説明

クレードル装置及び無線通信装置

【課題】通信端末で近距離無線通信を行うときの利便性を向上することができるクレードル装置及び無線通信装置を提供する。
【解決手段】車内に、キー機能を持った携帯電話2の置き場所としてクレードル装置19を設置する。クレードル装置19は、携帯電話2を収納する収納部21が開口形成される。クレードル装置19には、携帯電話2と近距離無線通信する車内通信用アンテナ13が組み込まれている。車内通信用アンテナ13は、環状のループアンテナを中央にて折り返すことにより、収納部21を両側から挟むコ字形状に形成される。このため、携帯電話2を表裏のどちら側を向けてクレードル装置19に挿し込んでも、携帯電話2と車内通信用アンテナ13は近距離無線通信が実行可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末の置き場所として使用されるクレードル装置、及びクレードル装置を備えた無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の電子キーシステムの一種として、携帯電話に車両のIDコードを登録して、携帯電話を車両キーとして使用する携帯電話キーシステムが考案されている(特許文献1等参照)。このシステムには、例えばNFC(Near Field Communication)等の近距離無線通信技術(通信距離10cm程度)が応用される。
【0003】
携帯電話キーシステムの場合、車外に位置する携帯電話とID照合を行う通信機として車外リーダライタが設けられ、車内に持ち込まれた携帯電話とID照合を行う通信機として車内リーダライタが設けられる。そして、例えば車外からドアガラスを介して車外リーダライタに携帯電話をかざしてID照合が成立すれば、ドアロックの施解錠が実行され、車内リーダライタに携帯電話をかざしてID照合が成立すれば、エンジン始動操作が許可される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−206297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図16に示すように、携帯電話には、電話本体81内に基板82が収容され、基板82の一方の側に近距離無線通信用のアンテナ83が配置される構造をとる。よって、仮にアンテナ83が反対向きの状態で携帯電話をリーダライタのアンテナ84にかざされると、図17に示すように、リーダライタから電波として放射される磁界によって基板82のグランド金属板85に渦電流が発生し、渦電流によってリーダライタの電波を打ち消す反対方向の磁界が発生して、通信が成立しなくなる。
【0006】
このため、携帯電話には裏表が存在することになるので、携帯電話をリーダライタにかざすときは、携帯電話の向きに気を付けなければならない。従って、ユーザにとっては、携帯電話でリーダライタと通信を行うとき、携帯電話の表裏の向き合わせが面倒に感じてしまう問題があった。
【0007】
本発明の目的は、通信端末で近距離無線通信を行うときの利便性を向上することができるクレードル装置及び無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題点を解決するために、本発明では、通信端末の置き場所であり、本体部に設けられた収納部に前記通信端末が収納されると、該通信端末と近距離無線通信を実行するクレードル装置であって、前記通信端末と近距離無線通信が可能であり、一続きのアンテナ素線を折り返してコ字形状とすることにより、前記収納部を両側から挟む形状をとるアンテナを備えたことを要旨とする。
【0009】
本発明の構成によれば、クレードル装置のアンテナを、収納部を両側から挟む形状としたので、通信端末を表裏のどちら側を向けて収納しても、通信端末のアンテナがクレードル装置のアンテナに対向する位置状態をとる。よって、通信端末の表裏を気にすることなく通信端末をクレードル装置に収納することが可能となるので、ユーザが通信端末をクレードル装置に取り付ける際の利便性をよくすることが可能となる。
【0010】
本発明では、前記アンテナは、通信の制御回路に接続されて通信の主体側で動作する1次アンテナであることを要旨とする。この構成によれば、自らが通信端末と無線通信を実行することが可能なクレードル装置を提供することが可能となる。
【0011】
