説明

グラム陰性細菌由来のトランスフェリン結合タンパク質およびHsfを含んでなるワクチン組成物

本発明は、グラム陰性細菌感染の予防または治療を目的とする免疫原性組成物およびワクチンに関する。本発明の免疫原性組成物は、トランスフェリン結合タンパク質およびHsfを含んでなるが、これら2つの抗原の併用は相乗的に作用して、血清殺菌性アッセイにおいて高活性を有する抗体を産生することが明らかになった。この抗原の併用は、髄膜炎菌、淋菌、モラクセラ・カタラーリスおよびインフルエンザ菌に対するワクチンにおいて使用するために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラム陰性細菌由来の免疫原性組成物およびワクチン、その製造、ならびに医学におけるそうした組成物の使用の分野に関する。より詳細には、本発明はトランスフェリン結合タンパク質およびHsfをともに含んでなるワクチン組成物に関する。これら2つの抗原の共存は、より高レベルの殺菌抗体の産生をもたらす。
【背景技術】
【0002】
グラム陰性細菌はヒトの数多くの病態の原因となる病原体であって、このような細菌の多くに対して効力を有するワクチンを開発する必要がある。とりわけ、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ライム病菌(Borrelia burgdorferi)、マルタ熱菌(Brucella melitensis)、Brucella ovis、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、大腸菌(Esherichia coli)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、レジオネラ・ニューモフィラ/在郷軍人病菌(Legionella pneumophila)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびエルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)は、ワクチン接種によって治療できる可能性のある病態を引き起こすグラム陰性細菌である。
【0003】
淋菌は、1年間に6200万人の発病が推定される、世界で最も多く報告される性感染症の1つである淋病の病原体である(Gerbase et al 1998 Lancet 351; (Suppl 3) 2-4)。淋病の臨床症状は、尿生殖路、咽喉もしくは直腸の粘膜の炎症、および新生児の眼の感染症を包含する。女性における上行性の淋菌感染は、不妊、子宮外妊娠、慢性骨盤内炎症性疾患、および卵管卵巣膿瘍形成をもたらす可能性がある。敗血症、関節炎、心内膜炎および髄膜炎は、悪化した淋病に伴っておこる。
【0004】
抗生物質耐性を有する多数の淋菌菌株が、罹患率の増加および淋病に伴う合併症の増加の一因となっている。抗生物質による淋病治療に代わりうる魅力的な方法としては、ワクチン接種による淋病の予防が考えられる。淋菌感染に対するワクチンはこれまでのところ存在しない。
【0005】
髄膜炎菌は特に子供や若年成人には重大な病原体である。敗血症および髄膜炎は侵襲性髄膜炎菌性疾患(IMD)の中でもっとも生命を脅かす病態である。この疾患は、その罹患率および死亡率の高さから、世界的な健康上の問題となっている。
【0006】
13群の髄膜炎菌血清群が、莢膜多糖における抗原性の相違に基づいて同定されているが、もっとも一般的なものはA、BおよびCであって、これらが世界中の疾患の90%の原因となっている。血清群Bは、ラテンアメリカのいくつかの国、米国および欧州においてもっとも多く見られる髄膜炎菌性疾患の原因である。
【0007】
血清群A、C、WおよびYの莢膜多糖に基づくワクチンがすでに開発され、髄膜炎菌性疾患の発生を抑えることが示されている(Peltola et al 1985 Pediatrics 76; 91-96)。しかしながら、血清群Bは免疫原性が弱く、主としてIgMアイソタイプの過渡的な免疫応答しか誘導しない(Ala’Aldeen D and Cartwright K 1996, J. Infect. 33; 153-157)。したがって、ほとんどの温帯の国々において疾患の大部分の原因となっている血清群Bの髄膜炎菌に対して現在利用できる、広範に有効なワクチンは存在しない。欧州、オーストラリアおよび米国において主として5歳未満の子供に血清群Bによる疾患の発生が増加しつつあるため、これは特に問題である。血清群B髄膜炎菌に対するワクチンの開発は、その莢膜多糖がヒト神経細胞接着分子と免疫学的に類似しているために免疫原性が弱いので、特に困難となる。したがって、ワクチン製造の戦略は、髄膜炎菌外膜の表面露出構造に全力を集中したが、菌株間で上記抗原が著しく変化に富むため、阻まれた。
【0008】
さらなる開発によって、細菌膜の正常な成分を構成する多数のタンパク質を含有する、外膜小胞からなるワクチンが採用されるに至っている。これらのうち1つは、髄膜炎菌血清群BおよびCに対するVA-MENGOC-BC(登録商標)キューバワクチンである(Rodriguez et al 1999 Mem Inst. Oswaldo Cruz, Rio de Janeiro 94; 433-440)。このワクチンは、キューバにおける、莢膜多糖ACワクチンによる予防接種プログラムによっては無くすことのできなかった侵襲性髄膜炎菌性疾患の発生に対抗できるようにデザインされた。流行している血清群はBおよびCであるが、VA-MENGOC-BC(登録商標)ワクチンは、髄膜炎菌血清群Bの菌株に対して83%の推定ワクチン効率で、発生を抑制することに成功した(Sierra et al 1990 In Neisseria, Walter Gruyter, Berlin, m. Atchman et al (eds) p 129-134, Sierra et al 1991, NIPH Ann 14; 195-210)。このワクチンはある特定の発生に対して有効であったが、誘導された免疫応答は他の髄膜炎菌菌株に対しては感染防御しないと考えられる。
【0009】
ラテンアメリカにおいて同種および異種の血清群B髄膜炎菌菌株により引き起こされた流行時に実施された、その後の有効性評価研究は、年長の小児および成人ではある程度の有効性を示したが、それより感染の危険の大きい年少の小児ではその有効性は著しく低かった(Milagres et al 1994, Infect. Immun. 62; 4419-4424)。そのようなワクチンが英国のように多くの菌株による地方病のある国々ではどれほど有効であるか疑わしい。異種菌株に対する免疫原性に関する研究は、特に乳幼児においては、限定された交差反応性血清殺菌活性しか示さなかった(Tappero et al 1999, JAMA 281; 1520-1527)。
【0010】
もう一つの外膜小胞ワクチンは、北欧で流行している菌株に典型的な血清型Bアイソタイプを用いてノルウェーで開発された(Fredriksen et al 1991, NIPH Ann, 14; 67-80)。このワクチンは臨床試験でテストされ、29ヶ月後に57%の予防効果があることが明らかになった(Bjune et al 1991, Lancet, 338; 1093-1096)。
【0011】
しかしながら、外膜小胞をワクチンに使用することはいくつかの問題を伴う。たとえば外膜小胞は毒性のあるリポ多糖を含有し、さらに菌株特異的な主要抗原または変異して発現される主要抗原を含有する可能性がある。外膜小胞製剤ワクチンの問題点の一部を克服するために使用できるいくつかの方法が記載されている。WO01/09350は、たとえば毒性を低下させ、外膜小胞に存在する抗原を修飾することによって、上記の問題の一部に対処する方法を記載する。
【0012】
現在使用できる抗髄膜炎菌ワクチンには様々な問題が存在する。タンパク質に基づく外膜ワクチンは、ほんのわずかの菌株に対してしか特異的でなく有効とならない傾向がある。多糖ワクチンも、とりわけ血清群Bに対しては、弱く短い免疫応答を誘導する傾向があるため、最適状態には及ばない(Lepow et al 1986; Peltola 1998, Pediatrics 76; 91-96)。
【0013】
ナイセリア属細菌感染症は、淋菌の場合にはワクチンが利用できず、髄膜炎菌の場合には、異なる菌株に対して感染防御する効力および能力の限られたワクチンしか利用できないという重大な医療上の問題を示す。明らかに、現在利用可能なワクチンの有効性に改良を加え、広範囲の菌株に対する予防を可能にする、ナイセリア属細菌感染症に対する優れたワクチンを開発する必要がある。
【発明の開示】
【0014】
本発明は、抗原を免疫原性組成物もしくはワクチン中で併用したときに、別々に投与されたときにその抗原によって誘導されるよりも高い力価の殺菌抗体を誘導することができるような、抗原の併用に関する。抗原の併用が相乗的に高い力価の殺菌抗体をもたらすことが好ましい。殺菌抗体はワクチン候補の効力を厳密に反映するため、ワクチン中のTbpおよびHsfの併用は、非常に効果的なワクチンを与えることになる。本発明のもう一つの利点は、TbpおよびHsfという2抗原の併用によって、より広範囲の菌株に対する予防も可能になるという点である。
【0015】
本発明は、トランスフェリン結合タンパク質およびHsf様タンパク質、もしくはそれらの抗原断片を含んでなる免疫原性組成物に関する。これらのタンパク質は分離され、または好ましくは、少なくとも30%、40%、より好ましくは50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは99%の純度まで精製され、あるいは他の抗原との混合物中で濃縮される。トランスフェリン結合タンパク質およびHsf様タンパク質は、同一の、または異なるグラム陰性細菌菌株から分離され、またはそれに由来することができる。
【0016】
「分離する」とは、当該タンパク質の天然の環境から人の手によって切り離して取りだすことである。「精製する」とは、抗原を本発明の免疫原性組成物の他の成分と混合する前に、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは99%の純度まで不純物を除いて純粋にすることである。
【0017】
「〜に由来する」とは、タンパク質をコードする遺伝子がある特定の細菌菌株を起源とすること、またはタンパク質がある特定の細菌菌株から精製されたことを意味する。したがって「〜に由来する」は、タンパク質をコードする遺伝子が指定された細菌を起源とする場合、別の発現系で作製された組換えタンパク質を包含するものである。
【0018】
併用したとき、TbpおよびHsfは有利に、好ましくは相乗的に相互作用して、殺菌活性(たとえば血清殺菌アッセイすなわちSBAによって測定される)に関してより高い、好ましくは個々の抗体によって誘導される応答を相加したよりも高い、さらに好ましくは少なくとも1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍高い、もっとも好ましくは10倍以上高い免疫応答を誘導することが示された。TbpおよびHsfの両者をワクチンに加えることは、強力な殺菌性免疫応答を誘導すること、および多数の菌株に対する予防を可能にすることにおいて、現在利用できるワクチンにまさる多大な利点があると思われる。
【0019】
本発明の1つの実施形態は、トランスフェリン結合タンパク質およびHsf様タンパク質の両方を含んでなる免疫原性組成物である。免疫原性組成物は、宿主に投与されたときに免疫応答を生じる能力を有する少なくとも1つの抗原を含んでなる組成物である。TbpおよびHsf様タンパク質は、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、インフルエンザ菌、ボルデテラ属、ナイセリア属(血清群A, B, C, W135またはYとされる髄膜炎菌、および淋菌を包含する)を含めたグラム陰性細菌のいかなる菌株からも、または前記のグラム陰性細菌のいずれからも得ることができる。本発明は、免疫原性組成物中のTbpおよびHsf様タンパク質がグラム陰性細菌の同一の、もしくは異なる菌株に由来するような免疫原性組成物を対象とする。
【0020】
トランスフェリン結合タンパク質
トランスフェリン結合タンパク質(Tbp)は、トランスフェリンと結合する、グラム陰性細菌の外膜上のタンパク質もしくはタンパク質複合体である。このファミリーの一部のタンパク質は外膜にしっかり固定されたβバレルを形成すると考えられる。構造的には、トランスフェリン結合タンパク質は、TonBボックスを有する細胞内N末端ドメイン、およびプラグドメインを含有すると考えられ、複数の膜貫通β鎖が短い細胞内ループおよび長い細胞外ループによって連結される。他の例は、内在性膜タンパク質と相互作用して複合体を形成するリポタンパク質である。このようなタンパク質ファミリーの例がTbpAおよびTbpBである。Tbpという用語は、これらのタンパク質を個々に、またはまとめて包含し、さらにTbpAおよびTbpBから形成された複合体を包含する。少なくともTbpAが本発明の免疫原性組成物中に存在することが好ましい。
【0021】
TbpBの2つのファミリーが区別されたが、それぞれ高分子量および低分子量を有する。高分子量型および低分子量型のTbpB(WO93/06861;欧州特許第586266号)は、相同性に基づいて区別されるTbpAの異なるファミリー(WO93/06861;欧州特許第586266号; WO92/03467;米国特許第5912336号)と結合している。同じ分子量を有するにもかかわらず、TbpAは高分子量ファミリーおよび低分子量ファミリーとして知られているが、それは高分子量型または低分子量型のTbpBと結合しているためである(Rokbi et al FEMS Microbiol. Lett. 100; 51, 1993)。TbpAおよびTbpBは、髄膜炎菌(WO93/06861;欧州特許第586266号; WO92/03467;米国特許第5912336号)、淋菌(WO92/03467;米国特許第5912336号)、インフルエンザ菌(Gray-Owen et al Infect. Immun. 1995; 63:1201-1210, Schryvers J. Med. Microbiol. 1989; 29: 121-130; WO95/13370; WO96/40929)、A. pleuropneumoniae、M. カタラーリス(Mathers et al FEMS Immunol. Med. Microbiol. 1997; 19: 231; Chen et al Vaccine 1999; 18: 109; WO97/13785; WO99/52947)およびP. haemolytica(Cornelissen et al Infection and Immunity 68; 4725, 2000)を含めて、さまざまな細菌で発現することが知られている。TbpAおよびTbpBはまた、それぞれTbp1(NMB 0461)およびTbp2(NMB 0460)とも称される(Cornelissen et al Infection and Immunity 65; 822, 1997)。
【0022】
本明細書で使用されるTbpは、モラクセラ・カタラーリスおよびインフルエンザ菌を含めて、好ましくはナイセリア属、さらに好ましくは髄膜炎菌もしくは淋菌、ならびにもっとも望ましくは血清型B群の髄膜炎菌を包含する、グラム陰性細菌由来のトランスフェリン結合タンパク質を意味する。TbpはTbpAおよびTbpBの両者を包含し、さらにTbpAおよびTbpBの高分子量型および低分子量型を包含する。Tbpは上記の個々のタンパク質およびそのタンパク質の複合体を包含し、さらにトランスフェリンと結合する能力を有する他のあらゆるタンパク質またはその複合体を包含する。
【0023】
Tbpは高分子量または低分子量型のTbpAもしくはTbpBをいずれも表すことができるが、TbpAおよび/またはTbpBの高分子量型および低分子量型はいずれも本発明の免疫原性組成物中に存在することが好ましい。高分子量および低分子量TbpAが存在することがもっとも好ましい。
【0024】
Tbp類の代わりに、またはそれに加えて、他の鉄獲得タンパク質を本発明の免疫原性組成物中に含めることもできると思われる。モラクセラ・カタラーリスの鉄獲得タンパク質は、TbpA、TbpB、Ton-B依存性受容体、CopB(Sethi et al Infect. Immun. 1997; 65: 3666-3671)、HasR、OmpB1およびLbpB(Du et al Infect. Immun. 1998; 66:3656-3665; Mathers et al FEMS Immunol. Med. Microbiol. 1997; 19: 231-236; Chen et al Vaccine 1999; 18: 109-118)を包含する。インフルエンザ菌の鉄獲得タンパク質はTbpB、HasR、TonB-依存性受容体、ヘモグロビン結合タンパク質、HhuA、HgpA、HgbA、HgbBおよびHgbC (Cope et al Infect. Immun. 2000; 68: 4092-4101; Maciver et al Infect. Immun. 1996; 64:3703-3712; Jin et al Infect. Immun. 1996; 64:3134-3141; Morton et al J. Gen. Microbiol. 1990; 136:927-933; Schryvers J. Med. Microbiol. 1989; 29: 121-130)を包含する。髄膜炎菌の鉄獲得タンパク質はTbp1 (NMB 0461)、Tbp2 (NMB 0460)、FbpA (NMB 0634)、FbpB、BfrA (NMB 1207)、BfrB (NMB 1206)、LbpA (NMB 1540)、LbpB (NMB 1541)、GNA2132 (NMB 2132)としても知られているLipo28、Sibp (NMB 1882)、Ton B 依存性受容体(NMB 0964およびNMB 0293) およびHmbR (Tettelin et al Science 287; 1809-1815 2000)を包含する。
