオグリセロールなどのSH基を有する化合物(以下、SH化合物とする)が含有されている。
【0004】
CK活性化剤は不安定な物質であり、不純物として試薬に含まれる銅や鉄などの金属イオンの影響により、CK活性化剤のSH基が試薬保存中に徐々に酸化されてジスルフィド基となってしまう。分子中のSH基がジスルフィド基となったCK活性化剤(劣化したCK活性化剤)は、CKを活性化する作用を失う。このため、日本臨床化学界による勧告法(非特許文献1)は、CK活性化剤の劣化を防ぎ、安定化させるために、CK活性化剤の劣化の原因となる金属イオンをキレートするエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を試薬に含有させることを推奨している。
【0005】
しかしながら、EDTAによるCK活性化剤の安定化効果は不十分であり、長期保存した試薬を用いると測定用試料中のCKを充分に活性化することができず、正確な測定を行えないことがある。
【非特許文献1】日本臨床化学会「臨床化学」第33巻補冊1号(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、長期保存後でも正確な測定を行うことができるCK活性測定用試薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アミノメタンスルホン酸と、CK活性化剤とを含有するクレアチンキナーゼ活性測定用試薬を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、長期保存後でも正確な測定を行うことができるCK活性測定用試薬が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本実施形態のCK活性測定用試薬は、アミノメタンスルホン酸とCK活性化剤とを含有する。試薬中のアミノメタンスルホン酸の濃度としてはCK活性化剤を安定化させることができる濃度であれば特に限定されない。
本明細書におけるアミノメタンスルホン酸は、アミノメタンスルホン酸塩をも含む。アミノメタンスルホン酸塩としては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩(メチルアミン、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、トリエチルアミンなどのアミンとの塩を含む)などが挙げられる。
【0010】
CK活性化剤としては、試料中のCKを活性化する作用を有していれば特に限定されず、例えば、NAC、N−グアニル−L−システイン、システアミン、ジチオスレイトール(DTT)、システイン、グルタチオン、メルカプトコハク酸、チオグルコース、ジチオエリスリトール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、臭化2−アミノエチルイソチオウロニウム、2−メルカプトエタンスルホン酸、チオグリセロールなどのSH化合物を用いることができる。これらのCK活性化剤は、二種類以上を組み合わせて用いてもよいが、単独で用いることが好ましい。試料と試薬とを混合した反応液中のCK活性化剤の濃度(終濃度)は、0.1〜200mM、好ましくは10〜100mMである。
【0011】
CK活性測定用試薬の溶液状態におけるpHとしては特に限定されないが、5.0〜11.0であることが好ましい。pHを維持するために、試薬に緩衝剤を含有させることが好ましい。緩衝剤としては、例えばトリス−塩酸緩衝剤、イミダゾール−酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、リンゴ酸緩衝剤、シュウ酸緩衝剤、フタル酸緩衝剤、グリシン緩衝剤、酢酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、グッド緩衝剤などを用いることができる。
【0012】
CK活性測定用試薬には、グルコース−6−リン酸脱水素酵素(G6PDH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、ヘキソキナーゼ(HK)又はグルコキナーゼ(GK)、グルコース、アデノシン二リン酸(ADP)及びクレアチンリン酸を含有させることが好ましい。
