説明

グラビア塗工装置

【課題】比較的大きな粒状体(例えば粒子径20〜200μmの粉体)を含有する塗工液を使用しても、所望の階調性を伴った塗工を効率良く実現し得るグラビア塗工装置を提供する。
【解決手段】グラビア塗工装置1Aは、塗工液Wが収容される液槽2と、液槽2内の塗工液W中に浸漬されるように配置され、塗工液Wを貯留可能なセルを外周面3aに多数有するグラビアロール3と、グラビアロール3の上方に配置されたバックアップロール4とを備え、両ロール3,4間で被塗工シート10をニップし、被塗工シート10にセル内の塗工液Wを塗工する。バックアップロール4の外周面4aに、凹凸が付されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア塗工装置に関する。詳しくは、粒子径20〜200μmといった大粒径粉体を含有する塗工液の塗工に好適なグラビア塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙やフィルム等の被塗工シートに、塗工液を塗工するための塗工装置として、塗工液を貯留可能なセルが外周面に多数形成されたグラビアロール(グラビア版胴)と、該グラビアロールとの間で該被塗工シートを押圧するバックアップロール(圧胴)とを備えたグラビア塗工装置が知られている。図7には、従来のグラビア塗工装置の概略が示されている。図7に示すグラビア塗工装置91は、グラビアロール92と該グラビアロール92に対向配置されたバックアップロール93とを備えている。グラビアロール92の下方には、塗工液Wが収容される液槽94が設けられている。また、グラビアロール92の外周面上の塗工液Wを掻き落とすドクターブレード95が設けられている。斯かる構成のグラビア塗工装置91において、図示しないロール駆動装置によって両ロール92、93の両方あるいはロール92のみを図中矢印で示す方向に回転させることにより、液槽94内の塗工液Wが、グラビアロール92の外周面に形成された多数のセル内に供給され、ドクターブレード95で該外周面上の余剰の塗工液Wが掻き落とされ、該セル内の塗工液Wが、両ロール92,93間で押圧された被塗工シート90に塗工されるようになっている。
【0003】
また、特許文献1には、グラビア塗工装置を用いて被塗工面にスジ模様を発現させる技術が記載されている。特許文献1に記載の技術は、基材に、下層としてカチオン性塗工液を塗工し乾燥させた後、該下層の上にグラビア塗工装置によりアニオン性塗工液を塗工し、これら上下層の境界面で急速にゲル化させることにより、意匠性の高いスジ模様を発現させるというものである。また、特許文献2には、蓄光インクや蛍光インクを用いたグラビア印刷において、グラビアロールのセルの深度を特定範囲に設定することで、蓄光効果や蛍光効果を確保できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2812284号公報
【特許文献2】特許第3464476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グラビア塗工は、グラビアロールのセルの大きさ(開口度、深度等)を調整することによって、階調性を伴った塗工を1つの塗工ヘッドで(1回の塗工作業で)実現することが可能であり、斯かる塗工により、被塗工シートの被塗工面に、塗工液成分の付着量の差異に起因する濃淡を表現することができる。しかしながら、例えばアルミペーストやパール顔料などの高輝度顔料に代表される、粒子径が20〜200μm程度の比較的大粒径の粒状体を含む塗工液を塗工する場合には、次の理由で階調性の表現に制限が生じる。即ち、大粒径の粒状体をグラビアロールのセル内に進入させ、その後のドクターブレードで掻き落されないようにして被塗工シートに転移させるためには、常に一定以上のセルの開口度が必要となり、その開口度以下に塗工量分布を設定することができない。既存の設備を最大限利用し、所望の階調性を伴った塗工を効率良く実現し得るグラビア塗工装置は未だ提供されていない。
【0006】
従って本発明の課題は、比較的大きな粒状体(例えば粒子径20〜200μmの粉体)を含有する塗工液を使用しても、所望の階調性を伴った塗工を効率良く実現し得るグラビア塗工装置を提供することにある。
【0007】
本発明は、塗工液を貯留可能なセルを外周面に多数有するグラビアロールと、該グラビアロールの上方に配置されたバックアップロールとを備え、該両ロール間で、又は該両ロール間に配置されたオフセットロールと該バックアップロールとの間で被塗工シートをニップし、該被塗工シートに該塗工液を塗工するグラビア塗工装置において、前記バックアップロールの外周面に、凹凸が付されているグラビア塗工装置を提供することにより、前記課題を解決したものである。
【0008】
