説明

クレードルの携帯電話落下防止装置

【課題】クレードルにセットした携帯電話を同クレードルから落下し難くすることができるクレードルの携帯電話落下防止装置を提供する。
【解決手段】車内のクレードル15に、開口保持穴18のサイズを変更可能な保持穴開口変更機構22を設け、この機構22をベルトECU38(プリクラッシュシステム)やエアバックECU39(エアバックシステム)と連携させる。そして、ベルトECU38やエアバックECU39で衝撃が検出された際には、クレードル15の開口保持穴18のサイズを更に絞り、開口保持穴サイズを縮径する。これにより、クレードル15にセットされた携帯電話3を強く保持し、開口保持穴18から落下しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話の置き場所として使用されるクレードルの携帯電話落下防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車内に携帯電話を持ち込んだ際の置き場所として、車内にクレードルを設置する技術(特許文献1等参照)が考案されている。クレードルは、自身にセットされた携帯電話のデータをクレードル側と同期させたり、或いは携帯電話に電流を供給して携帯電話を充電したりする機器である。このように、車内にクレードルを用意しておけば、車内に携帯電話を持ち込んだ際の置き場所に困らず、クレードルに携帯電話を置くと、携帯電話のデータ同期や充電が実行されるので、利便性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−252612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術は、単にクレードルの上に携帯電話を置くだけのものである。このため、もし仮に車両に急ブレーキがかけられたり、車体を大きく旋回したりした際に、携帯電話がクレードルから簡単に落下してしまう問題があった。なお、この問題は、車両に設置されるクレードルのみに限定されるものではなく、急激な揺れが生じればクレードルから携帯電話が落下してしまうので、車両以外の設置先に置かれるクレードルにおいて広く発生する問題である。
【0005】
本発明の目的は、クレードルにセットした携帯電話を同クレードルから落下し難くすることができるクレードルの携帯電話落下防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、携帯電話の置き場所として使用されるクレードルの携帯電話落下防止装置において、前記クレードルがセットされる開口保持穴の大きさを切り換え可能な穴サイズ変更機構と、前記クレードルに対する衝撃を衝撃検出手段により検出した際、前記穴サイズ変更機構を動作させて前記開口保持穴を縮径し、前記携帯電話を前記クレードルに強く保持する保持処理手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、衝撃検出手段で衝撃を検出した際には、穴サイズ変更手段を動作させてクレードルの開口保持穴を縮径することにより、開口保持穴に挿入された携帯電話をクレードルに強く保持する。このため、クレードルが衝撃により大きく揺れたとしても、携帯電話をクレードルから落下し難くすることが可能となる。よって、クレードルから携帯電話が飛び出してユーザに当たるという状況が生じ難くなり、この点でユーザの安全性を確保することが可能となる。
【0008】
本発明では、クレードル本体にセットされる前記携帯電話の電話種類情報を取得する情報取得手段と、前記クレードルの態様を切り換える際に動作する態様変更機構と、前記電話種類情報を基に前記態様変更機構を動作させて、当該クレードルの態様を前記電話種類情報に応じた態様に切り換える制御手段とを備え、前記穴サイズ変更機構は、前記態様変更機構により構成され、これら2者は、衝撃発生時に前記携帯電話を前記開口保持穴に強く保持する機能と、前記開口保持穴を前記携帯電話に応じたサイズに切り換える機能とで共用されていることを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、携帯電話をクレードルにセットする前、携帯電話の電話種類情報が情報取得手段により取得され、その電話種類情報を基に態様変更機構が動作されて、クレードルの態様が携帯電話の態様に切り換えられる。このため、1つのクレードルに、種類の異なる携帯電話を、都度セットすることが可能となるので、携帯電話ごとにクレードルを用意する必要がなくなり、利便性が高いものとなる。また、クレードルの態様が自動的に切り換わるものであるので、面倒さを感じることなく態様切り換えを行うことが可能となる。
【0010】