【0013】
CK活性測定用試薬は、各成分を凍結乾燥させた状態でも、溶媒に溶解させた溶液状態であってもよい。
また、CK活性測定用試薬は第一試薬及び第二試薬の二試薬からなることが好ましい。この場合、第一試薬及び/又は第二試薬が凍結乾燥した状態であってもよく、両方の試薬が溶液状態であってもよい。
【0014】
CK活性測定用試薬が第一試薬と第二試薬とからなる場合、第一試薬にG6PDH、NAD又はNADP、ヘキソキナーゼ(HK)又はグルコキナーゼ(GK)、グルコース、アデノシン二リン酸(ADP)及びCK活性化剤を含有させ、第二試薬にクレアチンリン酸を含有させることが好ましい。
【0015】
G6PDH、HK及びGKとしては、その由来は特に限定されず、バクテリア、酵母、動植物などに由来するもの、又は遺伝子組み換え技術を用いて生成されたものを用いることができる。G6PDHの終濃度は、0.5〜40U/ml、好ましくは1〜10U/mlである。HK又はGKの終濃度は、0.5〜20U/ml、好ましくは1〜6U/mlである。
【0016】
CK活性測定用試薬には、EDTA、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、シクロヘキシルジアミン四酢酸(CyDTA)などのキレート剤を含有させることができる。CK活性測定用試薬が第一試薬と第二試薬とからなる場合、キレート剤は第一試薬に含有させることが好ましい。キレート剤は、CK活性化剤の劣化の原因となる試薬中の金属イオンをキレートすることによりCK活性化剤の劣化を抑制する効果を有する。
【0017】
アミノメタンスルホン酸は、第一試薬及び第二試薬の何れに含まれていてもよく、両方に含まれていてもよい。また、第一試薬及び第二試薬の他にアミノメタンスルホン酸を含む第三試薬を調製し、測定前にこれらを混合してもよい。アミノメタンスルホン酸は、CK活性化剤と接触させることにより、劣化したCK活性化剤のジスルフィド基をSH基に戻す作用があると考えられる。また、アミノメタンスルホン酸にはこのような作用だけでなく、CK活性化剤のSH基がジスルフィド基となるのを防ぐ作用もあると考えられる。
【0018】
アミノメタンスルホン酸を第一試薬に添加した場合、長期保存によるSH化合物の劣化を抑制し、SH化合物を安定化することができる。アミノメタンスルホン酸を第二試薬に添加した場合、長期保存により劣化してCK活性化作用を失ったSH化合物を、劣化前の状態(CKを活性化できる状態)に戻すことができる。このため、アミノメタンスルホン酸を第一試薬又は第二試薬に添加することにより、長期保存した試薬を用いても正確なCK活性の測定を行うことができる。
【0019】
本実施形態のCK活性測定用試薬の測定対象となるのは、試料に含まれる全てのCKの活性、CK−MMの活性、CK−MBの活性及びCK−BBの活性の何れかである。一般的に臨床検査では、試料中の全てのCKの活性又はCK−MBの活性が測定される。CK活性測定用試薬に、CKのM型サブユニットに特異的に結合する抗体(以下、抗CK−M抗体とする)を含有させることにより、試料中のCK−MBの活性を測定することが可能となる(Wurzburg et al., 1977, J. Clin. Chem. Clin. Biochem., 15:131-135)。抗CK−M抗体としては、M型サブユニットを特異的に認識する抗体であればポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の何れでもよく、これらを混合して用いてもよい。また、抗体のフラグメント及びその誘導体を用いることもできる。抗体のフラグメント及びその誘導体としては、具体的にはFab,Fab’,F(ab)及びsFvフラグメントなど(Blazar et al., 1997, J. Immunol., 159: 5821-5833及びBird et al., 1988, Science, 242: 423-426)が例示される。抗体のサブクラスはIgGに限定されず、IgMなどでもよい。
【0020】
測定に供される試料としては、例えば、血清、血漿、血液、髄液、尿、精液などを用いることができるが、血漿又は血清を用いることが好ましい。
【0021】
以下、CK活性測定に用いられる反応系の一例を図1に基づいて説明する。
