説明

グラフトポリオールを形成する方法、及びグラフトポリオールから形成されたポリウレタン製品

グラフトポリオールとイソシアネートの反応生成物を含むポリウレタン製品を形成するために、グラフトポリオールが使用される。グラフトポリオールは、重合性モノマーを準備する工程、連鎖移動剤を準備する工程、担体ポリオールを準備する工程、遊離基開始剤を準備する工程を含む方法から製造される。重合性モノマーは、スチレンとアクリロニトリルを含む。連鎖移動剤は、3個〜9個の炭素原子、少なくとも1種のチオール部分、及び少なくとも1種の親水性部分を含む。担体ポリオールは、ポリエーテルオールを含み、そして遊離基開始剤は、ジアミンを含む。本方法は、重合性モノマー、連鎖移動剤、担体ポリオールを混合する工程をも含み、そして遊離基開始剤は、遊離基を含む。更に本発明は、重合性モノマーと遊離基を反応させ、重合性モノマーを重合し、そしてグラフトポリオールを形成する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、概してグラフトポリオール、グラフトポリオールを形成する方法、及びグラフトポリオールから形成されたポリウレタン製品に関する。より特定的には、本方法は、含まれる炭素原子が5個以下であり、及び少なくとも1種の非金属原子、及び少なくとも1種の親水性部分(hydrophilic moiety)を含む連鎖移動剤を使用する。
【背景技術】
【0002】
通常のグラフトポリオール、グラフトポリオールを形成する方法、及びグラフトポリオールから形成されたポリウレタン製品(10)は、この技術分野では公知である。典型的には、この方法は、担体ポリオール、連鎖移動剤、及び遊離基開始剤の存在下にモノマーを重合してポリマーを形成し、そしてグラフトポリオールを形成することを含む。担体ポリオールは、グラフトポリオールを形成するための基礎(basis)を提供する。連鎖移動剤は、重合性モノマーのポリマーへの全体的な速度を変えることなくポリマーの分子量と大きさ(サイズ)を制御する。遊離基開始剤(free radical initiator)は分解し、そして遊離基を形成し、伝播(propagation)によってモノマーの重合を容易にする。
【0003】
アルコール及びチオール炭化水素等の通常の連鎖移動剤が、グラフトポリオール及びポリウレタン製品(10)の製造に最も頻繁に使用される。アルコールは、有効であるためには大量に使用する必要があり、そして経済的に使用する場合には、再循環(リサイクル)する必要がある。アルコールを再循環する一方法は、真空ストリップであり、真空ストリップは、(再循環を必要としないチオール炭化水素を使用する場合に、グラフトポリオールを形成するのに必要とされる時間と比較して、)グラフトポリオールを形成するのに要する時間(すなわち、循環時間)を長くする。ポリウレタン製品(10)が、溶媒が高割合、及び水が高割合のフォーム処方物中で、グラフトポリオールから形成された場合、チオール炭化水素は、図1及び図2に示すように、ポリウレタン製品(10)について、粗くそして不均一な(起伏のある)表面(12)を形成し易くし、そして表面(12)の割れ/悪化(劣化)を促進する。特に、チオール炭化水素は長炭素鎖を含んでおり、これにより、チオール炭化水素が疎水性になっている。割れ/悪化の正確なメカニズムは(当業者は)わかっていない、しかし、グラフトポリオールに導入された疎水性のチオール炭化水素により、グラフトポリオールと存在する水との相性(両立性)を悪くし、これにより表面(12)の割れ/悪化が促進されると信じられている。これとは逆に、アルコールは親水性であるが、再循環がなければ極めて高価なものになり、そしてチオール炭化水素と比較して、その使用により、製造コストが増し、そして循環時間(サイクル時間)が増すので、市販用工程に使用することは好ましくない。更に、特許文献1(U.S.Pat.No.4,652,589)に開示されているように、チオール炭化水素の使用は、グラフトポリオール及びグラフトポリオールから作られたポリウレタン製品の臭気を増す。
【0004】
アルコールとチオール炭化水素以外の連鎖移動剤もこの技術分野では公知であり、そしてモノマーの重合に使用されている。特許文献2(U.S.Pat.No.5,354,800(Suzuki et al.))には、親水性の連鎖移動剤、(例えば、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール又は2−メルカプトエタノール)、及び疎水性連鎖移動剤を使用してモノマーを重合し、水中のポリマー分散物(すなわちラテックス)を形成する方法が開示されている。しかしながら、疎水性及び親水性の何れの連鎖移動剤も、グラフトポリオールの形成には使用されていない。事実、特許文献2(‘800のPtent)の方法は、具体的には、水性分散物についてのもので、ポリオール分散物についてのものではない。グラフトポリオールは、水性分散物中では形成されないので、特許文献2(‘800のPtent)の方法は、グラフトポリオールの形成、グラフトポリオールからのポリウレタン製品(10)、又はポリウレタン製品(10)の割れと悪化を低減することには適切ではない。
【0005】
特許文献3(U.S.Pat.No.5,986,011(Ellis etal.))にも、アルコール及びチオール炭化水素以外の連鎖移動剤を使用する方法が開示されている。‘011のPtentの方法は、特許文献2(‘800のPtent)の方法と同様に、親水性の連鎖移動剤、(3−メルカプト−1,2−プロパンジオール又は2−メルカプトエタノール)、及び疎水性連鎖移動剤をモノマーの重合に使用している。また、‘800のPtentと同様に、特許文献3(‘011のPtent)は、疎水性及び親水性の何れの連鎖移動剤もグラフトポリオールの形成に使用していない。すなわち、特許文献3(‘011のPtent)の連鎖移動剤は、バッチ式反応器内で、アクリレート圧力接着粘着生成物に使用するモノマー重合のために使用されている。このように、この方法は、グラフトポリオールの形成、グラフトポリオールから形成されるポリウレタン製品(10)に直接的に適用できず、又はポリウレタン製品(10)の割れ及び悪化を低減することに直接的に適用できない。
【0006】
連鎖移動剤に加え、遊離基開始剤もモノマーの重合に使用され、遊離基開始剤は、上述したように、連鎖移動剤とは異なる機能を有する。特許文献4(U.S.Pat.No.3,960,824(Hicks))は、モノマーの重合で遊離基開始剤として機能し、及び連鎖移動剤としては機能しない種々の硫黄化合物(例えば、メルカプタン)を使用する方法を開示している。遊離基開始剤として作用する特許文献4(‘824のPatent)の硫黄化合物は、空気中の酸素を活性化(radicalize)し、モノマーの重合を開始させるが、しかしポリマーの分子量とサイズを制御することがなく、そして連鎖移動剤として作用することもない。このように、この方法は、開示されているように、連鎖移動剤を使用してグラフトポリオールを形成すること、グラフトポリオールから形成されるポリウレタン製品(10)、又はポリウレタン製品(10)の表面(12)の割れ及び悪化を低減することを示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】U.S.Pat.No.4,652,589
