説明

グリシジル基を有する9−アントロール化合物

【課題】難燃性、耐熱性エポキシ樹脂のモノマーとして利用可能なグリシジル基を有する新規な9−アントロール化合物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で示される9−アントロール化合物。


(一般式(1)において、nは1以上10以下の整数を表し、Rは水素、メチル、エチルで、X及びYは水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、カルボキシル、スルホン酸のいずれかを示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリシジル基を有する新規な9−アントロール化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリシジル基を有する化合物は、エポキシ樹脂の原料として用いられる。このエポキシ樹脂は、接着性、耐熱性、機械的特性等種々の優れた特性があり、電気・電子材料、塗料、接着剤、各種複合材料、土木建築材料等で使用されている。グリシジル基を有するエポキシ化合物の代表的なものとしてトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルのような脂肪族エポキシ化合物があるが、作業性は優れているものの耐熱性に問題がある。耐熱性が要求される分野では、芳香環含有エポキシ樹脂が用いられるのが一般的であり、なかでも、ノボラック型エポキシ樹脂が広く使用されている。ノボラック型エポキシ樹脂はベンゼン環の繰り返し構造を基本とするが、より耐熱性の高い硬化物を得るためには、環の芳香属性を高くする必要があり、例えば、ビフェニル環、ナフタレン環を導入したエポキシ化合物が多数知られている(特許文献1,2)。しかしながら、さらに芳香族性の高いアントラセン環を有するエポキシ化合物についての報告例は少ない(特許文献3,4,5)。
【0003】
一方、紫外線硬化型の接着剤が、エレクトロニクス分野やオプトエレクトロニクス分野で盛んに用いられている。この分野で用いられる接着剤においても、耐熱性や高屈折率を求められるものが多い。紫外線硬化型接着剤としては、大きく分けて、アクリル系ラジカル硬化型とエポキシ系カチオン硬化型接着剤があるが、透湿性が求められる用途ではエポキシ系カチオン硬化型接着剤が用いられる。また、近年、半導体ウエハ等に用いられる感光性接着樹脂組成として、フェノール性水酸基とアクリロイル基を持つ変性ビスフェノール類が提案されている。この物は、スペーサーの作用も有し、スペーサーとしてパターニングした際、フェノール性水酸基を有するためアルカリ現像性が良好であるという利点がある(特許文献6、7)。このように、フェノール性水酸基を有するラジカル重合性組成物の有用性は知られているが、知られているものはフェノールあるいはビスフェノール骨格を有するものに限られている。
【0004】
よって、耐熱性のエポキシ樹脂の合成原料として有用な芳香族性の高いアントラセン環を有し、かつその環に水酸基とグリシジル基の両方が結合したアントラセン化合物については全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−288339号公報
【特許文献2】特開2001−213942号公報
【特許文献3】特開平9−316167号公報
【特許文献4】特開2007−262384号公報
【特許文献5】特開平5−283560号公報
【特許文献6】特開2008−297540号公報
【特許文献7】特開2009−9110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、難燃性、耐熱性エポキシ樹脂のモノマーとして利用可能なアントラセン骨格を有し、かつ当該アントラセン骨格に水酸基とグリシジル基の両方が結合した化合物を提供すること、並びに当該アントラセン化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、アントラセン化合物の合成に関して鋭意検討した結果、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物と酸化アルキレンとの付加反応で得られる9,10−(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を、さらにエピクロルヒドリンと反応させることにより、アントラセン環に直接水酸基と2−グリシジルオキシアルコキシ基が置換する化合物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
第一発明では、下記一般式(1)で示される9−アントロール化合物を提供する。
【0009】
【化1】

【0010】
一般式(1)において、nは1以上10以下の整数を表し、Rは水素原子、メチル基又はエチル基のうちいずれか一つを表し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、カルボキシル基、スルホン酸基のいずれかを示す。
【0011】
第二発明では、下記一般式(2)で示される9,10−ジ(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン誘導体とエピクロルヒドリンとを塩基性化合物の存在下、反応させることを特徴とする上記9−アントロール化合物の製造方法を提供する。
【0012】
【化2】

一般式(2)において、n及びmは独立に1以上10以下の整数を表し、Rは水素原子、メチル基又はエチル基のうちいずれか一つを表し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、カルボキシル基、スルホン酸基のいずれかを示す。
【発明の効果】
【0013】
本発明の9−アントロール化合物は新規な化合物であり、グリシジル基を有し、かつアントラセン骨格を有することから、難燃性、耐熱性エポキシ樹脂のモノマーとして利用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の9−アントロール化合物は、下記一般式(1)の構造を有する化合物である。一般式(1)において、nは1以上10以下の整数を表し、Rは水素原子、メチル基又はエチル基のうちいずれか一つを表し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、カルボキシル基、スルホン酸基のいずれかを示す。
【0015】
【化3】

【0016】
一般式(1)中、XまたはYで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、アミル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられ、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子,臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基,n−プロポキシ基,n−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられ、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等が挙げられる。アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基,ブチルチオ基、ヘキシルチオ基等が挙げられ、アリールチオ基としては、フェニルチオ基、o−トリルチオ基等が挙げられる。
【0017】
一般式(1)に示す9−アントロール化合物としては、次のものが挙げられる。すなわち、10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール等である。
【0018】