CKを含む試料に上記成分を含むCK活性測定用試薬を添加することにより、図1に示すような反応系が構築される。図1において、CK活性化剤によって活性化されたCKは、クレアチンリン酸及びADPからクレアチン及びATPを生成する反応を触媒する(反応1)。試薬に含まれるHK又はGKは、試薬に含まれるグルコース及び反応1で生成したATPからグルコース−6−リン酸(G6P)及びADPを生成させる(反応2)。さらに試薬に含まれるG6PDHは、反応2で生成したG6P及びNAD又はNADPから6−ホスホ−D−グルコン酸及びNADH又はNADPHを生成させる(反応3)。NADH又はNADPHが生成すると、試料と試薬との混合液の波長340nm付近での吸光度が上昇する。この吸光度の上昇をモニターすることにより、試料中のCKの活性を測定することができる。
【0022】
CK活性測定用試薬にマグネシウムイオンを含有させることが好ましい。試薬にマグネシウム塩を添加することによってマグネシウムイオンを含有させることができる。マグネシウム塩としては、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどを用いることができる。
【0023】
防腐剤や界面活性作用を有する化合物を試薬に添加してもよい。防腐剤としては、例えばアジ化ナトリウムなどを用いることができる。界面活性作用を有する化合物としては、例えば非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、アルブミンなどを用いることができ、具体的にはトライトン類(Union Carbide Chemicals and Plastics Co.の登録商標)、エマルゲン類(花王(株)の登録商標)、BSAなどを用いることができる。
【0024】
試料にはアデニレートキナーゼが含まれていることがある。アデニレートキナーゼは特に溶血試料に多く含まれており、CKの活性測定に悪影響を及ぼす。この悪影響を回避するため、試薬にアデニレートキナーゼの作用を阻害する阻害剤を加えることが好ましい。阻害剤の種類としてはアデニレートキナーゼの作用を阻害するものであれば特に限定されないが、例えばアデノシン一リン酸(AMP)やP1P5ジアデノシン−5’−ペンタリン酸(AP5A)などを用いることができる。
【0025】
さらに、ダブルカイネティック法で活性測定することによりアデニレートキナーゼなどの酵素の悪影響を回避することも可能である。ダブルカイネティック法では、先ずアデニレートキナーゼなどの酵素の活性を測定し、その後クレアチンリン酸を添加し、CKによる酵素反応を開始させて試料に含まれるキナーゼの活性(CKの活性とアデニレートキナーゼなどの酵素の活性との和)を測定する。これらの測定結果の差がCKの活性値となる。
【0026】
(実施例1)
以下にCK活性測定用第一試薬及び第二試薬の基本組成を示す。
<第一試薬>pH6.6
イミダゾール 125mM
酢酸マグネシウム 12.5mM
CyDTA 2.0mM
ADP 2.5mM
AMP 6.25mM
AP5A 12.5μM
グルコース 25mM
NADP 2.5mM
G6PDH 1875U/L
ヘキソキナーゼ 3750U/L
NAC 30mM
<第二試薬A>pH9.0
クレアチンリン酸 150mM
【0027】
上記物質を上記濃度となるよう精製水に溶解し、第一試薬及び第二試薬Aを調製した。次に、第二試薬Aにアミノメタンスルホン酸を5mM添加して第二試薬Bを調製した。第二試薬Aにアミノメタンスルホン酸を10mM添加して第二試薬Cを調製した。第二試薬Aにアミノメタンスルホン酸を20mM添加して第二試薬Dを調製した。また、第二試薬Aと同じ組成の第二試薬Eを調製した。
【0028】
上記第一試薬及び第二試薬A〜Dを4℃で4ヶ月間保存した。保存後、日立7170S形自動分析装置を用いて第一試薬180μlと、第二試薬45μlと、試料として酵素キャリブレーター(シスメックス製)5.6μlとを混合し、340nmにおける吸光度変化量を測定した。また、第一試薬及び第二試薬Eは4℃4ヶ月の長期保存を行わず、試薬調製直後に上記試料のCK活性を測定した。測定は二回行い、測定結果の平均値を下記表1に示した。表1に示す値は吸光度変化量を10000倍した値である。
【0029】
