説明

グミキャンディ

【課題】コラーゲンに由来する不快な臭気(コラーゲン臭)や風味がマスキングされた、風味良好なグミキャンディを提供すること。
【解決手段】グミキャンディの全重量に対して、デーツ果汁を0.5〜7重量%含有することを特徴とする、コラーゲン臭を抑えたグミキャンディ。前記デーツ果汁はアミラーゼによって酵素分解したものでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グミキャンディ、詳しくはコラーゲン臭及び不快味がマスキングされたグミキャンディに関する。
【背景技術】
【0002】
グミキャンディは通常、砂糖・水飴を煮詰め、ゼラチン溶液を混合して得られたキャンディベースに、必要に応じて、果汁、酸味料、香料等を添加してグミシロップとし、このグミシロップをモールドに充填して成形・固化した後、室温等で乾燥させて作られる。このグミキャンディに用いられるゼラチンは、動物組織に存在するコラーゲンを原料としているため、コラーゲン臭と呼ばれる独特の動物臭や生臭さ及び不快味を有しており、このコラーゲン臭等はグミキャンディの風味を著しく損なうものとなっている。このコラーゲン臭等が苦手なためにグミキャンディ自体を食べないという消費者からの意見も多数あり、こういったコラーゲン臭等をどれだけマスキング出来るかが、今後のグミキャンディの発展に係わる非常に重要な課題となっている。
【0003】
これまでにも、食品や飲料の分野においては、コラーゲン臭のマスキングあるいは不快味の改善方法に関して、いくつかの提案がなされており、例えば、コラーゲン含有食品に甘味料であるスクラロースを含有する方法(特許文献1)、コラーゲン、コラーゲンペプチド及びゼラチンから選ばれた1種以上を含む飲食品にエチルオクタノエートを含有する方法(特許文献2)、カゼイン又はコラーゲンに対してクロロゲン酸を含有する方法(特許文献3)、コラーゲン及び/又はコラーゲンペプチドにジンジャー抽出物を含有する方法(特許文献4)、魚類由来コラーゲンペプチドに対して難消化性デキストリンを含有する方法(特許文献5)、コラーゲンに大麦若葉末を含有する方法(特許文献6)等が挙げられる。
【0004】
本件出願人も、酵母エキスと植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上を含有することを特徴とするコラーゲン臭を抑えたグミキャンディ(特許文献7)を提案している。
【0005】
上記のようなコラーゲン臭あるいは不快味のマスキング方法は、コラーゲン、コラーゲンペプチド又はゼラチンを含む飲食品にコラーゲン臭や不快味をマスキングできる成分として甘味料等を添加する方法であり、味のバランスを調整する方法として手軽に実施することが可能であるが、甘味料等はそれ自体が喉に残るような特有の甘みを有していたり、その他の成分もそれぞれの添加によって飲食品の味をも左右してしまう傾向があり、コラーゲン臭等のマスキング効果を有する新しい成分が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−152757号公報
【特許文献2】特開2006−197856号公報
【特許文献3】特許第3830137号公報
【特許文献4】特開2007−185109号公報
【特許文献5】特開2006−180812号公報
【特許文献6】特開2009−291128号公報
【特許文献7】特開2009−171862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の事情に鑑み、コラーゲンに由来する不快な臭気(コラーゲン臭)及び不快味がマスキングされた、風味の良好なグミキャンディを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、デーツ果汁がゼラチンの独特の臭みや風味をマスキングする作用を有し、その作用が強いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、
(1)グミキャンディの全重量に対して、デーツ果汁を0.5〜7重量%含有することを特徴とする、コラーゲン臭を抑えたグミキャンディ、
(2)デーツ果汁がアミラーゼによって酵素分解されたものである前記(1)に記載のグミキャンディに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定量のデーツ果汁を用いることで、ゼラチンに由来するコラーゲン臭及びその不快味を顕著にマスキングして、グミキャンディにおける風味を改善することが出来る。
【0011】
また、こうして得られたグミキャンディは、様々な風味を、後から付与することも出来るので、バラエティーに富んだ風味をもつグミキャンディを提供することが可能となる。
【0012】
特に、アミラーゼにより酵素分解されたデーツ果汁を用いる場合には、前記のマスキング効果だけでなく、酵素分解されたデーツ果汁自体が有する甘味、呈味等により、同時又は後から付与される香料、酸味料等の風味が一層感じやすくなり、風味のよいグミキャンディを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明に用いるデーツ果汁としては、ナツメヤシの果実から作製されるピューレやストレート果汁、またそれを濃縮したもの等を使用することが出来る。また、デーツ果汁はアミラーゼによる酵素分解を行ったものも使用することが出来る。酵素分解を行ったデーツ果汁は、酵素分解を行っていないデーツ果汁に比べ甘みや呈味が強く、グミキャンディの風味により良好な影響を与えることができるので好ましい。アミラーゼの種類には特に限定はない。また、酵素分解されたデーツ果汁は、前記デーツ果実にアミラーゼを添加して、適当な温度で所望の時間酵素反応させた後、加熱等により酵素を失活させて得られるものであればよい。
