説明

クロック乗換回路および映像信号処理回路

【課題】 小さな回路規模でクロック乗換ができるようにする。
【解決手段】 12MHzのクロックに同期したデータを入力して13.5MHzの2倍のクロックに同期したデータを生成するとき、13.5MHzの2倍のクロックである27MCKの反転クロックにより12MHzのクロックに同期したデータをDFF回路11でラッチし、27MCKのクロックにより12MHzのクロックに同期したデータをDFF回路12でラッチし、両DFF回路11,12の出力の内の一方をセレクタ16で選択する。このセレクタ16は、27MCKのクロックに同期した水平同期信号HSYNCと27MCKのクロックを入力して、DFF回路11がラッチミスするタイミングではDFF回路12の出力を選択し、DFF回路12がラッチミスするタイミングではDFF回路11の出力を選択する。セレクタ16から出力するクロックはDFF13で27MCKのクロックによりリタイミングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック乗換回路およびそのクロック乗換回路を利用した映像信号処理回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10は入力端子1から入力するアナログビデオ信号をビデオデコーダ2によりデジタルビデオ信号に変換して出力端子4から出力するとき、テレテキスト回路3で生成されるテレテキスト信号RGBを、そのビデオデコーダ2により合成処理する映像信号処理回路を示すブロック図である。この映像信号処理回路では、テレテキスト回路3から出力するブランク信号BLANKをスイッチング信号FSWとしてビデオデコーダ2に入力させ、このスイッチング信号FSWによって、テレテキスト回路3から出力するテレテキスト信号RGBと入力端子1から入力したアナログビデオ信号をデジタル処理したビデオ信号とを最短でドット単位でスイッチングすることにより、合成処理する。
【0003】
このような映像信号処理回路において、ビデオデコーダ2でデジタル信号に変換されるビデオ信号のドットクロックの周波数が、例えば13.5MHzのときに、テレテキスト回路3のドットクロックが12MHzのように異なった周波数である場合には、ビデオデコーダ2においてテレテキスト回路3からのテレテキスト信号RGBを合成処理するときに、13.5MHzの9周期に1回以上のタイミングで問題(ラッチミス、ジッタ等)が発生する。
【0004】
そこで、異なる周波数で処理される2個の映像信号を同一のクロックで処理できるようにするために、クロック乗換回路が提案されている。このクロック乗換回路としては、メモリを使用して、書込みを12MHzのクロックで処理し読み出しを13.5MHzのクロックで処理するように書込みクロックと読み出しクロックの周波数を異ならせたり(特許文献1)、入力クロックをラッチするための別のクロックとして正転クロックと反転クロックを使用し、ラッチミスが生じるか否かを個々に判定して、ラッチミスが生じない側のラッチクロックを選択する手法(特許文献2)等が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−224477号公報
【特許文献2】特開平6−318932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のものは、メモリを使用することから回路規模が大きくなる問題があり、また、特許文献2に記載のものも多数のFF回路、コンパレータ、セレクタ等を使用することから同様に回路規模が大きくなる問題がある。
【0007】
本発明の目的は、小さな回路規模でクロック乗換ができるようにしたクロック乗換回路およびそれを利用した映像信号処理回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の発明のクロック乗換回路は、周波数f1の第1クロックに同期したデータを入力して周波数f2(>f1)の第2クロックに同期したデータを生成するクロック乗換回路において、前記第2クロックの反転クロックにより前記第1クロックに同期したデータをラッチする第1DFF回路と、前記第2クロックにより前記第1クロックに同期したデータをラッチする第2DFF回路と、前記第1DFF回路の出力データと前記第2DFF回路の出力データの一方を選択して出力するセレクタと、前記第1および第2クロックに同期したタイミング信号と前記第2クロックを入力して、前記第1DFF回路においてラッチミスが発生するタイミングでは前記第2DFF回路の出力データを選択し、前記第2DFF回路においてラッチミスが発生するタイミングでは前記第1DFF回路の出力データを選択するよう予め定めたタイミングで前記セレクタを制御する制御信号を生成するタイミング生成回路と、前記セレクタから出力するデータを前記第2クロックでラッチしてリタイミングする第3のDFF回路と、を具備することを特徴とする。
