説明

クロマトグラフィー法

本発明は、疑似移動床式プロセス(simulated moving bed process)に関するものであり、ここで少なくとも1つの吸着材を標的化合物の結合の後に洗浄し、そして吸着材からの洗浄液の排出物を、その後線上により除去される標的化合物の結合のために、別の吸着材上を通過させる。一態様において、この方法は、連続して組み合わされた3つまたはそれ以上吸着材を使用した少なくとも1つの標的化合物の結合および標的化合物のこの3種の吸着材からの溶出を含む。吸着材への結合の後、洗浄液をその吸着材を横断して通過させ、離脱した標的化合物および/または結合していない標的化合物を回趣旨、そしてそのような洗浄液の排出物を、供給液が未だ何も付加されていない一連の吸着剤の次の次の吸着材へと移動させる。標的化合物を、標的化合物を洗浄した吸着材から溶出することにより回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィーに関し、そしてより具体的には連続的クロマトグラフィー法の経済的そして能力的改良のためのプロセスに関する。本発明は、半-連続的クロマトグラフィーを使用して標的化合物を分離するための方法、ならびにそのような方法を実行するためのシステムを包含する。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬の分野において、遺伝子工学的技術および細胞培養技術における最近の進歩は、従来よりも発現レベルを高く駆動し、下流での精製、特に捕捉の工程に対して、かなりの負担となる。新規のクロマトグラフィー樹脂を導入することにより、従来型の固定床式クロマトグラフィーに基づくプロセスの効率を顕著に改善する一方、連続的方法で作動することにより、追加的な利益を得ることができる。後者は、還流モードで作動されるものなどの連続的バイオリアクターが使用される場合に、特に魅力的である。
【0003】
連続的クロマトグラフィーにおいて、いくつかの同じカラムを、方法の必要条件に従って、カラムを連続しておよび/または平行して作動することができる構成で接続する。このように、全てのカラムを、原理上は同時に、しかし方法工程の中でわずかにずれた状態で、実行することができる。手順を繰り返すことができ、それによりプロセスの中で数回、各カラムをローディングし、溶出し、そして再生する。1回のクロマトグラフィーサイクルが、いくつかの連続した工程、例えばローディング工程、洗浄工程、溶出工程、および再生工程など、に基づく「従来型」のクロマトグラフィーと比較して、複数の同じカラムに基づく連続的クロマトグラフィーにおいては、これら全ての工程が同時に、しかしそれぞれ別個のカラム上で生じる。連続的クロマトグラフィーの操作の結果、クロマトグラフィー樹脂のよりよい利用をもたらし、処理時間を短縮し、そしてバッファー必要条件を少なくし、これらの全てはプロセスの経済に利益をもたらす。連続的クロマトグラフィーは、しばしば、疑似移動床式(simulated moving bed、SMB)クロマトグラフィーと示される。
【0004】
Bishop et al (“Simulated Moving Bed technology in Biopharmaceutical Processing”, Bischops, M. and Pennings, M., Recovery Biological Products XI, (2003) Banff, Alberta, Canada)は、疑似移動床式(SMB)技術に基づく連続的クロマトグラフィー法を開示し、それがプロテインA親和性樹脂を用いたIgGの研究室スケールでの精製のために、成功裏に利用された。SMBによりもたらされたマルチカラムおよびマルチゾーンの連続的アプローチがプロセス効率を大幅に上昇させたという事実にも関わらず、SMBシステムは、cGMPバイオ医薬製造のためにはこれまで使用されなかった。これは主として、ハードウェアの全体像および操作上の全体像の両方に基づくシステムの複雑性のためである。
【0005】
Heeter et al(Heeter, G.A. and Liapis, A.I., J. Chrom A, 711 (1995))は、典型的な4ゾーンのSMBシステムの代わりとして、3カラム周期的逆流クロマトグラフィー(3C-PCC)の原理に基づく方法を示唆した。より最近では、Lacki et al(“プロテインA Counter-Current Chromatography for Continuous Antibody Purification”, Lacki, K.M. and Bryntesson, L.M., ACS (2004) Anaheim, CA USA)は、そのような3C-PCCシステムをMabSelectTM親和性樹脂へのIgG吸着のために使用することを記載した。この3C-PCC法は、典型的な4ゾーンSMBシステムと比較してより単純なハードウェアおよびより簡潔な操作を必要とするものであり、システムの資本設備およびメンテナンスに関連するコストを直接的に低減する。
【0006】
事実、疑似移動床式技術は、様々なその他の分野において数十年にわたり使用されてきた。例えば、US 3,291,726(Universal Oil Products)は、石油化学工業に関して連続的疑似逆流収着プロセスを、1966年には記載していた。
【0007】
US 6,325,940(Daicel)は、分離用充填剤で充填された充填床を含む疑似移動床式クロマトグラフィーシステムに関するものであり、それにより、充填床の分離性能を、循環流体の流れから充填床を取り外すことなく、評価することができる。充填床をそれらを取り外すことなく評価することができるため、このシステムを、システムの劣化がカラムにより生じるか否かについて、そしてカラムにより生じる場合に、どのカラムが劣化を生じているのかについて、調べることができる。このシステムは、連続的にそして際限なく互いに接続する少なくとも4つの充填床と、液体を追加しそして取り出すためのポートとを含む。
【0008】
