説明

クレアチン化合物の投与による透析患者の細胞保護

本発明は、血液透析または腹膜透析のための透析液に関する。該液は250〜550mosm/Lの範囲内に理論上の容量オスモル濃度および4.9〜8.0の範囲内にpH値を有し、該液はクレアチン化合物と1種類以上の電解質を含み、該クレアチン化合物の濃度が50mM以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に適量のクレアチン化合物を含む透析液の投与による透析患者の細胞保護、特に従来の血液透析または腹膜透析の過程で透析患者に発生する病態生理学的状態を緩和するクレアチン化合物の使用に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
クレアチンは脊椎動物に自然発生し、筋肉にエネルギーを供給するのに役立つ窒素含有有機酸である。ヒトの場合、1日あたりのクレアチンの半分がアルギニン、グリシン、およびメチオニンという3種類のアミノ酸から生合成される。残りは、食物から摂取する。
【0003】
細胞がクレアチンを取り込み、続いてクレアチンは細胞内クレアチンキナーゼによりリン酸化され、高エネルギーのクレアチンリン酸(PCr)が発生する。細胞内クレアチンリン酸レベルが上昇するので、クレアチン補給により細胞エネルギーの状態が改善されるが、つまりこれはPCr/ATPエネルギー充足率およびPCr/Crシャトル経由の細胞内エネルギー交換の増加などによるものである。クレアチンはミトコンドリア呼吸を刺激し、ミトコンドリアのエネルギー生産を向上させる。またクレアチンは、一般的なエネルギーセンサーであるAMP刺激性タンパク質キナーゼ(AMPK)と、細胞内のブドウ糖摂取と酸化を強化することによりエネルギー供給を改善する細胞ストレスキナーゼを活性化する。
【0004】
透析プロセス中において、血液細胞は細胞機能喪失と細胞死を引き起こす可能性がある代謝的、機械的、浸透性、酸化的およびその他のストレスに曝されている。貧血、免疫反応の低下、骨粗しょう症、骨軟化症、無形成骨病、認知機能障害は、透析患者に最もよく見られる有害事象である。
【0005】
「C.−T. Chang et al., Nephrol Dial Transplant 2002, 17, 1978−81」で、経口クレアチン一水和物治療により血液透析に関連する筋痙攣が緩和されることが発表された。4週間にわたり、各患者には12mgのクレアチン一水和物を各透析セッション前に投与した。
【0006】
「Y.E.C. Taes et al., Kidney International 2004, 66, 2422−8」では、経口クレアチン補給において、慢性血液透析患者の血漿中ホモシステインの総量は減少しないことが発表された。患者は経口クレアチンを投与された(1日2g)。
【0007】
「Y.E.C. Taes et al., Nephrol Dial Transplant 2008, 23, 1330−5」では、腎不全患者における外因性クレアチン補給後のグアニジノ化合物およびその炎症状態との関連について調査されている。患者には毎日2gのクレアチンを経口投与した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】C.−T. Chang et al., Nephrol Dial Transplant 2002, 17, 1978−81
【非特許文献2】Y.E.C. Taes et al., Kidney International 2004, 66, 2422−8
【非特許文献3】Y.E.C. Taes et al., Nephrol Dial Transplant 2008, 23, 1330−5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、先行技術の透析液と比較して一層優れた透析液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、特許請求の発明要旨により果たされる。
【0011】
本発明は、血液透析または腹膜透析のための透析液であって、該液は250〜550mosm/Lの範囲内に理論上の容量オスモル濃度、および4.9〜8.0の範囲内にpH値を有し、該液はクレアチン化合物と1種類以上の電解質を含み、該クレアチン化合物の濃度が50mM以下である透析液に関連する。
【0012】
驚いたことに、比較的濃度が低いクレアチン化合物による透析液の補給により、細胞が著しく保護され、血液透析患者の健康上の利点につながることがわかった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の最初の局面は、血液透析または腹膜透析のための透析液であって、該液は250〜550mosm/Lの範囲内に理論上の容量オスモル濃度、および4.9〜8.0の範囲内にpH値を有し、該液はクレアチン化合物と1種類以上の電解質を含み、該クレアチン化合物の濃度が50mM以下である透析液に関連する。
【0014】
透析製剤はさまざまな形態で商品化されている。通常、透析製剤は濃縮液、多成分系またはすぐに使用できる透析液として商品化されている。
【0015】
本書において、「透析液」という用語は、すぐに使用できる透析液、すなわち患者にそのまま投与するのに適合する液体製剤などを指す。特に、透析液は希釈手順や他の組成成分との混合手順等が必要ない。