【0009】
ここで、前記第1および第2クロックが、f1:f2=8:9であるとき、前記第2クロックを前記第2クロックの2倍の周波数の第3クロックに置き換えて、前記第1乃至第3DFF回路におけるラッチおよび前記タイミング生成回路における前記制御信号を生成させても良い。
【0010】
第2の発明の映像信号処理回路は、周波数f1のドットクロックで処理されるテレテキスト信号を生成するテレテキスト回路と、該テレテキスト回路から出力する周波数f1のブランキング信号を周波数f2のスイッチング信号に変換するクロック乗換回路と、周波数f2のドットクロックで処理されたビデオ信号に対して前記テレテキスト信号を前記クロック乗換回路から出力するスイッチング信号によって合成する信号合成回路とを備えた映像信号処理回路であって、前記クロック乗換回路として、前記請求項1又は2に記載のクロック乗換回路を使用し、該クロック乗換回路の前記タイミング信号として前記ビデオ信号の水平同期信号を使用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクロック乗換回路によれば、第1DFF回路や第2DFF回路のうちでラッチミスが生じる側のDFF回路の出力が選択されないようにセレクタが制御されるので、正常にクロックの周波数を変換できる。このとき、第1および第2クロックの周波数が既知であればラッチミスが生じるタイミングは予め知ることができるので、これに基づいてタイミング生成回路を構成してセレクタを制御すればよく、ラッチミスを個々に検出する必要はないので、回路構成が簡素化される。よって、このようなクロック乗換回路を利用して、ビデオ信号に対してテレテキスト信号を合成する映像信号処理回路を構成すれば、その全体の回路構成も簡素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の1つの実施例の映像信号処理回路のブロック図である。1はアナログビデオ信号の入力端子、2はそのアナログビデオ信号をドットクロックが13.5MHzのデジタルビデオ信号に変換するビデオデコーダ(信号合成回路を含む)、3はドットクロックが12MHzのテレテキスト信号RGBと合成用のスイッチング信号としてのブランク信号BLANKを生成するテレテキスト回路、4はデジタルビデオ信号の出力端子であり、これらは前記した図10と同じである。
【0013】
本実施例では、これらに加えて、クロック乗換回路5を備えている。このクロック乗換回路5は、12MHzに同期したブランク信号BLANKと、ビデオデコーダ2から出力する27MHz(13.5MHz×2)のクロック信号27MCKおよび水平同期信号HSYNCが入力し、合成用のスイッチング信号FSWを出力する。
【0014】
図2はこのクロック乗換回路5の内部構成のブロック図である。11,12,13,14はDFF回路、15は図3に示す構成のタイミング生成回路、16はセレクタである。12MHzに同期したブランク信号BLANKは、DFF回路11ではクロック信号27MCKの反転信号により、DFF回路12ではクロック信号27MCKでより、それぞれでラッチされてセレクタ16に入力する。このセレクタ16はタイミング生成回路15の出力信号SELによって、DFF回路11の出力又はDFF回路12の出力を選択する。
【0015】
タイミング生成回路15は、図3に示すように、DFF回路151,152、アンド回路153、ナンド回路154、4ビット出力のカウンタ155、排他的論理和回路156からなる。クロック信号27MCKは、DFF回路151,152とカウンタ155に入力している。
【0016】
