説明

グミキャンディのセンター入りゼリー菓子及びその製造方法

【課題】コシのある食感と弾力性のある食感を同時に味わえる、センターがグミキャンディであるゼリー菓子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】カラギーナン単独又はカラギーナン及び寒天を主成分とする増粘多糖類と、二糖類以下の糖類又は二糖類以下の糖アルコールで構成する糖質とを含むゼリー菓子本体に、トランスグルタミナーゼで架橋処理されたゼラチンと、糖質と、油脂とを含むグミキャンディをセンターとして含有してなる、グミキャンディのセンター入りゼリー菓子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターがグミキャンディであるゼリー菓子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グミキャンディは弾性があり食感を楽しむことができる菓子である。日本では1980年代に「果汁グミ」(商品名、明治製菓株式会社)や「シゲキックス」(登録商標、味覚糖株式会社)が発売されたのをきっかけに広く知られるようになり、「ピュレグミ」(登録商標、カンロ株式会社)や「サワーズグミ」(商品名、ノーベル製菓株式会社)、「噛むシゲキックス」(商品名、ユーハ味覚糖株式会社)等次々と製品化された。近年、グミキャンディ市場は拡大しており非常に活性化している。それに伴い、消費者の嗜好性も多様化しており、新規な食感のグミキャンディが求められている。
【0003】
グミキャンディに於いて新規な食感の研究は盛んに行われている。例えば、不均質なゲルとして二価金属イオンでゲル化させた多糖類ゲルを、ゼラチン等のゲル化剤を使用した均質なゲル中に分散しているグミキャンディが、ザクザクとした食感を発現すること(特許文献1参照)、ゲル化剤と糖類と、穀物加工食品及び/又は酸加工食品とを含有してなる餅様菓子が、特有の粘弾性のある今までにない食感を有すること(特許文献2参照)が知られている。
【0004】
また、センターとシェルとを別の成分で構成した複層構造の組み合わせ菓子やその製造方法の提案もされている。例えば、ゼラチン、糖類、酸味料、さらに必要に応じて甘味料を原料として製造されるゼリー菓子本体中に、少なくともペプチド、糖類、酸味料、さらに必要に応じて甘味料を原料として製造される液状センターを含ませた液状センター入りゼリー菓子(特許文献3参照)、同心円ノズルを用いてセンター入りグミキャンディを製造する方法において、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガムのうちいずれかまたはそれらの混合物を添加したセンターシロップを使用するセンター入りグミキャンディの製造方法(特許文献4参照)、液状食品及び水溶性多価金属塩を主成分とする水分10〜30%のセンター材料濃厚液を、多価金属イオンでゲル化するゲル化剤、ゼラチン、及び糖類を主成分とする水分10〜30%のシェル膜で被覆してなるグミ(特許文献5)、等が挙げられる。しかしながら、前記組み合わせ菓子は、そのセンターにゲル化能がほとんどない又は全くない液性成分を使用しており、ゲル化能を持つ固形のセンターが入ったゼリー菓子はこれまでに無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−67638号公報
【特許文献2】特開2002−281906号公報
【特許文献3】特開平5−176683号公報
【特許文献4】特公平6−6034号公報
【特許文献5】特開平5−304906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コシのある食感と弾力性のある食感を同時に味わえる、センターがグミキャンディであるゼリー菓子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、カラギーナン単独又はカラギーナン及び寒天を主成分とする増粘多糖類と、特定の糖質とを含むゼリー菓子本体のセンターにトランスグルタミナーゼで架橋処理されたゼラチン、糖質及び油脂を含有するグミキャンディを用いることで、コシのある食感と弾力性のある食感を同時に味わえることを見出し、従来のグミキャンディにはない、2種類の食感をもったグミキャンディのセンター入りゼリー菓子として、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、