【0025】
本発明の免疫原性組成物中に含まれるTbpタンパク質は、WO93/06861および欧州特許第586266号に記載された髄膜炎菌由来のTbpAおよびTbpBと相同性を共有するタンパク質であって、WO93/06861および欧州特許第586266号に記載されたTbpAおよびTbpBのアミノ酸配列と、好ましくは40%、45%、50%、60%、70%を上回る同一性を共有し、より好ましくは80%もしくは90%を超える同一性、もっとも好ましくは95%、96%、97%、98%、99%を上回る同一性を共有するものである。
【0026】
Tbpはいくつかの明確な領域を含有する。たとえば、髄膜炎菌H44/76株に由来するTbpAの場合、アミノ末端の186アミノ酸は内部球形ドメインを形成し、22β鎖は膜を貫通し、βバレル構造を形成する。これらは短い細胞内ループおよびそれより長い細胞外ループによって連結される。細胞外ループ2、3および5はもっとも高度の配列可変性を有し、ループ5は表面に露出している。ループ5および4はリガンド結合に関与しており、本発明の免疫原性組成物中に含めるために好ましいTbpA断片である。
【0027】
本明細書に記載の遺伝的アップレギュレーション法に加えて、下記のように鉄制限条件下で増殖させる場合にも、トランスフェリン結合タンパク質をグラム陰性細菌においてアップレギュレートすることができる。トランスフェリン結合タンパク質が外膜小胞においてアップレギュレートされている本発明の免疫原性組成物において、アップレギュレーションは宿主菌株を鉄制限条件下で増殖させることによって達成されることが好ましい。このプロセスは、結果的に可変性の鉄調節性タンパク質、とりわけナイセリア属菌株のFrpBおよびインフルエンザ菌のヘム/ヘモペキシン利用タンパク質C、HgpAおよびHgpBのアップレギュレーションももたらすこととなり、これらは主要抗原となる可能性がある。したがって、下記のようなタンパク質の発現をダウンレギュレートすること(およびそうしたタンパク質をコードする遺伝子を好ましくは欠失させること)は好都合であって、本発明の免疫原性組成物が広範な菌株に存在する抗原に対して免疫応答を誘導することを保証する。
【0028】
Hsf様タンパク質
Hsf様タンパク質は、WO99/31132に記載の配列を有する髄膜炎菌のHsfと相同性を有する輸送体(autotransporter)タンパク質である; WO99/31132に記載のHsfアミノ酸配列(配列番号2, 4, 6もしくは8が好ましい)と、好ましくは40%、50%、60%、70%を超える同一性を共有し、より好ましくは80%を超える、もっとも好ましくは90%を超える同一性、もっとも好ましくは95%、96%、97%、98%、99%を上回る同一性を共有するものである。Hsf様タンパク質は表面に露出したタンパク質であって、アドヘシンとして機能すると考えられる。こうしたタンパク質は多量体複合体を形成し、感染および定着時に発現される。
【0029】
Hsf様タンパク質は、髄膜炎菌、淋菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスおよび大腸菌を含めた多くのグラム陰性細菌において認められる。髄膜炎菌に認められるHsf様タンパク質の例は、Hsf (NhhA − NMB 0992としても知られている) (WO99/31132)、Aida-1様タンパク質 (Peak et al 2000, FEMS Imm. Med. Microbiol. 28; 329)、IgAプロテアーゼ、Ssh-2、Hap (WO99/55873)、NadA(J. Exp Med. 2002 195; 1445)、UspA2およびTshを包含する。モラクセラ・カタラーリスのHsf様タンパク質の例は、Hsf、UspA1 (WO93/03761)、UspA2(WO93/03761)、外膜エステラーゼおよびYtfNを包含する。インフルエンザ菌のHsf様タンパク質の例は、Hia/Hsf (St Geme et al J. Bacteriol. 2000 182: 6005-6013)、Hap、IgA1プロテアーゼ、HMW1、HMW2 (Barenkamp et al Infect. Immun. 1992 60; 1302-1313)、YadA、YadAcおよびYtfN (Hendrixson et al Mol Cell 1998; 2:941-850; St Geme et al Mol Microbiol. 1994; 14:217-233; Grass and St Geme Infect. Immunol. 2001;69; 307-314; St Geme and Cutter J. Bacteriology 2000; 182; 6005-6013)を包含する。大腸菌のHsf様タンパク質の例は、Hsf、Hia、およびHapを包含する。
【0030】
Hsfは、輸送体タンパク質と共通する構造を有する。たとえば、髄膜炎菌H44/76株のHsfは、表面に露出した、可変領域(アミノ酸52-106、121-124、191-210および230-234)を含有するタンパク質のアミノ末端側のヘッド領域(アミノ酸52-479)、ネック領域(アミノ酸480-509)、疎水性αへリックス領域(アミノ酸518-529)および4本の膜貫通鎖が外膜を貫通しているアンカードメイン(アミノ酸539-591)からなる。
【0031】
Hsfは、アミノ酸1-51からなるシグナル配列を包含する全長ポリペプチドを指すことができる。本発明はまた、シグナル配列を除去したHsfも包含するため、そのポリペプチドは成熟型Hsfから構成されると考えられる。他の好ましいHsfの形態は、WO01/55182に開示されたタンパク質の可変領域を欠失させるために、トランケートされることがある。好ましい変異体は、WO01/55182に記載の1、2、3、4もしくは5個の可変領域の欠失を包含すると考えられる。好ましい変異体はアミノ酸配列52から237までの残基を欠失していると思われ、またはアミノ酸54から237までを欠失していると考えられるが、より好ましくはアミノ酸52から133まで、またはアミノ酸55から133までの間の残基を欠失する。トランケート変異体はHfsのアミノ酸1から51までのシグナル配列を包含、または除外することができる。上記の配列および下記の配列を、NおよびC末端のいずれか一方側または両側で、1、2、3、4、5、7、10もしくは15アミノ酸だけトランケート(切断)する、または伸長することができる。
【0032】
Hsfがサブユニットワクチンとして使用される場合、可溶性パッセンジャードメイン部分を使用することが好ましい;これは、たとえば、アミノ酸52から479までの完全なドメイン、もっとも好ましくは、たとえばアミノ酸134から479までの保存された部分である。
【0033】
全長Tbpおよび/またはHsf様タンパク質(特にTbpAおよびHsf)、またはその自然変異体、またはNおよび/またはC末端から60アミノ酸だけを欠失した全長配列を使用することが好ましいが、Tbpおよび/またはHsf様タンパク質の抗原断片も本発明の抗原性組成物中に包含される。これらは、TbpおよびHsf様タンパク質、好ましくはTbpAおよびHsfのアミノ酸配列から連続して取りだされた少なくとも10アミノ酸、好ましくは20アミノ酸、より好ましくは30アミノ酸、さらに好ましくは40アミノ酸、またはもっとも好ましくは50アミノ酸を含有する断片である。さらに、抗原断片は、髄膜炎菌TbpもしくはHsf様タンパク質、好ましくはTbpAおよびHsfに対して産生される抗体、または哺乳類宿主の髄膜炎菌による感染によって生じる抗体と免疫学的反応性を示す断片を指す。抗原断片はまた、その起源であるグラム陰性細菌のTbpもしくはHsf様タンパク質、好ましくはTbpAおよびHsfに対して特異的な免疫応答を誘導する断片も包含する。好ましくは、断片はその由来する細菌の感染を予防するが、好ましくはナイセリア属細菌感染であり、より好ましくは髄膜炎菌感染を予防し、もっとも好ましくは髄膜炎菌血清群Bの感染を予防する。
【0034】
TbpAの好ましい断片は、TbpAの細胞外ループを包含する。髄膜炎菌H44/76株由来のTbpAの配列によって、これらのループはループ1についてはアミノ酸200-202に相当し,ループ2についてはアミノ酸226-303,ループ3についてはアミノ酸348-395、ループ4についてはアミノ酸438-471、ループ5についてはアミノ酸512-576,ループ6についてはアミノ酸609-625,ループ7についてはアミノ酸661-671、ループ8についてはアミノ酸707-723、ループ9についてはアミノ酸769-790,ループ10についてはアミノ酸814-844、およびループ11についてはアミノ酸872-903に相当する。他のTbpタンパク質において、配列比較後に対応する配列が、好ましい断片を構成することも考えられる。もっとも好ましい断片は、Tbpのループ2、ループ3、ループ4およびループ5を含んでなるアミノ酸配列を包含すると思われる。
【0035】
上記のTbpもしくはTbpAタンパク質の好ましい断片は髄膜炎菌に関するものであるが、当業者は、配列相同性に基づいて同等なペプチドをすべての上記グラム陰性菌株由来のTbpもしくはTbpAタンパク質において容易に見出すことができると考えられ、これらもまた本発明の断片である。
【0036】
Hsfの好ましい断片は、好ましくはHsfのアミノ酸52-473を含有する、Hsfの完全なヘッド領域を包含する。その他のHsfの好ましい断片は、アミノ酸52-62、76-93、116-134、147-157、157-175、199-211、230-252、252-270、284-306、328-338、362-391、408-418、430-440および469-479を含めた前記ヘッドの表面露出領域を包含する。もっとも好ましい断片は本発明の外膜小胞調製物に使用する134-591、および本発明のサブユニット組成物に用いる134-479である。
【0037】
上記のHsf様タンパク質またはHsfタンパク質の好ましい断片は髄膜炎菌に関するものであるが、当業者は、配列相同性に基づいて同等なペプチドをすべての上記グラム陰性菌株由来のHsf様タンパク質またはHsfタンパク質において容易に見出すことができると考えられ、これらもまた本発明の断片である。
【0038】
TbpおよびHsf様タンパク質、好ましくはTbpAおよびHsfの融合タンパク質も本発明に含められる。この融合タンパク質は、TbpおよびHsf様タンパク質、好ましくはTbpAおよびHsfの両者、もしくはそれらの断片を同一ペプチドに一体化して結合することができる。あるいはまた、もしTbpおよびHsf様タンパク質、好ましくはTbpAおよびHsfの両者、またはそれらの断片が本発明の組成物中に存在するとすれば、本発明は、TbpおよびHsf様タンパク質、好ましくはTbpAおよび/またはHsf、またはその断片の個別の融合タンパク質も包含する。TbpAおよびHsfはたとえば、βガラクトシダーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、FLAGのようなエピトープタグ、mycタグ、ポリヒスチジン、またはウイルス/細菌表面タンパク質(たとえばインフルエンザウイルスヘマグルチニン、破傷風毒素、ジフテリア毒素もしくはCRM197)と融合タンパク質を形成することができる。
【0039】
免疫原性組成物中に組み入れられた、単離されたトランスフェリン結合タンパク質は当技術分野でよく知られている(WO0025811)。このタンパク質を、細菌宿主において発現させ、界面活性剤(たとえば2% Elugent)を用いて抽出し、アフィニティークロマトグラフィーによって、もしくは当技術分野でよく知られた標準的なカラムクロマトグラフィー技法によって精製することができる(Oakhill et al Biochem J. 2002 364; 613-6)。同様に、Hsfの単離は当技術分野でよく知られた技法によって達成される。組換えHsfは、大腸菌もしくは他の細菌菌株において発現可能である。このタンパク質はアフィニティークロマトグラフィーによって精製される。もしHsf配列にタグが導入されれば、アフィニティークロマトグラフィーはルーチン的な手順となるであろう。
【0040】
本明細書において、本発明者らは、「〜を含んでなる」という用語があらゆる場合に、随意的に「〜からなる」という用語で置き換え可能であると考えている。
【0041】
ワクチン組成物
本発明は、TbpおよびHsf様タンパク質を包含する抗原の併用に関するが、これらのタンパク質はグラム陰性細菌に対する高い殺菌活性の誘導に有効である。本発明の抗原性組成物は、TbpおよびHsfの他に抗原を含んでなることができる。この組成物は、グラム陰性細菌、好ましくはナイセリア属細菌、およびさらに好ましくは髄膜炎菌由来の他のタンパク質抗原を含んでなることもある。
【0042】
髄膜炎菌
髄膜炎菌を目的とする本発明の免疫原性組成物は、HsfおよびTbpAを含んでなることが好ましい。外膜小胞調製物において、HsfおよびTbpAは、その外膜小胞の起源である髄膜炎菌菌株においてアップレギュレートされていることが好ましい。TbpAは高分子量型または低分子量型のいずれかとして存在することができるので、好ましくは高分子量型および低分子量型の両方を表す。Hsfは、好ましくはアミノ酸134-591の膜内在性トランケートとして外膜小胞中に存在することが好ましい。Hsfはまた、サブユニットワクチンとして、好ましくはパッセンジャードメイン(アミノ酸52-479)として、もっとも好ましくはアミノ酸134-479のパッセンジャードメイントランケートとして、存在することもできる。
【0043】
その他の抗原を上記組成物に添加する(または外膜小胞において述べる場合はアップレギュレートする)こともできるが、その例としては、NspA (WO96/29412)、Hap (PCT/EP99/02766)、PorA、PorB、OMP85 (D15としても知られている) (WO00/23595)、PilQ (PCT/EP99/03603)、PldA (PCT/EP99/06718)、FrpB (WO96/31618、配列番号38を参照されたい)、FrpA (NMB 0585) もしくはFrpCまたは両者に共通する少なくとも30、50、100、500、750アミノ酸からなる保存配列部分 (WO92/01460)、LbpAおよび/またはLbpB (PCT/EP98/05117; Schryvers et al Med. Microbiol. 1999 32: 1117)、FhaB (WO98/02547 配列番号38 [ヌクレオチド3083-9025])、HasR (PCT/EP99/05989)、lipo02 (PCT/EP99/08315)、MltA (WO99/57280) (NMB0033) およびctrA (PCT/EP00/00135)がある。
【0044】
本発明の免疫原性組成物中の好ましい抗原の組み合わせは、TbpおよびHsf様タンパク質およびFhaB; TbpおよびHsf様タンパク質およびPilQ; TbpおよびHsf様タンパク質およびNspA; TbpおよびHsf様タンパク質およびFrpCを含んでなる組み合わせを包含する; より好ましくは、TbpおよびHsf様タンパク質およびHap; TbpおよびHsf様タンパク質およびFrpA/C; TbpおよびHsf様タンパク質およびLbpB; TbpおよびHsf様タンパク質およびD15を含んでなる組み合わせを包含する。
【0045】
モラクセラ・カタラーリス抗原
本発明の免疫原性組成物に組み入れるために、1以上のモラクセラ・カタラーリス由来の下記タンパク質が好ましい(好ましくはこの組成物においてTbpAおよびHsf様タンパク質はモラクセラ・カタラーリスに由来する):OMP106 (WO 97/41731およびWO 96/34960)、HasR (PCT/EP99/03824)、PilQ (PCT/EP99/03823)、OMP85 (PCT/EP00/01468)、lipo06 (英国特許第9917977.2号)、lipo10 (英国特許第9918208.1号)、lipo11 (英国特許第9918302.2号)、lipo18 (英国特許第9918038.2号)、P6 (PCT/EP99/03038)、ompCD、CopB (Helminen ME, et al (1993) Infect. Immun. 61:2003-2010), D15 (PCT/EP99/03822)、OmplA1 (PCT/EP99/06781)、Hly3 (PCT/EP99/03257)、LbpAおよびLbpB (WO 98/55606)、TbpAおよびTbpB (WO 97/13785およびWO 97/32980)、OmpE、UspA1およびUspA2 (WO 93/03761)、ならびにOmp21。
【0046】
インフルエンザ菌抗原
本発明の免疫原性組成物中に含めるために、1以上のインフルエンザ菌由来の下記タンパク質が好ましい(好ましくはこの組成物においてTbpAおよびHsf様タンパク質はインフルエンザ菌に由来する):D15 (WO 94/12641)、P6 (欧州特許第281673号)、TbpA、TbpB、P2、P5 (WO 94/26304)、OMP26 (WO 97/01638)、HMW1、HMW2、HMW3、HMW4、Hia、Hsf、Hap、Hin47、およびHif。
【0047】
本発明のさらに別の態様は複合ワクチンであって、これは、ウイルスもしくはグラム陽性細菌関連疾患を含めた特定の疾病状態に対して有効に使用される他の抗原とともに本発明の抗原性組成物を含んでなる。
【0048】
ある好ましい組み合わせにおいて、本発明のTbpおよびHsf様タンパク質を含んでなる抗原性組成物は、下記の髄膜炎菌莢膜多糖もしくはオリゴ糖、A、C、YまたはW-135のうち1、2、3、もしくは好ましくは4つすべてとともに調製される。ここで前記多糖もしくはオリゴ糖はそのままでも、あるいはタンパク質キャリアーと結合していてもよい。このような髄膜炎菌由来のTbpAおよびHsfを含有するワクチンを、世界的な髄膜炎菌ワクチンとして巧く使用することができる。コンジュゲートした髄膜炎菌莢膜多糖、C、CおよびY、もしくはAおよびCを包含することが好ましい。