US 5,457,260(UOP Inc.)は、疑似移動式吸着材床分離のための調節プロセスに関するものである。より具体的には、疑似移動式吸着材床分離プロセスの少なくとも1つの特徴を連続的に調節するプロセスが開示される。この調節される特徴は、目的とする成分の精製度または回収であってもよい。このプロセスには、ポンプアラウンド(pumparound)流またはプッシュアラウンド(pusharound)流における構成成分の濃度を測定すること、特徴の値を計算すること、そして特徴の値の変化を、作動変数の変化から生じる構成成分の濃度の変化へと関連づけるアルゴリズムに従って、作動変数(operating variables)に対して必要な調整を行うこと、が関連する。従って、分離を調節するためのデータの必要量が迅速に生成され、それにより効率、精密性および正確性を提供する。
【0009】
信頼性のある連続的プロセスのための本質的因子は、使用されるカラムの品質、そしてより具体的にはカラム間での同様性またはさらには同一性である。カラムが同一でない場合、論理的計算は正しくなく、そして効率的で頑強な連続的クロマトグラフィープロセスを設計することが困難になるだろう。同様に、スケールアップの検討のためには、システム中に同一のカラムを有することが必須である。しかしながら、再現性のある結果を得るために、クロマトグラフィー媒体でのカラムのパッキングは、非常に複雑である。プレート数またはその他のパッキング特性の差異がわずかなものあっても、最終結果には非常に大きな影響を有する可能性がある。
【0010】
ラージスケールのクロマトグラフィーのためのあらかじめパッキングされたカラムが、市場で入手可能である。あらかじめパッキングされたカラムの利点は、供給者樹脂ですでにパッキングされたカラムを最終ユーザーに提供し、それによりそのユーザーは、カラムパッキングの比較的複雑な手順を経験する必要がなく、プロセス中にカラムを含ませることができる。しかしながら、そのようなカラムが連続的クロマトグラフィーにおいて有用であるために;それらは、非常に厳密な仕様の中にパッキングする必要がある。そのような同様のカラムは、解析スケールのクロマトグラフィー用に、そしてスモールスケールの調製的クロマトグラフィー用に、入手可能である。しかしながら、ラージスケールの操作のため、あらかじめパッキングされたクロマトグラフィーカラムの必要性が依然として存在し、そのカラムには、そのようなシステムに対して接続するための適切な手段が提供され、そのカラムは厳密な仕様の中にパッキングされる。
【0011】
製薬産業において、タンパク質、核酸などの生体分子は、単一カラムを使用して従来型のクロマトグラフィー により一般に分離される。しかしながら、安全性の問題および品質の問題は、より複雑な設定の場合と比較して、単一カラムにおいてより容易に管理することができるとしても、一般的な関心は、そのような従来型のクロマトグラフィーを使用して得られる能力である。このように、改良されたクロマトグラフィー法の分野において、単一カラムクロマトグラフィーにより現在得られる全体としての効率および経済を改良するという要望が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】US 3,291,726
【特許文献2】US 6,325,940
【特許文献3】US 5,457,260
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Bischops, M. and Pennings, M., Recovery Biological Products XI, (2003) Banff, Alberta, Canada
【非特許文献2】Heeter, G.A. and Liapis, A.I., J. Chrom A, 711 (1995)
【非特許文献3】Lacki, K.M. and Bryntesson, L.M., ACS (2004) Anaheim, CA USA
【発明の概要】
【0014】
一側面において、本発明は、半-連続的液体クロマトグラフィーシステムについての新規な操作原理を提供する。より具体的には、本発明は、発酵ブロスなどの流体混合物からの構成成分の所望の成分のスループットの増加を提供する。このことは、添附の請求の範囲において定義されるように、達成することができる。
【0015】
具体的な側面において、本発明は、液体クロマトグラフィーの方法における改良されたクロマトグラフィー性能を提供し、この方法は、溶出工程の前に少なくとも1つの標的が結合した樹脂を洗浄する工程を含む。
【0016】
さらなる側面において、本発明は、本発明に従う半-連続的クロマトグラフィー法において、少なくとも3つの実質的に同一にパッキングされたクロマトグラフィーカラムのセットを使用することを提供する。
【0017】
本発明のさらなる側面および利点は、以下の詳細な説明および実施例から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明に従う3カラム周期的逆流(3C-PCC)システムのスキーム図を示す。
【図2】図2は、本発明に従う3C-PCCシステムにおけるカラム1およびカラム2のローディングのあいだの、供給液溶液の流路を示す。
【図3】図3は、本発明に従う3C-PCCシステムの操作のあいだの供給液およびバッファー洗浄液のための流路を示す。
【図4】図4は、本発明に従う3C-PCCの操作のあいだのステージの1つのあいだの、供給液の流れおよび再生の流れのための流路を示す。
【図5】図5は、本発明に従うAKTATM探索プラットフォーム(GE Healthcare Bio-Sciences, Uppsala, Sweden)に基づく、本発明の3C-PCCの図を示す。
【図6】図6は、本発明に従う3C-PCCシステムの起動サイクルのあいだの、3カラム全てからの流出流における記録シグナルを示す。
【図7】図7は、本発明に従う3C-PCCシステム上での4.66全周期のあいだの、3カラム全てからの流出流における記録シグナルを示す。
【図8】図8は、実施例2に記載されるようにして得られたクロマトグラムにおける記録シグナルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
用語“供給液”は、分離されるべき2つまたはそれ以上の化合物を含有する液体のことをいう。この文脈において、用語“化合物”は、分子、化学的化合物、細胞などのいずれかの構成要素について、幅広い意味で使用される。
【0020】
