説明

クレーンの支柱部分用ピン結合装置

【課題】ブーム部分同士の迅速な結合及びブーム部分が軸方向に整列していない位置からの最初の結合を可能にする迅速な結合装置の提供。
【解決手段】クレーンは少なくとも1つの支柱部材を備えており、該支柱部材は、第一及び第二の端部を有する第一及び第二の支柱部分からなる。第一の支柱部分の第二の端部は第二の支柱部分の第一の端部と結合する。第一の支柱部分の第二の端部にある第一、第三、第五の結合部材は各々第二の支柱部分の第一の端部にある第二、第四、第六の結合部材とかみ合う。該結合部材の各々は、貫通穴がある第一の伸長部を備ええ、支柱部分同士が整合されたときに第一及び第二の支柱部分の間の圧縮荷重を担持するように配置された圧縮荷重支持面を有する。第一のピンが、第一及び第二の結合部材の第一の伸長部の貫通穴にきつく嵌合し、第二のピンが、第三及び第四の結合部材の第一の伸長部の貫通穴に緩く嵌合して結合部材同士を結合する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明はリフトクレーンに関し、更に特定すると、クレーン等のための組立式の支柱部材同士を結合する結合装置に関する。
【0002】
大きな吊り上げ能力を有するリフトクレーンは、典型的には、端部同士が当接した関係で固定される組立式の支柱部材からなるクレーンブームとマストとジブ構造のような細長い吊り荷支持支柱構造とを備えている。主に、組立式の支柱部材の各々は、複数の弦部材及び梁又は格子要素からなる。各弦部材の末端部分には、一般に、互いに当接している支柱部分同士を相互に固定し且つ互いに当接している弦部材間に圧縮荷重を支持するための何らかの形態の結合部材が備えられている。典型的な結合部材は、二面せん断形態で圧縮荷重を支持するピンによって固定された雄型及び雌型のラグを備えている。
【0003】
例示的な67.1m(220フィート)のブームは、クレーンの上方部材に枢動可能に取り付けられた12.2m(40フィート)のブームバットと、滑車を備えている9.1m(30フィート)のブームトップと、吊り荷を持ち上げて支持するための索具とによって形成されており、該ブームは、間に長さが3.0m(10フィート)の1つのブーム部材と長さが6.1m(20フィート)の1つのブーム部材と長さが12.2m(40フィート)の3つのブーム部材とからなる5つの組立式のブーム部材を備えている。このような例示的なブームは6つのブーム部分結合部材を備えている。典型的には、各ブーム部分が4本の弦部材、従って4個の結合部材を備え、よって合計で24個の結合部材を備えており、これらの結合部材は、ブームを組み立てるために整合させ且つピンを通して固定しなければならない。
【0004】
大きな吊り上げ能力を有するクレーンは非常に大きなブーム断面積を必要とする。その結果、ブーム部分が地面の上に平らに置かれている場合でも、頂部の弦部材間のピン結合部材は、典型的には、2.4m(8フィート)以上地面から離れている。吊り上げ用人員は、頂部の結合部材のところに到達するためには、脚立をそれぞれのピン位置まで移動させるか、ブームの上に立ち且つそれに沿って歩かなければならない。
【0005】
12.2m(40フィート)の長さの組立式のブーム部材の重量は2,268キログラム(5,000ポンド)を超える。従って、ブーム部材を持ち上げるために補助クレーンが必要である。その後、通常は、1人の吊り上げ用員が吊り下げられたブーム部分を概ね整合状態に保ち、一方、2人目の吊り上げ用員が大きなハンマー(4.5又は6.8キログラム(10または15ポンド)のハンマー)を用いて、通常は長いテーパー部を有しているピンを所定位置に手で打ち込む。ブーム部分同士を結合しているピンは、一般的に、弦部材間での圧縮荷重を担持するために使用されている。その結果、ピンはきつく嵌まり、このことはブームの組立の困難さを更に増している。従って、例示的な67.1m(220フィート)のブームを組立てるためには、3人(1人のクレーン操作員及び2人の吊り上げ用員)で4時間以上かかる。クレーンを頻繁に移動させる場合は、ブームを組立て及び解体する費用がクレーンを使用する吊り荷を持ち上げて降ろす費用を超える。
【0006】
大きな吊り上げ能力を有するクレーンで極めて大きな荷を支持するためには、2つの雌型ラグの間に挟まれて二面せん断結合をもたらす典型的な単一の雄型ラグは、圧縮荷重を支持するのに極めて大きなピン直径を必要とし、これにより結合部材を極めて大きくすることが必要となる。3つの雌型ラグと2つの雄型ラグとを有する既知の結合部材が存在するが、このような種類のブーム結合用としてのブーム部分同士を組み立てる際に、ブーム部分間に何らかの自己整合または旋回可能な結合(この結合においては、ブーム部分同士は、最初に軸線方向に整合していない状態で結合され、その後に、旋回させて残りの結合がなされる位置へと旋回させることができる)を提供するための設備は存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、ブーム部分同士のより迅速な結合及びブーム部分同士が軸線方向に整列していない位置からの最初の結合を可能にするブーム部分同士の容易で迅速な結合装置は大きな改善をもたらす。
【0008】
更に、支柱部分同士の結合部が大きく且つ重い荷物を支持する場合には、結合部同士を結合しているピンが極めて大きくてこれらを極めて重くし且つ定位置に配置するのを難しくしている。結合部が各結合部に対して更に多くのピン例えば2本のピンを使用するように何らかの設計がなされていた場合には、ピンの大きさ及び重量を減すことができた。しかしながら、これは、設置しなければならないピンの数を2倍にし且つクレーンを組み立てるのにかかる時間を長くする。従って、クレーンの組み立て時間を短縮させることができるピンによる結合装置もまた極めて有益である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ブーム部分のようなクレーンの支柱部分の改良された結合装置を発明した。本発明においては、ブーム部分は、ブーム部分同士を結合させるために最初に使用することができる少なくとも1本のきつく嵌め込まれるピンを備えており、一方、比較的緩く嵌め込まれている他の複数のピンが続いて挿入され、結合が完成される結合部材を備えている。好ましい実施例においては、各結合部材は2つのピンを備えており、各ピンの大きさを小さくしている。これらのピンの幾つかは比較的緩く嵌め込まれているので比較的容易に挿入することができ、ブームの組み立て過程をスピードアップさせることができる。更に、好ましい結合部材に設けられた整合面及び/又はストッパ面により、結合部材はピンが挿入されるようにするために容易に整合させることが可能になり、且つブーム部分同士を最初に結合させ、その後で最終位置まで回転させ、この最終位置でブーム部分間の残りの結合を行うことが可能になる。
【0010】
