説明

クロマト分離方法

【課題】原料液中の目的成分を高純度で得る、クロマト分離方法を目的とする。
【解決手段】本発明のクロマト分離方法は、吸着剤が充填された単位充填塔11〜18を直列に連結して、該単位充填塔11〜18に通流された原料液および溶離液が循環可能な循環系10を構成し、原料液を通流して吸着帯域を形成させ、原料液および/または溶離液を任意の単位充填塔に供給し、任意の成分が富化された単位充填塔から画分を抜き出す第一工程と、循環系10を構成する任意の単位充填塔から循環系10内の液を抜き出し、該液を抜き出した単位充填塔の循環方向下流側の単位充填塔に前記液を供給して、循環系10内を循環させ、次いで、循環系10内の液を抜き出す単位充填塔と、抜き出した循環系内の液を供給する単位充填塔とを循環系10の循環方向下流側の単位充填塔に切り替えて循環を行う第二工程と、を有することよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロマト分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クロマトグラフィーの手法により液体中の複数の成分を分離(クロマト分離)する方法が、工業的に利用されている。クロマト分離は、固体の吸着剤を用い、この吸着剤に対する吸着特性の差を利用して、原料液中の成分を分離する。クロマト分離の原理は、吸着剤を充填した充填層に、分離しようとする2以上の成分を含む原料液を供給し、この原料液を水等の溶離液で流下させることで、上記各成分の吸着剤に対する吸着性の違いにより、吸着性の弱い成分(非吸着質成分)は相対的に速く流下し、吸着性の強い成分(吸着質成分)は相対的に遅く流下することで、各成分を含む画分に分離するものである。
【0003】
クロマト分離の方式としては、例えば固定層方式、移動層方式、擬似移動層方式がある。擬似移動層方式は、原料液中に含まれる2以上の成分の中で、特定成分に対して選択的吸着能力を有する吸着剤が充填された複数の単位充填塔を直列に連結し、最下流部の単位充填塔と最上流部の単位充填塔を連結することで無端状になっている循環系に、原料液と溶離液を通流して分離するものである。擬似移動層方式では、循環系内を移動する速度が大きい非吸着質成分を含む画分(非吸着質画分)と循環系内を移動する速度が小さい吸着質成分を含む画分(吸着質画分)をそれぞれ異なる位置から抜き出し、かつ、原料液供給位置、溶離液供給位置、非吸着質画分抜き出し位置、吸着質画分抜き出し位置を、一定の位置関係に保ちながら循環系の循環方向下流側に順次移動させることで、移動層の処理操作を擬似的に実現する装置であることは良く知られている。
【0004】
このような擬似移動層方式のクロマト分離装置では、常に、原料液と溶離液の供給および非吸着質画分と吸着質画分の抜き出しを行いながら循環系を循環しているため、原料液供給ポンプ、溶離液供給ポンプ、非吸着質画分抜き出しポンプ、吸着質画分抜き出しポンプおよび1個以上の循環ポンプを必要とする。特に循環ポンプは一定の単位充填塔間に固定されているため、周期的に吐出流量が変化する。また循環ポンプに流入する流体の濃度および組成も逐次変化するので、それにつれて流体の比重、粘性等の物性も変化する。そして、設定値と実際に流れる流量の差が大きくなるにつれ、分離性能は低下する。このような流量設定値の変更や、物性の変化に合わせて循環ポンプの流量を自動的に制御するためには、高価な制御装置が必要である。
【0005】
上述した循環ポンプの問題に対し、循環ポンプが常に一定の位置になるように、単位充填塔を1本ずつずらして切り替えて、循環ポンプに導入される流体の物性変化が小さくなるようにしたクロマト分離方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
また、循環ポンプを設置するかわりに、循環系の一箇所から原料液および/または溶離液を抜き出し、循環系から抜き出した原料液および/または溶離液(以下、循環流体と言うことがある)を溶離液ポンプまたは原料液供給ポンプに流入させて、循環流体を再び循環系に供給することによって循環を行う、クロマト分離方法が開示されている(例えば、特許文献2)。特許文献2に記載の方法では、充填塔数が少なく、クロマト分離装置を原料液供給ポンプと溶離液供給ポンプの2台で制御でき、ポンプの制御が簡単な、全体として簡素でしかも安価な装置とし、かつ、高い安定した分離性能を得ることができる。
【特許文献1】特公平6−95090号公報
【特許文献2】特開2005−288411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のクロマト分離方法では、原料液供給位置、溶離液供給位置、非吸着質画分抜き出し位置、吸着質画分抜き出し位置の切り替え直前に、循環流体に混入した非吸着質成分が、溶離液供給ラインに残ることがある。そして、次の工程での溶離液供給に伴い、前記非吸着質成分が循環系に供給され、吸着帯域を乱すという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載のクロマト分離方法では、溶離液供給配管や原料液供給配管が、循環流体を循環系に循環させるために使用されている。加えて、循環流体の循環系への循環(循環工程)は、循環系への原料液ならびに溶離液の供給、および、前記循環系からの画分の抜き出しを停止して行う。この際、循環工程の開始時と終了時では、抜き出し箇所の成分濃度が変化している。このため、循環工程を通して、目的の成分濃度の流体を抜き出すことができない。この結果、循環工程開始時に、適切でない成分濃度の流体が供給されるという問題や、循環工程終了時に溶離液供給配管や原料液供給配管に残った液体が、次工程で供給される溶離液や原料液に混入するという問題がある。特に、溶離液供給配管に原料液中の成分が残存していると、これらの成分は次の溶離液を供給する際に、溶離液と共に循環系内に供給されて吸着帯域を乱し、分離性能を低下させる原因となる。
【0008】
また、循環工程終了時の抜き出し位置を成分濃度の低い位置になるように設定した場合、循環工程開始時の抜き出し位置は、成分濃度が比較的高い位置となる。この場合、溶離液供給配管から溶離液が供給され、濃度分布が分断され、分離性能を低下させる原因となる。
【0009】
溶離液供給配管内に、原料液中に含まれる成分が残存しないようにする方法として、循環流体の流量を減らす方法が考えられる。しかし、この方法では、循環工程の後に実施される、非吸着質画分の抜き出し工程の開始直後に、非吸着質画分をほとんど含まない液が出てくることになり、非吸着質画分の抜き出し流量を増やすことになるため、結果として溶離液の使用量が増大する。
【0010】
そこで、本発明は、上記のような従来装置における種々の問題点に着目し、原料液中の目的成分を高純度で得ることができる、クロマト分離方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のクロマト分離方法は、吸着剤が充填された複数の単位充填塔を直列に連結して、該単位充填塔に通流された原料液および溶離液が循環可能な循環系を構成し、2以上の成分を含む原料液を前記循環系に通流して前記吸着剤に対する親和力に従った吸着帯域を形成させ、原料液および/または溶離液を任意の単位充填塔に供給し、任意の成分が富化された単位充填塔から、前記任意の成分の画分を抜き出す第一工程と、前記循環系を構成する任意の単位充填塔から循環系内の液を抜き出し、該液を抜き出した単位充填塔の循環方向下流側の単位充填塔に抜き出した液を供給して、前記循環系内を循環させ、次いで、循環系内の液を抜き出す単位充填塔と、抜き出した循環系内の液を供給する単位充填塔とを前記循環系の循環方向下流側の単位充填塔に切り替えて循環を行う第二工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
