説明

クロライドチャンネル伝導性を測定する方法

本発明は、機能性クロライドチャンネルについてアッセイするための非放射性方法を提供する。該方法はクロライドチャンネルにより伝導されるヨウ化物の量を比色分析で検出する。それらはハイスループットアッセイもしくはスクリーニングに容易に適応することができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願へのクロスリファレンス】
【0001】
本願は、2004年6月23日に出願された出願第60/582,338号に優先権を請求する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、クロライドチャンネル伝導性(chloride channel conductivity)を決定する方法に関する。さらに特に、本発明はクロライドチャンネル伝導性をアッセイするための比色検出方法に関する。
【背景技術】
【0003】
クロライドチャンネルは、イオン恒常性、膜電位調節、細胞容積調節、経上皮輸送、および電気興奮性の調節が包含されるがこれらに限定されるものではない、重要な生理的役割を果たす。それらは、嚢胞性線維症およびバーター症候群における経上皮輸送の障害、先天性ミオトニーにおける増加した筋興奮性、デント病における低下したエンドソーム酸性化およびエンドサイトーシス障害、ならびに破骨細胞および大理石骨病および失明における細胞外酸性化障害のような多種多様な疾患におけるそれらの関連性のために、製薬産業にとって重要性を増している標的クラスである。クロライドイオンチャンネルの異なるファミリーは異なる構造を有するが、それらは共通の機能要素を共有する。例えば、該チャンネルは全て、それらの電気化学的勾配に沿ってクロライドイオン(Cl)の受動拡散を可能にする生体膜におけるタンパク性細孔である。これらのチャンネルはまた、Br、I、NO、HCO、SCNのような他の負に荷電したイオンおよびいくつかの小さな有機酸を伝導することもできる。主として、クロライドは生体系における最も豊富な陰イオンであるという理由で、それらはクロライドチャンネルと命名される。
【0004】
クロライドチャンネルの3つの確立した遺伝子ファミリーがある:CLC、CFTR、ならびにリガンド依存性GABAおよびグリシン受容体(非特許文献1)。CLICもしくはCLCAのような他の遺伝子ファミリーもまた、クロライドチャンネルをコードすると報告されたが、あまり特性化されていない(非特許文献1)。ClCファミリーは、これまでに確立されたクロライドチャンネルの全てのクラスのうち最も遍在的に発現される。CLC遺伝子は、原核生物および真核生物の両方に存在する。多数のCLCチャンネルは電位依存性であり、そしてIよりClにより大きい伝導性を示す。上記のもののような疾患を引き起こすのは、CLC遺伝子における突然変異である。嚢胞性線維症膜貫通調節因子(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)、CFTRは電圧非依存性(voltage−independent)陰イオンチャンネルであり、それは効率のよい活性のために加水分解可能なヌクレオシド三リン酸の存在を必要とする。CFTRはIよりClにより大きい陰イオン透過性を有し、そして嚢胞性線維症と関連する。GABAおよびグリシン受容体は、リガンドゲート性(ligand−gated)クロライドチャンネルである。GABA(γ−アミノ酪酸)およびグリシンは、哺乳類中枢神経系(CNS)における素早い抑制性神経伝達のための主要な神経伝達物質である。それらはそれらの受容体に結合し、そして固有の陰イオンチャンネルを開き、電気化学的駆動力によりCl流入もしくは流出をもたらす。GABAおよびグリシン受容体は両方とも、ClよりIにより大きい透過性を示す。それらは、抗癲癇薬、抗不安薬、鎮静剤、睡眠薬、筋弛緩剤および麻酔薬を包含する、広範囲の臨床的に重要な薬剤の標的である。
【0005】
クロライドチャンネル活性を調節するために新薬を同定することが必要とされるが、クロライドチャンネルの容易に利用可能な高親和性リガンドはない。対照的に、陽イオンチ
ャンネルは、動物性毒素に由来することが多い非常に特異的なチャンネル遮断薬を有し、スクリーニングアッセイの開発をより簡単にしている。クロライドチャンネル遮断薬はむしろ非特異的であり、そしてマイクロモル〜ミリモルさえの範囲の有効遮断濃度で低い効能を有する。
【0006】
クロライドチャンネルのモジュレーターを同定するための既存の技術は、スループット、生理的関連性、感度およびロバスト性間の妥協である。現在最もよく知られたアッセイは、おそらくパッチクランプ技術である。パッチクランプ技術は、膜の小パッチを横切るもしくは全細胞の原形質膜を横切る電位差を制御する。該技術は、イオンチャンネルを通してその電圧で膜を横切るイオンによって運ばれる電流を直接評価する。この技術は、単一細胞もしくは単一チャンネル(膜の小パッチ内)レベルでイオンチャンネル機能の質の高いそして生理的に関連するデータを与える。しかし、パッチクランプ実験を設定することは、振動および電気的雑音からの干渉を系が受けにくくするために高度に訓練された人材を必要とする複雑なプロセスである。熟練パッチクランパーのスループットは、せいぜい、1日当たり10〜30データ点である(非特許文献2)。そのような低いスループットおよび高い労働コストは、ハイスループットスクリーニング(HTS)目的のために許容しうるには程遠い。いくつかの企業はパッチクランププロセスを自動化しようと試みているが、実験設定の現在の複雑さおよび再現性は、それをHTS用途に不適当にする。
【0007】
フラックスアッセイに基づく技術は、イオンチャンネル薬剤スクリーニング用に完全に自動化されたハイスループット形態において現在利用可能である。フラックスアッセイは、クロライドチャンネルの機能研究に使用されている(概説、非特許文献3を参照)。細胞内クロライドイオン(Cl)濃度は高いので、クロライドイオンのマイクロモル以下の濃度の変化を比色分析で測定することによりクロライドチャンネル伝導性の変化を検出することは難しい。従って、放射性標識された36Clもしくは125イオン流入が、クロライドチャンネル伝導性を測定するために使用されている。放射性標識された36Clもしくは125、またはCl感受性蛍光指示薬はまた、クロライドチャンネルからのイオン流出を測定するためにも使用されている。
【0008】
ハイスループットスクリーニング(HTS)形態に容易に適応可能なクロライドチャンネルの高感度の非放射性定量アッセイ方法が必要とされる。
【非特許文献1】Jentsch et al.,2002,Physiol Rev.82:503−568
【非特許文献2】Xu,et al.(2001),Drug Discovery Today,6:1278−12887
【非特許文献3】Sikander et al.,Assay and Drug Development Technologies(2003),1(5),709−717
【発明の開示】
【0009】
[発明の要約]