【0015】
前記デーツ果汁の含有量としては、本発明のグミキャンディ中において、0.5〜7重量%である。前記含有量が0.5重量%未満であると、コラーゲン臭や不快味のマスキング効果が十分ではなく、また7重量%を超えると、デーツ果汁に由来する風味が強くなるのでグミキャンディ自体の風味に影響がでる傾向がある。前記含有量としては、0.5〜4重量%の範囲が、コラーゲン臭と不快味とをバランスよくマスキングすることができる観点から好ましい。
【0016】
本発明のグミキャンディは、糖類とゼラチン溶液を混合して得られたグミシロップに、デーツ果汁を加え、必要に応じて、その他の果汁、酸味料、香料等を添加して得られるキャンディベースを成形し、固化、乾燥する工程を経て作られる。
【0017】
前記糖類としては、例えば、ぶどう糖、果糖等の単糖類、ショ糖、乳糖等の二糖類、ラフィノース、スタキオース等の少糖類、トレハロースのようにブドウ糖が還元末端同士で結合したもの、糖アルコール(マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、還元澱粉加水分解物、還元キシロオリゴ糖、パラチニット、還元分岐オリゴ糖等)、タガトース等が挙げられる。これらの糖類のうち1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、水飴等の混合糖も使用できる。前記糖類の配合量は、キャンディベース中において、80〜96.5重量%が好ましく、80〜90重量%がより好ましい。
【0018】
前記ゼラチンとしては、牛、豚、鶏、魚類等の皮、骨等から抽出したものを使用するのが一般的であるが、本発明はこれらに限定するものではない。また、それぞれ酸処理、アルカリ処理といった処理方法の仕方で食感が変わってくるが、本発明では、これら処理の異なる各種のゼラチンも使用できる。
前記ゼラチンの配合量は、キャンディベース中において3〜19.5重量%が好ましく、7〜15重量%がより好ましい。
【0019】
前記キャンディベースには、前記のような糖類とゼラチン以外にも、必要に応じて、下記の任意成分を添加することができる。
【0020】
例えば、ゼラチン以外のゲル化剤を使用することが可能である。このようなゲル化剤としては、寒天、ファーセレラン、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、タラガム、ペクチン、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、澱粉、キサンタンガム、カードラン、ジェランガム、大豆多糖類、アルギン酸等が挙げられる。
【0021】
また、酸味料、果汁、香料、着色料、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類やアミノ酸類等の機能性素材、油脂、乳化剤、乳製品、高甘味度甘味料(アスパルテーム、グリチルリチン、サッカリン、ステビオシド、レバウディオ、アリテーム、トリクロロシュークロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロース等)等が用いられる。
【0022】
前記任意成分は、デーツ果汁のマスキング効果を阻害しない範囲で使用すればよい。
【0023】
本発明では、前記の各成分を混合してキャンディベースを作製する。該キャンディベースは、公知のグミキャンディの製造方法に準じて製造すればよい。例えば、水に溶解し膨潤させたゼラチンを、60℃付近で溶解し、これとは別に、糖類を溶解させた糖液を作っておき、この糖液と先に溶解しておいたゼラチン溶液とデーツ果汁とを混合し、さらに必要であれば前記任意成分を混合することでキャンディベースとすることができる。
なお、前記任意成分は、その種類により、上記の工程のうち適当な段階で混合すればよい。
【0024】
前記のようにして得られるキャンディベースは、公知の手段により所望の形になるように、コーンスターチ成形型等により成型して本発明のグミキャンディが得られる。例えば、前記キャンディベースを所望の型に充填し、乾燥させて脱型することで本発明のグミキャンディが得られる。
【0025】
また、得られたグミキャンディは、所望の水分値まで乾燥させたり、糖衣処理を施したり、デパウダー、オイリング等の後処理を施してもよい。なお、水分値としては8〜20%の範囲内であれば良い。水分値は減圧乾燥法によって測定することが出来る。
【0026】
以上のようにして本発明のグミキャンディを製造することができる。なお、上記の製造方法は一例であり、本発明のグミキャンディの製造方法を限定するものではない。
【実施例】
【0027】
次に、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例中の数字は重量部、「%」は重量%を意味する。
【0028】
(実施例1、2、3、比較例1)
表1に示す配合割合で、グミキャンディベースを作製した。具体的には、砂糖、水飴及び水を混合・加熱してシロップを調製し、これに別で調製して約60℃付近に保温しておいたゼラチン溶液を加え、その後、クエン酸及び香料を加え、混合してグミシロップを得た。そこに最終的なグミキャンディ全重量に対して表2に示す量となるようにデーツ果汁を加え、混合し調製したキャンディベースの溶液を、コーンスターチ成形型(直径2cmの半球状の型)に充填し、40℃にて48時間乾燥させた。その後、コーンスターチ成形型から取り出し、水分値17%の丸型のグミキャンディを得た。
【0029】
【表1】

