説明

クレーン制御装置、およびクレーン装置

【課題】荷役作業の作業効率を低下させることなくアイドリングストップ(エンジン停止)を行うことができるクレーン制御装置を提供する。
【解決手段】本発明のクレーン制御装置では、エンジン発電機31に蓄電池部61が接続され、エンジン発電機31と蓄電池部61の両方から負荷40及び50に電力が供給される。コントローラ10Aは、当該クレーン装置で行うジョブ情報をジョブスケジュール記憶部11に記憶する。そして、コントローラ10Aは、ジョブスケジュール記憶部11に記憶されたジョブ情報を基にアイドリングストップが可能な時間を判定して、アイドリングストップを行う。例えば、次ジョブの開始予定時間からエンジン32の起動時間を見込んだ時間をアイドリングストップが可能な時間として設定し、前ジョブの終了時からアイドリングストップが可能な時間の間、エンジン32のアイドリングストップを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ等の荷物の積み降ろし、積み込み等の運搬時に用いられるクレーン装置のクレーン制御装置およびクレーン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾等においては、クレーン装置によって船舶あるいはトレーラへのコンテナの積み込み、及び船舶あるいはトレーラからのコンテナの積み降ろし等の運搬作業(荷役作業)が行われている。この種のクレーン装置としては、車輪によって路面上を自走するクレーンが知られている。このクレーンは、上部に昇降装置を有する門型に構成された架台の両下端部に車輪が設けられて、この車輪によって走行可能とされたもので、車輪を駆動させるための走行モータ、コンテナを吊り上げるための巻き取りモータ、吊り上げたコンテナを水平方向へ移動させる横行モータを有している。そして、このクレーンには、エンジン式発電機が搭載されており、このエンジン式発電機によって発電した電力を各モータへ供給している。
【0003】
ところで、エンジン式発電機によって発電した電力により各モータを駆動する場合、クレーン作業の中で、実際に吊り作業を行っていない、所謂アイドリング時においても照明設備、空調装置、油圧ポンプ等の補機を駆動するためにエンジンをアイドリング回転数で運転しなければならない。このアイドリングでは、エンジンを効率(燃料消費率)の悪い低回転数領域で運転することになり、エネルギーロスが大きくて燃費が悪いというだけでなく、排気ガス、騒音等が生じていた。そこで、省エネルギー化、環境保全対策を図るために蓄電池装置を備えるクレーンの開発が進められている。
【0004】
なお、関連するクレーン用電源設備がある(特許文献1を参照)。この特許文献1のクレーン用電源設備は、クレーン用電源設備において、エンジン発電機容量が小さくて済み、しかも荷役サイクル全体におけるエネルギー損失を小さくすることを目的としている。 また、関連する荷役機械のエンジン発電機制御装置がある(特許文献2を参照)。この特許文献2のエンジン発電機制御装置は、エンジン発電機を定格運転してその電力により荷役駆動装置を駆動する荷役車両において、小型の荷役機械にも適用でき、省エネルギー化、環境保全対策を実現することを目的としている。
また、関連するクレーン装置およびクレーン制御方法がある(特許文献3を参照)。この特許文献3のクレーン装置は、蓄電装置の蓄電電力を補機設備で利用することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−285165号公報
【特許文献2】特開2004−360610号公報
【特許文献3】特開2008−247591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1のクレーン用電源設備では、直流母線に接続された蓄電装置を有し、駆動装置にかかる負荷に応じて蓄電装置を充電または放電させるようにしている。しかしながら、このクレーン用電源設備では、発電機から直接補機に電力を供給するため、蓄電装置の蓄電電力を補機に供給することができない。このため、補機だけを負荷とする場合であってもエンジンを運転することが必要となり、アイドリングストップによる燃費削減ができないという問題がある。
【0007】
また、前述した特許文献2のエンジン発電機制御装置は、エンジン発電機から定格作動装備品(補機)に電力を供給する定格電力回路に切替器を介在させ、エンジン発電機により充電可能な蓄電池の出力を、直流−交流変換器を介して前記切替器に供給するアイドリング電力回路を設け、エンジン側コントローラにアイドリング運転指令部を設け、アイドリング運転指令部を操作可能なアイドリングスイッチを設けている。しかしながら、このエンジン発電機制御装置では、荷役駆動装置からの回生電力を蓄電池に蓄電し有効利用することができないため、燃費削減効果が小さくなる。また、発電装置は蓄電池充電機能を有する必要があることと、切換器が必要なことにより機器構成が複雑化する。
【0008】
また、特許文献3のクレーン装置は、エンジン発電装置またはインバータから共通母線に出力された余剰電力を蓄電装置に蓄電して、直流電力の不足時に当該蓄電電力を共通母線へ出力し、インバータにより、共通母線上の直流電力を交流電力に変換して当該クレーン装置の補機設備へ供給している。しかしながら、この特許文献3のクレーン装置では、発電装置が電圧昇圧装置を備えるため、機器構成が複雑化する。また、蓄電装置が蓄電池への充放電を制御する回路装置を備えるため、機器構成が複雑化する。また、この回路装置の容量は蓄電装置が入出力するピーク電力に対応する必要があるため大容量となり装置が大型化し、コストが高くなるという問題がある。さらに、蓄電池の充電状態制御方法や電圧のしきい値の設定方法について言及されておらず、蓄電池温度が低い冬季起動時などには運転ができなくなる恐れがある。