【特許文献2】U.S.Pat.No.5,354,800
【特許文献3】U.S.Pat.No.5,986,011
【特許文献4】U.S.Pat.No.3,960,824
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、費用のかかる処理及び/又は再循環を必要としない連鎖移動剤を使用して、そして循環時間を最小限にして、グラフトポリオールを形成する機会が残されている。また、その表面が割れ又は悪化の傾向を有していないポリウレタン製品を、グラフトポリオールから形成する機会が残されている。更に、グラフトポリオールにひどい悪臭を与えることなく、そしてポリウレタン製品のポリウレタンネットワーク中で反応するポテンシャルを有し、従って、ポリウレタン製品からの放出(emission)を低減できる低分子量の連鎖移動剤を使用する機会が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要約および有利な点
本発明は、グラフトポリオール及びグラフトポリオールを製造する方法に関する。この方法は、重合性モノマーを準備する工程、及び炭素原子を3個〜9個含む連鎖移動剤を準備する工程を含む。また連鎖移動剤は、少なくとも1種のチオール部分(thiol moiety)、及びヒドロキシル部分、アミン部分及びカルボキシル部分から成る群から選ばれる少なくとも1種の親水性部分も含む。更に本発明は、担体ポリオールを準備する工程、及び遊離基を含む遊離基開始剤を準備する工程を含む。更に本方法は、重合性モノマー、連鎖移動剤、担体ポリオール、及び遊離基を含む遊離基開始剤を混合させる工程を含む。本方法は、重合性モノマーと遊離基を反応させ、重合性モノマーを重合し、そしてグラフトポリオールを形成する工程も含む。本発明は、イソシアネート成分と本発明の方法から形成されたグラフトポリオールとの反応生成物を含んだポリウレタン製品も提供する。
【0010】
グラフトポリオールの形成に使用される連鎖移動剤は、ポリウレタン製品の表面に割れ及び悪化が発生する傾向を減少させる。連鎖移動剤は、3個〜9個の炭素原子、及び少なくとも1種の親水性部分を含んでいるので、連鎖移動剤は、疎水性ではなく、そしてポリウレタン製品の表面に割れを発生させる要因にならない。連鎖移動剤は、少なくとも1種のチオール部分を含み、チオール部分は、連鎖移動剤が、重合性モノマーから形成されるポリマーの分子量とサイズを効果的に制御することを可能にする。更に、連鎖移動剤は、処理又は再循環させるのに費用がかからない。この連鎖移動剤は、循環時間を最小限にしてグラフトポリオールを形成することにも貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来技術のポリウレタン製品の上面斜視図である。
【図2】従来技術のポリウレタン製品の上面斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態のポリウレタン製品の上面斜視図である。
【0012】
図面の簡単な説明
以下に、図面を使用して、本願発明を詳細に説明する。これにより、本願発明の他の有利な点も明確に理解される。
【0013】
図1は、従来技術のポリウレタン製品の上面斜視図である。図1の従来技術のポリウレタン製品の表面は粗く、不均一であるが、これは(従来技術のポリウレタン製品を形成するのに使用される)グラフトポリオールの形成で、疎水性チオール炭化水素を連鎖移動剤として使用したためである。
【0014】
図2は、従来技術のポリウレタン製品の上面斜視図である。図2の従来技術のポリウレタン製品の表面は割れと悪化(劣化)が発生しており、これは(従来技術のポリウレタン製品を形成するのに使用される)グラフトポリオールの形成で、疎水性チオール炭化水素を連鎖移動剤として使用したためである。
【0015】
図3は、本発明の一実施の形態のポリウレタン製品の上面斜視図である。本発明の一実施の形態のポリウレタン製品は、本発明のグラフトポリオールから形成されており、そしてその表面には、粗さ、不均一性、割れ及び悪化が存在しない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、グラフトポリオール及びグラフトポリオールを形成する方法を提供する。グラフトポリオールは、この技術分野の如何なるグラフトポリオールであって良く、そして如何なる固体内容物を含んでいて良い。グラフトポリオールは、固体内容物を70%以下、より好ましくは30〜65%、及び最も好ましくは40〜60%含む。本発明の方法から形成されて良い、特に適切なグラフトポリオールは、BASF Corporation of Wyandotte, MIから、Pluracol(登録商標)の名称で市販されているグラフトポリオールである(しかし本発明は、これに限定されるものではない)。
【0017】
グラフトポリオールを形成する本方法は、重合性モノマーを準備する工程を含む。重合性モノマーは、この技術分野の如何なる公知のものであっても良く、そして重合した場合にグラフトポリオールの固体内容物に貢献する。重合性モノマーは、如何なる量で提供(準備)されても良いが、(上述した固体内容物に関しては)グラフトポリオール100質量部に対し、好ましくは25〜70質量部、及びより好ましくは30〜65質量部で提供される。一実施の形態では、重合性モノマーは、スチレン、アクリル酸とメタクリル酸のエステル、エチレン不飽和のニトリル及びアミド、及びこれらの組合せから成る群から選ばれる。他の実施の形態では、重合性モノマーは、スチレン、エチレン性不飽和のニトリル及びアミド、及びこれらの組合せを含む。更に他の実施の形態では、重合性モノマーは、スチレンとアクリロニトリルを含む。別の実施の形態では、重合性モノマーは、重合性モノマー100質量部に対して、スチレンを50〜100質量部、及びより好ましくは50〜85質量部含む。更に別の実施の形態では、重合性モノマーは、重合性モノマー100質量部に対して、アルリロニトリルを15〜100質量部、及びより好ましくは30〜50質量部含む。
【0018】
スチレンの例には、スチレン、パラ−メチルスチレン、及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。スチレン及びパラ−メチルスチレンの化学的構造を以下に記載するが、この目的は、記載上の(説明的な)目的のみである。
【0019】
【化1】