【0030】
(実施例4、5、6、比較例2)
デーツ果汁の酵素処理は次のように行った。デーツ果汁300gに対し、1Mクエン酸緩衝液(pH5.0)6ml、アミラーゼ「ユニアーゼL」(商品名、ヤクルト薬品工業株式会社製)0.09gから成る酵素溶液を加え、50℃で12時間酵素反応させた後、85℃で15分間処理し、酵素を失活させて酵素処理デーツ果汁を得た。この酵素処理デーツ果汁は、未処理デーツ果汁に比べて、甘味を有するものであった。
次に、実施例1と同様の配合方法でグミシロップを調整し、そこに最終的なグミキャンディ全重量に対して表3に示す量となるように前記酵素処理デーツ果汁を加え、混合し調製したキャンディベースの溶液を、コーンスターチ成形型(直径2cmの半球状の型)に充填し、40℃にて48時間乾燥させた。その後、コーンスターチ成形型から取り出し、水分値17%の丸型のグミキャンディを得た。
【0031】
実施例1〜6及び比較例1〜2で得られたグミキャンディのコラーゲン臭と不快味のマスキング評価を、このグミキャンディを食べたパネラー15名により、下記官能評価基準により評価した。その結果を表2、3に示す。
<官能評価基準>
コラーゲン臭に関する評価基準
評点:内容
A:コラーゲン臭がほとんど感じられない。
B:コラーゲン臭が若干感じられる。
C:コラーゲン臭が感じられる。
D:コラーゲン臭がかなり感じられる。
E:コラーゲン臭及びそれ以外の不快臭がかなり感じられる。
グミキャンディの風味に対する評価基準
評点:内容
A:果汁感があり、不快味を感じることがなく、良好な風味である。
B:果汁感は弱いが不快味を感じることがなく、普通に食べられる。
C:果汁感がなく不味い。

なお、コラーゲン臭に関する評価と、グミキャンディの風味に対する評価のいずれも「A」又は「B」であるものを合格品とした。また、表中の結果は、パネラーが最も多く評価した結果を示す。
【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
表2、3の結果より、実施例1〜6のように、グミキャンディにデーツ果汁もしくは酵素処理デーツ果汁を0.5%〜7%の範囲で添加すれば、コラーゲン臭のマスキング効果が顕著に現れるとともに、グミキャンディの風味も良好となることがわかる。特に実施例4、6では、酵素処理デーツ果汁の含有量0.5%、7%におけるグミキャンディの風味の評価が共に「A」となっており、実施例1、3のように未処理のデーツ果汁を用いた場合に比べて、さらに評価が上がっていることから、同時に配合している香料や酸味料によって付与される風味がより一層感じやすくなっていることがわかる。
【0035】
なお、前記グミキャンディ中におけるデーツ果汁の含有量を9%に調整した場合には、コラーゲン臭の評価が「C」となり、グミキャンディの風味の評価が「C」となった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のようにグミキャンディにデーツ果汁を加えることによってゼラチンに特有のコラーゲン臭とゼラチン由来の不快な味を低減して、香りと風味に優れたグミキャンディを開発することが可能となった。本発明により、コラーゲン臭や不快味の嫌いな人々にも美味しく感じられるグミキャンディを提供することが出来るようになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グミキャンディの全重量に対して、デーツ果汁を0.5〜7重量%含有することを特徴とする、コラーゲン臭を抑えたグミキャンディ。
【請求項2】
デーツ果汁がアミラーゼによって酵素分解されたものである請求項1に記載のグミキャンディ。

【公開番号】特開2011−177036(P2011−177036A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41943(P2010−41943)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】