説明

クロマン誘導体及び当該化合物を含有する液晶組成物

【課題】 液晶組成物との相溶性に優れ、誘電率異方性が負であってその絶対値が大きな液晶化合物を提供し当該化合物を用いた誘電率異方性が負であってその絶対値が大きな液晶組成物をを提供することである。
【解決手段】 一般式(I)
【化1】


で表されるクロマン誘導体及び当該化合物を含有する液晶組成物を提供する。本願発明の化合物により構成される液晶組成物は誘電率異方性の絶対値が大きい特徴を有し、結晶の析出等が発生しにくいことから、当該液晶組成物を構成部材とする液晶表示素子は垂直配向方式、IPS等の液晶表示素子として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、液晶組成物の構成部材として有用なトリフルオロナフタレン系液晶化合物及び当該化合物を含有する誘電率異方性が負でその絶対値が大きい液晶組成物及びそれを用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、低電圧作動、薄型表示等の優れた特徴から現在広く用いられている。従来の液晶表示素子の表示方式にはTN(ねじれネマチック)、STN(超ねじれネマチック)、又はTNをベースにしたアクティブマトリックス(TFT:薄膜トランジスタ)等があり、これらは誘電率異方性値が正の液晶組成物を利用するものである。しかし、これら表示方式の欠点の一つとして視野角の狭さがあり、近年高まっている液晶パネルの大型化の要求に伴い、その改善が大きな課題となっている。
【0003】
この解決策として近年、垂直配向方式、IPS(インプレインスイッチング)等の表示方式が新たに実用化されてきた。垂直配向方式は液晶分子の垂直配向を利用して視野角の改善を図った方式であり、誘電異方性値が負の液晶組成物が使用される。またIPSは、ガラス基板に対して水平方向の横電界を用いて液晶分子をスイッチングさせることで視野角の改善を図った方法であり、誘電異方性値が正又は負の液晶組成物が使用される。このように、視野角改善のために有効な表示方式である垂直配向方式及びIPSには誘電率異方性値が負である液晶化合物ならびに液晶組成物が必要であり、強く要望されるようになってきた。従来、誘電率異方性が負の液晶組成物は、2,3-ジフルオロフェニレン基を有する化合物が主として用いられてきた(特許文献1参照)。しかしながら、この化合物を用いた液晶組成物は誘電率異方性の絶対値が十分大きくない問題を有していた(特許文献2参照)。
【0004】
誘電率異方性の絶対値の大きい化合物として、1,7,8−トリフルオロナフタレン骨格を有する液晶化合物(特許文献3参照)が開示されている。しかし、この化合物は誘電率異方性の絶対値は大きいものの、ナフタレン骨格を有していることから屈折率異方性が大きく、屈折率異方性が小さい液晶組成物への応用は困難であった。
【0005】
一方、クロマン環を有しΔεが負の化合物については、既に液晶組成物として応用されている(特許文献4参照)。一般に、誘電率異方性の絶対値を増大するためにはΔεの絶対値の大きい化合物を多く添加する必要がある。しかしながら、このような化合物は液晶組成物としての相溶性が必ずしも良好ではなく添加量に制限を受けるか又は低温における安定性が十分とは言えなかった。
以上より、負の誘電率異方性の絶対値が大きく、液晶組成物との相溶性に優れた液晶化合物の開発が求められていた。
【0006】
【特許文献1】特表平2−503441号公報(8頁実施例)
【特許文献2】特開平10−176167号公報(10頁実施例)
【特許文献3】独国特許出願公開第19522195号
【特許文献4】国際公開第2005/000995号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
誘電率異方性が負であってその絶対値が大きく液晶組成物との相溶性に優れた化合物を提供し、当該化合物を用いた低温安定性に優れた液晶組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは種々のクロマン誘導体を合成しその物性を検討した結果、連結基に側鎖を有するジフルオロクロマン誘導体が前述の課題を解決できることを見出し本件発明を完成するに至った。
本願発明は、一般式(I)
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Raは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基、炭素原子数1から7の直鎖状アルコキシル基、炭素原子数2から7の直鎖状アルケニル基又は炭素原子数2から7の直鎖状アルケニルオキシ基を表し、Rbは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基又は炭素原子数2から7の直鎖状アルケニル基を表し、Za及びZbはそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、又は-CF2O-を表し、Xa及びXbは、Xaが水素原子を表しXbがメチル基を表すか又は、Xaがメチル基を表しXbが水素原子を表し、Aa及びAbはそれぞれ独立的にトランス-1,4-シクロヘキシレン基又は1,4-フェニレン基を表し、m及びnはそれぞれ独立的に0又は1を表すが、m及びnの少なくとも一方は0を表す。)で表されるジフルオロクロマン誘導体及び当該化合物を構成部材とする誘電率異方性が負のネマチック液晶組成物、更に当該液晶組成物を構成部材とする液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液晶組成物は誘電率異方性が負であってその絶対値が大きい特徴を有し、組成物の低温安定性にも優れることから、当該液晶組成物を用いた表示素子は垂直配向方式、インプレーンスイッチング(IPS)方式等の液晶表示素子として有用である。また、本発明のトリフルオロナフタレン誘導体は誘電率異方性が負であって、その絶対値が大きく、垂直配向方式、IPS方式等向けの液晶組成物の構成部材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
一般式(I)において、Raは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基又は炭素原子数2から7の直鎖状アルケニル基が好ましく、炭素原子数1から5の直鎖状アルキル基又は炭素原子数2から5の直鎖状アルケニル基がより好ましく、アルキル基においてはエチル基、プロピル基、ブチル基及びペンチル基がさらに好ましく、アルケニル基では以下の式(a)〜(e)の構造がさらに好ましく、
【0013】
【化2】