前記第一工程と前記第二工程とを繰り返し行い、前記第二工程では、循環系内の液の循環により、任意の成分が富化される部分を循環方向のより下流側の単位充填塔に移動させ、その移動に対応して、前記第一工程は、原料液および/または溶離液を供給する単位充填塔と、前記任意の成分の画分を抜き出す単位充填塔とを循環系の下流側の単位充填塔に、順次移行する移行操作を有し、該移行操作は、第二工程での循環系内の液を抜き出す単位充填塔と、抜き出した循環系内の液を供給する単位充填塔とを前記循環系の循環方向下流側の単位充填塔に切り替えた後に行っても良く、前記第二工程は、前記循環系への原料液ならびに溶離液の供給、および、前記循環系からの画分の抜き出しを停止して行っても良く、循環系内の液を抜き出す単位充填塔を前記循環系の循環方向下流側の単位充填塔に切り替えた後に、抜き出した循環系内の液を供給する単位充填塔を前記循環系の循環方向下流側の単位充填塔に切り替えても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明のクロマト分離方法によれば、原料液中の目的成分を高純度で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のクロマト分離方法について、以下に例を挙げて説明するが、本発明はこれに限られることはない。
【0015】
なお、本明細書中、「循環方向下流側」とは、基点に対して、相対的に、循環系の循環方向の下流であることを意味する。「循環方向下流側」の範囲は特に限定されず、吸着剤の種類や、分離対象とする成分等に応じて「循環方向下流側」の範囲を定めることができる。例えば、「循環方向下流側」の範囲は、基点の循環方向下流側であって、循環系を構成する単位充填塔の50%の単位充填塔が含まれる範囲とすることが好ましく、25%の単位充填塔が含まれる範囲とすることがより好ましい。また、「循環方向上流側」とは、基点に対して、相対的に循環系の循環方向の上流であることを意味する。「循環方向上流側」の範囲は特に限定されず、吸着剤の種類や、分離対象とする成分等に応じて「循環方向上流側」の範囲を定めることができる。例えば、「循環方向上流側」の範囲は、基点の循環方向上流側であって、循環系を構成する単位充填塔の50%の単位充填塔が含まれる範囲とすることが好ましく、25%の単位充填塔が含まれる範囲とすることがより好ましい。
【0016】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態にかかるクロマト分離装置8の模式図である。図1に示すとおり、クロマト分離装置8は、吸着剤を充填した8本の単位充填塔11〜18(以下、総じて単位充填塔と言うことがある)が配管111〜118により直列に連結され、循環系10が形成された擬似移動層方式のクロマト分離装置である。
【0017】
単位充填塔11は、配管111により、バルブR1を介して単位充填塔12と接続され、単位充填塔12は、配管112により、バルブR2を介して単位充填塔13と接続されている。単位充填塔13は、配管113により、バルブR3を介して単位充填塔14と接続され、単位充填塔14は、配管114により、バルブR4を介して単位充填塔15と接続されている。単位充填塔15は、配管115により、バルブR5を介して単位充填塔16と接続され、単位充填塔16は、配管116により、バルブR6を介して単位充填塔17と接続されている。単位充填塔17は、配管117により、バルブR7を介して単位充填塔18と接続され、単位充填塔18は、配管118により、バルブR8を介して単位充填塔11と接続されている。配管111〜118には、逆止弁101が設けられている。こうして、単位充填塔11〜18と、配管111〜118と、バルブR1〜R8と、逆止弁101とにより循環系10が構成されている。
【0018】
原料液貯槽32には、配管34、36が接続され、配管34、36は分岐39で配管38に接続されている。配管34には、ポンプPFが備えられ、配管36には、バルブF0が設けられている。配管38には、分岐配管51〜58が接続され、分岐配管51〜58には、それぞれバルブF1〜F8(以下、総じて原料液供給弁Fと言うことがある)が設けられている。分岐配管51は配管118と、分岐配管52は配管111と、分岐配管53は、配管112と、分岐配管54は配管113と、分岐配管55は配管114と、分岐配管56は配管115と、分岐配管57は配管116と、分岐配管58は配管117と、それぞれ接続されている。そして、ポンプPF、配管34、38、分岐配管51〜58、バルブF1〜F8により、原料液の供給手段が構成されている。また、原料液貯槽32、ポンプPF、配管34、36、バルブF0により、原料液循環ライン31が構成されている。
【0019】
溶離液貯槽42には、配管44が接続され、配管44には、ポンプPDが備えられている。配管44には、分岐配管61〜68が接続され、分岐配管61〜68には、それぞれバルブD1〜D8(以下、総じて溶離液供給弁Dと言うことがある)が設けられている。分岐配管61は配管118と、分岐配管62は配管111と、分岐配管63は配管112と、分岐配管64は配管113と、分岐配管65は配管114と、分岐配管66は配管115と、分岐配管67は配管116と、分岐配管68は配管117と、それぞれ接続されている。配管46は、ポンプPDの一次側の分岐45で、配管44と接続されている。そして、ポンプPD、配管44、分岐配管61〜68、バルブD1〜D8により、溶離液の供給手段が構成されている。
【0020】
流下させた非吸着質画分が通流する配管70には、分岐配管71〜78(以下、総じて分岐配管Aと言うことがある)と、非吸着質画分流出配管79とが接続されている。分岐配管71〜78には、それぞれバルブA1〜A8(以下、総じて抜き出し弁Aと言うことがある)が設けられている。分岐配管71は配管111と、分岐配管72は配管112と、分岐配管73は配管113と、分岐配管74は配管114と、分岐配管75は配管115と、分岐配管76は配管116と、分岐配管77は配管117と、分岐配管78は配管118と、それぞれ接続されている。また、非吸着質画分流出配管79には、ポンプPAが備えられている。
【0021】
流下させた吸着質画分が通流する配管80には、分岐配管81〜88(以下、総じて分岐配管Cと言うことがある)と、吸着質画分流出配管89とが接続されている。分岐配管81〜88には、それぞれバルブC1〜C8(以下、総じて抜き出し弁Cと言うことがある)が設けられている。分岐配管81は配管111と、分岐配管82は配管112と、分岐配管83は配管113と、分岐配管84は配管114と、分岐配管85は配管115と、分岐配管86は配管116と、分岐配管87は配管117と、分岐配管88は配管118と、それぞれ接続されている。また、吸着質画分流出配管89には、ポンプPCが備えられている。
【0022】
循環系10内を循環する流体(循環流体)が通流する配管90は、分岐配管91〜98(以下、総じて分岐配管Zと言うことがある)と接続されている。分岐配管91〜98には、バルブZ1〜Z8(以下、総じて抜き出し弁Zと言うことがある)が設けられている。分岐配管91は配管111と、分岐配管92は配管112と、分岐配管93は配管113と、分岐配管94は配管114と、分岐配管95は配管115と、分岐配管96は配管116と、分岐配管97は配管117と、分岐配管98は配管118と、それぞれ接続されている。また、配管90は、配管46と接続されている。
