説明

グラブボックス

【課題】コストの高騰や部品紛失の虞れを招くことなく保守点検用開口部を塞いで見栄えの向上を図る。
【解決手段】助手席側ロアパネル2に凹設された収納室3と、上部開口のバケット形状を成し且つその下端部を中心として室内側へ傾動し得るよう前記収納室3に収納されたボックス本体4とを備えたグラブボックス1に関し、前記収納室3の奥側壁面部7に保守点検用開口部8を設けると共に、該保守点検用開口部8を塞ぐカバー部材9をインテグラルヒンジ10を介して開閉し得るよう前記助手席側ロアパネル2に一体成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラブボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より自動車のインストルメントパネルの助手席側には、小物入れとしてグラブボックスが設けられており、例えば、図4に示す如く、この種のグラブボックス1は、助手席側ロアパネル2に凹設された収納室3と、上部開口のバケット形状を成し且つその下端部を中心として室内側へ傾動し得るよう前記収納室3に収納されるようにしたボックス本体4とにより構成されるようになっている。
【0003】
ここで、収納室3の両側面にガイドスリット5が穿設されていると共に、該ガイドスリット5内を移動するストッパピン6がボックス本体4の両側面に外向きに突設されており、このストッパピン6が前記ガイドスリット5の手前側縁部に掛止されることでボックス本体4の全開位置が規定されるようになっている。
【0004】
そして、このようなグラブボックス1にあっては、前記収納室3の奥側壁面部7に保守点検用開口部8が開口されており、該保守点検用開口部8を通して室内側から助手席側ロアパネル2の裏側(車両前方側)の機器類の保守点検を行い得るようにしてある。
【0005】
例えば、助手席側ロアパネル2の裏側(車両前方側)にエアコンのフィルタユニットが配置されている場合には、該フィルタユニットに対するフィルタの交換作業を前記保守点検用開口部8を通して行うようにしており、この際には、収納室3の両側面を撓ませてガイドスリット5からストッパピン6を抜脱し、ボックス本体4の全開位置の規定を解除して該ボックス本体4を収納室3内から室内側に大きく傾動させ、ボックス本体4が作業の邪魔にならないようにする(図4参照)。
【0006】
尚、この種のグラブボックス1に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【特許文献1】特開2001−146914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した如き従来構造においては、収納室3の奥側壁面部7に保守点検用開口部8が開口したままの状態となってしまうため、ボックス本体4を全開位置まで開けたような場合に、該ボックス本体4の奥側上側端と収納室3の天井面との間にできる隙間から保守点検用開口部8の上側が見えてしまい、この保守点検用開口部8を通してエアコンのフィルタユニット等の機器類や配線等が見えることで見栄えが著しく低下してしまう虞れがあった。
【0008】
このため、保守点検用開口部8を塞ぐためのカバー部材を別途設け、該カバー部材を保守点検の作業の度に着脱することも検討されているが、このようにしてしまうと、部品点数が増えてコストの高騰を招いてしまうことになり、また、作業中にカバー部材を助手席側ロアパネル2の裏側に落とす等して紛失してしまう懸念もあった。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、コストの高騰や部品紛失の虞れを招くことなく保守点検用開口部を塞いで見栄えの向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、助手席側ロアパネルに凹設された収納室と、上部開口のバケット形状を成し且つその下端部を中心として室内側へ傾動し得るよう前記収納室に収納されたボックス本体とを備えたグラブボックスにおいて、前記収納室の奥側壁面部に保守点検用開口部を設けると共に、該保守点検用開口部を塞ぐカバー部材をインテグラルヒンジを介して開閉し得るよう前記助手席側ロアパネルに一体成形したことを特徴とするものである。
【0011】
而して、助手席側ロアパネルに一体成形されたカバー部材により保守点検用開口部を塞いでおけば、ボックス本体を全開位置まで開けても、該ボックス本体の奥側上側端と収納室の天井面との間にできる隙間から見える保守点検用開口部の上側はカバー部材で塞がれた状態にあるので、助手席側ロアパネルの裏側(車両前方側)にあるエアコンのフィルタユニット等の機器類や配線等が室内側から見えてしまう心配がなくなる。
【0012】
