説明

クロロスルホン化ポリマーによって開始されるアクリレート/メタクリレート接着剤

アクリレートモノマーおよび/またはメタクリレートモノマー、クロロスルホン化ポリマー樹脂、および還元剤を含む接着剤調合物。接着剤は、硬化プロファイル調節剤として利用されるシクロヘテロ原子ジルコネートまたはシクロヘテロ原子チタネートも含む。さらに、接着剤は、低温での硬化した接着剤の衝撃強度を上げるために、非常に低いTgを有する強化剤コポリマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にクロロスルホン化ポリマーによって開始される接着剤、アクリレート/メタクリレート接着剤に関する。さらに特に、本発明は、保存期間に渡って一貫した硬化プロファイルを有し、そして低温での改善された強化特性および衝撃特性を有する接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションは、下記に記載されおよび/または請求項に記載される本発明の種々の形態に関連することができる技術の種々の形態を読み手に紹介することを目的とする。この議論は読み手に背景技術情報を提供し、本発明の種々の面をより良く理解することを促す上で助けになると考えられる。従って、当然のことながら、これらの記述はこの観点から読まれるべきであり、そして従来技術を認めるものではない。
【0003】
アクリレートベースおよびメタクリレートベースの接着剤は、自動車、船舶、および他の製品並びに構造物の建造における等の構成部分の接着で使用される。典型的には、2つの部分を混合して最終的な接着剤を与える前に、接着剤の2つの部分が調製されそして保存される。クロロスルホン化ポリマーによって開始されるアクリレートおよびメタクリレート接着剤では、一方の部分は、一般的にクロロスルホン化ポリマー(例えば、クロロスルホン化ポリエチレン)等の1種または2種以上の開始剤を含み、そして他方の部分は、少なくとも1種の対応する還元剤を含む。一般的に、アクリレートモノマーおよびメタクリレートモノマーは両者の部分の中に含まれてもよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
典型的には、接着剤を適用するため、そしてモノマーを重合するために2つの部分が混合される。混合した接着剤部分を硬化する間、アクリレートおよび/またはメタクリレートモノマーの反応または重合は、発熱性である。従って、混合された接着剤の部分は、一般的にピーク発熱温度に達するまで、温度の上昇を経験する。接着剤がピーク発熱温度に達した後は、接着剤の温度は、徐々に周囲温度に戻ることができる。接着剤の硬化プロファイルは、一つにはピーク発熱温度の値、そしてピーク発熱温度に達するまでの時間(ピーク発熱時間)に特徴がある。留意すべきは、ピーク発熱温度および時間は、接着剤業界において一般的に変数と理解され、そして通常は容易に測定可能である。
【0005】
接着剤作業時間(または開放時間)、接着剤固定時間など等の興味のあるほかの接着剤の変数は、ピーク発熱時間に関係することができる。例えば、作業時間は、接着剤がピーク発熱温度を経る前に、典型的には期限切れになる。実際には、接着剤の作業時間は、2つの接着剤部分が混合される時から、混合された接着剤部分の適用が難しくなるかまたは非可鍛性になる時までの時間、すなわちその硬化の間の接着剤における大幅な粘度増加の始まりと特徴付けられてもよい。その作業時間を過ぎた接着剤は、接着される基材または物体への接着能力を失う場合がある。固定時間は、どのように固定時間が定義されるか、および与えられた用途などに依存し、ピーク発熱時間に関連する硬化プロファイルに沿った様々な点にあってもよい。ある接着剤メーカーおよびユーザーは、固定時間を、接着および最終的な接着剤の強度が、例えば、接着された物体がもはや外部の構造的な支持を必要としない接着剤の硬化点として特徴付ける。しかし、作業時間および固定時間はいずれも、種々の接着剤メーカーおよびユーザーによって異なる定義がされてもよいことを強調する。実際、作業時間および固定時間は、用途に一般的による。例えば、作業時間は、接着される物体などに適用される接着ビーズの大きさの関数であってもよい。例えば、固定時間が取り扱い強度によって定義される場合は、固定時間は接着される物体のサイズおよび重量によってもよい。
【0006】
典型的には、エンドユーザーが利用できる作業時間、固定時間などを予測できるように、接着剤の保存期間に渡って再現可能なまたは繰り返し可能な硬化プロファイルを有することは、これらの接着剤にとって重要である。例えば、エンドユーザーは、予測された硬化プロファイルにより固定時間を推測して、接着される物体を型から取り出したりまたはクランプを取り外す前にどれだけユーザーが待たなければならないかを知ることができる。一般的に、エンドユーザーは、予測された硬化プロファイルによって、その適用工程を設計または改変することができる。混合された接着剤の硬化プロファイルは、接着剤部分が1日、1月、または1年保存されたかに係らず実質的に同じであるのが好ましく、そして実質的に接着剤メーカーによって報告される、またはエンドユーザーによって決定される初期の硬化プロファイルと実質的に同じであるのが好ましい。繰り返し可能な硬化プロファイルは、船舶、トラックキャブ、貨物トレーラー、および他の構造物の建造における等の大きい構成部分の接着で特に重要であることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