【0020】
エチレン性不飽和のニトリルとアミドの例は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド及びこれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及びアクリルアミドの化学的構造を以下に記載するが、この目的は、記載上の(説明的な)目的のみである。
【0021】
【化2】

【0022】
本発明はまた、連鎖移動剤を準備する工程も含む。本発明では、連鎖移動剤は、この技術分野では公知のように反応減速材(reaction moderator)として作用するものと理解される。この連鎖移動剤は、3〜9個の炭素原子、少なくとも1種のチオール部分、及びヒドロキシル部分、アミン部分、及びカルボキシル部分から選ばれる少なくとも1種の親水性部分を含む。連鎖移動剤は、循環時間を最小限にしてグラフトポリオールを形成することに貢献するもので、このことについては後に詳述する。後に詳述するが、グラフトポリオールを、ポリウレタン製品の形成に使用する場合、連鎖移動剤はポリウレタン製品の表面(16)に割れ及び/又は悪化が発生する傾向を低減させる。連鎖移動剤は、如何なる量で使用しても良く、そして重合性モノマー100質量部に対して、0.4〜2質量部の量で使用(準備)することが好ましく、0.6〜1.55質量部の量で使用することがより好ましい。特定の理論を有するものではないが、連鎖移動剤は、少なくとも1つの親水性部分(hydrophilic moiety)を有しているので、連鎖移動剤は疎水性ではなく、及び従って、グラフトポリオールと、高い水量(water level)で製造されたポリウレタン製品との相性がより良好になると信じられている。また、連鎖移動剤が、少なくとも1種のチオール部分を含み、このために連鎖移動剤が重合性モノマーから形成されたポリマーの分子量とサイズを効果的に調節することができると信じられている。更に、連鎖移動剤は、(真空ストリッピングの使用が最小限になるので)循環時間を最小限にしてグラフトポリオールを形成することに貢献すると信じられている。このことについては後に詳述する。
【0023】
一実施の形態では、連鎖移動剤は、メルカプトカルボン酸、ヒドロキシルメルカプタン、アミノメルカプタン、カルボキシルスルフィド、無水スルフィドアシッド、これらの塩、およびこれらの組合せから成る群から選ばれる。適切なメルカプトカルボン酸の例は、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプト琥珀酸、及びこれらの組合せを含むが、これらに限られるものではない。メルカプトカルボン酸の化学的構造を以下に記載するが、この目的は、記載上の目的のみである。しかしながら、本発明の目的のために、メルカプトカルボン酸は、以下の構造のものに限られるものではない。
【0024】
【化3】

【0025】
この化学構造では、Rは、2〜8個の炭素原子を含んで良い。
【0026】
適切なヒドロキシルメルカプタンの例は、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、3,4−ジメチル−7−メルカプト−3,4−ヘプタンジオール、6−メルカプト−2,5−ジメチル−1,2−ヘキサンジオール、6−メルカプト−1,2−ヘキサンジオール、4−メルカプト−1−ブタノール、6−メルカプト−1ヘキサノール、4−メルカプト−1,2−ブタンジオール、2−メルカプト−3−ブタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、及びこれらの組合せを含むが、これらに限られるものではない。ヒドロキシルメルカプタンの化学的構造を以下に記載するが、この目的は、記載上の目的のみである。しかしながら、本発明の目的のために、ヒドロキシルメルカプタンは、以下の構造のものに限られるものではない。
【0027】
【化4】

【0028】
この化学構造では、Rは、3〜9個の炭素原子を含んで良く、そして第2のヒドロキシル基を含んでも良い。
【0029】
記載上の目的のみにより、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールの化学構造を以下に示す。
【0030】
【化5】

【0031】
記載上の目的のみにより、アミノメルカプタンの化学構造を以下に示す。しかしながら、本発明の目的のために、アミノメルカプタンは、以下に示した化学構造には限られない。
【0032】
【化6】

【0033】
この化学構造では、Rは、3〜9個の炭素原子を含んで良い。
【0034】
適切なカルボキシルスルフィドの例は、ヘキシルメルカプトアセテート、イソペンチルメルカプトアセテート、イソプロピルメルカプトアセテート、エチルチオグリコレート、メチルチオグリコレート、及びこれらの組合せを含むが、これらに限られるものではない。
【0035】
記載上の目的のみにより、カルボキシルスルフィドの化学構造を以下に示す。しかしながら、本発明の目的のために、カルボキシルスルフィドは、以下に示した化学構造には限られない。
【0036】
【化7】

【0037】
この化学構造では、Rは、1〜7個の炭素原子を有する如何なる有機部分を含んでも良い。
【0038】
適切なスルフィドアシド(硫化物酸化物)の例は、無水チオジグリコールを含むが、これに限られるものではない。記載上の目的のみにより、無水スルフィドアシッドの化学構造を以下に示す。しかしながら、本発明の目的のために、無水スルフィドアシッドは、以下に示した化学構造には限られない。
【0039】
【化8】

【0040】
この化学構造では、Rは、1〜7個の炭素原子を含んで良い。
【0041】
本発明の方法に戻り、本方法は、更に担体ポリオールを準備する工程を含む。担体ポリオールは、この技術分野で公知の如何なるものであっても良く、そしてポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネイトポリオール、及びこれらの組合せから成る群から選ばれることが好ましい。担体ポリオールは、(重合性モノマーが反応して重合可能なように溶解させる)重合成モノマーの「溶媒」として作用することが好ましい。担体ポリオールは、遊離基開始剤の担体として作用することも好ましい。担体ポリオールは、グラフトポリオール100質量部に対して20〜75質量部の量で使用(準備)されることが好ましく、そして45〜60質量部の量で使用されることがより好ましい。特に適切な担体ポリオールは、BASF Corporation of Wyandotte, MIから、Pluracol(登録商標)の名称で市販されている。
【0042】
本方法は、遊離基を含む遊離基開始剤を準備する工程をも含む。遊離基開始剤は、この技術分野で公知の如何なるものであっても良い。ある実施の形態では、遊離基開始剤は、ペルオキシド、ペルオキシエステル、トリオキシド、テトロオキシド(四酸化物)、アゾ化合物、ポリフェニル炭化水素、ヒドラジン、アルコキシアミン、ニトレート、ニトライト、ジスルフィド、ポリスルフィド、有機金属、及びこれらの組み合わせから成る群から選ばれる。
【0043】
他の実施の形態では、遊離基開始剤はペルオキシドを含む。ペルオキシドは、一般式−OO−を含む。ペルオキシドは、この替わりに一般式:
【0044】
【化9】

