説明

クレーン車

【課題】より安全に移動等することが可能なクレーン車を提供すること。
【解決手段】左右に車輪3aを備えた第1車軸13と起伏シリンダ17によって起伏自在に設けられた伸縮ブーム11とを有する第1フレーム10と、左右に車輪3bを備えた第2車軸23と運転室21とを有する第2フレーム20と、を備え、第1フレーム10と第2フレーム20とが上下方向に設けられたアーティキュレートピンを中心として左右方向に対して相対的に屈曲可能に連結されているクレーン車1であって、第1フレーム10は、伸縮ブーム11の起伏支点から第1車軸13側に向かって下方側に傾斜する傾斜部10bと、第1車軸13の上方に設けられる載置部19と、を備えること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン車に関し、特に荷物を吊下しながら移動することができるクレーン車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図3に示されるように、左右に車輪93aを備えた前方車軸913と先端にフックを吊下させる伸縮ブーム911とを有する前方フレーム910と、左右に車輪93bを備えた後方車軸923と走行及びクレーン操作を行う運転席925が設けられた運転室921とを有する後方フレーム920とを備えているピックアンドキャリークレーン900が知られている。なお、図示される例では、前方車軸913と伸縮ブーム911との間に起伏シリンダ917が設けられており、これによって伸縮ブーム911が起伏自在となっている。このようなピックアンドキャリークレーン900では、荷物を吊下させながら移動することがあるが、その場合に、振動等によって荷物が揺れることがあった。また、特に、伸縮ブームの中間付近に設けられる固定フックに荷物を吊下した場合には、荷物の揺れによって荷物が起伏シリンダと干渉する虞があるため、これを防止するために、起伏シリンダの前方に防護部材を必要とするものであった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、一対の車軸に装荷された車輪と、運搬車に装着され且つ地表面上に置かれたコンテナを上動させるリフト装置と、コンテナに隣接する運搬車の一端部を、コンテナが上動され運搬車に対し輸送位置に位置させる間地表面に固定させるように、コンテナとコンテナに至近の車輪との間において運搬車の一端部を上下動させる装置とを備えたコンテナ運搬車において、運搬車にコンテナが載置可能なコンテナ台が設けられている構成が開示されている。確かに、このような運搬車によれば、運搬車にコンテナを載置しながら移動することができるため、移動中における荷揺れの虞はないものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平1−24651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているような構成のコンテナ運搬車では、コンテナが載置される位置と運転室との間に油圧シリンダがあるのみであり、例えばコンテナが運搬車に載置される際に振動等によってコンテナが大きく揺れた場合には、コンテナが油圧シリンダや運転室に干渉してしまう虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、上記課題のうち少なくとも一つを解決することにより、より安全に荷物を移動等することが可能なクレーン車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、左右に車輪を備えた第1車軸と起伏シリンダによって起伏自在に設けられた伸縮ブームとを有する第1フレームと、左右に車輪を備えた第2車軸と運転室とを有する第2フレームと、を備え、前記第1フレームと前記第2フレームとが上下方向に設けられたアーティキュレートピンを中心として左右方向に対して相対的に屈曲可能に連結されているクレーン車であって、前記第1フレームは、前記伸縮ブームの起伏支点から前記第1車軸側に向かって下方側に傾斜する傾斜部と、前記第1車軸の上方に設けられる載置部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明では、前記伸縮ブームは、前記運転室と干渉しない位置で該運転室に対して可及的に近接して設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明では、前記伸縮ブームの起伏シリンダは、一端が前記傾斜部に枢支され他端が前記伸縮ブームに枢支されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明では、前記載置台は、前記傾斜部における前記起伏シリンダの枢支位置より下方側に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えばコンテナが運搬車に載置される際に振動等によってコンテナが大きく揺れた場合であっても、傾斜部によって運転室が保護されるため、より安全に荷物を移動等することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一の実施の形態に係るクレーン車の側面模式図である。