【0014】
(構造式は右端で環に連結しているものとする。)
エチル基、プロピル基、ブチル基及びペンチル基が特に好ましい。
Rbは炭素原子数1から5の直鎖状アルキル基又は炭素原子数2から5の直鎖状アルケニル基が好ましく、アルキル基においてはエチル基、プロピル基、ブチル基及びペンチル基がより好ましく、アルケニル基では式(a)〜(e)の構造がより好ましく、エチル基、プロピル基、ブチル基及びペンチル基が特に好ましい。m及びnは、mが1又は0を表しnが0を表すことが好ましく、mが1表しnが0を表すことがより好ましい。m又はnが1を表す場合、Za及びZbは単結合又は-CH2CH2-が好ましいが少なくとも一方は単結合であることが好ましく、共に単結合であることがより好ましい。Aa及びAbはトランス-1,4-シクロヘキシレン基が好ましい。
一般式(I)で表される化合物は、具体的には以下の一般式(I-1)及び一般式(I-2)で表される化合物
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、Ra及びRbはそれぞれ独立して炭素原子数1から5の直鎖状アルキル基又は炭素原子数2から5の直鎖状アルケニル基を表す。)が特に好ましく、一般式(I-1)が更に好ましい。
本願発明の誘電率異方性が負のネマチック液晶組成物は、構成成分として一般式(I)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、一般式(II)
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、Rcは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基又は炭素原子数2から7の直鎖状アルケニル基を表し、Rdは炭素原子数1から12の直鎖状アルキル基、炭素原子数2から12の直鎖状アルケニル基、炭素原子数1から12の直鎖状アルコキシル基又は炭素原子数3から12の直鎖状アルケニルオキシ基を表し、p3は0又は1を表し、Mb及びMcはそれぞれ独立的に単結合、-OCO-、-COO-又は-CH2CH2-を表し、Gcはトランス-1,4-シクロヘキシレン基又は1,4-フェニレン基を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有する。
【0019】
一般式(II)において、Rcは炭素原子数2から7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2から5の1-アルケニル基又は炭素原子数4から5の3-アルケニル基が好ましく、直鎖状アルキル基としてはエチル基、プロピル基、ブチル基又はペンチル基がより好ましく、1-アルケニル基としてはビニル基又はトランス-1-プロペニル基がより好ましく、3-アルケニル基としては3-ブテニル基又はトランス-3-ペンテニル基がより好ましい。Rdは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2から5の1-アルケニル基、炭素原子数4から5の3-アルケニル基、炭素原子数1から3の直鎖状アルコキシル基が好ましい。Mbが存在する場合には、Mb及びMcの少なくとも一方は単結合が好ましい。
【0020】
一般式(II)で表される化合物としては以下の一般式(II-1)から一般式(II-14)で表される化合物が好ましく、一般式(II-1)、一般式(II-2)、一般式(II-3)、一般式(II-4)、一般式(II-5)又は一般式(II-6)で表される化合物がより好ましく、一般式(II-1)、一般式(II-3)又は一般式(II-6)で表される化合物が特に好ましい。
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立的に炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2から3の1-アルケニル基又は炭素原子数4から5の3-アルケニル基を表し、R3は炭素原子数1から5の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から4の直鎖状2-アルケニル基を表し、R4は炭素原子数1から3の直鎖状アルキル基又は炭素原子数4から5の3-アルケニル基を表し、R5は炭素原子数1から3の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から4の直鎖状2-アルケニル基を表す。)
本発明の液晶組成物においては一般式(I)で表される化合物を組成物中に1質量%(以下組成物中の%は質量%を表す)以上50%以下含有することが好ましく、2%から40%含有することがより好ましく、4から30%含有することがさらに好ましい。一般式(II)で表される化合物を10%から70%含有することが好ましく、20%から50%含有することがより好ましい。
本発明の液晶組成物において一般式(III)
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、Reは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基を表し、Rfは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基、炭素原子数1から7の直鎖状アルコキシル基又は炭素原子数3から7の直鎖状アルケニルオキシ基を表し、p4は0又は1を表し、Md及びMeはそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-、-OCO-又は-COO-を表し、Gdはトランス-1,4-シクロヘキシレン基あるいは1から2個のフッ素により置換されていてもよい1,4-フェニレン基を表す。)で表される2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン誘導体の1種又は2種以上を含有していても良い。
【0025】
一般式(III)において、Reは炭素原子数2から7の直鎖状アルキル基が好ましい。Rfは炭素原子数1から5の直鎖状アルキル基又は炭素原子数1から5の直鎖状アルコキシル基が好ましく、炭素原子数1から4の直鎖状アルキル基又は炭素原子数1から4の直鎖状アルコキシル基が特に好ましい。MdがMd及びMeのうち一方は単結合であり、他方は単結合、-CH2CH2-、-COO-又は-CF2O-であることが好ましい。
一般式(III)には多くの化合物が含まれるが、以下の一般式(III-1)から一般式(III-7)で表される化合物が好ましい。
【0026】
【化7】