用語“標的化合物”は本明細書中において、1またはそれ以上追加の化合物を含む液体から分離することが望まれるいずれかの化合物を意味する。このように、“標的化合物”は、例えば、薬剤、診断薬またはワクチンとして所望される化合物であってもよく;またはあるいは、1またはそれ以上の所望の化合物から取り除かれるべき、汚染化合物または望ましくない化合物であってもよい。
【0021】
用語“ブレークスルー”は、パッキングされたクロマトグラフィーカラムなどの吸着材に対する供給液添加のあいだ、吸着された化合物が流出物中に最初に出現する時点を意味する。言いかえると、“ブレークスルー”は、標的化合物の喪失が始まる時点である。
【0022】
用語“飽和レベル”は、パッキングされたクロマトグラフィーカラムなどの吸着材が、特異的標的化合物を吸着するその元々の能力の一部のみを保持する時点のことを意味する。
【0023】
用語“完全飽和”は、パッキングされたクロマトグラフィーカラムなどの吸着材が、それ以上の特異的標的化合物を吸着することができない時点のことを意味する。
用語“再生”は本明細書中において、クロマトグラフィーにおいて再び有用であるようにするために、吸着材を処理するプロセスのことを意味する。このように、“再生”は、化合物の溶出としても知られる、結合された化合物の放出、ならびに適切な吸着バッファーを用いた再平衡化が含まれうる。以下において検討されるように、“再生”にはまた、適所でのクリーニング(cleaning in place;CIP)もまた含まれる可能性がある。
【0024】
用語“洗浄”は本明細書中において、クロマトグラフィーカラムなどの吸着材を、適切な液体を用いて処理して、例えば、結合していないか、または所望の飽和レベルのその飽和の後に吸着材から放出される程度に弱くしか結合していない、1またはそれ以上標的化合物を洗い流すプロセスを意味する。
【0025】
用語“親和性樹脂”は本明細書中において、抗体/抗原;酵素/レセプター;ビオチン/アビジン;プロテインA/抗体などの“錠/鍵”メカニズムを介して、リガンドの官能基が、標的化合物と結合することができる、樹脂のことを意味する。親和性樹脂は、高い特異性で標的化合物と結合することが知られており、そしてそのような結合は、通常は1種以上の相互作用に基づく。周知の親和性樹脂は、例えば、プロテインAセファロースTMまたはProsep ATMなどの粒子に結合したプロテインAである。
【0026】
用語“半-連続的”クロマトグラフィーシステムは本明細書中において、連続的吸着のための、しかし別々の溶出のための、システムを意味する。
用語“フロープログラミング”は、供給液をクロマトグラフィーカラムに適用するあいだの、供給液流速の計画的な変化を意味する。
【0027】
用語“捕捉”は、クロマトグラフィー法の意味において、多量の標的化合物が捕捉される最初のクロマトグラフィー工程を意味する。
発明の詳細な説明
このように、第1の側面において、本発明は、供給液から少なくとも1つの標的化合物を分離するための方法に関し、この方法は、標的化合物の結合の後に少なくとも1つの吸着材を洗浄し、そしてこの吸着材からの洗浄液の排出物を続いて前記の洗浄により除去された標的化合物を結合させるために別の吸着材上を通過させる、疑似移動床式プロセス(simulated moving bed process)である方法である。洗浄液を移動させるこの吸着材は、都合よくは、標的化合物が何も未だ結合していない新しい吸着材である。結果的に、供給液がシステム中の別の吸着材に振り向けられる場合には常に、その吸着材は、結合した少量の標的化合物を既に有している。このように、本発明は、標的化合物の効率的な回収を可能にする。
【0028】
本発明の一態様は、供給液から少なくとも1つの標的化合物を分離するための方法であり、この方法は、連続して接続された3つまたはそれ以上の吸着材のうちの1またはそれ以上に対して、少なくとも1つの標的化合物を連続的に結合させ、そして標的化合物をこれら3種の吸着材から個別に溶出することを含み;結合の後、洗浄液を各吸着材を横断して通過させ、脱離された標的化合物および/または結合されなかった標的化合物を回収し、そしてその様な洗浄液の排出物を一連の吸着剤の次の次の吸着材に対して移動させ、洗浄した吸着材から標的化合物を溶出することによりこの標的化合物を回収する。当業者ならば理解するだろうが、この一連のものの最後の吸着材は、サイクル状のプロセスを作成するために、最初の吸着剤に接続される。上記からも明らかなように、吸着材が互いに接続され、それにより連続して連絡することが可能になる一方で、カラムの再生を最も都合よくは供給液ローディングと本質的に同時に、しかしこの一連のものから一時的に切断される吸着材中で、実行されるため、本発明のシステムは、連続して操作される。
【0029】
本発明の方法において使用される吸着材は、カラム中にパッキングされたクロマトグラフィー樹脂、メンブレン、モノリス、中空ファイバー、またはいずれかその他の適切な様式などの、充填床であってもよい。この文脈において、本発明の方法は、ブレークスルー曲線が供給液の適用のあいだに出現するいずれかの吸着材により有用であることが、理解される。当業者ならば理解するだろうが、本発明の利点から十分に利益を得るため、この吸着材は、例えば、同一種のパッキング物質を含むクロマトグラフィーカラムなど、同種のものであるべきである。クロマトグラフィー樹脂は、例えば、例えば、プロテインA-に基づく樹脂などの親和性樹脂;IMAC樹脂として知られるキレート性樹脂;疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂;硫黄親和性樹脂(thiophilic resins);イオン交換樹脂、そして多様イオン交換物質などの、リガンドが2つまたはそれ以上の官能基を含む、多様性樹脂(multimodal resins);であってもよい。クロマトグラフィー樹脂のリガンドは、例えば、樹脂中に極小の本質的に球状の粒子が含まれるものなどの、粒子に対して結合していてもよい。メンブレンは、どのような厚さのものであってもよく、そしてそれには、それに対して結合性基が結合した、フィルター、積層フィルター(filter stacks)、そしてその他の改変体が含まれる。モノリスは、クロマトグラフィーの分野においては周知であり、そして原理上は、クロマトグラフィーカラムの一部または全てを充填するための、メンブレンほどに薄いものか、またはそれよりも厚くてもよい合成ポリマー栓である。