第一の態様においては、本発明は、下方機構上に回転可能状態で取り付けられている上方機構を備えているクレーンについての発明についてのものであり、該クレーンは、少なくとも1つの支柱部材を備えており、該支柱部材は、各々が長手軸線と第一及び第二の端部とを備えている第一及び第二の支柱部分を少なくとも備えており、該第一の支柱部分の第二の端部は前記第二の支柱部分の第一の端部に結合され、前記第一の支柱部分の第二の端部は前記第二の支柱部分の第一の端部に結合され、前記第一の支柱部分の第二の端部に設けられている少なくとも第一、第三、第五の結合部材が、各々、前記第二の支柱部分の第一の端部に設けられている少なくとも第二、第四、第六の結合部材とかみ合っており、前記結合部材の各々が、貫通して設けられている貫通穴を備えている少なくとも第一の伸長部を備えており、該貫通穴は軸線を有しており、該軸線は、前記長手軸線と直角で且つ前記支柱部分同士が整合されたときに前記かみ合っている結合部材の貫通穴同士が整合されるように前記伸長部内に位置決めされており、前記結合部材の各々は圧縮荷重支持面を備えており、該圧縮荷重支持面は、支柱部分同士が整合されたときに第一の支柱部分と第二の支柱部分との間で圧縮荷重を支持するように配置されており、第一のピンが、前記第一の結合部材の第一の伸長部の前記貫通穴と前記第二の結合部材の第一の伸長部の貫通穴とにきつく嵌合して前記第一の結合部材と第二の結合部材とを相互に結合させ、第二のピンが、前記第三の結合部材の第一の伸長部に設けられている貫通穴と前記第二の支柱部分の第一の端部に設けられた第四の結合部材の第一の伸長部の貫通穴とに緩く嵌合して前記第二の結合部材と第四の結合部材とを相互に結合させている。
【0011】
第二の態様においては、本発明は、2つの組立式の支柱部材間のかみ合い結合装置についてのものであり、該結合装置は、第一の組立式の支柱部材の一端に取り付けられている第一の結合部材と、第二の組立式の支柱部材の一端に取り付けられている第二の結合部材とからなり、該第一の結合部材と第二結合部材の各々は第一及び第二の伸長部の組を備えており、各伸長部にはピンを受け入れる大きさとされた貫通穴が貫通して設けられており、各結合部材はまた、伸長部の第一の組と伸長部の第二の組との間に配置されている圧縮荷重支持面を備えており、前記第一の結合部材の前記圧縮荷重支持面は、前記第二の結合部材の前記圧縮荷重支持面と対面関係にあり、第一のピンが、前記第一の結合部材の第一の伸長部の組の貫通穴と前記第二の結合部材の伸長部の第一の組の前記貫通穴とにきつい嵌合形態で貫通しており、第二のピンが、前記第一の結合部材の第二の伸長部の組の貫通穴と前記第二の結合部材の伸長部の第二の組の貫通穴とに緩い嵌合形態で貫通している。
【0012】
更に別の態様においては、本発明は、各々が長手軸線と各々がその各端部に結合部材を備えている少なくとも3本の弦部材とを備えているリフトクレーンの支柱の第一の支柱部分と第二の支柱部分とを結合させる方法についてのものであり、該方法は、a)前記第一の支柱部分に設けられた少なくとも第一の結合部材に貫通して設けられた貫通穴を備えている少なくとも1つの伸長部が、前記第二の支柱部分に設けられた少なくとも第二の結合部材に貫通して設けられた貫通穴を備えている少なくとも2つの伸長部同士の間に、前記結合部材の伸長部に設けられている貫通穴同士が概ね整合された状態で差し込まれて少なくとも第一の互いにかみ合った結合部材の組を形成するように、前記2つの支柱部分同士を結合させるステップと、b)前記かみ合った第一の結合部材と第二の結合部材とを、前記伸長部の貫通穴内にきつく嵌め込まれるピンによって互いに結合させて枢動結合させるステップと、c)非結合状態となっている結合部材を、対応する前記かみ合った結合部材に、緩く嵌り込むピンによってピン結合させるステップと、を含んでいる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態においては、リフトクレーンのブーム又はその他のクレーン支柱部材の大きな部分同士は、比較的速い組み立て時間で組立てることができる。油圧シリンダによって定位置に配置する必要があるピンのうちの1本はきつく嵌め込まれるが、他のピンは、緩く嵌合させることにより比較的迅速に挿入することができ且つ油圧シリンダも必要とされない。従って、第二の組の索具装着者らは、油圧ピン打ち込み機を操作としている索具装着者が次の部分の結合部へと移動する間に、他のピンを挿入することができる。更に、これらの部分が非整合位置から結合させる必要がある場合は、きつく嵌合させるピンが所定位置に配置されると、これらの部分は、枢動させて且つ既に整列されている残りの結合部材の貫通穴と整合した形態で自動的に停止する。本発明の好ましい実施形態においては、直径が比較的小さいピンが各結合部に2本ずつ使用されている。しかしながら、本発明の使用方法は、上方弦部材上の頂部ピンのみがきつい嵌合であり、残りのピンは比較的緩い嵌合であることを意味している。
【0014】
本発明のこれらの及びその他の利点並びに本発明自体は、図面を考慮することで最も良く理解できるが、該図面の簡単な説明は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明のピン結合支柱部分結合装置を使用している組立式のブームを備えているクレーンの側面図である。
【図2】図2は、図1のクレーン上にブームを形成するために第一の位置から結合されつつある2本のブーム部分の側面図である。
【図3】図3は、図1のクレーン上にブームを形成するために第二の位置から結合されつつある図2の2本のブーム部分の側面図である。
【図4】図4は、図2のブーム部分同士を結合するために使用される結合された状態の結合部材の対の斜視図である。
【図5】図5は、組立中の図2の2本のブーム部分の端部の斜視図である。
【図5a】図5aは、ピンの挿入及び引っ込め装置が取り付けられたブーム部分の1つの隅部の上方斜視図である。
【図5b】図5bは、本発明の結合装置において使用されているピンの斜視図である。
【図6】図6は、図2のブーム部分の上面図である。
【図7】図7は、図2のブーム部分のうちの1つの側面図である。
【図8】図8は、図6のブーム部分において使用されている雌型結合部材の拡大上面図である。
【図9】図9は、図6のブーム部分において使用されている雄型結合部材の拡大上面図である。
【図10】図10は、図8の雌型結合部材の拡大側面図である。
【図11】図11は、図9の雄型結合部材の拡大側面図である。
【図12】図12は、本発明を使用している交互に並んでいるブーム部分の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を更に説明する。以下の記述では、本発明の様々な態様をより詳細に規定している。このように規定した各特徴は、明確にできないと記されていない限り、任意の他の態様または他の複数の態様と組み合わせることができる。特に、好ましいものとして又は有利であるものと示した任意の特徴は、好ましいものとして又は有利なものと示した任意の他の特徴または他の複数の特徴と組み合わせることができる。
【0017】