【0027】
上式中、R6は炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基を表し、R7は炭素原子数1から5の直鎖状アルキル基又は炭素原子数1から4の直鎖状アルコキシル基を表す。
また、本発明の液晶組成物において、一般式(IV)から一般式(VIII)
【0028】
【化8】

【0029】
(式中、Rg、Ri、Rk及びRmはそれぞれ独立的に炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基を表し、Rh、Rj、及びRnはそれぞれ独立的に炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基、炭素原子数1から7の直鎖状アルコキシル基又は炭素原子数3から7の直鎖状アルケニルオキシ基を表し、Rlは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基を表し、Roは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基、炭素原子数1から7の直鎖状アルコキシル基又は炭素原子数2から7の直鎖状アルケニル基、炭素原子数3から7の直鎖状アルケニルオキシ基を表し、Rpは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基又は炭素原子数2から7の直鎖状アルケニル基を表し、Xa及びXbはそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表し、p5、p6、p7及びp8はそれぞれ独立的に0又は1を表し、p9及びp10はそれぞれ独立的に0、1又は2を表し、p9及びp10の合計は1又は2であり、Mf、Mg、Mh、Mi、Mj、Mk、Ml、Mm及びMnはそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-、-OCO-又は-COO-を表し、Moは単結合又は-CH2CH2-を表し、Ge、Gf、Gg、Gh、Gi及びGjはそれぞれ独立的にトランス-1,4-シクロヘキシレン基又は1から2個のフッ素により置換されていてもよい1,4-フェニレン基を表し、Gi、Gj、Mn及びMoが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)で表される化合物の1種又は2種以上を含有していても良い。
【0030】
一般式(IV)から一般式(VIII)において、Rg、Ri、Rk、Rm及びRpは炭素原子数2から7の直鎖状アルキル基が好ましい。Rh、Rj、Rn及びRoは炭素原子数1から5の直鎖状アルキル基、直鎖状アルコキシル基が好ましい。Rlは炭素原子数1から3の直鎖状アルキル基が好ましい。Mf及びMg、Mh及びMi、Mj及びMk、Ml及びMmはそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-又は-COO-を表すが、一方は単結合であることが好ましく、他方は単結合、-CH2CH2-又は-COO-であることが好ましい。Mnは単結合、-CH2CH2-、-CH2O-又は-CF2O-が好ましい。
【0031】
かくして得られる本願発明の液晶組成物においてそのネマチック相上限温度(TN-I)が70℃以上、より好ましくは75℃以上であり、ネマチック相下限温度(T>N)が-20℃以下である。
【0032】
本発明において、一般式(I-1)で表される化合物について、製造例を以下に挙げる。勿論本発明の主旨、及び適用範囲は、これら製造例により制限されるものではない。
(製法1) Xaがメチル基を表しXbが水素原子を表す化合物の合成
一般式(IX)で表されるケトン誘導体
【0033】
【化9】

(式中、Ra、Aa、Za及びmは一般式(I)におけると同じ意味を表す。)に、一般式(X)
【0034】
【化10】

(式中、Rqはアルキル基を表す。)で表されるホスホン酸エステル及び水素化ナトリウム等の強塩基から調製される,ホルナー-エモンズ試薬を反応させることにより一般式(XI)
【0035】
【化11】

(式中、Ra、Aa、Za及びmは一般式(I)におけると同じ意味を表し、Rqはアルキル基を表す。)で表されるα,β-不飽和エステル誘導体を得た後、二重結合をパラジウム/炭素等の金属触媒存在下に水素により還元し一般式(XII)
【0036】
【化12】

(式中、Ra、Aa、Za及びmは一般式(I)におけると同じ意味を表し、Rqはアルキル基を表す。)で表されるエステルを得た後、水素化アルミニウムリチウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムなどの還元剤を作用させて還元することにより、一般式(XIII)
【0037】
【化13】

(式中、Ra、Aa、Za及びmは一般式(I)におけると同じ意味を表す。)で表されるアルコールを得る。これに、ピリジン、トリエチルアミン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン、ジアザビシクロオクタンなどの塩基存在下、塩化ベンゼンスルホニル、塩化p-トルエンスルホニル、塩化メタンスルホニル又は塩化トリフルオロメタンスルホニルなどを作用させるか、あるいは硫酸酸性下、臭化水素酸、ヨウ化水素酸を作用させるか、あるいは塩化チオニル、臭化チオニルを作用させるか、あるいは三塩化リン、五塩化リン、三臭化リンを作用させるか、あるいはトリフェニルホスフィン存在下、四塩化炭素、四臭化炭素を作用させるなどして、一般式(XIV)
【0038】
【化14】