【図2】(a)本発明の一の実施の形態に係るクレーン車の走行時における模式図である。(b)本発明の一の実施の形態に係るクレーン車の走行時における模式図である。
【図3】従来例のクレーン車の側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。なお、同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。図1に示すように、クレーン車1は、左右に車輪3aを備えた第1車軸13と先端にフック(図示省略)を吊下させる伸縮ブーム11とを有する第1フレーム10と、左右に車輪3bを備えた第2車軸23と走行及びクレーン操作を行う運転室21とを有する第2フレーム20とを備えている。そして、第1フレーム10と第2フレーム20とは、上下方向に設けられた回転軸としてのアーティキュレートピン(図1に回転中心34を示す)を中心として左右方向に対して相対的に屈曲可能に連結されている。なお、便宜上、特に断りがない限り、第1フレーム10側を「前」、第2フレーム20側を「後」として、以下の説明を行う。
【0014】
第1フレーム10は、一端側(前側)に第1車軸13を、他端側(後側)に第2フレーム20との連結部(アーティキュレートピン)を備えた前後方向(図1では左右方向)に延びる下部フレーム10aと、この下部フレーム10aの連結部の上方を上端として、ここから下部フレーム10aの他端側(第1車軸13側)に向かって傾斜して設けられる傾斜部10bとを備えて構成されている。これにより、第1フレーム10は、前側では下部フレーム10aと傾斜部10bとが一体となり、後側では下部フレーム10aと傾斜部10bとが上下に所定の空間をもって重なって設けられるものである。なお、図示例においては、傾斜部10bの下端が第1車軸13の位置から後側(第2フレーム20側)にずれて配置されることにより、第1車軸13と傾斜部10bとの間に所定の間隔(空間)を設けてある。
【0015】
傾斜部10bの上端部には、多段式に構成された伸縮ブーム11が起伏自在に枢支されている。なお、図示例における伸縮ブーム11はワイヤ(図示省略)が巻回されているウインチ12を後端部に突出して備えるものであり、ウインチ12によってワイヤを巻上及び巻下することで、伸縮ブーム11の先端においてワイヤに設けられるフック(図示省略)を上下動させることができる。また、伸縮ブーム11は、傾斜部10bに枢支されている基端ブーム11aの略中間位置と傾斜部10bにおける上下方向の中間より上側の所定位置との間に起伏シリンダ17が設けられており、この起伏シリンダ17を伸縮することで伸縮ブーム11全体を起伏動作することができる。なお、起伏シリンダ17が傾斜部10bの上側(伸縮ブーム11側)の位置に設けられることにより、傾斜部10bの前方側に所定の空間を確保できるだけでなく、起伏シリンダ17の長さを短く構成することができる。そのため、図示例では、長いシリンダを採用する場合に比し、起伏シリンダ17の強度を高めることができるため、起伏シリンダ17が1本のみ配置されている。ただし、起伏シリンダ17が1本に限定されないことは言うまでもない。
【0016】
なお、伸縮ブーム11は、起伏動作によって伸縮ブーム11(図示例では伸縮ブーム11におけるウインチ12)が運転室21と干渉しない範囲の位置で運転室21に対して可及的に近接して設けられるようになっている。実施例では、伸縮ブーム11の起伏支点31(枢支位置)が、傾斜部10bの上端部に設けられており、この起伏支点の位置はアーティキュレートピンの略直上となっている。この場合、伸縮ブーム11の後端部に突出して設けられるウインチ12は、伸縮ブーム11の起伏動作に応じて、起伏支点31を中心として後端側に側面視で円形の軌道32を描くように移動する。そのため、運転室21と伸縮ブーム11とが干渉しないように、運転室21と伸縮ブーム11とが所定の間隔(実施例では、起伏支点からウインチ12の外縁端部までの距離)を空けて設けられる。なお、運転室21と伸縮ブーム11との間隔が必要以上に大きく空きすぎると、運転室21から伸縮ブーム11の先端までの距離が長くなり、第1フレーム10側を前進方向としてクレーン車1を移動する際に運転の操作性が低下してしまう虞がある。そのため、伸縮ブーム11は、運転室21と伸縮ブーム11とが干渉しない範囲の位置で可及的に近接して設けられることが好ましい。なお、実施例では、伸縮ブーム11を例えば6段の多段式にすることで、縮小状態における伸縮ブーム11の長さを短く構成し、運転室21から伸縮ブーム11の先端までの距離が長くならないようにしている。