本発明は、機能性クロライドチャンネルについてアッセイするための比色分析法を提供する。該方法は、ハイスループットアッセイもしくはスクリーニングに容易に適応することができる。
【0010】
本発明の他の態様、特徴および利点は、本発明の詳細な記述およびその好ましい態様ならびに添付の請求項を包含する以下の開示から明らかである。
[発明の詳細な記述およびその好ましい態様]
以下に引用する全ての公開は、引用することにより本明細書に組み込まれる。他に定義されない限り、本明細書において用いる全ての技術および科学用語は、本発明が関係する
当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0011】
本明細書において用いる場合、「含んでなる」、「含有する」、「包含する」および「有する」という用語は、それらのオープンな(open)限定されない意味で用いられる。
【0012】
本発明は、トレーサーとして非放射性ヨウ化物を用いてクロライドチャンネル伝導性を研究する比色検出方法を提供する。大部分のクロライドチャンネルはヨウ化物を伝導し、そしてヨウ化物の細胞内濃度は非常に低い。従って、本発明のクロライドチャンネルの伝導性を測定する方法は:a)クロライドチャンネルをヨウ化物と接触させる段階;およびb)クロライドチャンネルにより伝導されるヨウ化物の量を比色分析で検出する段階を含んでなる。
【0013】
本明細書において用いる場合、「比色検出方法」(colorimetric detection method)は、そのサンプルにおけるヨウ素濃度の指示薬として試験サンプルにおける着色した薬剤を検出する段階を含んでなる方法をさす。信頼性のあるそして高感度の「比色検出方法」は、食品もしくは尿サンプルのような生体サンプルにおけるヨウ素含有量の調査において使用されている(例えば、Yaping Z.et al.,Clin Chem.1996 Dec;42(12):2021−7を参照)。本発明の方法は、試験サンプルにおけるヨウ素の量を決定するために使用されているかもしくはこれから開発される様々な「比色検出方法」を利用することができる。そのような比色検出方法は、ヨウ素(I)またはヨウ化物(I)もしくはヨウ素酸(IO)のようなそのイオンの触媒効果に基づくことが多い。
【0014】
1つの好ましい態様において、試験サンプルにおけるヨウ化物の量を決定するために用いることができる「比色検出方法」は、サンデル・コルトフ(Sandel and Kolthoff)の方法(SK法)(Sandell et al.,1937,Mikrochem.Acta,1:9)に由来する。SK法は、サンデル・コルトフ反応:
【0015】
【化1】

【0016】
に基づく。SK法は、亜ヒ酸による無色のCe3+への黄色に着色したセリウムイオン(Ce4+)の還元へのヨウ化物(I)の触媒効果を利用する。試験サンプルに存在するヨウ化物が多いほど、SK反応は速くなり、そして黄色に着色したCe4+はより速く消失する。試験サンプルにおけるCe4+の量は、試験サンプルを含んでなる液体により吸収される光の量として定義される、光の吸光度により決定することができる。特に、吸光度は、液体サンプルを通して既定波長で光を発し、そして液体サンプルを通過する光の量を測定することにより、比色計もしくは分光光度計を用いて測定することができる。例えば、試験サンプルにおけるCe4+の量は、約405nmの波長での光の吸光度(OD405)により測定することができる。SK反応に基づく比色検出方法の例は、実証の目的のために以下に提供される。SK検出系は高感度で且つ信頼性があり、そして世界保健機関(WHO)により国際基準ヨウ素検出方法として提示されている。
【0017】
別の態様において、試験サンプルにおけるヨウ化物の量を決定するために用いることができる「比色検出方法」は、ヨウ化物転化試験である。この試験では、最初にヨウ化物をヨウ素に転化し、そして次にヨウ素澱粉試験を用いてヨウ素の量を決定する(Wade,1925,Ind.Eng.Chem.,17:470)。ヨウ化物は、それを塩素のような任意の適当な酸化剤と反応させることにより遊離のヨウ素に酸化することができる。
遊離のヨウ素は、澱粉と青色に着色した複合体を形成することができる。反応混合物に存在するヨウ化物が多いほど、青色に着色した澱粉ヨウ素複合体がより多く形成される。反応混合物における澱粉ヨウ素複合体の量は、例えば、480nmの波長で(OD480)、水(上)相の光の吸光度により決定することができる(Kozutsumi et al.,2000,Cancer Letters,158:93−98)。
【0018】
試験サンプルにおけるヨウ化物の量を決定するために用いることができる「比色検出方法」の別の例は、Sveikinaの方法に由来する(Moxon et al.,1980,Analyst,105:344−352;およびKenneth O.et al.,2001,Polish Journal of Food and Nutrition Sciences,10:35−38)。この方法では、ヨウ化物は、鉄(III)イオンの添加により生成されるチオシアン酸鉄(III)の橙色の付随する減少を伴って、亜硝酸塩によるチオシアン酸塩の破壊を触媒する。サンプルに存在するヨウ化物が多いほど、より少ないチオシアン酸鉄(III)が生成される。チオシアン酸鉄(III)の量は、例えば約430nmの波長で、光の吸光度により決定することができる。
【0019】
試験サンプルにおけるヨウ化物の量を決定するために用いることができる「比色検出方法」のさらに別の例は、着色生成物を生成せしめる、過酢酸/Hでの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)のヨウ化物触媒による酸化に基づく(Rendl et al.,1998,J.Clin Endocrinol Metab,83(3):1007−12)。第一の着色生成物は、親ジアミンとジアミン酸化生成物の青色の電荷移動錯体である。この種は、TMBラジカルカチオンと迅速平衡状態で存在する。高いヨウ化物濃度で、試験サンプルは青色になり、緑色段階を通過し、そして最終的に黄色になる。試験サンプルにおけるヨウ化物の量は、例えば約655nmの波長で、光の吸光度により定量的に測定することができる。
【0020】
比色検出方法は、任意のクロライドチャンネルに関連して利用することができる。そのようなクロライドチャンネルには、電圧ゲート性(voltage−gated)クロライドチャンネル、リガンドゲート性(ligand−gated)クロライドチャンネル、膨張活性化(swelling−activated)クロライドチャンネル、カルシウム活性化クロライドチャンネルおよびCLICクロライドチャンネルが包含されるがこれらに限定されるものではない。本発明の方法を用いてアッセイすることができる好ましいクロライドチャンネルは、CLC、CFTR、ならびにリガンド依存性GABAおよびグリシン受容体である。
【0021】
