説明

クーラントチラー用熱交換器

【課題】 容易で十分な洗浄を可能にし、洗浄に係わる工数低減及び作業時間の短縮を図るとともに、資源節減面及びコスト面における有利性を確保する。
【解決手段】 上端面部2u及び下端面部2dを有する円筒形に構成し、かつクーラント液Lcの流通路を形成するシェル部2と、このシェル部2の内部に収容し、かつ冷媒Kmの流通路を形成するコイル管部3とを備えるクーラントチラー用熱交換器1を構成するに際して、シェル部2の軸方向Fsにおける中央部位Xcと下端面部2dの間にシェル部2を軸方向Fsの第一シェル分割部4と第二シェル分割部5に分割する分割部Pcを設け、この分割部Pcを着脱手段6により着脱可能に構成するとともに、第一シェル分割部4に、シェル部2に対する液流入口2iと液流出口2e及びコイル管部3に対する冷媒流入口3i…と冷媒流出口3e…を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラント液の流通路となるシェル部とこのシェル部に収容することにより冷媒の流通路となるコイル管部を備えるクーラントチラー用熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基本構成として、上端面部及び下端面部を有する円筒形に構成し、かつ被冷却液の流通路を形成するシェル部と、このシェル部の内部に収容し、かつ冷媒の流通路を形成するコイル管部を備えた熱交換器であって、特に、被冷却液が比較的高い圧力により送られる環境において使用される熱交換器としては、特許文献1で開示される熱交換器が知られている。
【0003】
同文献1に開示される熱交換器は、当該熱交換器を大きく形成することなく熱通過率を高い値で安定させることを目的としたものであり、ケース及びその内側に配置された入口管からなる二重管により油通路が形成され、該油通路の内部に冷媒通路を形成するコイル状のローフィンチューブが装着されたシェルアンドコイル型の油冷却器であって、該ローフィンチューブとの旋回ピッチが、チューブ外径の1.3〜2.0倍に形成された構成を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−170875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1で開示される流動抵抗の高い油(被冷却液)の冷却を行う熱交換器のように、一般に被冷却液が比較的高い液圧環境で使用される熱交換器では、当該熱交換器の耐圧性を十分に確保する必要がある。
【0006】
例えば、工作機械によりワークを加工する場合、発熱するワークに対して冷却されたクーラント液を放出して当該ワークの冷却を行っている。この際、クーラント液は工作機械に対して別途設置するクーラントチラーにより冷却を行うため、クーラント液の流通経路が長くなる傾向があるとともに、クーラント液は循環使用するため、フィルタ等によるフィルタリングを行ったとしても完全には除去されない微細な切粉等によって徐々に汚れてしまう。したがって、この種のクーラントチラーでは、クーラント液を循環させる液圧を通常、0.5〜0.6〔MPa〕程度の高圧に設定することにより、流動抵抗に対抗させ、更に汚れによる管詰まり等の不具合の発生を防止しているとともに、ケース(シェル部)及びローフィンチューブ(コイル管部)を含む熱交換器全体の構成を一体構造とすることにより十分な密閉性及び耐圧性を確保していた。
【0007】
しかし、被冷却液が比較的高い液圧環境で使用される従来の熱交換器は、一体構造とする故に、次のような固有の問題点も存在した。
【0008】
第一に、クーラント液の汚れ、即ち、切粉等による汚れは、特に、熱交換器における複雑な形状のローフィンチューブ(コイル管部)の隙間等に堆積しやすいため、そのまま放置した場合には、熱交換効率の低下や流動抵抗の更なる増加を招く不具合を生じる。したがって、定期的に又は使用環境により汚れがひどいときには、熱交換器の洗浄を行う必要があるが、従来は、熱交換器から被冷却液を一旦抜き取り、この後、熱交換器に洗浄液を循環させて洗浄せざるを得ないため、洗浄に係わる工数増加及び長時間化が強いられ、しかも十分な洗浄を行うことができなかった。
【0009】
第二に、被冷却液が比較的高い液圧環境で使用される熱交換器は、十分な密閉性及び耐圧性を確保する必要があるため、通常、ケース(シェル部)及びローフィンチューブ(コイル管部)を含む全体が一体化された一台のユニットとして構成されている。したがって、熱交換器が故障や寿命等により使用不能になった場合、ユニット全体を交換する必要があるなど、資源節減面及びコスト面において難があった。
【0010】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したクーラントチラー用熱交換器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するため、上端面部2u及び下端面部2dを有する円筒形に構成し、かつクーラント液Lcの流通路を形成するシェル部2と、このシェル部2の内部に収容し、かつ冷媒Kmの流通路を形成するコイル管部3とを備えてなるクーラントチラー用熱交換器1を構成するに際して、シェル部2の軸方向Fsにおける中央部位Xcと下端面部2dの間にシェル部2を軸方向Fsの第一シェル分割部4と第二シェル分割部5に分割する分割部Pcを設け、この分割部Pcを着脱手段6により着脱可能に構成するとともに、第一シェル分割部4に、シェル部2に対する液流入口2iと液流出口2e及びコイル管部3に対する冷媒流入口3i…と冷媒流出口3e…を配設してなることを特徴とする。