また本発明は、塗工液を貯留可能なセルを外周面に多数有するグラビアロールを用いたグラビア塗工に用いられるバックアップロールであって、該バックアップロールの外周面に、凹凸が付されているバックアップロールを提供することにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、比較的大きな粒状体(例えば粒子径20〜200μmの粉体)を含有する塗工液を使用しても、前述したような制限を受けずに階調性を伴った塗工を比較的低コストで効率良く実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のグラビア塗工装置の一実施形態を示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示すグラビア塗工装置におけるグラビアロールの斜視図である。
【図3】図3(a)は、図2に示すグラビアロールの外周面の一部を拡大して示す平面図、図3(b)は、図3(a)のI−I線断面を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、図1に示すバックアップロールを構成するシート状物の斜視図である。
【図5】図5は、図1に示すグラビア塗工装置によって得られた塗工パターンを模式的に示す平面図である。
【図6】図6は、本発明のグラビア塗工装置の他の実施形態を示す概略図である。
【図7】図7は、従来のグラビア塗工装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、その好ましい一実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。第1実施形態のグラビア塗工装置1Aは、図1に示すように、塗工液Wが収容される液槽2と、液槽2内の塗工液W中に浸漬されるように配置されたグラビアロール3と、グラビアロール3の上方に配置されたバックアップロール4とを備え、両ロール3,4間で被塗工シート10をニップし、被塗工シート10に塗工液Wを塗工するものである。
【0012】
液槽2には、液槽2に塗工液Wを供給する塗工液供給手段(図示せず)が接続されている。該塗工液供給手段は、塗工液Wを貯留するタンク、該タンクから液槽2に塗工液を一定量供給するポンプ、及びこれらを接続する配管等を含んで構成されている。
【0013】
グラビアロール3及びバックアップロール4は、何れも、ロール軸回りに回転可能に支持された円筒形状のロールであり、それぞれのロール周面3a,4aを対向させて上下に並べて配置されている。両ロール3、4あるいはグラビアロール3のみのロール軸には、駆動手段(図示せず)が設けられており、該駆動手段からの駆動力が伝達されることによって、両ロール3,4が同期して回転するようになされている。両ロール3,4は、それぞれ、アルミニウム合金や鉄鋼等の金属製の剛体を含んで構成されている。
【0014】
グラビアロール3は、図2及び図3に示すように、その外周面3aに、塗工液Wを貯留可能なセル30を多数有している。より具体的には、グラビアロール3の外周面3aには、グラビアロール3の周方向X及びロール軸方向Yの両方に交差する直線状の画線部31,32がそれぞれ複数本設けられており、互いに交差する画線部31と画線部32とによって区画された領域に、セル30が形成されている。セル30は、画線部31,32よりも凹んだ凹部であり、凹部としてのセル30と、凸部としての画線部31,32とによって、グラビアロール3の外周面3aに凹凸が付されている。各セル30は、逆ピラミッド型の四角錐形状をなし、その開口部は、図3(a)に示すように、平面視において四角形形状をしている。ここで、各セル30の形状は逆ピラミッド型の他に四角錐台等でもよく、特に制限されるものではない。多数のセル30は、互いに同形状且つ同サイズである。グラビアロール3自体は、この種のグラビア塗工装置におけるグラビアロールと同様に構成することができる。
【0015】
図1に示すように、グラビアロール3の上部側方であって、バックアップロール4とのニップ部(被塗工シート10との接触部)よりも上流側には、グラビアロール3の外周面3a上に供給された塗工液Wのうちの余剰分を掻き取るドクターブレード5が設けられている。
【0016】
また、図1に示すように、グラビアロール3の上方であってバックアップロール4の前後方向に、ガイドロール6,7が配されている。長尺帯状の被塗工シート10は、シート搬送手段(図示せず)によって、ガイドロール6を経てグラビアロール3とバックアップロール4とで形成されるニップ部Nを通された後、ガイドロール7を経て搬送される。ガイドロール6,7は上下動可能に配置されており、ガイドロール6,7の配置位置を調整することにより、被塗工シート10の搬送時の張力を調整することができる。
【0017】