クロライドチャンネルは陰イオンの受動拡散を可能にするので、それらの活性化は、陰イオンの電気化学ポテンシャルにより、陰イオンの受動流入もしくは流出をもたらすことができる。本明細書において用いる場合、クロライドチャンネルを通した系への陰イオンの「流入」(influx)は、系の表面上に組み込まれたクロライドチャンネルを介して系の外側の陰イオンが系に入ってくるプロセスをさす。細胞もしくは膜小胞への陰イオンの「流入」は、細胞膜もしくは膜小胞の膜に位置するクロライドチャンネルを介して細胞もしくは膜小胞の外側の陰イオンが細胞もしくは膜小胞に入ってくるプロセスをさす。本明細書において用いる場合、クロライドチャンネルを通した系からの陰イオンの「流出」(efflux)は、系の表面上に組み込まれたクロライドチャンネルを介して系の内側の陰イオンが系から出でくるプロセスをさす。細胞もしくは膜小胞からの陰イオンの「流出」は、細胞膜もしくは膜小胞の膜に位置するクロライドチャンネルを介して細胞もしくは膜小胞の内側の陰イオンが細胞もしくは膜小胞から出てくるプロセスをさす。例えば、活性化の際に、CFTRもしくはGABA受容体は細胞からの陰イオンの流出を媒介することができ、そしてGABA受容体はまた細胞への陰イオンの流入を媒介することもできる。
【0022】
本発明の方法は、クロライドチャンネルを含んでなる系へのヨウ化物の流入ならびにクロライドチャンネルを含んでなる系からのヨウ化物の流出を測定するために用いることができる。本明細書において用いる場合、「クロライドチャンネルを含んでなる系」は、成分の表面上にリン脂質二重層膜、および膜に組み込まれたクロライドチャンネルを有する任意の構造的に別個の成分をさす。
【0023】
1つの好ましい態様において、「クロライドチャンネルを含んでなる系」は、クロライドチャンネルを発現する細胞であることができる。細胞は、細菌細胞もしくは酵母細胞のような微生物細胞、植物細胞、またはヒト、マウス、ラットもしくは他の哺乳類に由来する細胞のような動物細胞であることができる。細胞は、興味のあるクロライドチャンネルを内因的に発現する自然宿主細胞であることができる。例えば、多くの上皮細胞はCFTRチャンネルの自然宿主であることができ、そしてニューロンはGABA受容体の自然宿主であることができる。好ましくは、興味のあるクロライドチャンネルは、アッセイ条件下で活性である唯一のもしくは主要なタイプのクロライドチャンネルである。興味のあるチャンネルを特異的に活性化するために下記の方法を用いることに加えて、細胞における所望されないクロライドチャンネルを不活性化する方法は、当業者に既知である。例えば、細胞における所望されないクロライドチャンネルは、チャンネルの遮断薬もしくはインヒビターのような特定の化学物質に細胞を供することにより一時的に不活性化することができる。もしくは、所望されないクロライドチャンネルは、遺伝子ノックアウトもしくはアンチセンス技術のような遺伝子操作により永久的に不活性化することができる。
【0024】
クロライドチャンネルを発現する細胞はまた、組み換え宿主細胞であることもできる。興味のあるクロライドチャンネルを発現することができる核酸分子で細胞をトランスフェクションすることができる。クロライドチャンネル遺伝子は、例えば、細胞に安定にもしくは一時的にトランスフェクションされるベクターから発現することができる。遺伝子発現に適当なベクターは当該技術分野において既知であり、そして多くのものは市販されている。
【0025】
別の好ましい態様において、「クロライドチャンネルを含んでなる系」は、膜にクロライドチャンネルを含んでなる膜小胞であることができる。膜小胞は、クロライドチャンネルを含んでなる組織膜、原形質膜、細胞膜もしくは内部細胞小器官膜のような生体膜から調製することができる。例えば、CFTRは様々な上皮の頂端膜において、最も顕著には腸、気道、分泌腺、胆管および精巣上体のものにおいて発現される。そのような頂端膜の膜小胞は、CFTRを研究するために用いることができる。生体膜小胞の単離および調製の方法は、当業者に既知である。例えば、そのような方法には、組織もしくは細胞の機械的もしくは酵素的破壊段階、他の成分から膜を分離するための遠心分離段階、および適当なバッファー溶液に膜小胞を再懸濁する段階を含むことができる。
【0026】
膜小胞はまた、人工膜から調製することもできる。精製されたクロライドチャンネルタンパク質を脂質二重層に再構成して人工膜小胞を形成することができる(Chen et
al.,1996,J.Gen.Physiol.108:237−250を参照)。これらの膜小胞はわずかなタンパク質しか含有することができず、そして少なくとも1つのそしておそらく1つのタイプのみのクロライドチャンネルタンパク質を含有するように製造し、それによりクロライドチャンネルの単一タイプを含有する小胞を反映するようにデータの焦点を合わせることができる。人工膜小胞の調製の方法は当業者に既知である。
【0027】
膜小胞はさらに、細胞小器官の膜に存在するクロライドチャンネルを有する細胞内小器官であることができる。本発明の方法において使用することができる細胞内小器官の例には、ミトコンドリア、ゴルジ装置、リソソームおよびエンドソームが包含されるがこれら
に限定されるものではない。細胞内小器官を単離するかもしくは濃縮する方法は当業者に既知である。
【0028】
ある態様において、細胞溶解および/もしくは剪断はアッセイ中にそれほど問題ではないので、興味のあるクロライドチャンネルを含んでなる膜小胞はより容易な形態を提供することができる。しかしながら、別の態様において、例えば、細胞膜調製方法が興味のあるチャンネルを破壊するかもしくは不活性化する場合、興味のあるクロライドチャンネルを発現する細胞が好ましい。
【0029】
1つの態様において、クロライドチャンネルの伝導性は、クロライドチャンネルを有する細胞もしくは膜小胞へのヨウ化物流入の量により測定される。そのような方法は:a)ヨウ素を含んでなる溶液中でクロライドチャンネルを有する細胞もしくは膜小胞をインキュベーションし、溶液から細胞もしくは膜小胞を分離する段階;およびb)比色検出方法を用いて細胞もしくは膜小胞内のヨウ化物の量を測定する段階を含んでなる。細胞もしくは膜小胞内の内容物は、溶解もしくは物理的破壊により遊離させるかもしくは抽出することができる。内容物内のヨウ化物の量は、上記の比色検出方法のいずれかにより測定することができる。細胞もしくは膜小胞内に存在するヨウ化物が多いほど、陰イオンに対するクロライドチャンネルの伝導性は強くなる。
【0030】
別の態様において、クロライドチャンネルの伝導性は、クロライドチャンネルを有するヨウ化物負荷細胞もしくは膜小胞からのヨウ化物流出の量により測定される。そのような方法は:a)ヨウ素を実質的に含まない溶液中でクロライドチャンネルを有するヨウ化物負荷細胞もしくは膜小胞をインキュベーションする段階;b)溶液から細胞もしくは膜小胞を分離する段階;およびc)比色検出方法を用いて溶液中のヨウ化物の量を測定する段階を含んでなる。
【0031】
「ヨウ化物負荷細胞もしくは膜小胞」は、方法の段階(a)の前にヨウ化物を含んでなる溶液とインキュベーションした細胞もしくは膜小胞である。1つの態様において、「ヨウ化物負荷細胞もしくは膜小胞」は、ヨウ化物とインキュベーションした後にヨウ化物を含まない溶液もしくはヨウ素を実質的に含まない溶液で洗浄される。以下の実施例3は、「ヨウ化物負荷細胞もしくは膜小胞」をどのようにして調製するかについての方法を説明する。