本発明の好ましい実施例は、大きな吊り上げ能力を有する移動式リフトクレーンに関し、このクレーンの他の特徴は、米国特許第7,546,928号(位置可変カウンタウエイトを備えた移動式リフトクレーン)、米国特許第7,762,412号(大きな吊り上げ能力を有する移動式リフトクレーンのマスト上昇構造及び方法)、米国特許第7,946,560号(クレーンのフック台)、米国特許第7,954,657号(クレーンのブーム部分のための結合装置)、米国特許第7,967,158号(位置可変カウンタウエイトを備えた移動式リフトクレーン)、及び米国特許第7,997,432号(トラニオン型移動装置及びこれを使用しているクレーン)に開示されている。
【0018】
参照を容易にするために、本明細書及び特許請求の範囲内で使用している「頂部」、「底部」、「水平」、及び「垂直」という表現は、典型的には、地面上またはその付近で組み立てる位置での組立式のブームの部分を指している。ブームは垂直位置を含む様々な角度まで持ち上げられるが、その場合でもこれらの表現が適用される。
【0019】
ここで言及されている各直径は、テーパーが付けられている部分を除くピンの作動部分の直径のことである。同じ大きさに設計されている部分は、これらが、それらの特性を有しているクレーンの部分の通常の許容公差内で同じ大きさであることを意味している。“きつい嵌め込み”という用語と“緩い嵌め込み”という用語とは、相対する用語であり、ある穴内へのピンの嵌合のきつさを、この穴内への別のピンの嵌合のきつさと比較して示されるときのきつさを意味している。好ましい実施例においては、各支柱部分上の2つの上方結合部材と2つの下方結合部材とについて、頂部のピンの所望の嵌め込みのきつさと底部のピンの所望の嵌め込みの緩さとは、支柱部分の構造に依存している。しかしながら、本発明においては、頂部のピンは、底部のピンと著しく異なる嵌め込みきつさを有している。以下の例は、“きつい”という用語と“緩い”という用語との意味ある理解を付与する。
【0020】
図1に示す移動式リフトクレーン10には、車体12とも呼ばれる下方機構と、クローラ14及び16の形態の可動の接地部材とが備えられている。(もちろん、2つのフロントクローラ14と2つのリアクローラ16とが設けられており、図1の側面図からはそれぞれその1つしか見えていない。)クレーン10においては、これらの接地部材は、各側部に1つのクローラを有する1組のクローラのみとすることができる。もちろん、図示されているものの他に追加のクローラ又はタイヤのような他の接地部材を使用することができる。
【0021】
回転床20は、接地部材14、16に対して軸線を中心として旋回することができるように、ローラーパスを用いて車体12に旋回可能に結合されている。回転床は、該回転床の前方部分上に枢動可能に搭載されたブーム50、前記回転床上の第一の端部に搭載されたマスト28、マストと回転床の後方部分との間に結合された後方連結器30、及び支持部材33上にカウンタウエイト34を備えている可動のカウンタウエイトユニット13を支持している。カウンタウエイトは、支持部材33上の複数の個々のカウンタウエイト部材の積層体形態とすることができる。
【0022】
マスト28の頂部とブーム50との間に設けられているブーム巻き上げ索具25は、ブーム角度を制御するために使用され且つ荷重を伝えて、クレーンによって吊り上げた吊り荷のバランスをとるためにカウンタウエイトを使用することができるようになされている。巻き上げロープ24はブーム50から伸びていてフック26を支持している。回転床20にはまた、運転室並びに索具25及び巻き上げロープ24用の巻き上げドラムなどの移動式リフトクレーンに通常見出される他の要素も含まれている。所望の場合には、ブーム50は、主ブームの頂部又は他のブーム構造に枢動できるように取り付けられたラフィングジブを含んでいても良い。後方連結器30はマスト28の頂部に隣接して結合されている。後方連結器30は、図1に示すように、圧縮荷重と引っ張り荷重との両方を伝達するように設計されたラチス部材を備えている。クレーン10においては、マストは、吊り上げ、移動、及び据え置き作業などのクレーンの操作中に回転床に対して固定角度で保持される。
【0023】
カウンタウエイトユニットは、回転床20の残りの部分に対して移動させることができる。図示されているクレーンの実施形態においては、カウンタウエイトユニット13は、米国特許第7,546,928号(位置可変カウンタウエイトを備えた移動式リフトクレーン)及び米国特許第7,967,158号(位置可変カウンタウエイトを備えた移動式リフトクレーン)に開示されている発明に従って、クレーンの前部に対して入れたり出したりできる設計とされている。マストの頂部に隣接して結合されている引っ張り部材32がカウンタウエイトユニットを支持している。カウンタウエイト移動構造は、カウンタウエイトユニットを、図1において実線で示されているマストの頂部前方の第一の位置へ移動してそこに保持したり、図1において点線で示されているマストの頂部後方の第二の位置へ移動させてそこに保持したりできるように、回転床とカウンタウエイトユニットとの間に結合されている。
【0024】
クレーン10においては、油圧シリンダ36、枢動フレーム40、及びリアアーム38を用いてカウンタウエイトユニットを移動させることができる。(クローラの場合と同様に、リアアーム38は、実際には左側部材と右側部材との両方を備えているが、図1にはその一方のみが見えており、枢動フレームは2つの側方部材を備えており、油圧シリンダは縦に一列に並んで動く2つのシリンダからなる。別の形態として、好ましくは4つの油圧モータによって駆動される1つの比較的大きな油圧シリンダ又はラックピニオン装置を2つの油圧シリンダ36の代わりに使用して、線形動作を提供することができる。更に、枢動フレームは一枚板構造として作ることができ、2つのリアアーム38を単一構造体と置き換えることができる。)枢動フレーム40は、回転床20と油圧シリンダ36との間に結合されており、リアアーム38は、枢動フレーム40とカウンタウエイトユニットとの間に結合されている。油圧シリンダ36は、支持フレーム上の回転床20に枢動可能に結合されていて、油圧シリンダ36を、シリンダ36、枢動フレーム40、及びリアアーム38の幾何学的構造体が、カウンタウエイトをその全動作範囲に亘って移動させることができる点まで上昇させる。このようにして、シリンダ36は、シリンダが引っ込められたり伸ばされたりしたときにリアアーム38がカウンタウエイトユニットを動かすようにさせている。
【0025】
アーム38は、その端部に枢動フレーム40と結合され角度が付けられている部分39を備えている。これにより、アーム38が枢動フレーム40の側方部材に直接整列して結合することが可能となる。角度が付けられている部分39は、カウンタウエイトが図1において実線で示している位置にあるときに、アーム38が枢動フレームの側方部材と干渉するのを防いでいる。
【0026】
ブーム50は、ブームバット51、個数を変えることができ且つ様々な長さとすることができるブーム挿入部分52,53,54,55、及びブームトップ56を含む幾つかの組立式の部材によって作られている。組立式のブーム部材51〜56は、典型的には複数の弦部材からなる。
【0027】