【0012】
この場合、発明の好適な態様により、コイル管部3は、第一シェル分割部4からシェル部2の内部外周側Xfに配して上端面部2uの近傍に至る外側コイル半部7と、この外側コイル半部7の上端から折返し、シェル部2の内部中心側Xiに配して第一シェル分割部4に至る内側コイル半部8とを備えて構成できる。また、シェル部2は、第一シェル分割部4から軸方向Fs上方に突出し、かつ外側コイル半部7と内側コイル半部8間に介在するとともに、上端面部2uの近傍に至る円筒形の流通路仕切部9を備え、液流入口2i又は液流出口2eの一方を流通路仕切部9の外側に臨ませ、かつ他方を流通路仕切部9の内側に臨ませることができる。さらに、第一シェル分割部4は、下端面部2dのみにより構成することができる。なお、熱交換器1は、第一シェル分割部4を第二シェル分割部5に対して下側に位置させる第一設置態様Ms又はこの第一設置態様Msに対して上下を反転させることにより第一シェル分割部4を第二シェル分割部5に対して上側に位置させる第二設置態様Mn可能に構成できる。一方、着脱手段6は、第一シェル分割部4又は第二シェル分割部5の一方に装着部11を設け、かつ他方に被装着部12を設けることにより、第一シェル分割部4と第二シェル分割部5を直接着脱可能に構成してもよいし、或いは第一シェル分割部4と第二シェル分割部5に対して着脱し、装着時には第一シェル分割部4と第二シェル分割部5間に跨がることにより第一シェル分割部4と第二シェル分割部5を固定可能な別体の着脱具13を備えて構成してもよい。他方、第一シェル分割部4に対して第二シェル分割部5の代わりに着脱し、装着した際にコイル管部3を直接洗浄する洗浄手段14を備えて構成してもよいし、第一シェル分割部4に対して第二シェル分割部5の代わりに着脱し、装着した際にコイル管部3の洗浄を補助する洗浄補助手段15を備えて構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
このような構成を有する本発明に係るクーラントチラー用熱交換器1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) シェル部2の軸方向Fsにおける中央部位Xcと下端面部2dの間にシェル部2を軸方向Fsの第一シェル分割部4と第二シェル分割部5に分割する分割部Pcを設け、この分割部Pcを着脱手段6により着脱可能に構成するとともに、第一シェル分割部4に、シェル部2に対する液流入口2iと液流出口2e及びコイル管部3に対する冷媒流入口3i…と冷媒流出口3e…を配設したため、熱交換器1の内部を洗浄する際には、第一シェル分割部4から第二シェル分割部5を離脱すればよく、これにより、切粉等の汚れが堆積しやすい複雑な形状のコイル管部3等であっても容易に洗浄することが可能となり、洗浄に係わる工数低減及び作業時間の短縮を図れるとともに、十分かつ確実な洗浄を行うことができる。
【0015】
(2) シェル部2の軸方向Fsにおける中央部位Xcと下端面部2dの間にシェル部2を軸方向Fsの第一シェル分割部4と第二シェル分割部5に分割する分割部Pcを設け、この分割部Pcを着脱手段6により着脱可能に構成したため、熱交換器1のメンテナンスも容易に行うことができるとともに、故障や寿命等により熱交換器1の使用が不能になった場合であっても、一部の部品交換、即ち、第一シェル分割部4又は第二シェル分割部5のいずれか一方を交換すれば足りるため、資源節減面及びコスト面における有利性を確保できる。
【0016】
(3) 好適な態様により、コイル管部3を、第一シェル分割部4からシェル部2の内部外周側Xfに配して上端面部2uの近傍に至る外側コイル半部7と、この外側コイル半部7の上端から折返し、シェル部2の内部中心側Xiに配して第一シェル分割部4に至る内側コイル半部8とを備えて構成すれば、コイル管部3の全長をシェル部2の筒長のほぼ二倍にできるため、熱交換面積もほぼ二倍にでき、もって、熱の交換効率を飛躍的に高めることができる。この場合、シェル部2の内部のコイル管部3の密度が二倍になり、切粉等の汚れがより堆積しやすくなるが、シェル部2は第一シェル分割部4から第二シェル分割部5を離脱して洗浄可能なため、特に、本発明はこのような熱交換器1の実施態様に適用して最適となる。
【0017】
(4) 好適な態様により、シェル部2に、第一シェル分割部4から軸方向Fs上方に突出し、かつ外側コイル半部7と内側コイル半部8間に介在するとともに、上端面部2uの近傍に至る円筒形の流通路仕切部9を備え、液流入口2i又は液流出口2eの一方を流通路仕切部9の外側に臨ませ、かつ他方を流通路仕切部9の内側に臨ませて構成すれば、シェル部2の内部におけるクーラント液Lcの流通路の長さをほぼ二倍にできるため、より効率的な熱交換を行うことができるとともに、流通路の形状が複雑になっても、シェル部2は第一シェル分割部4から第二シェル分割部5を離脱可能なため、容易に洗浄することができる。
【0018】
(5) 好適な態様により、第一シェル分割部4を、下端面部2dのみにより構成すれば、第一シェル分割部4の形状は平坦状の円板になるため、コイル管部3の側方が開放され、コイル管部3の洗浄をより容易かつ確実に行うことができる。
【0019】