本発明では、1次アンテナを有する台座部に後付け可能であり、前記1次アンテナに対して電波を中継可能な2次アンテナを前記アンテナとして有する後付け式のクレードル装置であって、前記台座部に後付けクレードル装置が設置されていないときは、前記通信端末を前記1次アンテナに直接近づけて前記近距離無線通信を実行し、前記台座部に前記後付けクレードル装置が設置されているときは、前記後付けクレードルに前記通信端末を収納した際、前記2次アンテナにより電波を中継して前記近距離無線通信を実行することを要旨とする。この構成によれば、クレードル装置が必要のないユーザには、台座部にクレードル装置を設けず、通信端末を1次アンテナに直接近づけて通信する使用態様にする。一方、クレードル装置が必要なユーザには、台座部に後付けクレードル装置を設け、通信端末がクレードル装置に収納された際、後付けクレードル装置に備えられた2次アンテナにより電波を中継して通信する使用形態にする。よって、ユーザの要望に応じた使用態様をとることが可能となるので、利便性をよくすることが可能となる。
【0012】
本発明では、前記アンテナは、単なる環状のアンテナ素線を折り返した形状をとることを要旨とする。この構成によれば、環状のアンテナ素線を単に折り返すことでアンテナが製造可能となるので、簡単な工程で本構成のアンテナを製造することが可能となる。
【0013】
本発明では、前記アンテナは、環状のアンテナ素線を中央で交差させたものを、その交差部分にて折り返した形状をとることを要旨とする。この構成によれば、環状のアンテナ素線を中央で交差させ、その交差部分で折り返すようにすれば、折り返すことによってできる一方のアンテナ部と他方のアンテナ部とには、ともに同じ方向に電流が流れるループとなる。よって、各アンテナ部に電流を流したとき、各アンテナ部に発生する電波はともに同じ方向を向くので、磁界同士が打ち消し合う可能性が低くなる。従って、通信の信頼性を確保することが可能となる。
【0014】
本発明では、通信マスタとその通信端末とが近距離無線通信によって通信を実行する無線通信装置において、前記通信マスタにクレードル装置の後付け箇所として設けられた台座部と、前記台座部に設けられた1次アンテナと、自身に設けられた収納部に前記通信端末を収納可能であり、前記1次アンテナに対して電波を中継可能な2次アンテナにより、前記通信端末と近距離無線通信を行う後付けクレードル装置とを備え、前記2次アンテナは、一続きのアンテナ素線を折り返してコ字形状とすることにより、前記収納部を両側から挟む形状をとり、前記台座部に前記後付けクレードル装置が設置されていないときは、前記通信端末を前記1次アンテナに直接近づけて前記近距離無線通信を実行し、前記台座部に前記後付けクレードル装置が設置されているときは、前記後付けクレードルに前記通信端末を収納した際、前記2次アンテナにより電波を中継して前記近距離無線通信を実行することを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通信端末で近距離無線通信を行うときの利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の近距離照合システムの構成図。
【図2】クレードル装置の設置状態を示す車内の斜視図。
【図3】クレードル装置のアンテナ形状を示す斜視図。
【図4】携帯電話及びクレードル装置の各アンテナ形状を示す模式図。
【図5】アンテナの製造の仕方を説明する手順図。
【図6】クレードル装置のアンテナに流れる電流を示す説明図。
【図7】(a)表向きの携帯電話をクレードル装置に挿し込んだときの状態図、(b)は裏向きの携帯電話をクレードル装置に挿し込んだときの状態図。
【図8】第2実施形態のアンテナの製造の仕方を説明する手順図。
【図9】クレードル装置のアンテナに流れる電流を示す説明図。
【図10】携帯電話をクレードル装置に挿し込んだときの状態図。
【図11】第3実施形態の後付けクレードル装置の概要図。
【図12】後付けクレードル装置のアンテナ形状を示す斜視図。
【図13】近距離照合システムの等価回路図。
【図14】後付けクレードル装置を使用せずに通信するときの動作図。
【図15】後付けクレードル装置を使用して通信するときの動作図。
【図16】従来のリーダライタの概要図。
【図17】通信用の磁界が打ち消される原理を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化したクレードル装置及び無線通信装置の第1実施形態を図1〜図7に従って説明する。
【0018】
図1に示すように、車両1には、車両キーとして使用可能な携帯電話2と近距離無線通信によってID照合する近距離照合システム3が設けられている。携帯電話2は、例えばインターネットを介してサーバ等にアクセスしてIDコードをダウンロードすることにより、車両キーとして使用可能となる。近距離無線通信には、例えばNFC(Near Field Communication)が使用されている。なお、携帯電話2が通信端末に相当する。
【0019】