【0049】
さらに好ましい実施形態において、前記のようなそのままの、またはコンジュゲートした髄膜炎菌莢膜多糖(もしくはオリゴ糖)A、C、YもしくはW-135のうち1、2、3、または4つすべてとともに調製された、本発明のTbpAおよびHsfを含んでなる抗原性組成物は、コンジュゲートしたインフルエンザ菌b型菌莢膜多糖もしくはオリゴ糖とともに、および/または1以上のそのままの、もしくはコンジュゲートした肺炎球菌莢膜多糖またはオリゴ糖とともに、調製されることが好ましい。選択肢として、ワクチンは、肺炎連鎖球菌から宿主を感染防御することができる1以上のタンパク質抗原を含んでなることも可能である。このようなワクチンは、髄膜炎菌/肺炎連鎖球菌ワクチンとして使用するのに好都合である。
【0050】
またさらに好ましい実施形態において、本発明のTbpおよびHsf様タンパク質を含んでなる免疫原性組成物は、髄膜炎菌、インフルエンザ菌b型菌、肺炎連鎖球菌、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、もしくは表皮ブドウ球菌のうちの1以上に由来する莢膜多糖とともに調製される。好ましい実施形態において、免疫原性組成物は、髄膜炎菌の血清群A、C、W-135およびYのうち1つまたは複数に由来する莢膜多糖を含んでなる。さらに好ましい実施形態は、肺炎連鎖球菌に由来する莢膜多糖を含んでなると考えられる。肺炎球菌莢膜多糖抗原は、好ましくは血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F および33Fから(もっとも好ましくは血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23Fから)選択される。さらに好ましい実施形態は、インフルエンザ菌のPRP莢膜多糖を含有すると考えられる。さらに好ましい実施形態は、黄色ブドウ球菌の5型、8型もしくは336の莢膜多糖を含有すると考えられる。さらに好ましい実施形態は、表皮ブドウ球菌のI型、II型、もしくはIII型莢膜多糖を含有すると考えられる。さらに好ましい実施形態は、B群連鎖球菌のIa型、Ic型、II型、もしくはIII型莢膜多糖を含有すると考えられる。さらに好ましい実施形態は、A群連鎖球菌の莢膜多糖を含有するが、好ましくはさらに少なくとも1つのMタンパク質を含んでなり、より好ましくは複数の型のMタンパク質を含んでなる。
【0051】
好ましい肺炎球菌タンパク質抗原は、肺炎球菌の外側表面に露出した(肺炎球菌の生活環の中で少なくとも一定の期間、宿主の免疫系によって認識される能力を有する)肺炎球菌タンパク質であり、または肺炎球菌によって分泌もしくは放出されるタンパク質である。もっとも好ましくは、タンパク質は肺炎連鎖球菌の毒素、アドヘシン、2-コンポーネントシグナルトランスデューサー、もしくはリポタンパク質、またはそれらの断片である。特に好ましいタンパク質は下記を包含するがそれらに限定されない:ニューモリシン(化学的処理もしくは変異によって無毒化されることが好ましい)〔Mitchell et al. Nucleic Acids Res. 1990 Jul 11; 18(13): 4010 "Comparison of pneumolysin genes and proteins from Streptococcus pneumoniae types 1 and 2.", Mitchell et al. Biochim Biophys Acta 1989 Jan 23; 1007(1): 67-72 "Expression of the pneumolysin gene in Escherichia coli: rapid purification and biological properties.", WO 96/05859 (A. Cyanamid), WO 90/06951号 (Paton et al), WO 99/03884号 (NAVA)〕;PspAおよびその膜貫通欠失変異体(米国特許第5804193号 - Briles et al.);PspCおよびその膜貫通欠失変異体(WO 97/09994 - Briles et al);PsaAおよびその膜貫通欠失変異体(Berry & Paton, Infect Immun 1996 Dec;64(12):5255-62 "Sequence heterogeneity of PsaA, a 37-kilodalton putative adhesin essential for virulence of Streptococcus pneumoniae");肺炎球菌コリン結合タンパク質およびその膜貫通欠失変異体;CbpAおよびその膜貫通欠失変異体(WO 97/41151; WO 99/51266);グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(Infect. Immun. 1996 64:3544);HSP70(WO 96/40928号);PcpA(Sanchez-Beato et al. FEMS Microbiol Lett 1998, 164:207-14);M様タンパク質(欧州特許第0837130号)およびアドヘシン18627(欧州特許第0834568号)。さらに好ましい肺炎球菌タンパク質抗原は、WO 98/18931に開示されたタンパク質抗原、とりわけWO 98/18930およびPCT/US99/30390において選抜されたタンパク質抗原である。
【0052】
ワクチンはまた、随意的に、ジフテリア、破傷風および百日咳菌感染のうち1つもしくは複数に対する予防をもたらす抗原を含んでなることができる。百日咳成分は、百日咳菌の死滅全菌体(Pw)、またはPT, FHAおよび69kDaパータクチン(pertactin)から少なくとも1つの抗原(好ましくは3つ全部)を含んでなる無菌体百日咳成分(Pa)とすることができる。典型的には、ジフテリアおよび破傷風に対する予防をもたらす抗原は、ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドである。これらのトキソイドは、化学的に不活化された毒素もしくは点突然変異の導入によって不活化された毒素である。
【0053】
ワクチンはまた、随意的に、型別不能の(無莢膜の)インフルエンザ菌、RSVから宿主を感染防御することができる1以上の抗原、および/またはインフルエンザウイルスから宿主を防御することができる1以上の抗原を含んでなることも可能である。このようなワクチンを世界的な中耳炎ワクチンとして使用できれば好都合である。
【0054】
好ましい型別不能インフルエンザ菌のタンパク質抗原は、フィンブリン(Fimbrin)タンパク質(米国特許第5766608号)およびそれから得られるペプチドを含んでなる融合物(たとえば LB1融合物)(米国特許第5843464号 - オハイオ州立研究財団(Ohio State Research Foundation))、OMP26、P6、プロテインD、TbpA、TbpB、Hia、Hmw1、Hmw2、Hap、ならびにD15を包含する。
【0055】
好ましいインフルエンザウイルス抗原は、鶏卵またはMDCK細胞、またはベロ細胞または完全なインフルエンザビロゾーム(virosome)内で増殖した全粒子ウイルス、生ウイルスもしくは不活化ウイルス(R. Gluck, Vaccine, 1992, 10, 915-920)、またはそれらの精製タンパク質もしくは組換えタンパク質、たとえばHA、NP、NA、もしくはMタンパク質、またはそれらの組み合わせ、を包含する。
【0056】
好ましいRSV(呼吸器合胞体ウイルス)抗原は、F糖タンパク質、G糖タンパク質、HN糖タンパク質、Mタンパク質、またはそれらの誘導体を包含する。
【0057】
当然のことながら、本発明の抗原性組成物はただ1種の細菌に由来する1以上の莢膜多糖を含んでなることができる。抗原性組成物はまた、1または複数種の細菌に由来する莢膜多糖を含んでなることもできる。
【0058】
このような莢膜多糖は、たとえば、破傷風トキソイド、破傷風トキソイドフラグメントC、ジフテリアトキソイド、CRM197、ニューモリシン、Protein D(米国特許第6342224号)、TbpAもしくはHsfといったキャリアータンパク質とコンジュゲートしていても、していなくてもよい。本発明のある実施形態は、TbpAおよびHsfとコンジュゲートした別々の莢膜多糖を含有すると考えられる。
【0059】
あらゆる既知の結合法によって多糖複合体を調製することができる。たとえば、チオエーテル結合によって多糖を結合することができる。この結合法は、テトラフルオロホウ酸1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウム(CDAP)によってシアン酸エステルを形成する多糖の活性化に依存する。このようにして活性化された多糖を、キャリアータンパク質のアミノ基に直接、もしくはスペーサーを介して結合することができる。好ましくは、シアン酸エステルをヘキサンジアミンと結合させ、アミノ誘導体化された多糖を、チオエーテル結合の形成に関わるヘテロ結合化学によってキャリアータンパク質に結合させる。このような複合体は、PCT出願公開番号WO 93/15760号、Uniformed Services Universityに記載されている。
【0060】
米国特許第4365170号 (Jennings) および 米国特許第4673574号 (Anderson)に記載の直接的な還元的アミノ化法によって複合体を調製することもできる。他の方法が、欧州特許第0-161-188号、欧州特許第208375号および欧州特許第0-477508号に記載されている。
【0061】
別の方法は、臭化シアンで活性化され、アジピン酸ヒドラジド(ADH)で誘導体化された多糖を、カルボジイミドを用いた縮合によって、タンパク質キャリアーに結合させることに関する(Chu C. et al Infect. Immunity, 1983 245 256)。
【0062】
外膜小胞を含んでなる抗原性組成物
本発明の好ましい態様は、外膜小胞におけるTbpおよびHsfのアップレギュレーション、または過剰発現である。グラム陰性細菌は連続する2層の膜構造、細胞膜および外膜によって外部の媒体から区分されている。グラム陰性細菌の外膜はダイナミックであって、環境条件次第でドラスティックな形態変換が起こりうる。このような発現の中で、外膜小胞もしくはブレブの形成は、多くのグラム陰性細菌で研究され報告されている(Zhou et al 1998)。これらのうちで、ブレブを生じると報告された病原菌の、網羅的ではないリストは下記を包含する;百日咳菌、ライム病菌、マルタ熱菌、Brucella ovis、オウム病クラミジア、クラミジア・トラコマチス、大腸菌、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ/在郷軍人病菌、淋菌、髄膜炎菌、緑膿菌およびエルシニア・エンテロコリチカ。外膜小胞/ブレブを生じる原因となる生化学的メカニズムは完全にはわからないが、これらの外膜小胞は、外膜タンパク質調製物を自然のままの高次構造で単離するために有力な方法を提供するので、広く研究されている。そうした状況において、外膜調製物の使用は、ナイセリア属、モラクセラ・カタラーリス、インフルエンザ菌、緑膿菌およびクラミジアに対するワクチンを開発するために特に興味深い。さらに、外膜ブレブは、種の内部での変異体に対して広範な感染防御を与える可能性の高い、複数のタンパク質性および非タンパク質性抗原を併せ持っている。
【0063】
本発明の外膜小胞は、TbpおよびHsf様タンパク質(好ましくはTbpAおよびHsf)がアップレギュレートされている。これは、場合によっては、単一のグラム陰性細菌菌株、好ましくはナイセリア属菌株、に由来する外膜小胞においてHsf様タンパク質およびTbpがアップレギュレートされることにより達成される。Hsf様タンパク質およびTbpはまた、異なるグラム陰性細菌菌株、好ましくはナイセリア属菌株、に由来する外膜小胞において別々にアップレギュレートされることも可能である。好ましい実施形態において、TbpおよびHsf様タンパク質、さらに好ましくはTbpAおよびHsf、がアップレギュレートされている異なる菌株のナイセリア菌は、髄膜炎菌の免疫型としてそれぞれL2およびL3、またはL3およびL2である。
【0064】
ナイセリア属菌株からのブレブ調製物の作製は、当業者によく知られた方法のいずれによっても行うことができる。好ましくは、欧州特許第301992号、米国特許第5,597,572号、欧州特許第11243号もしくは米国特許第4,271,147号、Frederiksonら (NIPH Annals [1991], 14:67-80)、Zollingerら (J. Clin. Invest. [1979], 63:836-848)、Saundersら (Infect. Immun. [1999], 67:113-119)、Drabickら (Vaccine [2000], 18:160-172) またはWO 01/09350 (Example 8)に開示された方法が使用される。一般的には、外膜小胞は、界面活性剤、好ましくはデオキシコール酸を用いて抽出され、核酸は状況に応じて酵素的に除去される。精製は超遠心分離法によって行われ、状況に応じてその後サイズ排除クロマトグラフィーを行う。2つ以上の異なる本発明のブレブが含まれる場合には、それらを1つの容器内で混合して、本発明の多価調製物を形成することができる(ただし、本発明の異なるブレブが別々の容器に入った別々の組成物であって、それらが同時に〔開業医への同一の来診で〕宿主に投与されるならば、調製物はやはり多価であると考えられるが)。外膜小胞調製物は通常0.2μmフィルターによる濾過によって滅菌され、ブレブ調製物を安定化することが知られているショ糖溶液(たとえば3%)中で保存されることが好ましい。
【0065】
外膜小胞調製物におけるTbpおよびHsf様タンパク質のアップレギュレーションは、追加の遺伝子コピーをその外膜小胞調製物の起源であるグラム陰性細菌内に挿入することによって達成することができる。あるいはまた、外膜小胞調製物の起源である細菌菌株において遺伝子のプロモーターをもっと強いプロモーターに交換することができる。こうした技法はWO01/09350に記載されている。タンパク質のアップレギュレーションによって、改変されていない髄膜炎菌(たとえば菌株H44/76)に由来する外膜小胞中に存在するタンパク質レベルと比較して、高レベルのタンパク質が外膜小胞中に存在するようになると考えられる。そのレベルは少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、7倍、10倍もしくは20倍高いことが好ましい。
【0066】
リポ多糖が外膜小胞中の補助的な抗原であると考えられる場合、特に毒性のある、結合の弱いリポ多糖を除去する一方で、結合したリポ多糖を高レベルに保存できるように、外膜小胞調製法において、低濃度の抽出界面活性剤(たとえばデオキシコール酸もしくはDOC)を用いるプロトコールを使用することが好ましい。使用するDOCの濃度は、好ましくは0〜0.5% DOC、より好ましくは0.02%〜0.4%、0.03%〜0.3%、0.04%〜0.2%、0.05%〜.15%、0.05%〜0.2% DOCであるが、もっとも好ましいのはおよそ0.1% DOCまたは正確に0.1% DOCである。
【0067】
「より強力なプロモーター配列」は、所定の抗原をコードする遺伝子の転写を増大させる調節制御エレメントを表す。
【0068】
「発現をアップレギュレートする」とは、改変されていない(すなわち天然に存在する)ブレブと比較して、所定の抗原の発現を強めるあらゆる方法を表す。当然のことながら、「アップレギュレーション」の量は、関心のある特定の抗原に応じて変動するが、ブレブの膜の完全性を損なう量を越えることはない。抗原のアップレギュレーションは、改変されていないブレブよりも少なくとも10%高い発現を表す。少なくとも50%高いことが好ましい。さらに好ましくは、少なくとも100%高い(2倍)。もっとも好ましくは、少なくとも3倍、4倍、5倍、7倍、10倍、20倍高い。鉄を制限した条件で(たとえば、鉄キレート剤の存在下で)増殖させた細菌からブレブが得られたときに、発現レベルを評価することが好ましい。その代わりに、またはそれに加えて、発現をアップレギュレートすることは、特にTbpA、TbpB、LbpAおよびLbpBの場合、発現が代謝性または栄養上の変化について無条件となることを表す。
【0069】
重ねて明確にするために、「より少ない当該抗原を産生するように細菌菌株を操作すること」もしくはダウンレギュレーションと言う表現は、改変されていない(すなわち天然に存在する)ブレブと比較して、所定の抗原の発現(もしくは機能性遺伝子産物の発現)を減少させるあらゆる方法を表すが、これは好ましくは欠失によって行われ、発現は非改変ブレブより少なくとも10%低下する。好ましくは少なくとも50%低下し、もっとも好ましくは完全になくなる。ダウンレギュレートされたタンパク質が酵素または機能性タンパク質であるならば、ダウンレギュレーションは、結果として酵素活性もしくは機能活性の10%、20%、50%、80%または好ましくは100%の減少をもたらす1以上の変異を導入することによって達成することができる。
【0070】
ナイセリア属細菌タンパク質の発現を変化させるために必要な操作ステップは、当業者に知られているさまざまな方法で実行可能である。たとえば、配列(たとえばプロモーターもしくはオープンリーディングフレーム)を挿入すること、さらにプロモーター/遺伝子をトランスポゾン挿入の技術によって破壊することができる。たとえば、遺伝子発現のアップレギュレーションのために、その遺伝子の開始コドンの2kb上流までにトランスポゾンによって強力なプロモーターを挿入することができる(より好ましくは200〜600bp上流、もっとも好ましくは約400bp上流)。点突然変異もしくは欠失も使用することができる(特に遺伝子の発現をダウンレギュレートするために)。
【0071】