さらに、船舶および大型トラックの製造等の物体の接着で使用されてもよいアクリレートベースおよびメタクリレートベースの接着剤は、クロロスルホン化ポリマー(例えば、クロロスルホン化ポリエチレン)によって開始される。有利なことに、アクリレートベースおよびメタクリレートベースの接着剤は、周囲温度または室温で一般的に硬化可能である。さらに、クロロスルホン化ポリマーは、アクリレートモノマーおよびメタクリレートモノマーの重合を開始するだけでなくポリマー改質剤として働き、硬化した接着剤の物理的特性に影響を与える。一般的に、そうした接着剤は硬化すると、例えば、約150華氏度〜220華氏度(66℃〜104℃)のより高い温度で、良好な重ね合わせせん断強度等の望ましい物理的特性を示す。しかし、クロロスルホン化ポリマーによって開始されたこれらの接着剤は硬化すると、低温例えば、−40華氏度(−40℃)で脆くなることができる。これは、一つにはクロロスルホン化ポリマーが典型的には、約−17華氏度(−27℃)より高いガラス転移点Tgを有するという事実による。したがって、高温でのそれらの性能(例えば、重ね合わせせん断強度)を犠牲にすることなく、低温でそうした接着剤の性能(例えば、強化性および耐衝撃性)を改善することが望ましい。これら接着剤の使用における別の問題は、硬化プロファイルが接着剤部分の保存期間を通してずっと変化することである。従って、クロロスルホン化ポリマーによって開始されたアクリレート/メタクリレート接着剤では、ピーク発熱時間および温度、作業時間、固定時間、および硬化プロファイルに関連した他の特性は、接着剤部分の保存期間に渡って望ましくなく変化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の1または2以上の例示的態様が、下記に記載されるであろう。これらの態様の簡潔な記載を提供するために、実際の実装の全ての特徴が明細書中に記載されているわけではない。当然のことながら、すべての実際の実装開発においては、全ての製品開発におけるように、ある実装と別の実装とで異なる場合がある、系に関連し且つ事業に関連した制約の遵守などの開発者の特定の目的を達成することができるように、実装時の固有判断が数多くなされることが好ましい。さらに、当然のことながら、そうした開発努力は複雑で且つ時間がかかるが、とは言ってもこの開示の恩恵を受ける当業者にとっては、開発努力は、設計、製造、および製造の日常的な取り組みであろう。
【0009】
本技術の議論を容易にするために、明細がセクションごとに提供される。セクションIでは、本技術の利益を紹介する。セクションIIでは、例示的接着剤調合物の成分について論じる。セクションIIIでは、簡潔に本接着剤の調製および適用を論じる。セクションIVでは、調合物例を提供する。
【0010】
I.導入
本技術は、クロロスルホン化ポリマーによって開始されたアクリレート/メタクリレートベースの構造用接着剤の使用および性能を改善することを対象にする。該技術は、接着剤の保存期間に渡って、そうした接着剤のさらに一貫した硬化プロファイルを提供する。さらに、ピーク発熱時間は必要に応じて延長される。さらに、高温での最終的な接着剤性能(例えば、重ね合わせせん断強度)を犠牲にすることなく、硬化した接着剤の低温での衝撃強度および強靱性が改善された。
【0011】
A.一貫した硬化プロファイル
これらの接着剤の硬化プロファイルは、硬化プロファイル調節剤を接着剤調合物に加えることによって、保存期間に渡ってさらに一貫した。実質的に繰り返し可能な硬化プロファイル(例えば、繰り返し可能なピーク発熱時間)を提供する硬化プロファイル調節剤は、シクロヘテロ原子ジルコネートおよびシクロヘテロ原子チタネートである。留意すべきは接着剤部分の保存期間の長さは、不充分な硬化、過度の劣化、望ましくない粘度の増加、およびその同類のものの発生等の種々の因子に依存する。短い保存期間のメカニズムまたは本質的な原因は、完全には知られていない。さらに、保存期間は、例えばユーザーの条件によって変化する用途に依存することができる。通常、接着剤部分(すなわち、部分Aおよび部分B)の保存期間は、6月〜1年であることができる。しかし、強調すべきは、本調合物の保存期間が、この例示的範囲外にあることができることである。
【0012】
B.延長されたピーク発熱時間
さらに、水および/または追加のキレート剤が、これらの接着剤のピーク発熱時間を延長するために、調合物に加えられてもよい。相当な作業時間が、物体またはパネルを接着するための接着剤の適用の促進に望ましい、例えば大きい物体またはパネルの接着において、そのような延長されたピーク発熱時間が望ましい場合がある。下記の例3では、1重量%の水を加えることで、ピーク発熱温度に達するまでの時間が98分から180分に延長される。下記例4では、キレート剤を加えることで、ピーク発熱温度に達するまでの時間が64分から108分に延長された。例4で利用されるキレート剤は、水およびエチレングリコール溶液中のエチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩(EDTA Na)であった。キレート剤は、接着剤硬化プロファイルの一貫性において、接着剤中の金属残留物および金属汚染の逆効果を一般的に防止すると考えられている。
【0013】
C.増加した強化性および衝撃強度
非常に低いガラス転移点(例えば、−50℃未満)を有する強化剤が接着剤調合物に加えられ、より高温、例えば、約180華氏度(82℃)での重ね合わせせん断強度等の特性を犠牲にすることなく、低温、例えば、−40華氏度(−40℃)での脆性を減少させ、且つ硬化した接着剤の衝撃強度を増加させる。例えば、広範な環境および周囲温度における種々の重量および荷重に曝される場合があるアクリレート/メタクリレートベースの接着剤で接着された部分を有する自動車および船舶では、これは重要であることができる。例えば、そのように接着された部分を有する家畜トラックまたはトレーラーは、メキシコの温暖な環境からカナダの寒冷な環境まで運行することができ、そして動物の数、重量、およびトラックまたはトレーラーでのあらゆる荷重の移動、並びに、道および高速道路の質などによって、種々の荷重および応力を経験する。別の例では、そのような接着部分を有する船舶は、高温および低温の周囲環境などの中で打ち寄せる波に曝されることができる。
【0014】
