説明

クロライドチャンネルオープナーとしてのプロスタグランジンアナログ

【課題】クロライドチャンネルオープナーとしての新規なプロスタグランジン化合物の提供。
【解決手段】13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGE1N−エチルアミド、13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGF1αN−エチルアミド、13,14−ジヒドロ−15−ケト−17−フェニル−18,19,20−トリノールPGF2αN−エチルアミド、13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチル−PGF2αN−エチルアミドなどのプロスタグランジン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロライドチャンネルをオープンするための方法に関する。より具体的には、本発明はクロライドイオンの輸送を調節することができる化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロライドイオン(Cl)は、水/電解質輸送、分泌、細胞容積の調節などを司るのみならず、細胞応答を左右する因子として重要な役割を演じることが知られている。
【0003】
例えば、クロライドイオンの細胞内外への移動は、同時に水や電解質の輸送を伴うため、細胞容積の調節に働く。このため、細胞の急激な容積変化を伴う成長・分裂、プログラム細胞死においてクロライドイオンは重要な役割を演じることが示唆されている。
【0004】
脳においては、神経細胞内のクロライドイオンレベルを低く保つことで中枢神経系に抑制性の制御が働くことが知られており、クロライドイオンが不安や痙攣の抑制、睡眠、記憶、概日リズムの調節などに重要な役割を演じることも知られている。
【0005】
腸管においては、クロライドイオンが下痢や便秘等の病態と深く関わっており、モルヒネなどのオピオイドの投与によってクロライドイオンなどの電解質分泌や液分泌に異常が起こると、難治性の便秘が引き起こされることも知られている。クロライドイオンのバランスの異常による疾患としては、この他に、筋緊張性萎縮症、腎結石など高カルシウム尿症を呈する疾患、不安、不眠症、嚢胞性繊維症、てんかん、無感覚症、喘息、気管支炎、神経障害などが知られている。
【0006】
クロライドチャンネルは、クロライドイオンを輸送するイオントランスポート膜タンパク質である。様々な種類のクロライドチャンネルが神経、筋、上皮などの細胞膜に存在し、様々な生理機能や細胞防御機構に関与していることが報告されている。
【0007】
例えば、CFTR(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)と名付けられたクロライドチャンネルは、嚢胞性線維症(cystic fibrosis)の原因究明の過程で発見された。嚢胞性線維症は、白色人種において最もよく知られた常染色体性劣性の遺伝性疾患で、原因となる遺伝子の変異は、CFTR遺伝子に起こり、気道、膵臓、腸管、汗腺、消化管などの上皮細胞にあるCFTRの機能の欠失により、クロライドイオンの透過性が低下するために起こることが知られている。
【0008】
また、シビレエイの発電器官によりクローニングされてClC−0と名付けられたクロライドチャンネルはその後、大きなファミリー(ClCファミリー)を形成することが明らかになった。ClCファミリーの例としては、哺乳類の骨格筋に存在するClC-1、様々な臓器の上皮に存在するClC-2、海馬、小脳などに分布するClC-3、ClC-4、肺、腎臓などにあるClC-5、脳、精巣、骨格筋、腎臓などにあるClC-6、ClC-7、また腎臓だけに特異的にみられるClCK-1、ClCK-2などがあり、ClC-1の異常によって先天性筋強直症が、ClC-5の異常によって遺伝性腎結石症などの疾患が起こることが知られている。
【0009】
したがって、クロライドチャンネルをオープンし、クロライドイオンの輸送を促進することができる化合物は、様々な細胞の機能や防御機構に重要な役割を演じると考えられ、何らかの原因でクロライドイオンの透過性が低下し、細胞内外のクロライドイオンのバランスに異常をきたした結果生じる病態の処置に有用であると考えられる。
【0010】
プロスタグランジン類(以後プロスタグランジンはPGとして示す)はヒトおよび他の哺乳類の組織または器官に含有され、広範囲の生理学的活性を示す有機カルボン酸の1群である。天然に存在するPG類(天然PG類)は一般的に、式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する。
【化1】

【0011】
一方天然PG類の幾つかの合成アナログは修飾された骨格を持っている。天然PG類は5員環部分の構造特性によって、PGA類、PGB類、PGC類、PGD類、PGE類、PGF類、PGG類、PGH類、PGI類およびPGJ類に分類され、さらに炭素鎖部分の不飽和の数と位置によって以下の3タイプに分類される。
(下付1)...13,14−不飽和−15−OH
(下付2)...5,6−および13,14−ジ不飽和−15−OH
(下付3)...5,6−、13,14−および17,18−トリ不飽和−15−OH。
【0012】
さらに、PGF類は9位の水酸基の配置によってα(水酸基がアルファー配置である)およびβ(水酸基がベータ配置である)に分類される。
【0013】
PGE、PGEおよびPGEは血管拡張、血圧降下、胃液分泌減少、腸管運動亢進、子宮収縮、利尿、気管支拡張および抗潰瘍活性をもつことが知られている。また、PGF1α、PGF2αおよびPGF3αは血圧上昇、血管収縮、腸管運動亢進性、子宮収縮、黄体退行および気管収縮特性を有することが知られている。
【0014】
PGE及びPGF2αが家兎回腸においてクロライドイオンの分泌を刺激することや(Nature vol.238, 26-27, 1972、この参考文献は引用によりその内容が本出願に含まれる)、PGEがヒト空腸のクロライドイオンの分泌を誘発することが報告されている(Gastroenterology vol.78, 32-42, 1980、この参考文献は引用によりその内容が本出願に含まれる)。また、PGEが子宮内膜上皮細胞のクロライドイオンの輸送を調節することが報告されている(Journal of Physiology vol.508, 31-47, 1998、この参考文献は引用によりその内容が本出願に含まれる)。一方で、嚢胞性繊維症の患者において血小板のクロライドの輸送がPGEに応答しなかったことや(European Journal of Clinical Chemistry and Clinical Biochemistry vol.33, No.6, 329-335, 1995、この参考文献は引用によりその内容が本出願に含まれる)、プロスタグランジンアナログ(ミソプロストール(misoprostol))が、嚢胞性繊維症の患者においてクロライドの分泌を促進しなかったことも報告されている(American Journal of Human Genetics Vol.67, No.6, 1422-1427, 2000、この参考文献は引用によりその内容が本出願に含まれる)。
【0015】
さらに、PGEがウサギのハウスキーピングの基底外膜のクロライドチャンネルをオープンすることが報告されている(Journal of Biological Chemistry, 270(32) 1995、この参考文献は引用によりその内容が本出願に含まれる)。また、PGEとPGF2αがCFTRを介してマウスの子宮内膜上皮細胞におけるクロライドコンダクタンスを活性化することが報告されている(Biology of Reproduction, 60(2) 1999)。
【0016】
しかしながら、プロスタグランジン化合物がクロライドチャンネル、特にClCチャンネルに対してどのような作用を示すかについては知られていない。
【発明の概要】
【0017】
(発明の開示)
本発明者は、鋭意研究の結果、プロスタグランジン化合物がクロライドチャンネル、特にClCチャンネルをオープンすることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は、プロスタグランジン化合物の有効量を対象に投与することを含む、哺乳類対象におけるClCチャンネルをオープンするための方法に関する。特に本発明は、クロライドイオンの透過性の低下に関連する症状の処置を必要とする対象に対して、プロスタグランジン化合物の有効量を投与することによって、ClCチャンネルをオープンすることを含む前記症状を処置するための方法に関する。
【0019】
また、本発明は有効量のプロスタグランジン化合物を含む、ClCチャンネルをオープンするための医薬組成物に関する。特に、本発明は、有効量のプロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象におけるクロライドイオンの透過性の低下に関連する症状の処置のための医薬組成物に関する。
【0020】
さらに本発明は、哺乳類対象におけるClCチャンネルをオープンするための医薬組成物の製造のためのプロスタグランジン化合物の使用に関する。特に本発明は、クロライドイオンの透過性の低下に関連する症状の処置のための医薬組成物の製造のためのプロスタグランジン化合物の使用に関する。
【0021】
例えば、本発明は以下に記載する方法、組成物、使用、化合物に関する。
(1)プロスタグランジン化合物の有効量を対象に投与することを含む、哺乳類対象におけるClCチャンネルをオープンするための方法。
(2)クロライドイオン透過性の低下に関連する症状を処置する方法であって、かかる処置を必要とする対象にプロスタグランジン化合物の有効量を投与することによってClCチャンネルをオープンすることを含む方法。
(3)該クロライドイオン透過性の低下に関連する症状が嚢胞性線維症である、(2)に記載の方法。
(4)プロスタグランジン化合物が下記一般式(I)で表される化合物である、(1)から(3)のいずれかに記載の方法。
【化2】