(6) 好適な態様により、熱交換器1を、第一シェル分割部4を第二シェル分割部5に対して下側に位置させる第一設置態様Ms又はこの第一設置態様Msに対して上下を反転させることにより第一シェル分割部4を第二シェル分割部5に対して上側に位置させる第二設置態様Mn可能に構成すれば、液流入口2iと液流出口2e及び冷媒流入口3i…と冷媒流出口3e…を上側に配するか下側に配するかの選択ができるため、設計自由度を高めることができ、更なる小型化の実現に寄与できるとともに、特に、第二設置態様Mnを選択すれば、洗浄時に、洗浄液が第一シェル分割部4に溜まることがないため、洗浄作業をより円滑に行うことができる。
【0020】
(7) 好適な態様により、着脱手段6を構成するに際し、第一シェル分割部4又は第二シェル分割部5の一方に装着部11を設け、かつ他方に被装着部12を設けることにより、第一シェル分割部4と第二シェル分割部5を直接着脱可能に構成すれば、別途用意する着脱手段が不要になるため、着脱操作を容易に行うことができるとともに、コスト面でも有利となる。
【0021】
(8) 好適な態様により、着脱手段6を構成するに際し、第一シェル分割部4と第二シェル分割部5に対して着脱し、装着時には第一シェル分割部4と第二シェル分割部5間に跨がることにより第一シェル分割部4と第二シェル分割部5を固定可能な別体の着脱具13を備えて構成すれば、第一シェル分割部4と第二シェル分割部5をより強固に結合できるため、シェル部2の密閉性及び耐圧性をより高めることができる。
【0022】
(9) 好適な態様により、第一シェル分割部4に対して第二シェル分割部5の代わりに着脱し、装着した際にコイル管部3を直接洗浄する洗浄手段14を備えて構成すれば、特に、コイル管部3の形態に適した洗浄が可能になるため、洗浄性(洗浄能力)及び洗浄能率をより高めることができる。
【0023】
(10) 好適な態様により、第一シェル分割部4に対して第二シェル分割部5の代わりに着脱し、装着した際にコイル管部3の洗浄を補助する洗浄補助手段15を備えて構成すれば、他の洗浄手段と組合わせることにより洗浄性(洗浄能力)及び洗浄能率をより高めることができるとともに、比較的低コストに実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の好適実施形態に係る熱交換器の内部構造を示す断面正面図、
【図2】同熱交換器に備える第一シェル分割部から第二シェル分割部を離脱した状態を示す分解正面図、
【図3】同熱交換器に用いるクランプバンド(着脱手段)の平面図、
【図4】同熱交換器の外観正面図、
【図5】同熱交換器の第一シェル分割部の平面図、
【図6】同熱交換器の第一シェル分割部の底面図、
【図7】同熱交換器を備えるクーラントチラー及び工作機械を含む回路系統図、
【図8】同熱交換器に備える洗浄手段の断面正面図、
【図9】同熱交換器に備える洗浄補助手段の断面正面図、
【図10】本発明の変更実施形態に係る熱交換器の外観正面図、
【図11】本発明の他の変更実施形態に係る熱交換器の外観正面図、
【図12】本発明の他の変更実施形態に係る熱交換器の外観正面図、
【図13】本発明の他の変更実施形態に係る熱交換器の一部を抽出して示す断面正面図、
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0026】
まず、本実施形態に係るクーラントチラー用熱交換器1の全体構成について、図1〜図6を参照して説明する。
【0027】
熱交換器1において、2はステンレス素材等により形成したシェル部であり、円筒形のシェル本体部2mとこのシェル本体部2mの上端及び下端を覆う上端面部2u及び下端面部2dを有する。そして、このシェル部2において、軸方向Fsにおける中央部位Xcと下端面部2dの間にシェル部2を軸方向Fsに分割する分割部Pcを設ける。これにより、シェル部2は、図2に示すように、下端面部2dを有する第一シェル分割部4と上端面部2uを有する第二シェル分割部5との二分割構造となる。この場合、分割部Pcは、できるだけ下端面部2d寄りに設けることが望ましい。図1〜図4は、下端面部2dのみにより第一シェル分割部4を構成した場合を例示する。したがって、第二シェル分割部5は、シェル本体部2mと上端面部2uにより構成される。このように、第一シェル分割部4を、下端面部2dのみにより構成すれば、第一シェル分割部4の形状は平坦状の円板になるため、コイル管部3の側方が開放され、コイル管部3の洗浄をより容易かつ確実に行える利点がある。
【0028】
また、分割部Pcを着脱可能な着脱手段6を備える。この着脱手段6には、第一シェル分割部4と第二シェル分割部5に対して着脱し、装着時には第一シェル分割部4と第二シェル分割部5間に跨がることにより第一シェル分割部4と第二シェル分割部5を固定可能な別体の着脱具13を用いる。例示の着脱具13は、クランプバンド20であり、図3に示すように、リング形のバンドを三つに分割した形状のバンド分割部21,22及び23を備え、中間のバンド分割部21の両端に二つのバンド分割部22,23の一端をそれぞれ回動部24,25を介して連結するとともに、両側のバンド分割部22,23の他端同士を連結又は離脱させる締付部13cを備える。この場合、締付部13cは、バンド分割部22,23の他端から径方向に突出した一対の連結片22j,23jと、この連結片22jと23jを連結又は連結解除する連結部26とを有するとともに、この連結部26は、さらに、一方の連結片22jに回動自在に取付けたボルト部26bと、このボルト部26bに先端を螺合したグリップ付ナット部26nとを有する。なお、各バンド分割部21,22及び23の断面は、図1に示すように、上下部位に傾斜面を有する。
【0029】