また、衝撃発生時に携帯電話を開口保持穴に強く保持する機能と、開口保持穴を携帯電話に応じたサイズに切り換える機能とで、1つの穴サイズ変更機構を共用するので、これら機能ごとに機構を別途用意する必要がなくなる。よって、全体の装置サイズの小型化や、部品コストの削減が可能となる。
【0011】
本発明では、前記クレードルは、車内における前記携帯電話の置き場所として車両に搭載され、前記衝撃検出手段は、当該車内の乗員を衝突被害から守るべく車体に設置された安全装置であることを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、例えばエアバックシステム等の安全装置を衝撃検出手段として使用するので、予め車両に搭載されている安全装置を衝撃検出手段としても利用することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、クレードルにセットした携帯電話を同クレードルから落下し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】クレードルの携帯電話落下防止装置の概略構成を示す構成図。
【図2】クレードルの保持穴開口変更機構の概略構成を示す構成図。
【図3】クレードルの通信アンテナ位置変更機構の概略構成を示す構成図。
【図4】クレードルの態様を設定する設定マップのモデルを示すマップ図。
【図5】(a)〜(d)は、クレードルの態様を変更しつつ、衝突時にクレードルの開口保持穴を更に絞るまでの動作の流れを示す説明図。
【図6】別例における携帯電話落下防止装置の概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化したクレードルの携帯電話落下防止装置の一実施形態を図1〜図5に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、電子キーを車両1に近づけて無線によりID(Identification)照合を実行するキー操作フリーシステム2が設けられている。本例の場合、電子キーとして携帯電話3が使用されている。キー操作フリーシステム2には、車外でID照合が成立すれば、ドアロック施解錠が実行されるスマートエントリーシステムと、車内でID照合が成立すれば、車内に設置されたプッシュ式のエンジンスイッチ4を押し操作するのみでエンジンが始動するワンプッシュエンジンスタートシステムとがある。
【0016】
車両1には、携帯電話3との間でID照合を実行するID照合装置5と、ドアロックの施解錠を管理するドアロック装置6と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置7とが設けられ、これらが車内バス8を介して接続されている。ID照合装置5には、同装置5のコントロールユニットとして照合ECU(Electronic Control Unit)9が設けられている。照合ECU9は、携帯電話3からIDコードを取得した際、同IDコードを自身のものと照らし合わせることによりID照合を実行する。
【0017】
本例のキー操作フリーシステム2は、携帯電話3を車両1に極接近位置までかざしてID照合を実行する近距離無線通信方式をとっている。近距離無線通信は、例えば携帯電話3を車両1にかざすと、車両1から送信される起動電波Svによって携帯電話3が電源オフから起動(電源オン)してID信号Sidを車両1に返信し、このID信号Sidに含まれるIDコードによって車両1にID照合を実行させる通信形式である。また、近距離無線通信の通信方式には、RFID(Radio Frequency identification)の一種として、例えばFeliCa(フェリカ(R))が使用されている。近距離無線通信の周波数には、例えばHF(High Frequency)が使用されている。
【0018】
携帯電話3には、電話やメールの機能を実行する電話機能部10の他に、携帯電話3において近距離無線通信を実行する近距離無線部11が設けられている。近距離無線部11は、例えば1つのICチップにより形成され、内蔵メモリ(図示略)にIDコードが登録されている。このIDコードは、携帯電話3が電子キーとして持つ固有IDである。また、近距離無線部11は、通常、電源オフをとり、車両1から送信される起動電波Svにより起動する。また、近距離無線部11は、例えば携帯電話3の電話本体3aの後面に配置されている。
【0019】
また、車両1には、近距離無線通信の動作を管理するリーダライタ制御ECU12が設けられている。また、リーダライタ制御ECU12には、車外で携帯電話3と近距離無線通信(車外かざし照合)を行う車外リーダライタ13と、車内で携帯電話3と近距離無線通信(車内かざし照合)を行う車内リーダライタ14とが接続されている。これらリーダライタ13,14は、起動電波Svの送信と、携帯電話3から送信される各種電波の受信との両方の通信、即ち相互通信が可能である。また、これらリーダライタ13,14は、車両周囲に携帯電話3が存在するか否かを見るべく、起動電波Svの送信を断続的に実行する。