[式中、L、MおよびNは、水素原子、ヒドロキシ、ハロゲン原子、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、五員環は1または複数の二重結合を有していてもよい);
Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはその官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
Zは
【化3】

(ここでRおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、RおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない);
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和二価低〜中級脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;そして、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;複素環オキシ基]。
(5)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−16−モノまたはジハロゲン−プロスタグランジン化合物である、(1)から(3)のいずれかに記載の方法。
(6)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16モノまたはジハロゲン−プロスタグランジン化合物である、(1)から(3)のいずれかに記載の方法。
(7)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−16−モノまたはジフルオロ−プロスタグランジン化合物である、(1)から(3)のいずれかに記載の方法。
(8)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16モノまたはジフルオロ−プロスタグランジン化合物である、(1)から(3)のいずれかに記載の方法。
(9)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−16モノまたはジハロゲン−プロスタグランジンE化合物である、(1)から(3)のいずれかに記載の方法。
(10)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16モノまたはジハロゲン−プロスタグランジンE化合物である、(1)から(3)のいずれかに記載の方法。
(11)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−16,16−ジフルオロ−プロスタグランジンE化合物である、(1)から(3)のいずれかに記載の方法。
(12)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−プロスタグランジンE化合物または13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−18−メチル−プロスタグランジンE化合物である(1)から(3)のいずれかに記載の方法。
(13)Aが式(V)で表される−COOHの官能性誘導体である(4)に記載の方法:
−CONR’R''(V)
[式中、R’およびR''は、水素、低級アルキル、アリール、アルキル−またはアリール−スルホニル、低級アルケニルまたは低級アルキニル]。
(14)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGEN−エチルアミドである、(13)に記載の方法。
(15)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGF1αN−エチルアミドである、(13)に記載の方法。
(16)有効量のプロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対照におけるClCチャンネルをオープンするための組成物。
(17)有効量のプロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象におけるクロライドイオン透過性の低下に関連する症状の処置用組成物。
(18)該クロライドイオン透過性の低下に関連する症状が嚢胞性線維症である、(17)に記載の組成物。
(19)プロスタグランジン化合物が下記一般式(I)で表される化合物である、(16)から(18)のいずれかに記載の組成物:
【化4】

[式中、L、MおよびNは、水素原子、ヒドロキシ、ハロゲン原子、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、五員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはその官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
Zは
【化5】

(ここでRおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、RおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない);
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和二価低〜中級脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;そして、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;複素環オキシ基]。
(20)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−16−モノまたはジハロゲン−プロスタグランジン化合物である、(16)から(18)のいずれかに記載の組成物。
(21)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16モノまたはジハロゲン−プロスタグランジン化合物である、(16)から(18)のいずれかに記載の組成物。
(22)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−16−モノまたはジフルオロ−プロスタグランジン化合物である、(16)から(18)のいずれかに記載の組成物。
(23)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16モノまたはジフルオロ−プロスタグランジン化合物である、(16)から(18)のいずれかに記載の組成物。
(24)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−16モノまたはジハロゲン−プロスタグランジンE化合物である、(16)から(18)のいずれかに記載の組成物。
(25)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16モノまたはジハロゲン−プロスタグランジンE化合物である、(16)から(18)のいずれかに記載の組成物。
(26)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−16,16−ジフルオロ−プロスタグランジンE化合物である、(16)から(18)のいずれかに記載の組成物。
(27)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−プロスタグランジンE化合物または13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−18−メチル−プロスタグランジンE化合物である、(16)から(18)のいずれかに記載の組成物。
(28)Aが式(V)で表される−COOHの官能性誘導体である(19)に記載の組成物:
−CONR’R''(V)
[式中、R’およびR''は、水素、低級アルキル、アリール、アルキル−またはアリール−スルホニル、低級アルケニルまたは低級アルキニル]。
(29)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGEN−エチルアミドである、(28)に記載の組成物。
(30)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGF1αN−エチルアミドである、(28)に記載の組成物。
(31)哺乳類対象におけるClCチャンネルをオープンするための医薬組成物の製造のためのプロスタグランジン化合物の使用。
(32)哺乳類対象におけるクロライドイオン透過性の低下に関連する症状を処置するための医薬組成物の製造のためのプロスタグランジン化合物の使用。
(33)該クロライドイオン透過性の低下に関連する症状が嚢胞性線維症である、(32)に記載の使用。
(34)プロスタグランジン化合物が下記一般式(I)で表される化合物である、(31)から(33)のいずれかに記載の使用:
【化6】

[式中、L、MおよびNは、水素原子、ヒドロキシ、ハロゲン原子、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、五員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはその官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
Zは
【化7】

(ここでRおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、RおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない);
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和二価低〜中級脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;そして、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;複素環オキシ基]。
(35)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−16−モノまたはジハロゲン−プロスタグランジン化合物である、(31)から(33)のいずれかに記載の使用。
(36)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16−モノまたはジハロゲン−プロスタグランジン化合物である、(31)から(33)のいずれかに記載の使用。
(37)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−16−モノまたはジフルオロ−プロスタグランジン化合物である、(31)から(33)のいずれかに記載の使用。
(38)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16−モノまたはジフルオロ−プロスタグランジン化合物である、(31)から(33)のいずれかに記載の使用。
(39)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−16−モノまたはジハロゲン−プロスタグランジンE化合物である、(31)から(33)のいずれかに記載の使用。
(40)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16−モノまたはジハロゲン−プロスタグランジンE化合物である、(31)から(33)のいずれかに記載の使用。
(41)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−16,16−ジフルオロ−プロスタグランジンE化合物である、(31)から(33)のいずれかに記載の使用。
(42)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−プロスタグランジンE化合物または13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−18−メチル−プロスタグランジンE化合物である、(31)から(33)のいずれかに記載の使用。
(43)Aが式(V)で表される−COOHの官能性誘導体である(34)に記載の使用:
−CONR’R''(V)
[式中、R’およびR''は、水素、低級アルキル、アリール、アルキル−またはアリール−スルホニル、低級アルケニルまたは低級アルキニル]。
(44)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGEN−エチルアミドである、(43)に記載の使用。
(45)プロスタグランジン化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGF1αN−エチルアミドである、(43)に記載の使用。
(46)式(IV)で表される新規化合物:
【化8】