【0016】
このような透析液とは対照的に、液体または固形の濃縮物は、投与前に水や液体でそれぞれ希釈したり溶解させる必要がある。同様に、多成分系は投与前に互いを混合させる必要がある。濃縮物および多成分系は、本発明による透析液としては双方とも前駆形態とみなすことができる。
【0017】
本発明に従った透析液は、血液透析または腹膜透析用である。血液透析または腹膜透析用の透析液は、血漿の電解質組成に近い濃度を持った電解質を含むのが通例である。電解質は通常、ナトリウムまたはカリウム、カルシウム、マグネシウムおよび塩化物イオンを含む。
【0018】
透析液は生理学的に許容可能なpH値である必要がある。これは、通常、緩衝剤(緩衝剤系)の存在により実現するが、一方で電解質の全体的な合計含有率が増加する。典型的な緩衝剤には、重炭酸塩、乳酸塩およびピルビン酸塩などがある。
【0019】
さらに、透析液は生理学的に許容可能な容量オスモル濃度である必要がある。これは通常、電解質や、他の浸透物質、典型的には望ましい容量オスモル濃度範囲でよく許容されるブドウ糖のような非イオン性の等張化剤により実現する。
【0020】
本発明に準拠した透析液の理論上における容量オスモル濃度範囲は250〜550mosm/Lである。熟練した技術者は、理論上の容量オスモル濃度の決定方法を知っている。通常、それはすべての成分の個別量に基づいて計算する。
【0021】
特に血液透析用の透析液に望ましいのは、理論上の容量オスモル濃度が250〜335mosm/Lの範囲にあることだが、260〜325mosm/L、270〜315mosm/L、さらには275〜310mosm/Lならなお一層良く、最も理想的なのは280〜305mosm/L、究極は285〜300mosm/Lの範囲にある。
【0022】
特に腹膜透析用の透析液に望ましいのは、理論上の容量オスモル濃度が300〜565mosm/Lの範囲にあることだが、310〜555mosm/L、320〜545mosm/L、さらには330〜535mosm/Lならなお一層良く、最も理想的なのは340〜525mosm/L、究極は350〜515mosm/Lの範囲である。好ましい実施形態では、理論上の容量オスモル濃度が355±55mosm/Lの範囲にあることだが、355±45mosm/L、さらには355±35mosm/L、355±25mosm/Lならなお良く、最も理想的なのは355±15mosm/L、究極は355±10mosm/Lの範囲である。別の好ましい実施形態では、理論上の容量オスモル濃度が400±55mosm/Lの範囲にあることだが、400±45mosm/L、さらには400±35mosm/L、400±25mosm/Lならなお良く、最も理想的なのは400±15mosm/L、究極は400±10mosm/Lの範囲である。さらに別の好ましい実施形態では、理論上の容量オスモル濃度が510±55mosm/Lの範囲にあることだが、510±45mosm/L、さらには510±35mosm/L、510±25mosm/Lならなお良く、最も理想的なのは510±15mosm/L、究極510±10mosm/Lの範囲にある。
【0023】
本発明に準拠した透析液のpH値範囲は4.9〜8.0であるが、環境条件によっては5.2〜7.8がさらに望ましい。好ましい実施形態では、pH値が5.5±0.6の範囲にあることだが、5.5±0.5、さらには5.5±0.4、5.5±0.3ならなお良く、最も理想的なのは5.5±0.2、究極は5.5±0.1の範囲である。別の好ましい実施形態では、pH値が7.0±0.6の範囲にあることだが、7.0±0.5、さらには7.0±0.4、7.0±0.3ならなお良く、最も理想的なのは7.0±0.2、究極は7.0±0.1の範囲である。さらに別の好ましい実施形態では、pH値が7.4±0.6の範囲にあることだが、7.4±0.5、さらには7.4±0.4、7.4±0.3ならなお良く、最も理想的なのは7.4±0.2、究極は7.4±0.1の範囲にある。
【0024】
本発明に準拠した透析液にはクレアチン化合物が含まれる。本書において、「クレアチン化合物」という用語はクレアチン(HNC(=NH)N(CH)CHCOH)、生理学的に許容可能なクレアチン前駆体、類似体またはプロドラッグ、および上記のいずれかの生理学的に許容可能な塩を指す。具体的に、クレアチン化合物はクレアチン一水和物、クレアチンリン酸、クレアチン類似体シクロクレアチン、クレアチン前駆体グアニド酢酸、およびクレアチンの水溶性有機塩などである。クレアチン化合物は、クレアチンとその生理学的に許容可能な塩、できればクレアチン一水和物から選択するのが望ましい。
【0025】
本発明に準拠した透析液は、濃度50mM以下のクレアチン化合物が含まれている。透析液の成分が濃度40mM以下のクレアチン化合物であることが望ましいが、さらに30mM以下、20mM以下、ひいては10mM以下ならなお良く、最も理想的なのは5.0mM以下、究極は2.5mM以下の濃度が望ましい。
【0026】
好ましい実施形態では、クレアチン化合物の濃度は0.001〜2.5mM、0.004〜1.2mM、または0.8〜1.2mMの範囲である。
【0027】