各ブーム部分53及び54は各隅部に弦部材を備えた矩形断面を有している。代表的であり且つ第一及び第二のブーム部分と考えることができる部分53及び54の各々は、長手軸線41(図2)並びに第一及び第二の端部を有している。第一の部分53の第二の端部は第二の部分54の第一の端部に結合されている。2本の頂部弦部材61及び2本の底部弦部材63(側面図ではそれぞれの1本しか見えない)が設けられており、これらの弦部材は、中間の梁部材又はラチス要素65によって連結されて弦部材同士を固定平行関係に結合してブーム部分を形成している。図示されている実施形態では、弦部材は円形管状断面を有している鋼によって形成されている。長手軸線41を含んでいる水平面がブーム部分を第一の長手方向部分67と第二の長手方向部分68とに分割していると考えることができ、この場合、第一の部分67内に2本の頂部弦部材61が配置され、ブーム部分の第二の長手方向部分68内に2本の底部弦部材63が配置されている。これらの特定の第一及び第二の長手方向部分が、本発明の説明を容易にするために特定されている。もちろん、異なる数の弦部材を備えているブーム部分の他の構造が可能であり、ブーム部分の長手方向部分を示す異なる方法が可能である。
【0028】
各弦部材は、垂直の中立軸線及び水平の中立軸線を有している。弦部材の垂直及び水平の中立軸線の交差点に又は水平及び垂直の中立軸線を中心として対称的に作用する圧縮荷重は、弦部材内に曲げモーメントを有していない。従って、ブーム部分を相互に結合させるために使用される結合部材は、該結合部材を介して伝達される圧縮荷重が弦部材の中立軸線を中心として対称的であるように、弦部材の端部においてブーム部分上に取り付けられていることが好ましい。
【0029】
図2に示すように、本発明の好ましいブーム部分結合装置においては、ブーム部分同士が整合されていない形態にある間に、頂部弦部材61上の結合部材同士を最初に結合させるか、又は図3に示すように、底部弦部材63上の結合部材同士を最初に結合させることができる。以下に詳述するように、好ましい結合部材においては、次いでブーム部分が枢動され、これは、追加の結合部材同士が整列する位置で自動的に停止する。これらの部分の長手方向軸線が既に整列している状態でブーム部分同士を結合させることも可能である。本発明の好ましい整合装置においては、結合部材の構造は、同じく以下に更に詳細に説明するように、ブーム部分のこのような整列及び結合を容易にする。
【0030】
第一の実施形態の結合部材は、図8〜11に詳細に示す第一及び第二の結合部材と称される二種類の部材からなる。それぞれの結合部材は少なくとも1つの伸長部を備えており、該伸長部は、ピンを受け入れる大きさの貫通穴の形態の穴を備えており、これらの伸長部は、これらの伸長部が取り付けられたブーム部分から離れる方向に伸びており、前記穴はその長手軸に垂直な軸線を有している。該伸長部と穴とは、ブーム部分の第二の端部が同一のブーム部分の第一の端部に整列され且つ該第一の端部に結合されている位置にあってこれら2つのブーム部分上の結合部材同士が相互に結合されているときに、結合されている結合部材の伸長部同士が互いに重なり且つ前記穴同士が整合されピンが該穴内に挿入されて、前記ブーム部分の第二の端部の結合部材を同一のブーム部分の第一の端部の結合部材に固定するように、各々の結合部材上に位置決めされている。(結合部材は、同一のブーム部分上の結合部材によって結合しているものとして記載されているが、本発明を利用しているクレーンでは、同一のブーム部分を使用する必要はないことが理解できるはずである。この用語は、結合過程の説明を補助するためにのみ使用されている。該ブーム内で使用されている本発明によるブーム部分同士は、多くの点、特にクレーンの組み立てにおいて行わなければならない特徴及び部分間の結合装置以外の動作に関して異なっていても良い。)結合部材のうちの半分は第一の数の伸長部を備えており、結合部材の残りの半分が第二の数の伸長部を備えており、この第二の数は第一の数よりも1つ大きく、それぞれの弦部材の対向端部上の結合部材が互いに異なる数の伸長部を備えているのが好ましい。
【0031】
ブーム部分の第一の長手方向部分の弦部材の第一の端部に設けられている結合部材には、第一の整合面とストッパ面とが含まれている。ブーム部分の第一の長手方向部分の弦部材の第二の端部に設けられている結合部材には、第二の整合面とストッパ面とが含まれている。この実施形態では、これらの面は、結合部材上の異なる構造によって提供されている。
【0032】
第一の整合面と第二の整合面とは、互いに協働して、第一の結合部材と第二の結合部材とがブームの組立中に結合されつつあるときに、ブーム部分同士が軸方向に整合されていない場合でも、これらの整合面は、テーパーが付けられたピンを第一及び第二のかみ合っている結合部材内の伸長部の穴に挿入することができるように結合部材の伸長部を貫通している穴同士が十分に整合される相対位置へとブームを付勢するようにする。結合部材上におけるストッパ面の配置は、同一のブーム部分を、ブーム部分の第二の長手方向部分上の弦部材の残りの結合部材の伸長部内の穴にピンを挿入することができるように配置した場合に、ストッパ面同士が互いに接触したときに該ストッパ面同士が協動して各々の結合部材の伸長部の穴同士を整合させるようになされている。
【0033】
図4は、2つの組立式のブーム部材53と54との間のかみ合い結合部を示している。第一の結合部材70は、第一の組立式のブーム部材53上の頂部弦部材61の第二の端部に取り付けられている。結合部材70は、二組の3つの伸長部71a,72a,73aと、71b,72b,73bとを有しており(図5に最も詳しく示されている)、これらの伸長部の各々に貫通穴の形態の穴が貫通されている。結合部材70はまた、それぞれの伸長部の遠位端上の丸味が付けられている外表面の形態の第一の整合面74をも備えている。結合部材70は更に、ほぼ平らな圧縮荷重を支持する面78を備えており、該圧縮荷重支持面78は、結合部材の幅を横切って伸長して伸びており且つ2組の伸長部を分離している。この実施形態では、荷重支持面78が結合部材のストッパ面を形成している。
【0034】
第二の結合部材80は、第二の組立式のブーム部材54上の頂部弦部材61の第一の端部に取り付けられている。第二の結合部材80は、それぞれが貫通穴の形態の貫通している穴を備えている二組の2つの伸長部81a,82a及び81b,82bを備えている。図4からわかるように、結合部材を相互に結合させたときに、結合部材70の各組の伸長部71,72,73は、結合部材80の伸長部81,82のそれぞれの組の間に差し込まれている。結合部材80は、丸味を付けられた外表面74の形状と適合している伸長部81及び82の外側部分の根元部分に隣接しているポケットの形態の第二の整合面84を備えている。図10及び11に示すように、排水孔89がそれぞれの結合部材70,80に設けられている。結合部材80にはまた、該結合部材の幅に亘って延びているほぼ平らな圧縮荷重支持面88も設けられている。この実施形態では、荷重支持面78及び88が結合部材のストッパ面を提供している。
【0035】