【0032】
「ヨウ素を実質的に含まない溶液」は、ヨウ素またはヨウ化物もしくはヨウ化物のようなそのイオンを全く含有しないかもしくは非常にわずかな量を含有する溶液をさす。例えば、「ヨウ素を実質的に含まない溶液」は、約1nM未満のヨウ素もしくはそのイオンを有することができる。より多くのヨウ化物が溶液に存在するほど、陰イオンに対するクロライドチャンネルの伝導性は強くなる。
【0033】
ある態様において、ヨウ化物流出を測定する方法は、細胞内のヨウ化物の量を測定する段階のみを含んでなる。細胞内のヨウ化物濃度が低いほど、陰イオンに対するクロライドチャンネルの伝導性は強くなる。
【0034】
別の態様において、ヨウ化物流出を測定する方法は、細胞内のヨウ化物の量に対する溶液中のヨウ化物の量の比率を決定する段階をさらに含んでなる。該比率は、クロライドチャンネルの機能の指標として用いることができる。比率が高いほど、陰イオンに対するクロライドチャンネルの伝導性は強くなる。
【0035】
本発明の方法は、ヨウ化物濃度の測定の前に興味のあるクロライドチャンネルを活性化するかもしくは開く段階をさらに含んでなることができる。本明細書において用いる場合
、クロライドチャンネルを「活性化するかもしくは開くこと」には、クロライドチャンネルによる増加したイオン伝導をもたらす手段が包含される。チャンネルのタイプにより、クロライドチャンネルは異なる手段によって活性化するかもしくは開くことができる。多数のCLCチャンネルのようなあるクロライドチャンネルは電圧ゲート性である。従って、CLCチャンネルの伝導性を調節する(開く/閉じる)ために電気パルスのような電気的シグナルを用いることができる。あるクロライドチャンネルはリガンンドにより調節され、従って、小分子を加えることで活性化することができる。例えば、CFTRは効率のよい活性にcAMPの存在を必要とし;天然のCa2+活性化Clチャンネルは活性化に細胞内Ca2+の存在を必要とし;GABA受容体は活性化にGABAを必要とし;グリシン受容体は活性化にグリシンを必要とするなど。さらに、あるクロライドチャンネルは細胞膨張、すなわち、細胞容積の増加により活性化することができる。
【0036】
本発明の1つの一般的な態様は、機能性クロライドチャンネルの存在について細胞もしくは膜調製物を分析するために本発明の方法を使用できることである。特に、本発明の方法は、患者から採取した臨床サンプル由来の細胞もしくは膜調製物を分析することにより患者におけるクロライドチャンネルの適切な機能を評価するために用いることができる。
【0037】
クロライドチャンネルの機能不全は、多くの病状にかかわっている。例えば、CFTRにおける突然変異は、細胞膜を通したクロライドイオンの正常な通過を妨げる(Welsh et al.,Neuron,8:821−829(1992)。これは、気道、膵臓、腸、汗腺および男性生殖管を包含する、上皮細胞内層を有する臓器の分泌および吸収細胞における減少したクロライドイオン透過性をもたらす。これは次に上皮を横切る水の輸送を減らし、そして嚢胞性線維症を引き起こす。肺およびGI管はこの疾患において冒される主要な臓器系であり、そして病状は粘性の高い粘液での気道およびGI管の遮断を特徴とする。本発明の方法は、患者が嚢胞性線維症を患っているかどうかを診断する試験の1つとして用いることができる。
【0038】
本発明の別の一般的な態様は、クロライドチャンネルの伝導性への試験化合物の効果を決定するために本発明の方法を使用できることである。そのような方法は:a)試験化合物およびヨウ化物とクロライドチャンネルを接触させる段階;b)クロライドチャンネルにより伝導されるヨウ化物の量を比色分析で検出する段階;およびc)クロライドチャンネルを試験化合物と接触させないコントロールのものと検出されるヨウ化物の量を比較する段階を含んでなる。接触させる段階に必要とされるインキュベーション時間の量は、例えば、既知のクロライドチャンネルモジュレーターで時間的経過を行いそして時間の関数として細胞変化を測定することにより、実験的に決定することができる。
【0039】
1つの態様において、該方法はクロライドチャンネルを有する細胞もしくは膜小胞へのヨウ化物の流入を測定し、ヨウ化物を含有する溶液中でクロライドチャンネルを有する細胞もしくは膜小胞をインキュベーションする段階;細胞もしくは膜小胞を試験化合物と接触させる段階;溶液から細胞もしくは膜小胞を分離する段階;比色検出方法を用いて細胞もしくは膜小胞内のヨウ化物の量を測定する段階;および測定されるヨウ化物の量を、クロライドチャンネルを試験化合物と接触させないコントロールの量と比較する段階を含んでなる。クロライドチャンネルを通した系への陰イオンの流入を増加する試験化合物は、コントロールのものと比較した場合に系内のヨウ化物のより高い濃度をもたらす。クロライドチャンネルを通した細胞もしくは膜小胞への陰イオンの流入を減少する(もしくは増加する)試験化合物は、コントロールの量と比較した場合に細胞もしくは膜小胞内のヨウ化物のより低い(もしくはより高い)量をもたらす。
【0040】
別の態様において、該方法はクロライドチャンネルを有するヨウ化物負荷細胞もしくは膜小胞からのヨウ化物の流出を測定し、ヨウ素を実質的に含まない溶液中でクロライドチ
ャンネルを有するヨウ化物負荷細胞もしくは膜小胞をインキュベーションする段階;細胞もしくは膜小胞を試験化合物と接触させる段階;溶液から細胞もしくは膜小胞を分離する段階;比色検出方法を用いて溶液中のヨウ化物の量を測定する段階;および測定されるヨウ化物の量を、クロライドチャンネルを試験化合物と接触させないコントロールの量と比較する段階を含んでなる。クロライドチャンネルを通した細胞もしくは膜小胞からの陰イオンの流出を減少する(もしくは増加する)試験化合物は、コントロールの量と比較した場合に溶液中のヨウ化物のより低い(もしくはより高い)量をもたらす。
【0041】
ある態様において、ヨウ化物流出を測定する方法は、細胞内のヨウ化物の量を測定する段階のみを含んでなる。細胞内のヨウ化物濃度が低いほど、陰イオンに対するクロライドチャンネルの伝導性は強くなる。
【0042】
別の態様において、該方法は細胞内のヨウ化物の量に対する溶液中のヨウ化物の量の比率を決定する段階をさらに含んでなる。該比率は、クロライドチャンネルの機能の指標として用いることができる。クロライドチャンネルを通した細胞もしくは膜小胞からの陰イオンの流出を減少する(もしくは増加する)試験化合物は、コントロールの量と比較した場合により低い(もしくはより高い)そのような比率をもたらす。
【0043】
本明細書に記載の化合物同定方法は、通常の実験室形態を用いてもしくはハイスループットに適応したアッセイにおいて行うことができる。「ハイスループット」(high throughput)という用語は、同時に多数のサンプルの容易なスクリーニングを可能にするアッセイ設計をさし、そしてロボット操作の潜在的可能性を包含することができる。ハイスループットアッセイの別の望ましい特徴は、所望の分析を行うために試薬の使用を減らすかもしくは操作の数を最小限にするように最適化されるアッセイ設計である。アッセイ形態の例には、96ウェルもしくは384ウェルプレート、浮揚液滴および液体処理実験に使用される「ラボ・オン・チップ」(lab on a chip)マイクロチャンネルチップが包含される。プラスチック金型および液体処理装置の小型化が進むにつれて、もしくは改善されたアッセイ装置が設計されるにつれて、より多数のサンプルを本発明の設計を用いて実施できることは当業者に周知である。