さらに、アントラセン環にアルキル基が置換した化合物としては、2−メチル−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2−メチル−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2−メチル−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、2−メチル−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2−メチル−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2−メチル−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、2−メチル−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、2−メチル−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、2−メチル−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール、2−エチル−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2−エチル−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2−エチル−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、2−エチル−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2−エチル−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2−エチル−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、2−エチル−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、2−エチル−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、2−エチル−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール、2−(t−ブチル)−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2−(t−ブチル)−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2−(t−ブチル)−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、2−(t−ブチル)−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2−(t−ブチル)−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2−(t−ブチル)−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、2−(t−ブチル)−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、2−(t−ブチル)−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、2−(t−ブチル)−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール、2,6−ジメチル−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2,6−ジメチル−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2,6−ジメチル−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、2,6−ジメチル−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2,6−ジメチル−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2,6−ジメチル−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、2,6−ジメチル−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、2,6−ジメチル−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、2,6−ジメチル−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール等が挙げられる。
【0019】
またさらに、アントラセン環にハロゲン原子が置換した化合物としては、2−フルオロ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2−フルオロ−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2−フルオロ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、2−フルオロ−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2−フルオロ−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2−フルオロ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、2−フルオロ−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、2−フルオロ−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、2−フルオロ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール、2−クロロ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2−クロロ−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2−クロロ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、2−クロロ−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2−クロロ−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2−クロロ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、2−クロロ−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、2−クロロ−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、2−クロロ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール、2−ブロモ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2−ブロモ−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2−ブロモ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、2−ブロモ−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2−ブロモ−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2−ブロモ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、2−ブロモ−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、2−ブロモ−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、2−ブロモ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール、2,6−ジクロロ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2,6−ジクロロ−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2,6−ジクロロ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、2,6−ジクロロ−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2,6−ジクロロ−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2,6−ジクロロ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、2,6−ジクロロ−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、2,6−ジクロロ−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、2,6−ジクロロ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール等が挙げられる。
