説明

グラウトの比率制御方法及びその装置

【課題】注入圧力を上限値以下に制限するだけの問題点を回避し、作業者が施工中に適切な対応判断をすることを実現する方法を提供すること。
【解決手段】濃度の異なるグラウト液を低濃度ポンプと高濃度ポンプでそれぞれ圧送し、混合して濃度調整しつつ注入するグラウトの比率制御方法において、予め設定された上限と下限の濃度プログラム値と、濃度の異なる複数のグラウト液の合計値を設定する乗算係数とを乗算して前記低濃度ポンプと高濃度ポンプの運転速度比を調節して濃度プログラム値の制限された一定範囲内で注入流量が比例するように流量調整する。乗算係数は、上下限濃度プログラム値と上下限圧力値のオア出力からなる加減算信号に基づき設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウトを注入して地盤改良する工法において、地盤の性状及びこの性状の変化に応じて変化する注入流量又は注入圧力を、グラウト濃度、即ちW/Cを調整して、設定された値に追従し、制御するグラウトの比率制御方法及びその装置に関するもので、さらに、対象とする地盤の性状及びこの性状の変化に応じて徐々に変更される注入流量又は圧力の設定値とその測定値を、工程の経過に応じて把握し易いように表示する方法及び装置を包含するものである。
【背景技術】
【0002】
グラウト注入による地盤改良は、透水性の大きい地質層や地盤のクラックの止水効果を図るために地中に止水壁を構築したり、また、脆弱な地盤や岩盤を補強して建造物の構築に耐え得る強度の地盤に改良したりするなどのために施工される。
【0003】
図5は、地盤改良しようとする岩盤等にグラウトを注入する状況を示す模式図であり、地盤35に挿入された注入管34のグラウト吐出孔36から噴出するグラウト39がクラック38に充填されていく状況を示している。注入管34のグラウト吐出孔36に近い位置への充填注入は、注入抵抗が少なく容易であるが、グラウト吐出孔36から遠ざかるほど抵抗が増して充填注入が困難になる。
【0004】
一本の注入管34を使用して注入する場合、注入を開始してグラウト吐出孔36の近傍の地盤空隙部がグラウト39で充満するに従って注入抵抗が上昇する。そのため、さらにグラウト吐出孔36より遠ざかる岩盤の空隙にグラウト39を充填するには、注入圧力を上昇させる必要がある。しかし、岩盤を破壊させないためには注入圧力の上昇を制限しなければならない。
【0005】
この点に鑑み、注入工程の進捗に応じて注入抵抗が増大して圧力が上昇すると、注入流量を低減させて圧力上昇を抑制する方法が採用されている(特許文献1)。
【0006】
岩盤の破壊を防ぐために注入圧力を制限すれば、グラウト吐出孔36からより遠ざかる位置へのグラウト39の充填注入ができなくなる。図6は、改良すべき地盤35の領域にグラウト注入の空白部分をなくするために、複数本の注入管34を間隔pで配置してグラウトを注入する例を示した図であり、一本のグラウト吐出孔36からより広い領域にグラウト39を充填注入させることができれば、注入管34の挿入間隔pをより大きくし、地盤改良すべき領域における注入管34の挿入本数を減らすことができるので、工費の低減を図ることができる。しかし、注入抵抗が増大する場合には、グラウト注入の空白部分をなくするために注入管34の挿入間隔pを狭めなければならない。
【0007】
また、同じ圧力で地盤35にグラウト39を注入するとき、グラウト39の粘度が高ければ注入抵抗が大きく、注入管34のグラウト吐出孔36からより遠い領域まで充填注入することが困難であり注入流量が低下する。しかし、グラウト39の粘度が低ければ注入抵抗は低く、グラウト吐出孔36からより遠い、より狭いクラック38へのグラウト充填注入が容易になる。
【0008】
以上の点に鑑み、吐出圧を制限することにより、より遠いクラック38の狭い領域にグラウト39を充填注入させることが困難になるような場合、注入するグラウト39の粘度を低くして、即ち、低い濃度に移行して注入を継続する方法が提案されている(特許文献1)。
【0009】
この特許文献1には、図4に示すように、濃度の異なる2種のグラウトを混合して濃度調整し、必要な濃度のグラウトを生成して注入に供するシステム例が記載されている。この図4において、貯留槽11に貯留され、撹拌機12で撹拌されている希釈液(又は低濃度グラウト)10は、圧送ポンプ13により切替弁14,流量検出器15を介してラインミキサー31に送られる。同じく貯留槽21に貯留され、撹拌機22で撹拌されているグラウト原液(又は高濃度グラウト)20は、圧送ポンプ23により切替弁24,流量検出器25を介してラインミキサー31に送られる。