しかしながら、このような方法はまったく不安定で不確実であると考えられるため、操作ステップは相同的組換え事象によって行われることが好ましい。好ましくはこの事象は、細菌染色体上の少なくとも30ヌクレオチドの配列(recombinogenic領域)と、その菌株内にトランスフォームされたベクター上の少なくとも30ヌクレオチドの配列(もう一つのrecombinogenic領域)の間で起こる。好ましくは、その領域は40〜1000ヌクレオチドであるが、さらに好ましくは100〜800ヌクレオチドであり、もっとも好ましくは500ヌクレオチドである。これらのrecombinogenic領域は、きわめてストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることができるように十分に類似していなくてはならない。
【0072】
本明細書に記載の遺伝子改変事象(たとえば、組換え事象による遺伝子のアップレギュレーションおよびダウンレギュレーション、ならびにナイセリア属細菌ゲノムへのさらなる遺伝子配列の導入)を行うために使用される方法は、WO01/09350に記載されている。ナイセリア属細菌に組み込むことができる典型的な強力プロモーターは、porA、porB、lgtF、Opa、p110、lst、およびhpuABである。PorAおよびPorBプロモーターは、構成的な強力プロモーターとして好ましい。PorBプロモーター活性がporBの開始コドンの上流-1から-250までのヌクレオチドに対応する断片に含まれていることはすでに確認されている。
【0073】
鉄制限条件下での増殖による鉄獲得タンパク質発現のアップレギュレーション
本発明の外膜小胞調製物におけるトランスフェリン結合タンパク質のアップレギュレーションは、鉄制限条件下で増殖したグラム陰性細菌の親株から外膜小胞を分離することによって達成されることが好ましい。培地中の鉄の低濃度は、結果としてTbpAおよびTbpBを含めた鉄獲得に関わるタンパク質の発現の増加をもたらすことになる。それによってこれらのタンパク質の発現は、たとえば、より強いプロモーターを挿入し、または遺伝子の追加コピーを挿入することによって、関連遺伝子を組換えによって改変する必要なしにアップレギュレートされる。本発明は、遺伝子がすでに組換えによって改変されている場合に鉄制限培地での増殖によってトランスフェリン結合タンパク質をアップレギュレートすることも包含するものとする。
【0074】
鉄の制限は、培地に鉄キレート剤を添加することによって達成される。適当な鉄キレート剤は、2,2-ジピリジル、EDDHA(エチレンジアミン-ジ(o-ヒドロキシフェニル酢酸))、およびデスフェラール(Desferal、メシル酸デフェロキサミン、Sigma)を包含する。デスフェラールは好ましい鉄キレート剤であって、10から100μMまでの濃度で培地に添加されるが、好ましくは25〜75μM、さらに好ましくは50〜70μM、もっとも好ましくは60μMである。培地の鉄の内容は、主として酵母抽出物および大豆ペプトンの成分から来るが、存在量はバッチごとに変動する可能性がある。したがって、異なるバッチの培地において鉄獲得タンパク質のアップレギュレーションを達成するために、異なる濃度のデスフェラールが最適となることがある。当業者は容易に至適濃度を決定することができるはずである。基本的には、望ましい鉄調節性タンパク質の発現をアップレギュレートするためには十分な鉄キレート剤を培地に添加するべきであるが、細菌の増殖に悪影響を及ぼすほど多くすべきでない。
【0075】
好ましくは、鉄制限条件下での増殖によるトランスフェリン結合タンパク質のアップレギュレーションは、Hsf様タンパク質の組換えによるアップレギュレーションと併用され、本発明の外膜小胞が完成される。
【0076】
変化しやすく感染防御的でない主要抗原のダウンレギュレーション/除去
多くの表面抗原は細菌菌株の間で変化しやすく、その結果、非常に近縁な菌株からなる限定された集団に対してしか感染防御的でない。本発明のある態様は、TbpおよびHsf様タンパク質、好ましくはTbpAおよびHsf、を含んでなる外膜小胞を対象とするが、この外膜小胞において他のタンパク質の発現は低下し、好ましくは、可変性表面タンパク質をコードする遺伝子は欠失している。こうした欠失の結果、ブレブを生成する細菌菌株となるが、これはワクチンとして投与されたときに、(外膜上に保持された)保存されたタンパク質がワクチン受容者の免疫系に対してより大きな影響力を及ぼすために、さまざまな菌株に対して交差反応性である可能性がいっそう強まる。こうした可変性抗原の例としては下記がある:ナイセリア属細菌について - 抗原性の変化した繊毛(PilC)、PorA, Opa, OpC, PilC, PorB, TbpB, FrpB; インフルエンザ菌について - P2, P5, pilin, IgA1-プロテアーゼ; およびモラクセラ属細菌について - OMP106。
【0077】
ダウンレギュレートもしくはスイッチオフにすることのできる他の遺伝子は、細菌によってin vivoで容易にスイッチオン(発現)またはオフにすることができる遺伝子である。このような遺伝子によってコードされる外膜タンパク質は常に存在するとは限らないが、ブレブ調製物中のこうしたタンパク質の存在は、上記の理由によりワクチンの有効性にとって有害となる可能性がある。ダウンレギュレートする、または欠失させるべき好ましい例は、ナイセリア属Opcタンパク質である。感染する微生物は容易にOpc-となりうるので、Opc含有ブレブワクチンによって誘導される抗Opc免疫は、限定的な予防能力しかないと考えられる。インフルエンザ菌HgpAおよびHgpBはこうしたタンパク質の別の例である。
【0078】
たとえば、このような変化しやすい、すなわち感染防御的でない遺伝子を発現においてダウンレギュレートする、または末端でスイッチオフにすることができる。これには、ブレブの外部表面に少量存在するより良い抗原に免疫系を集中させる利点がある。
【0079】
発現をダウンレギュレートする方法は、WO01/09350に開示される。
【0080】
主要抗原外膜タンパク質のダウンレギュレーションは、発現レベルが減少し、好ましくはスイッチオフとなることを意味し、または表面に露出した主要抗原ループの変異および/または欠失によって外膜タンパク質が主要抗原でなくなることを意味する。酵素的機能を有するタンパク質のダウンレギュレーションは、そのタンパク質の発現レベルが減少し、好ましくはスイッチオフとなることを意味し、または機能性酵素の発現が低下し、好ましくは無くなることを意味すると考えられる。
【0081】
本発明の免疫原性組成物を調製する際に使用する細菌である好ましい髄膜炎菌菌株は、PorA、OpAおよびOpCのうち1つ、2つ、もしくは3つのダウンレギュレーション、好ましくは欠失を有する。好ましくはPorAおよびOpa; PorAおよびOpC; OpAおよびOpC; PorAおよびOpaおよびOpCがダウンレギュレートされている。
【0082】
4つの異なるOpa遺伝子が髄膜炎菌ゲノム中に存在することが知られており(Aho et al. 1991 Mol. Microbiol. 5:1429-37)、したがって、Opaが発現においてダウンレギュレートされるといわれている場合には、好ましくは髄膜炎菌に存在する1、2、3もしくは(好ましくは)4つすべての遺伝子がダウンレギュレートされているはずである。このようなダウンレギュレーションは、WO 01/09350に記載のように遺伝的に行われ、あるいはOpa遺伝子座からの発現が無い、または少ない、容易に発見される天然に存在する安定な髄膜炎菌菌株を探索することによって行われる。Poolman et al (1985 J. Med. Micro. 19:203-209)に記載の技法によって、こうした菌株を見出すことができるが、この場合Opa-である細胞は、Opaを発現する細胞とは異なる表現型を示し、これはプレート上もしくは顕微鏡下で細胞の外観を観察して認めることができる。ひとたび見出されれば、Opaの欠失を確認するために培養実施後、細胞成分に関するウェスタンブロットを行うことによって、その菌株が安定してOpa-であることを示すことができる。
【0083】
本発明の外膜小胞内のトランスフェリン結合タンパク質のアップレギュレーションが、鉄を制限した条件下での増殖によって達成される場合、可変性の鉄調節性タンパク質もアップレギュレートすることができる。これらのタンパク質は髄膜炎菌および淋菌におけるFrpB(Microbiology 142; 3269-3274, (1996); J. Bacteriol. 181; 2895-2901 (1999))、ならびにインフルエンザ菌におけるヘム/ヘモペキシン利用タンパク質C(J. Bacteriol. 177; 2644-2653 (1995))、およびHgpA、HgpBおよびHgpC(Infect. Immun. 66; 4733-4741 (1998), Infect. Immun. 67; 2729-2739 (1999), Microbiology 145; 905-914 (1999))を包含する。本発明者らは、鉄の制限を用いてトランスフェリン結合タンパク質の発現をアップレギュレートするとき、そういったタンパク質の少なくとも可変部分の発現をダウンレギュレートすることが有利であることを見出した。これは、WO01/09350に記載の方法の使用、またはタンパク質の可変部分の欠失のいずれかによって達成される。これによって、免疫原性組成物により誘導された免疫応答が広範囲の菌株に存在する抗原に向けられることが確実になる。グラム陰性細菌菌株、好ましくはモラクセラ・カタラーリス、インフルエンザ菌もしくはナイセリア属(さらに好ましくは髄膜炎菌)菌株に由来する本発明のブレブ免疫原性組成物において、FrpBのダウンレギュレーションはPorAおよびOpA; PorAおよびOpC; OpAおよびOpC; PorAおよびOpAおよびOpCのダウンレギュレーションと併せて行われることが好ましい。本発明のもう一つの実施形態において、FrpBは、必ずしも鉄制限条件下で増殖したわけではないグラム陰性細菌菌株、好ましくはモラクセラ・カタラーリス、インフルエンザ菌もしくはナイセリア属(さらに好ましくは髄膜炎菌)菌株に由来する外膜小胞においてダウンレギュレートされる。
【0084】
LPSの無毒化
本発明の免疫原性組成物中の外膜小胞は、WO01/09350に記載のLPSの無毒化のための方法によって無毒化することができる。詳細には、LPSの無毒化のための方法は、WO01/09350に開示されたhtrBおよび/またはmsbB酵素のダウンレギュレーション、好ましくは欠失を包含する。これらの遺伝子の欠失変異体は、表現型としては、野生型と比較して1つの二次的なアシル鎖を欠いたmsbB-変異体LPS、および2つの(すなわち両方の)二次的アシル鎖を欠いたhtrB-変異体LPSによって特徴付けられる。こうした方法は、低レベルのDOC、好ましくは0〜0.3% DOC、さらに好ましくは0.05〜0.2% DOC、もっとも好ましくは約0.1% DOCを用いたOMV抽出の方法と併せて行うことが好ましい。
【0085】
LPSを無毒化するもう一つの方法は、ブレブ調製物にポリミキシンBの無毒性ペプチド機能性等価物〔リピドAに高い親和性を有する分子〕(好ましくはSAEP 2)を添加することを包含する(ポリミキシンBの無毒性ペプチド機能性等価物のさらに詳しい明細については、特にペプチドSAEP 2(KTKCKFLKKCの配列を有し、そこで2つのシステインがジスルフィド橋を形成している)の使用の詳細については、WO 93/14115、WO 95/03327、Velucchi et al (1997) J Endotoxin Res 4: 1-12、および欧州特許第976402号を参照されたい)。
【0086】
交差反応性多糖
莢膜に包まれたグラム陰性細菌から細菌の外膜ブレブを分離することは、結果としてしばしば莢膜多糖を同時に精製することになる。場合によっては、この「夾雑」物が有用となることがあるが、これは多糖が他のブレブ成分によってもたらされた免疫応答を強める可能性があるためである。しかしながら、別の場合には、細菌のブレブ調製物に混入した多糖の存在は、ワクチンにおけるブレブの使用に有害となるかもしれない。たとえば、少なくとも髄膜炎菌の場合には、血清群B莢膜多糖は感染防御免疫を与えず、ヒトにおいて不都合な自己免疫応答を誘導することが多い。したがって、本発明の外膜小胞を、ブレブ製品のために細菌菌株から分離することができるが、このブレブ製品は莢膜多糖を含まないように巧みに作られた。そこで、このブレブはヒトに使用するのに適していると考えられる。こうしたブレブ調製物の特に好ましい例は、莢膜多糖を欠いた髄膜炎菌血清群Bに由来するものである。一般に、外膜小胞の分離は、特に菌株が上記のmsbB-変異体である場合、莢膜多糖を合成できないグラム陰性細菌菌株から行われるべきである。
【0087】
これは改変されたブレブ生産菌株を用いることによって達成されるが、この菌株において、莢膜の生合成および/または輸送のために必要な遺伝子は損なわれている。莢膜多糖の生合成もしくは輸送をコードする遺伝子の不活化は、調節領域、コード領域、もしくはその両方のいずれかの変異(点突然変異、欠失もしくは挿入)によって(好ましくは上記の相同組換え法を用いる)、またはそうした遺伝子の酵素的機能を減少させる他のあらゆる方法によって達成することができる。その上、莢膜生合成遺伝子の不活化は、アンチセンス過剰発現もしくはトランスポゾン変異誘発のいずれかによっても達成されると考えられる。好ましい方法は、髄膜炎菌莢膜多糖の生合成および輸送に必要とされる莢膜多糖(cps)遺伝子の一部もしくは全部を欠失させることである。この目的のために、置換プラスミドpMF121(Frosh et al.1990, Mol. Microbiol. 4:1215-1218に記載されている)を使用して、cpsCAD(+galE)遺伝子クラスターを欠失させる変異をもたらすことができる。
【0088】
上記の本発明の免疫原性組成物が髄膜炎菌B株から得られる場合、その莢膜多糖(これはヒトに類似した糖構造体も含有する)をやはり除去することがさらに好ましい。多くの遺伝子をスイッチオフにして上記を達成することができるであろうが、本発明者らは、好都合にも、ブレブ生成菌株を遺伝的に操作して、好ましくは遺伝子をスイッチオフにすることによって、もっとも好ましくは遺伝子のプロモーターおよび/またはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることによって、siaD遺伝子からの機能的な遺伝子産物の発現を永続的にダウンレギュレートする(すなわちα-2-8ポリシアリルトランスフェラーゼ活性をダウンレギュレートする)ことが好ましいことを示した。このような不活化は、WO 01/09350に記載されている。siaD(synDとしても知られている)変異は、莢膜多糖からヒト類似エピトープを除去する結果をもたらすことができる多くの変異の中でもっとも有利である。なぜならば、それはLOSの感染防御エピトープの生合成に影響を及ぼさないまたとない変異の一つであるからで、したがって最終的にLOSを感染防御抗体として使用することを目指すプロセスにおいて有利であり、さらに、細菌の増殖に及ぼす影響が最小であるためである。したがって、本発明の好ましい態様は、髄膜炎菌B群lgtE- siaD- 変異株、lgtA- siaD- 変異株、もしくは好ましくはlgtB- siaD-変異株に由来する上記のようなブレブ免疫原性調製物である。この菌株それ自体が、本発明のもう一つの態様である。
【0089】
上記の理由によりsiaD-変異が好ましいが、ナイセリア属細菌(好ましくは髄膜炎菌B群)莢膜多糖合成のスイッチを切る他の変異を用いることができる。したがって、ブレブ生成菌株を遺伝的に操作して、下記の遺伝子:ctrA, ctrB, ctrC, ctrD, synA (synXおよびsiaAに相当する), synB (siaBに相当する)もしくはsynC (siaCに相当する)遺伝子の1つまたは複数からの機能的遺伝子産物の発現を、好ましくは遺伝子をスイッチオフにすることによって、もっとも好ましくは遺伝子のプロモーターおよび/またはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることによって、永続的にダウンレギュレートすることができる。lgtE-変異を、上記変異の1つまたは複数と併用することができる。好ましくは、lgtB-変異は、上記変異のうち1つまたは複数と併用される。したがって本発明のもう一つの態様は、髄膜炎菌B群のこのような複合変異株に由来する、上記のようなブレブ免疫原性調製物である。
【0090】
LPSのオリゴ糖部分における不均一性は、さまざまなナイセリア属菌株の間に構造的多様性および抗原性の多様性を生じさせる(Griffiss et al. Inf. Immun. 1987; 55: 1792-1800)。このことを利用して、髄膜炎菌菌株は12の免疫型に細分化された(Scholtan et al. J Med Microbiol 1994, 41:236-243)。免疫型L3、L7、およびL9は免疫学的に同一であって、構造的に類似しており(同一ですらある)、したがってL3,7,9(あるいは本明細書の目的上、総じて「L3」)と称されている。髄膜炎菌LPS L3,7,9 (L3)、L2およびL5をシアル酸付加によって、またはシチジン 5'-モノホスホ-N-アセチルノイラミン酸の付加によって修飾することができる。L2、L4およびL6 LPSは免疫学的に区別することができるが、構造的には類似しており、本明細書でL2という場合はL4もしくはL6をいずれも随意的に本発明の範囲内で代わりに使うことができる。LPSの構造および不均一性に関するこれ以上の説明については、M. P. Jennings et al, Microbiology 1999, 145, 3013-3021 and Mol Microbiol 2002, 43:931-43を参照されたい。
【0091】
