説明

グラフェン/ナノ二酸化チタン複合物及びその製造方法

【課題】更に好適な光触媒効率を有する斬新な光触媒剤およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも、重量比が約500:1〜10000:1のナノ二酸化チタンとグラフェンからなるグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物を提供する。また、グラフェン/ナノ二酸化チタン複合物の製造方法であって、約500〜10000重量部のナノ二酸化チタンと、約1重量部のグラフェンとを、体積比が約2:1〜3:1の水/エタノール溶液に分散させて、約10〜15MPaの圧力、100〜200℃の温度で、前記水/エタノール溶液に分散されたナノ二酸化チタンとグラフェンを反応させて、グラフェン/ナノ二酸化チタン複合物を得るグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の発展につれて、環境に様々な有機汚染物(例えば、塩化アレーン、界面活性剤、染料、除草剤、殺草剤等)や無機汚染物(例えば、CN、CrO2−等)が廃棄され、これらの汚染物が自然環境に累積されてきて、常に環境、生態、人間の健康を脅かしている。
【0003】
現在、既にこれらの汚染物を処理するための方法、例えば吸着法、酸化法、還元法、ろ過法、光触媒分解等様々な方法が開示された。それらのうち、光触媒分解は、操作が便利、廉価、高い安定性等のメリットを有するため、各界に注目されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二酸化チタンは今最も主要な市販光触媒剤であるが、このような光触媒剤は触媒効率が不十分である。これを鑑み、更に好適な光触媒効率を有する斬新な光触媒剤が関連分野に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、グラフェン/ナノ二酸化チタン複合物の製造方法に関する。本発明の原理と精神により、高温高圧で、グラフェンとナノ二酸化チタンを反応させて、グラフェン/ナノ二酸化チタン複合物を得ることができる。
【0006】
本発明の実施例によれば、前記方法は、約500〜10000重量部のナノ二酸化チタンと約1重量部のグラフェンとを、体積比が約2:1〜3:1の水/エタノール溶液に分散させるステップと、約10〜15MPaの圧力、100〜200℃の温度で、前記水/エタノール溶液に分散されたナノ二酸化チタンとグラフェンを反応させて、グラフェン/ナノ二酸化チタン複合物を得るステップとを含む。
【0007】
本発明の実施例によれば、前記ナノ二酸化チタンとして、二酸化チタンのナノチューブ又は二酸化チタンのナノ顆粒を用いてもよい。
【0008】
本発明の実施例によれば、水熱法を用いて前記二酸化チタンナノチューブを製造してもよい。
【0009】
また、本発明は、グラフェン/ナノ二酸化チタン複合物に関する。市販の二酸化チタン触媒剤に比べ、前記グラフェン/ナノ二酸化チタン複合物は、高い比表面積を有し、より好適な光触媒分解効率を有する。
【0010】
本発明の実施例によれば、前記グラフェン/ナノ二酸化チタン複合物は、少なくとも重量比が約500:1〜10000:1のナノ二酸化チタンとグラフェンからなる。
【0011】
以下の実施形態を参照した後、本発明の技術分野における通常知識を有するものであれば、本発明の基本的な精神、その他の目的、及び本発明に用いられる技術手段と実施形態を簡単に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
下記図面の簡単な説明は、本発明の前記または他の目的、特徴、メリット、実施形態をより分かりやすくするためのものである。
【0013】
【図1A】本発明の実験例によって得られたそれぞれの二酸化チタンナノチューブのSEM写真である。
【図1B】本発明の実験例によって得られたそれぞれの二酸化チタンナノチューブのSEM写真である。
【図1C】本発明の実験例によって得られたそれぞれの二酸化チタンナノチューブのSEM写真である。
【図2A】本発明の実験例によって得られたグラフェン/二酸化チタンナノチューブ複合物のTEM写真である。
【図2B】本発明の実験例によって得られたグラフェン/二酸化チタンナノチューブ複合物のIR図である。
【図3】本発明の実験によるメチルブルーテストの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
更に詳細に本発明に係る技術を説明するために、以下、好適な実施形態と具体的な実施例を用いて本発明に係る技術を説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施形態には、複数の具体的な実施例及びこれらの具体的な実施例を構成や操作するための方法が含まれるが、その他の具体的な実施例を用いて、同一又は相当な効果を達成することができる。
【0015】