【0020】
さらには、アントラセン環にアルコキシ基が置換した化合物としては、2−メトキシ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2−メトキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2−メトキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、2−メトキシ−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2−メトキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2−メトキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、2−−メトキシ−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、2−メトキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、2−メトキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール、2−エトキシ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2−エトキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2−エトキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、2−エトキシ−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2−エトキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2−エトキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、2−エトキシ−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、2−エトキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、2−エトキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール、2−ブトキシ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2−ブトキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2−ブトキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、2−ブトキシ−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2−ブトキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2−ブトキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、2−ブトキシ−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、2−ブトキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、2−ブトキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール、2,6−ジメトキシ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2,6−ジメトキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2,6−ジメトキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、2,6−ジメトキシ−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2,6−ジメトキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2,6−ジメトキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、2,6−ジメトキシ−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、2,6−ジメトキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)等が挙げられる。
【0021】
さらには、アントラセン環にアリールオキシ基が置換した化合物としては、2−フェノキシ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2−フェノキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2−フェノキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、2−フェノキシ−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2−フェノキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2−フェノキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、2−−フェノキシ−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、2−フェノキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、2−フェノキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール、2−フェノキシ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール等が挙げられる。
【0022】
さらには、アントラセン環にアルキルチオ基が置換した化合物としては、2−メチルチオ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2−メチルチオ−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2−メチルチオ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、2−メチルチオ−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2−メチルチオ−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2−メチルチオ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、2−メチルチオ−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、2−メチルチオ−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、2−メチルチオ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール、