第1実施形態のグラビア塗工装置1Aの主たる特徴の一つは、バックアップロール4にある。通常のこの種のバックアップロールの外周面は、凹凸が無く平坦(平滑)であるのに対し、第1実施形態に係るバックアップロール4の外周面4aには凹凸が付されている。より具体的には、第1実施形態に係るバックアップロール4は、図1に示すように、金属製の剛体からなる円筒状のロール芯体40の外周面上に、表面に凹凸を有するシート状物41が巻き付けられて構成されている。ロール芯体40の外周面は、その全域がシート状物41で覆われている。ロール芯体40とシート状物41とは、接着剤等の公知の接合手段により接合されている。
【0018】
シート状物41は、図4に示すように、その一面41a側に凸部42及び凹部43がそれぞれ複数設けられており、該一面41aが凹凸面となっている。一方、シート状物41の他面41bは、凹凸の無い平坦面となっている。シート状物41の一面(凹凸面)41aは、バックアップロール4の外周面4aを形成し、平坦な他面41bは、バックアップロール4との対向面(接合面)である。凸部42は、平面視においてバックアップロール4の周方向Xに延びる矩形形状をなし、また、周方向Xと直交するロール軸方向Y(CD)に沿う断面視において直方体形状をなしている。凸部42内は、シート状物41の形成材料(繊維、樹脂等)で満たされている。複数の凸部42は、何れも同形状、同寸法に形成され、CDに所定間隔を置いて配置されており、CDに互いに隣接する2つの凸部42,42間が、凹部43となっている。凸部42の上面部42a及び凹部43の底面部43aは、それぞれ平坦である。このように、バックアップロール4の外周面4aを形成する、シート状物41の一面41aには、凸部42と凹部43とがCDに交互に配され、これにより該一面41aに凹凸が付されている。
【0019】
シート状物41は、扁平なシート状基材をエンボス加工することによって形成されている。シート状物41を構成するシート状基材としては、例えば、紙;織布;不織布;ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、フッ素樹脂等の樹脂製フィルム;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ウレタンゴムシリコンゴム等のゴム材、アルミニウム箔、鉄箔、銅箔などの金属箔等を用いることができる。シート状物41には、耐久性が実使用上必要であり、またシート状物41の硬度が高すぎる場合は、その凹凸部とグラビアロール3との接触によりセル30を破損する恐れがあることから、シート状基材41としては、樹脂製フィルムあるいはゴム材が好ましい。
【0020】
被塗工シート10としては、通常、紙、樹脂製フィルム、金属箔またはこれらの複合体等が用いられる。塗工液Wとしては、通常、インク、接着液、オーバーコート液、アンカーコート液等が用いられる。インクは、通常、色材(染料、顔料等)と水や有機溶媒等の液媒体とを含んで構成されている。
【0021】
このような構成のグラビア塗工装置1Aにおいて、図1に示すように、長尺帯状の被塗工シート10が、ガイドロール6、グラビアロール3とバックアップロール4とで形成されたニップ部N、及びガイドロール7を順次通って、図1中X1で示す方向(MD)に搬送される。この間、液槽2内の塗工液Wに下部が浸漬されるように配置されていたグラビアロール3が図中矢印で示す方向に回転することによって、塗工液Wがその外周面3a上に供給され、外周面3aに形成されたセル30内に貯留される。外周面3a上に供給された塗工液Wは、そのうちの余剰分がドクターブレード5によって掻き取られた後、ニップ部Nに移送される。
【0022】
ニップ部Nにおいて、グラビアロール3とバックアップロール4との間で被塗工シート10が所定のニップ圧で押圧されることによって、該グラビアロール3の外周面3a上(セル30内)の塗工液Wが、該被塗工シート10の該グラビアロール3との対向面(被塗工面)に転写される。このとき、被塗工シート10に接触しているバックアップロール4の外周面4aは、前述したように平坦(平滑)ではなく、図4に示す如き凹凸を有しているため、ニップ部Nにおける被塗工シート10に該凹凸に起因する圧力差が生じ、これにより塗工液Wの塗工量(グラビアロール3から被塗工シート10への転写量)が不均一となる。具体的には、ニップ部Nにおける被塗工シート10において、バックアップロール4(シート状物41)の凸部42に対応する部分は、凹部43に対応する部分よりも強く押圧されるため、塗工液Wの塗工量が相対的に多くなる。一方、凹部43に対応する部分は、凸部42に対応する部分よりも弱く押圧されるため、塗工液Wの塗工量が相対的に少なく、凹部43の深さ(凸部42の高さ)によっては、殆ど押圧されず、塗工液Wが実質的に塗工されない場合もある。こうして、被塗工シート10の被塗工面に、塗工液Wの塗工量差に起因する濃淡が表現され、階調性を伴った塗工が得られる。
【0023】