【0010】
濃度の異なる2種のグラウトがラインミキサー31で混合されて、濃度調整され、このラインミキサー31から濃度調整グラウトとして吐出される。グラウト圧送管37を圧送されているグラウト39は、注入管34に送られる。そのときの圧力が圧力発信器32によって検出される。注入管34は、ボーリングマシン33によって地盤35に挿入され、そのグラウト吐出孔36からグラウト39が吐出される。なお、この図4では、低濃度ラインと、高濃度ラインにそれぞれ流量検出器15と流量検出器25を配置したが、ラインミキサー31の出口側のグラウト圧送管37に1台の流量発信器のみを配置してもよい。
【0011】
制御回路40の速度制御信号出力端子17と速度制御信号出力端子27からそれぞれの速度信号を出力し、この速度信号に応じてモータインバータからなる速度制御器16及び速度制御器26から速度制御信号を出力し、低濃度用のポンプ13と高濃度用のポンプ23は、それぞれの速度制御信号によって駆動され、両者の運転速度の比に応じてラインミキサー31から吐出されるグラウト39の濃度が決まる。
【0012】
グラウトの濃度は、主成分の水とセメントの質量比、W/Cで表されるが、上述に説明した低濃度グラウトとしてセメントを混入しない水(希釈液)を貯留し、高濃度グラウトとしてW/C=10/5を貯留しているとする。
ここでW/C=10/3のグラウトを得ようとすれば、
10/3=(10+x)/5
x=5×10/3−10=(50−30)/3=20/3=6.7
となり
高濃度グラウト15kgに対して低濃度グラウトを6.7kg添加すれば、求める濃度W/C=10/3のグラウトが得られる。
【0013】
W/C=10/5の高濃度グラウトの比重を1.3kg/リットルとすれば、低濃度グラウトは水であるから比重は1.0kg/リットルであり、低濃度グラウトと高濃度グラウトの混合比は
6.7:(15/1.3)=6.7:11.54=0.58:1
となり、1リットルの高濃度グラウトに対して0.58リットルの低濃度グラウトを混合すればよいことになる。
【0014】
高圧の吐出を要求されるグラウトポンプにはプランジャー型が採用されるが、この構造のポンプの吐出量は運転速度に比例するので、図4に示すシステムにおいて所要濃度のグラウトを生成するには、上述の計算によって求めた低濃度グラウトと高濃度グラウトの体積混合比を低濃度用のポンプ13と高濃度用のポンプ23の運転速度比とすればよい。
【0015】
また、ラインミキサー31から吐出される吐出流量は、低濃度用のポンプ13と高濃度用のポンプ23が吐出する量の合計値になるので、注入流量は両ポンプ13,23の運転速度に依存する。
【0016】
以上で分かる通り、図4に示すシステムにおいては、吐出されるグラウトの濃度及びグラウトの吐出流量は、制御回路40によって演算され、発せられる信号、即ち速度制御器16及び速度制御器26に与える速度制御信号出力端子17と速度制御信号出力端子27からの速度信号によって調節される。
【0017】
注入管34のグラウト吐出孔36から、地盤35内のより遠い、より狭い間隙にグラウト39を充填注入するため、注入開始後、徐々にグラウト濃度を低減する手法を採用する場合、前記特許文献1では、徐々に低減する濃度値をプログラム設定して圧送ポンプ13と圧送ポンプ23の運転速度比を調節して濃度制御する方法が提案されているが、注入圧力を上限値以下に制限するため、併せて注入流量をも調節する必要がある。
【0018】
図7のグラフは、注入工程において、徐々に低減するようプログラム化されたグラウト濃度を実線で表し、また、注入流量を調節して注入圧力を一定値に調整するように制御した場合の流量値の変化を点線で表し、横軸を時間軸として示している。
【0019】
図7のグラフにおいて、注入圧力を一定位置に保ちつつ、グラウト注入を開始すると、流量値がA1点において下降し始めたものとする。これはグラウト39が地盤35に充満して注入抵抗が増加することによる注入圧力の上昇を抑えるため、流量を低下させ始めたことを示している。
【0020】
B0点においてプログラムされた濃度が低下し始めたものとすると、それに応じて注入圧力も低下する。圧力を復帰させるために流量は増加傾向に入るが、さらにプログラムされたグラウト濃度が低下するので、圧力上昇により流量は低下傾向に転ずる。
【0021】