[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、五員環は1または複数の二重結合を有していてもよい);
R’およびR''は、水素、低級アルキル、アリール、アルキル−またはアリール−スルホニル、低級アルケニルまたは低級アルキニル;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和二価低〜中級脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;そして、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;複素環オキシ基]。
(47)化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGEN−エチルアミドである、(46)に記載の化合物。
(48)化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGF1αN−エチルアミドである、(46)に記載の化合物。
(49)化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−17−フェニル−18,19,20−トリノールPGF2αN−エチルアミドである、(46)に記載の化合物。
(50)化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチル−PGF2αN−エチルアミドである、(46)に記載の化合物。
【0022】
(発明の詳細な記載)
本発明のPG化合物の命名に際しては、前記式(A)に示したプロスタン酸の番号を用いる。
【0023】
前記式(A)はC−20の基本骨格のものであるが、本発明では炭素数がこれによって限定されるものではない。即ち、式(A)においてPG化合物の基本骨格を構成する炭素の番号はカルボン酸を1とし5員環に向かって順に2〜7までをα鎖上の炭素に、8〜12までを5員環の炭素に、13〜20までをω鎖上に付しているが、炭素数がα鎖上で減少する場合、2位から順次番号を抹消して命名する。炭素数がα鎖上で増加する場合、カルボキシル基(C−1)の代わりに2位において対応する置換基を有する置換化合物として命名する。同様に炭素数がω鎖上で減少する場合、20位から順次番号を抹消して命名する。また、炭素数がω鎖上で増加する場合、21番目以後の炭素原子は置換基として命名する。また、立体配置に関しては、特に断りのない限り、上記基本骨格(A)の有する立体配置に従うものとする。
【0024】
また、例えばPGD、PGE、PGFは、9位および/または11位に水酸基を有するPG化合物をいうが、本発明では、9位および/または11位の水酸基に代えて他の基を有するものも包含する。これらの化合物を命名する場合、9−デヒドロキシ−9−置換−PG化合物あるいは11−デヒドロキシ−11−置換−PG化合物の形で命名する。なお、水酸基の代わりに水素を有するPG化合物は、単に9−あるいは11−デヒドロキシ−PG化合物と称する。
【0025】
前述のように、PG化合物の命名はプロスタン酸骨格に基づいて行うが、上記化合物がプロスタグランジンと類似の部分構造を有する場合には、簡略化のため「PG」の略名を利用することがある。この場合、α鎖の骨格炭素数が2個延長されたPG化合物、すなわちα鎖の骨格炭素数が9であるPG化合物は、2−デカルボキシ−2−(2−カルボキシエチル)−PG化合物と命名する。同様に、α鎖の骨格炭素数が11であるPG化合物は、2−デカルボキシ−2−(4−カルボキシブチル)−PG化合物と命名する。また、ω鎖の骨格炭素数が2個延長されたPG化合物、すなわちω鎖の骨格炭素数が10であるPG化合物は、20−エチル−PG化合物と命名する。なお、命名はこれをIUPAC命名法に基づいて行うことも可能である。
【0026】
アナログ(置換体を含む)または誘導体の例は、上記PG類のα鎖末端のカルボキシル基がエステル化された化合物、α鎖が延長された化合物、それらの生理学的に許容し得る塩、2−3位の炭素結合が2重結合あるいは5−6位の炭素結合が3重結合を有する化合物、3位、5位、6位、16位、17位、18位、19位および/または20位の炭素に置換基を有する化合物、9位および/または11位の水酸基の代りに低級アルキル基またはヒドロキシ(低級)アルキル基を有する化合物等である。
【0027】
本発明において3位、17位、18位および/または19位の好適な置換基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基があげられ、特にメチル基、エチル基があげられる。16位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアルコキシが挙げられる。17位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアルコキシが挙げられる。20位の好適な置換基としては、C1−4アルキルのような飽和または不飽和の低級アルキル基、C1−4アルコキシのような低級アルコキシ基、C1−4アルコキシ−C1−4アルキルのような低級アルコキシアルキルを含む。5位の好適な置換基としては、塩素、フッ素などのハロゲン原子を含む。6位の好適な置換基としては、カルボニル基を形成するオキソ基を含む。9位および/または11位にヒドロキシ基、低級アルキルまたは低級(ヒドロキシ)アルキル置換基を有する場合のPG類の立体配置はα,βまたはそれらの混合物であってもかまわない。
【0028】
さらに、上記アナログまたは誘導体は、ω鎖が天然のPG類より短い化合物のω鎖末端にアルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、フェノキシ基、フェニル基等の置換基を有する化合物であってもよい。
【0029】
本発明において用いられる好適な化合物は下記式(I)で表される:
【化9】

[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、五員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはその官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
Zは
【化10】

(ここでRおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、RおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない);
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和二価低〜中級脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;そして、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;複素環オキシ基]。
【0030】
本発明において用いられる特に好ましい化合物は、式(II)で表される:
【化11】

[式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
Zは、
【化12】

(ここでRおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、RおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない)
およびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;
は、単結合または低級アルキレン;そして、
は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ]。
【0031】
上記式中、RおよびRaの定義における「不飽和」の語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間の結合として、1つまたはそれ以上の二重結合および/または三重結合を孤立、分離または連続して含むことを意味する。通常の命名法に従って、連続する2つの位置間の不飽和結合は若い方の位置番号を表示することにより示し、連続しない2つの位置間の不飽和結合は両方の位置番号を表示して示す。
【0032】
「低〜中級脂肪族炭化水素」の語は、炭素原子数1〜14の直鎖または分枝鎖(ただし、側鎖は炭素原子数1〜3のものが好ましい)を有する炭化水素基を意味し、好ましくは炭素原子数1〜10、特に1〜8の炭化水素基である。
【0033】
「ハロゲン原子」の語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
【0034】
「低級」の語は、特にことわりのない限り炭素原子数1〜6を有する基を包含するものである。
【0035】
「低級アルキル」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝状の飽和炭化水素基を意味し、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
【0036】
「低級アルキレン」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝状の二価飽和炭化水素基を意味し、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、t−ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンを含む。
【0037】
「低級アルコキシ」の語は、低級アルキルが上述と同意義である低級アルキル−O−基を意味する。
【0038】
「ヒドロキシ(低級)アルキル」の語は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換された上記のような低級アルキルを意味し、例えばヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルおよび1−メチル−1−ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0039】
「低級アルカノイルオキシ」の語は、式RCO−O−(ここで、RCO−は上記のような低級アルキル基が酸化されて生じるアシル基、例えばアセチル)で示される基を意味する。
【0040】
「シクロ(低級)アルキル」の語は、炭素原子3個以上を含む上記のような低級アルキル基が閉環して生ずる環状基を意味し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
【0041】
「シクロ(低級)アルキルオキシ」の語は、シクロ(低級)アルキルが上述と同意義であるシクロ(低級)アルキル−O−基を意味する。
【0042】
「アリール」の語は、非置換または置換の芳香族炭化水素環基を包含し、(好ましくは単環式基の)、例えばフェニル、トリル、キシリルが例示される。置換基としては、ハロゲン原子、ハロ(低級)アルキル(ここで、ハロゲン原子および低級アルキルは前記の意味)が含まれる。
【0043】
「アリールオキシ」の語は、式ArO−(ここで、Arは上記のようなアリール)で示される基を意味する。
【0044】
「複素環基」の語としては、置換されていてもよい炭素原子および、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1種または2種のヘテロ原子を1〜4個、好ましくは1〜3個含む、5〜14員環、好ましくは5〜10員環の、単環式〜3環式、好ましくは単環式の複素環基が含まれる。複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、2−ピロリニル基、ピロリジニル基、2−イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、2−ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、インドリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、プリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズイミダゾリニル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基などが例示される。置換基としてはハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲンおよび低級アルキル基は前記の意味)が例示される。
【0045】
「複素環オキシ基」の語は、式HcO−(ここでHcは上記のような複素環基)で示される基を意味する。
【0046】
Aの「官能性誘導体」の語は、塩(好ましくは、医薬上許容し得る塩)、エーテル、エステルおよびアミド類を含む。
【0047】
適当な「医薬上許容し得る塩」としては、慣用される非毒性塩を含み、無機塩基との塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩;または有機塩基との塩、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によってまたは塩交換によって製造し得る。
【0048】
エーテルの例としてはアルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル;オクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中級または高級アルキルエーテル;オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル;ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル;エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル;ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテル等のヒドロキシ(低級)アルキルエーテル;メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル;例えばフェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル;およびベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルが挙げられる。
【0049】
エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル;ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル;エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル;ヒドロキシエチルエステル等のヒドロキシ(低級)アルキルエステル;メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステルのような脂肪族エステル;および例えばフェニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル;ベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルが挙げられる。
【0050】
Aのアミドは、式−CONR’R''(式中、R’およびR''はそれぞれ水素、低級アルキル、アリール、アルキル−またはアリール−スルホニル、低級アルケニルおよび低級アルキニル)で示される基を意味し、例えばメチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等の低級アルキルアミド;アニリド、トルイジド等のアリールアミド;メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミド、トリルスルホニルアミド等のアルキルもしくはアリールスルホニルアミド等が挙げられる。
【0051】
好ましいLおよびMの例は、ヒドロキシ、オキソを含み、特にMがヒドロキシでLがオキソであるいわゆるPGEタイプと称される5員環構造を有するものを含む。
【0052】
好ましいAは、−COOH、その医薬上許容し得る塩、エステルまたはアミドである。
【0053】
好ましいXおよびXの例は、フッ素であり、いわゆる16,16−ジフルオロタイプと称されるものを含む。
【0054】
好ましいRは、炭素原子数1〜10であり、特に好ましくは炭素原子数6〜10の炭化水素残基である。脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい。
【0055】
の具体例としては、例えば、次のものが挙げられる。
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−O−CH−、
−CH−CH=CH−CH−O−CH−、
−CH−C≡C−CH−O−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−。
【0056】
好ましいRaは、1−10炭素原子、より好ましくは1−8炭素原子を有する炭化水素である。Raは1の炭素原子を有する1または2の側鎖を有していてもよい。
【0057】
上記式(I)および(II)における環、および、α−および/またはω−鎖の配置は、天然PG類の配置と同じであっても異なっていてもよい。しかしながら、本発明は、天然タイプの配置を有する化合物と非天然タイプの配置を有する化合物の混合物も包含する。
【0058】
本発明において、13と14位が飽和し、15位がケト(=O)であるPG化合物は、11位のヒドロキシと15位のケト間のへミアセタール形成により、ケト−ヘミアセタール平衡を生ずる場合がある。
【0059】
例えば、XおよびXの両方がハロゲン原子、特にフッ素原子の場合、化合物は互変異性体、二環式化合物を含むことが確認されている。
【0060】
このような互変異性体が存在する場合、両異性体の存在比率は他の部分の構造または置換基の種類により変動し、場合によっては一方の異性体が圧倒的に存在することもあるが、本発明においてはこれら両者を含むものとする。
【0061】
さらに、本発明に用いられる15−ケト−PG化合物には、二環式化合物およびそのアナログまたは誘導体が含まれる。
【0062】
二環式化合物は下記式(III)で表される:
【化13】