【0044】
典型的に試験化合物もしくは候補化合物は有機化合物であるが、それらには多数の化学物質クラスが包含される。好ましくは、それらは小有機化合物、すなわち、50より大きいが約2500未満の分子量を有するものである。候補化合物は、ポリペプチドとの構造的相互作用に必要な官能性化学基を含んでなり、そして典型的には少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルもしくはカルボキシル基、好ましくはこれらの官能性化学基の少なくとも2つ、そしてより好ましくはこれらの官能性化学基の少なくとも3つを含む。候補化合物は、上記に同定される官能基の1つもしくはそれ以上で置換された環状炭素もしくは複素環式構造および/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含んでなることができる。候補化合物はまた、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロール、イソプレノイド、プリン、ピリミジン、上記の誘導体もしくは構造的アナログ、またはその組み合わせなどのような生体分子であることもできる。化合物が核酸である場合、非天然の結合もしくはサブユニットを有する改変された核酸もまた意図されるが、化合物は典型的にDNAもしくはRNA分子である。
【0045】
候補化合物は、合成もしくは天然化合物のライブラリーを包含する多種多様な供給源から得られる。例えば、ランダム化オリゴヌクレオチドの発現、合成有機組み合わせライブラリー、ランダムペプチドのファージディスプレイライブラリーなどを包含する、多種多様な有機化合物および生体分子のランダムおよび指向性(directed)合成に多数の手段が利用可能である。候補化合物はまた、生物学的ライブラリー;空間的にアドレス可能な並行固相もしくは液相ライブラリー;解析を必要とする合成ライブラリー法;「1
ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法(Lam(1997)Anticancer Drug Des.12:145)を包含する、当該技術分野において既知である組み合わせライブラリー法における多数の方法のいずれかを用いて得ることもできる。あるいはまた、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが利用可能であるか、もしくは容易に製造される。さらに、天然および合成的に製造されたライブラリーおよび化合物は、通常の化学的、物理的および生化学的手段によって容易に改変することができる。
【0046】
さらに、既知の薬理学的薬剤は、薬剤の構造的アナログを製造するためにアシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などのような選択的もしくはランダム化学修飾を受けることができる。候補化合物はランダムに選択することができ、またはクロライドチャンネル活性に結合しそして/もしくはその機能を調節する既存の化合物に基づくことができる。従って、候補薬剤の供給源は、クロライドチャンネルの伝導性を増加するかもしくは減少する既知の化合物に基づく分子のライブラリーであり、ここで、既知の化合物の構造は、より多くのもしくはより少ない化学部分(chemical moieties)または異なる化学部分を含有するように分子の1つもしくはそれ以上の位置で改変される。アナログアクチベーター/インヒビターのライブラリーを作製する際に分子に行われる構造的改変は、選択的、ランダム、または選択的およびランダム置換および/もしくは付加の両方の組み合わせであることができる。組み合わせライブラリーの製造における当業者は、そのようなライブラリーを容易に製造することができる。
【0047】
様々な他の試薬もまた方法に含むことができる。これらには、最適なタンパク質−タンパク質および/もしくはタンパク質−核酸結合を促進するために用いることができる塩、バッファー、中性タンパク質(例えばアルブミン)、洗剤などのような試薬が包含される。そのような試薬はまた、反応成分の非特異的もしくはバックグラウンド相互作用を減少することもできる。ヌクレアーゼインヒビター、抗菌剤などのような、アッセイの効率を向上する他の試薬もまた用いることができる。
【0048】
分子ライブラリーの合成の方法の例は当該技術分野において、例えば:Zuckermann et al.(1994).J Med.Chem.37:2678に見出すことができる。化合物のライブラリーは、溶液中(例えば、Houghten(1992)Biotechniques 13:412−421)、またはビーズ(Lam(1991)Nature 354:82−84)、チップ(Fodor(1993)Nature 364:555−556)、細菌(米国特許第5,223,409号)、胞子(特許第5,571,698号)、プラスミド(Cull et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865−1869)もしくはファージ(例えば、Scott and Smith(1990)Science 249:386−390を参照)上に提示することができる。
【0049】
本発明は、クロライドチャンネルの機能分析のための比色検出方法を提供する。本発明の好ましい態様は、他の関連する方法と比較して多数の利点を提供する。例えば、本発明の方法に関与する放射性物質はなく、必要とされる資源および試薬の点で減少したコストおよび減少した廃棄物をもたらす。さらに、本発明の方法は高感度であり、0.01PPMという低いヨウ素濃度を検出することができる。さらに、本発明の方法は、ハイスループット形態に容易に適応することができる。
【0050】
本発明をさらに説明するために、以下の実施例が提供される。
【実施例】
【0051】
実施例1
基準NaI溶液についてのサンデル・コルトフ(SK)アッセイ
【0052】
材料
全ての化学物質は、他に示される以外はSigma Aldrich Corp.(St Louis,MS)から購入した。
【0053】
ヒ酸混合物を調製するために以下の方法を用いた:1)19.8gの三酸化ヒ素(As)を300mlの精製水および50mlの水酸化アンモニア(25%)からなる溶液に溶解し;2)32mlの硫酸および25gの塩化アンモニウム(NHCl)を溶液に加え;そして3)精製水を加えて溶液の最終容量を1000mlにした。
【0054】
硫酸Ce(IV)アンモニア(ammonia−Ce(IV)−sulfate)混合物を製造するために以下の方法を用いた:1)10gの硫酸Ce(IV)アンモニア((NHCe(SO・2HO)を400mlの精製水に懸濁し;2)硫酸Ce(IV)アンモニアを溶解するのを助けるために26mlの硫酸を溶液に加え;そして3)黄色の塩を溶解した後に、精製水を加えて溶液の最終容量を約500mlにした。