【0009】
また、特許文献1、特許文献2及び特許文献3の技術においては、アイドリングストップしたエンジンは、荷役作業開始時にエンジン発電機の起動時間(例えば、数十秒)がかかるので、その待ち時間分だけ荷役作業の開始が遅れ、作業全体の効率を低下させることになる。このため、従来のクレーン装置においては、軽負荷時(例えば、荷役作業を行わない場合)にはエンジンをアイドリング状態にして待機させ、エンジンをアイドリングストップ(エンジン停止)することなく常時運転することが多かった。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、クレーン装置における荷役作業の作業効率を低下させることなく、燃費の削減を図るとともに、排気ガス等による環境へ与える影響を低減できる、クレーン制御装置、およびクレーン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。すなわち、本発明のクレーン制御装置では、原動機により駆動される発電機と、前記発電機に接続された蓄電装置及び荷役作業を行う装置となる複数の負荷と、前記発電機と前記複数の負荷を制御するとともに、前記原動機の出力状態を、原動機停止状態であるアイドリングストップの状態と、アイドリングの状態と、所要回転数で運転する状態のうちのいずれかの状態に切り替える制御部と、前記負荷を用いて行われる荷役作業のジョブ情報を記憶するジョブスケジュール記憶部と、から構成され、前記制御部は、前記原動機のアイドリング状態とアイドリングストップ状態との切り替え制御を前記ジョブ情報を基に行うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のクレーン制御装置では、前記ジョブ情報には次に実行する荷役作業の開始予定時間の情報が含まれ、前記制御部は、前記次に実行する荷役作業の開始予定時間と前記原動機の起動に要する時間とを基に、アイドリングストップが可能な時間を算出し、先に行われる荷役作業の終了時刻に基づいて前記算出されたアイドリングストップが可能な時間の間、前記原動機のアイドリングストップを行うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明のクレーン制御装置では、前記ジョブ情報には次に実行する荷役作業で荷役する搬送物の重量の情報が含まれ、前記制御部は、前記次に実行する荷役作業で荷役する搬送物の重量が所定の許容値以内である場合は、先に行われる荷役作業の終了時からアイドリングストップを行うとともに、次に実行する荷役作業の実行の期間においても、アイドリングストップを継続することを特徴とする。
【0014】
また、本発明のクレーン制御装置では、前記ジョブ情報には次に実行する荷役作業で荷役する搬送物の巻き上げ距離の情報が含まれ、前記制御部は、前記次に実行する荷役作業で荷役する搬送物の巻き上げ距離が所定の許容値以内である場合は、先に行われる荷役作業の終了時からアイドリングストップを行うとともに、次に実行する荷役作業の実行の期間においても、アイドリングストップを継続することを特徴とする。
【0015】
また、本発明のクレーン制御装置では、前記ジョブ情報には次に実行する荷役作業おける移動距離の情報が含まれ、前記制御部は、前記次に実行する荷役作業における移動距離が所定の許容値以内である場合は、先に行われる荷役作業の終了時からアイドリングストップを行うとともに、次に実行する荷役作業の実行の期間においても、アイドリングストップを継続することを特徴とする。
【0016】
また、本発明のクレーン制御装置では、前記蓄電池の充電状態に応じて、前記許容値が可変に設定されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のクレーン装置は、上記に記載のいずれかのクレーン制御装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、クレーン制御装置の制御部は、ジョブスケジュール記憶部に記憶されたジョブ情報を基にアイドリングストップ(原動機停止)が可能な時間を判定して、アイドリングストップを行う。
これにより、クレーン装置における荷役作業の作業効率を低下させることなく、燃費の削減を図るとともに、排気ガス等による環境へ与える影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係わるクレーン装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係わるクレーン制御装置の構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態におけるアイドリングストップ動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態に係わるクレーン制御装置の構成を示す図である。
【図5】第2の実施形態におけるアイドリングストップ動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】本発明の第3の実施形態に係わるクレーン制御装置の構成を示す図である。
【図7】第3の実施形態におけるアイドリングストップ動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】本発明の第4の実施形態に係わるクレーン制御装置の構成を示す図である。
【図9】第4の実施形態におけるアイドリングストップ動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図10】本発明の第5の実施形態に係わるクレーン制御装置の構成を示す図である。