【0030】
より具体的には、一態様において、本発明の方法は、
(a) 少なくとも1つの標的化合物を含む供給液を、第1の吸着材を横断して通過させ、そして流出物を第1の吸着材から第2の吸着材へと移動させる工程;
(b) 供給液を第2の吸着材へと振り向け、そして洗浄液を標的化合物が結合した第1の吸着材を横断して通過させる工程;
(c) 洗浄液流出物を第3の吸着材へと移動させ、そしてその後第2の吸着材からの流出物を第3の吸着材へと移動させる工程;
(d) 第1の吸着材を再生させる工程;
(e) 供給液を第3の吸着材へと振り向け、そして洗浄液を標的化合物が結合した第2の吸着材を横断して通過させる工程;
(f) 洗浄液流出物を第1の吸着材へと移動させ、そしてその後第3の吸着材からの流出物を第1の吸着材へと移動させる工程;
(g) 第2の吸着材を再生させる工程;
(h) 供給液を第1の吸着材へと振り向け、そして洗浄液を標的化合物が結合した第3の吸着材を横断して通過させる工程;
(i) 洗浄液流出物を第2の吸着材へと移動させ、そしてその後第1の吸着材からの流出物を第2の吸着材へと移動させる工程;
(j) 第3の吸着材を再生させる工程;
(k) 工程(b)-工程(j)を繰り返す工程;
ここで、少なくとも1つの標的化合物を工程(d)、工程(g)および/または工程(j)において回収する;
工程を含む。
【0031】
本発明の方法において使用される吸着材に適用される供給液は、いずれの液体混合物であってもよく、都合よくは、細胞により発現された生体分子を含有する発酵ブロスである。代わりの態様において、供給液は、血液または血漿、または何らかその他の生体液を含む。この供給液は、都合よくは、適切なバッファーを組み合わされる。そのようなバッファーは、標的化合物の性質、クロマトグラフィー樹脂そしてその他のパラメータに依存して選択することができ、そして結合(すなわち、標的化合物の吸着)のための適切な条件に対して調整される。
【0032】
本発明の方法の一態様において、この供給液は、上述した発酵ブロスまたは生体液であり、1またはそれ以上の工程または例えば、細胞の破片を除去するための濾過、軟凝集、沈殿またはクロマトグラフィー、などの事前処理に供する。本発明の好都合な態様において、本発明の方法は、以下に説明する生体分子の精製のためのラージスケールのバイオ医薬的プロセスの最初の工程など、大容量の液体を取り扱うプロセスにおいて使用される。本発明は、スモールスケールまたは解析スケールにも等しく適用可能であるが、プロセススループットに関したその利点は、より大規模な容量の場合により顕著である。一態様において、本発明の方法において使用される各吸着材の体積は、少なくとも1リットルであり、例えば1〜100リットルの範囲である。別の態様において、各吸着材は、1〜60リットルの範囲であり、例えば約56リットルであり、別の態様においては、1〜40リットルであり、そしてさらなる態様においては、1〜30リットルである。具体的な態様において、各吸着材の容量は、10〜20リットルの範囲である。
【0033】
この標的化合物は、例えば、タンパク質(例えば膜タンパク質または抗体、例えば、モノクローナル抗体)、抗体または抗体フラグメント(例えば、Fab-フラグメント)を含む融合タンパク質、そして組み換えタンパク質;ペプチド;核酸(例えば、DNAまたはRNA、例えば、オリゴヌクレオチド、プラスミドまたはゲノムDNA);細胞(例えば、原核細胞または真核細胞、または細胞フラグメント);ウィルス;プリオン;炭水化物;脂質;などからなる群から選択することができる。一態様において、少なくとも1つの標的化合物は、所望の構成要素(例えば、バイオ医薬候補または薬剤候補、診断用分子またはワクチン)である。この態様において、汚染物質は、本発明のシステムの吸着材を通過するか;または結合するが、(1または複数の)標的化合物の条件とは異なる条件で溶出されるかのいずれかである。
【0034】
代わりの態様において、少なくとも1つの標的化合物は、汚染物質であり、そして所望のバイオ医薬候補または薬剤候補、診断用分子またはワクチンは吸着材を横断して流れる液体中に存在する。この最後に言及した態様は、クロマトグラフィーの“フロースルー”モードとして知られる。フロースルーモードの具体的な態様において、汚染物質が結合した吸着材は、本発明の方法を特定の回数繰り返したのち、廃棄される。そのような種類の吸着材は、ディスポーザブル(使い捨て)、または単回使用製品として知られ、そして特に医学分野などの精製度の要求性が高いプロセスにおいてプリオンやウィルスなどのハイリスク汚染物質とともに使用する場合に有利である。
【0035】
本発明の方法の好都合な態様において、一旦供給液が特異的な吸着材に対して適用されたら、その吸着材からの流出物は、都合よくは、標的化合物が吸着材から外に出始めたその時点(標的のブレークスルーとして知られる時点)あたりまで、廃棄する。このように、適切な期間の後、流出物を連続して次の吸着材に振り向け、それにより標的化合物が次の吸着材に捕捉されることから、標的化合物の本質的な喪失を回避する。しかしながら、当業者は理解するだろうが、いくらかの流出物を廃棄することは本発明にとって必須ではない。所望であれば、利用可能な装置の制限という理由などのため、本発明の方法には、初めからこのカラムに対して流出物を移動させること、すなわち、何も流出物を廃棄することのないこと、が含まれていてもよい。当業者は、ブレークスルーが生じる時点を容易に決定することができ、そしてブレークスルーの前、そのとき、またはその後に、次の吸着材に対して流れを移動させるかどうかを容易に決定することができる。流出物のこの振り向けがブレークスルーの近傍で生じるため、本発明者らは本明細書中において、しばしば、“ブレークスルー振り向け点”という。標的化合物の検出は、一般的に使用される検出方法のいずれか、例えばUV、により得ることができる。検出器は、以下においてより詳細に検討する。容易に理解されるように、ブレークスルーの検出は、全てのクロマトグラフィーサイクル中に行う必要はない。むしろ、一旦プロセスが最適化されれば、流出物の体積により;または供給液を適用してから経過する時間を単に測定することにより、この時点を決定することは容易である。
【0036】