一方、第一シェル分割部4の周縁にはフランジ部4fを一体形成するとともに、第二シェル分割部5の下端にはフランジ部5fを一体形成する。これにより、第一シェル分割部4と第二シェル分割部5を一体化する際には、図2に示すように、シールリング(Oリング)29を介してフランジ部4fと5fを重ね合わせ、連結部26による連結を解除状態にしたクランプバンド20、即ち、図3に仮想線で示すクランプバンド20を、フランジ部4fと5fの双方の周縁を挟むように装着した後、図3に実線で示すように、グリップ付ナット部26nを他方の連結片23jに設けた割溝に係合させ、この後、グリップ付ナット部26nを回し操作することにより締め付ければよい。これにより、第一シェル分割部4と第二シェル分割部5は一体に固定される。このような別体のクランプバンド20(着脱具13)を備えて構成すれば、第一シェル分割部4と第二シェル分割部5をより強固に結合できるため、シェル部2の密閉性及び耐圧性をより高めることができる。
【0030】
他方、第一シェル分割部4には、図6に示すように、シェル部2に対する液流入口2iと液流出口2e及びコイル管部3に対する冷媒流入口3i…と冷媒流出口3e…を配設する。したがって、第一シェル分割部4の上面には、コイル管部3を配設し、このコイル管部3の一端側を冷媒流入口3i…に接続し、コイル管部3の他端側を冷媒流出口3e…に接続する。なお、例示の場合、コイル管部3の端部をそのまま冷媒流入口3i…及び冷媒流出口3e…として構成し、下端面部2dを貫通させることにより当該下端面部2dの下方に露出させている。コイル管部3は、図1に示すように、第一シェル分割部4からシェル部2の内部外周側Xfに配して上端面部2uの近傍に至る外側コイル半部7と、この外側コイル半部7の上端から折返し、シェル部2の内部中心側Xiに配して第一シェル分割部4に至る内側コイル半部8とを備えて構成する。また、例示のコイル管部3は、四本の熱交換管31a,31b,31c及び31dを横二列縦二段に配した集合管により構成し、この集合管を螺旋状に湾曲させて製作する。これにより、コイル管部3は、シェル部2の内部に収容して冷媒Kmの流通路を形成する。一方、冷媒流入口3i…は外部のマニホールド33に接続するとともに、冷媒流出口3e…は外部のマニホールド34に接続する。なお、36a,36b及び36cは熱交換器1を支持する三つの脚部を示す。
【0031】
コイル管部3を、このような外側コイル半部7と内側コイル半部8により構成すれば、コイル管部3の全長をシェル部2の筒長のほぼ二倍にできるため、熱交換面積もほぼ二倍にでき、もって、熱の交換効率を飛躍的に高めることができる。この場合、シェル部2の内部のコイル管部3の密度が二倍になり、切粉等の汚れがより堆積しやすくなるが、シェル部2は第一シェル分割部4から第二シェル分割部5を離脱して洗浄可能なため、特に、本発明はこのような熱交換器1の実施態様に適用して最適となる。
【0032】
さらに、シェル部2の内部には、第一シェル分割部4(下端面部2d)の上面から軸方向Fs上方に突出し、かつ外側コイル半部7と内側コイル半部8間に介在するとともに、上端面部2uの近傍に至る円筒形の流通路仕切部9を配設する。この場合、液流入口2iは流通路仕切部9の外側に臨ませ、液流出口2eは流通路仕切部9の内側に臨ませる。これにより、シェル部2は、流通路仕切部9と共にクーラント液Lcの流通路を形成する。なお、液流入口2iは、上端面部2dに対して斜めに傾斜させて配することにより、クーラント液Lcが液流入口2iからシェル部2の内部に流入した際に螺旋流が発生するように考慮する。
【0033】
このような流通路仕切部9を設けるとともに、液流入口2iを流通路仕切部9の外側に臨ませ、液流出口2eを流通路仕切部9の内側に臨ませれば、シェル部2の内部におけるクーラント液Lcの流通路の長さをほぼ二倍にできるため、より効率的な熱交換を行うことができるとともに、流通路の形状が複雑になっても、シェル部2は第一シェル分割部4から第二シェル分割部5を離脱可能なため、容易に洗浄することができる。
【0034】
次に、本実施形態に係る熱交換器1を用いたクーラントチラー及びこのクーラントチラーにより冷却されるクーラント液Lcの循環系について、図7を参照して説明する。
【0035】
図7において、40はクーラントチラー、80はこのクーラントチラー40により冷却されるクーラント液Lcの循環系をそれぞれ示す。まず、クーラントチラー40は、一般的な冷凍サイクルCを構成しており、本実施形態に係る熱交換器1の一次側、即ち、冷媒流入口3i…を接続したマニホールド33と冷媒流出口3e…を接続したマニホールド34を、冷凍サイクルCを構成する冷媒回路に接続する。また、熱交換器1の二次側、即ち、液流入口2iと液流出口2eは、クーラント液Lcの循環系に接続する。
【0036】
冷凍サイクルCは、冷媒ストレーナ41,圧縮機42,凝縮器43,電子膨張弁44を順次接続するとともに、冷媒ストレーナ41の冷媒入口をマニホールド34に接続し、かつ電子膨張弁44の冷媒出口をマニホールド33に接続した構成を備えており、これにより、冷媒Kmが循環する冷媒回路が構成される。なお、例示の冷凍サイクルCは、マニホールド33と圧縮機42の吐出口間に接続した、キャピラリチューブ46と電磁弁47の直列回路からなるホットガスバイパス回路45を備えている。その他、図7中、43fは凝縮器43を空冷する凝縮器ファン、48は高圧圧力スイッチ、49は低圧圧力スイッチ、50は吐出管温度センサ、51は周囲温度センサ、52は凝縮冷媒温度センサ、53は熱交換器入口温度センサ、54は吸入温度センサ、55はチェックジョイント、56は圧縮機インバータをそれぞれ示す。