[1]カラギーナン単独又はカラギーナン及び寒天を主成分とする増粘多糖類と、二糖類以下の糖類又は二糖類以下の糖アルコールで構成する糖質とを含むゼリー菓子本体に、トランスグルタミナーゼで架橋処理されたゼラチンと、糖質と、油脂とを含むグミキャンディをセンターとして含有してなる、グミキャンディのセンター入りゼリー菓子、
[2]前記ゼリー菓子本体中の三糖類以上の糖質の含有量が15重量%以下である前記[1]記載のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子、
[3]前記グミキャンディのセンター入りゼリー菓子中における前記グミキャンディの割合が3〜60重量%である前記[1]又は[2]記載のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子、
[4]前記ゼリー菓子本体中の増粘多糖類の含有量が0.1〜2重量%である前記[1]〜[3]いずれか記載のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子、
[5]前記ゼリー菓子本体に使用する増粘多糖類中におけるカラギーナンと寒天の重量比率(カラギーナン:寒天)が3:7〜10:0である前記[1]〜[4]いずれか記載のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子、
[6]カラギーナン単独又はカラギーナン及び寒天を主成分とする増粘多糖類と、二糖類以下の糖類又は二糖類以下の糖アルコールで構成する糖質とを混合してゼリー菓子生地を製造する工程、
ゼラチン及び油脂を混合した水中油滴型エマルジョンに、トランスグルタミナーゼを添加して架橋反応させた後、又はトランスグルタミナーゼで架橋反応させたゼラチン及び油脂を混合して水中油滴型エマルジョンを作製した後に、前記水中油滴型エマルジョンに糖質を混合してグミキャンディ生地を製造する工程、
得られたゼリー菓子生地とグミキャンディ生地とをゼリー菓子生地が最外層を形成するようにノズルから吐出して成形用型に充填し、乾燥する工程を含むことを特徴とする前記[1]〜[5]いずれか記載のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、喫食事にコシのある食感と弾力性のある食感という、新規な食感を有する、グミキャンディのセンター入りゼリー菓子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子は、カラギーナン単独又はカラギーナン及び寒天を主成分とする増粘多糖類並びに二糖類以下の糖類又は二糖類以下の糖アルコールで構成する糖質を含むゼリー菓子本体に、トランスグルタミナーゼで架橋処理されたゼラチン、糖質及び油脂を含むグミキャンディをセンターとして含有することを特徴とする。かかる特徴を有することで、喫食事にコシのある食感と弾力性のある食感を同時に感じるという従来のグミキャンディにない新規な食感が得られる。
【0011】
本発明で使用されるゼリー菓子本体は、カラギーナン単独又はカラギーナン及び寒天を主成分とする増粘多糖類を含むものである。
【0012】
本発明では、前記増粘多糖類の主成分としてカラギーナンを使用する。
前記カラギーナンは、ゲル化剤の1種であり、紅藻類、例えば、アイリシュモスとよばれるコンドラス・クリスパス(Chondrus crispus)、ユキマ・コトニー(Eucheuma cottonii)、ユキマ・スピノサム(Eucheuma spinosum)等の原料から得られる、硫酸基とアンヒドロ基を含むガラクトースからなるポリマー、ガラクタンという多糖類の一種である。
また、前記カラギーナンには、分子中のアンヒドロ基と硫酸基の量の差で、カッパ、イオタ、ラムダ等の3種類のタイプがある。疎水性のアンヒドロ基の多いもの程、そして親水性の硫酸基の少ないもの程、ゲル化力が強くなる性質を有する。
また、前記カラギーナンは、金属塩、例えばカリウム塩、カルシウム塩等を添加することによってゲル化物のテキスチャーや強度等を所望の程度に変えることができる。
本発明において、カラギーナンとしては、前記原料の産地、タイプ、塩の添加の有無に関わらずに使用することができる。中でも、イオタタイプのカラギーナンを用い、必要によりカッパタイプのカラギーナンを併用することでさらにゼリー菓子本体の弾力性が増すので好ましい。
【0013】
また、本発明では、前記増粘多糖類として、寒天を前記カラギーナンと併用してもよい。寒天は、冷水には溶けず、熱水には溶けて粘着液となり、冷やすと固いゲルを形成する熱可逆性のハイドロコロイドである。これは冷却により分子は次第に集合してダブルヘリックス構造を作り始める。次にこれらが3次元の網目構造を作り始めてゲルを形成する物質である。