車両1には、車外の携帯電話2と近距離照合(車外近距離照合)を行う車外リーダライタ4と、車内の携帯電話2と近距離照合(車内近距離照合)を行う車内リーダライタ5とが設けられている。これらリーダライタ4,5は、HF帯の電波を送受信可能であって、携帯電話2と10cm以下の通信範囲で無線通信を実行する。リーダライタ4,5は、送信電波の波形変化にて受信電波を検出することにより、電波送受信の同時実行が可能である。なお、車内リーダライタ5が通信マスタに相当する。
【0020】
車両1には、近距離照合を統括制御するリーダライタECU6と、ドアロックの施解錠を管理するドアロック装置7と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置8とが設けられ、これらが車内バス9を介して接続されている。リーダライタECU6には、通信回路10を介して車外通信用アンテナ11が接続され、通信回路12を介して車内通信用アンテナ13が接続されている。これらアンテナ11,13は、図3に示すアンテナ素線14を複数巻回することにより生成されるインダクタンス15と共振用のコンデンサ16との共振回路からなる。リーダライタECU6のメモリ(図示略)には、携帯電話2のIDコードが登録されている。なお、リーダライタECU6が制御回路に相当する。
【0021】
携帯電話2には、リーダライタ4,5と近距離無線通信によってID照合を行うキー制御部17が設けられている。キー制御部17は、例えば近距離無線通信モジュールであって、携帯電話2の電話機能から独立した構造をとっている。なお、近距離無線通信モジュールは、車両1から送信される電波を電源に起動するもの(カードモード)と、自らのバッテリで起動するもの(独立モード)とがある。以降は、カードモードの場合を説明する。
【0022】
カードモードの場合、キー制御部17は、自ら電源を持たず、リーダライタ4,5から放射される電力電波Svを電源として動作する。キー制御部17のメモリ(図示略)には、携帯電話2のIDコードが登録されている。なお、独立モードの場合は、リーダライタ4,5の磁界を検知すると起動して、認証を実行する。
【0023】
車両1が駐車中の際、車外から携帯電話2を車外リーダライタ4にかざすと、車外リーダライタ4から断続的に送信されている電力電波Svを電源としてキー制御部17が起動し、ID信号Sidを送信する。ID信号Sidには、近距離照合用のIDコードが含まれている。リーダライタECU6は、車外リーダライタ4でID信号Sidを受信すると、自身に登録されたIDコードを用いて車外近距離照合を行い、車外近距離照合が成立することを確認すると、ドアロック装置7によるドアロック施解錠を許可又は実行する。
【0024】
また、ドア開閉がカーテシスイッチ(図示略)により検出されると、車外リーダライタ4に代えて、今度は車内リーダライタ5が電力電波Svの断続送信を開始する。そして、車内リーダライタ5に携帯電話2がかざされると、車内近距離照合が開始される。リーダライタECU6は、車内近距離照合が成立することを確認すると、プッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ18による車両電源遷移操作及びエンジン始動操作を許可する。
【0025】
図2に示すように、車内のセンターコンソール等には、携帯電話2の置き場所としてクレードル装置19が設けられている。クレードル装置19には、車内通信用アンテナ13(車内リーダライタ5の1次アンテナ)が一体に組み込まれている。このため、クレードル装置19に携帯電話2をセットしたときには、セットした時点で携帯電話2が車内リーダライタ5と自動で車内近距離照合を実行する。1次アンテナは、リーダライタECU6に接続されて通信の主体側で動作するアンテナを言う。
【0026】
図2及び図3に示すように、クレードル装置19には、有底箱形状をなすクレードル本体20が設けられている。クレードル本体20には、携帯電話2を収納する収納部21が開口形成されている。クレードル本体20は、収納部21の開口が車体後方を向く方向にてセンターコンソールに取り付けられている。なお、クレードル本体20が本体部に相当する。
【0027】
図3に示すように、クレードル本体20は、5つの壁を備え、本例の場合、これらを底壁20a、上壁20b、側壁20c〜20eとする。側壁20d,20eには、携帯電話2を横から収納部21に挿し込むことが可能となるように一対の切欠部22がそれぞれ設けられている。また、収納部21は、底壁20a、上壁20b及び側壁20c〜20eにより囲まれる空間にて形成されている。
【0028】
図4に示すように、携帯電話2には、ICや各種デバイス等が実装された基板23が設けられ、基板23の一方の面にアンテナ24が設けられ、他方の面にグランド金属板25が設けられている。ところで、携帯電話2でリーダライタと近距離無線通信を行うとき、仮にグランド金属板25がリーダライタのアンテナを向くと、リーダライタから電波として放射される磁界にてグランド金属板25に渦電流が発生し、この渦電流を原因として電波を打ち消す磁界がグランド金属板25に発生し、通信が成立しなくなる現状がある。よって、携帯電話2には表裏が存在し、携帯電話2がリーダライタと通信するときには、アンテナ24をリーダライタのアンテナ側に向ける必要がある。