ミクロンレベル以上の二酸化チタン材料に比べ、ナノ二酸化チタンは高い比表面積を有し、理論的に、大きい光触媒面積を提供でき、より好適な光触媒効率を有すると思われる。しかしながら、実際に、ナノ二酸化チタンは、表面エネルギーが極めて高く、表面エネルギーを低減するために、ナノ二酸化チタン粒子の表面が互いに接触した後、凝集体(aggregates)が形成されることがよく発生する。また、多くの光触媒分解反応は水溶液又は含水環境で行われるため、この状況におけるナノ二酸化チタン粒子は同様に、比表面積が大きく、表面エネルギーが高いなどの要素で、水、空気と凝固して凝固体(coagulates)が形成される。形成された凝集体や、凝固体によって、ナノ二酸化チタンの比表面積が低減されて、相応的にナノ二酸化チタンの光触媒効率が制限される。
【0016】
これに鑑みて、本発明は、グラフェン/ナノ二酸化チタン複合物の製造方法に関する。本発明の原理と精神により、高温高圧で、グラフェンとナノ二酸化チタンを反応させて、グラフェン/ナノ二酸化チタン複合物を得ることができる。前記方法により、ナノ二酸化チタンを分散させてグラフェンの表面に固定させ、複合物を形成することができる。これにより、前記ナノ二酸化チタン粒子の凝集又は凝固が発生する機会を有効に低減し、しかも、複合物がより大きい表面積を提供するため、有機汚染物に対する吸着能力がさらに向上され、また、この複合物は、異質の界面が形成されることによって、電子と電子ホールの間の複合率が低減される。カーボンの表面材料は、光子を吸収した後、電子が二酸化チタンの伝導帯に注入され、有機汚染物を分解するための反応キャリアを形成することができる。
【0017】
本発明の実施形態によれば、前記高温高圧でグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物を製造する方法は、ナノ二酸化チタンとグラフェンの分散液を製造する工程と、複合反応工程とを含み、詳しくは以下に説明する。
【0018】
ナノ二酸化チタンとグラフェンの分散液を製造する工程において、約500〜10000重量部のナノ二酸化チタンと約1重量部のグラフェンとを、体積比が約2:1〜3:1の水/エタノール溶液に分散させる。
【0019】
本発明の実施例によれば、二酸化チタンとグラフェンの重量比が約500〜10000:1であってよく、好ましくは1000〜3000:1である。例えば、二酸化チタンの使用量が3gの場合、グラフェンの使用量が約0.3〜6mgでよく、更に詳しく言えば、グラフェンの使用量が約0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5又は6mgであってもよい。
【0020】
本発明の原理と精神によれば、この方法において、いかなるナノレベルの二酸化チタン材料を用いてもよく、例えば、二酸化チタンナノチューブ(TiO nanotubes)及び二酸化チタンナノ顆粒(TiO nano−particles)が挙げられるが、これらに限られない。
【0021】
一般的に、市販の二酸化チタンナノ顆粒の比表面積は50〜60m/g程度であるが、二酸化チタンナノチューブの比表面積は200〜400m/g程度である。
【0022】
本発明のいずれかの実施例においては、水熱法によって、更にグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物の光触媒効果を向上するように高い比表面積を有する二酸化チタンナノチューブを製造することができる。前記水熱法は以下の工程を含む。
【0023】
まず、適量な二酸化チタンを粉末に研磨して、高濃度の水酸化ナトリウム水溶液に入れ、反応溶液を製造する。適切な水酸化ナトリウム水溶液の濃度は約5〜15Mであってよく、例えば、約5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5又は15Mであってよい。また、二酸化チタン粉末と水酸化ナトリウム水溶液における水酸化ナトリウムの重量比は約1:1〜1:3であってよい。
【0024】
反応溶液を高圧チャンバーに入れ、約10MPa〜15MPaの圧力、110〜150℃の反応温度で、反応させる。一般的に、反応時間が4〜24時間であれば、反応溶液中の二酸化チタンを二酸化チタンナノチューブに転化できる。
【0025】
試験の結果により、反応温度と反応時間が生成物の管径と長さに影響を与えて生成物の比表面積に影響を与えることが分かる。本発明の複数の実施例により、適切な反応温度は約110〜150℃であってよく、好ましくは約110〜130℃であるが、具体的に、反応温度は約110、115、120、125、130、135、140、145又は150℃であってもよい。また、適切な反応時間は約4〜24時間であってよく、好ましくは約10〜20時間であるが、具体的に、反応時間は約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24時間であってもよい。
【0026】