しかも、このカバー部材は助手席側ロアパネルの成形時に収納室と一緒に一体成形されるようになっていて部品点数の増加を招くことがないため、カバー部材を別途設けた場合の如きコストの高騰が未然に回避されることになり、また、カバー部材を紛失してしまうような懸念もなくなる。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明のグラブボックスによれば、助手席側ロアパネルに一体成形されたカバー部材により保守点検用開口部を塞ぐことができるので、ボックス本体を全開位置まで開けた時に助手席側ロアパネルの裏側(車両前方側)にある機器類や配線等が室内側から見えないように確実に隠すことができて見栄えの大幅な向上を図ることができ、しかも、カバー部材を別途設けた場合の如きコストの高騰や部品紛失の虞れを未然に回避することもできるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1及び図2は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0016】
図1及び図2に示す如く、本形態例のグラブボックス1においては、前述した図4の場合と同様に、助手席側ロアパネル2に凹設された収納室3と、上部開口のバケット形状を成し且つその下端部を中心として室内側(図1中の右側)へ傾動し得るよう前記収納室3に収納されたボックス本体4とを備えたグラブボックス1に関し、前記収納室3の奥側壁面部7に保守点検用開口部8を設けると共に、該保守点検用開口部8を塞ぐカバー部材9をインテグラルヒンジ10を介して開閉し得るよう前記助手席側ロアパネル2に一体成形している。
【0017】
ここで、前記カバー部材9は、その上端部における幅方向二箇所(図2参照)をインテグラルヒンジ10として助手席側ロアパネル2側と繋がっており、下端部側を室内側に向かって引き開けられるようにしてある。
【0018】
尚、助手席側ロアパネル2の成形時にあっては、カバー部材9を図1中に二点鎖線で示している室内側へ約60゜程度開いた傾動位置として成形を行うようになっており、前記カバー部材9を閉じた際には、その下端部が保守点検用開口部8の下端よりも下方まで延在して互いに重なり合うようになっている。
【0019】
そして、このカバー部材9の下端部における幅方向二箇所(図2参照)には、その閉じ方向(車両前方側:図1中の左側)に向け突出して下向きに鉤爪形状を成す掛止爪11が一体成形されており、また、これら各掛止爪11が突き当たる収納室3の奥側壁面部7には、前記掛止爪11を差し込んで掛止せしめるための掛止孔12が開口されている。
【0020】
また、前記保守点検用開口部8の下端における幅方向中央には、前記掛止爪11の掛止状態を解除させるべくカバー部材9の下端部を親指等で引き起こし得るよう操作孔13が下向きに切欠き形成されている(図2参照)。
【0021】
尚、図1中における符号14はボックス本体4の下端部の傾動中心を成すように助手席側ロアパネル2側の下端部に形成された傾動軸、15は該傾動軸14に対し傾動自在に係合し得るようボックス本体4の下端部に形成された把持部を示す。
【0022】
而して、助手席側ロアパネル2に一体成形されたカバー部材9により保守点検用開口部8を塞いでおけば、ボックス本体4を全開位置まで開けても、該ボックス本体4の奥側上側端と収納室3の天井面との間にできる隙間から見える保守点検用開口部8の上側はカバー部材9で塞がれた状態にあるので、助手席側ロアパネル2の裏側(車両前方側)にあるエアコンのフィルタユニット等の機器類や配線等が室内側から見えてしまう心配がなくなる。
【0023】
しかも、このカバー部材9は助手席側ロアパネル2の成形時に収納室3と一緒に一体成形されるようになっていて部品点数の増加を招くことがないため、カバー部材9を別途設けた場合の如きコストの高騰が未然に回避されることになり、また、カバー部材9を紛失してしまうような懸念もなくなる。
尚、インテグラルヒンジ10は、カバー部材9の上端部における幅方向二箇所だけではなく、カバー部材9の上端部全幅に設けるようにしても良く、このようにすれば、スリット16(図2参照)が形成されなくなって見栄えが更に向上されることになる。
【0024】
また、保守点検用開口部8を通して室内側から助手席側ロアパネル2の裏側(車両前方側)の機器類の保守点検を行う際には、ボックス本体4の全開位置の規定を解除して該ボックス本体4を収納室3内から室内側に大きく傾動させ、カバー部材9を開けて保守点検用開口部8を開口させる必要があるが、この際、親指等を操作孔13に挿し入れてカバー部材9の下端部を少し押し上げつつ引き起こせば、掛止爪11と掛止孔12との掛止状態が簡単に解除されてカバー部材9が開くことになり、しかも、このカバー部材9は、もともと室内側へ開いた状態で成形されているため、掛止爪11と掛止孔12との掛止状態が解除されると直ちに室内側へ開いた状態に復帰することになる。
【0025】