【0037】
一方、クーラント液Lcの循環系80において、81はクーラント液Lcを貯留するクーラント液タンクを示す。クーラント液タンク81の内部は、半仕切板81a,81bによりクーラント液供給槽部82とクーラント液冷却槽部83に仕切られ、クーラント液冷却槽部83は、循環ポンプ84を接続した吸入管85を介して熱交換器1の液流入口2iに接続するとともに、熱交換器1の液流出口2eは、戻し管86を介してクーラント液冷却槽部83に接続する。また、クーラント液供給槽部82は、送液ポンプ87を接続した供給管88を介して工作機械100の放出ノズル101に接続するとともに、工作機械100の液回収トレイ102はフィルタ89を接続した戻し管90を介してクーラント液冷却槽部83に接続する。さらに、供給管88における循環ポンプ84の下流側には、液流入口2iに流入するクーラント液Lcの温度を検出する熱交換器入口温度センサ91を付設する。
【0038】
他方、95はコントローラを示す。コントローラ95は、クーラントチラー40の全体の制御を司る機能を備える。なお、必要によりクーラント液Lcの循環系80における一部又は全部の制御を司る機能を設けることができる。したがって、コントローラ95の制御出力ポートには、少なくとも上述した圧縮機インバータ56を接続するとともに、循環ポンプ84、更には送液ポンプ87を接続する。また、コントローラ95の入力ポートには、少なくとも熱交換器1の熱交換器入口温度センサ91を接続する。コントローラ95は、CPU,メモリ,電源ユニット等を含むコンピュータ機能を備え、少なくともクーラントチラー40に係わる温度制御(シーケンス制御)を実行する。したがって、コントローラ95には、これらの制御を実現するための制御プログラムを格納する。
【0039】
次に、本実施形態に係る熱交換器1の機能を含むクーラントチラー40の動作及び洗浄方法について、図1〜図9を参照して説明する。
【0040】
まず、クーラントチラー40を作動させれば、冷凍サイクルC内を冷媒Kmが循環し、熱交換器1のコイル管部3は冷却器(蒸発器)として機能し、クーラント液Lcに対する冷却が行われる。この場合、熱交換器1では、冷媒流入口3i…から冷媒Kmが外側コイル半部7に流入し、外側コイル半部7を流通して上端側に至るとともに、この後、内側コイル半部8に流入し、内側コイル半部8を流通して下端側に至り、冷媒流出口3e…から流出する。一方、循環ポンプ84の作動により、クーラント液Lcがクーラント液タンク81のクーラント液冷却槽部83から吸い上げられ、吸入管85を流通した後、液流入口2iからシェル部2の内部に流入する。この際、クーラント液Lcは流通路仕切部9の外側の空間に斜め上方に向いた螺旋状に流入するとともに、順次貯留される。そして、クーラント液Lcの液面が上昇し、流通路仕切部9の上端に達すれば、クーラント液Lcは流通路仕切部9の内側の空間に落下流入し、液流出口2eから流出する。この場合、液流出口2eからの自然流出による流量よりも循環ポンプ84の作動による流量が多くなれば、流通路仕切部9の内側の空間にもクーラント液Lcが貯留され、最終的にはシェル部2の内部にクーラント液Lcが満たされる。
【0041】
これにより、シェル部2の内部では、クーラント液Lcと冷媒Kmとの熱交換が行われ、クーラント液タンク81内のクーラント液Lcに対する冷却が行われる。この際、液流入口2iに流入するクーラント液Lcの温度は熱交換器入口温度センサ91により検出され、検出温度としてコントローラ95に付与される。コントローラ95には、予め目標温度が設定されているため、コントローラ95は、検出温度が目標温度になるように、圧縮機インバータ56に制御信号を付与し、圧縮機42の回転数を可変することにより、クーラント液Lcの温度に対するフィードバック制御を行う。
【0042】
他方、送液ポンプ87の作動により、冷却されたクーラント液Lcがクーラント液タンク81のクーラント液供給槽部82から吸い上げられ、供給管88を通して工作機械100の放出ノズル101に送られる。これにより、放出ノズル101からワーク105に対して冷却されたクーラント液Lcが放出され、加工により発熱したワーク105が冷却される。そして、使用されたクーラント液Lcは液回収トレイ102により回収され、戻し管90及びフィルタ89を通してクーラント液冷却槽部83に戻される。この場合、液回収トレイ102に回収されるクーラント液Lcは、切粉等の混在により汚れているが、この汚れはフィルタ89により除去される。しかし、フィルタ89により完全に除去することは困難であるため、クーラント液冷却槽部83に収容されるクーラント液Lcは徐々に汚れが進行するとともに、汚れたクーラント液Lcが熱交換器1を循環し、熱交換器1の内部にも汚れが堆積するとともに、藻等も自然発生する。
【0043】
したがって、熱交換器1は、定期的に又は使用環境により汚れがひどいときには、内部の洗浄を行う必要がある。この場合、従来では、前述したように、熱交換器1からクーラント液Lcを排出した後、クーラント液タンク81から外した吸入管85と戻し管86を、洗浄液の収容された洗浄液タンクに浸け、循環ポンプ84を作動させることにより、熱交換器1に洗浄液を循環させる洗浄を行っていた。しかし、本実施形態に係る熱交換器1では、熱交換器1からクーラント液Lcを排出した後、クランプバンド20を取外すことにより、第一シェル分割部4から第二シェル分割部5を離脱できる。これにより、図2に示すように、コイル管部3を外部に露出させることができるため、この状態でコイル管部3及び第二シェル分割部5内部の洗浄を容易に行うことができる。