しかしながら、よく知られているように、ブレークスルーの後、吸着材が(1または複数の)標的化合物により完全に飽和されるまでには、より長い時間がしばしば経過する。プロセスの経済学的理由のため、その飽和まで各吸着材を使用することが一般的に最も好ましい。このように、都合よくは、上述したブレークスルー振り向け点と、供給液が一連のものの次の吸着材に対して実際に振り向けされた時点との間で、特定の時間が経過する。当業者は、標的化合物についてのブレークスルー曲線に基づいて、供給液を次のカラムに振り向ける時点を容易に決定することができ、そして本明細書中において、“飽和振り向け点”をしばしば意味するこの予め決められた時点が、完全飽和の前、その時、またはその後に生じるかどうかを容易に決定することができる。
【0037】
このように、本発明の方法の具体的な態様の繰り返しループを参照して、ブレークスルー振り向け点は、工程(b)、工程(e)および工程(h)において生じるが、一方飽和振り向け点は、工程(c)、工程(f)および工程(i)において生じる。
【0038】
本技術分野において周知であるように、標的化合物の全てが実際に樹脂に対して結合するという訳ではなく、むしろいくらかの標的化合物が一般的に樹脂から脱離するというのがしばしば事実である。クロマトグラフィーにおいて最も一般的には、標的化合物が結合した樹脂を単純にすすぎ、そして次にすすぎ液を廃棄する。このように、そのような従来からの操作では、特定量の標的化合物が失われそして回収されない。しかしながら、本発明の方法では、一旦供給液が連続する次の吸着材に移動したら、それよりも前の吸着材は洗浄および再生のために利用可能である。吸着材を洗浄する際、標的化合物のほとんどが結合したままである条件を使用するが、しかし脱離された標的化合物および/または結合されなかった標的化合物が洗浄液流出物中に出現する。本発明に従って、標的化合物を捕捉するために、洗浄液流出物を、一連の吸着剤の次の次の吸着材に対して移動させる。バッファーなどの適切な洗浄液は、当業者により容易に選択される。一態様において、所定の瞬間に、その瞬間に供給液を受容する吸着材からの洗浄液流出物および流出物を、次々にまたは多かれ少なかれ同時的に、適用することができる。このことは、それぞれの流速の流速制御により、そして適切なバルブを使用することにより、容易に選択される。流速の制御は、以下にさらに詳細に検討する。
【0039】
上記から明らかなように、一旦特異的な吸着材を連続的プロセスサイクルから取り外したら、再生が簡便に行われる。洗浄された吸着材の再生は、周知の方法により達成することができ、そして再生には一般に使用される手順、例えば溶出;再平衡化、および場合によっては溶出と再平衡化との間のより精力的なクリーニングが含まれていてもよい。このように、結合した(1または複数の)標的化合物を溶出するため、この標的化合物を放出することができる液体-溶離液としても知られる-が、吸着材に対して添加される。このことは、吸着材を通して溶離液をポンピングすることにより、またはあるいは溶離液を最初に添加し、次に作用させ、そして最終的に取り除く手順として、達成することができる。本発明の好都合な態様において、溶離液を、供給液および洗浄液を添加しそして取り出すために使用され、適切なバルブを備えた、注入口および排出口を使用して、吸着材を横断して通過させる。結合された標的化合物の吸着材からの溶出は、段階的に、または勾配として知られる変化する条件(例えば、伝導率勾配および/またはpH勾配等)を使用して行われる。混合勾配の適切な溶出バッファーおよび溶出方法は、当業者に周知である。
【0040】
標的化合物の溶出の後、この吸着材は、再平衡化されることが一般的に必要であり、それにより供給液が適用された最初に使用された条件、すなわち、1またはそれ以上の標的化合物が結合することができる条件、に回復する。再平衡化は、都合よくは、カラムを通して適切なバッファーを通過させることにより得られる。
【0041】
上述したように、吸着材は、溶出および再平衡化の間にクリーニングすることができ、このプロセスは一般に、適所でのクリーニング(cleaning in place;CIP)といわれる。そのようなCIPは、上述した洗浄液よりもより積極的な液体を使用し、そして例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液であってもよい。CIPは、特定の回数の吸着-溶出サイクルの後に行うことができ、またはあるいは、そのようにする理由が存在する場合には、CIPを各再生の要素として行うことができる。吸着材がCIPを必要とする頻度は、当業者により容易に決定される。
【0042】
このように、再生は、溶出およびその後の再平衡化を含むべきである。一態様において、2サイクルごと、3サイクルごと、5サイクルごと、10サイクルごと、または20サイクルごとに、再生はまた、溶出の後の適所でのスクリーニングを含む。具体的な態様において、すべてのクロマトグラフィーサイクルは、溶出および再平衡化に加えて、適所でのクリーニングを含む、再生を含む。
【0043】
本発明の方法の工程(b)〜工程(j)のサイクルは、2回、5回、10回、または20回等のいずれかの回数繰り返すことができ、すべては具体的なプロセスのパラメータに依存する。当業者は、適切な回数のCIP工程を含め繰り返しサイクルの適切なプロトコルを容易に設定して、所定の標的化合物を単離することができる。
【0044】
第2の側面において、本発明は、供給液から少なくとも1つの成分を分離するための液体クロマトグラフィーシステムに関し、このシステムは、連続して接続された少なくとも3種の吸着材を含み、各吸着材に対して液体の注入および排出のための手段を備える。本発明の好都合な態様において、注入および排出のための手段は、それぞれ、2つ、3つまたはそれ以上の注入流ならびに2つ、3つまたはそれ以上の排出流を付加することを可能にするバルブ手段を備える。この吸着材は、従来型のパイプまたはチューブにより接続することができる。
【0045】
このように、本発明のシステムの一態様において、各吸着材は、注入口および/または排出口にてマルチポート手段を備える。そのようなバルブ手段は、例えば、ロータリーバルブ、オン-オフバルブ、膜バルブ、例えば膜ブロックバルブ、AKTATMPilotバルブ(GE Healthcare, Uppsala, Sweden)であってもよい。疑似移動床式 クロマトグラフィープロセスおよび連続的クロマトグラフィープロセスにおいて使用するために適したバルブは、この分野において周知であり、例えば、それらについての詳細な検討についてはUS 7,141,172を参照のこと。