米国特許出願公開第2003/0013767号A1明細書では、肝臓および腎臓疾患に関連した筋力低下の治療にクレアチン化合物を使用する方法が発表された。クレアチン一水和物は透析投与する。透析液に含まれるクレアチン一水和物は最大約1.5g/100mLの濃度である。しかし、このクレアチン濃度は非常に非生理学的であり、細胞に高浸透圧および代謝性ストレスを発生させやすいため、細胞を損傷させ、有毒でもある。さらに、好ましくなく望ましくない副作用として、高濃度のクレアチンに組織を曝すことにより、体内の内因性クレアチン合成が減少することがある。さらに、米国特許出願公開第2003/0013767号A1明細書で提示されたクレアチン濃度は、クレアチンの水溶性が比較的低く、水溶性が温度に大きく左右されるため技術上実践的ではない。25℃におけるクレアチン溶液の溶解限度である、液1リットル当たり最高15gまでの高濃度クレアチンにおいては、クレアチンが透析液中で沈殿し、透析プロセスの実用性にとって非常に好ましくない結果をもたらすリスクが高い。
【0028】
しかし、本発明による透析液(最終的な透析液)内のクレアチン濃度は、米国特許出願公開第2003/0013767号A1明細書で提案されたものに比べ100倍低いが、細胞保護に効果的である。透析プロセス中、患者は濃縮透析液に追加されたクレアチン合計量に曝される。このクレアチン濃度は完全に生理学的である。たとえば、このクレアチンの濃度は肉や魚を多めに食べた後、または5〜20gのクレアチンを1回経口補給した後のヒトの血清中に見られる量である。ここで要請しているクレアチン濃度は、まったく副作用がなく、体内の内因性クレアチン合成のダウンレギュレーションは発生しない。
【0029】
クレアチン化合物による体内細胞の一般的保護が、特に血液透析プロセス中に酸化性ストレスを受ける赤血球と白血球細胞に関連していることを発見できたのは驚きである。クレアチン化合物が、血液透析患者によく見られる貧血と免疫応答の低下を減少させることが証明されている。クレアチン化合物は、細胞の早期老化で発生する後期たんぱく質糖化(Advanced Protein Glycation)(AGE)の減少に関与する化合物である、筋肉内のカルノシンとアンセリンのレベルを向上させると考えられる。そのため、クレアチン化合物の補給は細胞保護につながり、血液透析患者の老化防止治療介入としても機能する。
【0030】
さらにクレアチン補給は、血液透析で一般的に上昇する顕著な心血管性リスク因子であるホモシステインの血漿レベルを低減させることがわかっている。そのため、血液透析患者はクレアチン化合物の補給を受けることにより、血中のホモシステイン濃度を低減させ、心血管の損傷リスクが下がる恩恵を受けることになる。
【0031】
さらには、クレアチンは多面的な栄養補助剤としての機能もある。そのため、透析患者の細胞と組織にクレアチン化合物が与える効能はさらにあると思われる。
【0032】
本発明に準拠した透析液には、1種類以上の電解質が含まれる。
【0033】
一般的に、電解質は導電性媒体として機能する自由イオンを含む任意の物質である。水性組成物のpH値を大きく変えることなく、電解質が陽イオンと陰イオンに完全に解離することが望ましい。この点において、電解質を緩衝剤と区別できる。すべての電解質が水に完全に溶ける濃度であることが望ましい。
【0034】
陽イオンはNaやKなどのアルカリ金属またはCa2+やMg2+などのアルカリ土類金属から選ぶのが望ましい。陰イオンはClが望ましい。
【0035】
本発明に準拠した透析液は、炭酸水素塩(重炭酸塩)、酢酸塩、乳酸塩、ピルビン酸塩および類似物質のような陰イオンも含まれている可能性があるが、本書ではこれらの塩基性のため、対応する陽イオンと組み合わせたこのような陰イオンは電解質ではなく緩衝剤としてみなすのが望ましい。
【0036】
好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液にはNaイオンが含まれる。望ましいのは、Naイオン濃度が100〜180mMの範囲にあることだが、110〜170mM、115〜165mM、さらには120〜160mMならなお良く、最も理想的なのは125〜155mM、究極は130〜150mMの範囲である。ただし、別の好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液にはNaイオンが含まれない。
【0037】
好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液にはKイオンが含まれる。望ましいのは、Kイオン濃度が0.5〜5.0mMの範囲にあることだが、1.0±0.75、2.0±0.75、3.0±0.75または4.0±0.75mM、さらには1.0±0.5、2.0±0.5、3.0±0.5または4.0±0.5ならなお良く、最も理想的なのは1.0±0.25、2.0±0.25、3.0±0.25または4.0±0.25mMの範囲である。ただし、別の好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液にはKイオンが含まれない。
【0038】