【0017】
第1フレーム10において、第1車軸13の上方には、クレーンによって吊り上げられた荷物50aを載置する又は吊り上げられた荷物50bの一部を支持するための載置台19が設けられている。図示例における載置台19は、第1フレーム10における第1車軸13が設けられている位置から上方に突出して設けられる支持部(図示省略)に固定されることで支持されるとともに、傾斜部10bにおける起伏シリンダ17の枢支位置33より下方側に固定され支持されている。これによって、載置台19は、起伏シリンダ17が設けられている高さより低い位置であって、第1車軸13の上方に設けられることになる。そのため、載置台に荷物50a(図2(a)参照)を載置したり、荷物50b(図2(b)参照)の一部分を支持させたりする場合に、起伏シリンダ17と荷物50a、50bとが干渉してしまうことが抑制される。なお、必ずしも載置台19の一端側が傾斜部10bに固定されている必要はなく、例えば第1車軸13の位置に設けられる支持部の他にさらに支持部が設けられていれば、傾斜部10bとの間に間隔をもって載置台19を設けるようにしても構わない。また、図示例の載置台19は、左右方向において上方側に突設される柵状部が設けられているが、これに限定されるものではない。
【0018】
第2フレーム20は、前後方向(図1では左右方向)に延びる下部フレーム20aと、この下部フレーム20aの前側に設けられる縦フレーム20bとから構成されている。下部フレーム20aは、後側に駆動用の車輪3bを備えた第2車軸23を、前側に車輪3bの駆動や起伏シリンダ17、ウインチ等の油圧アクチュエータの駆動を行うエンジンEを備えている。そして、縦フレーム20bは、下部フレーム20aの前側においてエンジンEを囲むように上方に延びて設けられ、第1フレーム10との連結部(アーティキュレートピン)を備えている。なお、図示例における縦フレーム20bは、略三角柱状であり、上端部を一つの頂点とし、下端部を一つの辺とした側面視三角形状に構成されている。そして、上端部が第1フレーム10における傾斜部10bの上端に対して回動自在に、下端部が第1フレーム10の下部フレーム10aに対して回動自在に設けられており、これらの回動中心が第1フレーム10との連結部となっている。このような下部フレーム20a及び縦フレーム20bを備える第2フレームにおいて、第2車軸23の上方には、クレーン操作及び走行操作を行うための運転室21が設けられている。
【0019】
運転室21内にはクレーン操作及び走行操作を行う運転者が座るための座席25が設けられ、この座席25は第1フレーム10側(前側)とこの反対側(後側)との2方向に反転可能となっている。そして、図1に示されるように、座席25の正面が第1フレーム10側の反対側を向いている場合には、走行操作のみが可能であり、図2(a)、(b)に示されるように、座席25の正面が第1フレーム10側を向いている場合には、走行操作及びクレーン操作が可能となっている。
【0020】
図示例では、運転室21内の前方側(第1フレーム10側)に、第1の操作部として、走行操作を行うためのハンドル26等(ハンドル以外は図示省略)と、クレーン操作を行うための操作杆27とが設けられている。そして、例えばセンサ等によって座席25の向きを検出することにより、座席25が前方側を正面に向けて固定されている場合に、第1の操作部(ハンドル26等、操作杆27)によって各種操作を行うことができるようになっている。また、運転室21内の後方側(第1フレーム10と反対側)には、走行操作を行うための第2の操作部として、ハンドル28等(ハンドル以外は図示省略)が設けられている。そして、例えばセンサ等によって座席25の向きを検出することにより、座席25が後方側を正面に向けて固定されている場合に、第2の操作部(ハンドル28等)によって走行操作を行うことができるようになっている。
【0021】