【0046】
具体的な態様において、その排出口にて、各吸着材に、標的化合物の検出のための手段が提供される。この目的に適した検出器およびセンサは、当該技術分野において周知であり、例えば、UV吸収度の検出器、光散乱の検出器、屈折率の検出器など、である。本発明によるシステムに、吸着材性能評価手段も提供することができる。
【0047】
本発明の第1の側面から明らかなように、本発明に従って、多数の液体流を、各カラムに対して添加することができる;すなわち、供給液および供給液からの排出物を、吸着材、洗浄液、再生および溶出のために使用される(1または複数の)液体などに対して添加する。本発明に従うこのシステムは、液体流を扱うための従来型の手段のいずれかを備えていてもよい。
【0048】
本発明の好都合な態様において、本発明は、流速プログラミングを使用して、所望の様式で互いへの液体流の流速を調整する。一態様において、供給液または洗浄液などの1つの液体流の流速を調整して、供給液がその所定の吸着材へと振り向けられる前に、所定の吸着材への洗浄液排出口の付加が完了することを可能にする。このように、第1の態様において、吸着材に対する洗浄液排出の流速を増加させる。この態様において、供給液の流速は、不変であることができる。第2の態様において、供給液の流速を低下させる。この態様において、洗浄液排出の流速は、不変であることができる。流速プログラミングの利点の一つは、各カラムの生産性を大幅に改良することができるという点である。
【0049】
第3の側面において、本発明は、本発明に従う半-連続的クロマトグラフィープロセスの流速調節をもたらす、コンピュータプログラムに関する。このプログラムは、相互に調整される液体流をもたらし、結果としてプロセスの生産性を改善する。そのようなプログラムは、例えば、抗体またはFab-フラグメントの精製の方法に対して適合させることができ、ここで吸着材は、プロテインAまたはその他の親和性リガンドを含む。このプログラムは、適切なキャリア、例えばCDまたはDVDディスク、メモリースティックまたはその他のいずれかの一般的に使用されるフォーマット上で提供することができる。
【0050】
本発明の具体的な側面は、上述のシステムであり、これが本発明によるコンピュータプログラムを提供し、流速プログラミングを有する半-連続的操作のための自動化システムをもたらす。
【0051】
第4の側面において、本発明は、供給者によりクロマトグラフィー樹脂を詰められた状態で提供されたクロマトグラフィーカラムを、流速プログラミングされた半-連続的クロマトグラフィーなどの半-連続的クロマトグラフィーにおいて、使用することに関する。本発明の好都合な態様において、この側面において使用されるクロマトグラフィーカラムは、実質的に同一のパッキング特性を示す。具体的な態様において、事前に詰められたクロマトグラフィーカラムを殺菌し、これにより医薬製品および診断用製品の調製においてそれを使用することを可能にする。別の態様において、事前に詰められたクロマトグラフィーカラムは、あらかじめ決められたスタンダードに従って、検定された。
【0052】
この側面において使用されるカラムは、いずれかのクロマトグラフィー樹脂、合成に基づく樹脂(例えば、スチレン-DVB)、有機ポリマーに基づく樹脂(例えばアガロースまたはデキストラン)、または無機樹脂(例えばシリカ)により詰められたものであってもよい。樹脂に対して、従来型のリガンド(親和性リガンド、イオン交換リガンド、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)リガンド、キレート性リガンド、硫黄親和性リガンド(thiophilic ligands)または多様性リガンド(multimodal ligands)など)が、都合よくは結合する。リガンドは、所望の標的に結合する能力について(抗体に結合するプロテインAリガンド、抗体フラグメントなど);または1またはそれ以上汚染物質に結合するそれらの能力について(DNA-結合性リガンドなど、例えば、イオン交換リガンド)、選択することができる。カラムは、ガラスまたはプラスチックであってもよく、そして本発明によるシステムに対して接続するためのルアー(luers)および/またはアダプターにより、好ましくは適合される。
【0053】
本発明はまた、上述したクロマトグラフィー樹脂を詰められ、そして本発明による方法において使用するためのスタンダードに従って検定された、少なくとも3つのクロマトグラフィーカラムのセットに関する。
[図面の簡単な説明]
図1は、3クロマトグラフィーカラム周期的逆流(3C-PCC)システムを使用した、本発明の一態様のスキーム図を示す。
【0054】
図2は、図1のシステムにおいて、カラム1およびカラム2の供給液を用いたローディングのあいだの、供給液溶液用の流路を示す。
図3は、図1のシステムにおいて、3C-PCCシステムの操作のあいだのステージの一つのあいだの、供給液およびバッファー洗浄液のための流路を示す。
【0055】
図4は、図1のシステムにおいて、3C-PCCの操作のあいだのステージの1つのあいだの、供給液の流れおよび再生の流れのための流路を示す。
図5は、図1のシステムにおいて、AKTATM探索プラットフォーム(GE Healthcare Bio-Sciences, Sweden)に基づく、本発明の3C-PCCの図を示す。
【0056】
図6は、図1のシステムにおいて、本発明の3C-PCCシステムの起動サイクルのあいだ、3つのカラム全てからの流出流における、記録シグナルを示す。
図7は、図1のシステムにおいて、本発明の3C-PCCシステム上での4.66全周期のあいだの、3つのカラム全てからの流出流における記録シグナルを示す。
【0057】
図8は、実施例2において記載されたように得られたクロマトグラムにおける記録シグナルを示す。より具体的には、この図は、本発明の3C-PCCシステムを使用して、哺乳動物細胞培養物上清からモノクローナル抗体を精製した結果を示す。クロマトグラム(原図では青い曲線)中で示される第1の曲線-カラム1、(赤い曲線)で示される第3の曲線-カラム2、そして(緑色の曲線)により示される第2の曲線-カラム3。