好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液にはCa2+イオンが含まれる。望ましいのは、Ca2+イオン濃度が0.5〜2.0mMの範囲にあることだが、1.0±0.75、1.25±0.75、1.5±0.75または1.75±0.75mM、さらには1.0±0.5、1.25±0.5、1.5±0.5または1.75±0.5ならなお良く、最も理想的なのは1.0±0.25、1.25±0.25、1.5±0.25または1.75±0.25mMの範囲である。ただし、別の好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液にはCa2+イオンが含まれない。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液にはMg2+イオンが含まれる。望ましいのは、Mg2+イオン濃度が0.25〜1.50mMの範囲にあることだが、0.75±0.75または1.0±0.75mM、さらには0.5±0.5、0.75±0.5または1.0±0.5mMならなお良く、最も理想的なのは0.5±0.25、0.75±0.25または1.0±0.25mMの範囲である。ただし、別の好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液にはMg2+イオンが含まれない。
【0040】
好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液にはClイオンが含まれる。望ましいのは、Clイオン濃度が75〜130mMの範囲にあることだが、80〜125mM、85〜120mM、さらには90〜115mMならなお良く、最も理想的なのは95〜120mM、究極は100〜115mMの範囲である。ただし、別の好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液にはClイオンが含まれない。
【0041】
本発明に準拠した透析液には次の成分も含まれるのが望ましい。
− 1種類以上の非イオン性等張化剤(浸透物質、浸透活性剤)、および/または
− 1種類以上の緩衝剤。
【0042】
適切な等張化剤は当業者に知られている。理論的には、各化合物が全体的な浸透圧状況に影響を与える。ただし本書では、等張化剤は緩衝剤とも電解質ともみなされない非イオン性化合物であることが望ましい。等張化剤の典型的な例には、ブドウ糖、ブドウ糖ポリマーおよびグリセリン(グリセロール)などがある。
【0043】
ブドウ糖は良好な容量オスモル濃度をもち耐容性がよいため、しばしば浸透活性濃度にある血液の水分含有量を減らすのに役立つ浸透物質として使用される。ブドウ糖を使用するその他の利点は、他の利用可能な浸透物質よりも費用が安いことである。また、ブドウ糖ポリマーをブドウ糖の代わりまたはブドウ糖に加えて使用することも知られている。ブドウ糖ポリマーは、利点の多い限外ろ過の側面のため、腹膜透析液の長い滞留時間のために特に使用される。ブドウ糖ポリマーはブドウ糖と比較すると拡散するのが遅いため、原則的に治療中は継続的に容量オスモル濃度が保たれる。さらに、患者へのブドウ糖投与量を減らすことができるが、これは糖尿病患者の場合特に有益である。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液にはブドウ糖が含まれる。望ましいのは、ブドウ糖濃度が1.0〜250mMの範囲にあることだが、5.0±4.0、85±75、125±75または235±75mM、さらには5.0±2.5、85±50、125±50または235±50ならなお良く、最も理想的なのは5.0±1.0、85±25、125±25または235±25mMの範囲である。ただし、別の好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液にはブドウ糖が含まれない。
【0045】
適切な緩衝剤は当業者にも知られている。典型的な緩衝剤には、乳酸塩、炭酸水素塩、ピルビン酸塩、クエン酸塩、イソクエン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、酢酸塩などがある。当業者は、たとえばpH値を調整するためにNaHCOが加えられるとHCOに対応する陽イオン、Naが緩衝剤の成分となることを認識する。それにもかかわらず、塩が水中で解離すると電解質にも影響を与える。本書では、陽イオンと陰イオンが電解質、緩衝剤、またはその他の成分(クレアチン化合物の塩など)のいずれから来るかに関わらず、それぞれの望ましい濃度はイオン合計量を含むものである。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、緩衝剤に重炭酸塩が含まれる。これは、アルカリ性範囲の炭酸塩と酸性範囲のCOとが平衡にある非常に耐容性の高い緩衝剤系である。重炭酸塩とは別に、またはそれに加えて、生理的pHである7前後で緩衝するものであれば他の緩衝剤も検討できる。この結果、体内で重炭酸塩に分解しやすい物質が望ましいことになる。たとえば、乳酸塩またはピルビン酸塩などが挙げられる。
【0047】
本発明のさらに好ましい実施形態では、緩衝剤に弱酸性の塩、できれば乳酸塩が含まれると良い。弱酸性のpKaは5未満である場合もある。緩衝剤には重炭酸塩および乳酸塩など弱酸性の塩混合物が含まれることが考えられる。重炭酸塩含量が少なく保たれる場合、保管パッケージ内のCO圧が低くなる利点がある。従来のポリオレフィンホイルをCO障壁として使用出来る。
【0048】
好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液にはHCOイオンが含まれる。(すなわちHCOイオンにより緩衝される)。HCOイオン濃度は20〜50mMが好ましく、さらには25〜45mM、30〜40mMの範囲であればなお良い。ただし、別の好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液にはHCOイオンが含まれない。