2−エチルチオ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2−エチルチオ−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2−エチルチオ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、2−エチルチオ−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2−エチルチオ−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2−エチルチオ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、2−エチルチオ−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、2−エチルチオ−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、2−エチルチオ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール、2,6−ジメチルチオ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2,6−ジメチルチオ−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2,6−ジメチルチオ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、−2,6−ジメチルチオ−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2,6−ジメチルチオ−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2,6−ジメチルチオ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、−2,6−ジメチルチオ−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、2,6−ジメチルチオ−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、2,6−ジメチルチオ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール等が挙げられる。
【0023】
さらには、アントラセン環にアリールチオ基が置換した化合物としては、2−フェニルチオ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール、2−フェニルチオ−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]−9−アントロール、2−フェニルチオ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−9−アントロール、2−フェニルチオ−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−9−アントロール、2−フェニルチオ−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−9−アントロール、2−フェニルチオ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}−9−アントロール、2−フェニルチオ−10−(2−グリシジルオキシブトキシ)−9−アントロール、−2−フェニルチオ−10−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]−9−アントロール、2−フェニルチオ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシブトキシ)ブトキシ]ブトキシ}−9−アントロール、2−フェニルチオ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール等が挙げられる。
【0024】
さらには、アントラセン環にカルボキシル基が置換した化合物としては、9−ヒドロキシ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−ヒドロキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]アントラセン−2−カルボン酸、9−ヒドロキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}アントラセン−2−カルボン酸、9−ヒドロキシ−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、10−ヒドロキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]アントラセン−2−カルボン酸、9−ヒドロキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}アントラセン−2−カルボン酸等が挙げられる。
【0025】
さらには、アントラセン環にスルホン酸基が置換した化合物としては、9−ヒドロキシ−10−(2−グリシジルオキシエトキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−ヒドロキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]アントラセン−2−スルホン酸、9−ヒドロキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}アントラセン−2−スルホン酸、9−ヒドロキシ−10−(2−グリシジルオキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、10−ヒドロキシ−10−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]アントラセン−2−スルホン酸、9−ヒドロキシ−10−{2−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}アントラセン−2−スルホン酸等が挙げられる。
【0026】
上記に示した化合物の中で、合成の容易さから、特に望ましいのは、10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロールである。
【0027】
本発明の9−アントロール化合物は、グリシジル基を有することからエポキシ樹脂のモノマーとして利用でき、アントラセン骨格を有することから、生成した樹脂が難燃性、耐熱性および高屈折率性を有する材料として有用である。また、アントラセン骨格に結合した水酸基を同時に有することから、パターニングにおける現像性の良好な感光性樹脂組成物を作ることができること、あるいは樹脂化したのち、高分子反応で種々の置換基を導入する方法、あるいはあらかじめ他の置換基を導入することにより、生成するエポキシ樹脂の物性を調整したり、あるいは重合性基を水酸基に導入することにより重合反応において架橋させたりすることが可能となる。
【0028】
本発明の9−アントロール化合物は、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を塩基性化合物の存在下、酸化アルキレンと反応させて一般式(2)で示される、アントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシアルキル)エーテル化合物となす第一反応と、第一反応で得られたアントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシアルキル)エーテル化合物を塩基性化合物の存在下、エピクロルヒドリンと反応させる第二反応より得ることが出来る。
【0029】
【化4】

【0030】
