説明

クレセント及びサッシ

【課題】障子を確実に引き寄せることができ、障子における気密性を安定的に確保できるクレセントを提供する。
【解決手段】障子1、2を設けてなるサッシの障子1に設けられ、受金具4に対して係脱し障子1、2を施錠状態とするものであって、障子1の外周面に固定される本体部20と、本体部20に対して回動自在に取付けられる操作部21と、操作部21の回動に伴い受金具4に対して係脱する掛金具22とを有し、掛金具22は操作部21の回動軸21aを中心とした略円弧状の係合部22cを有し、係合部22cは内周面が受金具4に対し当接、摺動すると共に、操作部21を施錠状態まで回動させた状態で受金具4に対し当接する位置に、掛金具22の回動中心部22aに向かう凸状の突部22dを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き違いサッシ等の障子を施錠するクレセント及びそれを有するサッシに関し、特に受金具に対して係脱する掛金具によって障子の引き寄せを行うことのできるクレセント及びそれを有するサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内外障子を引き違い状としてなるサッシが知られている。このようなサッシでは、内障子の召合せ框にクレセントを設け、外障子の召合せ框には受部を設け、クレセントのハンドルを回動させることで、それに連動して円弧状の掛金具が回動し、外障子の受部に係合して障子を施錠することができるようにされている。
【0003】
クレセントは内外障子を施錠する他、内外障子を引き寄せ、及び引き分ける機能も有している。クレセントを施錠状態とすることで、掛金具は外障子の受金具を内障子側に引き寄せると共に、内外障子を全閉状態の方向にそれぞれ引き分けることができ、これらによって内外障子が完全に閉塞した状態とすることができる。これによって、引き違いサッシの気密性を向上させるようにしている。このようなクレセントを有した引き違い障子のサッシは例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−177420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のクレセントは内外障子の引き寄せ効果が小さく、それぞれの障子固有のがたつきなどによって、クレセントの受金具に対する係合にばらつきの出ることがあった。これにより、内外障子間の気密性の程度にもばらつきが生じることがあった。
【0006】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、障子を確実に引き寄せることができ、障子における気密性を安定的に確保できるクレセント及びそれを有するサッシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係るクレセントは、障子を設けてなるサッシの前記障子に設けられ、受金具に対して係脱し前記障子を施錠状態とするクレセントにおいて、
前記障子の外周面に固定される本体部と、該本体部に対して回動自在に取付けられる操作部と、該操作部の回動に伴い前記受金具に対して係脱する掛金具とを有し、
前記掛金具は前記操作部の回動軸を中心とした略円弧状の係合部を有し、該係合部は内周側面が前記受金具に対し当接、摺動すると共に、前記操作部を施錠状態まで回動させた状態で前記受金具に対し当接する位置に、前記掛金具の回動中心側に向かう凸状の突部を有することを特徴として構成されている。
【0008】
また、本発明に係るクレセントは、前記突部は前記掛金具に絞り加工により形成されてなることを特徴として構成されている。
【0009】
さらに、本発明に係るクレセントは、前記突部は前記係合部から円弧状に突出してなることを特徴として構成されている。
【0010】
さらにまた、本発明に係るクレセントは、前記突部は前記掛金具の基部に対する根元部から先端部にかけて、前記掛金具の回動中心から離れる方向に向かう傾斜面状に形成されてなることを特徴として構成されている。
【0011】
そして、本発明に係るサッシは、枠体内に障子を設けてなるサッシにおいて、
見込方向外側位置に受金具が設けられ、前記障子には前記受金具に対して係脱し前記障子を施錠状態とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のクレセントを設けてなることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るクレセントによれば、掛金具は操作部の回動軸を中心とした略円弧状の係合部を有し、係合部は室内側面が前記受金具に対し当接、摺動すると共に、操作部を施錠状態まで回動させた状態で受金具に対し当接する位置に、掛金具の回動中心側に向かう凸状の突部を有することにより、クレセントを施錠状態とした際に、突部が受金具を室内側に押圧し、それによって障子を引き寄せることができ、障子に設けられる気密材が密着する方向に負荷をかけることができる。したがって、障子における気密性を安定的に確保することができる。
【0013】
また、本発明に係るクレセントによれば、突部は掛金具に絞り加工により形成されてなることにより、突部を掛金具に対し容易に一体形成することができる。
【0014】
さらに、本発明に係るクレセントによれば、突部は係合部から円弧状に突出してなることにより、掛金具の回動に伴い突部が受金具を円滑に押圧して、スムーズに操作をなすことができる。
【0015】