これらの強化剤は、少なくとも1つの領域のガラス転移点Tgが−50℃〜−110℃の範囲内にあるコポリマー(例えば、ブロックコポリマー)を含む。これらの新規な強化剤の態様は、スチレンブタジエンスチレン(SBS)コポリマーを含む。そうしたSBSコポリマーの商業上の例は、Houston、 TexasのShell Chemical LPのKraton(商標)Dl116(Tg=−91℃)およびKraton(商標)1184(Tg=−91℃)である。下記に示された例1では、硬化した接着剤は、これらの非常に低いTgのSBSコポリマーを含むと含まないとにかかわらず、High Point、 North CarolinaのThomas Built Busesによって開発された−40華氏度(−40℃)での落下テストに曝された。有利なことに、例1中に示すように、これらのKraton(商標)ポリマーを接着剤に加えると、テストされた接着剤が破壊する前の落下テストでの衝突数は、ほぼ倍になった。
【0015】
II.接着剤調合物の成分
接着剤酸化還元系中の成分のタイプ、およびそうした成分の比は、クロロスルホン化ポリマーによって開始されるアクリレート/メタクリレート接着剤のピーク発熱温度/時間および硬化プロファイルを、変化または制御するために調整されてもよい。接着剤の酸化還元系は、それぞれクロロスルホン化ポリエチレンおよび過酸化物(例えば、クメンヒドロペルオキシド)等の第1開始剤および第2開始剤であってもよい酸化剤を一般的に含む。酸化還元系も、クロロスルホン化ポリマーの塩化スルホニル基と反応または作用して開始ラジカルの生成を助けるもの等の還元剤を典型的には含む。ある態様において、酸化還元系は、主として接着剤硬化プロファイルを決定し、そして保存期間に影響することができる。
【0016】
さらに、エラストマーのポリマー強化剤と衝撃改質剤(例えば、コアシェル構造ポリマー)との間のバランスは、高温での性能を犠牲にすることなく、例えば、−40華氏度(−40℃)未満の低温での硬化した接着剤の接着強度、衝撃強度、引っ張り強度および繰り返し疲労性能の組み合わせを維持するために用いられてもよい。本明細書中で使用し、そして後に記載するように、強化剤は、一般的にブロックコポリマーをいい、衝撃改質剤は一般的にコアシェル構造コポリマーをいう。
【0017】
本技術の接着剤は、接着剤の適用の前に混合される少なくとも2つの部分、部分Aおよび部分Bを含む。これらの2つの部分は、最終的に混合した接着剤を与えるために2つの部分を混合する前に、メーカーまたはエンドユーザーによって保存されてもよい。該部分が混合された後(しかし重合前)の最終的な接着剤における成分の例示的な組成範囲を、表1に示す。表1中に記載された成分の例も下記に記載する。さらに、当業者に好まれているように、連鎖移動剤、顔料、スペーサ、香料、フィラー、難燃剤など等の他の成分を本接着剤調合物に加えてもよい。留意すべきは、混合前の2つの部分(すなわち、部分Aおよび部分B)の特定の例示的組成物が表2〜表5の具体例に記載される。
【0018】
最後に、また注目すべきは、表1中に包含される接着剤調合物は、建造での物体の接着およびビヒクルの修理に使用されてもよいことである。そうしたビヒクルは、自動車、車、パッセンジャー(passenger)トラック、輸送(transport)トラック、家畜トラック、トレーラー、バス、船舶などを含んでもよい。もちろん、本接着剤は、風車の羽根の建造など等の種々の他の適用で使用されてもよい。
【表1】

【0019】
さらに、最終的な接着剤を生成するために、一般的に使用時に部分Aおよび部分Bを混合する。ある態様において、部分Aは、クロロスルホン化ポリマー、カルボン酸、および第2開始剤を含み、部分Bは、還元剤、硬化プロファイル調節剤、および加速剤を含む。表1の残りの成分を部分Aもしくは部分Bのいずれか、または両者に入れることができる。一実施態様では、これらの残りの成分をアクリレート/メタクリレートモノマーを除いて等しく両部分に分け、そして衝撃改質剤を部分Aと部分Bとの間で分配し、部分Aおよび部分Bの両者で類似の粘度を与えた。部分A対部分Bの体積比は、例えば10:1〜1:2と大きく変化することができる。ある態様において、部分A対部分Bの比は、体積比で1:1である。
【0020】
A.アクリレート/メタクリレートモノマー
一般的に、アクリレートおよび/またはメタクリレートモノマーは、硬化工程で重合したより高分子量(MW)およびより低分子量(MW)のアクリレートおよびメタクリレートの組み合わせを含む。より低いMWのモノマーは1〜2炭素原子を有するエステル基のアルコール部分によって特徴付けられ、そしてより高いMWのモノマーは3〜20炭素原子を有するエステル基のアルコール部分によって特徴付けできる。アクリレートおよび/またはメタクリレートモノマー、並びにそれらの混合物は、以下の一般的な構造を有する。
【化1】

さらに、モノマーの大部分は、より低いMWのモノマーで、一般的にn<2のもの、そして通常n=1のもので、それぞれアクリル酸メチルおよびメタクリル酸メチルである。n=2では、モノマーはアクリル酸エチルおよびメタクリル酸メチルである。
【0021】
n>2のより高いMWのモノマーは、通常n=10〜18で、そしてさらに通常n=12〜16で、例えば、抗すべり性能を改善させ、収縮を減少させ、ピーク発熱温度を下げてモノマーの沸騰問題を避けるなどのために、任意選択的に使用されてもよい。一般的に、より高いMWのモノマー、特にエーテル結合を有するものは、硬化の間に沸騰を制御するために、任意選択的に使用されてもよい。しかし、最終的な硬化した接着剤の受け入れ難い機械的な特性および貧弱な化学的耐性を避けるために、これらのより高いMWのモノマーの量は、最終的な接着剤に基づいて一般的に14重量%を超えない。ある態様において、量は、最終的な接着剤に基づいて9重量%未満である。他の態様において、これらのより高いMWのモノマーの量は、最終的な接着剤に基づいて6重量%未満である。本調合物で使用されるこれらのより高いMWのモノマーの商業上の例は、Exton、PennsylvaniaのSartomer Company、Inc.のC12、14、およびC16メタクリレートの混合物、SR313Bである。
【0022】
B.クロロスルホン化ポリマー