第一反応において原料となる9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物としては、9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(t−ブチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−フルオロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−クロロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ブロモ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メトキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−エトキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−フェノキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メチルチオ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−フェニルチオ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2−カルボン酸、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2−スルホン酸等、2,6−ジメチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2,6−ジフルオロ0−ジヒドロキシアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2,6−ジクロロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン等が挙げられる。
【0031】
また、1,4−ナフトキノンと1,3−ブタジエンとのディールス・アルダー反応によって得られる1,4,4a,9a―テトラヒドロ−9,10−アントラキノンまたはこのものが異性化した1,4−ジヒドロ−9,10−アントラヒドロキノンのアルカリ塩を9,10−アントラキノン化合物の還元剤として用いて合成された9,10―ジヒドロアントラセンのアルカリ金属塩の水溶液を用いることもできる。このものは、9,10−ジヒドロアントラセンのアルカリ金属塩の水溶液であるが9,10−ジヒドロアントラセンを単離せずに、次の反応に供することができる。
【0032】
当該反応で使用される酸化アルキレンとしては、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン等が挙げられる。酸化アルキレンの使用量は、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、2モル倍から30モル倍添加する。2モル倍未満では、未反応の9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物が残留し好ましくない。また、酸化アルキレンの添加量が過剰な場合、反応条件にもよるが例えば、8モル倍を越えて添加した場合は、当該反応で得られる、一般式(2)で示される、アントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシアルキル)エーテル化合物において、n及び/又はmが2以上の化合物が主たる混合物として生成してくる。この混合物をカラムクロマトを用いて、n及び/又はmの異なる化合物を分離することができる。
【0033】
当該反応では、反応を促進させるため塩基性化合物を用いる。使用される塩基性化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。塩基性化合物の添加量は9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して2倍モルから3倍モルが望ましい。反応は通常溶媒の存在下行われる。使用する溶媒としては、水、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、エチレングリコール、ジメトキシエタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジクロルメタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒が用いられる。
【0034】
当該反応の反応温度は、0℃以上、80℃以下が望ましい。0℃未満では反応が遅く、80℃を超える温度では副反応による副生物が増加するため好ましくない。反応時間は反応温度によるが、通常0.5時間から5時間である。反応の進行に伴い、一般式(2)で示される、アントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシアルキル)エーテル化合物のうち、n及びmが1のアントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシアルキル)エーテル化合物は溶媒に不溶となり、沈澱してくる。一方、n及び/又はmが2以上の生成物は、溶媒に溶けたままであり、沈殿物を吸引濾過することにより,n及びmが1の反応生成物を単離することが出来る。
【0035】
また、n及び/又はmが2以上の生成物については、上記反応混合物を濾過して得られる、n及びmが1の生成物を除いた濾液を濃縮することにより得ることが出来る。必要ならば、可溶性溶媒である例えばトルエンに溶解し,貧溶媒である、例えばn−ヘキサンを加え再結晶して、あるいはこの混合物をカラムクロマトを用いて分離精製することが可能である。
【0036】
このようにして行われた当該反応で得られるアントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシアルキル)エーテル化合物としては、例えば、次の化合物が挙げられる。すなわち、アントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシエチル)エーテル、アントラセン−9,10−ジ[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]エーテル、アントラセン−9,10−ジ{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル}エーテル、アントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシプロピル)エーテル、アントラセン−9,10−ジ[2−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロピル]エーテル、アントラセン−9,10−ジ{2−[2−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロポキシ]プロピル}エーテル、4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシブチル)エーテル、アントラセン−9,10−ジ[2−(2−ヒドロキシブトキシ)ブチル]エーテル、アントラセン−9,10−ジ{2−[2−(2−ヒドロキシブトキシ)ブトキシ]ブチル}エーテル等が挙げられ、さらに、上記化合物のアントラセン環に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシル基等が置換したアントラセン−9,10−ジエーテル化合物が挙げられる。
【0037】
ついで、一般式(2)で示されるアントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシアルキル)エーテル化合物をエピクロルヒドリンと塩基性化合物の存在下反応させる第二反応により、一般式(1)にしめす9−アントロール化合物を得ることができる。
【0038】
当該反応では、一般式(2)で示されるアントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシアルキル)エーテル化合物とエピクロルヒドリンが反応し、両方のヒドロキシアルキルがグリシジル化されアントラセン−9,10−ジ(2−グリシジルオキシアルキル)エーテル化合物が生成するのが一般的であるが、驚くべきことに、主たる生成物は、アントラセンのモノグリシジルアルキルエーテル化合物であることがわかった。当該反応は、おそらく、一旦、アントラセン−9,10−ジ(2−グリシジルオキシアルキル)エーテル化合物が生成し、そののち、おそらくは塩基性化合物とのさらなる反応により、一方だけ2−グリシジルオキシアルキル基とアントラセン環のエーテル結合が切れ、アントロール構造を有する化合物となると考えられる。このように生成した9−アントロール化合物は、比較的安定であるため単離することが可能となる。