[式中、Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
’およびX’は、水素、低級アルキルまたはハロゲン;
Yは、
【化14】

(ここでR’およびR’は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R’およびR’が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない);
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基;そして、
’は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;複素環オキシ基;
’は、水素、低級アルキル、シクロ(低級)アルキル、アリールまたは複素環基]。
【0063】
本発明に用いられる化合物は、異性体の存在の有無にかかわりなくケト型の構造式または命名法によって化合物を表わすことがあるが、これは便宜上のものであってヘミアセタール型の化合物を排除しようとするものではない。
【0064】
本発明においては、個々の互変異性体、その混合物、または光学異性体、その混合物、ラセミ混合物、その他の立体異性体等の異性体も、同じ目的に使用することが可能である。
【0065】
本発明において用いられる化合物の一部は米国特許第5073569号、5166174号、5221763号、5212324号、5739161号、および6242485号(これらの引用文献は引用により本出願にその内容が含まれる)に開示された方法によって製造し得る。
【0066】
さらに、本発明者らは、式(IV)で表される新規化合物がクロライドチャンネルをオープンするのに有効であることを見出した:
【化15】

[式中、L、M、N、B、RおよびRaは式(I)において定義したものと同じである;そして、
R’およびR''は、水素、低級アルキル、アリール、アルキル−またはアリール−スルホニル、低級アルケニルまたは低級アルキニル。]
したがって、本発明は上記の新規化合物も包含する。
【0067】
本発明によると、本発明に用いる化合物を投与することによって、哺乳類対象を処置することができる。対象はヒトを含むいかなる哺乳類であってもよい。化合物は全身的に投与しても局所的に投与してもよい。通常、化合物は、経口投与、静脈注射(点滴を含む)、皮下投与、直腸内投与、膣内投与、経皮投与、点眼投与などの方法で投与される。投与量は動物の種類、年令、体重、処置されるべき症状、所望の治療効果、投与経路、処置期間等により変化するが、1日1〜4分割用量または持続形態で全身投与する場合、1日当たり0.0001〜100mg/kgの投与量で満足な効果が得られる。
【0068】
化合物は、常套手段における投与に好適な医薬組成物として製剤するのが好ましい。組成物は、経口投与薬、注射薬、点滴薬、外用薬、点眼剤、座薬および膣座薬等として好適なものとすればよい。
【0069】
本発明の組成物は生理学的に許容される添加剤と併用しても良い。添加剤は15−ケト−PG化合物と併用される成分を含み、例えば、賦形剤、希釈剤、増量剤、溶剤、滑沢剤、補助剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、カプセル化剤、軟膏基材、座薬用基材、エアゾール剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、保存剤、抗酸化剤、矯味剤、芳香剤、着色剤、機能性素材(例えばシクロデキストリン、生体内分解高分子など)、安定剤が挙げられる。これらの添加剤は当該技術分野で周知であり、製剤学に関する一般書籍に記載されているものから適宜選択すればよい。
【0070】
本発明の組成物中の上記化合物の量は薬剤の形態にもよるが、通常0.00001〜10.0重量%、より好ましくは0.0001〜1.0重量%である。
【0071】
経口投与のための固体組成物としては、錠剤、トローチ、舌下錠、カプセル、丸剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。このような固体組成物においては1つまたはそれ以上の活性成分が、少なくとも1つの不活性な希釈剤と混合することにより調製される。組成物は、例えば滑沢剤、崩壊剤、安定剤などの不活性な希釈剤以外の添加剤をさらに含んでいても良い。錠剤および丸剤は所望により腸溶性または胃溶性のフィルムで被覆しても良い。また、2以上の層で被覆してもよい。更に、徐放性物質に吸着させてもよく、マイクロカプセル剤としてもよい。さらにゼラチンのような容易に崩壊され得る物質のカプセル剤としてもよい。さらに脂肪酸またはそのモノ、ジ、トリグリセリドなどの適当な溶媒に溶解させてソフトカプセルとしても良い。速効性を必要とするときは、舌下錠としてもよい。
【0072】
経口投与のための液体組成物としては、乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等が例示される。この組成物は一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エタノール等を含んでいてもよい。不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁化剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0073】
本発明の組成物としては、スプレー剤の形態としてもよく、これは1またはそれ以上の活性成分を含み、それ自体公知の方法により処方される。
【0074】
本発明による非経口投与のための注射剤としては無菌の水性または非水性の液剤、懸濁剤、乳剤を包含する。水性の液剤、懸濁剤用媒体としては、例えば注射用蒸留水、生理食塩水およびリンゲル液が含まれる。
【0075】
非水性の液剤、懸濁剤用媒体としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート等が挙げられる。このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤のような添加剤を含んでいてもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合、ガス滅菌または放射線滅菌によって無菌化される。これら注射用組成物はまた無菌の粉末組成物として提供し、使用前に無菌の注射用溶媒に溶解させることもできる。
【0076】
組成物は点眼液または眼軟膏等の点眼剤としてもよい。点眼液は、活性成分を無菌の水溶液、例えば生理食塩水、緩衝液等に溶解させるかまたは用時溶解用の粉末組成物として提供するために粉末成分を組合せて作られる。眼軟膏は、常套の軟膏基剤に活性成分を混合して作られる。
【0077】
本発明による外用薬としては、軟膏剤、クリーム、ローション、スプレーなど皮膚、耳鼻咽喉科の分野などで用いられる全ての外用製剤を含む。
【0078】
別の形態は坐薬または膣坐薬である。これらの坐薬はカカオ脂等の体温で軟化する常套の基剤に活性成分を混合して作ることができ、適当な軟化温度を有する非イオン界面活性剤を用いて吸収性を向上させてもよい。
【0079】
本発明において、「処置」の語は、予防、治療、症状の軽減、症状の減退、進行停止等、あらゆる管理が含まれる。
【0080】
本発明の化合物は、クロライドチャンネル、特にClCチャンネルをオープンするため、様々な細胞の機能や防御機構の調節が可能となる。特に、クロライドイオンの透過性の低下に関連する症状の処置に適用することができる。
【0081】
本明細書において用いられる「ClCチャンネルをオープンする」という語は、Cl電流、Cl分泌、Cl輸送をClCチャンネルをオープンすることにより活性化、促進または調節することを含む。
【0082】
クロライドの透過性の低下に関連する症状としては、例えば、筋緊張性萎縮症、腎結石など高カルシウム尿症を呈する疾患、便秘、不安、不眠症、嚢胞性繊維症、てんかん、無感覚症、喘息、気管支炎、神経障害などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
本発明の化合物は、特にClC-2チャンネルをオープンするため、ClC-2チャンネル以外のクロライドチャンネルの機能が低下することにより起こる疾患(例えば嚢胞性繊維症、先天性筋強直症、遺伝性腎結石症など)の処置に有用である。
【0084】
更に、本発明の医薬組成物においては、本発明の目的に反しない限り、他の薬理活性成分を適宜含有させることもできる。
【0085】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0086】
(合成例1)
13,14−ジヒドロ−15−ケト−17−フェニル−18,19,20−トリノール−PGF2αN−エチルアミド(5)の調製
【化16】