次に、0.1MのHCl及び大量な脱イオン水で水溶液が中性になるまで反応により得られた二酸化チタンナノチューブを洗浄とろ過を繰り返す。次に、洗浄した二酸化チタンナノチューブを乾燥させて研磨し、二酸化チタンナノチューブを得る。例えば、洗浄した二酸化チタンナノチューブを約40℃の真空オーブンに置いて、約6〜12時間をかけて乾燥させれば、実質にその中の水分を除去することができる。
【0027】
分析の結果により、以上の方法で製造した二酸化チタンナノチューブの比表面積は約200〜500m/gである。
【0028】
本発明の原理と精神により、分散液を製造するためのグラフェンに対し、酸化処理又は他の化学変性を行っておいてもよい。
【0029】
グラフェンは単層グラファイト(mono layer graphite)とも言われ、近年に証明された二次元のカーボン原子結晶である。自然状態では、分層後のグラフェンは、互いにファンデルワールス力によって凝集され、分層状態を保ちにくく、また、これにより、水とエタノールに対しグラフェンの溶解性があまりよくない。これに対し、本発明の実施例により、分散液を製造する前に、水に対する分散性を向上するように、例えば、グラフェンを約0.5〜5Mの硫酸に入れ、約8〜12時間撹拌して、グラフェンを酸化処理してもよい。
【0030】
また、グラフェンには、化学変性に係る多種類の官能基を有してもよく、本発明の実施形態もこれらの化学変性したグラフェン材料を含む。
【0031】
本発明において、この分散液の溶剤として、体積比が約2:1〜3:1の水とエタノールとの混合溶液を用いてよく、例えば、水とエタノールの割合が約2:1、2.5:1又は3:1であってもよい。
【0032】
また、従来の技術及び/又は設備を用いて、例えば、超音波振動を利用して、ナノ二酸化チタンとグラフェンを均等に溶剤に分散させて、溶剤におけるグラフェンと二酸化チタンの分散均質性を促進することができる。
【0033】
分散液が製造された後、複合反応の工程において、約10〜15MPaの圧力、100〜200℃の温度で、分散液に分散されたナノ二酸化チタンとグラフェンを反応させて、グラフェン/ナノ二酸化チタン複合物を得る。例えば、適切な反応圧力は約10、11、12、13、14又は15MPaであってよい。適切な反応温度は約100、110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200℃であってよい。
【0034】
この複合反応は高圧チャンバーで行うことができる。一般的に、反応時間は、反応物の使用量によって決められ、複合の具合に影響を与える。本発明の実施例により、反応時間は約5〜10時間であれば、グラフェンとナノ二酸化チタンを有效に複合させることができるので、例えば、反応時間が約5、6、7、8、9又は10時間であってもよい。
【0035】
複合反応が完成した後、脱イオン水でグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物を洗浄とろ過を繰り返して、得られたグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物を、例えば、約40℃の真空オーブンに置いて乾燥させる。
【0036】
また、本発明は、グラフェン/ナノ二酸化チタン複合物に関する。市販の二酸化チタン触媒剤に比べ、本発明に係るグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物は、高い比表面積を有し、より好適な光触媒分解効率を有する。
【0037】
本発明の実施例によれば、このグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物は、少なくともナノ二酸化チタンとグラフェンからなり、そのうち、二酸化チタンとグラフェンの重量比が約500〜10000:1であってよく、好ましくは1000〜3、000:1であり、例えば、500:1、600:1、700:1、800:1、900:1、1000:1、2000:1、3000:1、4000:1、5000:1、6000:1、7000:1、8000:1、9000:1、又は10000:1であってもよい。
【0038】
また、本発明の原理と精神により、前記方法において、前記ナノ二酸化チタンは二酸化チタンのナノチューブ及び二酸化チタンのナノ顆粒を含むが、これらに限られない。
【0039】
いずれかの実施例において、比表面積が約200〜500m/gの二酸化チタンナノチューブを用いてもよい。
【0040】
いずれかの実施例において、少なくとも前記グラフェンの一部の表面が酸化されてもよい。また、いずれかの実施例において、前記グラフェンが化学変性されてもよい。
【実施例】
【0041】
前記グラフェン/ナノ二酸化チタン複合物の光触媒分解効率を知るために、本発明の前記実施例に係る方法によって異なるグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物を製造し、関連分析を行い、一部の実験結果を以下に記載する。
【0042】
実験1