【0044】
洗浄に際しては、洗浄用ブラシや洗浄用雑巾等を用いた手作業による洗浄を行ってももちろんよいが、より好適な態様により洗浄を行うには、図8に示す専用の洗浄器70等の洗浄手段14を用いたり、図9に示す専用の洗浄補助具75等の洗浄補助手段15を用いることが望ましい。
【0045】
図8に示す洗浄器70は、第一シェル分割部4に対して第二シェル分割部5の代わりに着脱し、装着した際にコイル管部3を直接洗浄可能な機能を備えている。この洗浄器70は、第一シェル分割部4のフランジ部4fに着脱可能な装着部71cを下端に形成した外筒部71と、この外筒部71の内部に回動自在に配した内筒部72と、この内筒部72の上端面に固定したシャフト部73sと、このシャフト部73sの上端側を外筒部71の挿通孔を通して外部に突出させ、クランク状に折曲形成した回動操作部73gと、内筒部72の内周面から突出した外側洗浄ブラシ部74eと、シャフト部73sから突出した内側洗浄ブラシ部74iとにより構成する。なお、外筒部71及び内筒部72は、透明なプラスチック素材等により形成することが望ましい。
【0046】
また、図9に示す洗浄補助具75は、第一シェル分割部4に対して第二シェル分割部5の代わりに着脱し、装着した際にコイル管部3の洗浄を補助する機能を備えており、この洗浄補助具75は、第一シェル分割部4のフランジ部4fに着脱可能な装着部76cを下端に形成した筒部76を備えている。この筒部76も透明なプラスチック素材等により形成することが望ましい。
【0047】
洗浄を行う際には、第二シェル分割部5の代わりに洗浄器70を第一シェル分割部4に装着すればよい。この場合、外筒部71の装着部71cを第一シェル分割部4のフランジ部4fに装着することができる。これにより、外側洗浄ブラシ部74eは外側コイル半部7に接触し、内側洗浄ブラシ部74iは内側コイル半部8に接触する。なお、各ブラシ部74i,74eには予め洗浄液、例えば泡の出る洗浄液を塗布することが望ましい。そして、この状態で回動操作部73gを手で回動操作すれば、内筒部72及びシャフト部73sが一体に回動し、外側洗浄ブラシ部74eにより外側コイル半部7に対する洗浄(汚れ落とし)が行われるとともに、内側洗浄ブラシ部74iにより内側コイル半部8に対する洗浄(汚れ落とし)が行われる。この後、洗浄が終了したなら、洗浄器70の代わりに洗浄補助具75を装着し、洗浄補助具75の上端開口からシャワー水等をかけることにより、洗浄液を流し落とせばよい。
【0048】
他方、洗浄器70を用いることなく、洗浄補助具75のみを用いた洗浄も可能である。この場合、第二シェル分割部5の代わりに洗浄補助具75を第一シェル分割部4に装着する。そして、この状態で洗浄補助具75の上端開口から高圧洗浄機からの高圧洗浄水を吹き付けることにより洗浄を行うことができる。
【0049】
このように、洗浄器70等の洗浄手段14をオプションとして備えれば、特に、コイル管部3の形態(態様)に適した洗浄が可能になるため、洗浄性(洗浄能力)及び洗浄能率をより高めることができる。また、洗浄補助具75等の洗浄補助手段15をオプションとして備えれば、他の洗浄手段と組合わせることにより洗浄性(洗浄能力)及び洗浄能率をより高めることができるとともに、比較的低コストに実現できる利点がある。
【0050】
次に、本発明の変更実施形態に係るクーラントチラー用熱交換器1について、図10〜図13を参照して説明する。
【0051】
図10に示す変更実施形態に係る熱交換器1は、シェル部2を第一シェル分割部4と第二シェル分割部5に分割する分割部Pcの位置を変更したものである。前述した図4(図1)に示した熱交換器1は、第一シェル分割部4を、下端面部2dのみにより構成、即ち、分割部Pcの位置として、最下部の位置を選択した例であるが、このような分割部Pcは、シェル部2の軸方向Fsにおける中央部位Xcと下端面部2dの間の任意位置を選択できる。図10に示す変更実施形態では、中央部位Xcと下端面部2d間のほぼ中央の位置を分割部Pcに選定したものである。したがって、第一シェル分割部4には、下端面部2dとシェル本体部2mの下側一部2mdが含まれ、第二シェル分割部5には、上端面部2uとシェル本体部2mの上側残部2muが含まれる。この場合、液流入口2iはシェル本体部2mの下側一部2mdにおける周面部に設けることができる。これにより、液流入口2iから水平方向にクーラント液Lcを吐出させることができるため、より良好な螺旋流を発生させることができる。なお、その他の基本的な構成は、前述した図4(図1)に示した熱交換器1と同じになる。
【0052】
図11に示す変更実施形態に係る熱交換器1は、設置時の向きを変更したものである。前述した図4(図1)に示した実施形態は、第一シェル分割部4を第二シェル分割部5に対して下側に位置させる第一設置態様Msにより設置した場合を示したが、図11に示す変更実施形態は、この第一設置態様Msに対して上下を反転させることにより第一シェル分割部4を第二シェル分割部5に対して上側に位置させる第二設置態様Mnにより設置したものである。したがって、熱交換器1の基本的な構成は、前述した図4(図1)に示した熱交換器1と同じになる。熱交換器1を設置する際には、例えば、ゲート形の設置用フレーム201を使用し、この設置用フレーム201の上フレーム201sにより、反転させた熱交換器1を吊り下げる態様により設置できる。このような第二設置態様Mnにより設置すれば、洗浄時に、洗浄液が第一シェル分割部4に溜まることがないため、洗浄作業をより円滑に行うことができる。このように、熱交換器1を、第一シェル分割部4を第二シェル分割部5に対して下側に位置させる第一設置態様Ms又は第一シェル分割部4を第二シェル分割部5に対して上側に位置させる第二設置態様Mn可能に構成すれば、液流入口2iと液流出口2e及び冷媒流入口3i…と冷媒流出口3e…を上側に配するか下側に配するかの選択ができるため、設計自由度を高めることができ、更なる小型化の実現にも寄与できる。