【0029】
図3〜図5に示すように、車内通信用アンテナ13は、収納部21を挟むように略コ字形状に形成されている。これは、携帯電話2を表裏のどちら向きでクレードル装置19に挿し込んでも、携帯電話2が車内リーダライタ5と通信できるようにするためである。図5に示すように、車内通信用アンテナ13は、アンテナ素線14をループ状に複数巻回したループアンテナを、中央で折り返すことにより形成されている。
【0030】
図3及び図5に示すように、本例の車内通信用アンテナ13には、底壁20aに配置された第1アンテナ部26と、上壁20bに配置された第2アンテナ部27と、側壁20cに配置された第3アンテナ部28とが設けられている。第1アンテナ部26のアンテナ軸心L1と、第2アンテナ部27のアンテナ軸心L2は、携帯電話2をクレードル装置19に挿し込むときの方向に対して直交する向きをとっている。
【0031】
図3に示すように、アンテナ素線14の各端は、通信回路12への端子29,30として形成されている。端子29,30は、一方が給電端子29、他方がグランド端子30として形成され、どちらかに共振用コンデンサ16が接続されている。なお、共振用コンデンサ16は、両方の端子29,30に設けても構わない。
【0032】
次に、本例のクレードル装置19の動作を、図6及び図7を用いて説明する。
図6に示すように、通信回路10は、車内近距離照合を行うとき、給電端子29に電圧を印加して、車内通信用アンテナ13を起動させる。給電端子29に電圧が印加されると、車内通信用アンテナ13には、図6の矢印に示す向きに電流が流れ、車内通信用アンテナ13から電力電波Svの送信が開始される。
【0033】
このとき、図7に示すように、第1アンテナ部26には、紙面左側のアンテナ素線群に時計回りの磁界が発生し、紙面右側のアンテナ素線群に反時計回りの磁界が発生する。よって、第1アンテナ部26には、近距離無線通信のための磁界として、クレードル本体20の底壁20a側から内に向かう方向の磁界Haが発生する。一方、第2アンテナ部27には、紙面左側のアンテナ素線群に反時計回りの磁界が発生し、紙面右側のアンテナ素線群に時計回りの磁界が発生する。よって、第2アンテナ部27には、近距離無線通信のための磁界として、クレードル本体20の上壁20b側から内に向かう方向の磁界Hbが発生する。
【0034】
従って、図7(a)に示すように、例えばアンテナ24を底壁20a側に向けた状態で携帯電話2をクレードル装置19の収納部21に挿し込んだとき、つまり携帯電話2を表向きでクレードル装置19にセットしたときは、アンテナ24が第1アンテナ部26に対向する。よって、携帯電話2のアンテナ24は、磁界Haを受けることが可能となるので、車内リーダライタ5と第1アンテナ部26を介して近距離無線通信することが可能となる。
【0035】
一方、図7(b)に示すように、例えばアンテナ24を上壁20b側に向けた状態で携帯電話2をクレードル装置19の収納部21に挿し込んだとき、つまり携帯電話2を裏向きでクレードル装置19セットしたときは、アンテナ24が第2アンテナ部27に対向する。よって、携帯電話2のアンテナ24は、磁界Hbを受けることが可能となるので、車内リーダライタ5と第2アンテナ部27を介して近距離無線通信することが可能となる。
【0036】
以上により、本例においては、車内リーダライタ5のアンテナ形状を、収納部21を両側から挟むコ字形状としたので、車内リーダライタ5には、収納部21の両側にアンテナが配置される。このため、携帯電話2を表裏のどちら側を向けてクレードル装置19に挿し込んでも、携帯電話2と車内リーダライタ5とは近距離無線通信が実行可能となる。よって、ユーザが携帯電話2をクレードル装置19にセットするとき、表裏の向きを気にせずに済むので、利便性をよくすることが可能となる。
【0037】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)クレードル装置19の車内通信用アンテナ13を、収納部21を両側から挟むコ字形状としたので、携帯電話2を表裏のどちら側を向けてクレードル装置19にセットしても、携帯電話2のアンテナ24が車内通信用アンテナ13に対向する位置状態をとる。よって、携帯電話2の表裏を気にすることなくクレードル装置19にセットすることが可能となるので、ユーザの利便性をよくすることができる。
【0038】