図5には、本発明に係る塗工パターンの一例として、ニップ部Nを通過した被塗工シート10の塗工パターンが示されている。図5に示すように、被塗工シート10の被塗工面には、塗工液Wの塗工量が相対的に多い多塗工部12と、塗工液Wが実質的に塗工されていないか又は塗工液Wの塗工量が相対的に少ない非又は少塗工部13とが形成されている。多塗工部12は、ニップ部Nにおいてバックアップロール4(シート状物41)の凸部42で押圧された部分であり、バックアップロール4における凸部42と同数形成されている。また、非又は少塗工部13は、ニップ部Nにおいてバックアップロール4(シート状物41)の凹部43で押圧された部分であり、バックアップロール4における凹部43と同数形成されている。多塗工部12及び非又は少塗工部13は、それぞれ、平面視において搬送方向X1(MD)に延びる矩形形状をしており、搬送方向X1と直交する方向Y(CD)に交互に配されている。
【0024】
こうして被塗工面に階調性を伴った塗工が施された被塗工シート10は、その後、自然乾燥又は加熱強制乾燥され、これにより目的とする、被塗工シート10上に塗工膜が形成された塗工済みシートが得られる。被塗工シート10を加熱強制乾燥する場合、加熱手段としては、例えば、電気乾燥炉(自然対流式又は強制対流式)、熱風循環式の乾燥炉、遠赤外線による加熱と熱風循環を併用した乾燥炉等、公知のものを特に制限無く用いることができる。
【0025】
所望の階調性を伴った塗工をより確実に得られるようにする観点から、シート状物41の凸部42の高さT1(図4参照、凹部43の底面部43aからの高さ)は、好ましくは5μm以上、更に好ましくは50μm以上である。高さT1が5μm未満の場合は、いかなる硬度のシート状物41を使用しても、グラビアロール3とニップされた際に塗工量差に影響するほどの圧力差を得ることができず、階調性を伴った塗工が得られないおそれがあるので好ましくない。
【0026】
第1実施形態のグラビア塗工装置1Aによれば、バックアップロール4の外周面4aに凹凸が付されているため、グラビアロール3とのニップ部Nにおいて被塗工シート10に圧力差が生じ、これにより被塗工シート10に、塗工液Wの塗工量差に起因した階調性を伴った塗工パターンを、1つの塗工ヘッドで(1回の塗工作業で)施すことができる。階調性を伴った塗工パターンは、前記凹凸を構成する凸部42及び凹部43の形状、寸法、配置を適宜調整することにより、変更可能である。
【0027】
また、グラビア塗工において粒子径が20〜200μm程度の比較的大粒径の粒状体を含む塗工液を塗工する場合には、該粒状体をグラビアロールのセル内に進入させ、その後のドクターブレードで掻き落されないようにして被塗工シートに転移させるために、常に一定以上のセルの開口度が必要となるところ、従来は、その開口度以下に塗工量分布を設定することができず、表現できる階調性の幅が制限されてしまうという問題があった。これに対し、第1実施形態に係るバックアップロール4を用いてグラビア塗工を行うことによって、階調性を伴った塗工を得る目的でグラビアロール(セル)に特に手を加える必要は無くなるため、比較的大きな粒状体を含む塗工液を用いた場合でも、セルの大きさの制約を受けること無く、階調性の幅が広い塗工が可能となる。また、バックアップロール4は、通常の円筒状の金属製等のロール芯体40の外周面上に、表面に凹凸を有するシート状物41が巻き付けられて構成されており、既存の設備(通常のバックアップロール)を最大限利用して作製可能なものであるため、第1実施形態によれば、階調性を伴った塗工を比較的低コストで効率良く実現することができる。
【0028】
図6には、本発明のグラビア塗工装置の第2実施形態が示されている。尚、第2実施形態については、前述した第1実施形態と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。
【0029】
第2実施形態のグラビア塗工装置1Bは、いわゆるオフセットグラビアコーターであり、図6に示すように、グラビアロール3とバックアップロール4との間に配置されたオフセットロール8を備え、オフセットロール8とバックアップロール4との間で被塗工シート10をニップし、被塗工シート10に塗工液Wを塗工するようになされている。オフセットロール8は、ロール軸回りに回転可能に支持された円筒形状のロールであり、その外周面8aはゴム等で形成されており、凹凸の無い平坦(平滑)な面である。グラビアロール3、あるいはグラビアロール3とオフセットロール8の2本、あるいはグラビアロール3とオフセットロール8とバックアップロール4の3本においては、グラビアロール3及び/又はグラビアロール3とバックアップロール4の両方に図示しない駆動手段が設置されており、該駆動手段からの駆動力が伝達されることによって、オフセットロール8は、グラビアロール3及びバックアップロール4に同期して回転するようになされている。オフセットロール8としては、通常のオフセットグラビアコーターにおけるオフセットロールを用いることができる。