【0039】
第二反応に於いて用いられる塩基性化合物としては、カリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−エトキシド、カリウム−t−プロポキシド等が挙げられる。
【0040】
反応は通常溶媒の存在下で行われる。使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジクロルメタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、N−メチルビロリドンなどの複素環化合物系溶媒が用いられる。
【0041】
第二反応におけるエピクロロヒドリンの使用量は、一般式(2)で示される、アントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシアルキル)エーテル化合物に対して、2モル倍から6モル倍添加する。塩基性化合物の添加量は、アントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシアルキル)エーテル化合物に対して2モル倍から4モル倍が望ましい。2モル倍未満では、未反応のヒドロキシアルコキシアントラセン誘導体が残留し、4モル倍を超える場合では、生成物の単離収率が下がり好ましくない。反応温度は、0℃以上、100℃以下が望ましい。0℃未満では反応が遅く、100℃を超える条件では副反応による副生物が増えるため好ましくない。
【0042】
水溶性ケトンまたは水溶性エーテルを溶媒として用いる場合は、析出した塩基性化合物の塩酸塩を水を加えて溶解させ、ついでさらに水を加えることにより生成物が析出させることができる。析出物をろ過・乾燥することにより一般式(1)で示される9−アントロール化合物を得ることが出来る。また、反応溶媒として水不溶性の溶媒を用いる場合は、反応終了後水あるいは水と有機溶媒を加えて塩基性化合物の塩酸塩を溶かして2層となし、分液操作により水層を分離する。次いで有機層を濃縮し、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の貧溶媒を加えて、生成物を析出させることができる。
【0043】
得られた化合物の同定は、赤外スペクトル、マススペクトル、H−NMRスペクトルを用いて行い、これらの化合物が一般式(1)で示される9−アントロール化合物であることを確認した。
【0044】
下記の実施例により本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。特記しない限り、すべての部および百分率は重量基準である。
【0045】
生成物の確認は下記の機器による測定により行った。
(1)融点:ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式MFB−595(JIS K0064に準拠)
(2)赤外線(IR)分光光度計:日本分光社製、型式IR−810
(3)核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式GSX FT NMR Spectorometer
(4)Massスペクトル:島津製作所社製、質量分析計、型式GCMS−QP5000
【実施例1】
【0046】
(アントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシエチル)エーテルの合成)
300mlオートクレーブに、9,10−アントラキノン20.8g(0.10モル)とアントラキノン換算で20重量%の1,4−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム水溶液104g(0.10モル)を仕込み、窒素雰囲気下、110℃のオイルバスに浸漬し1時間加熱した。反応後室温まで冷却し、9,10−ジヒドロキシアントラセン41.6g(0.20モル)を含有する水溶液124.8gを得た。この9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム塩水溶液を全量300mlオートクレーブ中に仕込み、酸化エチレン35g(0.8モル)を温度50℃以下、かつ圧力を0.3MPa以下に保ちつつ60分要して加えた。更に、反応温度を40℃に保持しながら反応を3時間続けた。反応終了後、得られた結晶を濾別して水洗浄した。得られた結晶を乾燥させ、アントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシエチル)エーテルの黄色粉末42gを得た。
生成物について、上記した特性測定を行った結果は次のとおりであり、生成物は、アントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシエチル)エーテルであることが確認された。
(1)融点: 226−227℃
(2)IRスペクトル(KBr、cm−1) : 3490、2980、2880、1395、1350、1090、1062、1020、890、880,760
(3)H−NMR(CDCl、ppm): δ=4.15−4.23(m、4H)、4.30−4.35(m、4H)、7.48−7.55(m、4H)、8.31−8.37(m、4H)
【実施例2】
【0047】
(10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロールの合成)
200mlの四口フラスコに、アントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシエチル)エーテル 2.0g(6.7ミリモル)、N−メチルピロリドン40ml、カリウム−t−ブトキシド3.0g(20.1ミリモル)を窒素雰囲気下で仕込み、80℃で、フラスコの内容物を攪拌・混合した後、エピクロロヒドリン2.7g(26.8ミリモル)をN−メチルピロリドン10mlに溶解した溶液を添加し、80℃で1.0時間攪拌を継続した。このフラスコに純水40ml、トルエン40ml加えた。得られた反応生成物に純水20mlを加えて洗浄し、この洗浄操作を3回繰り返した。純水によって洗浄した後の液から有機層を分離した。分離した有機層を濃縮して得られた油状物質を、ヘキサン、酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー法によって精製し、淡黄色結晶の10−(2−グリシジルオキシエトキシ)−9−アントロール0.52g(1.7ミリモル)を得た。生成物のアントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシエチル)エーテルに対する収率は、25モル%であった。
(1)融点: 113−115℃
(2)IRスペクトル(KBr、cm−1) : 3450、2940、2880、1720、1620、1400、1350、1090、1060、1020、940、880、760、610
(3)H−NMR(CDCl、ppm): δ=2.50(t、J=6Hz、1H)、2.81−2.84(q、J=2、3Hz、1H)、2.97(t、J=4Hz、1H)、4.02−4.31(m、4H)、4.34−4.40(q、J=4、8Hz、1H)、4.44−4.49(dd、J=4、8Hz、1H)7.43−7.58(m、4H)、8.24−8.40(m、4H)
(4)Massスペクトル: (EI−MS)m/z =310(M



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される9−アントロール化合物。
【化1】


(一般式(1)において、nは1以上10以下の整数を表し、Rは水素原子、メチル基又はエチル基のうちいずれか一つを表し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、カルボキシル基、スルホン酸基のいずれかを示す。)
【請求項2】
下記一般式(2)で示される9,10−ジ(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン誘導体とエピクロルヒドリンとを塩基性化合物の存在下、反応させることを特徴とする請求項1に記載の9−アントロール化合物の製造方法。
【化2】


(一般式(2)において、n及びmは独立に1以上10以下の整数を表し、Rは水素原子、メチル基又はエチル基のうちいずれか一つを表し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、カルボキシル基、スルホン酸基のいずれかを示す。)