【0023】
単位充填塔11〜18には、吸着剤が充填されている。該吸着剤は、原料液に含まれる2以上の成分に対して、選択的吸着能力を有するものであれば特に限定されず、例えば、イオン交換樹脂、シリカゲル、ODS(オクタデシル基結合シリカゲル;長鎖脂肪族のオクタデシル基が導入されたシリカゲル)、合成吸着剤等を挙げることができる。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、単位充填塔11〜18には、同一の吸着剤を充填しても良いし、それぞれに異なる吸着剤を充填しても良い。吸着剤の種類と組み合わせは、分離対象となる成分に応じて決定することができる。
【0024】
クロマト分離装置8を用いた、クロマト分離方法について説明する。本実施形態におけるクロマト分離方法は、2以上の成分を含む原料液を循環系10に通流して吸着帯域を形成させ、原料液および溶離液を任意の単位充填塔に供給し、非吸着質画分と吸着質画分を抜き出す第一工程を有する。加えて、循環系10内から抜き出した循環流体を循環系10に供給して循環させ、次いで、循環系10内の液を抜き出す単位充填塔と、抜き出した循環系10内の液を供給する単位充填塔とを前記循環系10の循環方向下流側の単位充填塔に切り替えて循環する第二工程を有する。
【0025】
[第一工程]
第一工程は、原料液を循環系に通流して吸着帯域を形成させ、原料液および/または溶離液を任意の単位充填塔に供給し、任意の成分が富化された単位充填塔から画分(非吸着質画分および吸着質画分)を抜き出す工程である。
第一工程では、原料液30をポンプPFにより配管34、38を通流させて、いずれかの原料液供給弁Fを開とし、対応する単位充填塔に原料液30を供給する。同時に、溶離液40をポンプPDにより配管44を流通させて、いずれかの溶離液供給弁Dを開とし、対応する単位充填塔に溶離液40を供給する。そして、非吸着質画分が富化している単位充填塔の直下に位置する抜き出し弁Aを開、吸着質画分が富化している単位充填塔の直下に位置する抜き出し弁Cを開とする。こうして、原料液30と溶離液40とを循環系10に通流することにより、非吸着質画分は、開とした抜き出し弁A、分岐配管A、配管70、ポンプPAを経由して、非吸着質画分流出配管79から流出する。また、吸着質画分は、開とした抜き出し弁C、分岐配管C、配管80、ポンプPCを経由して、吸着質画分流出配管89から流出する。
【0026】
[第二工程]
第二工程は、循環系を構成する任意の単位充填塔から、循環流体を抜き出し、抜き出した循環流体を前記循環系に供給して前記循環系内を循環させ(第一処理)、次いで、循環流体を抜き出す単位充填塔と、抜き出した循環流体を供給する単位充填塔とを前記循環系の循環方向下流側の単位充填塔に切り替えて循環を行う(第二処理)工程である。
本実施形態の第二工程は、上述の第一工程と平行して行われる。第二工程では、バルブR1〜R8(以下、総じて遮断弁Rと言うことがある)のいずれかであって、第一工程で溶離液40を供給する単位充填塔と、該単位充填塔の循環方向上流側に位置する単位充填塔とを接続している配管が有する遮断弁Rを閉とする。また、該遮断弁Rを有する配管と、配管90とを接続している分岐配管Zが有する抜き出し弁Zを開とする。そして、溶離液40を供給する単位充填塔よりも循環方向上流側に位置する単位充填塔に対応する抜き出し弁Zから循環流体を抜き出す。抜き出された循環流体は、配管90から配管46を通流し、分岐45で溶離液40と合流し、ポンプPDにより配管44に流され、溶離液40と共に単位充填塔に再び供給される。こうして、循環系10から抜き出された循環流体は、溶離液の供給手段により循環系10に供給され循環する(第一処理)。
【0027】
任意の期間、第一処理が行われた後、原料液供給弁F、抜き出し弁A、抜き出し弁Cは、上述の第一処理の状態を維持したまま、開とする溶離液供給弁Dと抜き出し弁Zと、閉とする遮断弁Rとを循環系10の循環方向下流側の溶離液供給弁D、抜き出し弁Z、遮断弁Rに切り替える。そして、切り替え後の遮断弁Rの循環方向上流側に位置する単位充填塔に対応する抜き出し弁Zから、循環流体を抜き出す。抜き出された循環流体は、配管90から配管46を通流し、分岐45で溶離液40と合流し、ポンプPDにより配管44に流され、溶離液40と共に単位充填塔に再び供給される。こうして、循環流体を抜き出す単位充填塔と、循環流体を供給する単位充填塔とを循環系の循環方向下流側の単位充填塔に切り替えて、循環流体は循環系に循環される(第二処理)。
【0028】
任意の期間、第二処理が行われた後、抜き出し弁Z、遮断弁Rは、上述の第二処理の状態を維持したまま、開とする原料液供給弁Fと抜き出し弁Aと抜き出し弁Dとを循環系10の循環方向下流側の原料液供給弁F、抜き出し弁A、抜き出し弁Dに切り替える。このようにして、原料液30と溶離液40とを供給する単位充填塔と、非吸着質画分と吸着質画分とを抜き出す単位充填塔とを循環系10のより下流側の充填塔に移行させる。そして、原料液と溶離液とを循環系に通流させ、連続的に非吸着質画分と吸着質画分とに分離する。なお、本実施形態では、開とする原料液供給弁Fと抜き出し弁Aと抜き出し弁Dとを循環系10の循環方向下流側の原料液供給弁F、抜き出し弁A、抜き出し弁Dに切り替える操作が、「移行操作」に相当する。
【0029】
上述の第一工程と第二工程における各バルブおよび各ポンプの動作の一例について、表1を用いて以下に説明する。表1中、バルブのF、D、A、C、Zの項に記載した番号は、「開」としたバルブを示し、「−」は全てのバルブが「閉」であることを示している。例えば、Fの項で「1」と記載されている場合は、原料液供給弁Fの内、バルブF1のみが「開」となっていることを示す。表1中、バルブのRの項に記載された番号は、「閉」としたバルブを示している。例えば、Rの項に「1」と記載されている場合は、遮断弁Rの内、バルブR1のみが「閉」となっていることを示す。また、ポンプの項では、「○」は運転状態を示している。
【0030】
【表1】

【0031】
[操作1−1]
表1に示すとおり、操作1−1では、バルブF1、D5、A2、C6、Z4を開とし、バルブR4を閉とする。次いで、原料液30を単位充填塔11に供給し、溶離液40を単位充填塔15に供給する。この間、単位充填塔12で富化した非吸着質画分は、流下して配管112、分岐配管71、配管70の順に通流して、非吸着質画分流出管79から流出する。また、単位充填塔16で富化した吸着質画分は、流下して配管116、分岐配管86、配管80との順に通流して、吸着質画分流出管89から流出する。従って、この操作は、原料液を循環系に通流して吸着帯域を形成させ、原料液および/または溶離液を任意の単位充填塔に供給し、任意の成分が富化された単位充填塔から画分(非吸着質画分および吸着質画分)を抜き出す、第一工程に相当する。
【0032】
同時に、単位充填塔14から抜き出された循環流体は、配管114、分岐配管94、配管90、配管46の順に通流し、分岐45で配管44に至る。そして、前記循環流体は溶離液40と合流し、ポンプPDによって、配管44、分岐配管65の順に通流し、単位充填塔15に供給される。供給された循環流体は、単位充填塔15、配管115、単位充填塔16、配管116、単位充填塔17、配管117、単位充填塔18、配管118、単位充填塔11、配管111、単位充填塔12、配管112、単位充填塔13、配管113、単位充填塔14の順に通流し、循環系10内を循環する。従って、この操作は、循環系を構成する任意の単位充填塔から循環流体を抜き出し、抜き出した循環流体を循環系に供給して循環系内を循環させる、第二工程の第一処理に相当する。