【0087】
(1)→(2)
3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(0.70ml,7.67mmol)を、無水ジクロロメタン(10ml)中の化合物(1)(0.350g,0.737mmol)の溶液に添加した。この溶液に、カンファースルホン酸(7mg,0.03mmol)を添加した。混合物を室温で30分間攪拌した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、ジクロロメタンで2回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。蒸発後の残渣をシリカゲルカラムのクロマトグラフィー(BW−300 150g、酢酸エチル:ヘキサン=1:3)にかけ、化合物(2)(0.463g、0.720mmol、97.7%収率)を無色油として得た。
【0088】
(2)→(3)
エタノール(14ml)中の化合物(2)(0.889g、1.38mmol)の溶液に、1N−水酸化ナトリウム水溶液(6.9ml、6.9mmol)を添加した。反応混合物を室温で16時間攪拌した。混合物を氷浴中で冷却し、次いで酢酸エチルと水を混合物に添加した。1N−塩酸(7ml、7mmol)を混合物のpHが4となるまで添加した。混合物を酢酸エチルで3回抽出した。混合有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で2回洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層の蒸発により粗化合物(3)(0.878g)を無色油として得た。粗化合物(3)を精製せずに以後の反応に用いた。
【0089】
(3)→(4)
カルボニルジイミダゾール(0.448g、2.77mmol)を無水THF(9.0ml)中の粗化合物(3)(0.878g、1.38mmol)の溶液に添加した。混合物を室温で2時間攪拌した。THF溶液中の2M−エチルアミン(2.77ml、5.54mmol)を反応混合物に添加した。混合物を室温で1時間攪拌し、1N−塩酸に注ぎ、次いで酢酸エチルで3回抽出した。混合有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。残渣のシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(FL−60D 150g、酢酸エチル:ヘキサン=3:1)により化合物(4)(0.817g、1.30mmol、化合物(2)に基づく収率94.1%)を得た。
【0090】
(4)→(5)
酢酸(9.8ml)と水(4.9ml)をTHF(4.9ml)中の化合物(4)(0.815g、1.30mmol)の溶液に添加した。混合物を50℃で3時間攪拌し、次いで0℃まで冷却した。2N−水酸化ナトリウム水溶液を混合物に、混合物のpHが9となるまで添加した。混合物を酢酸エチルで3回抽出した。混合有機層を水と飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。残渣のシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(FL−60D 100g、2−プロパノール:酢酸エチル=5:100)により無色油(0.485g、1.17mmol、89.9%収率)を得た。さらなる分取HPLC(YMC−Pak RI−053−15、Φ50250mm−SIL120A、2−プロパノール:n−ヘキサン=18:82、溶媒流速=100ml/分)による精製により化合物(5)(0.417g、1.12mmol、86.3%収率)を得た。
【0091】
化合物(5)のH−NNRスペクトル(200MHz/CDCl
δ(TMS=0ppm)
7.33−7.13(5H、m)、5.84(1H、br)、5.28−5.50(2H、m)、4.18−4.07(1H、m)、3.90−3.80(1H、m)、3.26(2H、dq、J=5.6、7.3Hz)、3.20(2H、br)、2.94−2.86(2H、m)、2.80−2.71(2H、m)、2.60−2.52(2H、m)、2.50−1.90(4H、m)、2.17(2H、t、J=7.0Hz)1.90−1.56(6H、m)、1.47−1.25(2H、m)、1.13(3H、t、J=7.3Hz)
【0092】
(合成例2)
N1−エチル−7−[(2,4aR,5R,7aR)−2−(1,1−ジフルオロペンチル)−2−ヒドロキシ−6−オキソぺルヒドロシクロペンタ[b]ピラン−5−イル]ヘプタンアミド(7)の調製
【化17】

【0093】
サブ・ロット−1
カルボニルジイミダゾール(79.5mg、0.490mmol)を無水THF(5ml)中の化合物(6)(174.0mg、0.446mmol)の溶液に添加した。混合物を室温で3時間攪拌し、次いでTHF溶液中の2M−エチルアミン(0.87ml、1.74mmol)を混合物に添加した。混合物を室温で12時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(10ml)と酢酸エチル(10ml)を反応混合物に攪拌しながら添加した。水層を有機層から分離し、酢酸エチルで3回抽出した。混合有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで蒸発させた。残渣のシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(FL−60D 10g、ヘキサン:酢酸エチル=1:2)により無色油(117.5mg、0.281mmol、63.0%収率)を得た。
【0094】
サブ・ロット2
カルボニルジイミダゾール(105.9mg、0.653mmol)を無水THF(3ml)中の化合物(6)(229.2mg、0.587mmol)の溶液に添加した。混合物を室温で2時間攪拌し、次いでTHF溶液中の2M−エチルアミン(1.2ml、2.4mmol)を混合物に添加した。混合物を室温で1時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(10ml)と酢酸エチル(10ml)を反応混合物に攪拌しながら添加した。水層を有機層から分離し、酢酸エチルで2回抽出した。混合有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで蒸発させた。残渣のシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(FL−60D 10g、ヘキサン:酢酸エチル=2:3)により無色油(195.7mg、0.469mmol、79.8%収率)を得た。
【0095】
これら2つの上記サブ・ロットを合同させた。合同させた生成物(301.4mg)をさらに分取HPLC(Merck Lichrosorb DIOL−7μm、Φ25250mm、2−プロパノール:n−ヘキサン=10:100、溶媒流速=40ml/分)で精製して化合物(7)(209.6mg、69.5%回収率)を得た。
【0096】
化合物(7)のH−NNRスペクトル(200MHz/CDCl
δ(TMS=0ppm)
5.42(1H、br)、4.26−4.10(1H、m)、3.29(2H、dq、J=5.6、7.2Hz)、2.83(1H、br)、2.58(1H、dd、J=17.6、7.3Hz)、2.21(1H、dd、J=17.6、11.5Hz)、2.14(2H、t、J=7.5Hz)、2.10−1.73(5H、m)、1.73−1.21(17H、m)、1.14(3H、t、J=7.2Hz)、0.94(3H、t、J=7.1Hz)
【0097】
(合成例3)
N1−エチル−7−[(2,4aR,5R,6S,7aR)−2−(1,1−ジフルオロペンチル)−2,6−ジヒドロキシぺルヒドロシクロペンタ[b]ピラン−5−イル]ヘプタンアミド(15)の調製
【化18】