【0020】
車両が駐車状態にある際、施錠状態のドアロックを解錠するには、携帯電話3を車外リーダライタ13にかざす動作をとる。このとき、車内リーダライタ14と携帯電話3とが極接近状態をとり、リーダライタ制御ECU12は車外かざし照合を開始する。リーダライタ制御ECU12は、車外の携帯電話3からIDコードを取得すると、同IDコードを照合ECU9に転送する。照合ECU9は、このIDコードでID照合が成立することを確認すると、車外かざし照合が成立すると認識し、ドアロックを解錠状態に切り変える。また、ドアロックが解錠状態の際に、携帯電話3を車外リーダライタ13にかざして、車外かざし照合が成立すると、解錠状態のドアロックを施錠状態に切り換える。
【0021】
車両1には、車内に携帯電話3の置き場所としてクレードル15が設けられている。クレードル15は、自身にセットされた携帯電話3のデータを無線によってクレードル15側と同期させたり、或いは充電アンテナ16によって非接触で携帯電話3を充電したりする機器である。充電アンテナ16は、周囲に磁界を発生することが可能なアンテナであって、電磁誘導作用によって携帯電話3の2次電池(図示略)に非接触で充電が可能である。クレードル15は、例えば車内のセンターコンソール等に設けられ、クレードル本体17に形成された開口保持穴18に携帯電話3が挿入保持される。
【0022】
クレードル本体17には、前述した車外リーダライタ13が一体に組み込まれている。このため、乗車した際には、携帯電話3をクレードル15にセットすることにより車内かざし照合を実行する。クレードル15に携帯電話3がセットされると、車外リーダライタ13と携帯電話3とが極接近状態をとり、結果、リーダライタ制御ECU12は車内かざし照合を実行する。車内かざし照合は、車外かざし照合と同様の処理内容であるので、詳細は省略する。そして、車内かざし照合が成立すると、エンジンスイッチ4による電源遷移操作及びエンジン始動操作が許可される。
【0023】
車内リーダライタ14には、車内リーダライタ14の本体部分をなす車内リーダライタ通信回路19と、車内リーダライタ14の送受信アンテナ(以降、車内リーダライタアンテナ20と記す)とが設けられている。車内リーダライタ通信回路19は、リーダライタ制御ECU12から受け取ったデータを変調や増幅して車内リーダライタアンテナ20から送信電波として送信したり、また車内リーダライタアンテナ20での受信電波を復調や増幅してリーダライタ制御ECU12に出力したりする。なお、車外リーダライタ13も、車内リーダライタ14と同様の構成及び動作をとり、ここでは説明を省略する。
【0024】
本例の場合、クレードル15には、クレードル15の態様を自動変更可能な態様自動変更装置21が設けられている。態様自動変更装置21は、携帯電話3に登録されている携帯電話情報Sktを車外かざし照合の際に取得し、この携帯電話情報Sktに応じた態様にクレードル15の態様を設定する。クレードル15の態様としては、例えばクレードル15の開口保持穴18の穴径(開口保持穴サイズR:図2参照)や、クレードル15に内蔵された車内リーダライタアンテナ20のアンテナ位置や、クレードル15に内蔵された充電アンテナ16のアンテナ位置などがある。ここで、開口保持穴サイズRとは、開口保持穴18の開口面積のことを言う。なお、開口保持穴サイズRが開口保持穴の大きさに相当し、携帯電話情報Sktが電話種類情報に相当する。
【0025】
図1及び図2に示すように、クレードル本体17には、開口保持穴サイズRを変更する際に動作する保持穴開口変更機構22が設けられている。保持穴開口変更機構22には、位置が不変の一対の固定側壁23,24と、固定側壁23に対してスライド移動により接近離間可能な可動側壁25と、固定側壁24に対してスライド移動により接近離間可能な可動側壁26とが設けられている。そして、固定側壁23に対する可動側壁25の位置と、固定側壁24に対する可動側壁26の位置とを、例えばモータ等のアクチュエータ(図示略)により変えることによって、開口保持穴サイズRを変更する。なお、保持穴開口変更機構22が穴サイズ変更機構及び態様変更機構を構成する。
【0026】