【図11】第5の実施形態におけるアイドリングストップ動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係わるクレーン装置の一例を示す概略構成図であり、トランスファクレーン(エンジン発電機付きクレーン)の全体構成を示す斜視図である。このトランスファクレーン1は、タイヤ式クレーン装置(RTG;Rubber tired gantry crane )と呼ばれ、軌道のないコンテナヤード等を走行して荷役作業を行うため、動力用電源及び制御用電源等を供給する1台のエンジン発電装置(エンジン発電機31)を備えている。
このトランスファクレーン1は、図1に示すように、クレーン走行機体2のガーダ3に沿って水平方向に移動するトロリー4を有し、コンテナCを把持するスプレッダと呼ばれる吊具5がトロリー4から垂れ下がる複数本の吊ロープ6によって吊り下げられている。吊具5は、トロリー4上に搭載された巻上装置7による吊ロープ6の巻き上げ、繰り出し動作によって昇降可能とされている。また、吊具5は、トロリー4の横行移動に追従してクレーン走行機体2のガーダ3に沿って平行移動可能とされている。
【0021】
図2は、本発明の第1の実施形態に係わるクレーン制御装置の構成図であり、トランスファクレーン1の駆動を制御するクレーン制御装置100Aのシステム構成を示している。このクレーン制御装置100Aは、エンジン発電機31と、コントローラ10Aと、蓄電池部61と、エンジン発電機31および蓄電池部61から電力の供給を受ける負荷装置(インバータ41及びモータM1等からなる各種駆動源や、補機52等)とを有している。また、コントローラ10Aは、後述する荷役情報管理システム200と通信回線により接続されている。
【0022】
エンジン発電機31は、エンジン(E)32と、このエンジン32により回転駆動される発電機(G)33とで構成される。このエンジン発電機31で発電された電力は、クレーン装置の各種の駆動源や、補機などに給電して使用される。
【0023】
発電機(G)33は交流発電機(例えば、3相交流発電機)であり、エンジン32により回転駆動され交流電圧を発生する。発電機33の出力側にはコンバータ80が接続されており、このコンバータ80は、発電機33から出力される交流電圧を直流電圧に変換し、この直流電圧を直流母線DCLに印加する。なお、このコンバータ80は直流母線DCLを介して、各種の駆動源や補機等の負荷装置全体に対して直流電力を供給するため共通コンバータとも呼ばれる。
【0024】
直流母線DCLには、インバータ41、42、43、44が接続される。インバータ41は、横行用のモータM1を駆動するインバータである。インバータ41は、コントローラ10A内の負荷装置制御部(図示せず)から指示される速度(横行速度)と方向に従い、直流母線DCLの直流電圧を、速度と方向に応じた周波数と相順の交流電圧(3相交流電圧)に変換して横行用のモータM1を駆動する。インバータ42、43は、走行用のモータM2、M3を駆動するインバータであり、直流母線DCLの直流電圧を、コントローラ10Aから指示される速度と方向に応じた周波数と相順の交流電圧(3相交流電圧)に変換して走行用のモータM2、M3を駆動する。インバータ44は、巻き用のモータM4を駆動する並列構成のインバータであり、直流母線DCLの直流電圧を、コントローラ10Aから指示される速度と方向に応じた周波数と相順の交流電圧(3相交流電圧)に変換して巻き用のモータM4を駆動する。
【0025】
また、直流母線DCLには、油圧ポンプのモータ、電磁クラッチ及びブレーキ、照明装置、及び空調設備等の補機52に電力を供給するインバータ51が接続される。このインバータ51は、入力側が直流母線DCLに接続され、直流母線DCLの直流電圧を商用周波数の交流電圧(単相または3相)に変換して補機52に電力を供給する。このインバータ51と補機52を含んで、回生を行わない負荷50を形成する。
【0026】
なお、インバータ41、42、43、44は、横行、走行用のモータM1、M2、M3においてブレーキ動作(回生ブレーキ動作)を行う場合や、巻上装置のモータM4においてコンテナの巻き下げを行う場合において、インバータ41、42、43、44から直流母線DCLに回生電流を流すように作動する。このインバータ41、42、43、44及びモータM1、M2、M3、M4を含んで回生を行う負荷40を形成する。
【0027】
また、直流母線DCLには、蓄電池部61が接続されている。この蓄電池部61は、クレーン制御装置100Aにおいて荷役作業(コンテナの巻き上げ)を行っていない場合や、補機のみを運転するなどの軽負荷時において、直流母線DCLに電力を供給するためのものである。また、この蓄電池部61は、負荷40の回生動作時の回生電流により充電される。
【0028】
また、回生抵抗R71は、IGBTのトランジスタTrを介して直流母線DCLに接続される電力消費用の抵抗器である。この回生抵抗R71は、直流母線DCLの電圧が過電圧になることを防ぐために設けられている。この直流母線DCLの電圧が所定の電圧値以上に上昇した場合に、この過電圧を検出してトランジスタTrを導通させ、回生抵抗R71に電流を流して電力を消費させることにより、直流母線DCLの電圧を低下させる。
【0029】
また、コントローラ10Aは、クレーン制御装置100A内のエンジン発電機31を制御するとともに、インバータ41、42、43、44及びモータM1、M2、M3、M4や、インバータ51及び補機52等の負荷装置を駆動制御する。なお、図2に示す例では、コントローラ10Aの構成として、図面の見易さのために、本発明に直接関係するエンジン発電機31の制御に関係する部分のみを示しているが、実際には、インバータ41、42、43、44及びモータM1、M2、M3、M4や、インバータ51及び補機52等の負荷装置を駆動制御する負荷装置制御部を備えている。