【0098】
(8)→(9)
3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(4.22ml、46.11mmol)とカンファースルホン酸(42.16mg、0.181mmol)を0℃の無水ジクロロメタン(90ml)中の化合物(8)(2.87g、4.216mmol)の溶液に添加した。反応混合物を0℃で50分間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を反応混合物に添加した。混合物を室温に昇温し、ジクロロメタン(50ml)で3回抽出した。混合有機層を水(180ml)と飽和塩化ナトリウム水溶液(180ml)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして蒸発させた。残渣のシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(BW−300 154g、ヘキサン:酢酸エチル=8:1)により化合物(9)(3.42g、4.476mmol、定量的収率)を得た。
【0099】
(9)→(10)
THF溶液中の1M−テトラブチルアンモニウムフルオライド(5.371ml、5.371mmol)を0℃の無水THF(10.7ml)中の化合物(9)(3.42g、4.476mmol)の溶液に滴下した。混合物を室温で4時間攪拌した。酢酸アンモニウム水溶液(200mg/ml、10.3ml)を反応混合物に添加した。混合物を10分間攪拌し、ジイソプロピルエーテルで3回抽出した。混合有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和塩化ナトリウム水溶液(50ml)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして蒸発させた。残渣のシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(BW−300 170g、ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により化合物(10)(2.73g、4.200mmol、93.8%収率)を得た。
【0100】
(10)→(11)
エタノール(2ml)中の化合物(10)(130.4mg、0.200mmol)の溶液を0℃に冷却した。1N−水酸化ナトリウム水溶液(0.8ml、0.80mmol)を該溶液に15℃より低温で滴下した。混合物を室温で3.6時間攪拌し、次いで蒸発させた。残渣に、水(1ml)を添加し混合物のpHを希塩酸の添加により3−4に調整した。混合物を酢酸エチル(20ml)で3回抽出した。混合有機層を水(30ml、2回)と飽和塩化ナトリウム水溶液(30ml)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで蒸発させた。残渣のシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(15%−水含有FL−60D 10g、ヘキサン:酢酸エチル=3:2)により化合物(11)(106.2mg、0.1894mmol、94.7%収率)を得た。
【0101】
(11)→(12)
デス−マーティン・ぺリオディナン(Dess-Martin periodinane)(1.68g、3.970mmol)を0℃の無水ジクロロメタン(63ml)中の化合物(11)(1.21g、1.985mmol)の溶液に添加した。反応混合物を室温で1時間攪拌した。チオ硫酸ナトリウム水溶液(39.8ml)を反応混合物に添加した。次いで反応混合物を酢酸エチル(50ml)で3回抽出した。混合有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで蒸発させた。残渣のシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(15%−水含有FL−60D 55g、ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により化合物(12)(1.06g、1.890mmol、95.2%収率)を得た。
【0102】
(12)→(13)
木炭上の10%−パラジウム(69.1mg)を酢酸エチル(34.6ml)中の化合物(12)(345.7mg、0.619mmol)の溶液に添加した。混合物を水素雰囲気中で3時間攪拌した。反応混合物をセライト(登録商標)パッドでろ過し、触媒を除去した。上記の一連の操作を5回繰り返し、水素化反応を完了させた。ろ液の濃縮により化合物(13)(330.4mg、0.589mmol、95.2%収率)を得た。
【0103】
(13)→(14)
カルボニルジイミダゾール(143.4mg、0.884mmol)を無水THF(6.7ml)中の化合物(13)(330.4mg、0.589mmol)の溶液に添加した。混合物を室温で3時間攪拌した。反応混合物に、THF中の2M−エチルアミン溶液(0.589ml、1.179mmol)を添加し室温で1時間攪拌した。反応混合物に、飽和塩化アンモニウム水溶液を添加した。混合物を酢酸エチル(20ml)で3回抽出した。混合有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)と飽和塩化ナトリウム水溶液(50ml)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで蒸発させた。残渣のシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(15%−水含有FL−60D 16.5g、ヘキサン:酢酸エチル=2:1)により化合物(14)(311.6mg、0.530mmol、90.0%収率)を得た。
【0104】
(14)→(15)
酢酸(4.2ml)と水(2.1ml)をTHF(2.1ml)中の化合物(14)(344.0mg、0.585mmol)の溶液に添加した。混合物を50℃で3時間攪拌し、次いで0℃に冷却した。2N−水酸化ナトリウム水溶液を反応混合物に添加した。混合物を酢酸エチル(50ml)で3回抽出した。混合有機層を水(35ml)と飽和塩化ナトリウム水溶液(35ml)で2回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで蒸発させた。残渣のシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(15%−水含有FL−60D 14g、ヘキサン:酢酸エチル=1:1その後酢酸エチルに変更)により化合物(15)(227.9mg、0.543mmol、92.8%収率)を得た。さらに分取HPLC(Merck Lichrosorb DIOL−7μm、Φ25250mm、2−プロパノール:n−ヘキサン=12:88、溶媒流速=35 ml/分)での精製により化合物(15)(151.0mg、0.3599mmol、61.5%収率)を得た。
【0105】
化合物(15)のH−NNRスペクトル(200MHz/CDCl
δ5.43(1H、br)、4.32−4.15(1H、m)、3.96−3.84(0.28H、m)、3.79−3.61(0.72H、m)、3.29(2H、dq、J=5.6、7.3Hz)、2.86−2.80(0.55H、m)、2.70−2.64(0.55H、m)、2.54(0.72H、dd、J=15.8、7.0Hz)、2.43(0.72H、dd、J=15.8、5.2Hz)、2.15(2H、t、J=7.1Hz)、2.25−1.09(23.45H、m)、1.14(3H、t、J=7.2Hz)、0.92(3H、t、J=7.1Hz)
【0106】
(合成例4)
13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチル−PGF2αN−エチルアミド(20)の調製
【化19】

【0107】
(16)→(17)
3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(2ml、21.9mmol)とカンファースルホン酸(20mg、0.09mmol)を無水ジクロロメタン(30ml)中の化合物(16)(1.00g、2.36mmol)の溶液に添加した。混合物を2時間攪拌した。反応混合物に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20ml)を添加し、激しく攪拌した。水層を有機層から分離し、ジクロロメタンで2回抽出した。混合有機層を水と飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで蒸発させた。残渣のシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(BW−300 70g、ヘキサン:酢酸エチル=3:7)により化合物(17)(1.45g、2.45mmol、定量的収率)を得た。
【0108】
(17)→(18)
1N−水酸化ナトリウム水溶液(11.8ml、11.8mmol)を0℃のエタノール(20ml)中の化合物(17)(1.45g、2.36mmol)の溶液に添加した。混合物を室温に昇温し、5.5時間攪拌した。混合物を0℃で1N−塩酸(12.4ml、12.4mmol)で酸性にした。混合物を酢酸エチルで3回抽出した。混合有機層を水と飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで蒸発させた。残渣のシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(15%−水含有FL−60D 14g、ヘキサン:酢酸エチル=10:0→9:1→8:2→7:3→6:4→5:5→4:6→3:7)により化合物(18)(1.19g、2.16mmol、92.0%収率)を得た。
【0109】
(18)→(19)
カルボニルジイミダゾール(265mg、1.64mmol)を無水THF(10ml)中の化合物(18)(600.3mg、1.09mmol)の溶液に添加した。混合物を室温で1.5時間攪拌した。混合物に、2M−エチルアミンTHF溶液(3.0ml、6.0mmol)を添加し、1時間攪拌した。反応混合物を0℃に冷却し、冷1N−塩酸の添加により酸性(pH=3)にした。混合物を酢酸エチルで3回抽出した。混合有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで蒸発させた。残渣のシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(FL−60D 25g、ヘキサン:酢酸エチル=1:1)により化合物(19)(497.0mg、0.86mmol、78.9%収率)を得た。同時に、化合物(18)(117.4mg、19.6%回収率)を回収した。
【0110】
カルボニルジイミダゾール(69.0mg、0.43mmol)を、無水THF(2ml)中の回収した化合物(18)(117.4mg)の溶液に添加した。混合物を室温で2時間攪拌した。混合物に、2M−エチルアミンTHF溶液(3.0ml、6.0mmol)を添加し、1時間攪拌した。反応混合物を0℃に冷却し、次いで冷1N−塩酸の添加により酸性(pH=3)にした。混合物を酢酸エチルで3回抽出した。混合有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで蒸発させた。残渣のシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(FL−60D 5g、ヘキサン:酢酸エチル=1:1)により化合物(19)(113.2mg、0.20mmol、92.0%収率)を得た。上記の2つのバッチを合同させて、610mgの化合物(19)を得た。
【0111】
(19)→(20)
酢酸(6ml)と水(2ml)をTHF(2ml)中の化合物(19)(603.0mg、1.07mmol)の溶液に添加した。混合物を45℃で2.5時間攪拌し、次いで室温に冷却した。反応混合物に、8N−水酸化ナトリウム水溶液(13ml)、酢酸エチル(20ml)および水(20ml)を添加した。混合物を激しく攪拌した。水層を有機層から分離し、次いで酢酸エチルで3回抽出した。混合有機層を水と飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで蒸発させた。2回のシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(第一精製:FL−60D 25g、ヘキサン:2−プロパノール=100:10/第二精製:FL−60D 18g、ヘキサン:2−プロパノール=100:5)により化合物(20)(336.4mg、0.918mmol、85.8%収率)を得た。
【0112】
化合物(20)のH−NNRスペクトル(200MHz/CDCl
δ5.74(1H、br)、5.45−5.36(2H、m)、4.19−4.11(1H、m)、3.96−3.84(1H、m)、3.28(2H、dq、J=5.7、7.3Hz)、3.05(1H、br)、2.70−1.95(9H、m)、2.42(2H、t、J=7.4Hz)、1.95−1.20(18H、m)、1.14(3H、t、7.2Hz)、0.88(3H、t、J=7.3Hz)
【0113】
(試験例1)
(方法)
全細胞パッチクランプ法を用いて化合物1(13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGE)と化合物2(13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−18(S)−メチル−PGE)の組換えhClC−2クロライドチャンネルに対する効果を評価した。この試験例においては、それぞれの化合物の、ヒトClC−2(hClC−2)を形質移入されたヒト上皮腎臓(HEK)細胞に対する効果を調べ、その結果を非−形質移入HEK細胞と比較した。
【0114】
ClC−2形質移入ヒト上皮腎臓(HEK)細胞を調製し、使用した。American Type Culture Collection (ATCC; Manassas、VA)から得たHEK−293細胞を、リポフェクタミン(GIBCO/Invitrogen)を用いて哺乳類発現ベクターpcDNA3.1(GIBCO/Invitrogen)中のHis−およびT7−タグ付加したヒトClC−2cDNAで、37℃で5時間、無血清培地中で形質移入した。細胞を血清含有培地に再懸濁し、300μg/mlのG−418(GIBCO/Invitrogen)の存在下で培養した。生存細胞を拡張させ、Cl電流とClC−2mRNAの発現を確認するため試験し、ClC−2mRNAを発現する細胞を凍結保存した。研究時に、凍結した細胞を解凍し、37℃で5%/95%CO/Oにて、5%不活性化ウマ血清、0.1mM非必須アミノ酸、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、100ユニット/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシン硫酸塩を追加したMEM(GIBCO/Invitrogen)中に維持した。
【0115】
全細胞パッチクランプ測定において、電流は+40mVから−140mVの間の、最初の保持電位−30mVから開始して20mVずつ増加する電圧固定パルス(1500m秒持続)によって誘発した。電流をパルスの開始から50−100m秒後に測定した。外部溶液は135mM NaCl、1.8mM CaCl、1mM MgCl、5.4mM KCl、10mMグルコース、および10mM HEPES(pH7.35)を含有する標準Tyrode溶液とした。ピペット溶液は、130mM CsCl、1mM MgCl、5mM EGTA、および10mM HEPES(pH7.35)とした;ピペット内には1mM ATP−Mg2+(pH7.4)も含めた。
【0116】
ピペットはホウケイ酸ガラスから調製し、2段ナラシゲ(Narashige)プラーにより引っ張り、1−1.5MΩの抵抗を得た。データはDigidata 1200 デジタイザーおよびAxopatch 1D 増幅器を備えたAxopatch CV-4 headstageにより得た。データをpClamp 6.04 (Axon Instruments、Foster City、CA)、ロータス(Lotus)123 (IBM)および Origin (Microcal)ソフトウェアを用いて分析した。
【0117】
化合物1と化合物2は1%DMSO中最終濃度1μMで用いた。
【0118】
(結果)
表1に示すように、1%DMSOは対照電流に対して影響を及ぼさなかった。hClC−2(対照)を形質移入されたHEK細胞におけるCl電流は、1μMの化合物1および1μMの化合物2によって活性化された。化合物1も化合物2も非−形質移入細胞におけるCl電流を増加させなかった。
【0119】
これらの研究により、化合物1と化合物2がClC−2チャンネルオープナーであることが示された。
【0120】
【表1】