本実験において、本発明の実施例に述べた水熱法によって、異なる反応時間と反応温度で、二酸化チタンナノチューブを製造し、その表面形態と比表面積を検討した。各実験例における反応温度、反応時間、及び生成物の比表面積を表1にまとめた。
【表1】

【0043】
表1の結果によれば、反応時間が同じ場合、反応温度の増加につれて、二酸化チタンナノチューブの比表面積が上昇してから降下する傾向があり、また、反応温度が同じ場合、反応時間の増加につれて、二酸化チタンナノチューブの比表面積も上昇してから降下する傾向があることが分かる。
【0044】
図1A〜図1Cは実験例1−2、2−2と3−2によって得られたそれぞれの二酸化チタンナノチューブの走査型電子顕微鏡(scanning electronic microscope、以下SEMと略称する)写真である。これらのSEM写真により、これらの実験例によって得られた生成物の外観がナノチューブ状の形態であることがわかる。
【0045】
実験2
本実験において、前記実験例1−2の二酸化チタンナノチューブを用い、前記本発明の実施例に述べた高温高圧でグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物(実験例4)を製造する。
【0046】
さらに具体的に言えば、約3mgのグラフェンを約1Mの硫酸に約10時間に浸漬し、少なくともグラフェンの表面の一部を酸化させて形成した酸化グラフェンと、約3gの二酸化チタンナノチューブとを、体積比が約2.5:1の水/エタノール溶剤に入れて、分散液を得る。そして、分散液を高圧チャンバーに入れ、約12MPaの圧力、110℃の温度で、反応時間が約6時間をかけて、複合反応を行う。複合反応が完成した後、脱イオン水で洗浄とろ過を繰り返して、反応生成物を約40℃の真空オーブンに置いて乾燥させる。
【0047】
図2Aは実験例4によって得られたグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物の透過型電子顕微鏡(transmission electron microscope、以下TEMと略称する)写真であり、このTEM写真によれば、複合反応を行った後、ナノ二酸化チタンがナノチューブの形態(即ちTEM写真における細長状の部分)を維持しており、しかも、これらの二酸化チタンナノチューブが均等にグラフェン層に分散されていることが分かる。
【0048】
図2Bは実験例4によって得られたグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物の赤外線分光器(infrared spectroscope、以下IRと略称する)図であり、同図には二酸化チタンとグラフェンのそれぞれのIR図も示す。図2Bによれば、実験例4によって得られたグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物は約1620cm−1において、複合材料の特徴である吸収ピークを有し(水熱反応過程において、グラフェンと二酸化チタンが複合物を形成することを示す)、これにより、前記高温高圧環境により確かにグラフェンとナノ二酸化チタン材料との間に複合作用を発生させ、単なる混合ではないことが分かる。
【0049】
実験3
本実験において、前記実施形態に述べた方法によって、異なるグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物を製造し、複合していないナノ二酸化チタン材料を対照組として、各種類の材料の光触媒分解効率を分析する。それぞれの実験例と対照組の材料の種類、及びその光触媒分解効果を表2と図3にまとめた。
【表2】

【0050】
本実験において、対照例1、2は、それぞれ前記実験例1−2に製造された二酸化チタンナノチューブ及び市販のDEGUSSA P−25二酸化チタンナノ粒である。実験例4によって得られたグラフェン/二酸化チタンナノチューブ複合物は、前記実験2で製造されたグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物である。実験例5によって得られたグラフェン/二酸化チタンナノ粒複合物は、前記実験2に述べた方法によって、市販DEGUSSA P−25二酸化チタンナノ粒と酸化グラフェンとを複合して製造した生成物である。
【0051】
ここで、前記材料を用いてメチルブルー(methyl blue)テストを行い、それぞれの光触媒分解効率を検討した。メチルブルーは、有機染料であり、水に溶かした場合、水溶液が青紫色になり、有効に多種類の物質の表面に吸着されることができ、光に照射されても分解されにくいが、光触媒材料が光に照射されることによって、メチルブルーを無機物に分解するにつれて、水溶液の色がだんだん薄くなるため、よく光触媒分解試験の試剤として用いられる。
【0052】