【0049】
好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液には乳酸塩が含まれる(すなわち、乳酸塩により緩衝される)。乳酸塩濃度は20〜50mMが好ましく、さらには25〜45mM、30〜40mMの範囲であればなお良い。ただし、別の好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液には乳酸塩が含まれない。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液には酢酸塩が含まれる(すなわち、酢酸塩により緩衝される)。酢酸塩濃度は2.0〜7.5mMが好ましく、さらには2.5〜7.0mMの範囲であればなお良い。ただし、別の好ましい実施形態では、本発明に準拠した透析液には酢酸塩が含まれない。
【0051】
本発明に準拠した透析液の合計容量は特に制限されていない。典型的な容量の範囲は数リットル(患者1人に適切な投与量)〜数百リットル(複数の患者向けに保管するのに適切な量)の範囲にある。
【0052】
上記で言及したとおり、本発明に準拠した透析液はすぐに使用できる状態であり、すなわち血液透析または腹膜透析のニーズに従って直接患者に投与できる。
【0053】
好ましい実施形態では、透析液は腹膜透析液であり、これについてはさらに詳細に後述する。
【0054】
腹膜透析液は、慢性腎不全に関連した代謝性アシドーシスを補正すべく生化学的に平衡である。腹膜透析液は、より生理学的な濃度、すなわち血液中と実質上同程度の、透析液溶液の拡散送達に影響を及ぼす濃度の重炭酸塩を含む。好ましい実施形態では、濃度が約20〜30mM/Lの重炭酸塩を含む。好ましい実施形態では、重炭酸塩の濃度は25mM/Lである。
【0055】
さらに、腹膜透析液には分圧が60mmHg未満の二酸化炭素を含むのが望ましい。好ましい実施形態では、溶液のpCOは、毛細血管内の二酸化炭素の分圧と類似している。
【0056】
さらに望ましいことに、腹膜透析液のpH値は約7.4である。したがって、腹膜透析液は生化学的に平衡であるが、生理学的に許容可能な溶液ということになる。
【0057】
さらに、腹膜透析液はpKaが5未満の弱酸を含むのが望ましい。これらの弱酸は、ブドウ糖代謝の正常な生化学的媒体として選択される。弱酸は次のグループから選択するのが望ましい:乳酸;ピルビン酸;クエン酸;イソクエン酸;cis−アコニット酸;[α]−ケトグルタル酸;コハク酸;フマル酸;リンゴ酸;およびオキサロ酢酸。これらの酸は、腹膜透析液内に単独または結合して存在する。弱酸の濃度は約10〜20mEq/Lが望ましい。弱酸は主にナトリウム塩として存在するのが望ましい。弱酸は、約1mEq/kg/日の代謝性水素生成を相殺する量で存在する。
【0058】
腹膜透析液にはいずれかの等張化剤(浸透物質)も使用できる。たとえば、ブドウ糖(デキストロース)、マルトデキストリン、グリセロール、ポリグルコース、ポリペプチド、およびアミノ酸などが浸透物質として使用できる。
【0059】
本発明の腹膜透析液は、正常な濃度で重炭酸塩を平衡させ、pCOは正常な分圧である。通常環境下での弱酸は、透析液から血液への無限の勾配がある。そのため、慢性尿毒症の代謝性アシドーシス補正において弱酸が比較的予測可能な形で機能することが期待できる。
【0060】
本発明の別の局面は、十分に定義づけられた所定の方法(特定の実施手順に従うなど)に従って処理した後、本発明に従って上記の透析液を作成するための成分組成に関連する。当該処理は、個別の成分組成を混ぜ合わせる、または成分組成を精製水に希釈することにより手作業で行うことができる。あるいは、当該処理は市販の当該処理用装置を使って自動で行うこともできる。好ましい実施形態では、当該処理で作成される透析液の成分は静的組成でなく、動的に変化し続ける組成のため上記の装置でモニターすることとなる。
【0061】
たとえば、クレアチン化合物は透析治療中に継続的に希釈される保管透析液に含まれる場合がある。この場合、患者は透析治療プロセス全体を通してクレアチンの生理学的濃度に常に曝されている。このクレアチン濃度(最終的な透析液)は0.05〜10mMの範囲内であることが望ましい。この濃度であれば、細胞保護効果と患者の健康上の利点を提供するのに十分である。
【0062】
また本発明は、本発明に準拠した上述の透析液の調製用に構成されたキットにも関連する。当該キットには次のものが含まれる。
− 第1成分組成、
− 第2成分組成、および
− 任意で1種類以上の追加成分組成、
当該キットでは、第1成分組成、第2成分組成と任意で存在する追加成分組成を互いに混ぜ合わせると、本発明に準拠した透析液が作成されるよう構成されている。
【0063】
当該キットには少なくとも第1成分組成と第2成分組成が必要である。キットには、第3成分組成や第4成分組成などの追加成分組成を含めることが出来る。ただし、キットは好ましくは互いに異なる2つの成分組成で構成されるのが望ましい。
【0064】
第1成分組成と第2成分組成は、それぞれ個別に固体と液体とするなど、相互に異なるものとすることが出来る。成分組成が液体の場合、溶液と散液から選択できる。散液は、懸濁液と乳濁液から選択できる。