【0121】
N.S.:有意差無し
化合物1:13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGE((−)−7−[(2R,4aR,5R,7aR)−2−(1,1−ジフルオロペンチル)−2−ヒドロキシ−6−オキソぺルヒドロシクロペンタ[b]ピラン−5−イル]ヘプタン酸)
化合物2:13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−18(S)−メチル−PGE((−)−7−{(4aR,5R,7aR)−2−[(3S)−1,1−ジフルオロ−3−エチルペンチル]−2−ヒドロキシ−6−オキソぺルヒドロシクロペンタ[b]ピラン−5−イル}ヘプタン酸)
【0122】
(試験例2)
(方法)
健康な個体由来のヒト気道細胞系であり、ClC−2および嚢胞性線維症膜貫通レギュレーター(Cystic Fibrosis Transmembrane Regulator)である、Clチャンネル(CFTR)を含む16HBE14o−細胞;および嚢胞性線維症患者由来のヒト気道細胞系であり、機能的形態のClC−2および欠陥形態のCFTR(△F508CFTR)を含むCFBE41o−細胞を用いた。両方の細胞を10%FBS(Hyclone)、20mM L−グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを追加したMEMで、フィブロネクチン/コラーゲン/BSAでコーティングしたフラスコ中で培養した。所望の場合、細胞を0.3cmコラーゲン−コーティングした透過性のフィルター(Biocoat)に播種した。24時間後、頂端側の培地を除去し、細胞を空気−水の界面で培養した。空気−水の界面で培養している間、細胞の基底外側に培地が与えられ、培地を一日おきに交換した。細胞を集密するまで増殖させた。
【0123】
短絡回路電流測定を用いて空気−水の界面で増殖させた細胞の分極した集密培養物におけるCl輸送を評価した。0.3cmの透過性の支持フィルターにおいて増殖させた集密細胞単層における短絡回路電流測定のためにプレキシグラス(plexiglass)チャンバー(World Precision instruments、Sarasota、FL)を用いた。電気計測は7402C電圧固定装置(Bioengineering Department、Iowa University)を用いて行った。温度を熱水をチャンバーのウォーター・ジャケットに循環させることにより37℃に保持した。増幅器の出力をアナログ・チャート・レコーダーにプロットした。被験化合物の添加後の短絡回路電流における変化(△Isc)をフィルター面積(0.3cm)に対して標準化し△Isc/cmとして報告した。
【0124】
16HBE14o−およびCFBE41o−細胞における短絡回路電流測定はLofling et al. (Am J Physiol、277(4 Pt 1):L700-8、1999、この参考文献は引用により本出願に含まれる)に記載のように行った。側底膜溶液は、116mM NaCl、24mM HCO、3mM KCl、2mM MgCl、0.5mM CaCl、3.6mM HEPESナトリウム、4.4mM HEPES水素(pH7.4)および10mMグルコースを含むものとした;頂端膜浴溶液は側底膜溶液と以下の点を除いては同じとした;Cl濃度をNaClをグルコン酸ナトリウムに置換することにより低下させ、グルコン酸によるCa2+のキレート化を補うためにCaClを0.5mMから2mMに上昇させた。両溶液にCO/O(5%/95%)を通気し、これによって溶液の混合が促された。すべての場合において、側底膜は200μg/mlナイスタチンによって透過性にした。
【0125】
化合物1および化合物2を最終濃度1μMにて用いた。DMSOの最終濃度は1%とした。
【0126】
(結果)
表2に示すように、1μMの化合物1は16HBE14o−細胞における短絡回路電流を増加させた。化合物1による活性化の程度は、9.56±0.095μA/cmであった。化合物2も16HEB14o−細胞において短絡回路電流を11.6±1.3μA/cm増加させた。1%DMSOによる負の効果は大きく、およそ−10.5±2.0μA/cmであった。DMSOにより短絡回路電流が大幅に減少したにもかかわらず、化合物1と化合物2の正味の効果はこれら細胞で正であった。
【0127】
表2に示すように、1μMの化合物1はCFBE41o−細胞における短絡回路電流を5.0±0.04μA/cm増加させた。1%DMSOは短絡回路電流を−5.7±1.8μA/cm減少させた。DMSOによる大きな負の効果にかかわらず、化合物1はCFBE細胞におけるCl電流において正味の正の増加をもたらした。
【0128】
これらの結果は化合物1と化合物2はともに16HBE14o−細胞におけるClチャンネルのオープナーであり、化合物1はCFBE41o−細胞におけるhClC−2のオープナーであることを示す。
【0129】
【表2】

【0130】
(試験例3)
(方法)
AS−HBEは、CFTRの最初の131ヌクレオチドをアンチセンス方向に発現するヒト気管支上皮(HBE)細胞系(アンチセンスCFTR16HBE14o−細胞、HBE−AS;AS−HBEとも称される)である。その結果、AS−HBE細胞はCFTR転写産物を欠き、機能性のCFTRを欠く。しかしながら、AS−HBE細胞はその起源である親細胞系、16HBE14o−細胞と同様に機能性のClC−2を発現する。AS−HBE細胞を37℃で5%/95%CO/Oにてアール塩(Earl's salt)、L−グルタミン(GIBCO/Invitrogen)、10%熱不活性化胎仔ウシ血清、100ユニット/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン硫酸塩および400μg/ml G−418(GIBCO/Invitrogen)を追加した最小必須培地(MEM; GIBCO/Invitrogen、Carlsbad、CA)に維持した。細胞を空気−液体界面でヒト血漿フィブロネクチン(GIBCO/Invitrogen)およびビトロゲン(vitrogen)(Cohesion Technologies、Palo Alto、CA)でコーティングしたバイオコート・インサート(Biocoat inserts)(Fisher Scientific、Chicago、IL)上で増殖させた。
【0131】
試験例2に記載したのと同様にして、AS−HBE細胞における短絡回路電流測定を行った。短絡回路電流における変化(△Isc)をフィルター面積(0.3cm)に対して標準化し、△Isc/cmとして報告した。
【0132】
被験化合物は最終濃度250nMで用いた。
【0133】
(結果)
表3はAS−HBE細胞における短絡回路電流に対する被験化合物の効果を示す。結果は本発明の化合物が有効なClC−2チャンネルオープナーであることを示す。
【0134】
【表3】