【0045】
(但し、R1とR2のそれぞれが、アルキル基、酸素−アルキル基及び酸素−酸素−アルキル基の一つを含み、X1が、エステル基、酸素及びアルキル基の一つを含み、及びX1がエステル基であれば、X2はメチル基を含む)を含んでも良い。ペルオキシドは、モノペルオキシカーボネイト、ペルオキシケタル及びこれらの組み合わせを含むことがより好ましい。
【0046】
更に他の実施の形態では、遊離基開始財はジイミド官能基を有し、すなわち遊離基開始剤は、「アゾ」遊離基開始剤である。この実施の形態では、遊離基開始剤は、Akzo NobelからAMBN-grの商標名で市販されている2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)を含むことが好ましい。遊離基開始剤は、重合性モノマー100質量部に対して、0.1〜3質量部の量で使用(準備)されることが好ましく、0.3〜1質量部の量で使用されることがより好ましい。記載上の目的のみにより、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)の化学構造を以下に示す。
【0047】
【化10】

【0048】
本方法は、担体ポリオールとは異なるマクロマーポリオールを準備する工程を更に含んでも良い。マクロマーポリオールは、この技術分野で公知の如何なるものであっても良く、そしてポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネイトポリオール、及びこれらの組合せから成る群から選ばれることが好ましい。特に適切なマクロマーポリオールは、担体ポリオールと同様に、BASF Corporation of Wyandotte, MIからPluracol(登録商標)の名称で市販されている。マクロマーポリオールは、典型的には、担体ポリオールよりも高い数平均分子量を有するという点で担体ポリオールとは異なる。本方法がマクロマーポリオールを準備する工程を含む場合、マクロマーポリオールは、重合性モノマー100質量部に対して2〜10質量部の量で使用(準備)することが好ましく、そして4〜8質量部の量で使用することがより好ましい。
【0049】
本方法は、更に、(担体ポリオール及びマクロマーポリオールとは異なる)シードポリオールを準備する工程を含んでも良い。シードポリオールは、本発明のグラフトポリオールとは異なるグラフトポリオールであることが好ましい。グラフトポリオールの場合、シードポリオールは、如何なる固体内容物を含んでも良い。シードポリオールは、固体内容物を30〜55パーセント含むことが好ましく、40〜50パーセント含むことがより好ましい。特に適切なシードポリオールは、担体ポリオール及びマクトマーポリオールと同様に、BASF Corporation of Wyandotte, MIから、Pluracol(登録商標)の名称で市販されている。本方法が、シードポリオールを準備する工程を含む場合、シードポリオールは、重合性モノマー100質量部に対して5〜90質量部の量で使用(準備)することが好ましく、10〜40質量部の量で使用することがより好ましい。一実施の形態では、担体ポリオール及びマクロマーポリオールが準備される場合、担体ポリオールとマクロマーポリオールは機能的(官能的)に同等であっても良い。
【0050】
本方法は、更に重合性モノマー、連鎖移動剤、担体ポリオール及び遊離基を含む遊離基開始剤を混合する工程を含む。特定の理論による制限を意図するものではないが、遊離基開始剤は分解して、(一般的には、以下に示すような)少なくとも一つの遊離基を形成すると信じられている。
【0051】
【化11】

【0052】
重合性モノマー、連鎖移動剤、担体ポリオール及び遊離基開始剤は、如何なる順序、如何なる温度、及び如何なる圧力で混合(combine)しても良い。一実施の形態では、重合性モノマー、連鎖移動剤、担体ポリオール及び遊離基開始剤を混合する前に、担体ポリオールと遊離基開始剤との混合が、上述した混合を行う工程で行われる。他の実施の形態では、重合性モノマー、連鎖移動剤、担体ポリオール及び遊離基開始剤を混合する前に、重合性モノマーと連鎖移動剤との混合が、上述した混合を行う工程で行われる。重合性モノマー、連鎖移動剤、担体ポリオール、及び遊離基開始剤は、反応容器内で混合されることが好ましい。反応容器は、如何なる大きさのものであっても良く、そして使用に適切な、この技術分野で公知の如何なるものであっても良い。
【0053】
重合性モノマー、連鎖移動剤、担体ポリオール、及び遊離基開始剤を混合する工程は、好ましくは80℃〜155℃の温度、より好ましくは115℃〜145の温度、及び最も好ましくは120℃〜130℃での混合として定義されることが好ましい。また、混合の工程は、更に20psi未満の圧力、および最も好ましくは大気圧での混合として定義されることが好ましい。重合性モノマー、連鎖移動剤、担体ポリオール、及び遊離基開始剤を混合する時間は、如何なる長さであっても良い。
【0054】
上述したように、本方法がシードポリオール及び/又はマクロマーポリオールを準備する工程を含む場合、本方法は、シードポリオール及び/又はマクロマーポリオール、重合性モノマー、連鎖移動剤、担体ポリオール及び遊離基開始剤を混合する工程を含んでも良い。この場合、シードポリオール及び/又はマクロマーポリオール、重合成モノマー、連鎖移動剤、担体ポリオール及び遊離基開始剤は、如何なる順序、如何なる温度、如何なる圧力、及び如何なる時間(期間)で混合しても良い。
【0055】
一実施の形態では、「リアクターチャージ」が行われ、そして反応器内で、マクロマーポリオールの第1の量、及び担体ポリオールの第1の量が、シードポリーオールと125℃及び大気圧で混合される。この実施の形態では、「モノマーチャージ」も行われ、そして、補助容器内で重合性モノマー及び連鎖移動剤を混合し、そして大気圧で180分に渡って125℃で「リアクターチャージ」の反応器に加えられる。更に、この実施の形態では、「開始剤チャージ」も行われ、そして第2の補助容器内で、第2の量の担体ポリオールが遊離基開始剤と混合され、そして大気圧で198分に渡って、125℃で「リアクターチャージ」の反応器に加えられる。この実施の形態では、「リアクターチャージ」、「モノマーチャージ」及び「開始剤チャージ」は、如何なる順序で形成しても良く、そして形成の後、「モノマーチャージ」及び「開始剤チャージ」を、「リアクターチャージ」を有する反応器に加えることが好ましい。しかしながら、「リアクターチャージ」、「モノマーチャージ」及び「開始剤チャージ」を、一緒に加え、そして任意の順序で混合させても良い。最後に、この実施の形態では、マクロマーポリオールの追加的な量が、125℃、大気圧で、及び5〜100分間に渡って、反応器に挿入(該挿入は、「マクロマー流」で行うことが好ましい。)される。
【0056】
本方法について、重合性モノマー、連鎖移動剤、担体ポリオール、遊離基開始剤を混合した後、本方法は、重合性モノマーと遊離基とを反応させ、重合性モノマーを重合し、そしてグラフトポリオールを形成する工程を含む。特定の理論に制限することを意図するものではないが、上述のように、遊離基開始剤は分解して少なくとも一つの基を形成すると信じられている。特に、遊離基開始剤がジイミド官能基を含む(すなわちアゾ化合物)場合、ジイミド官能基は、以下に示すように、分解して窒素分子(N2)と2個の基を形成すると信じられている。
【0057】
【化12】