【0065】
好ましい実施形態では、第1成分組成が液体(できれば純水または水溶液)の場合、第2成分組成も液体である。別の好ましい実施形態では、第1成分組成が液体(できれば純水または水溶液)の場合、第2成分組成は固体(できれば混合粉体)である。
【0066】
第1成分組成は等張化剤(浸透物質)、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、H過剰イオン、および塩化物イオンを含む溶液であることが望ましい。ただし、第1成分組成にはクレアチン化合物は含まないほうが良い。
【0067】
本発明に準拠したキットは、さまざまな形態で提供可能である。たとえば、個々の成分組成を別々のパッケージで提供することもできる。ただし、本発明に準拠したキットは多チャンバーバッグシステムなどの1つのパッケージで提供される。
【0068】
本発明に準拠したキットは、第1成分組成、第2成分組成、そして任意に存在する追加成分組成を、壊すことのできる接続機構によって互いが分離されたチャンバーに含む多チャンバーバッグシステムであって;該壊すことのできる接続機構を壊すと、該第1成分組成、該第2成分組成、そして該任意に存在する追加成分組成が混合できて、本発明に準拠した透析液が作成されるようなシステムが望ましい。
【0069】
多チャンバーバッグは、各溶液ごとに1つのチャンバーをもつビニール袋となっている設計でも良い。すべての各溶液はそれぞれ異なるコンパートメントに入っており、それ自体が互いの接続部を形成できるか、または送出部が共通のラインまたは混合チャンバーに開くことができる。使用中にそれぞれの溶液の量を調整して変化できるよう、この接続部/送出部ラインには再密封可能なフローコントロールエレメントを備えるのが望ましい。フローコントロールエレメントは、たとえばロールクランプや閉塞式ポンプなどとすることが出来る。
【0070】
多チャンバーバッグは、最低1つの第1チャンバーと1つの第2チャンバーがあるビニール袋でできたツインチャンバー袋であり、第1成分組成は第1チャンバーに、第2成分組成は第2チャンバーに入る。2つのチャンバーを互いに切り離すが、作動させると両チャンバーの中身を混ぜることの出来るような手段が望ましい。これによって第1と第2チャンバーは隣り合わせに配置することができる。チャンバー同士を仕切り、チャンバーを押すと開く接合部を備えるのが好ましい。寸法を適宜決定することにより、液体が入ったチャンバーの1つを押すと接合部が開き、両方のチャンバーの内容物が混ざり、最終的には混合液が患者に投与される。
【0071】
本発明に準拠したキットの望ましい形態では、第1成分組成は非イオン性等張化剤と酸を含みpH値が6.0未満の滅菌溶液であり、第2成分組成は緩衝剤を含みpH値が7.0以上である滅菌溶液であり、第1成分組成および/または第2成分組成および/または任意に存在する追加成分組成には1種類以上の電解質が含まれ、さらに第1成分組成および/または第2成分組成および/または任意に存在する追加成分組成にはクレアチン化合物が含まれる。
【0072】
本発明に準拠したクレアチン化合物は、各成分組成に一部ずつ含まれ得る。ただし、第2成分組成にクレアチン化合物の総量が含まれることが望ましい。
【0073】
当業者は、すべての成分組成にまだ同じ濃度の成分が含まれていない場合、個々の成分組成を組み合わせると通常希釈効果があることを把握している。たとえば、クレアチン化合物が1つの成分組成にのみ含まれ、その成分組成と別の成分組成を組み合わせると混合成分組成の総量が増え、希釈(クレアチン化合物の濃度低下)が起こる。そのため、当該成分組成は最終的な透析液よりも高い濃度のクレアチン化合物を含むのが普通である。
【0074】
温度が変化しても溶液保存時の安定性を確保するため、成分組成内のクレアチン化合物の濃度は5℃の飽和限界に近いほうが望ましい。好ましい実施形態での濃度は、1リットルの成分組成あたり6.0±1.0gのクレアチン化合物であるが、6.0±0.5gであればなお望ましい。
【0075】
好ましい実施形態では、第2成分組成はクレアチン化合物の総量と適切な緩衝剤で構成され、第2成分組成のpH値は7.0以上、7.5以上、8.0以上、さらには8.5以上に保つのが望ましく、最も理想的なのは9.0以上、究極は9.5以上である。これは、解離したNaHCOおよび/またはKHCOの形で存在するHCOイオンにより達成されるのが望ましい。この実施の望ましい別形態では、第2組成成分が固体でクレアチン化合物の混合粉体とNaHCOおよび/またはKHCOなどの適切な緩衝剤で構成されている。
【0076】
予想外にも、pH値が比較的高い成分組成のクレアチン化合物を入れることにより、クレアチン化合物の保存性が安定することが確認された。このpH値は生理学的に許容可能でない可能性があるため、本発明に準拠したキットは比較的pH値が低い別の成分組成を含み、投与前に両方の成分組成を混ぜると生理学的に許容可能なpH値となるようにする。
【0077】
本発明に準拠した多チャンバーバッグは、腹膜透析用に使用でき、およびクレアチン化合物に加えて次のような物質組成範囲(mval/L)を有する透析液の調製に適合させるのが望ましい:
Ca:0.5−5
Mg:0−3
Cl:90.5−121
Na:128−145
:0−4
HCO:25−40