【0033】
[操作1−2]
表1に示すとり、操作1−2では、バルブF1、D6、A2、C6、Z5を開とし、バルブR5を閉とする。即ち、原料液供給弁F、抜き出し弁A、抜き出し弁Cは、上述の第二工程の第一処理における状態を維持したまま、開とする溶離液供給弁D、抜き出し弁Zと、閉とする遮断弁Rとを循環系10の循環方向下流側の溶離液供給弁D、抜き出し弁Z、遮断弁Rに切り替える。単位充填塔15から抜き出された循環流体は、配管115、分岐配管95、配管90、配管46の順に通流し、分岐45で配管44に至る。そして、前記循環流体は溶離液40と合流し、ポンプPDによって、配管44、分岐配管66の順に通流し、単位充填塔16に供給される。供給された循環流体は、単位充填塔16、配管116、単位充填塔17、配管117、単位充填塔18、配管118、単位充填塔11、配管111、単位充填塔12、配管112、単位充填塔13、配管113、単位充填塔14、配管114、単位充填塔15の順に通流し、循環系10内を循環する。従って、この操作は、第二工程の第一処理の後、循環流体を抜き出す単位充填塔および循環流体を供給する単位充填塔を循環系の循環方向下流側の単位充填塔に切り替えて循環を行う、第二工程の第二処理に相当する。
【0034】
[操作2−1]
表1に示すように、操作2−1では、バルブF2、D6、A3、C7、Z5を開とし、バルブR5を閉とする。この結果、原料液の供給位置、溶離液の供給位置、非吸着質画分の抜き出し位置、吸着質画分の抜き出し位置が、循環系10の循環方向下流側に移動され、非吸着質画分と吸着質画分との抜き出しが行われる。
【0035】
以上のようなバルブ切り替えによる一連の操作1−1〜1−2では、原料液ならびに溶離液の供給位置、非吸着質画分ならびに吸着質画分の抜き出し位置、および、循環流体の抜き出し位置は、ある特定の位置関係を保って行われる。このような一連の操作1−1〜1−2が終了すると、前述の特定の位置関係を維持しつつ、制御対象となる各バルブを循環方向下流側に1単位充填塔分だけ移行し、次の一連の操作2−1〜2−2を行う。この移行を順次行うことにより、擬似移動層方式クロマト分離装置の運転を行う。
【0036】
[操作2−1以降]
表1に示すとおり、操作1−1〜1−2に続く操作2−1〜2−2、操作3−1〜3−2、操作4−1〜4−2、操作5−1〜5−2、操作6−1〜6−2、操作7−1〜7−2、操作8−1〜8−2では、開とする原料液供給弁F、抜き出し弁A、抜き出し弁C、抜き出し弁Zと、閉とする遮断弁Rとを順次、循環系の循環方向下流側の原料液供給弁F、抜き出し弁A、抜き出し弁C、抜き出し弁Z、遮断弁Rに切り替えて、操作1−1〜1−2と同様の操作を行う。操作1−1〜8−2までの操作が行われると、クロマト分離の1サイクルが終了する。
【0037】
原料液30は、2以上の成分を含むものであれば特に限定されず、例えば、ショ糖製造途中における糖液や、生体抽出物、微生物醗酵により得られる培養液等を挙げることができる。
【0038】
溶離液40としては、原料液中の各成分を単位充填塔内に流下させ、かつ、分離対象とする成分を適切に分離できるものであれば特に限定されず、目的に応じて決定することができる。例えば、水、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性水溶液、塩酸水溶液等の酸性水溶液、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール類等を挙げることができる。溶離液は、これらの一種を単独で溶離液としても良いし、二種以上を混合した混合溶液を溶離液としても良い。また、溶離液は、酸、塩基、緩衝剤、塩を含んでいても良い。
【0039】
第一工程における、原料液30の単位充填塔への供給量は特に限定されず、分離対象とする成分や、単位充填塔に充填した吸着剤の種類、吸着帯域の状態等を勘案して決定することが好ましい。第一工程における溶離液40の単位充填塔への供給量は特に限定されず、分離対象とする成分や、単位充填塔に充填した吸着剤の種類、吸着帯域の状態等を勘案して決定することが好ましい。
【0040】
第二工程における、循環流体の単位充填塔への通液量は特に限定されず、分離対象とする成分や、単位充填塔に充填した吸着剤の種類、吸着帯域の状態等を勘案して決定することが好ましい。
【0041】
第二工程の第一処理における循環流体の抜き出す単位充填塔は、循環流体における、原料液30の成分(非吸着質画分、吸着質画分)が、相対的に最も低い濃度である循環流体が得られる単位充填塔とすることが好ましい。また、第二工程の第一処理の期間は特に限定されず、抜き出される循環流体における、非吸着質画分および吸着質画分の濃度が上昇しない範囲で設定することができる。抜き出される循環流体に、原料液30の成分が高濃度に含まれていると、循環層10内の吸着帯を乱し、その後の操作で得られる非吸着質画分および吸着質画分の純度が低下するためである。
【0042】
第二工程の第二処理の期間は特に限定されず、抜き出される循環流体における、非吸着質画分または吸着質画分の濃度が上昇しない範囲で設定することができる。
【0043】
上記クロマト分離方法においては、ポンプPFおよびポンプPDは、定流量吐出設定としてもよいし、流量制御を行ってもよい。
【0044】
本実施形態のクロマト分離方法によれば、第二工程において第二処理を行うことで、原料液の成分が、相対的に最も低い濃度、即ち、溶離液に近い物性である循環流体を継続的に抜き出して、循環系に循環することができる。また、第二処理で循環系に供給される循環流体は、第一処理の際よりも循環系の循環方向下流側の単位充填塔から抜き出すため、原料液の成分の含有量を少なくすることができる。加えて、第二工程の第二処理の後、開とする原料液供給弁Fと抜き出し弁Aと抜き出し弁Dとを循環系の循環方向下流側の原料液供給弁F、抜き出し弁A、抜き出し弁Dに切り替える移行操作を行い、非吸着質画分と吸着質画分との抜き出しを行う。このため、溶離液の供給手段に、原料液の成分が高濃度に残存することがない。即ち、非吸着質成分、吸着質成分のいずれもが富化されていない単位充填塔に、原料液中の非吸着質画分相当の成分と吸着質画分相当の成分とが高濃度に供給されて、循環系に形成された吸着帯域を乱すことを防止できる。この結果、高純度の非吸着質画分および吸着質画分を連続的に得ることができる。
【0045】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態にかかるクロマト分離装置300の模式図である。図2に示すとおり、クロマト分離装置300は、吸着剤を充填した4本の単位充填塔311〜314(以下、総じて単位充填塔と言うことがある)が配管321〜324により直列に連結され、循環系310が形成された擬似移動層方式のクロマト分離装置である。
【0046】
単位充填塔311は、配管321により、バルブr1を介して単位充填塔312と接続され、単位充填塔312は、配管322により、バルブr2を介して単位充填塔313と接続されている。単位充填塔313は、配管323により、バルブr3を介して単位充填塔314と接続され、単位充填塔314は、配管324により、バルブr4を介して単位充填塔311と接続されている。配管321〜324には、逆止弁301が設けられている。こうして、単位充填塔311〜314、配管321〜324と、バルブr1〜r4と、逆止弁301とにより、循環系310が構成されている。
【0047】