【0058】
また、2個の基の内、少なくとも1個が重合性モノマーと反応し、重合性モノマーをラジカライズし、そして以下に示すように重合性モノマーの炭素−炭素二重結合を破壊してラジカライズ(ラジカル化)した重合性モノマーを形成すると信じられている。
【0059】
【化13】

【0060】
次に、ラジカライズした重合性モノマーは、以下に示すように、第2の及び/又は次の重合性モノモマーと反応し、伝播(propagation)によってポリマーを形成すると信じられている。
【0061】
【化14】

【0062】
しかしながら、ポリマーは、如何なる数平均分子量を有しても良く、及び(所望の適用に依存して、この技術分野の当業者による測定で、)2百万ダルトン以上の数平均分子量を有しても良い。
【0063】
伝播の間、連鎖移動剤は、ポリマーの末端に位置する基(ラジカル)と相互作用し、これにより、更なる重合性モノマーが重合することを防止し、そしてポリマーの分子量とサイズを制御すると信じられている。特に、連鎖移動剤が、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールを含む場合、以下に示すように、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールの硫黄−水素結合は均一に開裂し(但し、zは如何なる整数であっても良い)、これにより基(ラジカル)をポリマーから硫黄原子に移動させ、硫黄基(硫黄ラジカル)を形成すると信じられている。
【0064】
【化15】

【0065】
連鎖移動剤が3−メルカプト−1,2−プロパンジオールを含み、そして硫黄基が形成される場合、硫黄基は分解するか、又は第2の硫黄基と反応して、以下に示すように3,3’−ジスルファンジイルジプロパン−1,2−ジオールを形成すると信じられている。
【0066】
【化16】