(式中、Ra、Aa、Za及びmは一般式(I)におけると同じ意味を表し、Xは塩素、臭素、ヨウ素、ベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基又はトリフルオロメタンスルホニル基などの脱離基を表す。)で表される化合物を得る。得られた一般式(XIV)と一般式(XV)
【0039】
【化15】

(式中、Rb、Ab、Zb及びnは一般式(I)におけると同じ意味を表す。)で表される化合物をを金属ナトリウム、金属カリウム、金属セシウム、あるいはその炭酸塩、水酸化物、水素化物などの存在下、反応させることにより、一般式(I)で表される化合物を得ることができる。
(製法2) Xaが水素原子を表しXbがメチル基を表す化合物の合成
一般式(XVI)
【0040】
【化16】

(式中、Ra、Aa、Za及びmは一般式(I)におけると同じ意味を表す。)で表されるケトン誘導体に塩化メトキシメチルトリフェニルホスホニウムから調製したイリドを作用させた後、加水分解することにより、一般式(XVII)
【0041】
【化17】

(式中、Ra、Aa、Za及びmは一般式(I)におけると同じ意味を表す。)で表されるアルデヒドを得る。一般式(XVII)に一般式(X)で表されるホスホン酸エステル及び水素化ナトリウム等の強塩基から調製される,ホルナー-エモンズ試薬を反応させることにより一般式(XVIII)
【0042】
【化18】

(式中、Ra、Aa、Za及びmは一般式(I)におけると同じ意味を表し、Rqはアルキル基を表す。)で表されるα,β-不飽和エステル誘導体を得た後、、二重結合をパラジウム/炭素等の金属触媒存在下に水素により還元し一般式(XIX)
【0043】
【化19】

(式中、Ra、Aa、Za及びmは一般式(I)におけると同じ意味を表し、Rqはアルキル基を表す。)で表されるエステルを得た後、水素化アルミニウムリチウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムなどの還元剤を作用させて還元することにより、一般式(XX)
【0044】
【化20】

(式中、Ra、Aa、Za及びmは一般式(I)におけると同じ意味を表す。)で表されるアルコールを得る。これに、ピリジン、トリエチルアミン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン、ジアザビシクロオクタンなどの塩基存在下、塩化ベンゼンスルホニル、塩化p-トルエンスルホニル、塩化メタンスルホニル又は塩化トリフルオロメタンスルホニルなどを作用させるか、あるいは硫酸酸性下、臭化水素酸、ヨウ化水素酸を作用させるか、あるいは塩化チオニル、臭化チオニルを作用させるか、あるいは三塩化リン、五塩化リン、三臭化リンを作用させるか、あるいはトリフェニルホスフィン存在下、四塩化炭素、四臭化炭素を作用させるなどして、一般式(XXI)
【0045】
【化21】

(式中、Ra、Aa、Za及びmは一般式(I)におけると同じ意味を表し、Xは塩素、臭素、ヨウ素、ベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基又はトリフルオロメタンスルホニル基などの脱離基を表す。)で表される化合物を得る。得られた一般式(XXI)と一般式(XV)で表される化合物をを金属ナトリウム、金属カリウム、金属セシウム、あるいはその炭酸塩、水酸化物、水素化物などの存在下、反応させることにより、一般式(I)で表される化合物を得ることができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。化合物の構造は、核磁気共鳴スペクトル(NMR)、質量スペクトル(MS)等により確認した。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
化合物記載に下記の略号を使用する。
Me :メチル基
Et :エチル基
Pr :プロピル基
Bu :ブチル基
Pen :ペンチル基
SBMEA :水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム
Ms :メタンスルホニル基
Py :ピリジン
又、相転移温度の記載において次の記号を使用する。
C 結晶相
N ネマチック相
S 未知のスメクチック相
I 等方性液体相
(実施例1) 7,8-ジフルオロ-2-ペンチル-6-(3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)ブトキシ)クロマン(I-1)の合成
【0047】
【化22】

