説明

クレーン用カメラ取付装置

【課題】クレーンを利用したカメラの撮影範囲の制限を緩和し、空撮に匹敵する多様な撮影を可能とする。
【解決手段】
クレーン車90は、所望の撮影ができる位置に移動する。クレーンブーム92を伸延するとともに、その角度を調整する。クレーンブーム92の角度が変化しても、延長アーム30に対してカメラ取付フレーム50が回転可能となっているため、カメラ80の姿勢は良好に保持される。また、風が吹いてカメラ取付フレーム50が揺動しても、ブレーキ64による制動作用により、良好に揺動が制止される。延長アーム30により、メインフック16よりも先にカメラ80が位置しているので、良好な視界で撮影を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンを利用して高所から撮影を行うためのクレーン用カメラ取付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のクレーン用カメラ撮影装置としては、例えば下記特許文献に開示されたものがある。いずれも、クレーン車のクレーンブーム先端に監視用カメラを吊り下げ、これによって、下方を撮影しつつクレーン作業を行うようにしたものである。
【特許文献1】特開2000−275725号公報
【特許文献2】実用新案登録第3077631号公報
【特許文献3】実公平7−31645号公報
【特許文献4】実開昭61−149475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、高所からの撮影としては、例えばヘリコプターやバルーンなどを利用した空撮が一般的であるが、振動や風の影響を受けやすいという問題点があり、また、非常にコストもかかる。このため、クレーンを利用して高所からの撮影を行う方法が考えられる。
【0004】
しかしながら、上述した背景技術のようなクレーンブーム先端にカメラを吊り下げる手法では、カメラ直下しか撮影することができず、クレーンのフックやブームによってカメラの視界が妨げられ、周囲の風景などの撮影には不向きである。
【0005】
本発明は、これらの点に着目したもので、クレーンを利用したカメラの撮影範囲の制限を緩和し、良好な撮影を可能とするクレーン用カメラ取付装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、クレーンのブーム先端にカメラを取り付けるための装置であって、前記カメラを取り付けるカメラ取付フレーム,該カメラ取付フレームを、前記ブーム先端から更に先の位置に揺動自在に取り付ける延長アーム,を備えたことを特徴とする。主要な形態の一つは、既存のピンを利用して、前記ブーム先端に前記延長アームを取り付けることを特徴とする。他の形態の一つは、前記カメラ取付フレームに、カメラの取付位置に応じてバランス用のウエイトを取り付けることを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、延長アームにより、ブーム先端から更に先の位置に揺動自在にカメラ取付フレームが設けられるので、カメラの撮影範囲の制限が緩和され、良好な撮影が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0009】
最初に、図1,図2(A),及び図3を参照しながら、本発明の実施例1を説明する。図1は本実施例の主要部の斜視図,図2(A)は側面図である。これらの図において、クレーンブーム先端の取付ベース10の上部には、シーブ12が設けられており、このシーブ12にワイヤ14が懸架されている。ワイヤ14には、メインフック16が吊り下げられている。また、取付ベース10の下部には、サブフック用のシングルトップ(図示せず)を取り付けるための1対の取付ピン20が設けられており、取付ベース10の正面側には、ブーム増設時に使用するテンションロッド止めピン22が設けられている。以上の各部の構成は、一般的なクレーン装置として公知である。
【0010】
次に、本実施例では、上述した取付ベース10の下部に、延長アーム30が取り付けられている。詳述すると、延長アーム30の一方の端部に、上側からみると略コ字状であって1対の腕を有する取付部32が設けられており、この取付部32の両腕に前記1対の取付ピン20がそれぞれ貫通することで、延長アーム30が取付ベース10の下部に固定される構造となっている。
【0011】
延長アーム30は、前記取付部32からアーム本体34がやや下方に延設されている。これは、後述する図3に示すように、クレーンブーム92を略垂直にした場合でも、カメラ取付フレーム50に取り付けたカメラ80が取付ベース10などにぶつからないようにするためである。前記アーム本体34の略中間位置には、止め具36が設けられている。この止め具36と、前記テンションロッド止めピン22との間に、テンションロッド38が張設されている。このテンションロッド38によって、取付ベース10に対する延長アーム30の固定・保持がより強固になるように工夫されている。このように、本実施例によれば、クレーン先端部が通常有する構造を利用して延長アーム30が固定されているために汎用性が高く、各種のクレーン装置に対して適用可能である。
【0012】
前記延長アーム30の先端には、カメラ取付フレーム50が取り付けられている。詳述すると、カメラ取付フレーム50は、上板52及び下板54と、U字鋼による1対の支持柱56,58とが、四角枠状に接合された構造となっている。上板52及び下板54には、後述するカメラやウエイトを取り付けることができるように、ボルトや貫通穴が適宜設けられている。上述した支持柱56,58のやや上側には、取付軸60が設けられており、これが前記アーム本体34の先端部分を貫通することで、延長アーム30にカメラ取付フレーム50が支持されている。
【0013】
取付軸60とアーム本体34との間にはベアリング62が設けられており、延長アーム30に対して、カメラ取付フレーム50が回転可能となっている。これは、クレーンブームの角度を傾けても、カメラ取付フレーム50の姿勢が傾かないようにするためである。また、アーム本体34と前記取付軸60との間にはブレーキ64が設けられており、アーム本体34に対する取付軸60の回転に制動がかかるようになっている。これにより、風などの影響によるカメラ取付フレーム50の揺動が制止される。
【0014】