また、図1及び図3に示すように、クレードル本体17には、車内リーダライタアンテナ20のアンテナ位置を変更する際に動作する通信アンテナ位置変更機構27が設けられている。図3に示すように、通信アンテナ位置変更機構27には、例えば一軸方向にスライド移動可能なスライド軸28と、同スライド軸28に対してその直交方向にスライド移動可能なスライド部29とが設けられ、同スライド部29に車内リーダライタアンテナ20(車内リーダライタ14自体でも可)が取着されている。そして、これらスライド軸28及びスライド部29の位置を、例えばモータ等のアクチュエータ(図示略)により変えることによって、車内リーダライタ14のアンテナ位置を変更する。なお、通信アンテナ位置変更機構27が態様変更機構を構成する。
【0027】
さらに、クレードル本体17には、充電アンテナ16のアンテナ位置を変更する際に動作する充電アンテナ位置変更機構30が設けられている。充電アンテナ位置変更機構30は、クレードル15の充電アンテナ16の位置を、携帯電話3の充電アンテナ(二次コイル:図示略)に合わせ込むためのものである。充電アンテナ位置変更機構30は、例えば通信アンテナ位置変更機構27と同様の構成をとり、ここでは説明を省略する。なお、充電アンテナ位置変更機構30が態様変更機構を構成する。
【0028】
図1に示すように、クレードル本体17には、クレードル本体17に対する携帯電話3のセットが完了したか否かを検知するセット完了検知部31が設けられている。セット完了検知部31は、例えばマイクロスイッチやセンサ等からなり、クレードル本体17に携帯電話3がセットされたことを検知すると、セット完了通知Sonをリーダライタ制御ECU12に出力する。
【0029】
車内リーダライタ通信回路19には、携帯電話3から携帯電話情報Sktを取得する電話情報取得部32が設けられている。電話情報取得部32は、携帯電話3が車外リーダライタ13にかざされて車外かざし照合が行われた際に、同照合の一連の照合過程において起動電波Svとともに携帯電話情報返信要求Sykを送信して、携帯電話3からIDコードとともに携帯電話情報Sktを取得する。携帯電話情報Sktには、携帯電話3の機種番号、形状(サイズ)、アンテナ位置等の各種情報が含まれている。携帯電話3の形状(サイズ)とは、例えば電話本体3aを水平面方向に切った際の形状に相当する。なお、電話情報取得部32が情報取得手段に相当する。
【0030】
リーダライタ制御ECU12には、電話情報取得部32で取得した携帯電話情報Sktを基にクレードル15の態様を変更する態様変更実行部33が設けられている。態様変更実行部33は、取得した携帯電話情報Sktに基づき、保持穴開口変更機構22や通信アンテナ位置変更機構27や充電アンテナ位置変更機構30を動作することによって、クレードル15の態様を、同クレードル15にセットされた携帯電話3に応じた態様に変更する。また、態様変更実行部33は、セット完了検知部31からセット完了の旨の検知信号を入力すると、態様変更動作を開始する。なお、態様変更実行部33が制御手段に相当する。
【0031】
リーダライタ制御ECU12のメモリには、図4に示すような、クレードル15の態様を設定する際に使用する設定マップ34が登録されている。設定マップ34には、携帯電話3の機種(機種番号、形状、アンテナ位置)と、クレードル15の態様とが対応付けられて登録されている。態様変更実行部33は、携帯電話3がクレードル15にセットされた際、この設定マップ34を参照することによって携帯電話3に準じた態様を把握し、この設定マップ34から決まる状態にクレードル15の態様を設定する。
【0032】
車両1には、ネットワークNを介してサーバ35とネットワーク通信が可能なネットワーク通信装置36が設けられている。このネットワーク通信装置36としては、例えばDCM(Data Communication Module)等が使用されている。携帯電話情報Sktは、車外かざし照合の際に携帯電話3から取得することに限らず、ネットワーク通信装置36を使用して、ネットワークを介してサーバ35から取得することも可能である。
【0033】
車両1には、例えば衝撃等が検知された際に、開口保持穴サイズRを更に絞って携帯電話3がクレードル15から飛び出さないようにする携帯電話落下防止装置37が設けられている。携帯電話落下防止装置37は、例えばプリクラッシュシステムやエアバックシステムと連携し、これらシステムから車両1の衝突を検知した際、クレードル15の開口保持穴サイズRを更に絞って、クレードル15が携帯電話3から落下してしまうことを防止する。なお、プリクラッシュシステムは、進路上の先行車等と衝突する可能性が高いと判断した場合、ブレーキを作動させて衝突速度を低減するとともに、シートベルトの早期巻き取りによりプリテンショナーの効果を高めて、衝突被害を軽減するものである。
【0034】
リーダライタ制御ECU12には、シートベルトの巻き取り動作を管理するベルトECU38が接続されている。ベルトECU38は、プリクラッシュシステムの動作としてシートベルトの早期巻き取りを検出すると、衝突があった旨の通知として衝撃検知通知Scsをリーダライタ制御ECU12に出力する。なお、ベルトECU38が衝撃検出手段及び安全装置を構成する。