(2)クレードル装置19の車内通信用アンテナ13は、1つの環状のループアンテナを中央で折り曲げて形成するので、例えばアンテナを2つ使用する場合に比べて、クレードル装置19の構造を簡素にすることができる。また、アンテナが1つで済むので、部品コストも低く抑えることができる。
【0039】
(3)クレードル装置19の車内通信用アンテナ13が1次アンテナとなっているので、自らが携帯電話2と近距離無線通信を実行することが可能なクレードル装置19を提供することができる。
【0040】
(4)車内通信用アンテナ13を製造するに際して、1つの環状のループアンテナを用意し、これを単に中央で折り返すことにより、本例の形状の車内通信用アンテナ13を製造する。よって、簡単な工程で本例の車内通信用アンテナ13を製造することができる。
【0041】
(5)クレードル本体20の側壁20d,20eに切欠部22を設けたので、携帯電話2を横側から収納部21に挿し込むことができる。よって、携帯電話2をクレードル装置19にセットし易くすることができる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図8〜図10に従って説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態に記載した車内リーダライタ5のアンテナ形状を他の形状に変更している。よって、第1実施形態と同一箇所には同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0043】
図8に示すように、本例の車内通信用アンテナ13は、アンテナ素線14を中央において交差させ、これを中央で折り返す形状をとっている。よって、本例の第1アンテナ部26及び第2アンテナ部27は、第1実施形態と同様の形状をとるものの、第3アンテナ部28は、アンテナ素線14が交差した形状をとっている。
【0044】
図9及び図10に示すように、車内通信用アンテナ13に電流が流されると、第1アンテナ部26及び第2アンテナ部27のそれぞれには、紙面左側のアンテナ素線群に時計回りの磁界が発生し、紙面左側のアンテナ素線群に反時計回りの磁界が発生する。よって、第1アンテナ部26及び第2アンテナ部27には、第1アンテナ部26から第2アンテナ部27に向かう同じ方向の磁界Ha,Hbがそれぞれ発生する。
【0045】
このため、携帯電話2を表裏どちら側の向きでクレードル装置19に挿し込んでも、携帯電話2のアンテナ24は、クレードル装置19から放射される磁界を受信することが可能となる。よって、表裏を気にせずに携帯電話2をクレードル装置19にセットすることが可能となるので、この場合も利便性の確保が可能となる。
【0046】
また、磁界Haと磁界Hbとは同じ方向を向くので、これら磁界Ha,Hb同士が打ち消し合ってしまう可能性が低くなる。よって、携帯電話2とクレードル装置19との通信成立性も確保することが可能となる。
【0047】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1)〜(3)、(5)に加え、以下の効果を得ることができる。
(6)本例の車内通信用アンテナ13は、環状のループアンテナを中央で交差させ、その交差部分で折り返すことにより形成される。このため、第1アンテナ部26と第2アンテナ部27に発生する磁界Ha,Hbはともに同じ方向を向くので、これら磁界Ha,Hb同士が打ち消し合う可能性が低くなる。従って、近距離無線通信の信頼性を確保することができる。
【0048】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図11〜図15に従って説明する。なお、第3実施形態は、クレードル装置を後付け式とした点が第1及び第2実施形態と異なっており、本例も異なる部分についてのみ詳述する。
【0049】
図11に示すように、車内のセンターコンソールには、携帯電話2のかざし場所として台座部35が設けられている。台座部35には、車内リーダライタ5の1次アンテナ36が組み込まれている。1次アンテナ36は、アンテナ素線を環状に複数巻回したループアンテナからなり、アンテナ軸心L3が台座部35の上面に対して直交する方向をとっている。
【0050】
台座部35の上面には、携帯電話2の置き場所であるクレードル装置19が後付け可能となっている。図12及び図13に示すように、この後付けクレードル装置19には、台座部35の1次アンテナ36と磁界結合可能な2次アンテナ37が組み込まれている。2次アンテナ37は、自身単体では通信を実行することができず、1次アンテナ36を介して通信することができるアンテナのことを言う。2次アンテナ37は、インダクタンス38及びコンデンサ39の共振回路からなる。つまり、2次アンテナ37は、第1実施形態の車内通信用アンテナ13に対し、端子29,30の間に共振用コンデンサ39を接続する以外、同様のアンテナ形状をとっている。また、後付けクレードル装置19は、第1実施形態のクレードル本体20と同様の外形形状をとっている。