さらにまた、本発明に係るクレセントによれば、突部は掛金具の基部に対する根元部から先端部にかけて掛金具の回動中心から離れる方向に向かう傾斜面状に形成されてなることにより、突部が受金具に係合することによって、受金具を内外障子の閉じる方向に押圧することができ、内外障子を引き分けてこれらに設けられる気密材が密着する方向に負荷をかけることができる。したがって、障子間の気密性をより安定的に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態におけるクレセントが設けられた引き違いサッシの横断面図であって召合わせ框付近の拡大図である。
【図2】クレセントの正面図である。
【図3】クレセントの側面図である。
【図4】受金具の正面図である。
【図5】クレセントを施錠状態とした引き違いサッシの横断面図であって召合わせ框付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態におけるクレセントが設けられた引き違いサッシの横断面図であって召合わせ框付近の拡大図を示している。この図に示される引き違いサッシは、内障子1と外障子2とを引き違い状に設けてなり、内障子1と外障子2はそれぞれ対向する召合わせ位置に召合わせ框10、11を有して構成される。
【0018】
内障子1の召合わせ框10と外障子2の召合わせ框11は、いずれも断面中空状に形成されており、内周面側でガラス体12を保持している。本実施形態のクレセント3は、内障子1を構成する召合わせ框10の外周面に設けられ、外障子2を構成する召合わせ框11の室内側面には、内周側に突出するように受金具4が設けられ、クレセント3が操作されて受金具4に係脱することにより、内障子1と外障子2の施錠状態と解錠状態を切り替えることができる。なお、図1は内障子1と外障子2の解錠状態を表している。
【0019】
内障子1の召合わせ框10には、室外側面に略L字状の煙返し部10aが形成されており、外障子2の召合わせ框11には、室内側面に内障子1の煙返し部10aに対応して互い違い状となる煙返し部11aが形成されている。これらの煙返し部10a、11aは、内障子1と外障子2が閉じた状態において互いに当接しあって気密性を確保する。これらは、内障子1と外障子2が閉じる方向に引き分けられることによって、より気密性を高くすることができる。
【0020】
また、内障子1の室外側面には気密材10bが設けられて外障子2の召合わせ框10の室内側面に当接し、外障子2の室内側面には気密材11bが設けられて内障子1の召合わせ框10の室外側面に当接することによっても、内外障子1、2間の気密性を確保する。これらは、内障子1と外障子2が近づく方向に引き寄せられることによって、より気密性を高くすることができる。
【0021】
図2にはクレセント3の正面図を、図3にはクレセント3の側面図を、それぞれ示している。これら各図は、クレセント3の施錠状態を表している。これらの図に示すように、クレセント3は上下方向に長い略直方体の箱状に形成されてなる本体部20に対して、操作部21が回動自在に設けられ、さらに操作部21と連動して回動する掛金具22を有して構成されている。この掛金具22が受金具4に対して係脱する。また、本体部20には上下方向にスライド可能な補助ロック24が設けられている。
【0022】
本体部20内には、図示しないが操作部21及び掛金具22を回動自在に保持する回動機構や、補助ロック24による操作部21のロック機構などが設けられている。この本体部20内に設けられた回動機構により、操作部21は回転軸21aを中心に回動自在とされ、操作部21を回動させることで掛金具22も同時に回動させることができる。
【0023】
掛金具22は、本体部20に対して回動自在な回動中心部22aを有する基部22bと、基部22bの周縁部が立ち上がり状とされてなる係合部22cとからなっている。基部22bは、図3に示すように円形の一部を切り欠いたような形状を有しており、その周縁部は円弧状をなしている。この周縁部から立ち上がり状に形成された係合部22cもまた、円弧状を有している。
【0024】
掛金具22の円形状は、回動中心部22aを中心としており、したがって操作部21の回動に伴って掛金具22が回動することにより、係合部22cの円周方向位置が移動することとなる。そして、係合部22cの円周方向位置の移動によって、対向する受金具4に対して係合する。
【0025】
掛金具22の係合部22cには、円周方向の略中央位置に、図3の状態において室内側、すなわち掛金具22の回動中心部22a側に向かって突出する突部22dが形成されている。突部22dは、係合部22cとは反対側を向く円弧状をなすように形成されている。この突部22dは掛金具22の形成時に絞り加工をなすことによって形成される。
【0026】
突部22dの形成位置は、掛金具22を受金具4に係合させた状態における、受金具4に対する係合位置となるように配置されている。この突部22dが係合部22cに形成されていることにより、後述するように受金具4を介して外障子2を内障子1側に引き寄せることができる。
【0027】
また、突部22dは、掛金具22の基部22bに対する根元部から先端部にかけて、掛金具22の回動中心部22aから離れる方向に向かう傾斜面状に形成されている。これにより、後述するように受金具4を介して外障子2と内障子1が閉塞する方向に引き分けられるようにすることができる。
【0028】
図4には、受金具4の正面図を示している。受金具4は、図4で示す右半分は召合わせ框11に対する固定部4aとして形成され、左半分はクレセント3の掛金具22に対する受部4bとして形成されている。受部4bは方形状で中央部が中空状とされた枠形状に形成されており、左端部にはクレセント3の係合部22cに係合する被係合部4cを有している。