このプログラムは、グラウト濃度がC0点で低下を停止してD0点まで変化せず同一濃度を継続し、それ以降は再度低減を開始してE0点に至るものとする。グラウト流量は、注入圧力を一定に調節することにより、濃度が低下しなくなったC1点から低下傾向を強め、グラウト濃度が再び低下し始めるD1点から流量の低下傾向は少なくなりE1点を経由して注入工程の終了に至る。
【0022】
図7は、注入流量を調整することにより圧力を一定に保てたと想定した場合のグラフであるが、実際にはプランジャー形式のポンプの吐出圧は脈動を皆無にすることができないし、ダンピングを効かせ過ぎると応答性が悪くなるという問題がある。
【0023】
さらに、注入圧力の上昇による岩盤破壊を恐れ、注入圧力を上限値以下に制限するだけに重点をおいた制御方法を採れば、注入圧力が低下した状態における注入流量の増大、不要個所への漏出によるグラウトの過大流出、環境汚染などの危険性を防止することができない恐れがある。
【0024】
また、注入施工する作業者は、施工中にグラウト濃度、注入流量、注入圧力などの表示、記録する計器類を監視するだけでは、得られるデータ相互の関連性を理解し、工事状況を把握しながら最適な対応をすることが難しい。
【0025】
【特許文献1】特開2005−113523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
解決しようとする問題点は、次の通りである。
グラウト濃度を経時的にプログラム制御しつつ、注入流量を調節して注入圧力を制御する方式は、ポンプ吐出圧力の脈動によるハンチングを生じ、これを嫌ってダンピングを効かせると追従性の劣化など制御の不具合を避けることができない。
【0027】
注入圧力を上限値以下に制限するだけの方法では、注入圧力が低下した状態における注入流量の増大、不要個所へのグラウト漏出と関連する環境汚染の危険性がある。
【0028】
さらに、作業者が施工中におけるグラウト濃度と注入流量の関連を把握し、工事についての適切な対応判断をすることが難しい。注入流量、注入圧力の変動が大きく、何らかの改善を要する。
【0029】
本発明は、ポンプ吐出圧力の脈動による制御の不具合を避けること、注入圧力を上限値以下に制限するだけの方法における問題点を回避すること、作業者が施工中に適切な対応判断をすることを実現する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、濃度の異なる複数のグラウト液を混合して濃度調整しつつ注入するグラウト注入工法において、低濃度ポンプ及び高濃度ポンプの運転速度比を調節してグラウト濃度をプログラム制御する手段に加え、濃度プログラム値の制限された一定範囲内で注入流量が比例するように流量調整するものである。
【0031】
具体的には、プログラム濃度値と注入流量の測定値を多ペン記録計のペン指示入力として与え、濃度指示ペンに上下限位置を定めて流量指示ペンの到達を検知する手段を設け、グラウト流量を濃度指示ペンの上下限値の範囲内に収まるよう制御する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、グラウト注入工事において、2以上の入力端を有する1入力用の記録ペン機構に上下限検知機構を設けて、その入力端に注入流量とレンジ合わせをしたプログラム濃度値を与え、他の入力端に注入流量を入力し、流量ペンが濃度の上下限検知位置と重なったときに注入流量を増減調節することにより、的確な注入を行うことができる。
【0033】
注入圧力を上限値と下限値で制限するようにしたので、注入圧力が低下した状態における注入流量の増大、不要個所へのグラウト漏出と関連する環境汚染を防止することができる。
【0034】
さらに、同一の記録紙に、予め設定された上限と下限の濃度プログラム値と、低濃度ポンプと高濃度ポンプの運転速度比を調節して混合注入された注入流量値とを同時に表示するようにしたので、作業者が施工中におけるグラウト濃度と注入流量の関連を把握し、工事についての適切な対応判断をすることができる。
【0035】
記録計の前面にグラウト濃度の上下限機構、および注入流量ペンが目視できるので、作業者が注入状況を把握し、工事進捗中における的確な対処が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明によるグラウトの比率制御装置は、注入された流量信号、注入時の圧力信号、濃度プログラム信号に基づき制御回路により低濃度ポンプと高濃度ポンプの速度を制御し、濃度の異なるグラウト液を低濃度ポンプと高濃度ポンプでそれぞれ圧送し、混合して濃度調整しつつ注入するグラウトの比率制御装置において、
前記制御回路は、