ある態様において、クロロスルホン化ポリエチレン等のクロロスルホン化ポリマーは、主として本願中に記載されたアクリレート/メタクリレートのフリーラジカル開始剤をベースとした接着剤として使用される。下記に記載するように、ある過酸化物等の第2開始剤を、クロロスルホン化ポリマーに加えて使用してもよい。クロロスルホン化ポリマーは、一般的に残留塩化スルホニルを含み、そしてクロロスルホン化ポリマーを接着剤調合物に加える前に、重合可能なビニルモノマー中にも溶解できる。クロロスルホン化ポリマーの商業上の例は、Wilmington、DelawareのE.I.Du Pont de Nemours & Companyによって商標名HYPALON(商標)ポリマー(合成ゴム)で販売されているクロロスルホン化ポリエチレンである。HYPALON(商標)ポリマー中等にある塩化スルホニル基は、室温硬化用途で還元剤の存在下でラジカル重合を開始させる反応点を提供する。接着剤用途で本技術と使用できるHYPALON(商標)ポリマーの具体例は、HYPALON(商標)20、HYPALON(商標)30、HYPALON(商標)48、およびHYPALON(商標)LD−999である。HYPALON(商標)ポリマーの種々のグレードの違いは、ポリマー鎖中の分枝の度合い、ポリマー中の塩素の%、および他の因子を含んでもよい。最後に、留意すべきは、クロロスルホン化ポリマーは、ポリマー改質剤(すなわち、強化剤または衝撃改質剤)となることができる。しかし、下記に記載するように、クロロスルホン化ポリマー以外のポリマー改質剤が、典型的には接着剤調合物に加えられる。
【0023】
C.強化剤
強化剤として使用されるエラストマーおよびポリマーは、−25℃未満、そして有利なことに−50℃未満のガラス転移点(Tg)を有してもよい。さらに、これらの強化剤は、有益なことに上記のモノマーの中で可溶性であってもよい。一般的に、エラストマーは、合成高分子化合物を含んでもよい。さらに、エラストマーは、接着剤または接合剤グレードとして商業的に供給されてもよい。本技術で使用されるエラストマーおよびポリマーは、ポリクロロプレン(ネオプレン)並びにブタジエンまたはイソプレンと、スチレン、アクリロニトリル、アクリレート、メタクリレート、およびその同類のものとのブロックコポリマーを含んでもよい。
【0024】
既に述べたように、HYPALONポリマー等のクロロスルホン化ポリマーは、例えば、−17華氏度(−27℃)より高い、比較的高いガラス転移点温度を有するので、アクリレート/メタクリレート接着剤を開始するためにクロロスルホン化ポリマーを使用すると、硬化した接着剤は、低温(例えば、−20℃〜−50℃)で、硬く且つ脆く(より低い衝撃強度)なることができる。さらに、アクリレート/メタクリレート接着剤中でクロロスルホン化ポリマーを使用すると、硬化した接着剤中でのより高い架橋結合密度となることができる。従って、この理由でも、クロロスルホン化ポリマーによって開始された接着剤は、さらに脆くなる傾向があることができる。
【0025】
したがって、低温での衝撃強度を改善するために、本接着剤調合物に加えられた強化剤は、アクリレートおよび/またはメタクリレートモノマーに可溶である非常に低いTgのエラストマーのポリマーを含んでもよい。特に、これらの強化剤の少なくとも1つの領域のTgは、約−50℃〜約−110℃の範囲内、通常約−65℃〜約−105℃の範囲内、そしてさらに通常約−80℃〜約−100℃の範囲内にある。例は、スチレンブタジエンスチレン(SBS)コポリマーを含む。ラジアル(radial)タイプのこれらのSBSポリマーは、強化剤として特に有益であることができる。前述のように、これらのSBSコポリマーの商業上の例は、Houston、TexasのShell Chemical LPのKraton(商標)DI l16(Tg=−91℃)およびKraton(商標)1184(Tg=−91℃)である。強化剤は、高温(例えば、150華氏度〜220華氏度)での硬化した接着剤の性能(例えば、重ね合わせせん断強度)に不利に影響することなく、低温、例えば−40華氏度(−40℃)未満、での硬化した接着剤の強靱性および耐衝撃性を改善できる。表1に示すように、強化剤の量は、一般的に本接着剤調合物の約1〜20重量%の範囲内にある。
【0026】
D.衝撃改質剤
衝撃改質剤で調合物された接着剤は、多くの接着剤用途ための望ましい特性を示す。例えば、衝撃改質剤は、硬化した接着剤に対して、硬化した接着剤の脆性を減少させ、そして衝撃強度を増加する強化剤と類似の効果を有する。衝撃改質剤は、まだ硬化していない接着剤での、非たれ特性およびチキソトロピー特性および抗すべり性能を改善してもよい。本明細書中に記載したように、衝撃改質剤は、一般的には、ゴム状"コア、"硬質"シェル"を有するコアシェルコポリマーとして特徴付けることができ、そしてメタクリレートおよび/またはアクリレートモノマー組成物で膨潤するが溶解しないグラフトコポリマーを含む。コアシェルコポリマーの例は、スチレン、アクリロニトリル、またはメタクリル酸メチル等の硬質"シェル"モノマーが、ブタジエン、ブチルアクリレート、アクリル酸エチル、イソプレンおよびその同類のもののポリマーでできたゴム状"コア"の上にグラフト化されるものである。ある種のコアシェルポリマーは、ポリブタジエンまたはポリブタジエンコポリマーゴムの存在下でメタクリル酸メチルを重合することによってできたメタクリレートブタジエンスチレン(MBS)コポリマーである。そうしたMBSコポリマーの商業上の例は、Philadelphia、PennsylvaniaのRohm and Haas CompayのPARALOID(商標)BTA−753、およびHouston、TexasのKaneka Texas CompanyのKANE ACE B−564である。表1に示すように、衝撃改質剤(コアシェルコポリマー)の量は、一般的に本接着剤調合物の約10〜30重量%の範囲内にある。
【0027】
E.還元剤
一般的に、本接着剤で使用される還元剤は、クロロスルホン化ポリマーの塩化スルホニル基と反応または作用してもよい。表1に示すように、本接着剤調合物で使用される還元剤の量は、一般的に0.5〜4重量%の範囲内にある。そうした還元剤の商業上の例は、Indianapolis、IndianaのReilly Industries、Inc.のREILLY PDHP(商標)である。還元剤REILLY PDHP(商標)は、活性成分が化学式C1525Nで下記の構造を有するn−フェニル−2−プロピル−3,5−ジエチル−l、2−ジヒドロピリジンであると考えられている混合物である。
【化2】

F.