【表1】

【0030】
長期保存後の第二試薬Aを用いた場合の吸光度変化量測定値(以下、単に測定値ともいう)よりも、アミノメタンスルホン酸を含む長期保存後の第二試薬B〜Cを用いた場合の測定値の方が、第二試薬Eを用いた場合の測定値に近い値を示した。
【0031】
これは、長期保存によって劣化したNACとアミノメタンスルホン酸とを接触させたためにNACが劣化前の状態に戻り、CKを充分に活性化できたことを示す。以上より、アミノメタンスルホン酸を添加した試薬を用いることにより長期保存後の試薬を用いても試料中のCKの活性を正確に測定できることが判った。
【0032】
(実施例2)
以下にCK活性測定用第一試薬及び第二試薬の基本組成を示す。
<第一試薬A>pH6.6
イミダゾール 125mM
酢酸マグネシウム 12.5mM
CyDTA 2.0mM
ADP 2.5mM
AMP 6.25mM
AP5A 12.5μM
グルコース 30mM
NADP 2.5mM
G6PDH 1875U/L
ヘキソキナーゼ 3750U/L
NAC 30mM
<第二試薬>pH9.0
クレアチンリン酸 150mM
【0033】
上記物質を上記濃度となるよう精製水に溶解し、第一試薬A及び第二試薬を調製した。次に、第一試薬Aにアミノメタンスルホン酸1mMを添加して第一試薬Bを調製した。第一試薬Aにアミノメタンスルホン酸2mMを添加して第一試薬Cを調製した。
【0034】
上記第一試薬A〜C及び第二試薬を4℃で1ヶ月間保存した。保存後、日立7170S形自動分析装置を用いて第一試薬180μlと、第二試薬45μlと、試料として酵素キャリブレータープラス(シスメックス製)5.6μlとを混合し、340nmにおける吸光度変化量を測定した。測定は二回行い、測定結果の平均値を下記表2に示した。表2に示す値は吸光度変化量を10000倍した値である。
【0035】
【表2】

【0036】
長期保存後の第一試薬Aよりも、アミノメタンスルホン酸を含む長期保存後の第一試薬B及びCを用いた方が高い測定値を示した。
【0037】
これは、アミノメタンスルホン酸とNACとを共存させることにより長期保存によるNACの劣化を抑制することができ、試料中のCKを充分に活性化できたことを示す。以上より、アミノメタンスルホン酸を添加した試薬を用いることにより試薬の長期保存後でもCKの活性を正確に測定できることが判った。
【0038】
(実施例3)
NAC以外のSH化合物を含むCK活性測定用試薬を用いて、アミノメタンスルホン酸によるSH化合物の安定性を評価した。
【0039】
下記に示す物質を下記濃度となるよう精製水に溶解した。
イミダゾール 125mM
酢酸マグネシウム 12.5mM
EDTA 2.5mM
ADP 2.5mM
AMP 6.25mM
AP5A 12.5μM
グルコース 30mM
NADP 2.5mM
G6PDH 1875U/L
ヘキソキナーゼ 3750U/L
なお、pHは6.6に調整した。
【0040】
上記組成に、CK活性化剤として、システアミン、ジチオスレイトール(DTT)、システイン、グルタチオン及びチオグリセロールの何れかを30mMとアミノメタンスルホン酸10mMとを添加した五種類の第一試薬を調製した。また、CK活性化剤として、システアミン、DTT、システイン、グルタチオン及びチオグリセロールの何れかを30mMを添加し、アミノメタンスルホン酸を添加せずにさらに五種類の第一試薬を調製した。これら十種類の試薬に対して37℃で5日間温度負荷をかけた後、試薬中のSH基の定量を行なった。
【0041】
また、CK活性化剤として、システアミン、DTT、システイン、グルタチオン及びチオグリセロールの何れかを30mMを添加し、アミノメタンスルホン酸を添加せずに五種類の第一試薬を調製し、温度負荷をかけずに試薬中のSH基の定量を行った。
【0042】
SH基の定量は、DTNB(5,5'-dithiobis(2-nitrobenzoic acid))を用いて行なった。試薬にDTNBを添加すると、SH化合物が存在する場合はSH化合物のSH基の量に相当する量のジスルフィド結合が切れて5-Mercapto-2-nitrobenzoic acidが生じる。5-Mercapto-2-nitrobenzoic acidが生じると、波長412nmにおける吸光度が上昇するため、これを測定することにより試薬中のSH基の定量を行った。定量結果を下記表3に示す。定量結果は、アミノメタンスルホン酸を添加せずに調製した第一試薬を用いて温度負荷をかけずに定量したSH基の量に対する百分率である。