ピン(図4には図示されていない)を、交互に配置された伸長部71a,81a,72a,82a,73aの穴に通して結合部材70と80とを枢動関係に配置すると、第二の整合面84と丸味を付けられた第一の整合面74とは、図4に示されているように、ブーム部分が軸線方向に整合している場合に、互いに近接しているが完全に接触しているわけではない。しかしながら、図2に示すように、ブーム部分53及び54が軸線方向に整合していないときにも、結合部材70と80とは依然として互いに結合されている。その場合、第一の整合面74と第二の整合面84とは、ブーム部分を互いに近づけるにつれて互いに接触する。これらが接触すると、伸長部71,72,73,81,82に設けられている穴同士は、テーパーピン(図5bに示されている)をこれらの穴に挿入することができる程度に互いに十分正確に整合し、このことは、ピンの挿入を開始することができ且つピンを穴に打ち込むにつれてピンに設けられたテーパーによって穴同士が完全に整合されることを意味している。
【0036】
その後、ブーム部分をこの第一のピンを中心に枢動させると、圧縮荷重支持面78は圧縮荷重支持面88と接触し、ブーム部分同士が整合した位置で枢動を停止する。このように、ストッパ面は、一組みの第一の結合部材と第二の結合部材とがそれらに設けられている穴に通されたピンによって相互に結合されているがブーム部分同士が整合していない位置にある場合に、これらのブーム部分を、これらのブーム部分上の更に別の結合部材のストッパ面同士が互いに接触する位置まで、互いに結合された結合部材の穴に通したピンを中心に枢動させることによって、ブーム部分同士が整合され、これらの更に別の結合部材の穴同士が整合されるように、配置されている。部分54及び56が軸線方向に整合された後は、別のピンを第二の組の伸長部71b,72b,73b,81b,82b内に配置させることができる。
【0037】
底部の弦部材63には、頂部弦部材61上の結合部材70及び80と同じ構造を有している結合部材が設けられている。これらの下方結合部材の圧縮荷重支持面同士は、頂部結合部材上の圧縮荷重支持面78と88とが相互に接触状態となると同時に、相互に接触状態となる。従って、下方の圧縮荷重支持面もまたストッパ面として作用して下方結合部材内の穴同士を整合させる。
【0038】
本発明の結合部材は、組立式のブーム部材同士を結合できるようにし、次いで、最大90°の角度に亘って旋回させることができるようにする。ブーム部分同士がそれらの整合位置から90°の角度にある場合でも、第一の整合面74と第二の整合面84とを互いに接触状態とさせることができ、これによって、伸長部を貫通している穴同士がピンを挿入できる程度にまで十分近接して整合される。もちろん、ピンを完全に挿入した後は、第二の整合面84と第一の整合面74とは互いに接触していない。これは、すべての荷重が圧縮荷重支持面78及び88の面間接触を介して伝達されることを確実にする。引っ張り荷重はピンによって担持される。これらの圧縮荷重支持面同士は、それらが取り付けられている弦部材の水平及び垂直の中立軸線を中心として対象であるのが好ましい。
【0039】
図2又は3のいずれかに示されている非整合状態からブーム部分を組立てる場合、通常は以下のステップがなされる。2つのブーム部分同士が結合されて、第一のブーム部分53上の2つの結合部材70が第二のブーム部分54上のそれぞれ対応する2つの結合部材80とかみ合って2対のかみ合った結合部材が形成されるが、これら2つの部分の長手軸線41同士は整合していない。各ブーム部分上の残っている方の結合部材は結合していない。次に、かみ合っている結合部材の両方の対の一方の側面上の穴にピンが挿入されると、かみ合った結合部材は枢動結合状態で相互に結合される。次いで、2つの部分53と54とは、圧縮荷重支持面78が圧縮荷重支持面88と接するまで前記枢動結合部を中心として相対的に枢動される。この構造により、ブーム部分が頂部の結合部か底部の結合部のどちらかを中心として“折れ曲がる”ことができる。ブーム部分同士は、頂部のピンか底部のピンが挿入された状態で旋回可能に係合させることができ、次いで、ブーム部分同士が整合される位置まで枢動され、反対側の結合部材にピンが通され、他のピンが頂部結合部材の内側に設けられている穴に挿入される。
【0040】
ブーム部分はまた、頂部の弦部材の結合部材と底部の弦部材上の結合部材とが大まかには同時に互いに接するほぼ整合した状態で結合させても良い。結合部材の好ましい幾何学的構造により、ブーム部分同士が結合されるときに正確に整合されていない場合には、第一の整合面74は、第二の整合面84と係合し且つ整合面74がポケット84内に完全に収まるまで結合部材をガイドして相対的に滑らせ、このようにして、ブーム部分同士を適正に整合させて、結合部材の上方の組と下方の組との両方における係合部材と第二の整合面とが完全に係合したときに、結合部材内の伸長部を貫通している穴同士が整合されて前記第一のかみ合い結合部材と第二のかみ合い結合部材とに設けられた全ての伸長部内の穴にピンが挿入できるようになることがわかるであろう。
【0041】
ブーム部分には、油圧ピンを穴に押し込む位置において油圧ピン挿入装置をブーム部分に取り付けることができるようにブラケットが設けられているのが好ましい。図5aには、油圧ピン挿入装置のこのような構造の一つが示されている。ブラケット92はピン95の伸長部96を支持しており、ピン95は伸長部71,72,73,81,82の穴に嵌まる大きさとされている。別のブラケット91は、頂部弦部材61の端部間に延びている頂部の梁部材65の中心に結合されている。複動式油圧シリンダを備えている油圧によるピン挿入/引き抜き機具93を、ブラケット91の一方の側部に嵌め込み且つピン95の伸長部96と連結させることができる。下方ピンが挿入されるとピン94が取り外され、これによりブラケット91がピン97を中心に上方位置へと枢動することができる。次いで、ピン94が貫通穴98に挿入され、機具93はブラケット91内に戻され且つ上方のピン95の伸長部96と連結される。ピンの引っ込めは逆の動作で行われる。以下の説明によって理解できるように、本発明の好ましい実施例においては、油圧によるピン挿入/引き抜き機具93は、ピン95のうちの1本を挿入するために使用する必要があるだけであり、他のピンは手で挿入することができる。
【0042】
上記した結合装置においては、頂部のピン95aのみが貫通穴内に緊密に嵌合する必要があり、該結合を形成している他のピン95b,95c,95dは緩く嵌合している。ピン95aは図5bに示されている。ピン95aは頭部192と主本体部194とテーパー部196とを備えている。更に、頭部192には、伸長部96の結合場所を提供するための端ぐり198が形成されている。端ぐり198は、その底部にねじ穴191を備えており、ねじ穴191は、ピンを製造プロセス中にメッキするときに保持するために使用される。頭部192内を端から端まで貫通している穴199が端ぐり198と交差している。伸長部96の端部には穴(図示せず)が設けられており、該穴は、ピン95aが結合部材70内に挿入されるか結合部材70から引き抜かれつつあるときに伸長部96をピン95aに結合させるために保持ピンが穴199を貫通することができるように、穴199に適合している。ピン95aの本体部194内を端から端まで貫通している別の穴197は、保持ピンが結合部材の伸長部を貫通した後に、ピン95aを定位置に保持するように挿入されるようにしている。他のピン95b,95c,95dも同じ方法で形成されているが、本体部の直径がより小さい。