【0030】
このコントローラ10Aは、クレーンの作業管理を行うコンテナヤード荷役情報管理システム200(以下、荷役情報管理システムと呼ぶ)と通信回線(有線または無線)により接続されている。コントローラ10Aは、クレーンに装置における荷役作業の内容を示す荷役作業情報(ジョブ情報)(搬送元、搬送先の座標情報、荷役作業(ジョブ)の種類、およびジョブの開始予定時間等のジョブのスケジュールデータ)を荷役情報管理システム200から受信する。そして、荷役情報管理システム200から受信したジョブ情報を、ジョブスケジュール記憶部11に記憶する。
【0031】
なお、ジョブとは、クレーン装置により1つのコンテナ(荷物)を搬送する1サイクルの仕事の単位を意味し、例えば、トラックにより搬送されたコンテナを、コンテナ置き場(ヤード)に移し変える作業などである。
【0032】
また、荷役情報管理システム200は、コンテナに対する荷役作業を、どの順番で、どのタイミングで行うかの情報、および、外部からコンテナを搬入、搬出するトラックがゲートを通過した情報等を全体として管理するシステムである。この荷役情報管理システム200では、現在どのようなジョブの要求が、どの位流れているかを常時管理しており、対象となるクレーン装置に対して、この情報をジョブ単位で通信する。
例えば、クレーン装置において1つのジョブが完了し、このジョブ完了情報が荷役情報管理システム200に通知されると、荷役情報管理システム200からクレーン装置に対して次のジョブ情報が通知される。この荷役情報管理システム200から通知されるジョブ情報は、対象となるクレーン装置のコントローラ10Aに通信回線(有線または無線)により送信される。
【0033】
コントローラ10A内のエンジン制御部12Aは、エンジン32の運転状態を制御するための制御である。このエンジン制御部12Aは、エンジン32をアイドリングストップ(エンジン停止)の状態、アイドリングの状態、及び所要回転数の運転状態の各運転状態になるように制御する。
【0034】
なお、アイドリングとは、補機にのみ電力を供給する軽負荷の場合や、無負荷に近い状態等において、エンジン回転数を維持するために低回転(または所定の回転数で回転)させている状態のことを意味している。
【0035】
このエンジン制御部12内にはアイドリングストップ制御部13を有し、アイドリングストップ制御部13は、ジョブスケジュール記憶部11に記憶されたジョブ情報を参照して、エンジン32のアイドリングストップを行えるかどうかを判定する。
このアイドリングストップ制御部13では、当該クレーン装置が実行中の荷役作業(前ジョブ)の完了から、次に行う荷役作業(次ジョブ)の実施予定時間までに所定の待ち時間がある場合は、アイドリングモードの回転数を維持して運転する代わりに、アイドリングストップ(エンジンを完全に停止)する。
すなわち、エンジンを完全に停止させた場合には、エンジンを再起動して、エンジンが起動し電源が安定してジョブが実行可能となるまでには、ある程度の時間(例えば、数十秒)がかかる。このため、アイドリングストップ制御部13では、アイドリングストップを行った後、現在時刻を監視し、次のジョブの開始予定時間からエンジン起動時間を見込んで設定された所定の時間になったときにエンジンの再起動を行う。
【0036】
図3は、第1の実施形態におけるアイドリングストップ動作を説明するためのタイミングチャートである。図に示すように、コントローラ10Aは、時刻t1において、前ジョブの実行を完了した場合に、このジョブ完了の情報を荷役情報管理システム200に通知する。荷役情報管理システム200では、コントローラ10Aからジョブ完了の情報を受け取ると、次ジョブのジョブ情報(ジョブ開始予定時間)をコントローラ10Aに送信する。
コントローラ10A内のアイドリングストップ制御部13は、次ジョブの情報を基に、次ジョブの開始時刻t3を判定し、エンジン発電機の再起動に必要な余裕時間Teを基に、アイドリングストップが可能な時間(時刻t1〜t2)を算出する。エンジン制御部12は、アイドリングストップ制御部13より算出された時刻t1〜t2間においてエンジン32に対してアイドリングストップ(エンジン停止)の制御を行う。
【0037】
なお、荷役情報管理システム200から通知される次ジョブの情報は、前ジョブの終了の時点(時刻t1)でコントローラ10Aに送信されるが、これに限定されない。例えば、時刻t1以前に予め送信するようにしてもよい。あるいは、前ジョブ終了時に常時アイドリングストップを行う場合は、時刻t2以前(ジョブ開始時刻t3からエンジン起動の余裕時間Teを引いた時刻)以前に送信してもよい。さらには、荷役情報管理システム200からコントローラ10Aに、複数のジョブ情報をまとめて送信するようにしてもよく、この場合は、アイドリングストップ制御部13において、前ジョブの終了時刻と各ジョブごとの開始時刻に従って、アイドリングストップの制御を行う。
【0038】
このように、第1の実施形態においては、ジョブ情報(ジョブ開始予定時間)に基づき、ジョブ開始予定時間とエンジン発電機の起動の余裕時間とに合わせてアイドリングストップを行うようにしたので、アイドリングストップ(エンジン停止)を、クレーン装置の作業効率を低下させることなく行うことができ、燃費の削減を図るとともに、エンジン排気ガス等による環境への影響を少なくすることができる。
【0039】
[第2の実施形態]
前ジョブ終了時にアイドリングストップとなった後、次のジョブが始まるときには、基本的にはアイドリングストップが解除される。しかし、負荷の重い巻き上げ動作を伴わない、走行動作のみの場合など、負荷の軽いジョブの場合は、アイドリングストップのまま、蓄電池のみで次ジョブを実行することができる。