【0053】
図12に示す変更実施形態に係る熱交換器1は、着脱手段6の形態を変更したものである。前述した図1(図4)に示した実施形態は、着脱手段6として、第一シェル分割部4と第二シェル分割部5を固定可能な別体の着脱具13を用いた例を示したが、図12に示す変更実施形態は、着脱手段6として、第二シェル分割部5の下端部の外周面にネジ部を形成した装着部11を設けるとともに、第一シェル分割部4の外周縁から上方に突出し、内周面に、当該装着部11が螺着するネジ孔部を形成した被装着部12を設けたものである。これにより、第一シェル分割部4と第二シェル分割部5は直接着脱可能となる。図12中、301は、装着時に、第一シェル分割部4と第二シェル分割部5間に介在されるシールリング(Oリング)を示すとともに、302及び303は、第二シェル分割部5を回す際に手で握ることができる一対のグリップを示す。なお、第二シェル分割部5に被装着部12を設け、第一シェル分割部4に装着部11を設けてもよい。このように、第一シェル分割部4と第二シェル分割部5を直接着脱可能に構成すれば、別途用意する着脱手段が不要となるため、着脱操作を容易に行えるとともに、コスト面でも有利となる。なお、その他の基本的な構成は、前述した図4(図1)に示した熱交換器1と同じになる。
【0054】
図13に示す変更実施形態に係る熱交換器1は、追加的構成要素として、吸気孔401及び/又は排出孔404を設けたものである。図13中、上段には、熱交換器1の上側の一部を示し、第二シェル分割部5の上端面部2uに、外気をシェル部2に導入可能なネジ孔部による吸気孔401を設けるとともに、この吸気孔401に着脱して当該吸気孔401を閉塞又は開放可能なボルトによる吸気孔キャップ402を設けた例を示す。なお、403は上端面部2uと吸気孔キャップ402間に介在させるシールリング(Oリング)を示す。このような吸気孔401を設ければ、シェル部2の内部の圧抜き(給気)を行うことができるため、シェル部2からのクーラント液Lcの液抜きを確実に行うことができるとともに、第一シェル分割部4と第二シェル分割部5を離脱する際における無用な吹き出しを防止して安全性を高めることができる。
【0055】
他方、図13中、下段には、熱交換器1の下側の一部を示し、第一シェル分割部4を構成する下端面部2dに、シェル部2内部のクーラント液Lc又は洗浄液を外部に排出可能なネジ孔部による排出孔404を設けるとともに、この排出孔404に着脱して当該排出孔404を閉塞又は開放可能なボルトによる排出孔キャップ405を設けた例を示す。なお、406は下端面部2dと排出孔キャップ405間に介在させるシールリング(Oリング)を示す。このような排出孔404を設ければ、シェル部2内部におけるクーラント液Lc又は洗浄液の液抜きを確実に行うことができ、第一シェル分割部4と第二シェル分割部5を離脱する際におけるクーラント液Lc又は洗浄液の無用な外部流出を防止でき、洗浄作業をより円滑に行うことができるとともに、下端面部2dの上面に溜まった切粉等の汚れも一緒に排出することができる。なお、以上、図10〜図13において、図1〜図9と同一部分には同一符号を付してその構成を明確化した。
【0056】
よって、このような変更実施形態を含む本実施形態に係る熱交換器1によれば、シェル部2の軸方向Fsにおける中央部位Xcと下端面部2dの間にシェル部2を軸方向Fsの第一シェル分割部4と第二シェル分割部5に分割する分割部Pcを設け、この分割部Pcを着脱手段6により着脱可能に構成するとともに、第一シェル分割部4に、シェル部2に対する液流入口2iと液流出口2e及びコイル管部3に対する冷媒流入口3i…と冷媒流出口3e…を配設したため、熱交換器1の内部を洗浄する際には、第一シェル分割部4から第二シェル分割部5を離脱すればよく、これにより、切粉等の汚れが堆積しやすい複雑な形状のコイル管部3等であっても容易に洗浄することが可能となり、洗浄に係わる工数低減及び作業時間の短縮を図れるとともに、十分かつ確実な洗浄を行うことができる。また、シェル部2の軸方向Fsにおける中央部位Xcと下端面部2dの間にシェル部2を軸方向Fsの第一シェル分割部4と第二シェル分割部5に分割する分割部Pcを設け、この分割部Pcを着脱手段6により着脱可能に構成したため、熱交換器1のメンテナンスも容易に行うことができるとともに、故障や寿命等により熱交換器1の使用が不能になった場合であっても、一部の部品交換、即ち、第一シェル分割部4又は第二シェル分割部5のいずれか一方を交換すれば足りるため、資源節減面及びコスト面における有利性を確保できる。
【0057】
以上、好適実施形態(変更実施形態)について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0058】