【0043】
ピン95aは、伸長部71a,81a,72a,82a,73aの貫通穴内にきつく嵌まり込むサイズとされている。本体194の直径と結合部材内の伸長部に設けられている貫通穴の直径との差の程度は支柱部分の大きさの違いに応じて変わるけれども、例示的な実施例においては、ピン95aの直径は110.20mm(公差が+0.00mm,−0.08mm)であり、一方、穴の内径は110.40mm(公差が+0.08mm,−0.00mm)である。従って、ピンの直径と穴の直径との間で起こり得る最小差(最小のクリアランス)は0.20mmである。許容公差範囲の両極端(最小実体寸法)においてさえ、ピンの直径と穴の直径との差は0.36mmである。a)貫通穴の内径ときつく嵌るピンの外径との差とb)きつく嵌るピンの外径との比(Xと称される)は、0.0055未満、好ましくは0.004未満、更に好ましくは0.0035未満であり、0.002未満であることが更に好ましい。上記の実施例においては、比Xは、ピンがその交差範囲内で可能な限り大きく且つ穴がその交差範囲内で可能な限り小さいときに、0.0018である。他の極端な場合には,最小実体状態での比Xは0.0033である。
【0044】
この例示的な実施例においては、緩い嵌合ピン95b、95c、95dの主本体部の直径は109.65mmで公差が+0.00mm,−0.08mmであり、穴の大きさも同じである。従って、ピンの直径と穴の直径との間の起こり得る最小の差(最小クリアランス)は0.75mmであり、両公差範囲の極端における差(最小実体寸法)は0.91mmである。a)貫通穴の内径と緩い嵌合ピンの外径の差とb)緩い嵌合ピンの外径との比(Yと称される)は、0.0065より大きく、0.007より大きいのが好ましく、0.0075より大きいのが更に好ましい。この例示的な実施例においては、比Yは、最大クリアランス状態で0.0068であり、許容公差の極端においては0.0083である。比XとYとの差は少なくとも0.003であるのが好ましい。
【0045】
きついピンと緩いピンとを表す別の方法は、それらの相対的なクリアランスを比較することによる方法である。以下に言及するように、Mは、第一及び第二の結合部材の貫通穴の内径ときつい嵌合ピンの外径との差を示す。Nは、第三及び第四の結合部材の貫通穴の内径と緩い嵌合ピンの外径との差を示す。Mは、0.5mmよりも小さいのが好ましく、0.4mm小さいのがより好ましく、Nは0.6mmよりも大きいのが好ましく、本発明が特に有用である大きなブームに対しては0.7mmより大きいのが更に好ましい。
【0046】
ピン95b,95c,95dとそれらの各々の穴とのクリアランスNは、ピン95aとこれらのピン95aが嵌合する穴とのクリアランスMの少なくとも2倍であるのが好ましく、3倍であるのが更に好ましい。上記した例において、ピン95aの直径が110.16mm(その許容公差範囲の中心の値)であり且つ該ピンが嵌合する穴の直径が110.44mm(その許容公差範囲の中心の値)である場合には、0.28mmのクリアランスMがある。ピン95bの直径が109.61mm(その許容公差範囲の中心の値)であり且つ該ピンが嵌合する穴の直径が110.44mm(その許容公差範囲の中心の値)である場合には、0.83mmのクリアランスNがある。従って、緩い嵌合ピンのクリアランスNは、きつい嵌合ピンのクリアランスMの2倍より大きく、およそ3倍である。
【0047】
本発明の実施例においては、支柱部分の各々は、3本の弦部材及び中間梁部材によって作られており、第一の支柱部分と第二の支柱部分とを相互に保持するために3つの結合部材が使用されているだけである。この実施例の支柱部分250のうちの一つの一端が図12に示されている。支柱部分250は、梁部材265によって相互に結合されている3本の弦部材261,262,263を備えている。図2〜11に示している既に説明した実施例と同様に、3つの伸長部を2組備えている結合部材271,272,273の各々は、(ちょうど、結合部材70のように)支柱部分250の一端において弦部材の端部に位置決めされており、一方、2つの伸長部の組を2つ備えている結合部材80とちょうど同じように、各々、支柱部分250の反対側の端部(図示せず)上に配置されている。図示されていないけれども、結合部材271,272,273をそれらがかみ合う結合部材に保持するために使用されるピンは、きつい嵌合ピンと緩い嵌合ピンとの両方を含んでいる。例えば、一つのきつく嵌合されるピンは、結合部材271の伸長部のうちの頂部の組に設けられている穴に使用することができ、一方、緩いピンは、結合部材271の伸長部のうちの底部の組と結合部材272及び273に設けられている伸長部の組の各々とに設けられている穴に使用することができる。別の方法として、2つのきつく嵌合されるピンは、結合部材272及び273の底部の穴に使用することができ、緩く嵌合されるピンは、結合部材272及び273の頂部の穴及び結合部材271に設けられている両方の組の穴に使用することができる。
【0048】
各実施例の利点のうちの一つは、共通の鋳造を使用して全ての結合部材をブーム部分の同じ端部に作ることができ、これによって製造を簡素化できることである。好ましい製造プロセスにおいては、鋳造物は、予め機械加工され次いで弦部材に溶接される。弦部材は、次いで組み合てられてブーム部分とされ、次いで、該結合部材に、最終的な穴を開けることを含む最終的な加工が施される。この最終的な穴は、ブーム部分上の全ての結合部材に設けられている全ての伸長部の全ての貫通穴について同じサイズであるのが好ましい。この過程によって、結合部材の最終的な形状を、大きなブーム部分の溶接及び機械加工によって生じる歪みについて心配する必要がなく作ることができる。
【0049】
これらの大きな例示的なピンの重量は25kg以上であり、32kg程度でさえあるけれども、本発明は、ピン95aが挿入され且つブーム部分が定位置まで旋回された後に比較的小さなピン95b,95c,95dを容易に挿入できるようにしている。
【0050】
本発明の別の利点は、極めて大きな吊り上げ能力を有するブームに特に有用である。結合部材は主に大きな圧縮荷重のために設計されているが、結合によって、結合部間を横切って引張荷重を処理することが必要な場合があり得る。穴に通したピンはこれらの引張荷重に対処することができる。
【0051】