【0035】
リーダライタ制御ECU12には、エアバックシステムのコントロールユニットとしてエアバックECU39が接続されている。エアバックECU39は、衝突を検知すると、エアバックを開動作して、衝突被害を軽減する。このとき、エアバックECU39は、エアバックの開動作を確認すると、衝突があった旨の通知として衝撃検知通知Scsをリーダライタ制御ECU12に出力する。なお、エアバックECU39が衝撃検出手段及び安全装置を構成する。
【0036】
リーダライタ制御ECU12には、衝撃を検出した際にクレードル15の開口保持穴サイズRを絞る落下防止処理部40が設けられている。落下防止処理部40は、ベルトECU38やエアバックECU39から衝撃検知通知Scsを入力すると、車両1に衝撃が生じたと認識する。そして、落下防止処理部40は、車両1に衝突があったことを確認すると、クレードル15の開口保持穴サイズRを現在の状態から更に絞り、クレードル15から携帯電話3が落下してしまうことを防止する。落下防止処理部40は、衝撃を検出する間、開口保持穴サイズRの絞り状態を継続し、衝撃を検出しなくなると、開口保持穴サイズRを元の大きさに戻す。なお、落下防止処理部40が保持処理手段に相当する。
【0037】
次に、本例の態様自動変更装置21及び携帯電話落下防止装置37の動作を図5に従って説明する。
まず最初に、図5(a)に示す通り、携帯電話3の近距離無線部11に、IDコードの他に携帯電話情報Sktを登録しておく。携帯電話情報Sktの登録の仕方としては、例えば携帯電話3のテンキー等を操作することによって直入力したり、携帯電話3をネットワークNに接続してサーバ35から取得したり、専用の登録ツール(図示略)を携帯電話3に繋いで同登録ツールから取得したりする。これにより、近距離無線部11には、IDコード及び携帯電話情報Sktが登録される。
【0038】
駐車状態の車両1に乗車する際には、図5(b)に示すように車両1に近づき、携帯電話3を車外リーダライタ13にかざす動作をとる。すると、携帯電話3と車外リーダライタ13との間で車外かざし照合が開始される。このとき、携帯電話3の近距離無線部11は、車外リーダライタ13から送信された起動電波Svによって起動し、自身に登録されたIDコードを、携帯電話3の固有IDとして車外リーダライタ13に返信する。そして、このIDコードにより車外かざし照合が成立すると、ドアロックが施錠状態から解錠状態に切り換わる。
【0039】
車外かざし照合時、携帯電話3は、IDコードとともに、携帯電話情報Sktを車外リーダライタ13に送信する。電話情報取得部32は、車外かざし照合の際に携帯電話3から携帯電話情報Sktを取得すると、これを態様変更実行部33に出力する。態様変更実行部33は、電話情報取得部32から携帯電話情報Sktを受け付けると、設定マップ34を参照して、乗車を試みようとしているユーザが所持する携帯電話3の種類を把握する。そして、態様変更実行部33は、設定すべき携帯電話3の態様の内容を自身のメモリに保持する。
【0040】
ドアロックを解錠したユーザが車内に乗車すると、今度は図5(c)に示すように、車内に持ち込んだ携帯電話3をクレードル15にセットする。ところで、クレードル15には車内リーダライタ14が組み込まれ、この車内リーダライタ14からは起動電波Svが断続的に送信されているので、携帯電話3をクレードル15にセットする際には、そのセット過程で車内かざし照合が実行される。そして、この車内かざし照合が成立すると、エンジンスイッチ4による電源遷移操作及びエンジン始動操作が許可される。
【0041】
携帯電話3がクレードル15に奥まで挿し込まれると、その完挿しがセット完了検知部31により検出され、セット完了検知部31からセット完了通知Sonが態様変更実行部33に出力される。態様変更実行部33は、セット完了通知Sonを入力すると、携帯電話情報Sktと設定マップ34とから決まる態様に保持穴開口変更機構22や通信アンテナ位置変更機構27や充電アンテナ位置変更機構30を動作して、クレードル15の開口保持穴サイズRや、車内リーダライタアンテナ20のアンテナ位置や、充電アンテナ16のアンテナ位置を、携帯電話3に応じた態様に変更する。これにより、クレードル15が自身にセットされた携帯電話3に応じたものとなり、携帯電話3の保持や通信や充電等を、問題なく実行することが可能となる。
【0042】