【0067】
本方法に戻り、本方法はこの技術分野ではストリッピングとして公知の、グラフトポリオールから重合性モノマーを分離する工程を含むことが好ましい。好ましくは、この分離する工程は、真空を適用してグラフトポリオールから重合性モノマーを分離する工程として定義される。しかしながら、この分離する工程は、この技術分野では公知の適切な如何なる方法によってでも行われて良い。
【0068】
循環時間(サイクル時間)について、循環時間は、グラフトポリオールの第1のバッチを形成する反応の開始点から測定して、反応を再度開始してグラフトポリオールの第2のバッチを再度形成することができる時点までを測定した製造時間である。この技術分野の当業者には公知なように、循環時間は、グラフトポリオールを製造するのに使用される工業機械が使用される総合時間としても定義して良い。本発明において、本発明が、グラフトポリオールから重合性モノマーを分離する工程を含む場合、この工程は循環時間に含まれることが好ましい。特に、本発明の連鎖移動剤の使用は、ストリッピング時間を最小限にし、そして循環時間をも最小限にする。
【0069】
本発明は、上述のように、本発明の方法から形成されたポリウレタン製品(14)をも提供する。ポリウレタン製品(14)は、イソシアネート成分と本発明のグラフトポリオールとの反応生成物を含む。ポリウレタン製品(14)は、イソシアネート成分、本発明のグラフトポリオール、及びポリエーテルオール等の追加的なポリオールの反応生成物を含んでも良い。適切な追加的なポリオールの例(この例に制限されるものではない)は、BASF Corporation of Wyandotte, MIからのPluracol(登録商標)TP740及びPluracol(登録商標)GP730を含む。しかしながら、この技術分野では公知の如何なるポリオールも追加的なポリオールとして使用して良いと考えられる。
【0070】
イソシアネート成分は、この技術分野の如何なるイソシアネートを含んでも良い、そして、イソシアネート、ポリイソシアネート、イソシアネートとポリイソシアネートとのビウレット、イソシアネートとポリイソシアネートとのイソシアヌレート、及びこれらの組み合わせに制限されるものでもない。本発明の一実施の形態では、イソシアネート成分は、n−官能価のイソシアネートを含む。この実施の形態では、nは、2〜5の数、より好ましくは2〜4、及び最も好ましくは3〜4の数である。nは整数であって良く、又nは、2〜5の中間値であっても良い。イソシアネート成分は、方芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及びこれらの組み合わせの群から選ばれるイソシアネートを含んでも良い。一実施の形態では、イソシアネート成分は、脂肪族イソシアネートを含む。イソシアネート成分が、脂肪族イソシアネートを含む場合、イソシアネート成分は、変性(改質)多価脂肪族イソシアネート、すなわち脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートの化学反応によって得られた生成物を含んでも良い。例(この例に制限されるものではない)は、ウレア、ビウレア、アロファネート、カーボジイミド、ウレトンイミド、イソシアヌレート、ウレタン基、二量体、三量体、及びこれらの組み合わせを含む。イソシアネート成分は、個別に使用される変性ジイソシアネートを含んでも良く、又はポリオキシアルキレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール、ポリエステルオール、ポリカプロラクトン及びこれらの組み合わせとの反応生成物に使用される変性ジイソシアネートを含んでも良いが、これらに制限されるものではない。
【0071】
この代わりに、イソシアネート成分は、芳香族イソシアネートを含んでも良い。イソシアネート成分が芳香族イソシアネートを含む場合、芳香族イソシアネートは、式R’(NCO)z(但し、R’は、芳香族である多価有機基であり、zは、R’の価数に対応する整数である)に対応するものであって良い。zは少なくとも2であることが好ましい。イソシアネート成分が芳香族イソシアネートを含む場合、イソシアネート成分は、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,4−ジイソシアナートベンゼン、1,3−ジイソシアナート−o−キシレン、1,3−ジイソシアナート−p−キシレン、1,3−ジイソシアナート−m−キシレン、2,4−ジイソシアナート−1−クロロベンゼン、2,4−ジイソシアナート−1−ニトロ−ベンゼン、2,5−ジイソシアナート−1−ニトロベンゼン、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−と2,6−トルエンジイソシアネートの混合物、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1−メトキシ−2,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トリイソシアネート、例えば、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネートポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、及び2,4,6−トルエントリイソシアネート、テトライソシアネート、例えば4,4’−ジメチル−2,2’−5,5’−ジフェニルメタンテトイライソシアネート、トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、これらの対応する異性体混合物、及びこれらの組み合わせを含んでも良いが、これらに制限されるものではない。この代わりに、芳香族イソシアネートは、m−TMXDIと1,1,1−トリメチロールプロパンのトリイソシアネート生成物、トルエンジイソシアネートと1,1,1−トリメチロールプロパンの反応生成物、及びこれらの組み合わせを含んでも良い。
【0072】
イソシアネート成分は、如何なる%NCO含有量及び如何なる粘度を有していても良い。イソシアネート成分は、この技術分野の当業者によって、如何なる量でグラフトポリオールと反応しても良い。好ましくは、イソシアネートと樹脂組成は、イソシアネートインデックス(isocyanate index)が、90〜115、より好ましくは95〜105、及び最も好ましくは98〜102で反応する。
【0073】
グラフトポリオール及び/又はイソシアネート成分は、鎖延長剤、消泡剤、処理添加剤、可塑剤、連鎖停止剤、界面活性剤、粘着促進剤、難燃剤、抗酸化剤、除水剤、染料、紫外線安定剤、充填剤、チキソトロピック剤、シリコン、アミン、遷移金属、触媒、発泡剤、界面活性剤、架橋剤、不活性希釈剤、鎖延長剤、難燃剤、及びこれらの組み合わせから成る群から選ばれる添加剤を含んでも良い。添加剤は、この技術分野の当業者が所望する如何なる量で含まれても良い。
【0074】
一実施の形態では、グラフトポリオールは、1種のシリコン添加剤、2種のアミン添加剤、1種の難燃剤、及び1種のスズ添加剤を含む。この実施の形態では、シリコン添加剤は、GE Silicones of Wilton, CTから、Niax(登録商標) L-620の商標名で入手可能である。追加的に、2種のアミン触媒が、Air Products and Chemicals, Inc. of Allentown, PA, and GE Silicons of Wilton, CTから、DABCO(登録商標) 33LV、Niax(登録商標) A−1の商標名でそれぞれ入手可能である。更に、難燃剤が、Albemarle Corporation of Baton Rouge, LAから、AB195という商標名で入手可能である。更に、スズ添加剤が、Air Products and Chemicals, Inc. of Allentownから T-10の商標名で入手可能である。
【0075】
更なる実施の形態では、グラフトポリオールは、1種のシリコン、1種のアミン添加剤、1種の難燃剤、及び1種のスズ添加剤を含む。この実施の形態では、シリコン添加剤は、Goldschmidt AG, a division of Degussa Corporation of Parsippany, NJから、Silicon Tegostab(登録商標) BF2370の商標名で入手可能である。更に、1種のアミン触媒は、DABCO(登録商標)LVである。更に、難燃剤は、Albemarle Corporation of Baton Rougee, LAから、AB100の商標名で市販されている。更に、スズ添加剤は、T-10である。
【0076】
ポリウレタン製品(14)は、弾力性(フレキシブル)フォームであることが好ましい。弾力性フォームの場合、ポリウレタン製品(14)は、建築及び自動車提供を含む(これらに制限されるものではない)種々の工業で使用されて良い。ポリウレタン製品(14)は、剛性(リジッド)フォームであっても良い。
【0077】
ポリウレタン製品(14)も、上述したように表面(16)を有している。一実施の形態では、図3に示したように、ポリウレタン製品(14)の表面(16)は粗くなく、でこぼこもなく、割れや悪化(劣化)も発生していない。本発明の連鎖移動剤のために、表面(16)は、粗くなること、でこぼこになることに対抗し得るもので、そして割れや悪化の発生に対抗し得るものと信じられている。
【0078】
実施例
(グラフトポリオールである)グラフトポリオール1が、本発明の方法に従い形成される。(比較されるグラフトポリオールである)比較グラフトポリオール1も形成されるが、これは、本発明の連鎖反応剤を使用して形成されたものではない。
【0079】
特に、グラフトポリオール1を形成するために、「モノマーチャージ」が形成され、そしてこれは、約275グラムのアクリロニトリルと約550グラムのスチレン(これらは2種の重合性モノマーとして作用する)、及び約8グラムの(連鎖移動剤としての)3−メルカプト−1,2−プロパンジオールを含んでおり、表1に示したように第1の補助容器内で混合させた。更に、「開始剤チャージ」も形成され、そしてこれは、約490グラムの担体ポリオールと約4グラムの遊離基開始剤を含み、混合し、そして表1に示したように第2補助容器内に加えた。更に、「リアクターチャージ」が形成され、そしてこれは、表1に示したように、約62グラムのマクロマーポリオール、約460グラム(追加)の担体ポリオール、及び約154グラムのシードポリオールを含んでおり、そして反応器に加えられ、125℃に加熱され、そして300RPMの速度で攪拌した。「リアクターチャージ」を形成した後、「モノマーチャージ」と「開始剤チャージ」を反応器内の「リアクターチャージ」に加え、125℃に加熱し、そして300RPMの速度で攪拌し、グラフトポリオール1の形成の進行を開始させた。1時間後、攪拌速度を、400RPMに増し、グラフトポリオール1の形成をなお進行させた。1時間40分後、攪拌速度を500RPMに増し、グラフトポリオール1の形成を終了させた。グラフトポリオール1を形成した後、グラフトポリオール1を30分、真空ストリップし、グラフトポリオール1からアクリロニトリルとスチレンの残留量を分離した。
【0080】
比較グラフトポリオールを形成するために、「モノマーチャージ」、「開始剤チャージ」、「リアクターチャージ」及び「マクロマー流」が同じ量で使用され、そしてそれぞれを上述のように同様にして、グラフトポリオール1を形成するために使用した。しかしながら、比較グラフトポリオール1を形成するために、ポリオール1を形成するために使用された「モノマーチャージ」中の連鎖移動剤としての3−メルカプト−1,2−プロパンジオールを、表1に示したように、1−ドデカンジオールに替えた。更に、比較グラフトポリオール1も30分、真空ストリップし、比較グラフトポリオール1からアクリロニトリルとスチレンの残留量を分離した。表1中、他に記載がなければ、全ての成分はグラムで記載されている。
【0081】
【表1】