原料液貯槽32には、配管334、336が接続され、配管334、336は分岐339で配管338に接続されている。配管334には、ポンプPfが備えられ、配管336には、バルブf0が設けられている。配管338は、分岐配管351〜354と接続され、分岐配管351〜354には、それぞれバルブf1〜f4(以下、総じて原料液供給弁fと言うことがある)が設けられている。分岐配管351は配管324と、分岐配管352は配管321と、分岐配管353は配管322と、分岐配管354は配管323と、それぞれ接続されている。そして、ポンプPf、配管334、338、分岐配管351〜354、バルブf1〜f4により、原料液の供給手段が構成されている。また、原料液貯槽32、ポンプPf、配管334、336、バルブf0により、原料液循環ライン330が構成されている。
【0048】
溶離液貯槽42には、配管344が接続され、配管344には、ポンプPdが備えられている。配管344は、分岐配管361〜364と接続され、分岐配管361〜364には、それぞれバルブd1〜d4(以下、総じて溶離液供給弁dと言うことがある)が設けられている。分岐配管361は配管324と、分岐配管362は配管321と、分岐配管363は配管322と、分岐配管364は配管323と、それぞれ接続されている。配管346は、ポンプPdの一次側の分岐345で、配管344と接続されている。配管346には、溶離液貯槽42と分岐345の間に、バルブd0が設けられている。そして、ポンプPd、配管344、分岐配管361〜364、バルブd0〜d4により、溶離液の供給手段が構成されている。
【0049】
流下させた非吸着質画分が通流する配管370には、分岐配管371〜374(以下、総じて分岐配管aと言うことがある)と、非吸着質画分流出配管379とが接続されている。分岐配管371〜374には、それぞれ、バルブa1〜a4(以下、総じて抜き出し弁aと言うことがある)が設けられている。分岐配管371は配管321と、分岐配管372は配管322と、分岐配管373は配管323と、分岐配管374は配管324と、それぞれ接続されている。
【0050】
流下させた吸着質画分が通流する配管380には、分岐配管381〜384(以下、総じて分岐配管cと言うことがある)と、吸着質画分流出配管389とが接続されている。分岐配管381〜384には、それぞれバルブc1〜c4(以下、総じて抜き出し弁cと言うことがある)が設けられている。分岐配管381は配管321と、分岐配管382は配管322と、分岐配管383は配管323と、分岐配管384は配管324と、それぞれ接続されている。
【0051】
循環流体が通流する配管390には、分岐配管391〜394(以下、総じて分岐配管zと言うことがある)が接続されている。分岐配管391〜394には、それぞれバルブz1〜z4(以下、総じて抜き出し弁zと言うことがある)が設けられている。分岐配管391は配管321と、分岐配管392は配管322と、分岐配管393は配管323と、分岐配管394は配管324と、それぞれ接続されている。また、配管390は、配管346と接続されている。
【0052】
単位充填塔311〜314に充填されている吸着剤は、第一の実施形態における単位充填塔11〜18に充填されている吸着剤と同様である。また、単位充填塔311〜314は、同一の吸着剤を充填しても良いし、それぞれに異なる吸着剤を充填しても良い。吸着剤の種類と組み合わせは、分離対象となる成分に応じて決定することができる。
【0053】
クロマト分離装置300を用いた、クロマト分離方法について説明する。本実施形態におけるクロマト分離方法は、2以上の成分を含む原料液を循環系310に通流して吸着帯域を形成させ、原料液および溶離液を任意の単位充填塔に供給し、非吸着質画分と吸着質画分を抜き出す第一工程を有する。加えて、循環系310への原料液ならびに溶離液の供給、および、前記循環系310からの画分の抜き出しを停止し、循環系310内から抜き出した循環流体を循環系310に供給して循環させ、次いで、循環系310内の液を抜き出す単位充填塔と、抜き出した循環系310内の液を供給する単位充填塔とを前記循環系310の循環方向下流側の単位充填塔に切り替えて循環する第二工程を有する。
【0054】
[第一工程]
第一工程は、原料液を循環系に通流して吸着帯域を形成させ、原料液および/または溶離液を任意の単位充填塔に供給し、任意の成分が富化された単位充填塔から画分(非吸着質画分および吸着質画分)を抜き出す工程である。
第一工程では、原料液30をポンプPfにより配管334、338を通流させて、いずれかの原料液供給弁fを開とし、対応する単位充填塔に原料液30を供給する。そして、抜き出し位置に相当し、非吸着質画分が富化している単位充填塔に対応する抜き出し弁aを開とし、かつ、バルブr1〜r4(以下、総じて遮断弁rと言うことがある)のいずれかであって、該非吸着質画分が富化している単位充填塔の循環方向下流側に位置する遮断弁rを閉とする。こうして、供給された原料液30と略等量の非吸着質画分が抜き出される。そして、抜き出された非吸着質画分は、開とした抜き出し弁a、分岐配管a、配管370を経由して、非吸着質画分流出配管379から流出する。
【0055】
次いで、バルブf0を開、バルブf1〜f4を閉とし、循環系310への原料液30の供給を停止する。その後、溶離液40をポンプPdにより配管344を流通させて、いずれかの溶離液供給弁dを開とし、対応する単位充填塔に溶離液40を供給する。そして、吸着質画分が富化している単位充填塔の直下に位置する抜き出し弁cを開とする。こうして、供給された溶離液40と略等量の吸着質画分が抜き出される。抜き出された吸着質画分は、開とした抜き出し弁c、分岐配管c、配管380を経由して、吸着質画分流出配管389から流出する。
【0056】
次いで、バルブf0を開、バルブf1〜f4を閉とし、循環系310への原料液30の供給を停止した状態とし、抜き出し弁cを全て閉とする。その後、溶離液40をポンプPdにより配管344を流通させて、いずれかの溶離液供給弁dを開とし、対応する単位充填塔に溶離液40を供給する。そして、非吸着質画分が富化している単位充填塔の直下に位置する抜き出し弁aを開とする。こうして、供給された溶離液40と略等量の非吸着質画分が抜き出される。抜き出された非吸着質画分は、開とした抜き出し弁a、分岐配管a、配管370を経由して、非吸着質画分流出配管379から流出する。
【0057】
[第二工程]
第二工程は、循環系を構成する任意の単位充填塔から、循環流体を抜き出し、抜き出した循環流体を前記循環系に供給して前記循環系内を循環させ(第一処理)、次いで、循環流体を抜き出す単位充填塔と、抜き出した循環流体を供給する単位充填塔とを前記循環系の循環方向下流側の単位充填塔に切り替えて循環を行う(第二処理)工程である。
本実施形態の第二工程は、循環系310への原料液30ならびに溶離液40の供給、および、非吸着質画分ならびに吸着質画分の抜き出しを停止して行われる。第二工程では、第一工程で溶離液40を供給する単位充填塔と、該単位充填塔の循環方向上流側に位置する単位充填塔とを接続している配管が有する遮断弁rを閉とする。また、該遮断弁rを有する配管と、配管390とを接続している分岐配管zが有する抜き出し弁zを開とする。前記の溶離液40を供給する単位充填塔の循環方向上流側に位置する単位充填塔に対応する抜き出し弁zから循環流体を抜き出す。抜き出された循環流体は、配管390から配管346を通流し、分岐345で溶離液40と合流し、ポンプPdにより配管344に流され、溶離液40を供給する単位充填塔に再び供給される。こうして、循環流体は、溶離液の供給手段により、循環系310に供給されて循環する(第一処理)。
【0058】