図示の例では、カメラ取付フレーム50の下板54にアタッチメント70がボルト54Aによって取り付けられており、このアタッチメント70に対して、カメラ80が固定されている。カメラ80としては、例えばジャイロによる姿勢制御可能なものが使用される。カメラは、動画,静止画いずれの撮影用であってもよい。
【0015】
次に、図3も参照しながら、本実施例の動作を説明する。クレーン車90は、所望の撮影ができる位置に移動する。クレーンブーム92に対するカメラ80の取り付けは、移動の前後のいずれでもよいが、移動前に取り付ければ、カメラ80の運搬自体をクレーン車90で行うことができる。次に、クレーンブーム92を伸延するとともに、その角度を調整する。図3に示すように、クレーンブーム92の角度が変化しても、延長アーム30に対してカメラ取付フレーム50が回転可能となっているため、カメラ80の姿勢は良好に保持される。また、風が吹いてカメラ取付フレーム50が揺動しても、ブレーキ64による制動作用により、良好に揺動が制止される。もちろん、ヘリコプターのような振動もない。
【0016】
更に、本実施例では、延長アーム30により、メインフック16よりも先にカメラ80が位置している。従って、カメラ取付フレーム50側やクレーンブーム92側を除けば、カメラ80の視界を遮るものがない。加えて、クレーン車90を移動したり、クレーンブーム92を回転させるようにすれば、カメラをいずれの方向にも向けることができる。従って、本実施例によれば、全方位について、良好に撮影を行うことが可能となる。
【実施例2】
【0017】
次に、図2(B)を参照しながら、本発明の実施例2について説明する。上述した実施例1では、カメラ取付フレーム50の下側にカメラ80を取り付けたが、本実施例では、上側にカメラ80を取り付けている。しかし、重心が高くなるので、下板54にウエイト100を取り付けるようにする。詳述すると、図2(B)において、カメラ取付フレーム50の下板54には、アタッチメント102を介してウエイト100が取り付けられており、上板52上には、アタッチメント104を介してカメラ80が取り付けられている。このように、ウエイト100を取り付けることで、カメラ取付フレーム50回りの重心が下がり、姿勢が良好に保持されるようになる。更に、本実施例によれば、図3に示すようにクレーンブーム92を垂直に立てるほど、カメラ80の視界を遮るものがなくなり、水平方向の全方位の良好な撮影が可能となる。
【0018】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例に示した各部の機構の代わりに、同様の作用を奏する公知の機構を適用することを妨げるものではない。例えば、クレーンブーム先端に対する延長アームの取付機構を、クレーンブーム先端の構造に応じて適宜変更するという具合である。カメラ取付フレームも、カメラを支持するとともに、延長アームに対して姿勢を保つことができれば、前記実施例に限定されるものではない。
(2)前記実施例では、カメラ取付フレーム50の上側又は下側にカメラ80を取り付けたが、撮影対象によっては、他の位置,例えば横側に取り付けるようにしてもよい。この場合、バランスをとるために反対側の位置にウエイトを設けるとともに、必要があれば、下側に姿勢をとるためのウエイトを設けるようにする。更に、カメラ取付フレーム50の外側ではなく、内側にカメラを取り付けるようにしてもよい。もちろん、クレーンの能力があれば、複数台のカメラを取り付けることを妨げるものではない。前記ウエイトの代わりに、カメラ駆動用のバッテリを取り付けてもよい。
(3)前記実施例は、いわゆる自走式のクレーン車に対して本発明を適用したものであるが、非自走式のクレーンにも適用可能である。
(4)夜間などの撮影を行うために、カメラ取付フレーム50などに投光器などを設置するようにしてもよい。
(5)前記実施例では、メインフック16を取り付けたまま撮影を行うこととしたが、もちろんメインフック16を取り外して撮影を行うことを妨げるものではない。
(6)カメラとしては、静止画撮影用,動作撮影用など、各種のカメラに適用可能である。種類の異なるカメラを複数取り付けるようにしてもよい。また、カメラ以外の機器,例えばカメラを遠隔操作するための信号の送受信装置などの各種の機器を取り付けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、クレーンブームの先端に延長アームを介してカメラ取付フレームを設けることとしたので、良好なカメラ視界を得ることができ、空撮に匹敵する撮影の分野に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1の主要部を示す斜視図である。
【図2】(A)は前記実施例1の主要部の側面図であり、(B)は実施例2の主要部を示す側面図である。
【図3】前記実施例1の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0021】
10:取付ベース
12:シーブ
14:ワイヤ
16:メインフック
20:取付ピン
22:ピン
30:延長アーム
32:取付部
34:アーム本体
36:止め具
38:テンションロッド
50:カメラ取付フレーム
52:上板
54:下板
54A:ボルト
56,58:支持柱
60:取付軸
61:実開昭
62:ベアリング
64:ブレーキ
70:アタッチメント
80:カメラ
90:クレーン車
92:クレーンブーム
100:ウエイト
102,104:アタッチメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンのブーム先端にカメラを取り付けるための装置であって、
前記カメラを取り付けるカメラ取付フレーム,
該カメラ取付フレームを、前記ブーム先端から更に先の位置に揺動自在に取り付ける延長アーム,
を備えたことを特徴とするクレーン用カメラ取付装置。
【請求項2】
既存のピンを利用して、前記ブーム先端に前記延長アームを取り付けることを特徴とする請求項1記載のクレーン用カメラ取付装置。
【請求項3】
前記カメラ取付フレームに、カメラの取付位置に応じてバランス用のウエイトを取り付けることを特徴とする請求項1又は2記載のクレーン用カメラ取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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