ヒトのスフィンゴ糖脂質に含まれるラクト-N-ネオテトラオース オリゴ糖類(Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glcβ1-)に類似した構造が存在するため、L3もしくはL2 LPSに対して生じる抗体の安全性に疑問が投げかけられた。たとえ多くの人々が、残留量のL3 LPSを含有するデオキシコール酸抽出小胞ワクチンによって安全にワクチン接種を受けたとしても(G. Bjune et al, Lancet (1991), 338, 1093-1096; GVG. Sierra et al, NIPH ann (1991), 14, 195-210)、ヒト組織の表面に存在する構造とのあらゆる交差反応を防止することにおいてLOS糖鎖の末端部分の欠失が役立つ。好ましい実施形態において、lgtB遺伝子の不活化は、結果として中間体LPS構造をもたらすが、この構造において末端のガラクトース残基およびシアル酸がなくなっている(この変異はL2およびL3 LOSにおいて4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glcβ1-構造を残す)。このような中間体をL3およびL2 LPS菌株において得ることができる。別のあまり好ましくない(短い)タイプのLPSが、lgtE遺伝子を無効にすることによって得られる。さらに別のあまり好ましくないLPSがlgtA遺伝子を無効にすることによって得られる。このようなlgtA-変異が選択される場合には、免疫原性のないL1免疫型が形成されないようにlgtC発現も止めることが好ましい。
【0092】
本発明者らは、lgtB-が安全性の問題を解決する最適なトランケーションであって、その一方で殺菌抗体応答を依然として誘導することができるLPS感染防御オリゴ糖エピトープをなお保持することを見出したので、LgtB-変異株がもっとも好ましい。
【0093】
したがって、L2もしくはL3調製物(精製品であれ分離されたブレブの状態であれ)または髄膜炎菌ブレブ調製物を追加して含有する本発明の免疫原性組成物は、一般に、好ましくは遺伝子をスイッチオフにすることによって、もっとも好ましくは遺伝子のプロモーターおよび/またはオープンリーディングフレームの全部もしくは一部を欠失させることによって、lgtB, lgtAもしくはlgtE遺伝子からの機能遺伝子産物の発現を永続的にダウンレギュレートするように遺伝子を操作したナイセリア属(好ましくは髄膜炎菌)菌株に由来することが好都合である。
【0094】
lgtBおよびlgtEを含めて、さまざまなlgt遺伝子を含有するナイセリア遺伝子座ならびにその配列が当業界で知られている(M. P. Jennings et al, Microbiology 1999, 145, 3013-3021およびそこに引用された参考文献、ならびにJ. Exp. Med. 180:2181-2190 [1994]を参照されたい)。
【0095】
ブレブ調製物中、特に低濃度のDOCで抽出された調製物中のLPSを本発明の免疫原性組成物中で抗原として使用することができる。しかしながら、ヒト類似ラクト-N-ネオテトラオース構造を除くために、lgtE、lgtA(特にlgtCと組み合わせて)、もしくは好ましくはlgtB遺伝子/遺伝子産物のいずれかの酵素的機能をダウンレギュレート/欠失/不活化することは有用である。LPSオリゴ糖構造の生合成のためのlgt遺伝子を含んでなるナイセリア遺伝子座(およびその配列)が当業界で知られている(M. P. Jennings et al, Microbiology 1999, 145, 3013-3021およびそこに引用された参考文献、ならびにJ. Exp. Med. 180:2181-2190 [1994])。lgtB(もしくは機能遺伝子産物)のダウンレギュレーション/欠失が好ましいのは、それがLPS感染防御エピトープを無傷の状態にしておくからである。
【0096】
本発明の髄膜炎菌血清群Bのブレブ調製物において、siaDおよびlgtBの両者のダウンレギュレーション/欠失が好ましく、(ただし髄膜炎菌Bブレブ生成菌株においてlgtB-をctrA-, ctrB-, ctrC-, ctrD-, synA- (synX- および siaA-に相当する), synB- (siaB-に相当) もしくはsynC- (siaC-に相当)のうちのいずれと組み合わせて用いることもできるが)最適な安全性とLPS感染防御エピトープ保持を伴うブレブ調製物をもたらす。
【0097】
本発明の免疫原性組成物は、少なくとも1、2、3、4もしくは5種類の異なる外膜小胞調製物を含んでなることができる。2種類以上の外膜小胞調製物が含まれる場合、少なくとも1つの本発明の抗原が各外膜小胞においてアップレギュレートされている。このような外膜小胞調製物を、同じ種および血清群のナイセリア属菌株から、または好ましくは異なるクラス、血清群、血清型もしくは免疫型のナイセリア属菌から得ることができる。たとえば、免疫原性組成物は、免疫型L2のLPSを含有する1以上の外膜小胞調製物、および免疫型L3のLPSを含有する1以上の外膜小胞調製物を含むことができる。L2もしくはL3外膜小胞調製物は、LPSオリゴ糖合成遺伝子座において最小の相変異性を有する安定な菌株から得られることが好ましい。
【0098】
好ましいナイセリア属ブレブ調製物
HsfおよびTbpに加えて、1以上の下記遺伝子(感染防御抗原をコードする)が、淋菌および髄膜炎菌(特に髄膜炎菌B)を含めたナイセリア属菌株に関する実施の場合、アップレギュレーションのために好ましい:NspA (WO96/29412), Hap (PCT/EP99/02766), PorA, PorB (NMB 2039), OMP85 (WO 00/23595), PilQ (PCT/EP99/03603), PldA (PCT/EP99/06718), FrpB (WO 96/31618), FrpA/FrpC (WO 92/01460), LbpA/LbpB (PCT/EP98/05117), FhaB (WO 98/02547), HasR (PCT/EP99/05989), lipo02 (PCT/EP99/08315), MltA (WO 99/57280), MafA (NMB 0652), MafB (NMB 0643), Omp26 (NMB 0181), アドヘシン NMB 0315, アドヘシン NMB 0995, アドヘシン NMB 1119, P2086 (NMB 0399), Lipo28 (NMB 2132), NM-ADPRT (NMB 1343), VapD (NMB 1753) および ctrA (PCT/EP00/00135)。これらは、他のグラム陰性細菌へ異種導入される遺伝子としても好ましい。
【0099】
1以上の下記の遺伝子がダウンレギュレーションのために好ましい:PorA, PorB, PilC, LbpA, LbpB, Opa, Opc, htrB, msbB および lpxK。
【0100】
1以上の下記の遺伝子がアップレギュレーションのために好ましい:pmrA, pmrB, pmrE, および pmrF。
【0101】
改変されるべき好ましい抑圧的な制御配列は、furオペレーター領域(特にTbpBもしくはLbpB遺伝子のいずれか一方または両方に関する)およびDtxRオペレーター領域である。
【0102】
1以上の下記の遺伝子がダウンレギュレーションのために好ましい:galE, siaA, siaB, siaC, siaD, ctrA, ctrB, ctrC, および ctrD。
【0103】
本発明の免疫原性組成物はまた、緑膿菌、モラクセラ・カタラーリスおよびインフルエンザ菌bを含めたグラム陰性細菌に由来する外膜小胞/ブレブ調製物を含むことができる。
【0104】
好ましい緑膿菌ブレブ調製物
HsfおよびTbpに加えて、1以上の下記の遺伝子(感染防御抗原をコードする)がアップレギュレーションのために好ましい:PcrV, OprF, OprI。これらは他のグラム陰性細菌へ異種導入される遺伝子としても好ましい。
【0105】
好ましいモラクセラ・カタラーリス ブレブ調製物
HsfおよびTbpに加えて、1以上の下記の遺伝子(感染防御抗原をコードする)がアップレギュレーションのために好ましい:OMP106 (WO 97/41731およびWO 96/34960), HasR (PCT/EP99/03824), PilQ (PCT/EP99/03823), OMP85 (PCT/EP00/01468), lipo06 (英国特許第9917977.2号), lipo10 (英国特許第9918208.1号), lipo11 (英国特許第9918302.2号), lipo18 (英国特許第9918038.2号), P6 (PCT/EP99/03038), ompCD, CopB (Helminen ME, et al (1993) Infect. Immun. 61:2003-2010), D15 (PCT/EP99/03822), OmplA1 (PCT/EP99/06781), Hly3 (PCT/EP99/03257), LbpA and LbpB (WO 98/55606), TbpA and TbpB (WO 97/13785, WO95/13370およびWO 97/32980), OmpE, UspA1 および UspA2 (WO 93/03761), ならびに Omp21。これらは他のグラム陰性細菌へ異種導入される遺伝子としても好ましい。
【0106】
1以上の下記の遺伝子がダウンレギュレーションのために好ましい:CopB, OMP106, OmpB1, LbpA, および LbpB。
【0107】
1以上の下記の遺伝子がダウンレギュレーションのために好ましい:htrB, msbB および lpxK。
【0108】
1以上の下記の遺伝子がアップレギュレーションのために好ましい:pmrA, pmrB, pmrE, および pmrF。
【0109】
好ましいインフルエンザ菌ブレブ調製物
HsfおよびTbpに加えて、1以上の下記の遺伝子(感染防御抗原をコードする)がアップレギュレーションのために好ましい:D15 (WO 94/12641, WO95/12641), P6 (欧州特許第281673号), P2, P5 (WO 94/26304), OMP26 (WO 97/01638), HMW1, HMW2, HMW3, HMW4, Hia, Hap, Hin47, および Hif (ピリンをアップレギュレートするために、このオペロンのすべての遺伝子がアップレギュレートされるべきである)。これらは他のグラム陰性細菌へ異種導入される遺伝子としても好ましい。
【0110】
1以上の下記の遺伝子がダウンレギュレーションのために好ましい:P2, P5, Hif, IgA1-プロテアーゼ、HgpA, HgpB, HMW1, HMW2, Hxu, htrB, msbB および lpxK。
【0111】
1以上の下記の遺伝子がアップレギュレーションのために好ましい:pmrA, pmrB, pmrE, および pmrF。
【0112】
好ましくは、本発明の免疫原性組成物もしくはワクチンは、WO 00/71725の3ページ18行から52ページ2行までにわたる表に記載された配列番号の特定の組み合わせ、および/またはWO 00/71725号の実施例1〜11に記載のあらゆる個々の組み合わせから構成されることはなく、および/またはそうした組み合わせを含むことはない。
【0113】
好ましくは、追加として、または代わりになるべきものとして、WO 01/52885に開示された個別に設定されたいかなる組み合わせも、本発明では請求されない。
【0114】
ワクチン製剤
本発明の好ましい実施形態は、製薬上許容される賦形剤または基剤をさらに含んでなる本発明の免疫原性組成物の製剤である。
【0115】
前記の改変されたあらゆる菌株からの外膜小胞調製物の製造は、当業者によく知られた方法のいずれによっても達成することができる。好ましくは、欧州特許第301992号、米国特許第5,597,572号、欧州特許第11243号もしくは米国特許第4,271,147号に開示された方法が使用される。もっとも好ましくは、WO 01/09350に記載の方法が使用される。
【0116】
ワクチンの調製は一般的にはVaccine Design(“The subunit and adjuvant approach” (eds Powell M.F. & Newman M.J.) (1995) Plenum Press New York)に記載されている。
【0117】
本発明の抗原性組成物は、本発明のワクチン製剤において抗原免疫を増強することができる。好適なアジュバントは、水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)もしくはリン酸アルミニウムといったアルミニウム塩を包含するが、カルシウム塩(特に炭酸カルシウム)、鉄塩もしくは亜鉛塩とすることも可能であり、またはアシル化チロシンもしくはアシル化糖、陽イオンもしくは陰イオンで誘導体化された多糖、またはポリホスファゼンの不溶性懸濁液とすることができる。
【0118】
利用できる好適なTh1アジュバント系には、モノホスホリルリピドA、特に3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA、ならびにモノホスホリルリピドA、好ましくは3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)のアルミニウム塩との組み合わせがある。増強系は、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体の組み合わせ、特にQS21と3D-MPLの組み合わせ(WO 94/00153に記載)、またはやや反応を引き起こしにくい組成物を含むが、この組成物においてQS21はWO 96/33739に記載のようにコレステロールで抑えられている。QS21、3D-MPLおよびトコフェロールを水中油型エマルション中に含む特に強力なアジュバント製剤がWO 95/17210に記載されているが、これは好ましい製剤である。
【0119】
ワクチンはサポニン、さらに好ましくはQS21を含むことができる。ワクチンは水中油型エマルションおよびトコフェロールを含むこともできる。オリゴヌクレオチドを含有するメチル化されていないCpG(WO 96/02555)も、TH1応答の優先的な誘導物質であって、本発明で使用するのに適している。
【0120】
本発明のワクチン製剤を用いて、前記ワクチンを全身もしくは粘膜ルートで投与することによって、感染を受けやすい哺乳動物を感染防御し、または治療することができる。このような投与は、筋肉内、腹腔内、皮内もしくは皮下経路の注射;または口/消化管、気道、尿生殖路への経粘膜投与を包含する。このように、本発明のある態様は、ヒト宿主をグラム陰性細菌の感染によって疾病に対して免疫する方法であるが、その方法は本発明のブレブ調製物の免疫防御用量を宿主に投与することを含んでなる。
【0121】
それぞれのワクチン用量中の抗原量は、典型的なワクチン被接種者において重大な副作用なしに免疫防御応答を誘導する量として選択される。このような量は、どの特異的免疫原が使用されるか、さらにどのように与えられるかということに応じて変動すると考えられる。一般に、それぞれの用量が1〜100μg、好ましくは5〜50μg、およびもっとも典型的には5〜25μgの範囲のタンパク質抗原を含むことが期待される。
【0122】
特定のワクチンについての最適量は、被験体における適正な免疫応答の観察に関わる標準的な研究によって確かめることができる。初回ワクチン接種後、被験体は1回もしくは数回の追加免疫接種を適当な間隔をおいて受けることができる。
【0123】
本発明のポリヌクレオチド
「ポリヌクレオチド」は一般に、あらゆるポリリボヌクレオチドもしくはポリデオキシリボヌクレオチドを指すが、これらは修飾されていないRNAもしくはDNA、または修飾されたRNAもしくはDNAとすることができる。「ポリヌクレオチド」は、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域の混合であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖および二本鎖領域の混合であるRNA、一本鎖である、またはより典型的には二本鎖である、または一本鎖および二本鎖領域の混合であるDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子を限定することなく包含する。さらに「ポリヌクレオチド」は、RNAまたはDNAまたはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域を表す。ポリヌクレオチドという用語はまた、1以上の修飾された塩基を含有するDNAもしくはRNA、および安定性または他の理由のために修飾されたバックボーンを有するDNAもしくはRNAを包含する。「修飾された」塩基はたとえば、トリチル化された塩基、およびイノシンのような普通でない塩基を包含する。DNAおよびRNAに対してさまざまな修飾が行われている;このように「ポリヌクレオチド」は、通常自然状態で見出されるようなヌクレオチドの化学的、酵素的もしくは代謝的に修飾された形態、ならびにウイルスおよび細胞に特有のDNAおよびRNAの化学的形態を包含する。「ポリヌクレオチド」は、比較的短いポリヌクレオチドも包含するが、これはオリゴヌクレオチドと称されることが多い。
【0124】
本発明の別の態様は、TbpおよびHsf様タンパク質、特に本発明のタンパク質の組み合わせに相当するもの、をコードする1以上のポリヌクレオチドを含んでなる免疫原性/ワクチン製剤に関する。こうした技法は当業界で知られており、たとえばWolff et al., Science, (1990) 247: 1465-8を参照されたい。
【0125】
このようなポリヌクレオチドにおけるTbpおよびHsf様タンパク質、好ましくはTbpAおよびHsfの発現は、哺乳類細胞内で発現を駆動することができる真核生物プロモーターの制御下にあると考えられる。ポリヌクレオチドは、他の抗原をコードする配列を追加して含むことができる。このような真核生物プロモーターの例は、アデノウイルスプロモーター、レトロウイルスプロモーターを含めて、哺乳類細胞を宿主として利用するウイルス由来のプロモーターを包含する。あるいはまた、TbpおよびHsf様タンパク質の発現を駆動するために哺乳類のプロモーターを使用することができる。