【0029】
図5には、クレセント3を施錠状態とした引き違いサッシの横断面図であって召合わせ框付近の拡大図を示している。図1の状態から操作部21を回動操作することで、これまで説明したように掛金具22の係合部22cが、受金具4の被係合部4cに対して係合する。受金具4は、被係合部4cの部分が室内側に段差状に突出しており、掛金具22の係合部22cは、内周面が被係合部4cの室外側面に当接、摺動しながら係合する。
【0030】
操作部21を解錠状態から回動させていくと、掛金具22の係合部22cは、受金具4の被係合部4cの室外側に進入し、内周面が被係合部4cの室外側面を摺動する。操作部21をさらに回動させて掛金具22を受金具4に対する係合状態、すなわちクレセント3を施錠状態とすると、係合部22cの突部22dが被係合部4cの室外側面に対して係合した状態となる。
【0031】
係合部22cの突部22dは、掛金具22の回動中心部22a側に向かって凸状となるように形成されているので、クレセント3の施錠状態において室内側に向かって突出することとなる。このため、図5に示すように受金具4の被係合部4cを室内側に向かって押圧し、それによって外障子2を内障子1側に引き寄せることができる。
【0032】
また、前述のように突部22dは、掛金具22の基部22bに対する根元部から先端部にかけて、掛金具22の回動中心部22aから離れる方向に向かう傾斜面状に形成されているので、図5に示すように受金具4の被係合部4cに対して係合した際に、被係合部4cを外障子2が閉じる方向に向かって傾斜状に押圧することとなる。これによって、内障子1と外障子2の引き分けをなすことができる。
【0033】
このように、掛金具22の係合部22cに突部22dを設け、さらに突部22dを傾斜面状に形成したことにより、内障子1と外障子2を引き寄せ、及び引き分けることができ、室内外方向と開閉方向のいずれにも気密材が密着する方向に負荷をかけることができる。したがって、内外障子1、2間の気密性を安定的に確保することができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。例えば、本実施形態において突部22dは、係合部22cから円弧状に突出するように形成されているが、その形状は円弧状には限られない。また、突部22dは係合部22cを絞り加工することで一体的に形成されているが、円弧状の係合部22cに対して小片を取付けることによって、突部22dを形成するようにしてもよい。
【0035】
また、本実施形態においては、受金具4を外障子2に設け、クレセント3を内障子1に設けることとし、いずれの障子も開閉自在となるように構成したが、内障子1のみが開閉する、あるいは外障子2のみが開閉するようにしてもよい。また、内障子1のみを枠体1内に設け、受金具4が設けられる見込方向外側位置には、枠体1内に直接ガラス体12を納めるようにし、受金具4を枠体1に設けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 内障子
2 外障子
3 クレセント
4 受金具
10 召合わせ框
11 召合わせ框
12 ガラス体
20 本体部
21 操作部
21a 回転軸
22 掛金具
22a 回動中心部
22b 基部
22c 係合部
22d 突部
23 係合部
24 補助ロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子を設けてなるサッシの前記障子に設けられ、受金具に対して係脱し前記障子を施錠状態とするクレセントにおいて、
前記障子の外周面に固定される本体部と、該本体部に対して回動自在に取付けられる操作部と、該操作部の回動に伴い前記受金具に対して係脱する掛金具とを有し、
前記掛金具は前記操作部の回動軸を中心とした略円弧状の係合部を有し、該係合部は内周側面が前記受金具に対し当接、摺動すると共に、前記操作部を施錠状態まで回動させた状態で前記受金具に対し当接する位置に、前記掛金具の回動中心側に向かう凸状の突部を有することを特徴とするクレセント。
【請求項2】
前記突部は前記掛金具に絞り加工により形成されてなることを特徴とする請求項1記載のクレセント。
【請求項3】
前記突部は前記係合部から円弧状に突出してなることを特徴とする請求項1または2記載のクレセント。
【請求項4】
前記突部は前記掛金具の基部に対する根元部から先端部にかけて、前記掛金具の回動中心から離れる方向に向かう傾斜面状に形成されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のクレセント。
【請求項5】
枠体内に障子を設けてなるサッシにおいて、
見込方向外側位置に受金具が設けられ、前記障子には前記受金具に対して係脱し前記障子を施錠状態とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のクレセントを設けてなることを特徴とするサッシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−222942(P2010−222942A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74426(P2009−74426)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】