このような構成により、例えば、公道等を走行する場合のようにある程度の高速走行を行うときには、図1に示されるように、座席25の正面を後方側に向けて固定し、第2フレーム20側(後側)を前進方向として、第2の操作部によってクレーン車1の走行操作を行うものである。そして、所定の荷物を移動等させる場合には、図2に示されるように座席25の正面を前方側に向けて固定し、第1フレーム10側を前進方向として、第1の操作部によってクレーンを操作することでクレーンによって荷物を吊下する。そして、この状態でクレーンによって、図2(a)に示されるように荷物50aを載置台19に載置したり、図2(b)に示されるように荷物50bの一部を載置台19に支持させたりするものである。このように、座席25を反転させるのみで簡便に前進方向を変更することができるため、クレーン車1を移動させる際には第2フレーム20側を前進方向とすることができ、前進方向側に伸縮ブーム11や荷物がなく、視野が良好となる。また、この場合には、クレーン操作を行うための第1の操作部が機能しないため、クレーンの誤動作がない。
【0022】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0023】
例えば、運転室内において、前側に走行操作及びクレーン操作を行うための第1の操作部が設けられ、後側に走行操作を行うための第2の操作部が設けられている例を示したが、これに限られない。座席が反転可能であり、座席の正面が前側を向いている場合に走行操作及びクレーン操作が可能であり、後側を向いている場合に走行操作のみが可能であればよく、例えば、運転室中央に走行及びクレーン操作用の操作部が設けられ、この操作部を中心として座席が周囲をまわることで反転するように構成しても構わない。この場合、座席の正面が後方を向いているときは、クレーン操作が行えないように操作部が制御される。また、例えば、運転室の前側に設けられる第1の操作部において走行操作を行うためのハンドル等に変えて、同様の走行操作が可能な操作杆を設けることにしても構わない。
【0024】
また、センサ等によって座席の向きを検出し、座席が前方を向いている場合に第1の操作部が使用でき、座席が後方側を向いている場合に第2の操作部が使用できる構成を示したが、これに限定されない。座席を前方に向けて第1の操作部によってクレーン操作を行う場合には、エンジンの動力を取り出すPTOがオンになっており、座席を後方に向けて第2の操作部によって走行操作を行う場合にはPTOがオフになっているため、例えば、このPTOのオン/オフを判定することで座席の向きを判断するようにしても構わない。この場合、PTOがオンになっているときには第1の操作部によって走行操作及びクレーン操作が可能となり、PTOがオフになっているときには第2の操作部によって走行操作が可能となるものである。
【0025】
また、座席が反転することによって、クレーン車の前進方向を変更することができる構成を示したがこれに限定されない。例えば座席が第1フレーム側(前側)を正面として固定されているものであっても構わない。この場合には、運転室内の後方側に第2の操作部が設けられる必要がなく、後方側を前進方向としないものである。
【符号の説明】
【0026】
1 クレーン車
3a,3b 車輪
10 第1フレーム
10c 傾斜部
11 伸縮ブーム
13 第1車軸
17 起伏シリンダ
19 載置台
20 第2フレーム
21 運転室
23 第2車軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に車輪を備えた第1車軸と起伏シリンダによって起伏自在に設けられた伸縮ブームとを有する第1フレームと、左右に車輪を備えた第2車軸と運転室とを有する第2フレームと、を備え、前記第1フレームと前記第2フレームとが上下方向に設けられたアーティキュレートピンを中心として左右方向に対して相対的に屈曲可能に連結されているクレーン車であって、
前記第1フレームは、
前記伸縮ブームの起伏支点から前記第1車軸側に向かって下方側に傾斜する傾斜部と、
前記第1車軸の上方に設けられる載置部と、
を備えることを特徴とするクレーン車。
【請求項2】
前記伸縮ブームは、前記運転室と干渉しない位置で該運転室に対して可及的に近接して設けられていることを特徴とする請求項1記載のクレーン車。
【請求項3】
前記伸縮ブームの起伏シリンダは、一端が前記傾斜部に枢支され他端が前記伸縮ブームに枢支されていることを特徴とする請求項1又は2記載のクレーン車。
【請求項4】
前記載置台は、前記傾斜部における前記起伏シリンダの枢支位置より下方側に設けられていることを特徴とする請求項3記載のクレーン車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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