ここで、このバッグシステムの1つのチャンバーには少なくともカルシウムイオンを含む酸性濃縮液が入り、他のチャンバーにはカルシウムイオンがなく少なくとも重炭酸イオンを含む塩基性第2濃縮液が入り、ここで生理学的に混合可能な酸が塩基性濃縮液に加えられ、そして壊すことの可能な接続機構を壊して2つの濃縮液が一緒に混ぜ合わって透析液が作られるが、上記生理学的に混合可能な酸は、室温でpH値が7.6未満になる量だけ塩基性濃縮液に加えられる。
【0078】
pH値が7.2〜7.4の範囲にあるように生理学的に混合可能な酸を、塩基性濃縮液に加えるのが望ましい。
【0079】
塩基性濃縮液には、最終的な透析液の炭酸水素塩量が少なくとも20mmol/Lとなるような量だけ重炭酸ナトリウムが含まれると良い。
【0080】
塩基性濃縮液の炭酸水素塩の量が、最終的透析液に25〜40mmol/Lの重炭酸イオンが含まれるだけあることが非常に望ましい。
【0081】
塩基性濃縮液のpH値はHClを使って調整されていることが望ましい。
【0082】
可能であれば、2つの濃縮液は3:1〜1:3、特に約1:1の比率で混ぜ合わせる。
【0083】
本発明は、本発明に準拠した透析液の製造方法についても配慮しており、最適な混合比は透析装置または腹膜透析循環装置によって自動的に決定される。
【0084】
好ましい実施形態において、本発明は、予め定められた液体容量に溶かすと、本発明に準拠した透析液の調製に適した固形製剤に関連する。このような製剤は上記に定義された成分組成であり、本発明に準拠したキットの構成成分であることが望ましい。
【0085】
本発明に準拠した固形製剤には、NaHCOおよび/またはKHCOのような重炭酸塩が含まれることが望ましい。重炭酸塩対クレアチン化合物の相対モル比で望ましいのは1:10〜10:1、さらには1:9〜9:1、8:1〜1:8、7:1〜1:7ならなお良く、最も理想的なのは6:1〜1:6、究極は5:1〜1:5である。
【0086】
本発明に準拠した固形製剤から、本発明に準拠した透析液を準備するのに必要とされる予め定められたれた液体容量は1〜2000Lの範囲である。液体は精製水、または任意で、上述したような、1種類以上の電解質および/または1種類以上の非イオン性等張化剤、および/または1種類以上の緩衝剤を含むのが好ましい。
【0087】
発明の別の局面は、血液透析または腹膜透析向けの本発明に準拠した透析液の、または本発明に準拠したキットの、または本発明に準拠した固形製剤の製造のためのクレアチン化合物の使用に関連する。
【0088】
発明の別の局面は、本発明に準拠した透析液の投与手順で構成された血液透析または腹膜透析の方法に関連する。好ましい実施形態では、本発明に準拠した方法は、本発明に準拠したキットまたは固形製剤から透析液を調製する事前手順で構成される。
【0089】
透析患者は往々にして残存腎機能を示すことがあり、クレアチン化合物の細胞保護および抗アポトーシス効果により腎臓細胞を保護し、腎臓のさらなる変性や細胞死を止める、あるいは遅らせることができる。
【0090】
さらに、透析プロセス中、血液細胞は細胞機能喪失と細胞死を引き起こす可能性がある代謝的、機械的、浸透性、酸化的およびその他のストレスに曝されている。そのため、透析患者において、クレアチン化合物は活発に血球を補給し、代謝性および酸化性ストレスから細胞を保護し、細胞膜を機械的ストレスから保護し、赤血球細胞の損失を防ぎ、同時にエリスロポエチン(EPO)が相乗的に作用して、血液透析患者によく見られる貧血を防ぐ。さらに、白血球(免疫系細胞)も、クレアチンリン酸を含むクレアチン化合物に保護され、クレアチン欠乏によるエネルギー低下を防ぎ、細胞膜を安定化させることにより機械的ストレスから細胞を守る。そのため、クレアチン化合物は適切な細胞機能を保ち、患者の免疫系を強化することとなる。
【0091】
クレアチン化合物の抗異化効果(成長ホルモンと筋肉分化要素の分泌増加に起因するもの) により、クレアチン化合物の補給は筋細胞数、筋細胞機能、増殖および分化、さらには血液透析患者にとっての生活パラメータの質に深く関与するパラメータである総合的な筋細胞性能(力発生)を改善する。
【0092】
クレアチン化合物の神経保護効果については文献も多く、血液透析患者はクレアチン化合物の脳細胞および神経細胞保護を利用して、倦怠感を緩和し、記憶力と学習能力、そして一般的な健康状態を改善している。
【0093】
クレアチンは骨細胞増殖、分化、および石化を強化するため、血液透析患者によく見られる骨粗しょう症、骨軟化症、無形成骨病などの疾患を防ぐ。
【0094】
さらに、クレアチン化合物の補給を行うことにより、体細胞と組織が酸化的ストレス、脂質過酸化反応、糖化最終産物(AGE′s)から保護される。
【0095】
そのため、発明の別局面は、血液透析または腹膜透析治療中の上記の利点を達成するための、本発明に準拠した透析液の、または本発明に準拠したキットの、または本発明に準拠した固形製剤の製造のためのクレアチン化合物の使用に関連する。
【実施例】
【0096】
以下の実施例は、本発明を示すためのものであり、本発明の範囲を限定するものとの解釈がなされてはならない。
例:
実際の臨床状況の好ましい実際例として、0.1〜30gのクレアチンを4.7リットルの透析濃縮液(フレゼニウス透析装置では1日あたり1人の患者の1回の透析治療に使用)に加え、濃縮透析液または貯蔵液の最終クレアチン濃度が0.16〜48mMとなるようにする。
【0097】