水は、ピーク発熱時間を延長させ、そしてピーク発熱温度を低下させるために調合物に加えられてもよい。原料および/または製造工程から間接的に比較的少量の水が接着剤調合物に導入されてもよい一方で、硬化プロファイルを調整するために、追加の4重量%までの水が接着剤調合物に直接加えられてもよい。下記例3では、調合物に加えられた追加の1重量%の水がピーク発熱時間を98分から180分に増加させた。
【0028】
G.抑制剤/遅延剤
抑制剤/遅延剤は、不十分な硬化を防止し、そして酸化還元系が所望で且つ一貫した硬化プロファイル、従って一貫した作業時間を提供することを助けるために通常使用される。アクリレートおよび/またはメタクリレート系の例は、中および長開放時間の接着剤に通常に用いられるブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレソール)とキノンとの組み合わせを含んでもよい。抑制剤/遅延剤系の具体例は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)とヒドロキノン(HQ)との組み合わせである。ヒドロキノンは、パラジヒドロキシベンゼンとしても公知である。表1に示すように、抑制剤/遅延剤は、一般的に本接着剤調合物の約0.01〜2重量%の範囲にある。
【0029】
H.硬化プロファイル調節剤
硬化プロファイル調節剤は、接着剤の硬化プロファイルを制御するが、抑制剤/遅延剤、キレート剤、酸化還元系の成分、水など等の硬化プロファイルにはっきりとした影響を与える表1に記載された他の成分を含まない化学品として本明細書中では明確に定義される。比較的少量(例えば、接着剤の0.1〜0.8重量%)の硬化プロファイル調節剤は、(クロロスルホン化ポリエチレンまたはHYPALON(商標)ポリマー等のクロロスルホン化ポリマーによって周囲温度で開始された)アクリレート/メタクリレート接着剤の硬化プロファイルを、有益なことに接着剤の保存期間に渡ってさらに一貫させることができる。そうした例示的硬化プロファイル調節剤は、シクロヘテロ原子ジルコネートおよびシクロヘテロ原子チタネートを含んでもよい。商業上の例は、Bayonne、New JerseyのKenrich Petrochemikals、 IncのKZ TPP(シクロ[ジネオペンチル(ジアリル)]ピロホスフェートジネオペンチル(ジアリル))ジルコネートである。下記の例2では、硬化プロファイル調節剤を接着剤調合物に加えることで、ピーク発熱時間が10分より短い変化をした。
【0030】
I.キレート剤
媒体および長開放時間接着剤用等の共通目的型キレート剤は、本接着剤調合物(例えば、0.2重量%未満)中で利用可能であり、硬化プロファイルの変化を小さくする。キレート剤は、接着剤原料中の金属残留物、および製造、保存など間の接着剤の金属汚染によって引き起こされる変化を小さくするのに、特に効果的であることができる。キレート剤は、出来上がった接着剤と接着剤吐出装置などの中で接触する地金等の地金との接触によって発生する時期尚早の硬化にも対応する。さらに、水はキレート剤の溶媒として使用可能である。下記に示す例4では、キレート剤(水およびエチレングリコール中EDTA Na)を加えると、ピーク発熱温度に達するまでの時間が64分から108分に延長された。
【0031】
J.カルボン酸
接着剤の基材または成分への接着を高めるために、カルボン酸等の1種または2種以上の有機酸を任意選択的に接着剤調合物中で使用してもよい。例示的なカルボン酸は、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マロン酸などを含む。これらの有機またはカルボン酸のさらなる例は、アセチレンジカルボン酸、ジブロモマレインシトラノイック(citranoic)酸、メサコン酸、およびシュウ酸である。1種または2種以上のカルボン酸、特に強有機カルボン酸を、本アクリレートおよび/またはメタクリレートベースの接着剤組成物に加えることによって、その後に接着された構造的な構成部分および部分への接着剤組成物の接着特性が改善された。カルボン酸を加えることは、例えば、水素結合、およびその同類のものの分子レベルでの相互作用によって、耐溶媒および/または耐熱プラスチック、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、樹脂/ガラス複合物、樹脂、繊維強化複合物、金属などへの接着を促進すると考えられている。典型的には、本調合物は、10重量%未満のカルボン酸を含む。これらの酸を含有する組成物に水を加えると、それらの分離を助けると考えられるおそらく部分溶解性または高められた溶解性によって、酸の効果を高めること可能であることがさらに見いだされた。これらの接着剤の効果は、接着ステップの間もしくは後(またはその両者)での接着剤の熱処理によってさらに高めることができる。
【0032】
K.第2開始剤
既に述べたように、本接着剤調合物の第1開始剤は、クロロスルホン化ポリエチレン(例えば、Du Pontによって販売されるHYPALON(商標)ポリマー)等のクロロスルホン化ポリマーである。しかし、第2開始剤は、補助開始剤として使用されてもよい。第1開始剤と第2開始剤はいずれも、対応する還元剤と作用可能で、そしてアクリレートモノマーおよびメタクリレートモノマーのラジカル重合において開始ラジカルを生成するために分解する。第2開始剤は、室温で本モノマー中で実質的に安定である過酸化物(例えば、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシドなど)を含んでもよい。さらに、第2開始剤は、一般的に本接着剤調合物の3重量%未満である。
【0033】