【0014】
前記ゼリー菓子本体で使用される寒天としては、従来から焼き菓子、和洋菓子に使用されているものであればよく、例えば、主に紅藻類、テングサ属であるマクサ、オバクサ、ヒラクサ等のほか、オゴノリ属・イギス属・カウレイト属等から抽出して得られた寒天、これらの天然物から抽出した寒天をさらに処理することで物性を改変した寒天等が挙げられる。物性を改変した寒天としては、例えば、糖鎖を短くした強度の低い寒天、溶解温度を下げた溶けやすい寒天等が挙げられる。
【0015】
また、前記寒天としては、その化学的構成や、平均分子量に関係なく、従来の製法、すなわち抽出、ろ過、凝固、乾燥等の工程を経て製造されたものであればいずれも使用し得る。例えば、1、3位で結合したβ−D−ガラクトピラノースと1、4位で結合した3,4−アンヒドロ−α−L−ガラクトピラノースが直鎖状に繋がったアガロース及び、イオン性のゲル化能力のないアガロペクチンよりなる複合物質が挙げられる。
【0016】
本発明では、ゼリー菓子本体の食感は、カラギーナンの量又は寒天とカラギーナンの重量比率を変化させることで調整することができる。例えば、カラギーナンの比率を高くすることでゼリー菓子本体の弾力性を増加させ、寒天の比率を高くすることでゼリー菓子本体の粘度を増加させることができ、その結果として、コシのある食感を奏される。
【0017】
カラギーナンと寒天とを併用する場合、増粘多糖類におけるカラギーナンと寒天の比率は、重量比(カラギーナン:寒天)で、得られるゼリー菓子本体の弾力性及び粘度が良好で、生地の製造やノズルからの吐出もスムーズに行なえる観点から、3:7〜10:0であることが好ましく、4:6〜8:2がより好ましい。
なお、本明細書において、ゼリー菓子本体、グミキャンディや、これらを構成する成分の含有量は、乾燥固形分換算の量を示す。
【0018】
また、前記ゼリー菓子本体に使用される増粘多糖類に含まれるカラギーナンと寒天の合計の含有量は、70重量%以上であればよく、90重量%以上が好ましい。
【0019】
また、前記ゼリー菓子本体は、前記カラギーナン、寒天に加えて、その他の増粘多糖類として、例えば、ペクチン、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、タマリンドシードガム、タラガム、ジェランガム、キサンタンガム等を、ゼリー菓子本体の食感に影響を及ぼさない程度に含有してもよい。
【0020】
前記ゼリー菓子本体中における前記増粘多糖類の合計の含有量としては、0.1〜2重量%が好ましく、0.1〜1重量%がより好ましい。前記増粘多糖類の合計の含有量が0.1重量%未満では十分なゲル化が出来ない傾向があり、また2重量%を超えると粘度が高くなりすぎ、ノズルからの吐出や、センターであるグミキャンディの充填が容易にできないという傾向がある。
【0021】
前記ゼリー菓子本体で使用される糖質は、二糖類以下の糖又は二糖類以下の糖アルコールを含有することを特徴とする。前記糖質としては、例えば、ブドウ糖、ショ糖、果糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、パラチニット等が挙げられる。三糖類以上の糖質、例えば、ラフィノース、オリゴ糖、ポリデキストロース、澱粉、デキストリン等や三糖類以上の糖質を含む水飴等を使用した場合、粘度が高くなりすぎる又はゲル化が急激に起きる等、ゼリー菓子本体の生地を容易にノズルから吐出できず、作業性が悪くなる傾向がある。これに対して、本発明では、二糖類以下の糖又は二糖類以下の糖アルコールを糖質として含有することで、生地の粘度が適当であり、ゲル化も比較的穏やかに起こるため、生地をノズルから吐出しやすく、また、ゼリー菓子本体のセンター部分にグミキャンディを挿入することも容易となり、作業性が良好となる。
【0022】
前記糖質は、前記ゼリー菓子本体の主成分である。したがって、前記糖質と前記増粘多糖類とで前記ゼリー菓子本体の固形分を構成してもよい。また、前記ゼリー菓子本体が糖質と増粘多糖類以外の成分を含有している場合には、前記糖質の含有量は80重量%以上であればよい。なお、本発明においては、前記ゼリー菓子本体は、前記のような三糖類以上の糖質を実質的に含有しないか、含有している場合でもその含有量が15重量%以下のものである。
【0023】
また、前記ゼリー菓子本体は、食感に影響を与えない範囲で、酸味料、甘味料、香料を含有してもよい。
【0024】
本発明のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子では、トランスグルタミナーゼで架橋処理されたゼラチン、糖質及び油脂を含むグミキャンディをセンターとして使用する。