【0082】
スチレンとアクリロニトリルは、Sigma Aldrich Corporation of St. Louis, MOから市販されている。
【0083】
3−メルカプト−1,2−プロパンジオールは、Sigma Aldrich Corporation of St. Louis, MOから、1-thioglycerolの商標名で市販されている。
【0084】
1−ドデカンチオールは、Sigma Aldrich Corporation of St. Louis, MOから市販されている。
【0085】
BASF Corporation of Wyandotte, MIから市販されている担体ポリオールは、グレイセリン−開始プロピレンオキシド、エチレンオキシドアダクトであり、そしてヒドロキシル価が56で、数平均分子量が約2000g/molである。
【0086】
遊離基開始剤は、Akzo Nobel of Arnhem, Netherlands から、AMBN-gr の商標名で市販されており、そして2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)を含む。
【0087】
BASF Corporation of Wyandotte, MIから市販されているマクロマーポリオールは、ソルビトール開始プロピレンオキシド、エチレンオキシドアダクトから誘導され、そしてヒドロキシル価が18で、数平均分子量が約6000g/molである。
【0088】
BASF Corporation of Wyandotte, MIから市販されているシードポリオールは、25℃で粘度が4,500センチポアズの担体ポリオール中の43.5質量%アクリロニトリル/スチレン分散物である。
【0089】
形成の後、グラフトポリオール1及び比較グラフトポリオール1を、ポリウレタンを形成するために使用した。特に、グラフトポリオール1を製品1を形成するために使用した。比較グラフトポリオール1を、比較製品1を形成するために使用した。
【0090】
製品1を形成するために、以下の表2に示したように、247.5グラムのグラフトポリオール1を52.5グラムのポリエーテルオール1、179グラムのイソシアネート、及び一連の添加剤を混合した。グラフトポリオール1、ポリエーテルオール1、イソシアネート、及び添加剤を1500RPMで混合(攪拌)し、そしてカップに注ぎ、硬化させて製品1を形成した。硬化の後、製品1を、割れ/悪化について目視評価した。
【0091】
比較製品1を形成するために、以下の表2に示したように、247.5グラムの比較グラフトポリオール1を52.5グラムのポリエーテルオール1、179グラムのイソシアネート、及び一連の添加物と混合した。比較グラフトポリオール1、ポリエーテルオール1、イソシアネート、及び添加剤を1500RPMで混合(攪拌)し、そしてカップに注ぎ、硬化させて比較製品1を形成した。硬化の後、比較製品1を、割れ/悪化について目視評価した。
【0092】
【表2】