L.他のより高いMWのモノマー
表1に示すように、ピーク発熱温度を下げる(すなわち、モノマー沸騰を減少させる)目的、収縮を減少させる目的などで、典型的には本接着剤調合物の8重量%未満で、他のより高いMWのモノマーを用いてもよい。これらの他のより高いMWのモノマーは、典型的にはより長鎖の単官能分子である。例は、メタクリル酸ポリエチレングリコールである。商業上の例は、Sartomer Company、Incのモノメタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(350)、製品CD550である。
【0034】
M.ワックス
例えば、適用の間に接着剤の表面からのモノマーの蒸発を最小化するために、融点範囲が約110〜170華氏度のワックスを使用してもよい。一つの範疇は石油炭化水素ワックスである。そうした石油炭化水素ワックスの商業上の例は、Buena、 New JerseyのIGI Inc.のBoler1977である。一般的に、本接着剤調合物のわずか約0.5〜4重量%が、ワックスである。
【0035】
N.加速剤
速硬化接着剤(例えば、90秒の作業時間)を生成するために、触媒量(例えば、0.0005重量%未満)の加速剤を使用してもよい。これらの加速剤または促進剤は、主として銅アセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネートなど等の有機遷移金属化合物である。一般的に、加速剤または促進剤は、コバルト、ニッケル、マンガン等の遷移金属の有機塩、またはナフテン酸鉄、銅オクトエート、銅アセチルアセトネート、鉄ヘキソエート、プロピオン酸鉄などであってもよい。
【0036】
III.接着剤の調製と適用
最初に、クロロスルホン化ポリマーによって開始されたメタクリレート/アクリレート接着剤の2つの部分(部分Aおよび部分B)が調製される。ある態様において、部分Aは、クロロスルホン化ポリマー、カルボン酸、および第2開始剤を含んでもよく、部分Bは、還元剤、硬化プロファイル調節剤、および加速剤を含んでもよい。衝撃改質剤、およびメタクリレートモノマーおよび/またはアクリレートモノマー等のある成分は、部分Aと部分Bとの間で分配されて、部分AとBとで類似の粘度を提供してもよい。すでに示したように、部分A対部分Bの体積比は、例えば、10:1〜1:2で大きく変化可能である。いくつかの態様では、部分A対部分Bの比は、体積比で1:1である。
【0037】
留意すべきは、部分Aおよび部分Bを作る上での加える順番は、大きく変えることができることである。さらに、部分Aおよび部分Bの商業上の調製は、保存溶液または予混合物溶液を作ること、接着剤調合物を中間および最終の段階で冷却すること、真空下で接着剤部分を脱気することなども含んでもよい。当業者が評価するように、部分Aおよび部分Bを製造する上で使用される装置は、容器、パイピング、バルブ、移送ポンプ、真空ポンプ、ミキサー(例えば、高速攪拌機または分散機)などを含む。部分Aおよび部分B調合物は、小さいカートリッジから55−ガロンドラム缶、およびその同類のものに及ぶ異なるタイプの容器でエンドユーザーに配達されてもよい。
【0038】
接着剤の部分AおよびBの調製の後で、2つの部分は、接着剤メーカー、販売業者、エンドユーザーなどによって在庫として保存されてもよい。他方では、部分AとBとは、物体を接着するために、(中間的な保存なしで)輸送後にすぐに使用されまたは適用されてもよい。しかし、メーカーまたはユーザーのいずれかが、2つの部分を混合して使用する前に部分Aおよび部分Bを保存するのが普通である。従って、既に述べたように、部分Aおよび部分Bの保存期間に渡って一貫した硬化プロファイルを有することが一般的に有益である。さらに、接着剤の適用、および構造的な構成部分、一部、部分などの建造/接着を適当に管理するために、ユーザーが、硬化プロファイル(例えば、ピーク発熱温度および時間)の挙動を知ることは一般的に望ましい。したがって、硬化プロファイル調節剤等の成分が接着剤に加えられて、さらに一貫した硬化プロファイルを提供する。ある態様では、ピーク発熱時間の変動は、接着剤の保存期間に渡って10分未満である。ここで留意すべきは、下記の例では、硬化プロファイル調節剤を部分Bに加えることである。しかし、他の態様および例では、硬化プロファイル調節剤を部分Aに加えてもよい。
【0039】
接着剤を適用するために、部分Aと部分Bとを(例えば、静的ミキサーによって)一緒に合わせまたは混合する。合わせられた部分Aと部分Bは、次に第1の構成部分および/または第2の構成部分に適用されてもよい。そうした接着剤の適用の後で、第1の構成部分と第2の構成部分とが、適用された接着剤を介して互いに接着されてもよい。最後に、接着剤は、典型的には周囲温度または室温で硬化される。
【実施例】
【0040】
本技術の形態および態様は、以下の例を参照して記載されるであろう。これらの例は、具体的に説明する目的で提供され、そして技術の範囲を限定すると解釈されることを目的としない。
例1.非常に低Tgの強化剤としてのKraton(商標)Dl116:
【表2】

a.予混合物は、15.35重量%のネオプレンAD10、0.02%の1、4−NQおよび84.63%のメタクリル酸メチル(MMA)を含む。
b.47.5%水および47.5%エチレングリコール中5重量%EDTA Na
c.落下テストは、High Point、North CarolinaのThomas Built Busesによって開発された。85lb.落下衝撃パネル試験機が使用された。
d.chisel割れテストはそれらの落下テストの一部としてThomas Built Busesによって開発された。2つのパネルの間の壊れていない接着ラインがchisel割れテストで使用される。テスト結果は、2つのパネルの接着ラインに沿って分離した(インチの)長さである。