任意の期間、第一処理を行った後、原料液供給弁f、抜き出し弁a、抜き出し弁cは、上述の第一処理の状態を維持したまま、開とする溶離液供給弁dと抜き出し弁zと、閉とする遮断弁rとを循環系310の循環方向下流側の溶離液供給弁d、抜き出し弁z、遮断弁rに切り替える。そして、切り替え後の遮断弁rの循環方向上流側に位置する単位充填塔に対応する抜き出し弁zから循環流体を抜き出す。抜き出された循環流体は、配管390から配管346を通流し、分岐345で溶離液40と合流し、ポンプPdにより配管344に流され、溶離液40を供給する単位充填塔に再び供給される。こうして、循環流体を抜き出す単位充填塔と、循環流体を供給する単位充填塔とを循環系の循環方向下流側に切り替えて、該循環流体は循環系に循環される(第二処理)。
【0059】
任意の期間、第二処理が行われた後、溶離液供給弁d、抜き出し弁z、遮断弁rは、上述の第二処理の状態を維持したまま、開とする原料液供給弁fと抜き出し弁aと抜き出し弁cを循環系310の循環方向下流側の原料液供給弁f、抜き出し弁a、抜き出し弁cに切り替える。このようにして、原料液30と溶離液40とを供給する単位充填塔と、非吸着質画分と吸着質画分とを抜き出す単位充填塔とを循環系310のより下流側の充填塔に移行させる。そして、再び第一工程が行われる。なお、本実施形態では、開とする原料液供給弁fと抜き出し弁aと抜き出し弁cを循環系310の循環方向下流側の原料液供給弁f、抜き出し弁a、抜き出し弁cに切り替えて移行する操作が、「移行操作」に相当する。
【0060】
上述の第一工程と第二工程における各バルブおよび各ポンプの動作の一例について、表2を用いて以下に説明する。表2中、バルブのf、d、a、c、zの項に記載した番号は、「開」としたバルブを示し、「−」は全てのバルブが「閉」であることを示している。例えば、fの項で「1」と記載されている場合は、原料液供給弁fの内、バルブf1のみが「開」となっていることを示す。表2中、バルブのrの項に記載された番号は、「閉」としたバルブを示している。例えば、rの項に「1」と記載されている場合は、遮断弁Rの内、バルブr1のみが「閉」となっていることを示す。また、ポンプの項では、「○」は運転状態を示し、「−」は停止状態を示している。
【0061】
【表2】

【0062】
[操作I−1]
表2に示すとおり、操作I−1では、バルブf1、a1を開、バルブr1を閉とする。ポンプPfを運転状態とし、ポンプPdは停止状態とする。原料液30は、ポンプPfにより、配管334、配管338、分岐配管351を順に通流し、単位充填塔311に供給される。単位充填塔311に供給された原料液30は、単位充填塔311で富化した非吸着質画分を流下させる。流下した非吸着質画分は、配管321、分岐配管371、配管370の順に通流して、非吸着質画分流出管379から流出する。従って、この操作は、原料液を循環系に通流して吸着帯域を形成させ、原料液を任意の単位充填塔に供給し、任意の成分が富化された単位充填塔から画分(非吸着質画分)を抜き出す、第一工程に相当する。
【0063】
[操作I−2]
表2に示すとおり、操作I−2では、バルブf0、d0、d3、c3を開、バルブr3を閉とし、ポンプPf、Pdを運転状態とする。原料液30は、ポンプPfにより配管334から、配管336を通流し、原料液貯槽32に戻されるように循環される。溶離液40は、ポンプPdにより、配管344、分岐配管363を通流し、単位充填塔313に供給される。単位充填塔313に供給された溶離液40は、単位充填塔313で富化した吸着質画分を流下させる。流下した吸着質画分は、配管323、分岐配管383、配管380の順に通流し、吸着質画分流出管389より流出する。従って、この操作は、溶離液を任意の単位充填塔に供給し、任意の成分が富化された単位充填塔から画分(吸着質画分)を抜き出す、第一工程に相当する。
【0064】
[操作I−3]
表2に示すとり、操作I−3では、バルブf0、d0、d3、a1を開、バルブr1を閉とし、ポンプPf、Pdを運転状態とする。原料液30は、ポンプPfにより配管334から、配管336を通流し、原料液貯槽32に戻されるように循環される。溶離液40は、ポンプPdにより、配管344、分岐配管363を通流し、単位充填塔313に供給される。単位充填塔313に供給された溶離液40は、配管323、単位充填塔314、配管324、単位充填塔311との順に通流する。そして、溶離液40は、単位充填塔311で富化した非吸着質画分を流下させる。流下した非吸着質画分は、配管321、分岐配管371、配管370の順に通流して、非吸着質画分流出管379から流出する。従って、この操作は、溶離液を任意の単位充填塔に供給し、任意の成分が富化された単位充填塔から画分(非吸着質画分)を抜き出す、第一工程に相当する。
【0065】
[操作I−4]
表2に示すとおり、操作I−4では、バルブf0、d3、z2を開、バルブr2を閉とし、ポンプPf、Pdを運転状態とする。原料液30は、ポンプPfにより配管334から、配管336を通流し、原料液貯槽32に戻されるように循環している。溶離液40は、バルブd0を閉として、溶離液貯槽32からの循環系310への供給を停止している。また、全ての抜き出し弁aと、全ての抜き出し弁cを閉とし、非吸着質画分、吸着質画分の抜き出しを停止している。循環流体は、単位充填塔312から、配管322、分岐配管392、配管390、配管346を通流し、分岐345で配管344に流入する。そして、前記循環流体は、ポンプPdにより配管344、分岐配管363、配管322を通流し、単位充填塔313に供給される。供給された循環流体は、単位充填塔313、配管323、単位充填塔314、配管324、単位充填塔311、配管321、単位充填塔312の順に通流し、循環系310内を循環する。従って、この操作は、循環系への原料液ならびに溶離液の供給、および、前記循環系からの画分の抜き出しを停止して、循環系を構成する任意の単位充填塔から循環流体を抜き出し、抜き出した循環流体を循環系に供給して循環系内を循環させる、第二工程の第一処理に相当する。
【0066】
[操作I−5]
表2に示すとおり、操作I−5では、バルブf0、d4、z3を開、バルブr3を閉とし、ポンプPf、Pdを運転状態とする。即ち、上述の操作I−4のバルブf0を開とする状態を維持したまま、開とする溶離液供給弁d、抜き出し弁z、遮断弁rが、循環系310の循環方向下流側に切り替える。原料液30は、ポンプPfにより配管334から、配管336を通流し、原料液貯槽32に戻されるように循環している。溶離液40は、バルブd0を閉として、溶離液貯槽42からの循環系310への供給を停止している。また、全ての抜き出し弁aと、全ての抜き出し弁cを閉とし、非吸着質画分、吸着質画分の抜き出しを停止している。
【0067】
循環流体は、単位充填塔313から、配管323、分岐配管393、配管390、配管346を通流し、分岐345で配管344に流入する。そして、前記循環流体は、ポンプPdにより配管344、分岐配管364、配管323を通流し、単位充填塔314に供給される。供給された循環流体は、単位充填塔314、配管324、単位充填塔311、配管321、単位充填塔312、配管322、単位充填塔313の順に通流し、循環系310内を循環する。従って、この操作は、第二工程の第一処理の後に、循環流体を抜き出す単位充填塔および循環流体を供給する単位充填塔を循環系の循環方向下流側の単位充填塔に切り替えて循環を行う、第二工程の第二処理に相当する。
【0068】