【0135】
化合物1および2:試験例1を参照されたい。
化合物3:13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGEN−エチルアミド(N1−エチル−7−[(2,4aR,5R,7aR)−2−(1,1−ジフルオロペンチル)−2−ヒドロキシ−6−オキソぺルヒドロシクロペンタ[b]ピラン−5−イル]ヘプタンアミド)
化合物4:15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGE
化合物5:2−デカルボキシ−2−(2−カルボキシエチル)−13,14−ジヒドロ−15−ケト−16、16−ジフルオロ−20−エチル−PGEイソプロピルエステル(イソプロピル(−)−9−[(4aR,5R,7aR)−2−(1,1−ジフルオロヘプチル)−2−ヒドロキシ−6−オキソぺルヒドロシクロペンタ[b]ピラン−5−イル]ノナノエート)
化合物6:PGF2α
化合物7:PGI−Na
【0136】
(試験例4)
(方法)
試験例1に記載の方法に従って、全細胞パッチクランプ測定を行った。
【0137】
被験化合物によって誘導される電流の増加は被験化合物の添加後の対照からのpA/pFの変化(△pA/pF)として報告した。
【0138】
被験化合物は最終濃度100nMにて用いた。
【0139】
(結果)
表4は被験化合物のClC−2を形質移入されたHEK細胞におけるClC−2活性化に対する効果を示す。結果は本発明の化合物が有効なClC−2チャンネルオープナーであることを示す。
【0140】
【表4】

【0141】
化合物1および2:試験例1を参照されたい。
化合物8:13,14−ジヒドロ−16,16−ジフルオロ−PGE
化合物9:13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGF1αN−エチルアミド(N1−エチル−7−[(2,4aR,5R,6S,7aR)−2−(1,1−ジフルオロペンチル)−2,6−ジヒドロキシぺルヒドロシクロペンタ[b]ピラン−5−イル]ヘプタンアミド)
【0142】
(試験例5)
(方法)
密着結合している集密単層由来のヒト腸細胞系である、T84細胞を用いた。該細胞系は短絡回路電流(Isc)を用いたCl輸送の研究に広く用いられている。これら細胞はCFTRとClC−2との両方を含む。
【0143】
84ヒト腸上皮細胞をpH7.4で162−cmのフラスコ(Corning Costar、MA)でダルベッコ改変イーグル培地と6%胎仔ウシ血清(FBS)、15mM HEPES、14.3mM NaHCO、および抗生物質/抗真菌剤を追加したHam’sF−12栄養分混合物の1:1混合物中で集密まで増殖させた。フラスコを毎週継代し、3日ごとに栄養を与えた。実験用の細胞単層をコラーゲン−コーティングした透過性の支持体(Biocoat)上で集密するまで増殖させた。単層に3日ごとに栄養を与え、安定な経上皮耐性が達成された後、およそ播種の7-14日後に用いた。
【0144】
試験例2の記載と同様にして、T84細胞における短絡回路電流測定を行った。短絡回路電流における変化(△Isc)をフィルター面積(0.3cm)に対して標準化し、△Isc/cmとして報告した。
【0145】
化合物1を最終濃度50nMにて用いた。
【0146】
(結果)
表5はT84細胞における短絡回路電流に対する化合物1の効果を示す。結果は、化合物1がヒト腸細胞系、T84においてCl輸送を活性化したことを示す。
【0147】
【表5】

【0148】
化合物1:試験例1を参照されたい。
【0149】
(試験例6)
(方法)
少なくとも16時間絶食させたWistar系雄性ラット(6週齢、体重180〜210g)に、化合物1(13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−プロスタグランジンE)の1、10あるいは100μg/kgを5mL/kgの容量で経口投与した。対照群には、媒体(0.5%エタノール・0.01%ポリソルベート80含有蒸留水)を同容量経口投与した。投与30分後に動物をエーテル麻酔下で開腹した。十二指腸起始部と回腸末端部をそれぞれ糸で結紮後、腸管を摘出した。各動物の腸内液をそれぞれ集めた後、10,000×g、5分間遠心した。上清を分取後、腸液上清中のクロライドイオン濃度をクロライドカウンター(CL−7、平沼産業)を用い測定した。対照群と化合物1各用量投与群間の比較にDunnett検定法を用いた。p値0.05未満を統計的有意差ありと判定した。
【0150】
(結果)
各群の腸液内クロライドイオン濃度を表6に示す。化合物1の1、10及び100μg/kgの投与により、腸管内クロライドイオン濃度は、用量依存的に増加した。化合物1の1μg/kg投与群から対照群と比較し有意な腸液内クロライドイオン濃度の増加が認められた。
【0151】
以上の結果は、腸管において化合物1がクロライドチャンネルをオープンすることにより、クロライドイオンの輸送を積極的に促進することを示している。
【0152】
【表6】

【0153】
Dunnett検定:対照群と比較し、** P<0.01
【0154】
(試験例7)
(方法)
雄性ウイスターラット(6週齢、体重:180〜210g)に、化合物2(13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−18(S)−メチル−プロスタグランジンE)の100μg/kgを1日3回7日間経口投与した。対照群(n=7)には、同容量の媒体(0.01%ポリソルベート80、0.5%エタノール含有蒸留水)を投与した。投与最終日の翌朝(最終投与の約17時間後)、エーテル麻酔下でラットの総胆管内にポリエチレンカテーテル(PE10、Becton Dickinson and Company)を挿入した。ラットをボールマンケージに収容後1時間放置し麻酔から覚醒させた。カテーテル挿入1〜2時間後の1時間に排出された胆汁を採取後、胆汁中クロライドイオン濃度をクロライドカウンター(CL−7、平沼産業(株))を用い測定した。対照群と化合物2投与群間の比較にStudentのt検定法を用いた。p値0.05未満を統計的有意差ありと判定した。
【0155】
(結果)
各投与群の胆汁内クロライドイオン濃度を表7に示す。化合物2投与群の胆汁中クロライドイオン濃度は、対照群と比較し有意に増加した。
【0156】
以上の結果は、肝臓において化合物2がクロライドチャンネルをオープンすることにより、クロライドイオンの輸送を積極的に促進することを示している。
【0157】
【表7】

【0158】
Studentのt検定:対照群と比較し、 p<0.05
【0159】
(試験例8)
(方法)
雄性白色家兎に、生理食塩液、点眼液媒体、化合物1の0.0001%点眼液あるいは0.001%点眼液を、30μL/眼の容量で点眼した。点眼前(0時間)および点眼2、4、6、および8時間後に、キャピラリーピペットを用い、下眼瞼の結膜嚢内から涙液5μLを採取した。採取した涙液を蒸留水で5倍に希釈した後、クロライドカウンター(CL−7、平沼産業(株))を用い、クロライドイオン濃度を測定した。対照群と化合物1各用量投与群間の比較にStudentのt検定法およびWilcoxon検定法を用いた。p値0.05未満を統計的有意差ありと判定した。
【0160】
(結果)
各投与群の涙液中のクロライドイオン濃度を表8に示す。涙液中のクロライドイオン濃度は、対照群と比べ、化合物1の投与により濃度依存的に増加した。対照群と比較し、0.0001%化合物1点眼液群では点眼後4および8時間後に、0.001%化合物1点眼液群では点眼後2、4および8時間後に、それぞれ有意な涙液中クロライドイオン濃度の増加が認められた。
【0161】
以上の結果は、点眼により眼において化合物1がクロライドチャンネルをオープンすることにより、クロライドイオンの輸送を積極的に促進することを示している。
【0162】
【表8】

【0163】
Studentのt検定:対照群と比較し、p<0.05、##p<0.01
Wilcoxon検定:対照群と比較し、[#]p<0.05、[##]p<0.01

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IV)で表される新規化合物:
【化1】

[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、五員環は1または複数の二重結合を有していてもよい);
R’およびR''は、水素、低級アルキル、アリール、アルキル−またはアリール−スルホニル、低級アルケニルまたは低級アルキニル;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和二価低〜中級脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;そして、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;複素環オキシ基]。
【請求項2】
化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGEN−エチルアミドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGF1αN−エチルアミドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−17−フェニル−18,19,20−トリノールPGF2αN−エチルアミドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
化合物が13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチル−PGF2αN−エチルアミドである、請求項1に記載の化合物。

【公開番号】特開2011−102313(P2011−102313A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1763(P2011−1763)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【分割の表示】特願2003−533944(P2003−533944)の分割
【原出願日】平成14年8月29日(2002.8.29)
【出願人】(501131276)スキャンポ・アーゲー (37)
【氏名又は名称原語表記】Sucampo AG
【Fターム(参考)】