以上に述べた通り、本形態例によれば、助手席側ロアパネル2に一体成形されたカバー部材9により保守点検用開口部8を塞ぐことができるので、ボックス本体4を全開位置まで開けた時に助手席側ロアパネル2の裏側(車両前方側)にある機器類や配線等が室内側から見えないように確実に隠すことができて見栄えの大幅な向上を図ることができ、しかも、カバー部材9を別途設けた場合の如きコストの高騰や部品紛失の虞れを未然に回避することもできる。
【0026】
また、特に本形態例においては、カバー部材9の下端部に掛止爪11を一体形成し且つ収納室3の奥側壁面部7に掛止孔12を開口しているので、カバー部材9を閉じた状態に保持するためのロック機構も助手席側ロアパネル2の成形時に一緒に一体成形されることになるため、この種のロック機構を別途部品を新設して構成するよりもコストを削減することができ、また、その製作に要する手間も著しく省くことができる。
【0027】
更に、助手席側ロアパネル2の成形段階からカバー部材9を室内側へ開いた状態としておけば、カバー部材9の閉じ状態を解除した時に該カバー部材9を直ちに室内側へ開いた状態に復帰させることができるので、エアコンのフィルタ交換等といった機器類の保守点検を作業性良く行うことができる。
【0028】
また、カバー部材9の上端部にインテグラルヒンジ10を配置して下端部側を室内側に向かって引き開けられるようにした構成によれば、カバー部材9を開操作するための操作孔13が保守点検用開口部8の下端側に配置されることになり、ボックス本体4を全開位置まで開けた際に該ボックス本体4の奥側上側端と収納室3の天井面との間にできる隙間から操作孔13が見えてしまう虞れを未然に回避することができる。
【0029】
更に付言すれば、図1から明らかなように、カバー部材9の上端部にインテグラルヒンジ10を設定し、そのカバー部材9を室内側へ開いた状態として助手席側ロアパネル2を成形するようにすれば、図1中のA−B方向に一対の成形型を抜き出すことで容易にカバー部材9を助手席側ロアパネル2に一体成形することができるという利点もある。
【0030】
即ち、一般的なグラブボックス1の収納部を成す収納室3の形状からすると、助手席側ロアパネル2の室内側の成形型は、収納室3の底面の傾斜に沿うような図1中の右下がりのA方向へ抜き出されることになるため、図1中のPで示す型割線を入れて型抜きを行えば、ここに図示している形状のまま支障なく一体成形を行うことができると共に、カバー部材9の掛止爪11がアンダーカット形状とならず、スライド型等を用いずに安価に成形することができる。
【0031】
一方、図3に示す如く、前記カバー部材9は、その下端部にインテグラルヒンジ10を設定し、上端部側を室内側に向かって引き開けられるように構成することも可能であり、このようにした場合、掛止爪11の上面(カバー部材9を閉じた状態で上を向く面)と面一になるようにカバー部材9の先端をカットオフしない限り室内側の成形型の型抜きが困難となって、該カバー部材9を閉じた際に掛止孔12の上端部を良好に隠せなくなる虞れがあり、また、カバー部材9を開操作するための操作孔13も保守点検用開口部8の上端側に配置せざるを得なくなるため、図1及び図2のようにカバー部材9の上端側にインテグラルヒンジ10を設定した場合よりも見栄えの面で多少難があるものと言えるが、このようにインテグラルヒンジ10をカバー部材9の下端部に設けても、上端部に設けたものと同様の作用効果を奏することができる。
【0032】
尚、本発明のグラブボックスは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1のカバー部材の詳細を示す正面図である。
【図3】本発明の別の形態例を示す断面図である。
【図4】従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 グラブボックス
2 助手席側ロアパネル
3 収納室
4 ボックス本体
7 奥側壁面部
8 保守点検用開口部
9 カバー部材
10 インテグラルヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
助手席側ロアパネルに凹設された収納室と、上部開口のバケット形状を成し且つその下端部を中心として室内側へ傾動し得るよう前記収納室に収納されたボックス本体とを備えたグラブボックスにおいて、前記収納室の奥側壁面部に保守点検用開口部を設けると共に、該保守点検用開口部を塞ぐカバー部材をインテグラルヒンジを介して開閉し得るよう前記助手席側ロアパネルに一体成形したことを特徴とするグラブボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−184118(P2008−184118A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21216(P2007−21216)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】