【0025】
前記ゼラチンとしては、牛、豚、鶏、魚類等の皮、骨等から抽出したものを使用するのが一般的であるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、それぞれ酸処理、アルカリ処理といった処理方法の仕方で食感が変わってくるが、本発明では、これら処理の異なる各種のゼラチンも使用できる。なお、前記ゼラチンは、製法や由来に特に限定されずに使用することができる。
前記グミキャンディ中におけるゼラチンの含有量は、グミキャンディのセンター入りゼリー菓子が弾力性のある食感を奏する観点から、グミキャンディの全重量に対し8〜27重量%が好ましく、12〜20重量%がより好ましく、14〜16重量%がさらに好ましい。
【0026】
本発明では、前記ゼラチンをトランスグルタミナーゼで架橋処理したものを使用する。トランスグルタミナーゼは、ペプチド鎖内にあるグルタミン残基のγ−カルボキシアミド基のアシル転移反応を触媒する酵素である。このトランスグルタミナーゼは、アシル受容体としてタンパク質中のリジン残基のε−アミノ基が作用すると、分子内及び分子間にε−(γ−Glu)−Lys架橋結合が形成される。また水がアシル受容体として機能されるときは、グルタミン残基が脱アミド化されグルタミン酸残基になる反応を進行させる酵素である。
【0027】
本発明では、トランスグルタミナーゼの種類は由来や製造方法に限定されるものではなく、微生物由来のもの、生物由来のもの、又は遺伝子組み換え法によって製造されるもののいずれも使用できる。しかし、実質的には、食品に使用するにあたり、常に安定した供給を求めるため、微生物由来のもの、特に酵素製剤の形で一般に市販されている「アクティバTG−K」(商品名、味の素株式会社)等を使用するのがよい。その添加方法は、粉体のままでもよいし、液体、例えばトランスグルタミナーゼの水溶液の状態にして使用してもよい。
【0028】
本発明において、例えば、前記トランスグルタミナーゼの粉体(「アクティバTG−K」)を用いる場合、その使用量は効率よく架橋処理を行う観点から、ゼラチンの含有量に対して0.05〜3重量%程度混合することが好ましく、0.1〜1重量%がより好ましい。また、ゼラチンに対する使用量としては、効率よく架橋処理を行う観点から、0.1〜1000U/g、好ましくは1〜500U/gの範囲内に調整することが好ましい。
【0029】
前記ゼラチンの前記トランスグルタミナーゼによる架橋処理を行う際の温度、pHなどの条件については、トランスグルタミナーゼの好適な範囲に設定すればよい。本発明では、ゼラチンとトランスグルタミナーゼとを所定の時間混合して架橋処理させせたものであれば、架橋処理したゼラチンとして使用することができる。
【0030】
前記グミキャンディに使用する糖質としては、特に制限はなく、ブドウ糖、ショ糖、果糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、デキストリン、各種澱粉等の糖類でもキシリトール、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、ラクチトール、還元水飴等の還元糖でも構わない。前記糖質の含有量は、グミキャンディが弾力性のある食感を備え、口中ですぐに溶け難くし、またその風味を良好にする観点から、グミキャンディの全重量に対し48〜90重量%であればよく。好ましくは53〜80重量%である。
【0031】
前記グミキャンディに使用する油脂としては、特に制限はなく、ラード・牛脂・鰯脂・乳脂肪等の動物油脂、パーム油・菜種油・レシチン・ヤシ油・コーン油・ココアバター等の植物油脂、またこれらの動物油脂又は植物油脂の精製加工油脂、ショートニング、マーガリン、ファットスプレッドも使用できるが、風味の観点から、植物油脂が好ましい。前記油脂含有量は、グミキャンディの食感を柔らかくする、弾力性を維持する、かつ風味を良好にする観点から、グミキャンディの全重量に対し1〜5重量%であればよく、好ましくは2〜4重量%であり、より好ましくは2.5〜3.5重量%である。
【0032】
前記グミキャンディでは、後述の乳化剤、乳化安定剤、増粘剤や、食感に影響を与えない範囲で、酸味料、甘味料、香料を含有してもよい。
【0033】
本発明のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子中における前記グミキャンディの割合は、3〜60重量%であることが好ましく、20〜30重量%であることがより好ましい。