【0055】
基準NaI溶液は、最初にNaIを100PPMの最終濃度になるように精製水に溶解し、次に約10、1、0.1、0.01および0.001、0.0001および0.00001PPMの最終濃度になるように96ウェルプレート(カタログ番号3903、Corning)において100PPM溶液の1:10連続希釈を行うことにより調製した。
【0056】
方法
以下の試薬を96ウェルプレートのウェルにおいて混合した:100μlのNaI基準溶液、100μlのヒ酸混合物および100μlの硫酸Ce(IV)アンモニア混合物。反応混合物を室温で約30分間インキュベーションした。ヨウ化物は無色のCe3+へのヒ酸による硫酸Ce(IV)アンモニアにおける黄色に着色したセリウムイオン(Ce4+)の還元を触媒するので、反応混合物中のヨウ化物が多いほど、より少ない硫酸Ce(IV)アンモニアが混合物に残る。反応混合物における硫酸Ce(IV)アンモニアの量は、分光計(Spectrometer Plus、Molecular Device、CA)を用いて反応混合物のOD405として測定した。
【0057】
結果
図1に示されるように、NaIの量が0.01から10PPMまで増加した間に、反応混合物における硫酸Ce(IV)アンモニアの増加する量が無色のCe3+に転化されたので、OD405の減少する値がSKアッセイから測定された。本明細書に記載のSKアッセイを用いて、0.01PPMという低いIを検出することができた。シグナル変化は、0.01〜10PPMの範囲内でほぼ直線状である。
【0058】
実施例2
外向き整流GABAA受容体についてのサンデル・コルトフ(SK)アッセイ
【0059】
材料
実施例1に記載のものと同様の化学物質および試薬を本実施例において使用した。さらに、150mMのNaI、2mMのCaCl、0.8mMのNaHPO、1mMのMgClおよび5mMのIK、2%のFBS(#35−010−AV、CELLGRO、VA)pH7.4からなるヨウ素負荷バッファーは、精製水に各記載の成分を混合しそして溶解し、それに応じてpHを調整することにより調製した。
【0060】
ヒトGABAA(アデノウイルスタイプ)を発現する細胞系は、American T
ype Culture Collection(ATCC、カタログ番号CRL−2029)から入手した。細胞は、DMEM培地(#10−017−CV、CELLGRO、VA)、4mMのL−グルタミン、1.5g/Lの重炭酸ナトリウム、4.5g/Lのグルコース、1.0mMのピルビン酸ナトリウムおよび10%のウシ胎仔血清(#35−010−AV、CELLGRO、VA)からなる補足DMEM培地において培養した。
【0061】
方法
補足DMEM培地中の細胞(200μl、約250,000細胞/ml)をD−リシン被覆96ウェルプレート(Corning、カタログ番号3667)の各ウェルに加え、そして90%の空気/10%のCO下で37℃で組織培養インキュベーターにおいて一晩インキュベーションした。次に、補足DMEM培地をマルチチャンネルピペッターで除き、そして200μlのヨウ素負荷バッファーをRapid PlateTM(Zymark、MA)で各ウェルに加えた。細胞を90%の空気/10%のCO下で37℃で2〜4時間インキュベーションし、そして続いてリン酸緩衝食塩水(DPBS、Invitrogen、CA)もしくは培養培地で洗浄した。DPBS(100〜200μl)を各ウェルに加えた。GABAを100、30、10、3、1、0.3、0.1もしくは0μMの最終濃度でZymark Rapidプレート(Zymark、MA)で各ウェルに加えた。いくつかのアッセイでは、GABAに加えて、既知のGABAAチャンネルアンタゴニスト、ピクロトキシニン(P−8390、Sigma、MO、Khrestchatisky et al.,1989,Neuron 3:745−53)もしくはビククリン(B−6889、Sigma)のような試験化合物もまた細胞に加えた。細胞を試験化合物の存在下もしくは不在下でGABAと5分間インキュベーションした後に、それらを懸濁バッファーから分離し、そして100μlの細胞溶解バッファー(1%のTriton X−100)で溶解した。溶解した細胞におけるIの量を実施例1に記載のSKアッセイ方法により測定した。
【0062】
結果
図2により、SKアッセイにより測定した場合にGABAAチャンネルの外向き伝導性がGABAの量を増加するとともに増加することが示された。GABAはGABAAチャンネルを活性化し、細胞からのヨウ化物の流出をもたらした。図1に示されるように、反応混合物中のヨウ化物が多いほど、OD405でのより低い吸光度値がSKアッセイから測定される。GABAAチャンネルの伝導性は、100(OD405sample−OD405low)/(OD405high−OD405low)(ここで、OD405sampleは様々な濃度のGABAで処理した細胞についてSKアッセイから測定され;OD405highは300μMのGABAで処理した細胞についてSKアッセイから測定され;そしてOD405lowはGABA処理なしの細胞についてSKアッセイから測定される)として定義される、チャンネルのパーセント活性として表される。300μMのGABAでの反応と比較した場合にGABAAチャンネルの活性が半分誘導されるGABAの濃度である、GABAの測定EC50は7.69+/−0.3μMであった。
【0063】
図4により、SKアッセイにより測定した場合にGABAAチャンネルの伝導性がGABAAチャンネルの非競合的インヒビターもしくは競合的遮断薬の量を増加するとともに減少することが示された。ここでもまた、GABAチャンネルの伝導性は、上記に定義されるようなチャンネルのパーセント活性として表される。本明細書に記載のアッセイ条件下で、GABAAチャンネル非競合的インヒビターピクロトキシンは、30μMのGABAの存在下で約5.3μMのIC50、そして300μMのGABAの存在下で約10μMのIC50を有した。GABAチャンネル競合的遮断薬ビククリンは、30μMのGABAの存在下で約1μMのIC50、そして300μMのGABAの存在下で約50μMのIC50を有した。既定のGABA濃度の存在下での試験化合物のIC50は、試験化合物なしのしかしGABAの同じ濃度での反応と比較した場合にGABAAチャンネルの
伝導性が半分減少される試験化合物の濃度である。IC50は、IDBS XL−fitモデル205(IDBS、UK)で計算した。
【0064】
外向き整流リガンド依存性クロライドチャンネルの他のタイプを測定するために本実施例に記載のものと同様のアッセイ方法を用いることができる。
【0065】
実施例3
外向き整流CFTRチャンネルについてのサンデル・コルトフ(SK)アッセイ
【0066】
材料
実施例2に記載のものと同様の化学物質および試薬を本実施例において使用した。
【0067】