【0126】
抗体および受動免疫
本発明の別の態様は、グラム陰性細菌もしくは好ましくはナイセリア属細菌、さらに好ましくは髄膜炎菌、そしてもっとも好ましくは髄膜炎菌血清群Bによる感染を治療または予防するために用いることができる免疫グロブリンを産生するために、TbpAおよびHsf様タンパク質を含む免疫原性組成物を使用することである。ポリクローナル抗体を産生するための接種材料は、一般に、たとえば生理食塩水のような生理学的に許容される希釈剤もしくはヒトへの使用に適した他のアジュバント中に抗原性組成物を分散させて水性組成物を作製することによって調製される。免疫賦活性量の接種材料を哺乳動物に投与し、次に、その抗原性組成物が感染防御抗体を誘導するのに十分な期間、接種を受けた哺乳動物を維持する。
【0127】
アフィニティークロマトグラフィーのようによく知られた技法によって、望ましい程度に抗体を分離することができる。
【0128】
抗体は、さまざまな通常使用される動物、たとえばヤギ、霊長類、ロバ、ブタ、ウシ、モルモット、ラットもしくはヒトに由来する抗血清調製物を包含することができる。動物から採血して血清を回収する。
【0129】
本発明にしたがって産生された免疫グロブリンは、完全な抗体、抗体フラグメントもしくはサブフラグメントを包含することができる。抗体は、あらゆるクラス、たとえばIgG, IgM, IgA, IgD もしくはIgEの完全な免疫グロブリン、キメラ抗体もしくはTbpおよびHsfに対する二重特異性を有するハイブリッド抗体とすることができる。これらはまた、フラグメント、たとえばF(ab’)2, Fab’, Fab, Fvおよびハイブリッドフラグメントを含めた同等なものであってもよい。免疫グロブリンはまた、特異的な抗原に結合して複合体を形成する抗体のように作用する、天然に存在するタンパク質、合成タンパク質、または遺伝子操作によって作製されたタンパク質も包含する。
【0130】
本発明のワクチンはレシピエントに投与されるが、このレシピエントはその後、特定のワクチンからの攻撃に応じて産生される免疫グロブリンの供給源となる。このように処理された被験体が血漿を提供し、その血漿から高度免疫グロブリンが従来の血漿分画法によって得られることとなる。高度免疫グロブリンは、ナイセリア属細菌感染に対して抵抗し、またはそれを治療するために、別の被験体に投与されることになる。本発明の高度免疫グロブリンは、乳幼児、免疫無防備状態の個体において、または治療が必要であるがその個体がワクチン接種に応答して抗体を産生する時間がない場合に、ナイセリア属細菌疾患を治療もしくは予防するために特に有用である。
【0131】
本発明のさらに別の態様は、TbpAおよびHsfに対して反応性のモノクローナル抗体を含んでなる医薬組成物であるが、この組成物を用いてグラム陰性細菌もしくは好ましくはナイセリア属細菌、さらに好ましくは髄膜炎菌、そしてもっとも好ましくは髄膜炎菌血清群Bによる感染を治療または予防することができるものである。
【0132】
このような医薬組成物は、あらゆるクラス、たとえばIgG, IgM, IgA, IgD もしくはIgEの完全な免疫グロブリン、キメラ抗体、またはTbpおよびHsf様タンパク質に対して二重特異性を有するハイブリッド抗体とすることができるモノクローナル抗体を含んでなる。これらはまた、フラグメント、たとえばF(ab’)2, Fab’, Fab, Fvおよびハイブリッドフラグメントを含めた同等なものであってもよい。
【0133】
モノクローナル抗体を作製する方法は、当業界でよく知られており、脾細胞と骨髄腫細胞との融合を包含することができる(Kohler and Milstein 1975 Nature 256; 495; Antibodies - a laboratory manual Harlow and Lane 1988)。あるいはまた、モノクローナルFvフラグメントは、適当なファージディスプレイライブラリをスクリーニングすることによって得ることができる(Vaughan TJ et al 1998 Nature Biotechnology 16; 535)。モノクローナル抗体を、当業界でよく知られた技法を用いて、ヒト化する、または部分的にヒト化することもできる。
【0134】
血清殺菌性アッセイ
血清殺菌性アッセイは、免疫原性組成物中で併用したときの抗原間の相乗的な関係を評価する好ましい方法である。
【0135】
このような相乗的な応答は、複数の抗原の併用によって誘導されるSBAが、各抗原によって別々に誘導されるSBAよりも、少なくとも50%、2倍、3倍、好ましくは4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、そしてもっとも好ましくは10倍高いことよって特徴付けられる。SBAは、抗原の由来する元の同種菌株に対して測定されることが好ましいが、異種菌株のパネルに対して測定することも好ましい。(代表的なパネルについては下記を参照されたい、たとえばA-4クラスターに属するBZ10(B:2b:P1.2);ET-37複合体に属するB16B6(B:2a:P1.2);およびH44/76(B:15:P1.7,16))。SBAは、髄膜炎菌ワクチンの有効性を評価するための、もっとも一般に認められている免疫学的マーカーである(Perkins et al. J Infect Dis. 1998, 177:683-691)。十分なSBAを、あらゆる既知の方法によって確認することができる。SBAは、動物モデル(実施例6〜9を参照されたい)、またはヒト被験体から得られた血清を用いて実施することができる。
【0136】
ヒト血清を用いてSBAを実施するさらに好ましい方法は、下記の通りである。第1回ワクチン接種の前、第2回ワクチン接種の2ヶ月後、および第3回ワクチン接種の1ヶ月後に血液サンプルを採る(1年間に3回のワクチン接種は、たとえば、0.2および4ヶ月、または0.1および6ヶ月に投与される、典型的なヒトの初回ワクチン接種スケジュールである)。このようなヒト初回ワクチン接種スケジュールを1歳未満の乳児に対して(たとえばHibワクチン接種の実施と同時に)または2〜4歳児に対して行うことができるが、青年にワクチン接種をして初回ワクチン接種スケジュールによるSBAを調べることができる。追加の血液サンプルを初回ワクチン接種の6または12ヶ月後、および該当する場合は追加免疫投与の1ヶ月後に採取することができる。
【0137】
(2〜4歳児もしくは青年、好ましくは0歳児において)(初回ワクチン接種スケジュールのうち)第3回ワクチン投与の1ヶ月後に、本発明の抗原の起源とした髄膜炎菌菌株に対するSBA(抗体希釈)力価について4倍増加(ワクチン接種前の力価と比べて)した被験体の割合が、30%より大きい、好ましくは40%より大きい、さらに好ましくは50%より大きい、さらにもっとも好ましくは被験体の60%より大きいならば、SBAは同種殺菌活性を有する抗原もしくはブレブ調製物について申し分ないと思われる。
【0138】
もちろん、異種殺菌活性を有する抗原もしくはブレブ調製物も、その起源である髄膜炎菌菌株に対しても十分なSBAを誘導することができるならば、同種殺菌活性を有するブレブ調製物となることもありうる。
【0139】
(2〜4歳児もしくは青年においてであるが、好ましくは0歳児において)(初回ワクチン接種スケジュールのうち)第3回ワクチン投与の1ヶ月後に、髄膜炎菌の異種菌株3株に対するSBA(抗体希釈)力価について4倍増加(ワクチン接種前の力価と比べて)した被験体の割合が、20%より大きい、好ましくは30%より大きい、さらに好ましくは35%より大きい、さらにもっとも好ましくは被験体の40%より大きいならば、SBAは異種殺菌活性を有する抗原もしくはブレブ調製物について申し分ないと思われる。こうしたテストは、異種殺菌活性を有する抗原もしくはブレブ調製物がさまざまな髄膜炎菌菌株に対する交差殺菌抗体を誘導することができるかどうかについて良好な示唆となる。好ましくは、3つの異種菌株は、相互に異なり、しかも好ましくは異種殺菌活性を有する抗原もしくはブレブ組成物の作製または由来するもとになった菌株とも異なる、電気泳動型(ET)複合体もしくは多座配列タイピング(MLST)パターン(Maiden et al. PNAS USA 1998, 95:3140-5を参照されたい)を有するはずである。当業者は容易に、異なるET-複合体を有する3つの菌株を決定することができるが、ここでこれらの菌株は、髄膜炎菌の間に、とりわけ髄膜炎菌B型菌株(これは重大な病苦の原因と認識される、および/または、認められたMenB高病原性系統に相当する)の間に認められる遺伝子の多様性を反映している(Maiden et al.上記)。たとえば、使用できる3菌株は下記の通りである:A-4クラスターに属するBZ10 (B:2b:P1.2);ET-37複合体に属するB16B6 (B:2a:P1.2);およびET-5複合体に属するH44/76 (B:15:P1.7,16)、または同じET/クラスターに属する他のあらゆる菌株。たとえばET-5複合体に属する髄膜炎菌菌株CU385(B:4:P1.15)から作製され、すなわちそれに由来する、異種殺菌活性を有する抗原もしくはブレブ調製物をテストするためにこのような菌株を使用することができる。使用できる別のサンプル菌株は、Lineage 3 伝染性クローンに由来する(たとえばNZ124[B:4:P1.7,4])。もう一つのET-37菌株は、NGP165(B:2a:P1.2)である。
【0140】
SBA活性を測定する方法は当業界で知られている。たとえば、使用できる方法はWO 99/09176の実施例10Cに記載されている。一般論として、テストする菌株の培養物は、(好ましくは培地中にADDAのような鉄キレート剤を添加することによって鉄欠乏条件下で)生育し対数増殖期にある。これを、約20000 CFU/mlに調整した実験用細胞懸濁液を得るために、BSA含有培地(たとえば、0.3% BSA含有Hanks培地)に懸濁することができる。テストすべき血清の一連の2倍濃度希釈物(好ましくは30分間56℃にて熱失活させる)[たとえば、50μl/ウェルの容量として]とテストすべき髄膜炎菌菌株懸濁液20000 CFU/ml[たとえば、25μl/ウェルの容量として]を混合して、一連の反応混合物を作製することができる。反応バイアルをインキュベートしつつ(たとえば37℃にて15分間)振盪する(たとえば210rpmで)。最終反応混合物[たとえば100μlの容量]は、補体供給源[たとえば、最終容量の25%のプレテスト済み仔ウサギ血清]を追加して含有し、上記のようにインキュベートする[たとえば37℃で60分間]。ポリスチレン製滅菌U底96ウェルマイクロタイタープレートをこのアッセイに使用することができる。一定分量[たとえば10μl]を、マルチチャンネルピペットを用いて各ウェルから採り、Mueller-Hintonアガープレート(好ましくは1% Isovitalexおよび1%熱失活ウマ血清を含有する)上に滴下し、インキュベートすることができる(たとえば、5% CO2中で37℃にて18時間)。好ましくは、一定分量当たり80 CFUまで個々のコロニーを計数することができる。下記の3つのテストサンプルが対照として用いられる:バッファー+細菌+補体;バッファー+細菌+不活化補体;血清+細菌+不活化補体。回帰計算によって、50%細胞死滅に相当する希釈物の測定値を与えるデータを処理するプログラムを用いて、SBA力価を直接算出することができる。
【0141】
本特許明細書に記載の参考文献もしくは特許出願はすべて、参考として本明細書に含めるものとする。
【実施例】
【0142】
本発明の産業上の利用方法
下記の実施例は標準的な技法を用いて実施されるが、その方法は詳細に記載された以外は当業者によく知られており、日常的なものである。実施例は説明を目的とし、本発明を限定するものではない。
【0143】
実施例1:外膜小胞調製物に使用される髄膜炎菌血清群Bの菌株を構築する方法
WO01/09350は、外膜小胞を調製し、その外膜小胞を得るもとになる細菌菌株を操作する詳細な方法を提供する。外膜小胞がTbpBのようなリポタンパク質および/またはリポ多糖を保持すべき場合、低レベルのデオキシコール酸を用いた分離法、もしくはデオキシコール酸なしの分離法が好ましい。
【0144】
実施例2:機能遺伝子cpsを欠失しているがPorAを発現する組換え髄膜炎菌血清群B菌株におけるHsfタンパク質抗原のアップレギュレーション
WO01/09350の実施例に記載のように、一部の国々においては、外膜小胞中のPorAの存在が有利となる可能性があり、組換え改良ブレブのワクチン効力を強めることができる。下記の実施例では、機能遺伝子cpsを欠失しているがPorAを発現する菌株においてHsfタンパク質抗原の発現をアップレギュレートするために、改変されたpCMK(+)ベクターを使用した。元のpCMK(+)ベクターは、lacIqを発現する大腸菌宿主においては抑えられているが髄膜炎菌においては転写活性を有する、キメラporA/lacOプロモーターを含有する。改変されたpCMK(+)では、hsf遺伝子の転写を誘導するために天然型porAプロモーターが使われた。Hsfをコードする遺伝子を、下記の表に示すHSF 01-NdeIおよびHSF 02-NheIオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCR増幅した。HSF 01-NdeIプライマーの配列に起因して、発現されるHsfタンパク質は5’末端に2つのメチオニン残基を含有することになる。PCR増幅に使用した条件は、製造業者の記載した条件とした(HiFi DNA ポリメラーゼ、Boehringer Mannheim, GmbH)。温度サイクルは下記の通りとした:25回(94℃1分、48℃1分、72℃3分)および1回(72℃10分、回収まで4℃)。対応するアンプリコン(単位複製配列)をその後、pCMK(+)ベクターの対応する制限酵素切断部位にクローニングした。pCMK(+)-Hsfと呼ばれるこの組換えプラスミドにおいて、組換えPCRストラテジーによってキメラporA/lacOプロモーターに存在するlacOを欠失させた。このpCMK(+)-Hsfプラスミドを鋳型として使用して、2つの別個のDNA断片をPCR増幅した:
- 断片1は、porA 5’ recombinogenic領域、カナマイシン耐性遺伝子およびporAプロモーターを含有する。使用したオリゴヌクレオチドプライマー、RP1(SacII)およびRP2は下記の表に示す。RP1プライマーはlacオペレーターのすぐ上流の配列と相同である。
【0145】
- 断片2は、porA遺伝子に由来するShine-Dalgarno配列、hsf遺伝子およびporA 3’ recombinogenic領域を含有する。使用したオリゴヌクレオチドプライマー、RP3およびRP4(ApaI)は下記の表に示す。RP3プライマーはlacオペレーターのすぐ下流の配列と相同である。断片1の3’末端および断片2の5’末端は48塩基の重複がある。各PCR(1および2)500ngを、プライマーRP1およびRP4を用いた最後のPCR反応に使用した。得られた最終アンプリコンを、SacIIおよびApaIによって制限酵素切断したpSL1180ベクターにサブクローニングした。改変されたプラスミドpCMK(+)-Hsfを、QIAGEN maxiprepキットを用いて大量に精製し、これを材料として使用して機能するcps遺伝子を欠失した髄膜炎菌血清群B菌株を形質転換した。porAの発現を保存するために、単一の交差に起因する組み込みを、PCRとウェスタンブロットスクリーニング法を併用して選択する。porA特異的PCRおよびウェスタンブロットによって陽性と判定されたカナマイシン耐性クローンをグリセロールストックとして-70℃で保存し、その後の研究に使用した。細菌(5x108細菌に相当する)をPAGE-SDSバッファー50μl中に再懸濁し、凍結(-20℃)/煮沸(100℃)を3回行った後、12.5%ゲルによるPAGE-SDS電気泳動によって分離した。Hsfの発現をNmB[Cps-, PorA+]もしくはNmB[Cps-, PorA+, Hsf+]由来の全細胞細菌溶解物(WCBL)で調べた。クーマシー染色はHsf発現の相当な増加を検出した(内因性Hsfレベルに対して)。この結果は、改変されたpCMK(+)-Hsfベクターが機能し、これを巧く利用して、主要なPorA外膜タンパク質抗原の生産を損なうことなく外膜タンパク質の発現をアップレギュレートすることができることを確認するものである。
【表1】

【0146】
実施例3:プロモーターの置き換えによる髄膜炎菌血清群BのtbpA遺伝子のアップレギュレーション