【0040】
図4は、本発明の第2の実施形態に係わるクレーン制御装置の構成を示す。図に示すクレーン制御装置100Bが、図2に示すクレーン制御装置100Aと構成上異なるのは、コントローラ10Bのエンジン制御部12B内に、負荷判定部14を新たに追加した点であり、他の構成は図2に示すクレーン制御装置100Aと同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
クレーン制御装置100Bにおいては、コントローラ10Bは、荷役情報管理システム200から、ジョブ情報として、ジョブ開始予定時間と、ジョブの種類(走行のみ/巻きあり)の情報を受信する。そして、荷役情報管理システム200から受信したジョブ情報をジョブスケジュール記憶部11に記憶する。
負荷判定部14では、ジョブスケジュール記憶部11に記憶されたジョブ情報を参照し、次ジョブにおける負荷の大きさを判定する(負荷の大きさは、コンテナの巻上げ動作を行うか否かにより判定する)。そして、負荷判定部14により、次ジョブの負荷が軽いと判定された場合は、アイドリングストップ制御部13は、次ジョブを実行する際にもアイドリングストップを解除することなく、アイドリングストップを継続する。そして、次ジョブにおいて必要な電力を蓄電池部61から供給する。
【0041】
図5は、第2の実施形態におけるアイドリングストップ動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0042】
図に示すように、コントローラ10Bは、時刻t1において、前ジョブの実行を完了した場合に、このジョブ完了の情報を荷役情報管理システム200に通知する。荷役情報管理システム200では、コントローラ10Bからジョブ完了の情報を受け取ると、次ジョブの情報(開始予定時刻の情報と、次ジョブの種類(走行のみ/巻きあり))をコントローラ10Bに送信する。
【0043】
そして、負荷判定部14では、次ジョブの種類の情報を基に、次ジョブの負荷が軽いか否かを判定する。すなわち、次ジョブが走行のみ(巻き上げ動作なし)であり、負荷が軽く、蓄電池部61により供給できる電力量の許容値の範囲内か否かを判定する。
負荷判定部14により、次ジョブの負荷が軽い(巻き上げ動作なし)と判定された場合は、時刻t2においてエンジン起動を行う必要がないので、アイドリングストップ制御部13は、時刻t2以降の次ジョブの実行の際にもエンジンのアイドリングストップを継続する。
このように、第2の実施形態においては、負荷の軽い(巻き上げ動作なし)ジョブに対しては、アイドリングストップを解除せず、次ジョブを実行する際にもアイドリングストップを継続する。これにより、荷役作業の効率を低下させることなく、アイドリングストップを行うことができる。また、アイドリングストップの時間が増加し、蓄電池の充放電回数を少なくすることができるので、蓄電池の寿命の長期化を図ることができる。
【0044】
なお、上述した例では、負荷判定部14における判定において、負荷の大きさの判定基準として「走行のみ/巻きなし」を用いているが、これに限定されない。例えば、走行のみであっても、クレーン装置の走行時の移動距離(走行距離)の許容値を設定して、この許容値を基に負荷の大きさを判定することもできる。
この移動距離を許容値として使用する場合は、荷役情報管理システム200から受け取るジョブ情報として、次ジョブの開始予定時刻、ジョブの種類(走行のみ/巻きあり)、移動距離(または移動位置の座標)の情報を受け取る。そして、負荷判定部14では、ジョブの種類が走行のみであり、かつ、移動距離が所定の許容値以内であるか否かを判定する。
そして、負荷判定部14により、次ジョブの負荷が軽い(走行のみであり、かつ移動距離が許容値以内)と判定された場合に、アイドリングストップ制御部13は、次ジョブの実行に際しても、アイドリングストップを解除することなく、次ジョブにおいて必要な電力を蓄電池部61から供給する。
これにより、次ジョブが負荷の軽いジョブ(移動距離の短いジョブ)である場合には、アイドリングストップを解除することなく、蓄電池のみを使用して走行を行うことができる。
【0045】
[第3の実施形態]
前ジョブ終了時にアイドリングストップとなった後、次のジョブが始まるときには、基本的にはアイドリングストップが解除される。しかし、巻き上げ動作を伴うジョブであっても、搬送物の重量が軽い搬送物(例えば空のコンテナ)であるジョブの場合は、アイドリングストップのまま、蓄電池のみで次ジョブを実行する。なお、例えば、空のコンテナは数トン程度の重量であり、荷物が搭載されたコンテナは数十トン程度の重量である。
【0046】
図6は、本発明の第3の実施形態に係わるクレーン制御装置の構成を示す図である。図に示すクレーン制御装置100Cが、図4に示すクレーン制御装置100Bと構成上異なるのは、コントローラ10B内の負荷判定部14を、図6に示す負荷判定部14Aに変更した点である。また、コントローラ10Cが、荷役情報管理システム200から、ジョブ開始予定時間と、ジョブ種類(走行のみ/巻きあり)と、搬送物の重量とを、ジョブ情報として受信する点が異なる。他の構成は図4に示すクレーン制御装置100Bと同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
クレーン制御装置100Cにおいては、コントローラ10Cは、荷役情報管理システム200から、ジョブ情報として、ジョブ開始予定時間と、ジョブの種類(走行のみ/巻きあり)と、搬送物の重量の情報とを受信する。そして、荷役情報管理システム200から受信したジョブ情報をジョブスケジュール記憶部11に記憶する。
【0047】