【0048】
(1−1) 3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)-2-ブテン酸エチル(2)の合成
水素化ナトリウム(60%鉱物油分散物、17.6 g、0.440 mol)のトルエン(200 ml)懸濁溶液を10 ℃以下に冷却しながら激しく攪拌している中に、その温度を保ちながら、ジエチルホスホノ酢酸エチル(99.6 g、0.440 mol)を滴下して加えた。10 ℃以下に保ちながら1-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)エタノン(1) (100.0 g、0.399 mol)のトルエン(200 ml)溶液を滴下して加えた。2時間加熱還流した後、水を滴下して加えて反応を停止させた。トルエンで有機層を抽出し(3回)、集めた有機層を3 M塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、そのままその溶液をカラム(シリカゲル、トルエン)により精製し、さらに減圧蒸留(160-210℃、1.0 KPa)し3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)-2-ブテン酸エチル(2)の微黄色液体を得た。
収量 129.3 g (収率 92.0%)
【0049】
(1−2) 3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)ブタン酸エチル(3)の合成
(以下、オートクレーブ中で行う。)(1-1)で得た化合物(2)(129.3 g、0.368 mol)のエタノール/酢酸エチル(200 ml/200 ml)混合溶液中に、5 %パラジウム−炭素(50%含水物、12.6 g)を加えた後、水素圧(0.5 MPa)下、室温で6時間攪拌した。粉末セルロースを用いて触媒を濾別した後、濾液を減圧濃縮し、3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)ブタン酸エチル(3)の微黄色液体を得た。
収量 133.3 g (収率 定量的)
【0050】
(1−3) 3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)ブタノール(4)の合成
(1-2)で得た化合物(3) (133.3 g、0.368 mol)のトルエン(400 ml)溶液を、室温で激しく攪拌している中に、70%水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミン酸ナトリウムトルエン溶液(SBMEA、120.0 g、0.416 mol)を滴下して加えた。室温で1時間攪拌を続けた後、水に滴下して加えて反応を停止させた。析出した固体が溶解するまで3 M塩酸を加えた後、酢酸エチルで抽出し(3回)、集めた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)ブタノール(4)の薄黄色液体を得た。
収量 108.0 g (収率 定量的)
【0051】
(1−4) メタンスルホン酸3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)ブチル(5)の合成
(1-3)で得た化合物(4) (108.0 g、0.368 mol)のジクロロメタン(300 ml)溶液に、水冷下、メタンスルホニルクロリド(31.0 ml、0.401 mol)を滴下して加えた後、さらにその温度を保ったままピリジン(35.5 ml、0.439 mol)を滴下して加えた。続けて4-ジメチルアミノピリジン(5.4 g、0.044 mol)を加えた後、室温で8時間攪拌を続けた。反応液に水を加えて反応を停止させた後、有機層を分離し、水層からジクロロメタンで抽出した(2回)。集めた有機層を3 M塩酸、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた液体をカラム(アルミナ、トルエン)を用いて精製し、さらに再結晶(ヘキサン)することにより、メタンスルホン酸3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)ブチル(5)の白色固体を得た。
収量 103.0 g (収率 75.4%)
【0052】
(1−5) 7,8-ジフルオロ-2-ペンチル-6-(3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)ブトキシ)クロマン(I-1)の合成
(以下、窒素雰囲気中で行う。) 7,8-ジフルオロ-2-ペンチルクロマン-6-オール(6) (14.3 g、0.056 mol)のDMF(300 ml)溶液に、無水リン酸三カリウム(23.7 g、0.112 mol)を加えた後、(1-4)で得たメタンスルホン酸3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)ブチル(5) (20.0 g、0.056 mol)を加えた。2時間加熱還流した後、室温まで冷却し、水を滴下して加えて反応を停止させた。トルエンで抽出し(3回)、集めた有機層を、3 M塩酸、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、そのままの溶液をカラム(シリカゲル+アルミナ、トルエン)を用いて精製し、再結晶(アセトン)することにより、7,8-ジフルオロ-2-ペンチル-6-(3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)ブトキシ)クロマン(I-1)の白色粉末を得た。収量 25.2 g (収率 87.1%)
1H-NMR (400MHz, CDCl3) d (ppm) 0.77-2.02 (m, 43H, CH+CH2+CH3), 0.85 (t, J=7.2Hz, 3H, CH3), 2.60-2.80 (m, 2H, CH2), 3.88-3.99 (m, 3H, CH2O+CHO), 6.38 (dm, J=6.4Hz, 1H, ArH)、純度 99.9%(GC)、
相転移温度(℃) C 91.5 (S 55 N 76.5) I
(実施例2) 7,8-ジフルオロ-2-ペンチル-6-(2-メチル-3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)プロポキシ)クロマン(I-2)の合成
【0053】
【化23】