e.室温(RT)で約16時間硬化したサンプルを、240華氏度で30分間後硬化し、次に室温で約4時間調整した。基材は、エポキシプライマーを被覆したThomas Built Busesによって提供された鉄であった。サンプルを特定の温度で30分間牽引した。CF:凝集破壊;AF:接着剤破壊;40CF60AF:40%CFおよび60%AF。
【0041】
例1では、部分Aの部分Bに対する混合比は、体積で10:1である。表2中の結果は、硬化した接着剤が220華氏度で重ね合わせせん断強度を維持しつつ、Kraton(商標)Dl116が−40華氏度で硬化した接着剤の衝撃強度を改善したことを示す。衝撃強度の増加は、落下テストで破壊前の衝突回数の増加によって示される。
例2.硬化プロファイルでのKen−React(商標)KZ TPPの効果
【表3】

a.PVAB−15は、Cleveland、OhioのMcGean−Rohco、Inc.のポリビニルアセテートホモポリマーであり、そして収縮制御剤として使用される。
【0042】
例2では、部分Aの部分Bに対する混合比は、体積で1:1である。Ken−React(商標)KZ TPPは、(接着温度対時間の発熱グラフに記載できる)初期の硬化プロファイルだけでなく、保存期間に渡って硬化プロファイルの安定性にも影響を与える。この例では、シクロヘテロ原子ジルコネートを加えることで、ピーク発熱時間に到達する時間は、4カ月間で初期のピーク発熱時間から1〜5分変動した。対照的に、シクロヘテロ原子ジルコネートを加えないと、ピーク発熱時間は、4カ月間で初期のピーク発熱時間から30分も変動した。さらに、シクロヘテロ原子ジルコネートを加えないと、ピーク発熱時間(従って潜在的な固定時間)は、4カ月で遅くなった。
例3.硬化プロファイルへの水の効果
【表4】

【0043】
例3では、部分Aの部分Bに対する混合比は、体積で1:1である。表4に示すように、追加の1%水は、ピーク発熱時間(従って潜在的作業時間)をほぼ二倍にしたが、同時にピーク発熱温度を42華氏度下げた。ピーク発熱時間は、98分から180分に増加した。
例4.硬化プロファイルへのEDTA Naの効果
【表5】

【0044】
部分Aの部分Bに対する混合比は、体積で1:1である。表5は、0.40%の5%EDTA Na予混合物を加えると、EDTA Na予混合物のない64分の初期ピーク発熱時間からEDTA Na予混合物のある108分へと硬化がはっきりと遅くなることを示す。
【0045】
本発明は、種々の改変および代わりの形態の影響を受けることができるが、具体的な実施例は一例として示され、そして本明細書中で詳細に記載された。しかし、当然のことながら本発明は、開示した特別な形態に限定することを目的としない。むしろ、本発明は請求項によって規定された精神および本発明の範囲の範囲内にあるすべての改変、均等物および代替物を網羅する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
:アクリレートモノマーもしくはメタクリレートモノマー、またはそれらの組み合わせと;
クロロスルホン化ポリマー樹脂と;そして
シクロヘテロ原子ジルコネートもしくはシクロヘテロ原子チタネート、またはそれらの組み合わせを含む硬化プロファイル調節剤と
を含む接着剤調合物。
【請求項2】
クロロスルホン化ポリマー樹脂の塩化スルホニル基のための還元剤を含む請求項1の接着剤調合物。
【請求項3】
該硬化プロファイル調節剤が、シクロ[ジネオペンチル(ジアリル)]ピロホスフェイトジネオペンチル(ジアリル)ジルコネートを含む請求項1の接着剤調合物。
【請求項4】
該クロロスルホン化ポリマー樹脂が、クロロスルホン化ポリエチレンを含む請求項1の接着剤調合物。
【請求項5】
水、キレート剤、強化剤、衝撃改質剤、もしくは抑制剤/遅延剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む請求項1の接着剤。
【請求項6】
該キレート剤が、水およびエチレングリコール中に、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩の予混合物を含む請求項5の接着剤。
【請求項7】
該強化剤が、ポリクロロプレン、ブタジエンとスチレンとのコポリマー、もしくはブタジエンとイソプレンとのコポリマー、またはそれら任意の組み合わせを含む請求項5の接着剤調合物。
【請求項8】
該強化剤が、少なくとも1つの領域のガラス転移点が−50℃未満であるコポリマーを含む請求項5の接着剤調合物。
【請求項9】
該衝撃改質剤が、メタクリレートブタジエンスチレン(MBS)コポリマーを含む請求項5の接着剤調合物。
【請求項10】
該抑制剤/遅延剤が、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む請求項5の接着剤調合物。
【請求項11】
該抑制剤/遅延剤が、ヒドロキノン(HQ)を含む請求項10の接着剤調合物。
【請求項12】
アクリレートモノマーもしくはメタクリレートモノマー、またはそれらの組み合わせと;
クロロスルホン化ポリマーと;
該塩化クロロスルホン化ポリマーのスルホニル基のための還元剤と
を含み;そして
該接着剤調合物のピーク発熱時間が、該接着剤調合物の保存期間に渡って10分より短い変化をする
接着剤調合物。
【請求項13】
該クロロスルホン化ポリマーが、クロロスルホン化ポリエチレンを含む請求項12の接着剤調合物。
【請求項14】
アクリレートモノマーもしくはメタクリレートモノマー、またはそれらの組み合わせと;