このタイミング生成回路15では、水平同期信号HSYNCの“L”パルスがクロック信号27MCKの2個以上継続してから“H”に立ち上がると、これがDFF回路151,152とアンド回路153によって微分検出され、ナンド回路154の出力が“L”となって、カウンタ155がクリアされるので、この後のクロック信号27MCKがカウンタ155でカウントアップされる。排他的論理和回路156にはカウンタ155のQ1,Q2の出力が入力しているので、図4に示すように、カウント値が2,3,4,5のときに、Q1,Q2の出力が不一致となり、その排他的論理和回路156の出力信号SELが“H”となる。この結果、図2において、この期間だけセレクタ16がDFF回路12のQ出力を選択し、それ以外ではDFF回路11のQ出力を選択する。カウンタ155は一巡(9カウント)する毎にQ3の出力によってクリアされるので、出力信号SELはクロック信号27MCKの9クロック期間の内の4クロック期間だけ“H”、5クロック期間だけ“L”となるよう定期的に切り替わる。このタイミング生成回路15の動作波形を図5に示した。
【0017】
よって、図2のセレクタ16では、信号SELによって、クロック信号27MCKの9クロック期間の内の4クロック期間だけ、ブランク信号BLANKを27MCKの反転信号で取り込んだDFF回路12のQ出力を選択し、5クロック期間だけ、ブランク信号BLANKを27MCKで取り込んだDFF回路11のQ出力を選択し、これが繰り返される。
【0018】
図6は図2の回路の各ノードのクロックとデータのタイミングチャートである。なお、ここでは入力する12MHzのブランク信号BLANKをデータD1〜D8とし、DFF回路でサンプリングしたラッチデータをd1〜d8とした。図2に示したクロック乗換回路5において、DFF回路11ではクロック信号27MCKの反転信号(c)によってブランク信号BLANK(a)をラッチするが、その反転信号(c)の5番目の立上りエッジでブランク信号BLANKのデータ(a)をサンプリングすると、データD2とD3(およびD6とD7)との切り替わり近くをサンプリングすることになり、ラッチミスが生じる可能性が高い。一方、DFF回路12ではクロック信号27MCK(b)によってブランク信号BLANKのデータ(a)をサンプリングするが、そのクロック信号27MCK(b)の1番目の立上りエッジでブランク信号BLANK(a)をサンプリングすると、データD8とD1(およびD4とD5)との切り替わり近くをサンプリングすることになり、ラッチミスが生じる可能性が高い。
【0019】
このようなラッチミスの発生し易いタイミングは、既知の周波数を扱う場合は回路構成時に予め判明しているので、本実施例では、このようなラッチミスを生じ易いタイミングでサンプリングしたデータは選択しないように、予めタイミング生成回路15で選択信号SELを作成して、セレクタ16を切り替えている。さらに、本実施例ではラッチミスが発生する箇所のタイミングのみでなく、その前後をも含めてセレクタ16で選択されないようにしている。
【0020】
以上のようにしてクロック信号27MCKでラッチ選択された信号(g)は、DFF回路13でクロック信号27MCKによってリタイミングされ、信号(h)で示すスイッチング信号FSWとして出力する。なお、DFF回路14でクロック信号27MCKによって再度リタイミングされた信号(i)で示すスイッチング信号FSWとして出力させることもできる。信号(i)は信号(h)に対してクロック信号27MCKの1クロック分(13.5MHzに対しては0.5クロック分)だけ遅れた信号となる。これらの信号(h)、(i)はそのままいずれかを選んでビデオデコーダ2でスイッチング信号として使用できるが、13.5MHzによりリタイミングして使用してもよい。
【0021】
図7は変形例の映像信号処理回路の構成を示すブロック図である。前記では、図5で説明したように、水平同期信号HSYNCを起点に始まる9クロック周期の内の3〜6クロック目の期間だけDFF回路12の出力信号を選択するようにしたが、このDFF回路12の出力信号を選択するタイミングは、タイミング生成回路15の排他的論理和回路156を変更することにより、所望の条件に応じて適宜変更できる。この場合は、たとえば、図7に示すように、入力端子1に入力するアナログビデオ信号内に含まれる情報(垂直同期信号期間内に含まれる)を制御部6に取り込んで、それに対応した制御信号を出力し、これによってクロック乗換回路5A内の図8に示すタイミング生成回路15A内の図9に示す論理回路157の論理を切り替えて、信号SELを生成させれば、所望のタイミングでDFF回路12の出力信号を選択することができる。