【0054】
(2−1) トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシルアセトアルデヒド(8)の合成
(以下、窒素雰囲気下で行う。)メトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド(7) (370 g、1.079 mol)のテトラヒドロフラン(THF、740 ml)溶液を氷冷下で激しく攪拌している中に、内温を保ちながらt-ブトキシカリウム(121 g、1.078 mol)のTHF(600 ml)溶液を滴下して加えた。内温を保ちながら30分間激しく攪拌を続けた後、内温を保ちながら4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロシクロヘキサノン(1、200 g、0.899 mol)のTHF(400 ml)溶液を滴下して加えた。内温を保ちながら1時間激しく攪拌を続けた後、水を滴下して加えて反応を停止させ、ヘキサン、メタノールを加えた後、有機層を分離し、水層をヘキサンで抽出した(2回)。集めた有機層を、50%メタノール水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、カラム(シリカゲル、ヘキサン)を用いて精製することにより薄黄色の液体を得た(224.7 g)。
【0055】
得られた液体のTHF(300 ml)溶液を室温で激しく攪拌している中に、3 M塩酸(300 ml)を加えた後、2時間加熱還流した。室温まで放冷した後、有機層を分離し、水層をヘキサンで抽出した(2回)。集めた有機層を、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、薄黄色の液体を得た(211.8 g)。
【0056】
得られた液体のメタノール(400 ml)溶液を氷冷下で激しく攪拌している中に、内温を保ちながら10%水酸化ナトリウム水溶液(40 ml)を滴下して加えた後、さらに内温を保ちながら1時間攪拌を続けた。内温を保ちながら水を滴下して加えて反応を停止させ、酢酸エチルを加えた後、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した(2回)。集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、再結晶(メタノール)することによりトランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシルアセトアルデヒド(8)の白色固体を得た。
収量 210 g (収率 95.8%)
【0057】
(2−2) 2-メチル-3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)アクリル酸エチル(9)の合成
水素化ナトリウム(60%鉱物油分散物、8.4 g、0.210 mol)のトルエン(120 ml)懸濁溶液を10 ℃以下に冷却しながら激しく攪拌している中に、その温度を保ちながら、2-ホスホノプロピオン酸トリエチル(50.0 g、0.210 mol)を滴下して加えた。10 ℃以下に保ちながら(2-1)で得たトランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシルアセトアルデヒド(8) (46.1 g、0.189 mol)のトルエン(90 ml)溶液を滴下して加えた。2時間加熱還流した後、水を滴下して加えて反応を停止させた。トルエンで有機層を抽出し(3回)、集めた有機層を3 M塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、そのままその溶液をカラム(シリカゲル、トルエン)により精製し、2-メチル-3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)アクリル酸エチル(9)の黄色液体を得た。
収量 68.0 g (収率 定量的)
【0058】
(2−3) 2-メチル-3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)プロパン酸エチル(10)の合成
(以下、オートクレーブ中で行う。)(2-2)で得た化合物(3) (68.0 g、0.189 mol)のエタノール/酢酸エチル(300 ml/300 ml)混合溶液中に、5 %パラジウム−炭素(50%含水物、8.0 g)を加えた後、水素圧(0.5 MPa)下、室温で6時間攪拌した。粉末セルロースを用いて触媒を濾別した後、濾液を減圧濃縮し、2-メチル-3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)プロパン酸エチル(10)の黄色液体を得た。
収量 55.4 g (収率 90.0%)
【0059】
(2−4) 2-メチル-3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)プロパノール(11)
(2-3)で得た化合物(10) (55.4 g、0.170 mol)のトルエン(150 ml)溶液を、室温で激しく攪拌している中に、70%水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミン酸ナトリウムトルエン溶液(SMEBA、60.0 g、0.208 mol)を滴下して加えた。室温で1時間攪拌を続けた後、水に滴下して加えて反応を停止させた。析出した固体が溶解するまで3 M塩酸を加えた後、酢酸エチルで抽出し(3回)、集めた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、2-メチル-3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)プロパノール(11)の黄色液体を得た。
収量 49.4 g (収率 定量的)
【0060】
(2−5) メタンスルホン酸2-メチル-3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)プロピル(12)
(2-4)で得た化合物(11) (49.4 g、0.170 mol)のジクロロメタン(250 ml)溶液に、水冷下、メタンスルホニルクロリド(15.5 ml、0.200 mol)を滴下して加えた後、さらにその温度を保ったままピリジン(20.0 ml、0.247 mol)を滴下して加えた。続けて4-ジメチルアミノピリジン(2.6 g、0.021 mol)を加えた後、室温で8時間攪拌を続けた。反応液に水を加えて反応を停止させた後、有機層を分離し、水層からジクロロメタンで抽出した(2回)。集めた有機層を3 M塩酸、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた液体をカラム(アルミナ、トルエン)を用いて精製し、さらに再結晶(ヘキサン)することにより、メタンスルホン酸2-メチル-3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)プロピル(12)の白色固体を得た。
収量 50.5 g (収率 77.1%)
【0061】
(2−6) 7,8-ジフルオロ-2-ペンチル-6-(2-メチル-3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)プロポキシ)クロマン(I-2)
(以下、窒素雰囲気中で行う。) 7,8-ジフルオロ-2-ペンチルクロマン-6-オール(16)(7.1 g、0.028 mol)のDMF(100 ml)溶液に、無水リン酸三カリウム(11.8 g、0.056 mol)を加えた後、(2-4)で得たメタンスルホン酸2-メチル-3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)プロピル(12) (10.0 g、0.028 mol)を加えた。2時間加熱還流した後、室温まで冷却し、水を滴下して加えて反応を停止させた。トルエン/ヘキサン混合溶液で抽出し(3回)、集めた有機層を、3 M塩酸、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、そのままの溶液をカラム(シリカゲル+アルミナ、トルエン/ヘキサン=1/1)を用いて精製し、再結晶(アセトン)することにより、7,8-ジフルオロ-2-ペンチル-6-(2-メチル-3-(トランス-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)プロポキシ)クロマン(I-2)の白色粉末を得た。収量 11.8 g (収率 82.1%)
1H-NMR (400MHz, CDCl3) d (ppm) 0.77-1.17 (m, 16H, CH+CH2), 0.87 (t, J=7.3Hz, 3H, CH3), 0.99 (d, J=6.6Hz, 3H, CH3), 1.23-1.83 (m, 22H, CH+CH2), 1.96-2.07 (m, 2H, CH2), 2.64-2.81 (m, 2H, CH2), 3.65 (dd, J1=8.9Hz, J2=7.2Hz, 1H, CH2O), 3.78 (dd, J1=8.9Hz, J2=5.5Hz, 1H, CH2O), 3.94-4.00 (m, 1H, CHO), 6.38 (dm, J=7.8Hz, 1H, ArH)、純度 99.9%(GC)、
相転移温度(℃) C 66.5 (N 56.5) I
(実施例3) 液晶組成物の調製(1)
以下の組成からなるホスト液晶組成物(H)
【0062】
【化24】