【0051】
後付けクレードル装置19は、例えばスナップフィット構造によって台座部35に取り付け可能となっている。後付けクレードル装置19を台座部35に取り付けたとき、1次アンテナ36と、2次アンテナ37の第1アンテナ部26と、2次アンテナ37の第2アンテナ部27とは、上下方向に重ね配置される。
【0052】
次に、本例の後付けクレードル装置19の使用形態を、図14及び図15を用いて説明する。
まず、後付けクレードル装置19が必要のないユーザには、図14に示すように、台座部35に後付けクレードル装置19を取り付けず、そのままにする。このとき、携帯電話2で車内近距離照合を行うときは、携帯電話2を台座部35の1次アンテナ36に直接かざす。よって、1次アンテナ36から放射される磁界を携帯電話2が受信して、携帯電話2が車内リーダライタ5と車内近距離照合を実行する。なお、図14で携帯電話2の中央部分は磁界が弱くなっているのは、携帯電話2内の金属にて磁界が減衰するためである。
【0053】
一方、後付けクレードル装置19が必要のユーザには、図15に示すように、台座部35に後付けクレードル装置19を取り付ける。このとき、1次アンテナ36から磁界が放射されると、この磁界にて1次アンテナ36及び2次アンテナ37が磁界結合し、1次アンテナ36から放射された磁界が、2次アンテナ37により中継されて放射される。よって、携帯電話2を後付けクレードル装置19に挿し込んだときには、2次アンテナ37が中継した磁界によって、携帯電話2と車内リーダライタ5とが車内近距離照合を実行する。なお、このときは、同図に示すように、第1アンテナ部26と第2アンテナ部27とに発生する磁界は、互いに逆方向をとると考えられる。
【0054】
以上により、本例においては、クレードル装置19を後付け可能としたので、ユーザの要望に応じてクレードル装置19の設置有無を決めることが可能となる。よって、クレードル装置19が必要のないユーザには、クレードル装置19を取り付けずに1次アンテナ36自体を車内リーダライタ5とし、クレードル装置19が必要なユーザには、台座部35に後付けクレードル装置19を取り付けて、クレードル装置19を車内リーダライタ5として使用することが可能となる。このため、ユーザの要望に的確に応えることが可能となる。
【0055】
本実施形態の構成によれば、第1及び第2実施形態に記載の(1)、(2)、(4)(5)に加え、以下の効果を得ることができる。
(7)クレードル装置19が必要又は必要でない各ユーザに対して、後付けクレードル装置19で対応することができる。よって、ユーザの要望に応じた使用態様をとることが可能となるので、ユーザが使用し易い側を選択することができる。このため、ユーザの利便性をよくすることができる。
【0056】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・各実施形態において、携帯電話2がクレードル装置19にセットされたことを検出するスイッチをクレードル装置19に設け、このスイッチが携帯電話2を検知したとき、近距離無線通信が開始されるものとしてもよい。
【0057】
・各実施形態において、車内通信用アンテナ13の基礎となるアンテナは、ループアンテナに限定されず、例えばバーアンテナ等の他のアンテナが使用可能である。
・各実施形態において、クレードル装置19の配置場所は、車内センターコンソールに限定されず、例えばセンタークラスターとしてもよい。また、クレードル装置19の配置向きも適宜変更可能である。
【0058】
・各実施形態において、第1アンテナ部26が底壁20aに配置され、第2アンテナ部27が上壁20bに配置されることに限定されない。例えば、第1アンテナ部26が側壁20dに配置され、第2アンテナ部27が側壁20eに配置されてもよい。
【0059】
・第1実施形態において、クレードル装置19には、車内通信用アンテナ13のみが組み込まれることに限定されず、例えばリーダライタECU6や通信回路12が組み込まれてもよい。
【0060】
・第3実施形態において、クレードル装置19の台座部35への取付構造は、スナップフィット構造に限定されず、例えば接着剤等で取り付けてもよい。
・第3実施形態において、台座部35の形状は、周囲に対して一段高い位置をとる形状に限定されず、例えば周囲と面一の形状でもよい。
【0061】
・各実施形態において、通信端末は、携帯電話2に限定されず、例えばICカード等の他の端末を使用してもよい。
・各実施形態において、クレードル装置19の形状は、直方体の1つの面が開口した形状に限定されず、例えば上面の一部が開口する形状としてもよい。
【0062】