【0093】
ポリエーテルオール1はBASF Corporation of Wyandotte, MIから、Pluracol(登録商標) GP730の商標名で市販されており、そしてヒドロキシル価が229.5mgKOH/gで、公称(nominal)官能価が2.99である。
【0094】
シリコン添加剤1は、Goldschmidt AG, a division of Degussa Corporation of Parsippany, NJから、Silicon Tegostab(登録商標) BF2370の商標名で市販されている。
【0095】
アミン添加剤1は、Air Products and Chemicals, Inc. of Allentown, PAから、DABCO(登録商標) 33LVの商標名で市販されている。
【0096】
難燃剤が、Albemarle Corporation of Baton Rouge, LAから、AB100という商標名で市販されている。
【0097】
スズ添加剤1が、Air Products and Chemicals, Inc. of Allentownから T-10の商標名で市販されている。
【0098】
イソシアネートは、トルエンジイソシアネートであり、そしてBASF Corporation of Wyandotte, MIから、Lupranate(登録商標) T-80の商標名で市販されている。
【0099】
本発明について、イソシアネートインデックスは、公知のように、グラフトポリオール・ポリエーテルオールの使用に依存して、イソシアネート中のイソシアネート(NCO)基の数の、グラフトポリオール1、比較グラフトポリオール1、及び/又はポリエーテルオール1中のヒドロキシル(OH)基の数に対する割合の100倍として定義される。
【0100】
目視評価の結果、製品1は、割れ/悪化を示すことがなかった。これとは逆に、比較製品1は、目視評価の結果、割れ/悪化を示した。特に、本発明の目的のために、割れ/悪化は、比較製品1の破断(ブレーキング)、部分への分離及び/又は長さ方向の分裂を含む。製品1は、割れ/悪化を示さなかったので、建築及び自動車製造の商業的適用に使用するのに適切であり、一方、比較製品1は不適切である。
【0101】
本発明を例示として説明した。使用した技術用語は、本来の意味としてものものであり、そして制限することは意図されていない。上述した記載により、多くの修正と変形が明らかに可能である。これらは、本願の記載に従い、本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0102】
10 ポリウレタン製品
12 表面
14 ポリウレタン製品
16 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a)重合性モノマーを準備する工程、
b)以下の、
1)3個〜9個の炭素原子
2)少なくとも1種のチオール部分、及び
3)ヒドロキシル部分、アミン部分、及びカルボキシル部分から選ばれる少なくとも1種の親水性部分、
を含む連鎖移動剤を準備する工程、
c)担体ポリオールを準備する工程、
d)遊離基を含む遊離基開始剤を準備する工程、
e)重合性モノマー、連鎖移動剤、担体ポリオール及び遊離基を含む遊離基開始剤を混合する工程、及び
f)重合性モノマーと遊離基とを反応させ、重合性モノマーを重合し、そしてグラフトポリオールを形成する工程、
を含むことを特徴とするグラフトポリオールを形成する方法。
【請求項2】
連鎖移動剤が、メルカプトカルボン酸、ヒドロキシルメルカプタン、アミノメルカプタン、カルボキシルスルフィド、無水スルフィドアシッド、これらの塩、およびこれらの組合せから成る群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
連鎖移動剤が、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
重合性モノマーが、スチレン、アクリル酸とメタクリル酸のエステル、エチレン不飽和のニトリル及びアミド、及びこれらの組合せから成る群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
担体ポリオールが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネイトポリオール、及びこれらの組合せから成る群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
遊離基開始剤が、アゾ官能基を有していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
担体ポリオールが、グラフトポリオール100質量部に対して20〜70質量部の量で準備され、重合性モノマーが、グラフトポリオール100質量部に対して30〜65質量部の量で準備され、及び遊離基開始剤が重合性モノマー100質量部に対して0.2〜1質量部の量で準備されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
連鎖移動剤が、重合性モノマー100質量部に対して0.4〜2質量部の量で準備されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
重合性モノマー、連鎖移動剤、担体ポリオール、及び遊離基開始剤を混合する工程が、更に115℃〜150℃の温度での混合として定義されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
重合性モノマー、連鎖移動剤、担体ポリオール及び遊離基開始剤を混合する前に、担体ポリオールと遊離基開始剤との混合が、前記混合する工程で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
更に、重合性モノマー、連鎖移動剤、担体ポリオール及び遊離基開始剤を混合する前に、重合性モノマーと連鎖移動剤との混合が、前記混合する工程で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
更に、担体ポリオールとは異なるマクロマーポリオールを準備する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
更に、担体ポリオールとは異なるシードポリオールを準備する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
更に、グラフトポリオールから重合性モノマーを分離する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
連鎖移動剤が、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールであり、重合性モノマーが、スチレンとアクリロニトリルを含み、担体ポリオールが、ポリエーテルポリオールを含み、及び遊離基開始剤がアゾ官能基を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
更に、マクロマポリオール及びシードポリオールを準備する工程を含み、
前記マクロマポリオールは、担体ポリオール及びシードポリオールとは異なり、及びシードポリオールは、マクロマポリオール及び担体ポリオールとは異なることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
イソシアネート成分とグラフトポリオールの反応生成物を含むポリウレタン製品であって、
前記グラフトポリオールは、以下の工程:
a)重合性モノマーを準備する工程、
b)以下の、
1)3個〜9個の炭素原子
2)少なくとも1種のチオール部分、及び
3)ヒドロキシル部分、アミン部分、及びカルボキシル部分から選ばれる少なくとも1種の親水性部分、
を含む連鎖移動剤を準備する工程、
c)担体ポリオールを準備する工程、
d)遊離基を含む遊離基開始剤を準備する工程、
e)前記重合性モノマー、前記連鎖移動剤、前記担体ポリオール及び前記遊離基を含む遊離基開始剤を混合する工程、及び
f)前記重合性モノマーと前記遊離基とを反応させ、前記重合性モノマーを重合し、そして前記グラフトポリオールを形成する工程、
を含む方法で形成されることを特徴とするポリウレタン製品。
【請求項18】
重合性モノマーが、前記グラフトポリオール100質量部に対して30〜65質量部の量で準備され、前記連鎖移動剤が、前記重合性モノマー100質量部に対して0.4〜2質量部の量で準備され、前記担体ポリオールが、前記グラフトポリオール100質量部に対して20〜70質量部の量で準備され、及び前記遊離基開始剤が、前記重合性モノマー100質量部に対して0.2〜1質量部の量で準備されることを特徴とする請求項17に記載のポリウレタン製品。
【請求項19】
フォームを含むことを特徴とする請求項17に記載のポリウレタン製品。
【請求項20】
前記イソシアネート成分と前記グラフトポリオールを反応させる工程で、更に、前記イソシアネート成分と前記グラフトポリオールを95〜130のイソシアネートインデックスで反応させることを特徴とする請求項17に記載のポリウレタン製品。
【請求項21】
以下の工程:
a)重合性モノマーを準備する工程、
b)以下の、
1)3個〜9個の炭素原子
2)少なくとも1種のチオール部分、及び
3)ヒドロキシル部分、アミン部分、及びカルボキシル部分から選ばれる少なくとも1種の親水性部分、
を含む連鎖移動剤を準備する工程、
c)担体ポリオールを準備する工程、
d)遊離基を含む遊離基開始剤を準備する工程、
e)前記重合性モノマー、前記連鎖移動剤、前記担体ポリオール及び前記遊離基を含む遊離基開始剤を混合する工程、及び
f)前記重合性モノマーと前記遊離基とを反応させ、前記重合性モノマーを重合し、そして前記グラフトポリオールを形成する工程、
を含む方法から製造されることを特徴とするグラフトポリオール。
【請求項22】
前記連鎖移動剤が、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールであり、前記重合性モノマーがスチレン及びアクリロニトリルを含み、前記担体ポリオールが、ポリエーテルポリオールを含み、及び前記遊離基開始剤がジアミンを含むことを特徴とする請求項21に記載のグラフトポリオール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−503743(P2010−503743A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527831(P2009−527831)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059691
【国際公開番号】WO2008/031884
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】