【0022】
なお、以上では12MHzに同期したブランク信号BLANKをサンプリングするクロックとして、13.5MHzの2倍の周波数のクロック信号27MCKを使用したが、これはサンンプリング点を増やすためにしたものであり、13.5MHzの周波数のクロック信号でサンプリングすることも、当然ながらできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の1つの実施例の映像信号処理回路のブロック図である。
【図2】図1の映像信号処理回路の内のクロック乗換回路のブロック図である。
【図3】図2のクロック乗換回路の内のタイミング生成回路のブロック図である。
【図4】図3のタイミング生成回路の内のカウンタの真理値の説明図である。
【図5】図2のクロック乗換回路のセレクタの動作説明用の波形図である。
【図6】図2のクロック乗換回路の全体の動作説明用の波形図である。
【図7】変形例の映像信号処理回路のブロック図である。
【図8】図7の映像信号処理回路の内のクロック乗換回路のブロック図である。
【図9】図8のクロック乗換回路の内のタイミング生成回路のブロック図である。
【図10】従来の映像信号処理回路のブロック図である。
【符号の説明】
【0024】
1:入力端子
2:ビデオデコーダ
3:テレテキスト回路
4:出力端子
5,5A:クロック乗換回路
11〜14:DFF回路
15,15A:タイミング生成回路
16:セレクタ
151,152:DFF回路
153:アンド回路
154:ナンド回路
155:カウンタ
156:排他的論理和回路
157:論理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数f1の第1クロックに同期したデータを入力して周波数f2(>f1)の第2クロックに同期したデータを生成するクロック乗換回路において、
前記第2クロックの反転クロックにより前記第1クロックに同期したデータをラッチする第1DFF回路と、前記第2クロックにより前記第1クロックに同期したデータをラッチする第2DFF回路と、前記第1DFF回路の出力データと前記第2DFF回路の出力データの一方を選択して出力するセレクタと、前記第1および第2クロックに同期したタイミング信号と前記第2クロックを入力して、前記第1DFF回路においてラッチミスが発生するタイミングでは前記第2DFF回路の出力データを選択し、前記第2DFF回路においてラッチミスが発生するタイミングでは前記第1DFF回路の出力データを選択するよう予め定めたタイミングで前記セレクタを制御する制御信号を生成するタイミング生成回路と、前記セレクタから出力するデータを前記第2クロックでラッチしてリタイミングする第3のDFF回路と、を具備することを特徴とするクロック乗換回路。
【請求項2】
請求項1に記載のクロック乗換回路において、
前記第1および第2クロックが、f1:f2=8:9であるとき、前記第2クロックを前記第2クロックの2倍の周波数の第3クロックに置き換えて、前記第1乃至第3DFF回路におけるラッチおよび前記タイミング生成回路における前記制御信号を生成させることを特徴とするクロック乗換回路。
【請求項3】
周波数f1のドットクロックで処理されるテレテキスト信号を生成するテレテキスト回路と、該テレテキスト回路から出力する周波数f1のブランキング信号を周波数f2のスイッチング信号に変換するクロック乗換回路と、周波数f2のドットクロックで処理されたビデオ信号に対して前記テレテキスト信号を前記クロック乗換回路から出力するスイッチング信号によって合成する信号合成回路とを備えた映像信号処理回路であって、
前記クロック乗換回路として、前記請求項1又は2に記載のクロック乗換回路を使用し、該クロック乗換回路の前記タイミング信号として前記ビデオ信号の水平同期信号を使用したことを特徴とする映像信号処理回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−279639(P2006−279639A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96781(P2005−96781)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】