典型的な透析流動速度の800ml/分を4時間行い、透析プロセス中の上記濃縮透析液が希釈されて、実際の透析液が最終的に192リットル(約40倍の希釈係数の透析貯蔵液に相当)となるようにすると、最終透析液の有効クレアチン濃度は0.004〜1.2mMとなる。
【0098】
原形質膜のクレアチン輸送タンパク(CrT)はKmが約25〜30μMとクレアチンと非常に高い親和性を持ち、後の最終透析液のクレアチン濃度(0.004〜1.2mM)はクレアチン輸送タンパクのKmと同じかそれ以上の範囲にあるため、最終透析液から細胞への効率的なクレアチン摂取が保証される。
【0099】
通常、4.7リットルの透析濃縮液に20〜30gのCrを加えて、Cr濃度32mM〜48mM貯蔵濃縮液を得て、希釈されると最終透析液で0.8〜1.2mMとなる。患者血液は治療処理全体中このクレアチン濃度に継続的に曝され、CrTは細胞にクレアチンを輸送するのに効率的であるため、細胞はクレアチンを十分摂取する機会を持つこととなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液透析または腹膜透析のための透析液であって、該液は250〜550mosm/Lの範囲内に理論上の容量オスモル濃度および4.9〜8.0の範囲内にpH値を有し、該液はクレアチン化合物と1種類以上の電解質を含み、該クレアチン化合物の濃度が50mM以下である透析液。
【請求項2】
クレアチン化合物の濃度が0.001ないし2.5mMの範囲内にある請求項1記載の透析液。
【請求項3】
クレアチン化合物がクレアチンおよびその生理学的に許容可能な塩よりなる群から選択される請求項1または2記載の透析液。
【請求項4】
− 1種類以上の非イオン性等張化剤、および/または
− 1種類以上の緩衝剤
を含む請求項1ないし3のいずれか一項記載の透析液。
【請求項5】
− 1.0〜250mM ブドウ糖および/または
− 100〜180mM Naおよび/または
− 0.5〜5.0mM Kおよび/または
− 0.5〜2.0mM Ca2+および/または
− 0.25〜1.50mM Mg2+および/または
− 75〜130mM Clおよび/または
− 20〜50mM HCOおよび/または
− 20〜50mM 乳酸塩および/または
− 2.0〜7.5mM 酢酸塩
を含む、請求項1ないし4のいずれか一項記載の透析液。
【請求項6】
− 第1成分組成、
− 第2成分組成および
− 任意で、1種類以上の追加成分組成を含む、請求項1ないし5のいずれか一項記載の透析液を調製するために構成されたキットであって、
互いに混合されるとき、該第1成分組成、該第2成分組成および該任意に存在する追加成分組成が、請求項1ないし5のいずれか一項記載の透析液を作成するのに適したキット。
【請求項7】
第1成分組成、第2成分組成および任意に存在する追加成分組成を、壊すことのできる接続機構により互いに分離されたチャンバーに含む、多チャンバーバッグシステムである請求項6記載のキットであって、該壊すことのできる接続機構を壊すことで、該第1成分組成、該第2成分組成および該任意に存在する追加成分組成が混合でき透析液を作成するキット。
【請求項8】
第1成分組成が非イオン性等張化剤および酸を含みかつ6.0未満のpH値を有する滅菌溶液であり;第2成分組成が緩衝剤を含みかつ7.0以上のpH値を有する滅菌溶液であり;該第1成分組成および/または該第2成分組成および/または任意に存在する追加成分組成が1種類以上の電解質を含み;ならびに該第1成分組成および/または該第2成分組成および/または該任意に存在する追加成分組成がクレアチン化合物を含む、請求項6または7記載のキット。
【請求項9】
第2成分組成がクレアチン化合物の全量を含む請求項6ないし8のいずれか一項記載のキット。
【請求項10】
液体の予め定められた容量に溶解されると、請求項1ないし5のいずれか一項記載の透析液の調製に適合する固形製剤。
【請求項11】
重炭酸塩を含む請求項10記載の固形製剤。
【請求項12】
重炭酸塩対クレアチン化合物の相対モル比が1:10〜10:1の範囲内にある請求項11記載の固形製剤。
【請求項13】
液体の予め定められた容量が1〜2000Lの範囲内にある請求項10ないし12のいずれか一項記載の固形製剤。
【請求項14】
液体が精製水であるか、または任意で1種類以上の電解質、および/または1種類以上の非イオン性等張化剤、および/または1種類以上の緩衝剤を含む請求項10ないし13のいずれか一項記載の固形製剤。
【請求項15】
血液透析または腹膜透析のための、請求項1ないし5のいずれか一項記載の透析液の製造または、請求項6ないし9のいずれか一項記載のキットの製造または、請求項10ないし14のいずれか一項記載の固形製剤の製造のためのクレアチン化合物の使用。

【公表番号】特表2013−500243(P2013−500243A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520949(P2012−520949)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004458
【国際公開番号】WO2011/009601
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(511241572)クレアレン リミテッド (2)
【Fターム(参考)】