走行中において例えば車両1に衝突が発生すると、プリクラッシュシステムやエアバックシステムが動作して、運転者の安全を確保する。このとき、プリクラッシュシステムが動作すると、ベルトECU38はシートベルトの早期巻き取りの動作開始とともに、衝撃検知通知Scsを落下防止処理部40に出力する。また、エアバックシステムが動作すると、エアバックECU39はエアバックの開動作とともに、衝撃検知通知Scsを落下防止処理部40に出力する。
【0043】
落下防止処理部40は、ベルトECU38やエアバックECU39から衝撃検知通知Scsを入力すると、図5(d)に示すように保持穴開口変更機構22を動作して、クレードル15の開口保持穴サイズRを現在状態から更に絞り、開口保持穴サイズRを縮径する。これにより、携帯電話3がクレードル15の開口保持穴18により強く保持されるので、衝撃発生によってクレードル15に大きな揺れが発生しても、携帯電話3が開口保持穴18から飛び出し難くなる。
【0044】
ところで、1台の車両1を1家族で共有に所持することがあるが、この場合において携帯電話3を車両キー(電子キー)として使用する状況下では、一般的に各家人それぞれ所持する携帯電話3は異なる機種であることが多いので、形状やアンテナ位置等の異なる各々の携帯電話3が、共通の一車両1の車両キーとして使用されることになる。このとき、車内にクレードルを設置しようとすると、それぞれの携帯電話3の種類に合うクレードルを、携帯電話3の数だけ用意しなくてはならず、その設置や管理が非常に煩雑となる。
【0045】
しかし、本例においては、クレードル15の開口保持穴サイズRや各種アンテナ位置を自動変更可能とし、車外かざし照合時に携帯電話3から携帯電話情報Sktを読み取り、クレードル15の開口保持穴サイズRや、車内リーダライタアンテナ20のアンテナ位置や、充電アンテナ16のアンテナ位置を、各携帯電話3に応じた態様に設定する。このため、種類の異なる携帯電話3を車両キーとして使用しても、クレードル15の態様を携帯電話3に応じた態様に自動変更することが可能となる。よって、携帯電話3ごとにクレードル15を用意する必要がないので、クレードル15の管理が煩雑にならない。また、クレードル15の態様変更は自動で実行されるので、面倒さを感じることなく、クレードル15の態様を携帯電話3の態様に簡単に合わせ込むことが可能となる。
【0046】
また、プリクラッシュシステムやエアバックシステムにより車両1に衝撃が検出された際には、クレードル15の開口保持穴サイズRを更に絞り、クレードル15にセットされた携帯電話3が、開口保持穴18から外に飛び出ないようにする。このため、車両1が衝突等してクレードル15に大きな衝撃が加わっても、携帯電話3がクレードル15から飛び出し難くなるので、携帯電話3が運転者等に向かって飛び出す状況が生じ難くなり、安全性を確保することが可能となる。
【0047】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)衝撃が検出された際、保持穴開口変更機構22によりクレードル15の開口保持穴サイズRを更に絞り、携帯電話3を開口保持穴18に強く保持する。このため、開口保持穴18から携帯電話3を飛び出し難くすることができ、ひいては乗員の安全性を確保することができる。
【0048】
(2)車外かざし照合時に携帯電話3から携帯電話情報Sktを読み取り、クレードル15の開口保持穴サイズRや各種アンテナ位置を、携帯電話情報Sktに応じた態様に自動変更する。このため、クレードル15の態様が携帯電話情報Sktを基に自動変更されるので、面倒さを感じることなく、クレードル15の態様を簡単に変更することができる。
【0049】
(3)衝撃発生時に携帯電話3を開口保持穴18に強く保持する機能と、開口保持穴18を携帯電話3に応じたサイズに切り換える機能とで、1つの保持穴開口変更機構22を共用するので、これら機能ごとに機構を別途用意する必要がなくなる。よって、全体の装置サイズを小型化でき、部品コストを削減することもできる。
【0050】
(4)携帯電話落下防止装置37をプリクラッシュシステムやエアバックシステムと連携させ、ベルトECU38やエアバックECU39で衝突が検知された際に携帯電話落下防止装置37を作動させる。このため、プリクラッシュシステムやエアバックシステムを携帯電話落下防止装置37に利用することができ、衝撃の検出部品を別途用意する必要がない。
【0051】
(5)クレードル15に車内リーダライタ14を一体に組み込んだので、携帯電話3をクレードル15にセットした際、同セットに連動して車内照合を実行することができる。このため、携帯電話3をクレードル15にセットすれば、これとともに車内照合が完了するので、車内照合の実行に手間を労せずに済む。
【0052】