【0030】
グラビア塗工装置1Bにおいて、グラビアロール3の回転によってその外周面3a上に供給された塗工液Wは、グラビアロール3とオフセットロール8とで形成されたニップ部N1にて、オフセットロール8の外周面8a上に転写される。このとき、外周面8a上に形成される塗工液Wの転写パターンは、外周面3aのセル30の配置パターンに対応したパターンである。こうして、オフセットロール8に所定のパターンで転写された塗工液Wは、オフセットロール8とバックアップロール4とで形成されたニップ部N2に移送され、該ニップ部N2にて被塗工シート10に塗工される。このニップ部N2における被塗工シート10への塗工液Wの塗工は、前述した第1実施形態におけるニップ部Nにおける塗工と同じである。第2実施形態のグラビア塗工装置1Bによっても、第1実施形態のグラビア塗工装置1Aと同様に、階調性を伴った塗工が効率良く得られる。
【0031】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態では、バックアップロールとして、円筒状のロール芯体40の外周面上に、表面に凹凸を有するシート状物41が巻き付けられて構成されているバックアップロール4を用いたが、要は、バックアップロールの外周面に凹凸が付されていれば良く、シート状物41を用いずに、金属製のロール芯体40の外周面に直接彫刻を施す等して凹凸を付しても良い。但し、既存の設備の活用、コスト低減等の観点からは、シート状物41を含んで構成されるバックアップロール4の使用が好ましい。
【0032】
また、前記実施形態では、グラビアロール3が液槽2内の塗工液W中に浸漬されるように配置されていたが、このような構成に代えて、グラビアロール3と液槽2との間に着肉ロール(図示せず)をそのロール軸回りに回転可能に設け、且つ該着肉ロールの下部を液槽2内の塗工液W中に浸漬させ、該着肉ロールを介して、液槽2内の塗工液Wがグラビアロール3の外周面3a上に供給されるように構成しても良い。
【0033】
また、シート状物41において、凸部42内は、シート状物41の形成材料(繊維、樹脂等)で満たされていたが、中空であっても良い。
また、バックアップロール4(シート状物41)における凹凸のパターンは、図4に示す如きストライプ状に制限されず、適宜設定可能である。前記実施形態では、複数の凸部42は、何れも同形状、同寸法であったが、形状及び/又は寸法が揃っていなくても良い。換言すれば、バックアップロール4(シート状物41)は、形状及び/又は寸法の異なる複数種の凸部42を有していても良い。例えば、凸部42の高さT1(図4参照)がロール軸方向Y(CD)における一方向(図4中、右方向又は左方向)に向かって漸次減少又は増加するように、高さT1の異なる複数種の凸部42を設けることによって、塗工液Wの塗工量が該一方向に向かって漸次減少又は増加していくような、階調性のある塗工パターンが得られるようになる。
【符号の説明】
【0034】
1A,1B,91 グラビア塗工装置
2,94 液槽
3,92 グラビアロール
3a グラビアロールの外周面
30 セル
4,93 バックアップロール
4a バックアップロールの外周面
40 ロール芯体
41 シート状物
42 凸部
43 凹部
5,95 ドクターブレード
6,7 ガイドロール
8 オフセットロール
10,90 被塗工シート
12 多塗工部
13 非又は少塗工部
W 塗工液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工液を貯留可能なセルを外周面に多数有するグラビアロールと、該グラビアロールの上方に配置されたバックアップロールとを備え、該両ロール間で、又は該両ロール間に配置されたオフセットロールと該バックアップロールとの間で被塗工シートをニップし、該被塗工シートに該塗工液を塗工するグラビア塗工装置において、
前記バックアップロールの外周面に、凹凸が付されているグラビア塗工装置。
【請求項2】
前記バックアップロールは、円筒状のロール芯体の外周面上に、表面に凹凸を有するシート状物が巻き付けられて構成されている請求項1記載のグラビア塗工装置。
【請求項3】
塗工液を貯留可能なセルを外周面に多数有するグラビアロールを用いたグラビア塗工に用いられるバックアップロールであって、該バックアップロールの外周面に、凹凸が付されているバックアップロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−206698(P2011−206698A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77478(P2010−77478)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(507369811)特種東海製紙株式会社 (11)
【Fターム(参考)】