【実施例】
【0058】
本実施例は、説明の目的にのみ提示し、そして添付の特許請求の範囲により定義される本発明を限定することを意図するものではない。
実施例1
この実施例は、本発明による3カラム周期的逆流(3C-PCC)システムを使用した、プロテインAクロマトグラフィー樹脂上でのヒトポリクローナルIgGの精製のための連続的一次捕捉を示す。より具体的には、3つの1ミリリットルカラム(HiTrapTM)を、プロテインAクロマトグラフィー樹脂MabSelectTM(GE Healthcare Bio-Sciences, Uppsala, Sweden)を用いて詰めた。3カラム周期的逆流システム、3C-PCCに構成された特注改良版AKTAexplorerTM(GE Healthcare Bio-Sciences, Uppsala, Sweden)クロマトグラフィーシステム(図5)に対して、カラムを接続した。このシステムには、2つの独立したポンプ、3つのUV検出器、pH測定器および伝導率測定器、いくつかのロータリーバルブおよび流路分離器が含まれた。UV検出器は、カラムのそれぞれからの流出物が、UV検出器を介して通過されるように、配置された。各UV検出器からの吸収度、および廃棄物ラインで測定されたpHレベルおよび伝導率レベルを、UNICORNTMソフトウェア(GE Healthcare Bio-Sciences, Uppsala, Sweden)を用いて記録した。プロテインAカラムから溶出されたhIgGは、一つのプール中に回収された。
【0059】
以下の単一カラムクロマトグラフィーサイクルを、連続的様式で3C-PCCシステムを操作するためのベースとして、使用した:1)バッファーA の3カラム容量(CV)を用いたカラム平衡化;2)バッファーA中のhIgGを用いたカラムローディング;3)4CVのバッファーAを用いたカラム洗浄;4)4CVのバッファーBを用いたカラム溶出;5)4CVのバッファーCを用いたカラムCIP;そして6)3 CVのバッファーAを用いたカラム再生。すべての工程は、0.5 mL/min 流速を用いて行った。
【0060】
使用する溶液の組成は、以下の通りである:
バッファーA:50 mMリン酸ナトリウム、150 mM NaCl、pH 7
バッファーB:0.1 Mクエン酸ナトリウム、pH = 3.5
バッファーC:50 mM NaOH
供給液:バッファーAに溶解した1.65 g/L Polynorm hIgG(Octopharm)
1.6 g/LのPolynorm hIgGを含有する400 mlの溶液を、上述した実験的3C-PCC設定中に連続的に供給する。精製されたhIgGを、飽和されたカラム中にバッファーBを適用することにより、このシステムから慎重に溶出した。図6において、1)第1のカラムへ供給液をローディングすること;2)第1のカラムと第2のカラムとを連続して接続すること;3)供給液を第2のカラム中に移動し、一方で第1のカラムを洗浄して第3のカラムへと移動させること;4)第2のカラムと第3のカラムとを連続して接続し、一方で供給液を適用すること;5)第1のカラムを再生すること;6)供給液を第3のカラムへと移動させ、そして第2のカラムを洗浄して第1のカラムへと移動させること;7)第3のカラムと第1のカラムとを連続して接続し、一方で供給液を連続して適用すること;8)第2のカラムを溶出すること;9)第2のカラムを再生すること;10)供給液を第1のカラムへと移動させ、一方で第3のカラムを洗浄して第2のカラムへと移動させること;からなる、起動時3C-PCCサイクルのあいだ、クロマトグラフィーカラムのそれぞれからの流出物において記録されたシグナルが示される。図6に示されるパターンの再現性は、図7に示し、ここで4.7周期の3C-PCCサイクルを示す14回の単回ローディングの間に記録されたUVシグナルが提示される。カラムのそれぞれからの流出物中のIgGの濃度を示すこのクロマトグラムは、図6および図7において示されるように、異なるUV検出器を使用して記録されたため、直接的には比較できるものではなかった。
【0061】
この実験において得られた結果の概要を、以下の表1に示す。これらのデータを、3C-PCCシステムにおいて使用される樹脂の全量と均等の量を用いて参照実験を単一カラム上で行った場合に得られたであろう結果と比較する。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例2
この実施例は、本発明による3カラム周期的逆流(3C-PCC)システムを使用して、哺乳動物細胞培養上清からモノクローナル抗体(MAb)を精製するための、連続的一次捕捉工程を示す。より具体的には、本質的に実施例1において上述したように、3つの1ミリリットルカラム(HiTrapTM)を、MabSelectTMSuRe(GE Healthcare Bio-Sciences, Uppsala, Sweden)を用いて詰め、そして特注改良版AKTAexplorerTM(GE Healthcare Bio-Sciences, Uppsala, Sweden)クロマトグラフィーシステムに対して、カラムを接続した。
【0064】
簡単に述べると、連続的様式で3C-PCCシステムを操作するための基礎として使用された単一のカラムクロマトグラフィーサイクルは、以下の工程:1)カラム平衡化;2)mAb-含有細胞培養上清を用いたカラムローディング;3)カラム洗浄;4)カラム溶出;5)カラムCIP;および6)カラム再生;から更生された。3C-PCC実施からのこのクロマトグラムを、図8に示す。mAbの濃度は、溶出画分において決定され、そして収率および生産性の推定のために使用された(以下の表2を参照)。
【0065】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給液から少なくとも1つの標的化合物を分離するための疑似移動床式プロセス(simulated moving bed process)である方法であって、標的化合物の結合の後に少なくとも1つの吸着材を洗浄し、そしてこの吸着材からの洗浄液の排出物を続いて前記の洗浄により除去された標的化合物を結合させるために別の吸着材上を通過させる、前記方法。
【請求項2】