(6)クレードル15の態様変更として、車内リーダライタ14の車内リーダライタアンテナ20のアンテナ位置を切り換えるようにしたので、それぞれアンテナ位置が異なる携帯電話3をクレードル15にセットしても、車内リーダライタ14の車内リーダライタアンテナ20を、各携帯電話3のアンテナに合わせ込むことが可能となる。よって、1つのクレードル15に種類の異なる携帯電話3をセット可能としても、携帯電話3と車内リーダライタ14との高い通信成立性を確保することができる。
【0053】
(7)クレードル15の態様変更として、車内リーダライタ14の充電アンテナ16のアンテナ位置を切り換えるようにしたので、それぞれ充電アンテナの位置が異なる携帯電話3をクレードル15にセットしても、車内リーダライタ14の充電アンテナ16を、各携帯電話3の充電アンテナに合わせ込むことが可能となる。よって、1つのクレードル15に種類の異なる携帯電話3をセット可能としても、これら携帯電話3をより確実に充電することができる。
【0054】
(8)車外かざし照合時、携帯電話3からIDコードとともに携帯電話情報Sktを取り込むので、携帯電話情報Sktの取り込みを、車外かざし照合と併せて実行することができる。よって、携帯電話情報Sktを車両1に通知する作業を別途行う必要がないので、利便性が高いものとなる。
【0055】
(9)携帯電話情報SktをネットワークNからも取得可能としたので、例えば車両1の近傍に携帯電話3が存在しないときであっても、ネットワークNを介して携帯電話情報Sktを取得することができる。よって、逐次必要とするときに、携帯電話情報Sktを都度取得可能となるので、利便性を高くすることができる。
【0056】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・衝撃検出時に携帯電話3をクレードル15に強く保持する機構(穴サイズ変更機構)は、保持穴開口変更機構22に限定されない。例えば、この保持穴開口変更機構22とは別に、図6に示すような保持機構51を設け、この保持機構51によって携帯電話3をクレードル15に強く保持するものでもよい。なお、保持機構51は、例えば伸縮可能なリング状のチューブ部材52を持ち、このチューブ部材52の内部に流体(液体、気体)を流し込むことによりチューブ部材52の線径を広げて、携帯電話3をクレードル15に保持する。
【0057】
・衝撃検出手段は、安全装置(ベルトECU38、エアバックECU39)に限定されない。例えば、クレードル15自体に備え付けられた加速度センサとしてもよい。この場合、衝撃を見るセンサが一体となったユニット化されたクレードル15を提供することができる。
【0058】
・衝撃検出手段は、安全装置に限定されず、例えば予め車体に搭載された車載センサを利用してもよい。
・衝撃検出手段は、加速度センサに限定されず、例えば荷重センサ等の他のセンサを利用可能である。
【0059】
・安全装置は、プリクラッシュシステムやエアバックシステムに限らず、運転者を衝突の被害から守るシステムであれば、どのようなシステムを採用してもよい。
・態様変更機構は、クレードル15の部品形状や部品配置位置を変更する機構に限定されない。例えば、クレードル15の前後にそれぞれ車内リーダライタアンテナ20(充電アンテナ16でも可)を設けておき、これらアンテナ20,20…のうち携帯電話3に適するものを選択使用するようにしてもよい。
【0060】
・クレードル15は、車内リーダライタ14が一体に組み込まれたものに限らず、車内リーダライタ14が省略されたものでもよい。
・クレードル15は、車内に後付けされるものに限らず、予め車体に一体組み付けされたものでもよい。
【0061】
・クレードル15の態様は、開口保持穴サイズR、車内リーダライタアンテナ20のアンテナ位置、充電アンテナ16のアンテナ位置に限定されない。例えば、クレードル15に携帯電話3を保持するフック部が設けられていれば、このフック部の位置を切り換えるものでもよい。
【0062】
・リーダライタ13,14の設置位置は、適宜変更可能である。
・携帯電話情報Sktに含まれる情報内容は、機種番号、形状(サイズ)、アンテナ位置等に限定されず、携帯電話3の属性を示すものであれば、どのような情報でもよい。
【0063】
・携帯電話情報Sktは、車外かざし照合のときや、ネットワークNから取得することに限定されない。例えば、クレードル15にボタンを設けておき、このボタンが操作されたとき、クレードル15が携帯電話3にアクセスして、携帯電話3から携帯電話情報Sktを取得してもよい。
【0064】
・携帯電話情報Sktは、携帯電話3やネットワークNから、必要の都度取得することに限定されず、例えば車両1に予め登録されていてもよい。
・保持穴開口変更機構22、通信アンテナ位置変更機構27、充電アンテナ位置変更機構30は、実施形態に述べた構造に限らず、適宜変更可能である。
【0065】
・ネットワーク通信装置36は、DCMに限定されず、例えば無線LANでもよい。