本発明の装置は様々な実施形態の形で組み込むことができ、その数個のみが上に例示され且つ記載されたことを理解されたい。本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱せずに他の形態で具現化し得る。例えば、前記貫通穴の全てが同じサイズとされ且つきつく嵌合するピンと緩く嵌合するピンとが異なるサイズとされる代わりに、ピンは全て同じサイズとし、きつく嵌合されるピンが挿入される穴を緩く嵌合されるピンが挿入される穴よりも小さくすることができる。また、各結合部材に伸長部の組を2つ有する結合部材ではなく、唯一つのピンが一つの伸長部の組に通された形態で各結合部材同士が結合される支柱部分において本発明を使用することができる。更に、1つの結合部材に3つの伸長部(71a,72a,73a)を備え且つこれとかみ合う結合部材に2つの伸長部(81a,82a)を備えている伸長部の組ではなく、これより少ないか又は多い伸長部を備えている結合部材を使用することができ、かみ合い結合部材に多数の伸長部を備えるのではなく結合部材のうちの1つが1以上の伸長部を備えていることが好ましい。以上、リフトクレーンにおいて使用される場合の本発明を説明したけれども、本発明は、タワークレーンのような他のタイプのクレーンの支柱部分に使用することができる。上記した実施例は全ての点について単に例示的で且つ非限定的なものと考えられるべきであり、従って、本発明の範囲は、上記の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示されている。特許請求の範囲の意義及びその等価範囲に含まれるすべての変更が特許請求の範囲に包合されるべきである。
【符号の説明】
【0052】
10 移動式リフトクレーン、 12 車体、
13 カウンタウエイトユニット、 14,16 クローラ、接地部材、
20 回転床、 24 巻き上げロープ、
25 ブーム巻き上げ索具、 26 フック、
28 マスト、 30 後方連結器、
33 支持部材、 34 カウンタウエイト、
36 油圧シリンダ、 38 リアアーム、
39 角度が付けられている部分、 40 枢動フレーム、
41 長手軸線、 50 ブーム、
51 ブームバット、 52,53,54,55 ブーム挿入部分、
56 ブームトップ、 61 頂部弦部材、
63 底部弦部材、
65 ラチス要素、頂部の梁部材、
67 第一の長手方向部分、 68 第二の長手方向部分、
70 第一の結合部材、 71,72,73 伸長部、
71a,72a,73a,71b,72b,73b 伸長部、
74 第一の整合面、 78 圧縮荷重支持面、
80 第二の結合部材、 81,82 伸長部、
81a,82a,81b,82b 伸長部、
84 第二の整合面、 88 荷重支持面、
89 排水孔、 84 ポケット、
92 ブラケット、 95 ピン、
96 伸長部、 71,72,73,81,82 伸長部、
91 ブラケット、 93 ピン挿入/引き抜き機具、
95a,95b,95c,95d ピン、
97 ピン、 98 貫通穴、
191 ねじ穴、 192 頭部、
194 主本体部、 196 テーパー部、
197 穴、 198 端ぐり、
199 穴、 250 支柱部分、
261,262,263 弦部材、 265 梁部材、
271,272,273 結合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部機構上に回転可能に取り付けられた上部機構を備えており且つ少なくとも1つの支柱部材を備えているクレーンにおいて、
前記支柱部材が、
a)それぞれが長手軸線並びに第一及び第二の端部を有する第一及び第二の支柱部分であって、第一の支柱部分の前記第二の端部が第二の支柱部分の前記第一の端部と結合するようになっている第一及び第二の支柱部分と、
b)前記第一の支柱部分の前記第二の端部に設けられている第一、第三、及び第五の結合部材であって、前記第二の支柱部分の前記第一の端部に設けられている第二、第四、及び第六の結合部材とかみ合う第一、第三、及び第五の結合部材と、を備えており、
c)前記結合部材の各々は、貫通穴が貫通されている第一の伸長部を有しており、前記貫通穴は、前記長手軸線に直角で且つ前記支柱部分同士が整合されているときにかみ合っている前記結合部材の貫通穴同士が整合されるように前記伸長部内に配置されており、
d)前記結合部材の各々はまた、圧縮荷重支持面をさらに有しており、該圧縮荷重支持面は、前記支柱部分同士が整合されているときに前記第一の支柱部分と第二の支柱部分との間の圧縮荷重を担持するように位置決めされており、
e)当該支柱部材は更に、前記第一の結合部材の第一の伸長部に設けられている前記貫通穴及び第二の結合部材の第一の伸長部に設けられている前記貫通穴にきつく嵌合して前記第一の結合部材と第二の結合部材とを結合させる第一のピンと、
前記第二の支柱部分の第一の端部に設けられている前記第三の結合部材の第一の伸長部に設けられている前記貫通穴及び前記第四の結合部材の第一の伸長部に設けられている前記貫通穴に緩く嵌合して前記第二の結合部材と第四の結合部材とを結合させる第二のピンと、
を備えていることを特徴とするクレーン。
【請求項2】
前記第一のピンがその中を伸長している全ての前記貫通穴の内径が同じ大きさであり、前記第二のピンがその中を伸長している全ての前記貫通穴の内径が同じ大きさである、ことを特徴とする請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記第一のピンがその中を伸長している全ての前記貫通穴と前記第二のピンがその中を伸長している全て前記貫通穴の内径とが同じ大きさである、ことを特徴とする請求項2に記載のクレーン。
【請求項4】
前記第一及び第二の結合部材の前記貫通穴の内径と前記第一のピンの外径との差と、前記第一のピンの外径と、の比であるXが0.0055より小さいことを特徴とする請求項2又は3に記載のクレーン。
【請求項5】
前記第三及び第四の結合部材の前記貫通穴の内径と前記第二のピンの外径との差と、前記第二のピンの外径と、の比であるYが0.0065より大きいことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のクレーン。
【請求項6】
前記第一及び第二の結合部材の前記貫通穴の内径と前記第一のピンの外径との差と、前記第一のピンの外径と、の比であるXと、
前記第三及び第四の結合部材の前記貫通穴の内径と前記第二のピンの外径との差と、前記第二のピンの外径と、の比であるYと、
の差が0.003より大きいことを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載のクレーン。
【請求項7】
前記第一及び第二の結合部材の前記貫通穴の内径と前記第一のピンの外径との差であるMと、
前記第三及び第四の結合部材の前記貫通穴の内径と前記第二のピンの外径との差にであるNと、
の比が少なくとも2であることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載のクレーン。
【請求項8】
前記Mが0.5mmより小さく、前記Nが0.6mmより大きい、ことを特徴とする請求項7に記載のクレーン。
【請求項9】
前記支柱部分の各々が4本の弦部材を備えており、前記第一の支柱部分の第二の端部に設けられた第七の結合部材を更に備えており、該第七の結合部材は、前記第二の支柱部分の第一の端部に設けられた第八の結合部材と係合している、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のクレーン。