この方法は、連続して接続された3つまたはそれ以上の吸着材のうちの1またはそれ以上に対して、少なくとも1つの標的化合物を連続的に結合させ、そして標的化合物をこれら3種の吸着材から個別に溶出することを含み;結合の後、洗浄液を各吸着材を横断して通過させ、脱離された標的化合物および/または結合されなかった標的化合物を回収し、そしてその様な洗浄液の排出物を一連の吸着剤の次の次の吸着材に対して移動させ、洗浄した吸着材から標的化合物を溶出することによりこの標的化合物を回収する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の工程:
(a) 少なくとも1つの標的化合物を含む供給液を、第1の吸着材を横断して通過させ、そして流出物を第1の吸着材から第2の吸着材へと移動させる工程;
(b) 供給液を第2の吸着材へと振り向け、そして洗浄液を標的化合物が結合した第1の吸着材を横断して通過させる工程;
(c) 洗浄液流出物を第3の吸着材へと移動させ、そしてその後第2の吸着材からの流出物を第3の吸着材へと移動させる工程;
(d) 第1の吸着材を再生させる工程;
(e) 供給液を第3の吸着材へと振り向け、そして洗浄液を標的化合物が結合した第2の吸着材を横断して通過させる工程;
(f) 洗浄液流出物を第1の吸着材へと移動させ、そしてその後第3の吸着材からの流出物を第1の吸着材へと移動させる工程;
(g) 第2の吸着材を再生させる工程;
(h) 供給液を第1の吸着材へと振り向け、そして洗浄液を標的化合物が結合した第3の吸着材を横断して通過させる工程;
(i) 洗浄液流出物を第2の吸着材へと移動させ、そしてその後第1の吸着材からの流出物を第2の吸着材へと移動させる工程;
(j) 第3の吸着材を再生させる工程;そして
(k) 工程(b)-工程(j)を繰り返す工程;
ここで、少なくとも1つの標的化合物を工程(d)、工程(g)および/または工程(j)において回収する;
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
供給液の振り向けが、バルブ手段により提供される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの吸着材が、クロマトグラフィー樹脂を詰められそして注入口および/または排出口にマルチポート手段を備えられたカラムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
供給液の流速を調節して、各カラムの生産性を向上させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
1またはそれ以上の追加の液体流の流速を調節する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
洗浄工程を、異なるバッファーを用いて行う、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
各吸着材を、複数の洗浄工程により洗浄する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
連続して接続された少なくとも3種の吸着材を含み、各吸着材はカラム中に詰められたクロマトグラフィー樹脂であり、各吸着材に対して液体の注入および排出のための手段が備えられ、そして注入および排出のためのその手段にはバルブ手段が備えられて、少なくとも3つの注入流ならびに少なくとも3つの排出流を付加することを可能する、供給液から少なくとも1つの成分を分離するための液体クロマトグラフィーシステム。
【請求項11】
各吸着材が、標的化合物の検出のための手段を備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
システムが、3種のクロマトグラフィーカラムなど、3種の吸着材を含む、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項13】
吸着材が、同種のクロマトグラフィー樹脂を詰められたクロマトグラフィーカラムなどの同一種の吸着剤である、請求項10〜12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
各吸着材の体積が>1リットルである、請求項10〜13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
各吸着材への注入流間でのバルブの切り替え、各吸着材からの排出流間でのバルブの切り替え、および/または少なくとも1つの液体流の流速を制御するポンプを調節するものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載される方法を調節するためのコンピュータプログラム。
【請求項16】
クロマトグラフィー樹脂を詰められた、少なくとも3種の事前に詰められたクロマトグラフィーカラムの、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法における使用。
【請求項17】
カラムがプロテインA樹脂などのイムノグロブリン-結合樹脂を詰められた、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
カラムが、汚染物質-結合樹脂を詰められたものである、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
事前に詰められたクロマトグラフィーカラムが衛生的なものである、請求項16〜18のいずれか1項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−530068(P2010−530068A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512116(P2010−512116)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際出願番号】PCT/SE2008/000393
【国際公開番号】WO2008/153472
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(509088240)ジーイー・ヘルスケア・バイオ−サイエンシズ・アーベー (22)
【Fターム(参考)】