・ネットワーク通信装置36は、リーダライタ制御ECU12と別体であることに限定されず、機能としてリーダライタ制御ECU12に組み込まれていてもよい。
【0066】
・クレードル15での充電は、非接触式に限定されず、接触式を採用してもよい。
・キー操作フリーシステム2(電子キーシステム)は、近距離無線通信を用いた照合(RFID)を行うシステムに限定されない。即ち、認証実行手段は、RFIDに則した照合を行うリーダライタ13,14に限定されない。例えば、車両1からキーID返信要求としてリクエストを送信し、このリクエストに携帯電話3を応答させて、IDコードを車両1に返信させる一般的なキー操作フリーシステムを採用してもよい。
【0067】
・電子キーシステムで使用する周波数は、HF、LF(Low Frequency)、UHF(Ultra High Frequency)等に限定されず、種々の帯域が使用可能である。
・クレードル15の設置対象は、車両1に限定されず、例えば住宅等でもよい。
【0068】
・照合成立時に操作可能となる機器は、ドアロックやエンジンに限定されず、例えば車内のカーナビゲーションシステム、オーディオシステム、グローブボックス等としてもよい。
【0069】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)請求項1〜3のいずれかにおいて、前記衝撃検出手段は、クレードル本体に一体に組み付けられた加速度センサである。この構成によれば、衝撃検出手段をクレードルと一体化可能となるので、これらを1つの部品としてユニット化することが可能となる。
【0070】
(ロ)請求項1〜3のいずれかにおいて、前記クレードルは、車内における前記携帯電話の置き場所として車両に搭載され、前記衝撃検出手段は、前記車両において車体の加速度を見るべく車体に設置された加速度センサである。この構成によれば、車体に設置された加速度センサを利用して衝撃の有無を見るので、衝撃を見るためのセンサを別途用意する必要がない。
【符号の説明】
【0071】
1…車両、3…携帯電話、15…クレードル、17…クレードル本体、18…開口保持穴、22…穴サイズ変更機構及び態様変更機構を構成する保持穴開口変更機構、27…態様変更機構を構成する通信アンテナ位置変更機構、30…態様変更機構を構成する充電アンテナ位置変更機構、32…情報取得手段としての電話情報取得部、33…制御手段としての態様変更実行部、37…携帯電話落下防止装置、38…衝撃検出手段及び安全装置を構成するベルトECU、39…衝撃検出手段及び安全装置を構成するエアバックECU、40…保持処理手段としての落下防止処理部、R…開口保持穴の大きさとしての開口保持穴サイズ、Skt…電話種類情報としての携帯電話情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電話の置き場所として使用されるクレードルの携帯電話落下防止装置において、
前記クレードルがセットされる開口保持穴の大きさを切り換え可能な穴サイズ変更機構と、
前記クレードルに対する衝撃を衝撃検出手段により検出した際、前記穴サイズ変更機構を動作させて前記開口保持穴を縮径し、前記携帯電話を前記クレードルに強く保持する保持処理手段と
を備えたことを特徴とするクレードルの携帯電話落下防止装置。
【請求項2】
クレードル本体にセットされる前記携帯電話の電話種類情報を取得する情報取得手段と、
前記クレードルの態様を切り換える際に動作する態様変更機構と、
前記電話種類情報を基に前記態様変更機構を動作させて、当該クレードルの態様を前記電話種類情報に応じた態様に切り換える制御手段とを備え、
前記穴サイズ変更機構は、前記態様変更機構により構成され、これら2者は、衝撃発生時に前記携帯電話を前記開口保持穴に強く保持する機能と、前記開口保持穴を前記携帯電話に応じたサイズに切り換える機能とで共用されている
ことを特徴とする請求項1に記載のクレードルの携帯電話落下防止装置。
【請求項3】
前記クレードルは、車内における前記携帯電話の置き場所として車両に搭載され、前記衝撃検出手段は、当該車内の乗員を衝突被害から守るべく車体に設置された安全装置である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のクレードルの携帯電話落下防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−97535(P2011−97535A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252348(P2009−252348)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】