以上のような割合でグミキャンディをセンターに含むゼリー菓子は、口で噛んだ場合に、主としてゼリー菓子に由来するコシのある食感と、主としてグミキャンディに由来する弾力性のある食感を同時にかつ好適に感じることができる。
【0034】
なお、本発明のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子中においてグミキャンディの周囲がゼリー菓子本体で覆われていればよく、センターであるグミキャンディの配置、形状としては特に限定はない。
【0035】
以上の構成を有する本発明のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子の製造方法は、
カラギーナン単独又はカラギーナン及び寒天を主成分とする増粘多糖類と、二糖類以下の糖類又は二糖類以下の糖アルコールで構成する糖質とを混合してゼリー菓子生地を製造する工程、
ゼラチン及び油脂を混合した水中油滴型(O/W型)エマルジョンに、トランスグルタミナーゼを添加して架橋反応させた後、又はトランスグルタミナーゼで架橋反応させたゼラチン及び油脂を混合して水中油滴型エマルジョンを作製した後に、前記水中油滴型エマルションに糖質を混合してグミキャンディ生地を製造する工程、
得られたゼリー菓子生地とグミキャンディ生地とをゼリー菓子生地が最外層を形成するようにノズルから吐出して成形用型に充填し、乾燥する工程、
を含むことを特徴とする。
【0036】
ゼリー菓子生地の製造方法としては、例えば、カラギーナン単独又はカラギーナンと寒天とを主成分とする増粘多糖類と、二糖類以下の糖又は二糖類以下の糖アルコールから選ばれた少なくとも1種類以上からなる糖質とを混合して加熱溶解したゼリー菓子ベースに、必要に応じて食感に影響を及ぼさない程度に酸味料、香料、着色料等を添加・混合することでゼリー菓子本体用の生地を得ることができる。この生地には水を加えて粘度や固形分を調整したり、80〜100℃に保温しておくことが、適度な粘度を保ち、ノズルからの吐出を好適に行うことができるので好ましい。
【0037】
また、センター用グミキャンディ生地の製造方法としては、例えば、ゼラチン溶液に油脂を加えて撹拌・混合を行う。撹拌装置としては、食品の製造に通常用いられているものが使用できる。この場合、O/W型エマルジョンを形成するように撹拌する。これによって内層の油脂を外層のゼラチンで包むことができ、次に加えられるトランスグルタミナーゼとゼラチンの反応が容易になる。O/W型エマルジョンを形成させるためには、乳化剤は必ずしも必要ではないが、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等の食品の製造に用いられているO/W型エマルジョン用乳化剤を用いてもよい。又、乳化安定剤、増粘剤等の食品用添加剤も使用することができる。ただし、油脂は前記工程に限られるものではなく、例えば、ゼラチン溶液にトランスグルタミナーゼを添加して反応させた後に油脂を加え、O/W型エマルジョンにすることによっても得ることができる。
次いで、O/W型エマルジョンにトランスグルタミナーゼを添加して、例えば、30〜60℃で10分〜2時間、トランスグルタミナーゼによるゼラチンの架橋反応を行わせた後、該トランスグルタミナーゼを失活させる。トランスグルタミナーゼの失活には、得られた反応物を85℃以上に加熱すればよい。次いで、前記反応物に糖質を混合し、必要に応じて食感に影響を及ぼさない程度に酸味料、香料、着色料等を添加・混合することでセンター用グミキャンディの生地を得ることができる。
【0038】
前記ゼリー菓子生地とグミキャンディ生地との吐出に使用するノズルとしては、前記ゼリー菓子生地中にグミキャンディ生地を含ませるように両方の生地を同時に吐出できる構成を持つものであればよい。例えば、ダブルデポジッターなどの略同心円に配置された2重ノズル等が挙げられる。なお、前記ノズルでは、最外層がゼリー菓子生地となり、その中に前記グミキャンディ生地が含まれるように各ノズルから生地を吐出する。また、3重以上の多重ノズルを用いた場合でも、2重ノズルと同様に最外層がゼリー菓子生地となるように吐出すればよい。
【0039】
前記成型用型は、特に限定はされないが、例えば、コーンスターチをベースにし、その上面に型押しにより凹みを設けたもの等が挙げられる。型原料としては、スターチ等が挙げられるが、キャンディの製造に用いられるものであれば特に限定はない。
【0040】