【請求項10】
前記結合部材の各々が更に、
貫通穴を有し、該貫通穴の軸線が前記結合部材の他の伸長部の貫通穴の軸線に対して平行であるがずれている第二の伸長部と、
前記第一及び第二の結合部材の伸長部の貫通穴に緩く嵌合して前記第一の結合部材と第二の結合部材とを更に結合させている第三のピンと、
前記第三及び第四の結合部材の伸長部の貫通穴に緩く嵌合して前記第三の結合部材と第四の結合部材とを更に結合させている第四のピンと、
を備えている、請求項1乃至9のいずれかに記載のクレーン。
【請求項11】
前記第一、第三、及び第五の結合部材の各々が3つの伸長部を二組備えており、前記第二、第四、及び第六の結合部材の各々が2つの伸長部を二組備えており、該第二、第四、及び第六の結合部材の各々が、前記支柱部分がその作動位置で相互に結合されているときに、各々、前記第一、第三、及び第五の結合部材の前記伸長部の間に嵌り込み、付加的なピンが使用されて、該付加的なピンが緩く嵌まり込んでいる状態で、前記第一及び第二のピンが使用されて結合部材の各対を結合させている、ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のクレーン。
【請求項12】
前記第一及び第二の支柱部分の各々が、その間に中間のレーシング要素を備えた4本の弦部材を備えており、該弦部材の各々が前記第一及び第二の支柱部分の前記第一及び第二の端部に対応する第一及び第二の端部を備えており、前記第一及び第二の支柱部分同士が結合されるときに、前記4本の弦部材のうちの2本が頂部弦部材を構成し且つ該4本の弦部材のうちの他の2本が底部弦部材を構成しており、前記第一のピンと付加的なきつく嵌合するピンとが、前記頂部弦部材に隣接している結合部材同士を結合するために使用されている、ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のクレーン。
【請求項13】
前記第一乃至第六の結合部材の各々に設けられている前記貫通穴の内径が全て互いに等しく、前記第一のピンの外径が前記付加的なきつく嵌め込まれるピンの外径と同じである、ことを特徴とする請求項12に記載のクレーン。
【請求項14】
前記第一及び第二の支柱部材が、当該クレーンが作動中に荷吊り上げワイヤーロープを支持するブーム部材を構成している、ことを特徴とする請求項12に記載のクレーン。
【請求項15】
2つの組立式支柱部材間のかみ合い結合装置であって、
a)第一の組立式の支柱部材の一端に取り付けられた第一の結合部材と、第二の組立式の支柱部材の一端に取り付けられた第二の結合部材と、
b)前記第一及び第二の結合部材は、各々がピンを受け入れる大きさとされた貫通して設けられた貫通穴を備えている伸長部の第一及び第二の組と、を備えており、
c)前記第一及び第二の結合部材はまた、前記伸長部の第一の組と前記伸長部の第二の組との間に配置された圧縮荷重を支持する面を有し、前記第一の結合部材の圧縮荷重支持面は、前記第二の結合部材の圧縮荷重支持面と対面関係となっており、
d)前記第一の結合部材の前記伸長部の第一の組に設けられた貫通穴と前記第二の結合部材の前記伸長部の第一の組に設けられた貫通穴とを通る第一のピンと、前記第一の結合部材の前記伸長部の第二の組に設けられた貫通穴と前記第二の結合部材の伸長部の第二の組に設けられた貫通穴を通る第二のピンと、をさらに備えている、かみ合い結合装置。
【請求項16】
前記第一の結合部材の前記伸長部の第一の組における伸長部の数が、前記第一の結合部材の前記伸長部の第二の組における伸長部の数に等しい、ことを特徴とする請求項15に記載のかみ合い結合装置。
【請求項17】
前記第一の結合部材の前記伸長部の第一の組は奇数個の伸長部を有しており、前記第二の結合部材の前記伸長部の第一の組は偶数個の伸長部を有している、ことを特徴とする請求項15又は16に記載のかみ合い結合装置。
【請求項18】
各々が、長手方向軸線と少なくとも3本の弦部材とを備えており、前記弦部材の各々がそれぞれの端部に結合部材を備えている、リフトクレーンの支柱部の第一の支柱部分と第二の支柱部分とを結合させる方法であって、
a)前記第一の支柱部分に設けられた第一の結合部材に貫通して設けられた貫通穴を備えている少なくとも1つの伸長部が、前記第二の支柱部分に設けられた第二の結合部材に貫通して設けられた貫通穴を備えている少なくとも2つの伸長部の間に、前記第一及び第二の結合部材の各伸長部に設けられている貫通穴同士が概ね整合された状態で差し込まれて互いにかみ合った結合部材の第一の組を形成するように、前記第一及び第二の支柱部分同士を結合させるステップと、
b)かみ合った前記第一の結合部材と第二の結合部材とを、前記伸長部の貫通穴内にきつく嵌め込まれるピンによって互いに結合させて枢動結合させるステップと、
c)非結合状態となっている結合部材を、対応する前記かみ合った結合部材に、緩く嵌り込むピンによってピン結合させるステップと、を含む方法。
【請求項19】
前記第一の支柱部分の前記非結合状態となっている結合部材に設けられているストッパ面が前記第二の支柱部分の前記非結合状態となっている結合部材に設けられているストッパ面と接触するまで、前記第一及び第二の支柱部分を、前記枢動結合を中心に相対的に枢動させるステップを、前記ステップb)とステップc)との間に含んでいる、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第一の支柱部分の前記非結合状態となっている結合部材に設けられている前記ストッパ面と前記第二の支柱部分の前記非結合状態となっている結合部材に設けられている前記ストッパ面との両方が、圧縮荷重支持面を備えている、ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記リフトクレーンの支柱部の第一の支柱部分と第二の支柱部分の各々が4本の弦部材からなっており、該弦部材の各々がその各端部に結合部材を備えている、ことを特徴とする請求項18乃至20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
各結合部材が、各々が貫通して設けられた貫通穴を備えている二組の伸長部を備えており、4つの前記結合部材を前記支柱部分の2つの端部の各々に結合するために、全部で8本のピンが使用され、該ピンのうちの2本がそれらのための貫通穴にきつく嵌め込まれ、前記ピンのうちの6本がそれらのための貫通穴に緩く嵌め込まれる、ことを特徴とする請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−62200(P2012−62200A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−204954(P2011−204954)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(510051082)マニタウォック クレイン カンパニーズ, エルエルシー (13)
【氏名又は名称原語表記】MANITOWOC CRANE COMPANIES, LLC
【Fターム(参考)】