例えば、コイル管部3の形態として、第一シェル分割部4からシェル部2の内部外周側Xfに配して上端面部2uの近傍に至る外側コイル半部7と、外側コイル半部7の上端から折返し、シェル部2の内部中心側Xiに配して第一シェル分割部4に至る内側コイル半部8により構成した例を示したが、外側コイル半部7のみで構成する場合や螺旋状ではなくジグザグ状に構成する場合など、各種形態により実施可能である。このため、流通路仕切部9は、必ずしも設けることを要しない。また、クーラント液Lcは、冷却液として使用できれば足り、水道水であってもよいし不凍液等の各種水溶液であってもよい。その他、着脱手段6,洗浄手段14,洗浄補助手段15は例示の形態に限定されるものではなく、同様の機能を有する各種形態により実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係るクーラントチラー用熱交換器は、クーラント液の流通路となるシェル部とこのシェル部に収容することにより冷媒の流通路となるコイル管部を備える各種熱交換器に適用できるとともに、例示したクーラントチラーをはじめ各種用途のクーラントチラーに利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1:クーラントチラー用熱交換器,2:シェル部,2u:上端面部,2d:下端面部,2i:液流入口,2e:液流出口,3:コイル管部,3i…:冷媒流入口,3e…:冷媒流出口,4:第一シェル分割部,5:第二シェル分割部,6:着脱手段,7:外側コイル半部,8:内側コイル半部,9:流通路仕切部,11:装着部,12:被装着部,13:クランプバンド,14:洗浄手段,15:洗浄補助手段,Lc:クーラント液,Km:冷媒,Fs:軸方向,Xc:中央部位,Xf:内部外周側,Xi:内部中心側,Pc:分割部,Ms:第一設置態様,Mn:第二設置態様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端面部及び下端面部を有する円筒形に構成し、かつクーラント液の流通路を形成するシェル部と、このシェル部の内部に収容し、かつ冷媒の流通路を形成するコイル管部とを備えてなるクーラントチラー用熱交換器であって、前記シェル部の軸方向における中央部位と前記下端面部(又は前記上端面部)の間に前記シェル部を軸方向の第一シェル分割部と第二シェル分割部に分割する分割部を設け、この分割部を着脱手段により着脱可能に構成するとともに、前記第一シェル分割部に、前記シェル部に対する液流入口と液流出口及び前記コイル管部に対する冷媒流入口と冷媒流出口を配設したことを特徴とするクーラントチラー用熱交換器。
【請求項2】
前記コイル管部は、前記第一シェル分割部から前記シェル部の内部外周側に配して前記上端面部の近傍に至る外側コイル半部と、この外側コイル半部の上端から折返し、前記シェル部の内部中心側に配して前記第一シェル分割部に至る内側コイル半部とを備えることを特徴とする請求項1記載のクーラントチラー用熱交換器。
【請求項3】
前記シェル部は、前記第一シェル分割部から軸方向上方に突出し、かつ前記外側コイル半部と前記内側コイル半部間に介在するとともに、前記上端面部の近傍に至る円筒形の流通路仕切部を備え、前記液流入口又は前記液流出口の一方を前記流通路仕切部の外側に臨ませ、かつ他方を前記流通路仕切部の内側に臨ませてなることを特徴とする請求項1又は2記載のクーラントチラー用熱交換器。
【請求項4】
前記第一シェル分割部は、前記下端面部のみにより構成することを特徴とする請求項1,2又は3記載のクーラントチラー用熱交換器。
【請求項5】
前記第一シェル分割部を前記第二シェル分割部に対して下側に位置させる第一設置態様又はこの第一設置態様に対して上下を反転させることにより前記第一シェル分割部を前記第二シェル分割部に対して上側に位置させる第二設置態様可能に構成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のクーラントチラー用熱交換器。
【請求項6】
前記着脱手段は、前記第一シェル分割部又は前記第二シェル分割部の一方に装着部を設け、かつ他方に被装着部を設けることにより、前記第一シェル分割部と前記第二シェル分割部を直接着脱可能に構成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のクーラントチラー用熱交換器。
【請求項7】
前記着脱手段は、前記第一シェル分割部と前記第二シェル分割部に対して着脱し、装着時には前記第一シェル分割部と前記第二シェル分割部間に跨がることにより前記第一シェル分割部と前記第二シェル分割部を固定可能な別体の着脱具を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のクーラントチラー用熱交換器。
【請求項8】
前記第一シェル分割部に対して前記第二シェル分割部の代わりに着脱し、装着した際に前記コイル管部を直接洗浄する洗浄手段を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のクーラントチラー用熱交換器。
【請求項9】
前記第一シェル分割部に対して前記第二シェル分割部の代わりに着脱し、装着した際に前記コイル管部の洗浄を補助する洗浄補助手段を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のクーラントチラー用熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−72936(P2012−72936A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216518(P2010−216518)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】