前記成型用型に充填した生地の乾燥条件は、特に限定されないが、例えば20〜50℃程度の温度で乾燥させる。乾燥は、前記グミキャンディのセンター入りゼリー菓子の全体重量中の水分値が15〜20重量%となるように調整することが好ましい。前記水分値は、減圧乾燥法で測定すればよい。乾燥後に脱型し、所望により、デパウダー、オイリングを行い、本発明のグミキャンディを得ることができる。
【0041】
前記のようにして得られる、本発明のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子は、成型用型に充填し作製するため、一般的なグミキャンディ同様、様々な形にすることができる。また、本発明のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子は、他の素材、例えば他種のキャンディ、グミキャンディ、焼き菓子、ガム等の他の菓子類と組み合わせてもよい。
【実施例】
【0042】
次に、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0043】
(実施例1)
<ゼリー菓子生地の調製>
表1に示す配合割合で、ゼリー菓子生地を作製した。具体的には、砂糖150.0g、ソルビトール350.0g、イオタカラギーナン(太陽化学社製)6.0g、粉末寒天(伊那食品社製)2.5gを、混合班が出来ないように均一に混合した。この混合物を90℃になるまで加熱溶解を行った。この加熱溶解混合物に、アジピン酸7.0g、クエン酸三ナトリウム3.5g、適量のオレンジ香料を添加し、均一に撹拌混合した後、固形分として70%となるよう水を加えて調整し、得られた生地を90℃で保温しておいた。
【0044】
<グミキャンディ生地の調製>
ゼラチン22.0gを水32.0gに入れて膨潤させたのち加温溶解してゼラチン溶液を得た。次いで、前記ゼラチン溶液に、予め加温溶解したショートニング3.5gと乳化剤(第一工業製薬)0.35gを少量ずつ加えながら撹拌混合し、O/W型エマルジョンを得た。このO/W型エマルジョンにトランスグルタミナーゼ(アクティバTG−K(味の素株式会社)78〜126U/g)0.2gを加えて、50〜60℃に30分間保持し架橋反応を行い、85℃以上で10分間保持した後、85℃以上に加熱してトランスグルタミナーゼを失活させた。次いで、砂糖30.0gと水飴40.0gとソルビトール20.0gとクエン酸4.0g、7倍濃縮オレンジ果汁2.0g、適量のオレンジ香料を添加し、均一に撹拌混合した後、固形分として75%となるように水を加えて調整し、得られた生地を70℃で保温しておいた。
【0045】
<グミキャンディのセンター入りゼリー菓子の製造>
前記のように保温しておいたグミキャンディ生地と前記ゼリー菓子生地とを同心円ノズル(内側ノズルの直径3.3mm、外側ノズルの直径9mm)を用いて15:85の重量比率で吐出して、型内に充填しグミキャンディのセンター入りゼリー菓子(以下、センター入りゼリー菓子)を得た。製造時における作業性は良く、特にグミキャンディの充填は良好に行えた。また、センターのグミキャンディ生地の位置は前記ゼリー生地のセンター付近に安定していた。その後、センター入りゼリー菓子全体重量における水分値が18.0重量%となるように、40℃にて約48時間加熱乾燥を行った。その後、常温になるまで冷却後、デパウダー、オイリングを行い、センター入りゼリー菓子を得た。このようにして得られたセンター入りゼリー菓子は、外観も良く、口中で咀嚼した際に、ゼリー菓子本体部分はカラギーナン特有のモチモチ感とコシのある食感で、センターのグミキャンディ部分は弾力があり噛み応えのある食感となっており、食感の変化を楽しむことができた。
【0046】
(実施例2)
表1に示す配合割合でゼリー菓子生地を作製した以外は実施例1と同様にしてセンター入りゼリー菓子を作製した。実施例1と同様に作業性は良く、食感の変化も楽しむことができた。
【0047】
(実施例3)
表1に示す配合割合でゼリー菓子生地を作製した以外は実施例1と同様にしてセンター入りゼリー菓子を作製した。作業性は良く、食感の変化も楽しむことができた。
【0048】
(実施例4)
表1に示す配合割合でゼリー菓子生地を作製した以外は実施例1と同様にしてセンター入りゼリー菓子を作製した。作業性は良く、食感の変化も楽しむことができた。
【0049】
(実施例5)
表1に示す配合割合でゼリー菓子生地を作製した以外は実施例1と同様にしてセンター入りゼリー菓子を作製した。作業性は良く、食感の変化も楽しむことができた。
【0050】
(実施例6)
表1に示す配合割合でゼリー菓子生地を作製した以外は実施例1と同様にしてセンター入りゼリー菓子を作製した。作業性は良く、食感の変化も楽しむことができた。
【0051】
(実施例7)