を調製した。ここで(H)の物性値は以下の通りである。
【0063】
ネマチック相上限温度(TN-I): 103.2℃
誘電率異方性(Δε): 0.04
屈折率異方性(Δn): 0.098
この母体液晶(H)80%と実施例1で得られた式(I-1)20%からなる液晶組成物(M-1)を調製した。この組成物の物性値は以下の通りである。
【0064】
ネマチック相上限温度(TN-I): 97.4℃
誘電率異方性(Δε): −1.08
屈折率異方性(Δn): 0.095
本発明の化合物(I-A)を含有する液晶組成物(M-1)は、母体液晶(H)に比べ、誘電率異方性(Δε)は大きく減少して負の値となった。このことから、本発明の化合物(I-A)は、誘電率異方性が負であり、その絶対値が極めて大きいことがわかる。
【0065】
また、液晶組成物(M-1)の電圧保持率を80℃で測定したところ、ホスト液晶組成物(H)の電圧保持率に対して98%以上と高い値を示した。このことから本発明の化合物(I-A)は安定性の面からも液晶表示材料として十分使用可能であることがわかる。
【0066】
(実施例4) 液晶組成物の調製(2)
実施例3で調製した母体液晶(H)80%と実施例2で得られた式(I-2)20%からなる液晶組成物(M-2)を調製した。この組成物の物性値は以下の通りである。
ネマチック相上限温度(TN-I): 92.1℃
誘電率異方性(Δε): −1.01
屈折率異方性(Δn): 0.093
本発明の化合物(I-2)を含有する液晶組成物(M-2)もまた、母体液晶(H)に比べ、誘電率異方性(Δε)は大きく減少して負の値となった。このことから、本発明の化合物(I-2)は、誘電率異方性が負であり、その絶対値が極めて大きいことがわかる。
また、液晶組成物(M-2)の電圧保持率を80℃で測定したところ、ホスト液晶組成物(H)の電圧保持率に対して98%以上と高い値を示した。このことから本発明の化合物(I-2)は安定性の面からも液晶表示材料として十分使用可能であることがわかる。
【0067】
(比較例1) 液晶組成物の調製(3)
実施例3で調製した母体液晶(H)80%と本願発明の化合物類似する以下の化合物 (R-1)
【0068】
【化25】

【0069】
20%からなる液晶組成物(M-R1)を調製した。この組成物は、室温で化合物が結晶が析出する不安定なものであった。比較例の化合物は20%の添加が不可能であることから、母体液晶(H)90%と(R-1)10%からなる液晶組成物(M-R2)を調製した。
この組成物の物性値は以下の通りである。
【0070】
ネマチック相上限温度(TN-I): 105.0℃
誘電率異方性(Δε): −0.53
屈折率異方性(Δn): 0.098
比較例の化合物 (R-1)を含有する液晶組成物(M-R2)は、実施例3及び4記載の液晶組成物に比べてネマチック相上限温度は高いものの、Δεの絶対値が半分程度と低い値となってしまった。
以上より、本願発明の化合物は液晶組成物との高い相溶性と大きいΔεの絶対値を併せ持っていることが明らかである。
(実施例5) 液晶組成物の調製(4)
以下の組成からなる液晶組成物(M-3)を調製した。
【0071】
【化26】

【0072】
この(M-F)の物性値は以下の通りであった。
ネマチック相上限温度(TN-I): 82.0℃
誘電率異方性(Δε): −3.20
屈折率異方性(Δn): 0.092
ここで作製した組成物を用いて、電圧保持率を測定したところ80℃で98%と高い値を示し、優れた表示特性を示す液晶表示装置を作成することができた。
【0073】
(実施例6) 液晶組成物の調製(5)
以下の組成からなる液晶組成物(M-4)を調製した。
【0074】
【化27】