以上のようなバルブ切り替えによる一連の操作I−1〜I−5では、原料液ならびに溶離液の供給位置、非吸着質画分ならびに吸着質画分の抜き出し位置、および、循環流体の抜き出し位置は、ある特定の位置関係を保って行われる。このような一連の操作I−1〜I−5が終了すると、前述の特定の位置関係を維持しつつ、制御対象となる各バルブを循環方向下流側に1単位充填塔分だけ移行し、次の一連の操作II−1〜II−5を行う。この移行を順次行うことにより、擬似移動層方式クロマト分離装置の運転を行う。
【0069】
表2に示すとおり、操作I−1〜I−5に続く操作II−1〜II−5、操作III−1〜III−5、操作IV−1〜IV−5では、開とする原料液供給弁f、抜き出し弁a、抜き出し弁c、抜き出し弁zと、閉とする遮断弁rとを順次、循環系の循環方向下流側の原料液供給弁f、抜き出し弁a、抜き出し弁c、抜き出し弁z、遮断弁rに切り替えて、操作I−1〜I−5と同様の操作を行う。操作I−1〜IV−5までが実行されると、クロマト分離の1サイクルが終了する。
【0070】
第一工程における、原料液30の単位充填塔への通液量は、非吸着質画分が富化された単位充填塔から、非吸着質画分の全量を抜き出せる量であれば特に限定されない。第一工程における、原料液40の単位充填塔への通液量は、非吸着質画分または吸着質画分が富化された単位充填塔から、非吸着質画分または吸着質画分の全量を抜き出せる量であれば特に限定されない。第一工程における原料液30、溶離液40の通液量は、分離対象とする成分と、単位充填塔に充填した吸着剤の種類等を勘案して決定することが好ましい。
【0071】
第二工程における、循環流体の単位充填塔への通液量は特に限定されず、分離対象とする成分や、単位充填塔に充填した吸着剤の種類等を勘案して決定することが好ましい。
【0072】
第二工程の第一処理における、循環流体の抜き出す単位充填塔は、循環流体における、原料液30の成分(非吸着質画分、吸着質画分)が、相対的に最も低い濃度である循環流体が得られる単位充填塔とすることが好ましい。また、第二工程の第一処理の期間は特に限定されず、抜き出される循環流体における、非吸着質画分および吸着質画分の濃度が上昇しない範囲で設定することができる。抜き出される循環流体に、原料液30の成分が高濃度に含まれていると、循環系310内の吸着帯を乱し、その後の操作で得られる非吸着質画分および吸着質画分の純度が低下するためである。
【0073】
第二工程の第二処理の期間は特に限定されず、抜き出される循環流体における、非吸着質画分または吸着質画分の濃度が上昇しない範囲で設定することができる。
【0074】
上記クロマト分離方法においては、ポンプPfおよびポンプPdは、定流量吐出設定としてもよいし、流量制御を行ってもよい。
【0075】
本実施形態のクロマト分離方法において、第一工程では、抜き出し対象となる非吸着質画分または吸着質画分の全量が抜き出される。このため、抜き出し対象とする画分に的を絞って、分離および抜き出すことができ、非吸着質画分と吸着質画分とを同時に分離、抜き出し対象とする場合に比べ、少ない単位充填塔の数で高精度の分離が可能となる。また、1つの対象画分の全量を抜き出すため、2つの画分を同時に抜き出す場合のような、非吸着質画分と吸着質画分との抜き出し量のバランスを考慮する必要がなく、抜き出し側には、流量制御手段や背圧制御手段が不要となる。この結果、少ない単位充填塔数、抜き出し側の簡素化により、クロマト分離装置全体として大幅に簡素化される。
【0076】
また、本実施形態のクロマト分離方法において、第二工程では、原料液と溶離液の供給、および、非吸着質画分と吸着質画分の抜き出しを行わずに、循環系において分離対象となる成分を展開し、吸着帯域を形成させる。このため、所望の状態の吸着帯域を的確かつ容易に形成することができ、より高純度の非吸着質画分と吸着質画分を得ることができる。
【0077】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。第一、第二の実施形態の第二工程においては、溶離液供給手段を用いて循環系から抜き出した循環流体を循環系に供給しているが、循環流体の供給手段はこれに限られず、原料液供給手段を用いても良いし、別途設置された循環手段を用いて循環系に供給しても良い。
【0078】
第一、第二の実施形態では、第二工程の第二処理は、循環流体を供給する単位充填塔の循環方向下流側の単位充填塔への切り替えと、循環流体を抜き出す単位充填塔の循環方向下流側の単位充填塔への切り替えとを同時に行っている。しかし、循環流体を抜き出す単位充填塔を循環方向下流側の単位充填塔へ切り替えた後に、循環流体を供給する単位充填塔を循環方向下流側の単位充填塔に切り替えても良い。かかる切り替え方式を採用することで、溶離液の供給手段に残存した原料液中の成分が、非吸着質画分および吸着質画分のいずれも富化されていない循環方向下流側の単位充填塔に供給されることを防ぐ。この結果、循環系の吸着帯域に新たな吸着帯が形成されて、吸着帯域の乱れが生じることを防止することができる。
【0079】
第一の実施形態では単位充填塔を8本とし、第二の実施形態では単位充填塔を4本としているが、単位充填塔の数は4本以上であればこれに限られない。
【0080】
第二の実施形態の第二工程では、原料液30は、原料液循環ライン330を循環しているが、ポンプPfを停止して、原料液30の循環系310への供給を停止しても良い。ただし、原料液30の粘度の維持等のために、原料液循環ライン330に原料液30を循環させることが好ましい。また、第一の実施形態においても、必要に応じて、原料液30は、原料液循環ライン31を循環させても良い。
【0081】
第一、第二の実施形態における原料液循環ライン同様の、溶離液循環ラインが設けられていても良い。
【0082】
第二の実施形態では、溶離液貯槽42と分岐345の間に設けられたバルブd0を閉じて、第二工程を行っているが、循環系310内の液の循環を円滑に行うため、バルブd0の開度を調節しながら第二工程を行ってもよい。
【0083】
第二の実施形態では、第一工程と第二工程とを交互に繰り返して行っているが、本発明はこれに限られず、第一工程の間に第二工程を行ってもよい。例えば、第二の実施形態における操作I−1〜I−5の順序は、操作I−1→操作I−3→操作I−4→操作I−5→操作I−2としてもよい。また、例えば、操作I−1→操作I−3→操作I−4→操作I−2→操作I−4→操作I−5としてもよい。かかる操作の順序は、原料液に含まれる成分の種類や、単位充填塔のサイズや数を勘案して、適切な組み合わせとすることができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、実施例に限定されるものではない。
【0085】
(製造例1)クロマト分離装置の製造
内径20mm、高さ0.9mの円筒形のジャケット付きステンレス製カラムに、吸着剤としてカルシウム型強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライト(商品名)CR1220、ローム・アンド・ハース社製)1.13Lを充填して、4本の単位充填塔を作製した。作成した単位充填塔を用い、図2に示したクロマト分離装置300と同様のクロマト分離装置Aを製造した。前記単位充填塔のジャケットには、恒温水槽と接続した。
【0086】
(実施例1)
クロマト分離装置Aの各単位充填塔のジャケットに温水を通流させ、単位充填塔内を60℃に保持した。次いで、原料液を表2に示したバルブ操作に従い、また、下記に示す運転条件(1サイクルあたりの量として記載)により、グルコースを非吸着質画分、フルクトースを吸着質画分とするクロマト分離を行った。原料液には、グルコース52質量%、フルクトース42質量%、二糖類6質量%からなる、全糖濃度60質量%の糖液を用いた。また、溶離液には純水を用いた。クロマト分離は、20サイクルを繰り返し行った後、定常状態に至ったとみなし、非吸着質画分および吸着質画分を採取し、糖組成ならびに回収率を測定し、その結果を表4に示す。