表1に示す配合割合でゼリー菓子生地を作製した以外は実施例1と同様にしてセンター入りゼリー菓子を作製した。作業性は良く、食感の変化も楽しむことができた。
【0052】
(比較例1)
表1に示す配合割合でゼリー菓子生地を作製した以外は実施例1と同様にしてセンター入りゼリー菓子の作製を試みた。しかし、ゼリー菓子本体の糖質に三糖類以上の糖類を含む酵素水飴を使用したため、作業性が悪く、センターのグミキャンディ生地の充填が行えなかった。
【0053】
(比較例2)
表1に示す配合割合でゼリー菓子生地を作製した以外は実施例1と同様にしてセンター入りゼリー菓子の作製を試みた。しかし、ゼリー菓子本体の糖質に三糖類であるラフィノースを使用したため、作業性が悪く、センターのグミキャンディ生地の充填が行えなかった。
【0054】
(比較例3)
表1に示す配合割合でゼリー菓子生地を作製した以外は実施例1と同様にしてセンター入りゼリー菓子の作製を試みた。しかし、ゼリー菓子本体の糖質に三糖類以上の糖類を含むオリゴ糖を使用したため、作業性が悪く、センターのグミキャンディ生地の充填が行えなかった。
【0055】
(比較例4)
表1に示す配合割合でゼリー菓子生地を作製した以外は実施例1と同様にしてセンター入りゼリー菓子の作製を試みた。しかし、ゼリー菓子本体の糖質に三糖類以上の糖類を含む酵素水飴と三糖類であるラフィノースを使用したため、作業性が悪く、センターのグミキャンディ生地の充填が行えなかった。
【0056】
(実施例8)
表2に示す配合割合のようにゼリー菓子生地の増粘多糖類中におけるイオタカラギーナンと寒天の重量比率を変えた以外は、実施例1と同様にしてセンター入りゼリー菓子を作製した。
カラギーナンと寒天の重量比率を10:0で、ゼリー菓子本体における増粘多糖類の含有量は1.6重量%とした。作業性は良く、食感の変化も楽しむことができた。
【0057】
(実施例9)
表2に示す配合割合のようにゼリー菓子生地の増粘多糖類中におけるカラギーナンと寒天の重量比率を変えた以外は、実施例1と同様にしてセンター入りゼリー菓子を作製した。カラギーナンと寒天の重量比率を10:0で、ゼリー菓子本体における増粘多糖類の含有量は0.1重量%とした。作業性は良く、食感の変化も楽しむことができた。
【0058】
(実施例10)
表2に示す配合割合のようにゼリー菓子生地の増粘多糖類中におけるカラギーナンと寒天の重量比率を変えた以外は、実施例1と同様にしてセンター入りゼリー菓子を作製した。カラギーナンと寒天の重量比率を3:7で、ゼリー菓子本体における増粘多糖類の含有量は1.7重量%とした。作業性は良く、食感の変化も楽しむことができた。
【0059】
(参考例5)
表2に示す配合割合のようにゼリー菓子生地の増粘多糖類中におけるカラギーナンと寒天の重量比率を変えた以外は、実施例1と同様にしてセンター入りゼリー菓子を作製した。カラギーナンと寒天の重量比率を10:0で、ゼリー菓子本体における増粘多糖類の含有量は2.1重量%とした。作業性が悪く、センター充填が行えなかった。
【0060】
(参考例6)
表2に示す配合割合でゼリー菓子生地の増粘多糖類中におけるカラギーナンと寒天の重量比率を変えた以外は、実施例1と同様にしてセンター入りゼリー菓子を作製した。カラギーナンと寒天の重量比率を10:0で、ゼリー菓子本体における増粘多糖類の含有量は0.08重量%とした。作業性は良いが、ゼリー菓子本体の食感が無く、食感の変化を楽しむことができなかった。
【0061】
(参考例7)
表2に示す配合割合でゼリー菓子生地の増粘多糖類中におけるカラギーナンと寒天の重量比率を変えた以外は、実施例1と同様にしてセンター入りゼリー菓子を作製した。カラギーナンと寒天の重量比率を2:8で、ゼリー菓子本体における増粘多糖類の含有量は1.6重量%とした。作業性は良いが、ゼリー菓子本体の食感が脆くなり過ぎて、食感の変化を楽しむことができなかった。
【0062】
実施例1〜10、比較例1〜4及び参考例5〜7の下記充填作業性評価基準と得られたセンター入りゼリー菓子を食べた後にパネラー10名により、下記官能評価基準により食感の変化を評価した。その結果を表1、2に示す。
【0063】
<充填作業性評価基準>
◎ :センターの充填が可能であり、テーリングやセンターの漏れが無い。
○ :センターの充填が可能であるが、テーリングやセンターの漏れが時々起こる。
△ :センターの充填が可能であるが、テーリングやセンターの漏れが良く起こる。
× :センターへの充填が不可能である。

<官能評価基準>
◎ :ゼリー菓子本体の食感が良く、センターとの食感の変化も良い。
○ :ゼリー菓子本体の食感はふつうで、センターとの食感の変化も良い