【0043】
【表3】

【0044】
何れのCK活性化剤を用いても、アミノメタンスルホン酸無添加の第一試薬よりもアミノメタンスルホン酸を添加した第一試薬の方が、温度負荷後のSH基の残存量が多かった。これは、何れのCK活性化剤であってもアミノメタンスルホン酸の添加によって劣化を抑制できたことを示す。従って、アミノメタンスルホン酸は、様々なCK活性化剤の保存安定性を向上できることが判明した。
【0045】
以上より、アミノメタンスルホン酸を第一試薬及び第二試薬の何れかに含有させることによって、試薬を長期保存した後でも正確にCK活性を測定することができた。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】CK活性測定の反応系を示した模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノメタンスルホン酸と、クレアチンキナーゼ活性化剤とを含有するクレアチンキナーゼ活性測定用試薬。
【請求項2】
前記クレアチンキナーゼ活性化剤が、N−アセチル−L−システイン(NAC)、N−グアニル−L−システイン、システアミン、ジチオスレイトール(DTT)、システイン、グルタチオン、メルカプトコハク酸、チオグルコース、ジチオエリスリトール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、臭化2−アミノエチルイソチオウロニウム、2−メルカプトエタンスルホン酸及びチオグリセロールからなる群より選択される少なくとも一つである請求項1記載のクレアチンキナーゼ活性測定用試薬。
【請求項3】
グルコース−6−リン酸脱水素酵素(G6PDH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、ヘキソキナーゼ又はグルコキナーゼ、グルコース、アデノシン二リン酸(ADP)及びクレアチンリン酸からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物をさらに含有する請求項1又は2記載のクレアチンキナーゼ活性測定用試薬。
【請求項4】
クレアチンキナーゼのM型サブユニットに特異的に結合する抗体をさらに含有する請求項1〜3の何れかに記載のクレアチンキナーゼ活性測定用試薬。
【請求項5】
クレアチンキナーゼ活性化剤、グルコース−6−リン酸脱水素酵素(G6PDH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、ヘキソキナーゼ又はグルコキナーゼ、グルコース及びアデノシン二リン酸(ADP)を含有する第一試薬と、アミノメタンスルホン酸及びクレアチンリン酸を含有する第二試薬とからなるクレアチンキナーゼ活性測定用試薬キット。
【請求項6】
アミノメタンスルホン酸、クレアチンキナーゼ活性化剤、グルコース−6−リン酸脱水素酵素(G6PDH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、ヘキソキナーゼ又はグルコキナーゼ、グルコース及びアデノシン二リン酸(ADP)を含有する第一試薬と、クレアチンリン酸を含有する第二試薬とからなるクレアチンキナーゼ活性測定用試薬キット。
【請求項7】
劣化したクレアチンキナーゼ活性化剤を、アミノメタンスルホン酸と接触させることによってクレアチンキナーゼを活性化できる状態にする方法。
【請求項8】
クレアチンキナーゼ活性化剤とアミノメタンスルホン酸とを共存させることにより、クレアチンキナーゼ活性化剤を安定化する方法。





【図1】
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【公開番号】特開2007−49931(P2007−49931A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236991(P2005−236991)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】