・各実施形態において、近距離無線通信は、NFCに準じた通信に限定されず、他の方式のものが使用可能である。
・各実施形態において、近距離無線通信で使用する周波数は、HFに限定されず、例えばLF等を使用してもよい。
【0063】
・各実施形態において、近距離無線通信の通信距離は、10cm程度に限定されず、これ以外としてもよい。
・各実施形態において、車両1は、近距離照合システム3のみを搭載することに限定されず、例えば電子キーシステムが併設されていてもよい。電子キーシステムは、無線でIDコードを送信する電子キーを車両キーとして使用するキーシステムの一種であり、車両1側からの通信を契機としてID照合を行うキー操作フリーシステムや、電子キー側からの通信を契機としてID照合を行うワイヤレスキーシステムがある。
【0064】
・各実施形態において、本例のクレードル装置19は、車外近距離照合にも応用可能である。
・各実施形態において、クレードル装置19は、車両に使用されることに限定されず、他の装置や機器に応用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
2…通信端末としての携帯電話、5…通信マスタとしての車内リーダライタ、6…制御回路としてのリーダライタECU、13…アンテナ(1次アンテナ)を構成する車内通信用アンテナ、14…アンテナ素線、19…クレードル装置(後付けクレードル装置)、20…本体部としてのクレードル本体、21…収納部、35…台座部、36…1次アンテナ、37…アンテナを構成する2次アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末の置き場所であり、本体部に設けられた収納部に前記通信端末が収納されると、該通信端末と近距離無線通信を実行するクレードル装置であって、
前記通信端末と近距離無線通信が可能であり、一続きのアンテナ素線を折り返してコ字形状とすることにより、前記収納部を両側から挟む形状をとるアンテナを備えた
ことを特徴とするクレードル装置。
【請求項2】
前記アンテナは、通信の制御回路に接続されて通信の主体側で動作する1次アンテナである
ことを特徴とする請求項1に記載のクレードル装置。
【請求項3】
1次アンテナを有する台座部に後付け可能であり、前記1次アンテナに対して電波を中継可能な2次アンテナを前記アンテナとして有する後付け式のクレードル装置であって、
前記台座部に後付けクレードル装置が設置されていないときは、前記通信端末を前記1次アンテナに直接近づけて前記近距離無線通信を実行し、前記台座部に前記後付けクレードル装置が設置されているときは、前記後付けクレードルに前記通信端末を収納した際、前記2次アンテナにより電波を中継して前記近距離無線通信を実行する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のクレードル装置。
【請求項4】
前記アンテナは、単なる環状のアンテナ素線を折り返した形状をとる
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のクレードル装置。
【請求項5】
前記アンテナは、環状のアンテナ素線を中央で交差させたものを、その交差部分にて折り返した形状をとる
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のクレードル装置。
【請求項6】
通信マスタとその通信端末とが近距離無線通信によって通信を実行する無線通信装置において、
前記通信マスタにクレードル装置の後付け箇所として設けられた台座部と、
前記台座部に設けられた1次アンテナと、
自身に設けられた収納部に前記通信端末を収納可能であり、前記1次アンテナに対して電波を中継可能な2次アンテナにより、前記通信端末と近距離無線通信を行う後付けクレードル装置とを備え、
前記2次アンテナは、一続きのアンテナ素線を折り返してコ字形状とすることにより、前記収納部を両側から挟む形状をとり、
前記台座部に前記後付けクレードル装置が設置されていないときは、前記通信端末を前記1次アンテナに直接近づけて前記近距離無線通信を実行し、前記台座部に前記後付けクレードル装置が設置されているときは、前記後付けクレードルに前記通信端末を収納した際、前記2次アンテナにより電波を中継して前記近距離無線通信を実行する
ことを特徴とする無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−151785(P2012−151785A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10698(P2011−10698)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】