△ :ゼリー菓子本体の食感はふつうで、センターとの食感の変化もふつう。
× :ゼリー菓子本体の食感は良くなく、センターとの食感の変化も良くない。

なお表中には、10名の評価の中で最も多い評価示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
表1、2の結果より、実施例1〜7のセンター入りゼリー菓子は、コシのある食感と弾力性のある食感を兼ね備えており、2種類の食感を同時に味わうことができた。一方、ゼリー菓子本体の糖質に三糖類以上の糖質を配合した場合(比較例1〜4)は、作業性が悪く、センターであるグミキャンディの充填が困難なため、食感を比較することが出来なかった。
また、ゼリー菓子中の増粘多糖類の含有量及び増粘多糖類中のカラギーナンと寒天の配合比率を変えた実施例8〜10のセンター入りゼリー菓子は、コシのある食感と弾力性のある食感を兼ね備えていた。一方、ゼリー菓子中の増粘多糖類の含有量を2.0重量%より多く配合したセンター入りゼリー菓子(参考例5)は、センターへの充填は可能であったが、実施例1、8、9、10に比べて、作業性自体は難しくなり、また、ゼリー菓子本体の食感や、ゼリー菓子本体とセンターとの食感の変化はあるものの、弱くなった。ゼリー菓子中の増粘多糖類の含有量を0.1重量%より少なく配合したセンター入りゼリー菓子(参考例6)は、ゼリー菓子本体をノズルから吐出する際の作業性は良いが、実施例1、8、9、10に比べて、ゼリー菓子本体の食感や、ゼリー菓子本体とセンターとの食感はあるものの、弱くなった。ゼリー菓子の増粘多糖類中のカラギーナンと寒天の比率を2:8にしたセンター入りゼリー菓子(参考例7)も、同様に実施例1、8、9、10に比べて、ゼリー菓子本体の食感や、ゼリー菓子本体とセンターとの食感はあるものの、弱くなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラギーナン単独又はカラギーナン及び寒天を主成分とする増粘多糖類と、二糖類以下の糖類又は二糖類以下の糖アルコールで構成する糖質とを含むゼリー菓子本体に、トランスグルタミナーゼで架橋処理されたゼラチンと、糖質と、油脂とを含むグミキャンディをセンターとして含有してなる、グミキャンディのセンター入りゼリー菓子。
【請求項2】
前記ゼリー菓子本体中の三糖類以上の糖質の含有量が15重量%以下である請求項1記載のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子。
【請求項3】
前記グミキャンディのセンター入りゼリー菓子中における前記グミキャンディの割合が3〜60重量%である請求項1又は2記載のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子。
【請求項4】
前記ゼリー菓子本体中の増粘多糖類の含有量が0.1〜2重量%である請求項1〜3いずれか記載のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子。
【請求項5】
前記ゼリー菓子本体に使用する増粘多糖類中におけるカラギーナンと寒天の重量比率(カラギーナン:寒天)が3:7〜10:0である請求項1〜4いずれか記載のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子。
【請求項6】
カラギーナン単独又はカラギーナン及び寒天を主成分とする増粘多糖類と、二糖類以下の糖類又は二糖類以下の糖アルコールで構成する糖質とを混合してゼリー菓子生地を製造する工程、
ゼラチン及び油脂を混合した水中油滴型エマルジョンに、トランスグルタミナーゼを添加して架橋反応させた後、又はトランスグルタミナーゼで架橋反応させたゼラチン及び油脂を混合して水中油滴型エマルジョンを作製した後に、前記水中油滴型エマルションに糖質を混合してグミキャンディ生地を製造する工程、
得られたゼリー菓子生地とグミキャンディ生地とをゼリー菓子生地が最外層を形成するようにノズルから吐出して成形用型に充填し、乾燥する工程を含むことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のグミキャンディのセンター入りゼリー菓子の製造方法。

【公開番号】特開2011−188816(P2011−188816A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57965(P2010−57965)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】