予め設定された上限と下限の濃度プログラム値を設定する手段と、
濃度の異なる複数のグラウト液の合計値を設定する乗算係数を演算する手段と、
前記下限の濃度プログラム値と乗算係数演算手段の乗算係数を乗算して低濃度ポンプの運転速度を制御する速度制御信号を出力する低濃度用乗算器と、
前記上限の濃度プログラム値と乗算係数演算手段の乗算係数を乗算して高濃度ポンプの運転速度を制御する速度制御信号を出力する高濃度用乗算器と
を具備した構成とする。
【実施例1】
【0037】
図2(a)(b)は、既製の2ペン型記録計の第2ペン機構部61に、第1ペン機構60の記録ペン63の上限位置と下限位置を検出する光電式の上限検出器71及び下限検出器72を設けた一実施例を示す正面図と側面図である。
前記第1ペン機構60は、インクユニット62の付いた記録ペン63が第1ペンガイド66にガイドされて、ドライブワイヤ64,プーリ65を介して図示されないサーボ機構によって駆動され記録紙59に流量値を記録する。
【0038】
前記第2ペン機構61は、反射式ホトセンサ67を設けた上限検出器71、下限検出器72をスライドベース69の上に取り付けてあり、これらの上限検出器71と下限検出器72には、それぞれインクユニット82,上限値記録ペン84とインクユニット83,下限値記録ペン85が設けられ、ドライブワイヤ74,プーリ75を介してサーボ機構によって第2ペンガイド73にガイドされて左右に移動して上限濃度プログラム値77と下限濃度プログラム値78を記録する。上限検出器71と下限検出器72の取り付け位置は、スライドベース69の長孔70に位置調整ねじ76で調整可能になっている。前記第1ペン機構60の記録ペン63と第2ペン機構61の記録ペン84,85が交差するときに衝突しないように取り付けられる。
なお、上限濃度プログラム値77と下限濃度プログラム値78は、予め記録紙59に記載されているものを用いることもできる。この場合には、第2ペン機構61のインクユニット82,インクユニット83,上限値記録ペン84,下限値記録ペン85は取り外してもよい。
【0039】
前記記録ペン63には、上下限検出器71、72と交差するときにホトセンサ76が重なる位置に反射板68を取り付け、前記記録ペン63が上下限検出器74、75と重なるとそれぞれ検知出力を発するように構成されている。
【0040】
前記記録ペン63は、スプロケット58の回転によって送られる記録紙59上に流量値79を記録し、上下限検出器71,72は、プログラムされたグラウト濃度値に応じて、ドライブワイヤー74,75を介して第2ペンガイド73にガイドされて左右に移動する。
【0041】
図1は、本発明に基づく機能を搭載した制御回路40の作用を説明するための図であり、説明を容易にするために改造記録計を含むハード・ロジックをブロック図で示しているが、同じ機能をソフトプログラムによって構成することも可能である。
【0042】
この図1において、プログラム発信器41は、注入するグラウト濃度値をプログラム設定するか又は予め設定されたパターンの中から選択するなどにより、注入開始指令が発せられると濃度設定値を出力し、乗算器44に与えられる。
【0043】
スケール設定器43、スケーラ42によって出力されるスケール信号は、前記スケーラ41からの濃度設定値とともに乗算器44に与えられ、濃度プログラム値を出力する。
【0044】
乗算器44の濃度プログラム値は、濃度設定値xとして0〜1の理論値をとり、一方は減算器45で1−xの演算をして低濃度用乗算器56に与えられ、他方は濃度設定値xがそのまま高濃度用乗算器57に与えられるとともに、記録計48に第2ペン機構61への入力として与えられる。
【0045】
前記低濃度用乗算器56には、前記減算器45の出力と、D/Aコンバータ55の乗算係数としての出力が与えられ、この低濃度用乗算器56から速度制御信号出力端子17へ低濃度ポンプ速度信号として出力する。
前記高濃度用乗算器57には、前記乗算器44の出力と、D/Aコンバータ55の乗算係数としての出力が与えられ、この高濃度用乗算器57から速度制御信号出力端子27へ高濃度ポンプ速度信号として出力する。
【0046】
前記記録計48の第2ペン機構61に組み込まれた上限検出器71及び下限検出器72は、乗算器44からのグラウト濃度のプログラム値に応じて第2ペンガイド73にガイドされて左右に動き、流量信号入力端子19,流量信号入力端子29に入力した流量信号によって動く第1ペン機構60の記録ペン63と同位置に重なると、それぞれリミット信号Hq,Lqを発する。
【0047】