【0087】
<運転条件>
(1)原料液供給量・・・・・・・・・・・・・・・・・0.023L
(2)溶離液供給量・・・・・・・・・・・・・・・・・0.230L
(3)原料液供給に伴う非吸着質画分抜き出し量・・・・0.023L
(4)溶離液供給に伴う非吸着質画分抜き出し量・・・・0.112L
(5)吸着質画分抜き出し量・・・・・・・・・・・・・0.118L
(6)第二工程第一処理の循環流体の流量・・・・・・・0.380L
(7)第二工程第二処理の循環流体の流量・・・・・・・0.380L
(8)1サイクルあたりの時間・・・・・・・・・・・・0.44H
【0088】
(比較例1)
クロマト分離装置Aの各単位充填塔のジャケットに温水を通流させ、単位充填塔内を60℃に保持した。次いで、原料液を表3に示したバルブ操作に従い、操作i−1〜iv−4を1サイクルとし、また、下記に示す運転条件(1サイクルあたりの量として記載)により、グルコースを非吸着質画分、フルクトースを吸着質画分とするクロマト分離を行った。原料液には、グルコース52質量%、フルクトース42質量%、二糖類6質量%からなる、全糖濃度60質量%の糖液を用いた。溶離液には純水を用いた。クロマト分離は、20サイクルを繰り返し行った後、定常状態に至ったとみなし、非吸着質画分および吸着質画分を採取して、糖組成ならびに回収率を測定し、その結果を表4に示す。
【0089】
<運転条件>
(1)原料液供給量・・・・・・・・・・・・・・・・0.023L
(2)溶離液供給量・・・・・・・・・・・・・・・・0.230L
(3)非吸着質画分抜き出し量・・・・・・・・・・・0.135L
(4)吸着質画分抜き出し量・・・・・・・・・・・・0.118L
(5)第二工程の循環流体の流量・・・・・・・・・・0.760L
(6)1サイクルあたりの時間・・・・・・・・・・・0.44H
【0090】
【表3】

【0091】
(全糖量)
原料液および非吸着質画分、吸着質画分の全糖量は、Brix計を用いて測定した。
【0092】
(糖組成)
原料液および非吸着質画分、吸着質画分における糖組成は、HPLC(LC−VPシリーズ、株式会社島津製作所製)により下記条件にて、測定した。
[測定条件]
カラム:TSKgel SCX、東ソー株式会社製
溶離液:純水
流速:0.8mL/min
サンプル量:10μL
温度:60℃
検出器:示差屈折計(RI)
【0093】
(回収率)
回収率は、原料液中の各成分が、非吸着質画分と吸着質画分に含まれる比率をもって表した。
【0094】
【表4】

【0095】
表4に示す非吸着質画分と吸着質画分の組成から、実施例1の非吸着質画分は、目的とするグルコースの全糖中の組成が87.5質量%であった。また、実施例1の吸着質画分は、目的とするフルクトースの全糖中の組成が98.0質量%であった。対して比較例1の非吸着質画分は、グルコースの全糖中の組成が86.1質量%であった。また、比較例1の吸着質画分は、フルクトースの全糖中の組成が、97.6質量%であった。この結果、第二工程で第二処理を行った実施例1では、比較例1に比べ、非吸着質画分中のグルコース濃度および吸着質画分中のフルクトース濃度が高いことから、目的成分を高純度に分離できることが判った。
【0096】
表4に示す非吸着質画分と吸着質画分の回収率から、実施例1では、添加したフルクトースの95.2質量%が吸着質画分に含まれていた。加えて、添加した二糖類の6.6質量%が、吸着質画分に含まれていた。対して、比較例1では、添加したフルクトースの93.0質量%が、吸着質画分に含まれていた。加えて、添加した二糖類の12.3質量%が、吸着質画分に含まれていた。この結果、第二工程で第二処理を行った実施例1では、比較例1に比べ、吸着質画分に分離される二糖類を低減させ、吸着質画分におけるフルクトースの純度向上が図れていることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかるクロマト分離装置を示す模式図である。
【図2】本発明の第二の実施形態にかかるクロマト分離装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0098】
8、300 クロマト分離装置
10、310 循環系
11〜18、311〜314 単位充填塔
34、36、38、44、46、70、80、90、111〜118、321〜324、334、336、338、370、380、390 配管
51〜58、61〜68、71〜78、81〜88、91〜98、351〜354、361〜364、371〜374、381〜384、391〜394 分岐配管
101、301 逆止弁
RF、RD、PA、PC、Pf、Pd ポンプ
F0〜F8、f0〜f4、D1〜D8、d0〜d4、A1〜A8、a1〜a4、C1〜C8、c1〜c4、Z1〜Z8、z1〜z4、R1〜R8、r1〜r4 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤が充填された複数の単位充填塔を直列に連結して、該単位充填塔に通流された原料液および溶離液が循環可能な循環系を構成し、2以上の成分を含む原料液を前記循環系に通流して前記吸着剤に対する親和力に従った吸着帯域を形成させ、原料液および/または溶離液を任意の単位充填塔に供給し、任意の成分が富化された単位充填塔から、前記任意の成分の画分を抜き出す第一工程と、
前記循環系を構成する任意の単位充填塔から循環系内の液を抜き出し、該液を抜き出した単位充填塔の循環方向下流側の単位充填塔に抜き出した液を供給して、前記循環系内を循環させ、次いで、循環系内の液を抜き出す単位充填塔と、抜き出した循環系内の液を供給する単位充填塔とを前記循環系の循環方向下流側の単位充填塔に切り替えて循環を行う第二工程と、を有するクロマト分離方法。
【請求項2】
前記第一工程と前記第二工程とを繰り返し行い、
前記第二工程では、循環系内の液の循環により、任意の成分が富化される部分を循環方向のより下流側の単位充填塔に移動させ、
その移動に対応して、前記第一工程は、原料液および/または溶離液を供給する単位充填塔と、前記任意の成分の画分を抜き出す単位充填塔とを循環系の下流側の単位充填塔に、順次移行する移行操作を有し、
該移行操作は、第二工程での循環系内の液を抜き出す単位充填塔と、抜き出した循環系内の液を供給する単位充填塔とを前記循環系の循環方向下流側の単位充填塔に切り替えた後に、行うことを特徴とする、請求項1に記載のクロマト分離方法。
【請求項3】
前記第二工程は、前記循環系への原料液ならびに溶離液の供給、および、前記循環系からの画分の抜き出しを停止して行うことを特徴とする、請求項1または2に記載のクロマト分離方法。
【請求項4】
前記第二工程は、循環系内の液を抜き出す単位充填塔を前記循環系の循環方向下流側の単位充填塔に切り替えた後に、抜き出した循環系内の液を供給する単位充填塔を前記循環系の循環方向下流側の単位充填塔に切り替えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のクロマト分離方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−293956(P2009−293956A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145012(P2008−145012)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】