ヒトCFTRチャンネルを内因的に発現するHTB−79細胞系は、ATCCから入手した。欠損したCFTRチャンネルを有するCRL−1918細胞系もまた、ATCCから入手した。細胞は、イスコフ改変培地(CELLGRO、VA)および4mMのL−グルタミン、1.5g/Lの重炭酸ナトリウムおよび20%のFBS(CELLGRO、VA)からなるイスコフ改変ダルベッコ培地において培養した。
【0068】
方法
イスコフ改変ダルベッコ培地中のHTB−79細胞(200μl、約500,000細胞/ml)をcostar96ウェルプレート(Corning Costar、NY)の各ウェルに加え、そして90%の空気/5%のCO下で37℃で組織培養インキュベーターにおいて一晩インキュベーションした。次に、イスコフ改変ダルベッコ培地を除き、そして200μlのヨウ素負荷バッファーをプレートの各ウェルに加えた。細胞を90%の空気/5%のCO下で37℃で2〜4時間インキュベーションし、そしてDPBS(Invitrogen、CA)もしくは培養培地で洗浄した。DPBS(100〜200μl)を各ウェルに加えた。フォルスコリン(Sigma、MO)を100、30、10、3、1、0.3、0.1,0.03および0.01μMの最終濃度で各ウェルに加えた。細胞を室温でさらに5分間インキュベーションした後に、それらを懸濁バッファーから分離し、そして100μlの細胞溶解バッファー(1%のTriton X−100)で溶解した。溶解した細胞におけるIの量を実施例1に記載のSKアッセイ方法により測定した。
【0069】
結果
図5は、SKアッセイにより測定した場合に、フォルスコリンの量を増加することによりCFTRチャンネルの増加する伝導性がもたらされることを示した。フォルスコリンはアデニル酸シクラーゼ活性を刺激し、cAMPの増加したレベルをもたらし、それは次にCFTRチャンネルを活性化した。図5Aにより、SKアッセイにより測定した場合に、CFTRチャンネルを内因的に発現するHTB−79細胞におけるクロライドチャンネル伝導性をフォルスコリンが活性化することが示された。フォルスコリンの測定EC50は、1μMであった。フォルスコリンのEC50は、100μMのフォルスコリンでの反応と比較した場合にCFTRチャンネルの活性が半分誘導されるフォルスコリンの濃度である。SKアッセイは、300nMという低い濃度でフォルスコリンによるCFTRの活性化を検出することができた。図5Bにより、SKアッセイにより測定した場合に、100μMの濃度まで、フォルスコリンが、欠損したCFTRチャンネルを発現するCRL−1918細胞におけるクロライドチャンネル伝導性を活性化しないことが示された。CFTR受容体の伝導性は、100(OD405sample−OD405low)/(OD405high−OD405low)(ここで、OD405sampleはフォルスコリンで処理した細胞についてSKアッセイから測定され;OD405lowは100μMのフォルスコリンで処理した細胞についてSKアッセイから測定され;そしてOD405h
ighはフォルスコリン処理なしの細胞についてSKアッセイから測定される)として定義される、チャンネルのパーセント活性として表される。
【0070】
実施例4
内向き整流GABAA受容体についてのサンデル・コルトフ(SK)アッセイ
【0071】
材料
実施例2に記載のものと同様の化学物質および試薬を本実施例において使用した。
【0072】
方法
補足DMEM培地中の細胞(200μl、約250,000細胞/ml)をD−リシン被覆96ウェルプレート(Corning、カタログ番号3667)の各ウェルに加え、そして90%の空気/10%のCO下で37℃で組織培養インキュベーターにおいて一晩インキュベーションした。次に、補足DMEM培地をマルチチャンネルピペッターで除き、そして200μlのヨウ素負荷バッファーを各ウェルに加えた。GABAをZymark Rapidプレート(Zymark、MA)で100、30、10、3、1、0.3、0.1もしくは0μMの最終濃度で細胞に加えた。細胞を5分間インキュベーションした後に、それらをリン酸緩衝食塩水(Invitrogen,CA)で3回洗浄し、そして100μlの細胞溶解バッファーで溶解した。細胞におけるIの量を実施例1に記載のSKアッセイ方法により測定した。
【0073】
結果
図7により、SKアッセイにより測定した場合にGABAAチャンネルの伝導性がGABAの量を増加するとともに増加することが示された。GABAはGABAAチャンネルを活性化し、細胞へのヨウ化物の流入をもたらした。図1に示されるように、反応混合物中のヨウ化物が多いほど、より低いOD405がSKアッセイから測定される。GABAAチャンネルの伝導性は、100(1−(OD405sample−OD405low)/(OD405high−OD405low))(ここで、OD405sampleは様々な濃度のGABAで処理した細胞についてSKアッセイから測定され;OD405lowは1000μMのGABAで処理した細胞についてSKアッセイから測定され;そしてOD405highはGABA処理なしの細胞についてSKアッセイから測定される)として定義される、チャンネルのパーセント活性として表される。GABAなしの反応と比較した場合にGABAAチャンネルの活性が半分誘導されるGABAの濃度である、GABAの測定EC50は294μMであった。
【0074】
図3は、30μMのGABAで細胞を刺激することにより、GABAで刺激しない細胞と比較した場合にSKアッセイからOD405の約4.5倍の減少がもたらされることを示した。従って、本明細書に記載のアッセイ条件下で、GABAAの伝導性を減少することができる試験化合物は、GABAで刺激しない細胞と比較した場合に、30μMのGABAの存在下でSKアッセイからOD405の4.5倍未満の減少をもたらすその能力により同定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】サンデル・コルトフ(SK)アッセイで試験したNaIの基準サンプルの濃度滴定曲線を示す。基準サンプルは、横軸上に与えられるような様々な濃度のNaIを含んでなった。各データ点は、同じNaI濃度を有する8個のサンプルの平均を表す。OD405吸光度は、反応物を室温で15分間(図1A)もしくは10(黒四角)、15(上向きの三角)、20(下向きの三角)、25(ひし形)、30(丸)および70(白四角)分間(図1B)インキュベーションした後に測定した。
【図2】SKアッセイにより測定した場合に、活性%として表される、外向き整流GABAAチャンネルの伝導性がGABAの量を増加するとともに増加することを示す。
【図3】GABAで刺激しない細胞と比較した場合に30μMのGABAで細胞を刺激することによりSKアッセイにおけるOD405の約4倍の減少、従ってヨウ化物濃度の4倍の増加がもたらされることを示す。各データ点は、同じGABA濃度で刺激した4個のサンプルの平均を表す。
【図4】SKアッセイにより測定した場合に、外向き整流GABAAチャンネルの伝導性がGABAAチャンネルの非競合的インヒビター(ピクロトキシン、三角)もしくは競合的遮断薬(ビククリン、四角)の量を増加するとともに減少したことを示す。図4A.30μMのGABAの存在下;および図4B.300μMのGABAの存在下。