一方、圧力信号入力端子30に入力した注入圧力の上限値と下限値に応じて発せられるところのコンパレータ47からの圧力リミット信号Hp,Lpは、それぞれ記録計48から出力されるプログラム濃度のリミット信号Hq,Lqとオアゲート49,50でオア出力され、このオア出力された信号は、さらに、パルス発信器46からのパルスとアンドゲート51,52でアンド出力されて上限入力、下限入力として積算器53に減算パルス又は加算パルスを与える。
【0048】
前記積算器53の積算内容は、理論値「+1〜−1」を採るものとし、アンドゲート51からの上限入力信号によって減算され、アンドゲート52からの下限入力信号によって加算され、積算器53からの積算出力は、値「S」として加減算器54に与えられて理論値「1」が加算される。
【0049】
前記加減算器54の出力は、D/Aコンバータ55を介して前記低濃度用乗算器56,高濃度用乗算器57に与えられ、速度制御信号出力端子17からは、低濃度ポンプ速度信号として出力し、速度制御信号出力端子27からは、高濃度ポンプ速度信号として出力する。
【0050】
ここで、前記プログラム発信器41側から低濃度用乗算器56と高濃度用乗算器57に与えられる信号は、圧送ポンプ13と圧送ポンプ23の運転速度比を与え、また、積算器53側から低濃度用乗算器56と高濃度用乗算器57に与えられる信号は、圧送ポンプ13と圧送ポンプ23の合計吐出量を調節する役割を果たす。
【0051】
図3は、記録ペン機構などを説明した図2の記録紙59の部分を示しており、プログラムされたグラウト濃度値の上下限値77、78と、注入流量値79の時間的経過を説明する図である。
【0052】
この図3において、記録紙59の上に示した上限濃度プログラム値77と下限濃度プログラム値78は、記録計48の第2ペン機構61に組み込まれたグラウト濃度プログラム値の上限検出器71、下限検出器72の軌跡であり、その位置にインクユニット82,83を搭載した上限値記録ペン84,下限値記録ペン85によって、記録紙59の上に描かせる。
【0053】
注入流量値79は、記録紙59の上に第1ペン機構60の記録ペン63によって描かれた注入流量値である。この図3において、注入流量値79と上限濃度プログラム値77が上限交点80で交わると、この点からすでに説明した注入流量を低減する機能が働き、流量低下が始まることを示している。
【0054】
注入流量が低減しつつ注入流量値79と下限濃度プログラム値78が下限交点81で交わると、この点から注入流量は増加方向に調整される。
【0055】
プログラム濃度値として記録計48の第2ペン機構61に入力する上限濃度プログラム値77,下限濃度プログラム値78は、注入流量値79が記録紙59の上において、その上下限値の間に描かれるようレンジ調節する。
【0056】
グラウト濃度に応じて注入流量を調節する制御の進行中に、注入圧力が管理すべき上限値を越えれば、濃度値にかかわらず流量を制限して圧力上昇を防止するよう調節することは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明による機能の注入制御部の作用を説明するブロック図である。
【図2】既製の2ペン型記録計に光電式上下限検出器を設けた本発明の一実施例を示すもので、(a)は、正面図、(b)は、側面図である。
【図3】記録計の記録紙の部分を示した正面図である。
【図4】グラウトを濃度調整して生成、注入する従来のシステム例を示す図である。
【図5】岩盤にグラウトを注入する状況を示す模式図である。
【図6】複数の注入管が間隔pで配されていることを示した説明図である。
【図7】流量調整して圧力を一定に保てたと想定した場合の特性図である。
【符号の説明】
【0058】
10…希釈液(低糖度グラウト)、11…貯留槽、12…撹拌機、13…圧送ポンプ、14…切替弁、15…流量検出器、16…速度制御器、17…速度制御信号出力端子、18…切替信号出力端子、19…流量信号入力端子、20…グラウト原液(高濃度グラウト)、21…貯留槽、22…撹拌機、23…圧送ポンプ、24…切替弁、25…流量検出器、26…速度制御器、27…速度制御信号出力端子、28…切替信号出力端子、29…流量信号入力端子、30…圧力信号入力端子、31…ラインミキサー、32…圧力検出器、33…ボーリングマシーン、34…注入管、35…地盤、36…グラウト吐出孔、37…グラウト圧送管、38…クラック、39…グラウト、40…制御回路、41…スケーラ、42…スケーラ設定器、43…スケーラ設定器、44…乗算器、45…減算器、46…パルス発信器、47…コンパレータ、48