この実験の目的は、TbpA抗原の産生をアップレギュレートするためにtbpA遺伝子の内在性プロモーター領域を強力なporAプロモーターで置き換えることとした。その目的のために、大腸菌クローニング法によってプロモーター置き換えプラスミドを構築した。tbpAコード配列の上流にあるDNA領域(731 bp)が、髄膜炎菌ATCC 13090株に関する民間のIncyte PathoSeqデータベースから見出された。このDNAはTbpB抗原をコードする配列を含有する。この遺伝子はオペロン内に配置されている。このtbpB遺伝子を欠失させて、CmR/porAプロモーターカセットに置き換えることとする。そのために、取り込み配列ならびにNheIおよびHindIII制限酵素切断部位(下線)を含むオリゴヌクレオチドBAD16(5’- GGC CTA GCT AGC CGT CTG AAG CGA TTA GAG TTT CAA AAT TTA TTC-3’)およびBAD17((5’-GGC CAA GCT TCA GAC GGC GTT CGA CCG AGT TTG AGC CTT TGC-3’)を用いて、tbpB遺伝子の509bp 5’隣接領域に相当する3218bpのDNA断片、2139bp tbpBコード配列、87bp遺伝子間配列およびtbpAコード配列の最初の483ヌクレオチドを、髄膜炎菌血清群BゲノムDNAからPCR増幅した。このPCR断片をHigh Pure Kit (Boehringer Mannheim, Germany)で精製し、直接pGemTベクター(Promega, USA)にクローニングした。(i) CmR/porAプロモーターカセットのクローニングを可能にする適当な制限酵素切断部位を挿入するために、さらに(ii) tbpBの209bp 5’隣接配列およびtbpBコード配列を欠失させるために、このプラスミドをサークルPCR変異誘発(Jones & Winistofer (1992))に供した。適当な制限酵素切断部位XmaI, BglIIおよびXhoI(下線)を含むオリゴヌクレオチドBAD 18 (5’-TCC CCC GGG AAG ATC TGG ACG AAA AAT CTC AAG AAA CCG-3’) および BAD 19 (5’-GGA AGA TCT CCG CTC GAG CAA ATT TAC AAA AGG AAG CCG ATA TGC AAC AGC AAC ATT TGT TCC G -3’)を用いてサークルPCRを行った。CmR/porAプロモーターカセットを、既述のpUC D15/Omp85プラスミドから、適当な制限酵素切断部位XmaI, SpeI, BglIIおよびXhoI(下線)を含有するプライマーBAD21 (5’- GGA AGA TCT CCG CTC GAG ACA TCG GGC AAA CAC CCG-3’) および BAD20 (5’- tcc ccc ggg aga tct cac tag tat tac cct gtt atc cc-3’)を用いて増幅した。このプラスミドを用いて、髄膜炎菌血清群B〔cps-〕および〔cps- porA-〕株を形質転換することとする。tbpAの上流領域での二重乗換えによる組み込みが、tbpA ATGのすぐ上流にporAプロモーターの挿入を導く。
【0147】
実施例4:2つの抗原:TbpAおよびHsfの発現がアップレギュレートされた髄膜炎菌血清群B菌株の構築
この実験の目的は、同一の髄膜炎菌血清群B菌株においてTbpAおよびHsfの発現を同時にアップレギュレートすることとした。TbpAの産生は、内在性プロモーター領域を強力なporAプロモーターで置き換えることによってアップレギュレートされた(プロモーター置き換え)。これに関連して、tbpAの上流にあるtbpB遺伝子が欠失しているため、TbpBタンパク質は外膜中にもはや存在しない。Hsfの発現は、porA遺伝子座にもう一つの対応する遺伝子のコピーを挿入(相同的組換え)することによってアップレギュレートされた。2つの菌株はいずれもWO01/09350と称される別の特許において記載されている。両者の戦略に使用された選択マーカー(CmRもしくはKanR)は、同一染色体への両者の組込みを併せて行うことを可能にした。
【0148】
全ゲノムDNAを組換えNm.B cps-/TbpA+/PorA+菌株から、Qiagen Genomic-tip 500-Gプロトコールによって抽出した。DNA 10μgを一晩DraIII制限酵素によって切断処理し、古典的な形質転換法によって髄膜炎菌血清群Bを形質転換するために使用した。形質転換に使用する細胞は組換えNmB cps-/Hsf+/PorA+ (porA遺伝子座への1回乗換えによる相同的組換え)または組換えNmB cps-/Hsf+/PorA- (porA 遺伝子座への2回乗り換えによる対立遺伝子交換/相同的組換え)のいずれかとした。これらを200μg/mlカナマイシン含有GC寒天上に一晩プレーティングし、GC液体培地10 mM MgCl2中にOD650=0.1となるよう希釈し、GraIII制限酵素切断ゲノムDNA 10μgとともに激しく撹拌しながら37℃にて6時間インキュベートした。二重乗換え事象(PCRスクリーニング)の結果生じた組換え髄膜炎菌を、200μg/mlカナマイシンおよび5μg/mlクロラムフェニコール含有GC培地上で選択し、外膜小胞調製物中のTbpAおよびHsfの発現を分析した。図1に示すように、TbpA/Hsf組換えNmB菌株から調製された外膜小胞中でTbpAおよびHsfの産生は、対照のNmB cps-菌株から調製された外膜小胞と比較して、いずれも有意に増加した。二重組換え体における各タンパク質の過剰発現レベルは、対応する一重組換え体で得られる発現レベルに匹敵する。TbpAおよびHsfの過剰発現レベルは、PorA+およびPorA-菌株でのレベルに比較しうるものであった(データ示さず)。まとめると、上記のデータは次のことを立証する:(i)髄膜炎菌において TbpAおよびHsfの発現を、ひとまとめにして同時にアップレギュレートすることができる、さらに(ii) TbpAおよびHsfの濃度の高い組換えブレブを得ることができるので、それを免疫化に使用することができる。
【0149】
外膜小胞のTbpAおよびHsf含量の分析
SDS-PAGEのクーマシーブルー染色
TbpAもしくはHsfがアップレギュレートした、またはTbpAおよびHsfがいずれもアップレギュレートした外膜小胞調製物中のタンパク質15μgをβメルカプトエタノール含有サンプルバッファー中に希釈して、95℃にて10分間加熱した。そのサンプルを次に、SDS-PAGEポリアクリルアミドゲル(Novex 4〜20% Tris-glycine 1.5 mm 2Dwell SDS Page)で泳動し、クーマシーブルーで1時間染色して、数回洗浄して脱染色した。結果を図1に示すが、この図は、TbpAおよびHsfのレベルが、それらの発現レベルを高めた髄膜炎菌から得られた外膜小胞調製物においてかなり高いことを示す。
【0150】
実施例5:Hsfおよび/またはTbpAのアップレギュレーションを伴う外膜小胞の免疫原性
マウス20匹からなるグループを、第0日、21日および28日に筋肉内経路によって、外膜小胞を用いて3回免疫処置した。各回の接種は、MPLを含有するAIPO4によって製剤された外膜小胞5μg(タンパク質含量)によって行った。この外膜小胞は、莢膜多糖およびPorAがダウンレギュレートされるように操作された髄膜炎菌H44/76菌株から得られた。Hsf、TbpA、もしくはHsfおよびTbpAの両方がアップレギュレートされた、またはどちらもアップレギュレートされない、外膜小胞の比較を行った。第41日に、ELISAによる分析、または血清殺菌性アッセイによる分析のために血液サンプルを採取した。
【0151】
Hsfに対する抗体を検出するためのELISA
96ウェルマイクロプレート(Nunc, Maxisorb)を、4℃にて一晩、PBS中1μg/mlの特異的抗原100μlを用いてコートした。150 mM NaCl、0.05% Tween 20で洗浄後、プレートを30分間室温にて振盪する状況の下で、1% PBS-BSA 100μlで飽和させた。(室温で30分間振盪する状況下で、希釈バッファーとして0.2% PBS-BSAを用いて実施される)各ステップの間に、NaCl-Tween 20で洗浄することによって過剰な試薬を除去した。希釈された血清サンプル100μlをマイクロウェルごとに添加した。結合した抗体を、ビオチン化抗マウスIg(Prosan)(1/2000)によって認識した。ストレプトアビジン-ビオチン化ペルオキシダーゼ複合体(Amersham)(1/4000)とともにインキュベートすることによって、抗原-抗体複合体が明らかとなった。アッセイを明らかに示すためにオルト-フェニレンジアミン/H2O2(4 mg/10ml 0.1Mクエン酸バッファーpH4.5+5μl H2O2)を使用する。プレートを暗黒下で室温にて15分間インキュベートしたのち、1N HCl 50μlの添加によって反応を止めた。490nmの吸光度を読み取った。
【表2】

【0152】
上記の表に示された結果は、Hsfのアップレギュレーション、またはHsfおよびTbpAの両方のアップレギュレーションを有する外膜小胞を用いた免疫化によって、Hsfに対する高い抗体力価および同等の抗体力価が生じたことを示す。実際、アジュバントのみの接種後、もしくはHsfもTbpAもアップレギュレートされなかった外膜小胞の接種後、もしくはTbpAのみがアップレギュレートされた外膜小胞を接種後、Hsfに対する抗体は、検出されなかった。
【0153】
実施例6:Hsfおよび/またはTbpAがアップレギュレートされた外膜小胞に対して生じる抗血清の血清殺菌活性
Hsf、TbpA、もしくはHsfおよびTbpAの両方がアップレギュレートされた外膜小胞、またはアップレギュレーションのない外膜小胞による接種を受けたマウスから得られた抗血清の血清殺菌活性を、同種菌株H44/76または異種菌株Cu385のいずれかを用いたアッセイで比較した。血清殺菌性アッセイが感染防御と優れた相関関係を示すことが明らかとなったので、血清殺菌性アッセイは感染防御免疫応答を誘導するにあたって候補組成物がどの程度有効であるかの良好な指標となる。
【0154】
髄膜炎菌血清群B野生株(H44/76菌株=B:15 P1.7,16 L3,7,9 およびCU385菌株=B: 4 P1.19,15 L3,7,9)を、MH + 1% Polyvitex + 1%ウマ血清のペトリ皿で37℃+5% CO2にて一晩培養した。これらを、50μM デスフェラール(鉄キレート剤)を添加した液体TSB培地中で3時間、37℃にて、振盪下で継代培養し、470nmでの光学密度が約0.5に達した。
【0155】
プールした血清、もしくは個別の血清を、40分間56℃で失活させた。0.3% HBSS-BSAで 血清サンプルを1/100希釈した後、丸底マイクロプレート中で、50μlの容量で2倍段階希釈した(8希釈物)。
【0156】
適当なODの細菌を0.3% HBSS-BSAで希釈して1.3 x 104 CFU/mlとした。この希釈物37.5μlを前記血清希釈物に加え、マイクロポレートを振盪下で37℃にて15分間インキュベートした。その後、ウサギ補体12.5μlを各ウェルに添加した。37℃にて振盪下で1時間インキュベートした後、マイクロプレートを氷上に置き、殺菌を終止した。
【0157】
傾斜法によって、各ウェルの20μlをMH + 1% Polyvitex + 1%ウマ血清のペトリ皿にプレーティングし、37℃+CO2にて一晩インキュベートした。CFUをカウントし、死滅率を計算した。血清殺菌性力価は、50%以上の死滅率を与える最終希釈度とする。
【表3】

【0158】
上の表に示したのと同様の結果が、他の2つの同じような実験から得られた。
【0159】
HsfとTbpAの両者がアップレギュレートされた外膜小胞を用いたワクチン接種後に、同種菌株および異種菌株に対する殺菌性力価(GMT)の劇的な増加が見られた。比較すると、HsfもしくはTbpAのアップレギュレートされた外膜小胞によるワクチン接種を受けたマウスで測定された殺菌性GMTは、対照の外膜小胞でワクチン接種を受けたマウスについて得られたGMTと同程度であった。
【0160】
二重のアップレギュレーションの利点は、相当なレベルの殺菌性抗体(1/100より高い力価の)を産生するマウスの割合においても、特に同種菌株を用いた実験において、明らかに認められる。
【0161】
実施例7:抗Hsf血清と抗TbpA血清を混合することの殺菌活性に対する影響
マウス20匹からなるグループを、第0日、21日および28日に筋肉内経路によって、外膜小胞を用いて3回免疫処置した。各回の接種は、MPLを含有するAIPO4によって製剤された外膜小胞5μg(タンパク質含量)によって行った。この外膜小胞は、莢膜多糖およびPorAがダウンレギュレートされるように操作された髄膜炎菌H44/76菌株から得られた。1群のマウスは、タンパク質のアップレギュレーションのない対照の外膜小胞で免疫化した。第2群では、Hsf発現がアップレギュレートされ、第3群では、TbpA発現がアップレギュレートされており、さらに第4群では、HsfとTbpAの両方の発現がアップレギュレートされた。
【0162】
同一群のマウスから得られた血清を用いて、またはHsf単独もしくはTbpA単独でアップレギュレートされたマウス群から分離された血清を混合することによって、血清をプールした。血清殺菌活性はそれぞれのプールされた血清について測定され、その結果を下表に示す。
【表4】

【0163】
上記の表からの結果は、抗Hsfおよび抗TbpA抗血清を混合することは、結果として、一方の抗血清によって個別に達成されるよりも非常に高い血清殺菌活性をもたらした。相乗効果は、HsfとTbpAの両方に対する抗体の存在によって達成されると思われる。
【0164】
実施例8:トランケート型Hsfタンパク質は相乗的にTbpAと併用することができる
標準的な分子生物学的手法によって一連のトランケート型Hsf構築物を作製した。これは、Hsfの1-54のアミノ酸(Hsfのシグナル配列を含有する)および134-592のアミノ酸をコードする構築物(Tr1Hsf)を包含する。もう一つのトランケート型Hsfは、Hsfのシグナル配列を有する1-53のアミノ酸とそれに続くHsfの238-592アミノ酸を含有する(Tr2Hsf)。これら2つのトランケート型Hsf構築物および全長Hsfを髄膜炎菌B菌株MC58 siaD-, Opc-, PorA-に導入してそれらの発現がアップレギュレートされるようにし、上記の方法によって外膜小胞を作製した。
【0165】
外膜小胞調製物をAl(OH)3に吸着させて、第0日、21日および28日にマウスに注入した。第42日に、マウスから採血し、血清を調製した。この血清を、TbpAがアップレギュレートされた外膜小胞によるワクチン接種を受けたマウス由来の血清と混合し、上記のように血清殺菌性アッセイを行った。
【0166】
結果
【表5】

【0167】
上記の表に示す結果は、第1のトランケーション(Tr1Hsf)が免疫応答を誘導し、TbpAに対する抗血清と併用して、全長Hsfを使用する場合よりも高い血清殺菌活性を生じる能力を有することを示す。しかしながら、トランケーションの範囲が重要であって、Tr2で生じたトランケーションは全長Hsfと比較して有害な影響を及ぼす。Tr1Hsfの殺菌活性の増大は、使用した2株のいずれに対しても認められた。
【0168】
実施例9:TbpA、Hsfおよび第3の髄膜炎菌タンパク質に対する抗体の血清殺菌活性
髄膜炎菌H66/76株において、PoaAおよび莢膜多糖は上記のようにダウンレギュレートされているが、この菌株を、上記の方法によってTbpAおよびHsf、LbpB、D15、PilQもしくはNspAをアップレギュレートするためのバックグラウンド菌株として使用した。各菌株から上記のように外膜小胞を調製した。PCT/EP99/02766、WO92/01460およびWO98/02547に記載のように当業界でよく知られている技法によって組換えFhaB、FrpC、FrpA/CおよびHapを作製した。
【0169】
外膜小胞調製物および組換えタンパク質をAl(OH)3に吸着させて、第0日、21日および28日にマウスに注入した。第42日に、マウスから採血し、血清を調製した。TbpAおよびHsfをアップレギュレートした外膜小胞に対する血清を、LbpB、D15、PilQもしくはNspAをアップレギュレートした外膜小胞、または組換えFhaB、FrpC、FrpA/CもしくはHapによるワクチン接種を受けたマウス由来の血清と混合し、上記のように血清殺菌性アッセイを行った。
【0170】
結果
結果を下記の表に示す。同種のH44/76株を用いたアッセイでは、第3の髄膜炎菌抗原に対する抗体の添加は、FrpC以外は、TbpAおよびHsf単独に対する抗体によって生じるより高い血清殺菌性力価を生じなかった。
【0171】
しかしながら、第3の抗原に対する抗体の添加は、異種菌株を用いた血清殺菌性アッセイにおいて有用である。D15(OMP85)、Hap、FrpA/CおよびLbpBに対する抗体は、CU385菌株に対する血清殺菌性力価の増加に特に有効である。
【表6】

【0172】
実施例10:同種および異種菌株において殺菌性免疫応答を誘導する能力に対する外膜小胞中のFrpB KOの影響
髄膜炎菌H44/76の2菌株を使用して、0.1% DOC抽出によってWO01/09350に記載のように外膜小胞を調製し、LOS含量をおよそ20%となるようにした。B1733株はsiaD(-)、PorA(-)であって、Tr1 Hsf(実施例8)がアップレギュレートされており、lgtBはノックアウトされている。B1820株はsiaD(-)、PorA(-)であって、Tr1 Hsfがアップレギュレート、lgtBはノックアウトされ、さらにFrpBもノックアウトされている。いずれの菌株も60μMデスフェラールを添加した培地で培養したため、LbpA/BおよびTbpA/Bといった鉄調節性タンパク質がアップレギュレートされている。
【0173】
このブレブ調製物をAl(OH)3に吸着させて、5μgを、第0日および第21日に30匹からなるマウス群に筋肉注射した。第28日に血液試料を採取した。
【0174】
血清殺菌性アッセイを、3種類のL3菌株(同種野生株H44/76および2種類の異種L3菌株;NZ124およびM97250687)について実施例6に記載のように実施した。
【0175】
結果
【表7】

【0176】
この結果は、FrpB KO(B1820)ブレブがFrpB(+)ブレブ(B1733)より優れた異種交差殺菌性応答を誘導することを明白に示す。SBA力価が高く、しかもNZ124およびM97250687株において抗体陽転したマウスの割合も高い。同種菌株における結果は、FrpBが欠失した場合にはそれほど良好ではなかった。
【0177】