また、負荷判定部14Aでは、ジョブスケジュール記憶部11に記憶されたジョブ情報を参照し、次ジョブにおける負荷の大きさ(搬送物の重量)が所定の許容値(蓄電池部61から供給する電力により巻き上げ可能な重量)を超えるか否かを判定する。そして、負荷判定部14により、次ジョブの負荷が軽い(搬送物の重量が許容値内)と判定された場合は、アイドリングストップ制御部13では、アイドリングストップを解除することなく、次ジョブを実行する際にもアイドリングストップを継続する。そして、次ジョブにおいて必要な電力を蓄電池部61から供給する。
例えば、荷役情報管理システムか22ら受信した次ジョブの情報から、当該ジョブの搬送物の重量が、予め設定した許容値以下(例えば5トン以下)の場合は、蓄電池部61から負荷に電力を供給できるので、次ジョブの開始に際してもアイドリングストップの状態を維持する。
【0048】
図7は、第3の実施形態におけるアイドリングストップ動作を説明するためのタイミングチャートである。
図に示すように、時刻t1において、前ジョブの実行を完了した際に、コントローラ10Cは、荷役情報管理システム200から、ジョブ情報として、次ジョブの開始予定時間、次ジョブの種類(走行のみ/巻きあり)、搬送物の重量の情報を受信する。
そして、負荷判定部14では、次ジョブの負荷の大きさ(搬送物の重量)が、許容値内であるか否か(蓄電池部61により供給できる電力量の許容値の範囲内か否か)を判定する。
そして、負荷判定部14により、次ジョブの負荷が軽い(搬送物の重量が許容値内)と判定された場合は、アイドリングストップ制御部13は、時刻t2以降の次ジョブの実行の際にも、アイドリングストップを継続する。
【0049】
このように、荷役情報管理システムから受信した次ジョブの情報から、当該ジョブの搬送物の重量が、あらかじめ設定した許容値以下の場合、次ジョブのジョブ開始に際してもアイドリングストップの状態を維持する。
これにより、負荷の軽いジョブ(搬送物の重量が許容値内のジョブ)に対しては、アイドリングストップを解除せず、蓄電池のみでジョブを実行するようにしたので、荷役作業の効率を低下させることなくアイドリングストップを行うことができる。また、アイドリングストップの時間が増加し、蓄電池の充放電回数を少なくすることができるので、蓄電池の寿命の長期化を図ることができる。
【0050】
[第4の実施形態]
前ジョブ終了時にアイドリングストップとなった後、次のジョブが始まるときには、基本的にはアイドリングストップが解除される。しかし、巻き上げ動作を伴うジョブであっても搬送物の巻き上げ距離が短いジョブの場合は、アイドリングストップのまま、蓄電池のみでジョブを実行する。
【0051】
図8は、本発明の第4の実施形態に係わるクレーン制御装置100Dの構成を示す図である。図に示すクレーン制御装置100Dが、クレーン制御装置100Cと構成上異なるのは、コントローラ10C内の負荷判定部14Aを、図8に示す負荷判定部14Bに変更した点である。また、コントローラ10Dが荷役情報管理システム200から受信するジョブ情報が、ジョブ開始予定時間と、ジョブの種類(走行のみ/巻きあり)と、搬送物の重量と、巻き上げ距離とである点が異なる。他の構成は図6に示すクレーン制御装置100Cと同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
クレーン制御装置100Dにおいては、コントローラ10Dは、荷役情報管理システム200から、ジョブ情報として、ジョブ開始予定時間と、ジョブの種類(走行のみ/巻きあり)と、搬送物の重量と、巻き上げ距離とを受信する。そして、荷役情報管理システム200から受信したジョブ情報をジョブスケジュール記憶部11に記憶する。
【0052】
負荷判定部14Bでは、ジョブスケジュール記憶部11に記憶されたジョブ情報を参照し、次ジョブにおける負荷の大きさの許容値として、巻き上げ距離が所定の許容値(蓄電池部61から供給する電力により巻き上げ可能な距離)を超えるか否かを判定する。そして、負荷判定部14Bにより、次ジョブの負荷が軽い(搬送物の巻き上げ距離が許容値内)と判定された場合は、アイドリングストップ制御部13は、アイドリングストップ制御部13は、アイドリングストップを解除することなく、次ジョブを実行する際にもアイドリングストップを継続する。そして、次ジョブにおいて必要な電力を蓄電池部61から供給する。
【0053】
図9は、第4の実施形態におけるアイドリングストップ動作を説明するためのタイミングチャートである。
図に示すように、時刻t1において、前ジョブの実行を完了した際に、コントローラ10Dは、荷役情報管理システム200から、次ジョブの開始予定時間、次ジョブの種類(走行のみ/巻きあり)、搬送物の重量、および巻き上げ距離の情報を受信する。
そして、負荷判定部14Bでは、巻き上げ距離を基に、次ジョブの負荷の大きさを判定する。そして、負荷判定部14Bにより、次ジョブの負荷が軽い(巻き上げ距離が許容値内)と判定された場合、アイドリングストップ制御部13は、時刻t2以降の次ジョブを実行する際にも、アイドリングストップを維持する。そして、次ジョブにおいて必要な電力を蓄電池部61から供給する。
このように、第4の実施形態においては、荷役情報管理システム200から受信した次ジョブの情報から、当該ジョブの搬送物の重量が、あらかじめ設定された許容値(例えば、第3の実施形態で設定された許容値)を超えていても、その巻上げ距離があらかじめ設定した許容値以下であれば、次ジョブの開始に際してもアイドリングストップの状態を維持する。
【0054】
このように、巻き上げ距離の少ない負荷の軽いジョブに対しては、アイドリングストップを解除せず、蓄電池のみで荷役するようにしたので、荷役作業の効率を低下させることなく、アイドリングストップを行うことができる。また、アイドリングストップの時間が増加し、蓄電池の充放電回数を少なくすることができるので、蓄電池の寿命の長期化を図ることができる。