…記録計、49、50…オアゲート、51、52…アンドゲート、53…積算器、54…加減算器、55…D/Aコンバータ、56…低濃度用乗算器、57…高濃度用乗算器、58…スプロケット、59…記録紙、60…第1ペン機構、61…第2ペン機構、62…インクユニット、63…記録ペン、64…ドライブワイヤ、65…プーリ、66…第1ペンガイド、67…反射式ホトセンサ、68…反射板、69…スライドベース、70…長孔、71…上限検出器、72…下限検出器、73…第2ペンガイド、74…ドライブワイヤ、75…プーリ、76…位置調整ねじ、77…上限濃度プログラム値、78…下限濃度プログラム値、79…注入流量値、80…上限交点、81…下限交点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度の異なるグラウト液を低濃度ポンプと高濃度ポンプでそれぞれ圧送し、混合して濃度調整しつつ注入するグラウトの比率制御方法において、
予め設定された上限と下限の濃度プログラム値と、濃度の異なる複数のグラウト液の合計値を設定する乗算係数とを乗算して前記低濃度ポンプと高濃度ポンプの運転速度比を調節して濃度プログラム値の制限された一定範囲内で注入流量が比例するように流量調整するようにしたことを特徴とするグラウトの比率制御方法。
【請求項2】
濃度の異なる複数のグラウト液の合計値を設定する乗算係数は、上限濃度プログラム値と上限圧力値のオア出力を減算信号とし、下限濃度プログラム値と下限圧力値のオア出力を加算信号とし、これらの加減算信号に基づき設定するようにしたことを特徴とする請求項1記載のグラウトの比率制御方法。
【請求項3】
予め設定された上限と下限の濃度プログラム値と、低濃度ポンプと高濃度ポンプの運転速度比を調節して混合注入された注入流量値とを記録計の記録紙に同時に表示するようにしたことを特徴とする請求項1記載のグラウトの比率制御方法。
【請求項4】
注入された流量信号、注入時の圧力信号、濃度プログラム信号に基づき制御回路により低濃度ポンプと高濃度ポンプの速度を制御し、濃度の異なるグラウト液を低濃度ポンプと高濃度ポンプでそれぞれ圧送し、混合して濃度調整しつつ注入するグラウトの比率制御装置において、
前記制御回路は、
予め設定された上限と下限の濃度プログラム値を設定する手段と、
濃度の異なる複数のグラウト液の合計値を設定する乗算係数を演算する手段と、
前記下限の濃度プログラム値と乗算係数演算手段の乗算係数を乗算して低濃度ポンプの運転速度を制御する速度制御信号を出力する低濃度用乗算器と、
前記上限の濃度プログラム値と乗算係数演算手段の乗算係数を乗算して高濃度ポンプの運転速度を制御する速度制御信号を出力する高濃度用乗算器と
を具備したことを特徴とするグラウトの比率制御装置。
【請求項5】
予め設定された上限と下限の濃度プログラム値を設定する手段は、注入するグラウト濃度値をプログラム設定するプログラム発信器と、スケール信号を出力するスケーラと、これらを乗算して濃度プログラム値とする乗算器とからなることを特徴とする請求項4記載のグラウトの比率制御装置。
【請求項6】
乗算係数演算手段は、上限濃度プログラム値と上限圧力値のオア出力をする上限用オアゲートと、下限濃度プログラム値と下限圧力値のオア出力をする下限用オアゲートと、前記上限用オアゲートの出力を減算信号とし、下限用オアゲートの出力を加算信号とし、これらの加減算信号を積算する積算器と、この積算器の出力値と定数との加減算をして乗算係数を出力する加減算器とからなることを特徴とする請求項4記載のグラウトの比率制御装置。
【請求項7】
低濃度ポンプと高濃度ポンプの運転速度比を調節して混合注入された注入流量値を記録紙に記録する第1ペン機構と、
予め設定された上限と下限の濃度プログラム値を前記記録紙に併記して記録する第2ペン機構と
を具備したことを特徴とする請求項4,5又は6記載のグラウトの比率制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−266936(P2008−266936A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109215(P2007−109215)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(505357535)株式会社ニュージェック (3)
【出願人】(391006038)東都電機工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】