本実験において、約0.01gの市販メチルブルーを約1Lの脱イオン水に溶解させ、濃度が約2.7×10−5Mのメチルブルー水溶液を製造し、そして、グラフェン/二酸化チタン複合物を超音波振動によってメチルブルー水溶液に均等に分散させる。光触媒テストは、10mg/Lのメチルブルーを分解標的物とし、紫外線/可視光(UV/VIS)光源を用いてメチレンブルーの吸収スペクトルを測定する。測定の結果、波長が約246nm、292nm、610nm及び665nmの4つの著しい吸収ピークが表れ、そのうち、665nmが最大吸収ピークを示し、この吸収ピークを選んでメチレンブルーの濃度を定量分析した。
【0053】
光触媒テストは、30mgの二酸化チタンナノチューブーグラフェン粉末と、体積が50mlのメチルブルー溶液を均等に混合して、石英ビーカーに入れて、250Wの紫外光で照射して、10分間ごとに遠心して、上層の澄清液をサンプリングして吸収スペクトルを測定して光触媒効果を測定する。
【0054】
表2と図3に示す結果により、すべてのテスト材料において、市販のDEGUSSA P−25二酸化チタンナノ粒の光触媒分解性能が悪く、55分間を経っても、約72.40%のメチルブルーがまだ分解されていない。これに対し、前記方法によって市販製品を用いて製造したグラフェン/二酸化チタンナノ粒複合物(実験例5)は、55分間内に市販製品の約3倍に近い82.54%(100%−17.46%=82.54%)の分解効率でメチルブルーを分解することができる。
【0055】
また、本発明の実施例によって製造された二酸化チタンナノチューブ(実験例1−2、即ち対照例2)は、光分解効率も市販のDEGUSSA P−25二酸化チタンナノ粒より高く(55分間内のメチルブルーの光分解率が約56.75%)、さらに、それを用いて製造したグラフェン/二酸化チタンナノチューブ複合物(実験例4)は、55分間内のメチルブルーの光分解率が約86.11%に向上されることができる。
【0056】
前記実施形態及び実験例により、本発明の実施形態によれば、グラフェン/ナノ二酸化チタン複合物の製造方法が提供され、このような方法によれば、より理想的な比表面積を有するグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物を簡単に製造することができ、従来技術におけるナノレベル二酸化チタン材料が凝集及び/又は凝固しやすい問題が解決される。また、この方法はプロセスが簡単で、量産能力を有する。
【0057】
なお、本発明の実施例により、より理想的な比表面積を有する二酸化チタンナノチューブを得ることができる二酸化チタンナノチューブの製造方法が提供され、このような二酸化チタンナノチューブを前記複合物の製造方法に用いれば、更にグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物の比表面積を向上することができる。
【0058】
また、テストの結果により、前記方法によって製造されたグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物は、より理想的な光触媒分解効率を有する。このような複合材料は、無機−有機複合材料であり、無機化合物性質が有する安定性及び有機化合物が有する変性しやすい特性両方のメリットを有するため、この材料の加工可能性と産業応用範囲が大幅に広くなる。
【0059】
本発明では好適な実施形態を前述の通り開示したが、これは本発明を限定するものではなく、当該分野の技術を熟知しているものであれば、本発明の原理と精神から逸脱しない限り、多様の変動や修飾を加えることができる。従って、本発明は、特許請求の範囲の記載によって限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
500〜10000重量部のナノ二酸化チタンと、1重量部のグラフェンとを、体積比が2:1〜3:1の水/エタノール溶液に分散させるステップと、
10〜15MPaの圧力、100〜200℃の温度で、前記水/エタノール溶液に分散されたナノ二酸化チタンとグラフェンを反応させて、グラフェン/ナノ二酸化チタン複合物を得るステップと
を含むグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物の製造方法。
【請求項2】
少なくとも、重量比が約500:1〜10000:1のナノ二酸化チタンとグラフェンからなるグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物。
【請求項3】
前記ナノ二酸化チタンは、二酸化チタンのナノ顆粒又は比表面積が200〜500m/gの二酸化チタンのナノチューブである請求項2に記載のグラフェン/ナノ二酸化チタン複合物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−121783(P2012−121783A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291974(P2010−291974)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(504427651)財團法人紡織産業綜合研究所 (10)
【Fターム(参考)】