【0055】
[第5の実施形態]
前述した第2の実施形態では、巻き上げの有無(巻き上げ動作の有無)と移動距離(移動距離を許容値として設定する場合)を許容値と比較し、第3の実施形態では、巻き上げする搬送物の重量を許容値と比較し、次ジョブを実行する際にアイドリングストップを維持するか否かを判定していた。また、第4の実施形態では、搬送物を巻き上げる距離を許容値と比較し、次ジョブを実行する際にアイドリングストップを維持するか否かを判定していた。
【0056】
そして、上記移動距離の許容値、搬送物の重量の許容値、および巻き上げ距離の許容値を、予め設定した固定値としていた。しかしながら、蓄電池の充電状態(SOC)によりアイドリングストップ(蓄電池からの供給電力)で対応可能な移動距離、重量、巻き上げ距離は変化する。このため、第5の実施形態においては、蓄電池の充電状態(SOC)に応じて許容値を可変とした例について説明する。
【0057】
図10は、本発明の第5の実施形態に係わるクレーン制御装置の構成を示す図である。図に示すクレーン制御装置100Eが、図8に示すクレーン制御装置100Dと構成上異なるのは、コントローラ10D内の負荷判定部14Bを、図10に示す負荷判定部14Cに変更した点が異なる。また、蓄電池部61の充電状態(SOC)を検出して、この充電状態(SOC)の検出信号を負荷判定部14Cに入力する点が異なる。他の構成は図8に示すクレーン制御装置100Dと同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0058】
この負荷判定部14Cは、ジョブスケジュール記憶部11に記憶されたジョブ情報を参照し、また、蓄電池部61から当該蓄電池部61の充電状態SOCの検出信号を受信する。そして、負荷判定部14Cでは、次ジョブにおける負荷の大きさ(次ジョブに必要な電力量)が、蓄電池部61が供給できる電力量の許容値を超えるか否かを判定する。例えば、負荷判定部14Cは、次ジョブにおける負荷の大きさ(搬送物の重量と巻き上げ距離とを乗算した仕事量を電力量に換算した値)が、蓄電池部61で供給できる電力量の許容値を超えるか否かを判定する。
【0059】
これにより、次ジョブの搬送物の重量が、第3の実施形態において設定された固定の許容値(搬送物の重量の許容値)を超えていても、その巻上げ距離が蓄電池状態から計算される許容値以下であれば、次ジョブの開始に際してもアイドリングストップの状態を維持することができる。すなわち、第3の実施形態における固定の許容値を、蓄電池部61で供給できる電力量の許容値を基に、可変に設定することができる。
同様にして、第4の実施形態において設定された固定の許容値(巻上距離の許容値)を、蓄電池部61で供給できる電力量の許容値を基に、可変に設定することができる。また、第2の実施形態(走行のみ)において設定された固定の許容値(移動距離の許容値)を、蓄電池部61が供給できる電力量の許容値を基に、可変に設定することができる。
【0060】
このように、第2乃至第4の実施形態において設定された固定の許容値を、蓄電池部61が供給できる電力量の許容値を基にして、可変に設定することができる。なお、蓄電池部61から出力できる許容可能な電力量は、蓄電池部61のSOC(state of charge)と呼ばれる充電率を基に決定する。このSOCは、例えば、蓄電池部61の電池電圧(開路電圧)を基に検出することができる。
【0061】
また、図11は、第5の実施形態におけるアイドリングストップ動作を説明するためのタイミングチャートである。図11に示すタイミングチャートは、図9に示すタイミングチャートと同様に、次ジョブにおいてアイドリングストップの継続が可能か否かを、巻き上げ距離の許容値を基に判定する例である。ただし、図11では、巻き上げ距離の許容値を蓄電池部61の充電状態(SOC)に応じて可変に設定する点が、図9とは異なる。その他の処理については、図9と同様であり、重複する説明は省略する。
【0062】
以上説明したように、本発明のクレーン制御装置においては、荷役の予定時間(次ジョブの開始予定時間)の情報を荷役情報管理システムから受信することにより、エンジンの起動時間を考慮して、アイドリングストップを実施できる。これにより、作業効率を低下させることなくアイドリングストップを行うことができる。このため、燃費の削減と、環境へ与える影響の低減が図れる。
また、負荷の軽いジョブ(巻き上げ動作なし等の蓄電池の電力により実行できるジョブ)に対しては、アイドリングストップを解除せず、蓄電池のみの電力により荷役を行うようにしたので、アイドリングストップの時間を長くすることができる。このため、蓄電池の充放電回数を少なくすることができ、蓄電池の寿命の長期化を図れる。
【0063】
なお、上述した実施形態では、次ジョブの開始予定時間の情報を、荷役情報管理システムから受信し、この開始予定時間に応じてエンジン起動を行う例について説明したが、これに加えて、エンジン起動を別の方法より行うこともできる。
例えば、クレーン装置にトラックの接近を検出するセンサを設けておき、所定の距離の範囲にトラックが接近した時刻から所定の時間後に、エンジン起動を行うように構成することもできる。また、コントローラ10Aに対して、エンジン起動の要求コマンドを入力することにより、エンジン起動を強制的に行うこともできる。
【0064】
以上、本発明の第1乃至第5の実施形態について説明したが、ここで、本実施形態と本発明との対応関係を補足して説明しておく。