【図5】SKアッセイにより測定した場合に、外向き整流CFTRクロライドチャンネルの伝導性がチャンネルの活性化因子、フォルスコリンの量を増加するとともに増加したことを示す。図5A.内因性の機能性CFTRチャンネルを有する細胞でアッセイを行った;図5B.欠損したCFTRチャンネルを有する細胞でアッセイを行った。
【図6】SKアッセイにより測定した場合に、内向き整流GABAAチャンネル伝導性(活性%として表される)がGABAの量を増加するとともに増加したことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)クロライドチャンネルをヨウ化物と接触させる段階;および
b)クロライドチャンネルにより伝導される(conducted)ヨウ化物の量を比色分析で検出する段階
を含んでなるクロライドチャンネル伝導性(conductivity)の測定方法。
【請求項2】
該方法がクロライドチャンネルを有する細胞もしくは膜小胞へのヨウ化物の流入を測定し、接触させる段階がヨウ化物を含んでなる溶液中でクロライドチャンネルを有する細胞もしくは膜小胞をインキュベーションすることおよび溶液から細胞もしくは膜小胞を分離することを含んでなり;そして比色検出段階が比色検出方法を用いて細胞もしくは膜小胞内のヨウ化物の量を測定することを含んでなる請求項1の方法。
【請求項3】
クロライドチャンネルを有する細胞もしくは膜小胞が患者から得られる請求項2の方法。
【請求項4】
該方法がクロライドチャンネルを有するヨウ化物負荷細胞もしくは膜小胞からのヨウ化物の流出を測定し、接触させる段階がヨウ素を実質的に含まない溶液中でクロライドチャンネルを有するヨウ化物負荷細胞もしくは膜小胞をインキュベーションすることおよび溶液から細胞もしくは膜小胞を分離することを含んでなり;そして比色検出段階が比色検出方法を用いて細胞もしくは膜小胞内のまたは溶液中のヨウ化物の量を測定することを含んでなる請求項1の方法。
【請求項5】
クロライドチャンネルを有する細胞もしくは膜小胞が患者から得られる請求項4の方法。
【請求項6】
比色検出段階が細胞もしくは膜小胞内のヨウ化物の量に対する溶液中のヨウ化物の量の比率を決定する段階をさらに含んでなる請求項4の方法。
【請求項7】
クロライドチャンネルにより伝導されるヨウ化物の量を比色分析で検出する段階の前にクロライドチャンネルを開くかもしくは活性化する段階をさらに含んでなる請求項1の方法。
【請求項8】
該クロライドチャンネルが電圧ゲート性(voltage−gated)クロライドチャンネル、リガンドゲート性(ligand−gated)クロライドチャンネル、膨張活性化(swelling−activated)クロライドチャンネル、カルシウム活性化クロライドチャンネルおよびCLICクロライドチャンネルよりなる群から選択される請求項1の方法。
【請求項9】
該クロライドチャンネルがγ−アミノ酪酸もしくはグリシンの受容体である請求項8の方法。
【請求項10】
該クロライドチャンネルが嚢胞性線維症膜貫通調節因子(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)である請求項8の方法。
【請求項11】
比色検出方法がサンデル・コルトフ(Sandell and Kolthoff)反応:
【化1】

に基づく請求項1の方法。
【請求項12】
比色検出方法が基質澱粉を伴う請求項1の方法。
【請求項13】
比色検出方法が基質3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンを伴う請求項1の方法。
【請求項14】
比色検出方法が基質チオシアン酸塩を伴う請求項1の方法。
【請求項15】
a)クロライドチャンネルを試験化合物およびヨウ化物と接触させる段階;
b)クロライドチャンネルにより伝導されるヨウ化物の量を比色分析で検出する段階;および
c)段階b)において検出されるヨウ化物の量をクロライドチャンネルを試験化合物と接触させないコントロールのヨウ化物の量と比較する段階
を含んでなるクロライドチャンネルの伝導性における試験化合物の効果を決定する方法。
【請求項16】
該方法がクロライドチャンネルを有する細胞もしくは膜小胞へのヨウ化物の流入を測定し、接触させる段階が最初に:ヨウ化物を含有する溶液中でクロライドチャンネルを有する細胞もしくは膜小胞をインキュベーションし、次に細胞もしくは膜小胞を試験化合物と接触させ、そして溶液から細胞もしくは膜小胞を分離する段階を含んでなり;そして比色検出段階が比色検出方法を用いて細胞もしくは膜小胞内のヨウ化物の量を測定する段階を含んでなる請求項15の方法。
【請求項17】
該方法がクロライドチャンネルを含んでなるヨウ化物負荷細胞もしくはヨウ化物負荷膜小胞からのヨウ化物の流出を測定し、接触させる段階がヨウ素を実質的に含まない溶液中でクロライドチャンネルを有するヨウ化物負荷細胞もしくは膜小胞をインキュベーションすることおよび細胞もしくは膜小胞を試験化合物と接触させることおよび溶液から細胞もしくは膜小胞を分離することを含んでなり;そして検出段階が比色検出方法を用いて細胞もしくは膜小胞内のまたは溶液中のヨウ化物の量を測定することを含んでなる請求項15の方法。
【請求項18】
細胞もしくは膜小胞内のヨウ化物の量に対する溶液中のヨウ化物の量の比率を決定する段階をさらに含んでなる請求項17の方法。
【請求項19】
比色検出段階の前にクロライドチャンネルを開くかもしくは活性化する段階をさらに含んでなる請求項15の方法。
【請求項20】
該クロライドチャンネルが電圧ゲート性クロライドチャンネル、リガンドゲート性クロライドチャンネル、膨張活性化クロライドチャンネル、カルシウム活性化クロライドチャンネルおよびCLICクロライドチャンネルよりなる群から選択される請求項15の方法。
【請求項21】
該クロライドチャンネルがγ−アミノ酪酸もしくはグリシンの受容体である請求項20の方法。
【請求項22】
該クロライドチャンネルが嚢胞性線維症膜貫通調節因子である請求項20の方法。
【請求項23】
比色検出方法がサンデル・コルトフ反応:
【化2】

に基づく請求項15の方法。
【請求項24】
比色検出方法が基質澱粉を伴う請求項15の方法。
【請求項25】
比色検出方法が基質3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンを伴う請求項15の方法。
【請求項26】
比色検出方法が基質チオシアン酸塩を伴う請求項15の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−504027(P2008−504027A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518168(P2007−518168)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/021738
【国際公開番号】WO2006/009986
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(598093026)オーソ−マクニール・フアーマシユーチカル・インコーポレーテツド (25)
【Fターム(参考)】