【0075】
この(M-G)の物性値は以下の通りであった。
ネマチック相上限温度(TN-I): 80.1℃
誘電率異方性(Δε): −3.16
屈折率異方性(Δn): 0.091
ここで作製した組成物を用いて、電圧保持率を測定したところ80℃で98%と高い値を示し、優れた表示特性を示す液晶表示装置を作成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の液晶組成物、表示素子及び化合物は、垂直配向方式、IPS等の液晶表示素子の構成部材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、Raは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基、炭素原子数1から7の直鎖状アルコキシル基、炭素原子数2から7の直鎖状アルケニル基又は炭素原子数2から7の直鎖状アルケニルオキシ基を表し、Rbは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基又は炭素原子数2から7の直鎖状アルケニル基を表し、Za及びZbはそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、又は-CF2O-を表し、Xa及びXbは、Xaが水素原子を表しXbがメチル基を表すか又は、Xaがメチル基を表しXbが水素原子を表し、Aa及びAbはそれぞれ独立的にトランス-1,4-シクロヘキシレン基又は1,4-フェニレン基を表し、m及びnはそれぞれ独立的に0又は1を表すが、m及びnの少なくとも一方は0を表す。)で表されるジフルオロクロマン誘導体。
【請求項2】
一般式(I)において、mが1を表し、nが0を表す請求項1記載の化合物。
【請求項3】
一般式(I)において、R1及びR2が炭素原子数1から5の直鎖状アルキル基を表す、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
一般式(I)
【化2】

(式中、Raは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基、炭素原子数1から7の直鎖状アルコキシル基、炭素原子数2から7の直鎖状アルケニル基又は炭素原子数2から7の直鎖状アルケニルオキシ基を表し、Rbは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基又は炭素原子数2から7の直鎖状アルケニル基を表し、Za及びZbはそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、又は-CF2O-を表し、Xa及びXbは、Xaが水素原子を表しXbメチル基を表すか又は、Xaがメチル基を表しXb水素原子を表す、Aa及びAbはそれぞれ独立的にトランス-1,4-シクロヘキシレン基又は1,4-フェニレン基を表し、m及びnはそれぞれ独立的に0又は1を表すが、m及びnの少なくとも一方は0を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、一般式(II)
【化3】

(式中、Rcは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基又は炭素原子数2から7の直鎖状アルケニル基を表し、Rdは炭素原子数1から12の直鎖状アルキル基、炭素原子数2から12の直鎖状アルケニル基、炭素原子数1から12の直鎖状アルコキシル基又は炭素原子数3から12の直鎖状アルケニルオキシ基を表し、p3は0又は1を表し、Mb及びMcはそれぞれ独立的に単結合、-OCO-、-COO-又は-CH2CH2-を表し、Gcはトランス-1,4-シクロヘキシレン基又は1,4-フェニレン基を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有する誘電率異方性が負のネマチック液晶組成物。
【請求項5】
一般式(III)
【化4】

(式中、Reは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基を表し、Rfは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基、炭素原子数1から7の直鎖状アルコキシル基又は炭素原子数3から7の直鎖状アルケニルオキシ基を表し、p4は0又は1を表し、Md及びMeはそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-、-OCO-又は-COO-を表し、Gdはトランス-1,4-シクロヘキシレン基あるいは1から2個のフッ素により置換されていてもよい1,4-フェニレン基を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有する請求項4記載の液晶組成物。
【請求項6】
一般式(IV)、一般式(V)、一般式(VI)、一般式(VII)及び一般式(VIII)
【化5】

(式中、Rg、Ri、Rk及びRmはそれぞれ独立的に炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基を表し、Rh、Rj、及びRnはそれぞれ独立的に炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基、炭素原子数1から7の直鎖状アルコキシル基又は炭素原子数3から7の直鎖状アルケニルオキシ基を表し、Rlは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基を表し、Roは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基、炭素原子数1から7の直鎖状アルコキシル基又は炭素原子数2から7の直鎖状アルケニル基、炭素原子数3から7の直鎖状アルケニルオキシ基を表し、Rpは炭素原子数1から7の直鎖状アルキル基又は炭素原子数2から7の直鎖状アルケニル基を表し、Xa及びXbはそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表し、p5、p6、p7及びp8はそれぞれ独立的に0又は1を表し、p9及びp10はそれぞれ独立的に0、1又は2を表し、p9及びp10の合計は1又は2であり、Mf、Mg、Mh、Mi、Mj、Mk、Ml、Mm及びMnはそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-、-OCO-又は-COO-を表し、Moは単結合又は-CH2CH2-を表し、Ge、Gf、Gg、Gh、Gi及びGjはそれぞれ独立的にトランス-1,4-シクロヘキシレン基又は1から2個のフッ素により置換されていてもよい1,4-フェニレン基を表し、Gi、Gj、Mn及びMoが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する請求項4又は5記載の液晶組成物。
【請求項7】
一般式(III)で表される化合物を2種以上含有し、一般式(IV)、一般式(V)、一般式(VI)、一般式(VII)及び一般式(VIII)で表される化合物群から選ばれる2種以上を含有する請求項6記載の液晶組成物。
【請求項8】
ネマチック相上限温度が70℃以上であり、ネマチック相下限温度が-20℃以下であり、一般式(I)で表される化合物の含有量が1から50質量%の範囲である請求項4から7の何れかに記載の液晶組成物。
【請求項9】
請求項4から8記載の液晶組成物を使用した液晶表示素子。
【請求項10】
アクティブマトリックス駆動される請求項9記載の液晶表示素子。
【請求項11】
垂直配向モードで表示される請求項10記載の液晶表示素子。

















【公開番号】特開2007−261952(P2007−261952A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85410(P2006−85410)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】