本発明における原動機は、エンジン発電機31内のエンジン32が相当し、本発明における発電機は、発電機33が相当する。また、本発明における蓄電装置は、蓄電池部61が相当する。また、本発明における複数の負荷は、負荷40と負荷50とが相当する。ここで負荷40は、横行用のインバータ41及びモータM1と、走行用のインバータ42、43及びモータM2、M3と、巻き用のインバータ44及びモータM4とで形成される回生を行う負荷であり、負荷50は、インバータ51補機52で形成される回生を行わない負荷である。また、本発明における制御部は、コントローラ10A(主にはエンジン制御部12A内のアイドリングストップ制御部13)が相当する。
【0065】
そして、本実施形態において、エンジン32により駆動される発電機33と、発電機33に接続された蓄電池部61及び荷役作業を行う装置となる複数の負荷40及び50と、発電機33と複数の負荷40及び50を制御するとともに、エンジン32の出力状態を、エンジン停止状態であるアイドリングストップの状態と、アイドリングの状態と、所要回転数で運転する状態との各状態に切り替えるコントローラ10Aと、負荷を用いて行われる荷役作業のジョブ情報を記憶するジョブスケジュール記憶部11と、から構成され、コントローラ10Aは、エンジン32のアイドリング状態とアイドリングストップ状態との切り替え制御をジョブ情報を基に行うことを特徴とする。
これにより、クレーン装置における荷役作業の作業効率を低下させることなく、燃費の削減を図れるとともに、排気ガス等による環境へ与える影響を低減できる。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のクレーン制御装置およびクレーン装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
100A,100B,100C,100D,100E・・・クレーン制御装置、200・・・荷役情報管理システム、10A、10B,10C,10D,10E・・・コントローラ、11・・・ジョブスケジュール記憶部、12A,12B,12C,12D,12E・・・エンジン制御部、13・・・アイドリングストップ制御部、14,14A,14B,14C・・・負荷判定部、31・・・エンジン発電機、32・・・エンジン、33・・・発電機、40・・・回生を行う負荷、41,42,43,44・・・インバータ、51・・・インバータ、50・・・回生を行わない負荷、52・・・補機、61・・・蓄電池部、71・・・回生抵抗、80・・・コンバータ、M1,M2,M3,M4・・・モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機により駆動される発電機と、
前記発電機に接続された蓄電装置及び荷役作業を行う装置となる複数の負荷と、
前記発電機と前記複数の負荷を制御するとともに、前記原動機の出力状態を、原動機停止状態であるアイドリングストップの状態と、アイドリングの状態と、所要回転数で運転する状態のうちのいずれかの状態に切り替える制御部と、
前記負荷を用いて行われる荷役作業のジョブ情報を記憶するジョブスケジュール記憶部と、
から構成され、
前記制御部は、前記原動機のアイドリング状態とアイドリングストップ状態との切り替え制御を前記ジョブ情報を基に行うこと
を特徴とするクレーン制御装置。
【請求項2】
前記ジョブ情報には次に実行する荷役作業の開始予定時間の情報が含まれ、
前記制御部は、
前記次に実行する荷役作業の開始予定時間と前記原動機の起動に要する時間とを基に、アイドリングストップが可能な時間を算出し、先に行われる荷役作業の終了時刻に基づいて前記算出されたアイドリングストップが可能な時間の間、前記原動機のアイドリングストップを行う
ことを特徴とする請求項1に記載のクレーン制御装置。
【請求項3】
前記ジョブ情報には次に実行する荷役作業で荷役する搬送物の重量の情報が含まれ、
前記制御部は、
前記次に実行する荷役作業で荷役する搬送物の重量が所定の許容値以内である場合は、先に行われる荷役作業の終了時からアイドリングストップを行うとともに、次に実行する荷役作業の実行の期間においても、アイドリングストップを継続する
ことを特徴とする請求項1に記載のクレーン制御装置。
【請求項4】
前記ジョブ情報には次に実行する荷役作業で荷役する搬送物の巻き上げ距離の情報が含まれ、
前記制御部は、
前記次に実行する荷役作業で荷役する搬送物の巻き上げ距離が所定の許容値以内である場合は、先に行われる荷役作業の終了時からアイドリングストップを行うとともに、次に実行する荷役作業の実行の期間においても、アイドリングストップを継続する
ことを特徴とする請求項1に記載のクレーン制御装置。
【請求項5】
前記ジョブ情報には次に実行する荷役作業おける移動距離の情報が含まれ、
前記制御部は、
前記次に実行する荷役作業における移動距離が所定の許容値以内である場合は、先に行われる荷役作業の終了時からアイドリングストップを行うとともに、次に実行する荷役作業の実行の期間においても、アイドリングストップを継続する
ことを特徴とする請求項1に記載のクレーン制御装置。
【請求項6】
前記蓄電池の充電状態に応じて、前記許容値が可変に設定される
ことを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のクレーン制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のクレーン制御装置を備えることを特徴とするクレーン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−105442(P2011−105442A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261717(P2009−261717)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】