クロロスルホン化ポリエチレンと;
該クロロスルホン化ポリエチレンの塩化スルホニル基ための還元剤と;そして
該強化剤コポリマーの少なくとも1つの領域のガラス転移点が−50℃未満であり、該アクリレートモノマーまたは該メタクリレートモノマー中に実質的に可溶性の強化剤コポリマーと
を含む接着剤調合物。
【請求項15】
該強化剤コポリマーが、スチレンブタジエンスチレン(SBS)コポリマーを含む請求項14の接着剤調合物。
【請求項16】
該強化剤コポリマーが、ラジアルタイプのポリマーを含む請求項14の接着剤調合物。
【請求項17】
第1部分と、該第1部分と別個の第2部分と、を含む接着剤調合物、
該第1部分は、アクリレートモノマーもしくはメタクリレートモノマー、またはそれらの組み合わせ、およびクロロスルホン化ポリマーを含み;そして
該第2部分は、還元剤および硬化プロファイル調節剤を含み、該硬化プロファイル調節剤は、シクロヘテロ原子ジルコネートもしくはシクロヘテロ原子チタネート、またはそれらの組み合わせを含む。
【請求項18】
該第1部分が、カルボン酸、もしくは第2開始剤、またはそれらの組み合わせを含む請求項17の接着剤調合物。
【請求項19】
該第2開始剤が、過酸化物を含む請求項18の接着剤調合物。
【請求項20】
該第2部分が、加速剤を含む請求項17の接着剤調合物。
【請求項21】
該加速剤が、有機遷移金属化合物を含む請求項20の接着剤調合物。
【請求項22】
該第2部分が、該アクリレートモノマーもしくは該メタクリレートモノマー、またはそれらの組み合わせを含み、該モノマーが、該第1部分と該第2部分に配合されていて、該第1部分の第1の粘度と該第2部分の第2の粘度を調整する、請求項17の接着剤調合物。
【請求項23】
該第1部分対該第2部分の体積比が10:1〜1:2の範囲内にある請求項17の接着剤調合物。
【請求項24】
該クロロスルホン化ポリマーが、クロロスルホン化ポリエチレンを含む請求項17の接着剤調合物。
【請求項25】
アクリレートモノマーもしくはメタクリレートモノマー、またはそれらの組み合わせ、およびクロロスルホン化ポリマーを含む第1部分を調製すること;そして
該第1部分と別個の第2部分を調製すること、
を含む接着剤製造の方法、
該第2部分は、還元剤および硬化プロファイル調節剤を含み、該硬化プロファイル調節剤は、シクロヘテロ原子ジルコネートもしくはシクロヘテロ原子チタネート、またはそれらの組み合わせを含む。
【請求項26】
該クロロスルホン化ポリマーが、クロロスルホン化ポリエチレンを含む請求項25の方法。
【請求項27】
該第1部分対該第2部分の体積比が10:1〜1:2の範囲内にある請求項25の方法。
【請求項28】
該接着剤の第1部分と該接着剤の第2部分とを混合すること、
ここで、該第1部分は、アクリレートモノマーもしくはメタクリレートモノマー、またはそれらの組み合わせ、およびクロロスルホン化ポリマー樹脂を含み、そして
該第2部分は、還元剤および硬化プロファイル調節剤を含み、該硬化プロファイル調節剤はシクロヘテロ原子ジルコネートもしくはシクロヘテロ原子チタネート、またはそれらの組み合わせを含む;
該第1部分と第2部分との混合物を第1の基材に適用すること、そして
該第1基材に第2基材を接着すること、
を含む接着剤の使用方法。
【請求項29】
該第1部分もしくは第2部分または両者が、該アクリレートモノマーまたは該メタクリレートモノマー中に可溶性の強化剤コポリマーを含み、該強化剤コポリマーの少なくとも1つの領域のガラス転移点が、−50℃未満である請求項28の方法。
【請求項30】
第1物体と第2物体を用意すること;
接着剤を該第1物体に適用すること
ここで、該接着剤が、該接着剤の第1部分と該接着剤の第2部分とを混合することによって生成され、
該第1部分が、アクリレートモノマーもしくはメタクリレートモノマー、またはそれらの組み合わせ、およびクロロスルホン化ポリマー樹脂を含み、そして
該第2部分が、還元剤と硬化プロファイル調節剤とを含み、
該硬化プロファイル調節剤が、シクロヘテロ原子ジルコネートもしくはシクロヘテロ原子チタネート、またはそれらの組み合わせを含む;そして
該接着剤を介して該第1物体と該第2物体とを接着すること
を含む2つの物体の接着方法。
【請求項31】
以下の調合物:
アクリレートモノマーもしくはメタクリレートモノマー、またはそれらの組み合わせと;
クロロスルホン化ポリマー樹脂と;そして
シクロヘテロ原子ジルコネートもしくはシクロヘテロ原子チタネート、またはそれらの組み合わせを含む硬化プロファイル調節剤と
を含む接着剤で接着された構成部分
を含む製品。
【請求項32】
該製品が、ビヒクルを含む請求項31の製品。
【請求項33】
以下の成分:
アクリレートモノマーもしくはメタクリレートモノマー、またはそれらの組み合わせと;
クロロスルホン化ポリマー樹脂と;そして
コポリマーの少なくとも1つの領域が−50℃未満のガラス転移点を有するコポリマーと
を含む接着剤で接着された構成部分
を含む製品。

【公表番号】特表2008−533244(P2008−533244A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500858(P2008−500858)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/008172
【国際公開番号】WO2006/098967
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(591203428)イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド (309)
【Fターム(参考)】