上記データは、FrpBが免疫応答を誘導するが、その外膜タンパク質が非常に変化しやすいためにこのタンパク質に対する抗体は同種菌株の死滅しか誘導できないことを示唆する。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】髄膜炎菌の種々の菌株に由来する外膜小胞調製物中のHsf、TbpAおよびNspAの発現レベルを示すクーマシー染色ゲル。レーン1 − 分子量マーカー;レーン2 − 莢膜多糖がダウンレギュレートされたH44/76株から調製された外膜小胞;レーン3 − 莢膜多糖およびPorAがダウンレギュレートされたH44/76株から調製された外膜小胞;レーン4 − 莢膜多糖およびPorAがダウンレギュレートされ、NspAがアップレギュレートされたH44/76株から調製された外膜小胞;レーン5 − 莢膜多糖およびPorAがダウンレギュレートされ、HsfがアップレギュレートされたH44/76株から調製された外膜小胞;レーン6 − 莢膜多糖およびPorAがダウンレギュレートされ、TbpAがアップレギュレートされたH44/76株から調製された外膜小胞;レーン7 − 莢膜多糖およびPorAがダウンレギュレートされ、TbpAおよびHsfがアップレギュレートされたH44/76株から調製された外膜小胞;レーン8 − 莢膜多糖およびPorAがダウンレギュレートされ、TbpAおよびNspAがアップレギュレートされたH44/76株から調製された外膜小胞。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の、または異なるグラム陰性細菌に由来する、単離されたトランスフェリン結合タンパク質(Tbp)またはその抗原性断片、および単離されたHsf様タンパク質またはその抗原性断片を含んでなる免疫原性組成物。
【請求項2】
トランスフェリン結合タンパク質またはその断片、およびHsf様タンパク質またはその断片がナイセリア属細菌(Neisseria)に由来する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
トランスフェリン結合タンパク質またはその断片が髄膜炎菌(N. meningitidis)に由来する、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
Hsf様タンパク質またはその断片が髄膜炎菌に由来する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
トランスフェリン結合タンパク質またはその断片が髄膜炎菌血清群Bに由来する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
Hsf様タンパク質またはその断片が髄膜炎菌血清群Bに由来する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
トランスフェリン結合タンパク質またはその断片が淋菌(N. gonorrhoeae)に由来する、請求項1〜6のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
Hsf様タンパク質またはその抗原性断片が淋菌に由来する、請求項1〜7のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
トランスフェリン結合タンパク質またはその抗原性断片がモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)に由来する、請求項1〜8のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
Hsf様タンパク質またはその抗原性断片がモラクセラ・カタラーリスに由来する、請求項1〜9のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
トランスフェリン結合タンパク質またはその抗原性断片がインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)に由来する、請求項1〜10のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
Hsf様タンパク質またはその抗原性断片がインフルエンザ菌に由来する、請求項1〜11のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
トランスフェリン結合タンパク質がTbpAまたはその抗原性断片である、請求項1〜12のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
高分子量型TbpA、または低分子量型TbpA、または高分子量型TbpAおよび低分子量型TbpAの両方を含んでなる、請求項13に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
Hsf様タンパク質がHsfまたはその抗原性断片である、請求項1〜14のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
ナイセリア属細菌、モラクセラ・カタラーリスまたはインフルエンザ菌感染に対する感染防御応答を生じることができるTbpおよび/またはHsf様タンパク質の抗原性断片を含んでなる、請求項1〜15のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
TbpAおよび/またはHsfの抗原性断片を含んでなる、請求項16に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
TbpおよびHsf様タンパク質またはそれらの抗原性断片からなる融合タンパク質を含んでなる、請求項1〜17のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
TbpAおよびHsfまたはナイセリア属細菌に対する感染防御応答を生じることができるそれらの抗原性断片からなる融合タンパク質を含んでなる、請求項18に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
トランスフェリン結合タンパク質およびHsf様タンパク質の発現が、非改変グラム陰性細菌において自然に生じるよりも、少なくとも1.5倍高い、グラム陰性細菌に由来する外膜小胞調製物を含んでなる、分離された免疫原性組成物。
【請求項21】
鉄制限条件下で増殖させることによってトランスフェリン結合タンパク質の発現がアップレギュレートされた、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
外膜小胞調製物の少なくとも一部がナイセリア属細菌に由来する、請求項20または21に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
外膜小胞調製物の少なくとも一部が髄膜炎菌に由来する、請求項20〜22のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
外膜小胞調製物の少なくとも一部が髄膜炎菌血清群Bに由来する、請求項20〜23のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
外膜小胞調製物の少なくとも一部が淋菌に由来する、請求項20〜22のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
外膜小胞調製物の由来する宿主細胞が、LgtBおよびLgtEのうち1つ以上、好ましくは前者、の発現をダウンレギュレートするように遺伝子操作されている、請求項20〜25のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
外膜小胞調製物の由来する宿主細胞が、莢膜多糖を合成することができず、しかも好ましくは、siaD、ctrA、ctrB、ctrC、ctrD、synA(synXおよびsiaAに相当)、synB(siaBに相当)およびsynC(siaCに相当)のうち1つ以上、もっとも好ましくはsiaD、の発現をダウンレギュレートし、好ましくはそれらを欠失するように、遺伝子操作されている、請求項20〜26のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
外膜小胞調製物の由来する宿主細胞が、OpC、OpAおよびPorAのうち1つ以上、好ましくはPorA、の発現をダウンレギュレートし、好ましくはそれらを欠失するように、遺伝子操作されている、請求項20〜27のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項29】
外膜小胞調製物の由来する宿主細胞が、FrpBの発現をダウンレギュレートし、好ましくはこれを欠失するように、操作されている、請求項20〜28のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項30】
外膜小胞調製物の由来する宿主細胞が、msbBおよび/またはHtrB、好ましくはmsbBの発現をダウンレギュレートし、好ましくはこれを欠失するように、遺伝子操作されている、請求項20〜29のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項31】
外膜小胞調製物が外膜タンパク質(OMP)とコンジュゲートしたLPSを含有する、請求項20〜30のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項32】
外膜小胞調製物においてLPSがOMPとin situで(好ましくはブレブ内で)コンジュゲートしている、請求項31に記載の免疫原性組成物。
【請求項33】
外膜小胞調製物の少なくとも一部がモラクセラ・カタラーリスに由来する、請求項20〜32のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項34】
外膜小胞調製物の少なくとも一部がインフルエンザ菌に由来する、請求項20〜33のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項35】
グラム陰性細菌の2以上の菌株から分離された外膜小胞調製物を含んでなる、請求項20〜34のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項36】
トランスフェリン結合タンパク質およびHsf様タンパク質が、異なる細菌菌株を起源とする異なる小胞において、または同一菌株を起源とする同一小胞においてアップレギュレートされている、請求項35に記載の免疫原性調製物。
【請求項37】
外膜小胞調製物においてトランスフェリン結合タンパク質発現の増大がグラム陰性細菌に導入された核酸から生じる、前記外膜小胞調製物を含んでなる請求項20〜36のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項38】
外膜小胞調製物においてHsf様タンパク質発現の増大がグラム陰性細菌に導入された核酸から生じる、前記外膜小胞調製物を含んでなる請求項20〜37のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項39】
外膜小胞調製物においてトランスフェリン結合タンパク質およびHsf様タンパク質発現の増大が、グラム陰性細菌に導入された、両方のタンパク質をコードする核酸から生じる、前記外膜小胞調製物を含んでなる請求項20〜38のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項40】
細菌菌株が、トランスフェリン結合タンパク質をコードする遺伝子の上流により強力なプロモーター配列を導入するように遺伝子操作されている、請求項20〜39のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項41】
細菌菌株が、Hsf様タンパク質をコードする遺伝子の上流により強力なプロモーター配列を導入するように遺伝子操作されている、請求項20〜40のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項42】
細菌菌株が、トランスフェリン結合タンパク質およびHsf様タンパク質をコードする遺伝子の上流により強力なプロモーター配列を導入するように遺伝子操作されている、請求項20〜41のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項43】
トランスフェリン結合タンパク質はTbpAであるが、これは好ましくは高分子量TbpA、低分子量TbpA、または高分子量TbpAおよび低分子量TbpAの両方であって、もっとも好ましくは髄膜炎菌に由来する、請求項20〜42のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項44】
Hsf様タンパク質が髄膜炎菌に由来するHsfである、請求項20〜43のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項45】
コンジュゲートした、またはコンジュゲートしていない細菌莢膜多糖もしくはオリゴ糖をさらに含んでなる、請求項1〜44のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項46】
トランスフェリン結合タンパク質またはHsf様タンパク質またはその両方とコンジュゲートした2以上の細菌莢膜多糖もしくはオリゴ糖を含んでなる、請求項1〜45のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項47】
莢膜多糖もしくはオリゴ糖が、髄膜炎菌血清群A、髄膜炎菌血清群C、髄膜炎菌血清群Y、髄膜炎菌血清群W-135、インフルエンザ菌b、肺炎連鎖球菌、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌からなる群から選択される1以上の細菌に由来する、請求項45または46に記載の免疫原性組成物。
【請求項48】
トランスフェリン結合タンパク質またはその抗原性断片、およびHsf様タンパク質またはその抗原性断片をコードする1以上のポリヌクレオチドを含んでなり、その発現が真核生物プロモーターによって駆動される、免疫原性組成物。
【請求項49】
ナイセリア属細菌のTbpAおよびHsfがコードされる、請求項48に記載の免疫原性組成物。
【請求項50】
髄膜炎菌のTbpAおよびHsfがコードされる、請求項48または49に記載の免疫原性組成物。
【請求項51】
アジュバントを含んでなる、請求項1〜50のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【請求項52】
アルミニウム塩を含んでなる、請求項51に記載の免疫原性組成物。
【請求項53】
3D-MPLを含んでなる、請求項51または52に記載の免疫原性組成物。
【請求項54】
CpGを含有するアジュバントを含んでなる、請求項51に記載の免疫原性組成物。
【請求項55】
請求項1〜54のいずれか1つに記載の免疫原性組成物および製薬上許容される賦形剤を含んでなるワクチン。
【請求項56】
感染防御用量もしくは有効量の請求項55に記載のワクチンを投与することを含んでなる、グラム陰性細菌性疾患を治療または予防する方法。
【請求項57】
ナイセリア属細菌感染が予防または治療される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
グラム陰性細菌感染を治療または予防するための薬剤の製造における、請求項55に記載のワクチンの使用。
【請求項59】
ナイセリア属細菌感染を治療または予防するための薬剤の製造における、請求項58に記載の使用。
【請求項60】
請求項20〜44のいずれか1つに記載の免疫原性組成物に含まれる外膜小胞の起源とすることができる、遺伝子操作されたグラム陰性細菌菌株。
【請求項61】
単離されたトランスフェリン結合タンパク質および単離されたHsf様タンパク質またはそれらの抗原性断片を混合するステップを含んでなる、請求項1〜17のいずれか1つに記載の免疫原性組成物を調製する方法。
【請求項62】
グラム陰性細菌培養物から外膜小胞を分離するステップを含んでなる、請求項20〜44のいずれか1つに記載の免疫原性組成物を作製する方法。
【請求項63】
外膜小胞を分離するステップが、0〜0.5%、0.02〜0.4%、0.04〜0.3%、0.06〜0.2%、0.08〜0.15%または好ましくは0.1%の界面活性剤、好ましくはDOC、による抽出を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
細菌莢膜多糖もしくはオリゴ糖をトランスフェリン結合タンパク質および/またはHsf様タンパク質とコンジュゲートするステップを含んでなる、請求項47に記載の免疫原性組成物を作製する方法。
【請求項65】
請求項1〜54のいずれか1つに記載の免疫原性組成物を製薬上許容される賦形剤と混合するステップを含んでなる、請求項55に記載のワクチンを製造する方法。
【請求項66】
請求項55に記載のワクチンを用いてレシピエントを免疫するステップ、および該レシピエントから免疫グロブリンを分離するステップを含んでなる、ナイセリア属細菌感染の予防または治療に使用するための免疫グロブリンを調製する方法。
【請求項67】
請求項66に記載の方法から得られる、免疫グロブリン調製物。
【請求項68】
請求項67に記載の免疫グロブリン調製物および製薬上許容される賦形剤を含んでなる、医薬品。
【請求項69】
髄膜炎菌のTbpAおよびHsfに対するモノクローナル抗体、および製薬上許容される賦形剤を含んでなる、医薬品。
【請求項70】
請求項68または69に記載の医薬品の有効量を患者に投与するステップを含んでなる、グラム陰性細菌感染を治療または予防する方法。
【請求項71】
グラム陰性細菌性疾患の治療または予防のための薬剤の製造における、請求項68または69に記載の医薬品の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2006−505628(P2006−505628A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506111(P2005−506111)
【出願日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2003/008567
【国際公開番号】WO2004/014419
【国際公開日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願人】(397062700)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (37)
【Fターム(参考)】