説明

グリシン1トランスポーターの放射標識リガンド

グリシン1トランスポーターの放射標識リガンドである、式(I)の化合物ならびにその塩および溶媒和物を提供する:


(式中、Rは、H、11C、14C、13N、15O、76Br、18F、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Brおよび82Brから選択される放射性核種を含むか、またはこれらからなる放射標識基である)。グリシン1トランスポーター機能の標識および画像診断のための化合物の使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリシン1トランスポーター機能の標識および画像診断に有用な、グリシン1トランスポーターの放射標識リガンドに関する。
【背景技術】
【0002】
シナプス後グリシンレセプターを介した尾部CNS領域における主な抑制性神経伝達物質であることに加え、グリシンは、N−メチル−D−アスパラギン酸塩レセプター(NMDAR)でのD−セリンとのコアゴニスト(co−agonist)としてのその作用により、グルタミン酸神経伝達の重要な興奮性神経伝達物質でもある。グリシンの細胞外濃度は、グリシントランスポーター(GlyT1およびGlyT2)により調節される。これらのトランスポーターは、Na+/Cl−依存性トランスポーターファミリーのメンバーであり、細胞外空間からサイトゾル中へのグリシンの吸収に関与する。GlyT1阻害は、多くの病理学的兆候、特に、NMDAR機能低下が主な役割を果たすと考えられている統合失調症について現在検討されている。これは、統合失調症患者が示すのと非常に似た症状(例えば、向上した運動活動、認知障害および増加した常同的行為)が、NMDAR阻害剤、例えば、フェニルシクリジン(PCP)により誘発され得るという事実により裏付けられる。GlyT1の阻害は、シナプスにおけるグリシンレベルの増加につながり、従って、改善されたNMDAR神経伝達をもたらすので、これらの症状はNMDARにより改善され得る。GlyT1阻害に適した薬剤候補を開発するために様々な努力がなされており、多くは最近、人間において初期臨床段階に入っている(V.Eulenburg、W.Armsen、H.Betz、J.Gomeza.Trends Biochem Sci.2005、30(6):325−33;H.Betz、J.Gomeza、W.Armsen、P.Scholze、V.Eulenburg.Biochem Soc Trans.2006、34(Pt 1)、55−8;D.Javitt.Curr Opin Psychiatry.2006、19(2):151−7)。1型グリシントランスポーターの阻害のために開発された最近の化合物の例は、例えば、L.G.Harsing Jr.、Glycine Transporter type−1 and its inhibitors.Curr Med Chem.2006、13(9)、1017−44;ならびに公開国際特許出願WO03/055478(SmithKline Beecham)およびWO2006/067423において見出すことができる。例えば、WO2006/067423は、N−[[1−(ジメチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]−2,6−ジメチルベンズアミドを開示している。
【0003】
非侵襲的核撮影技術を用いて、実験動物、患者およびボランティアをはじめとする、生体の生理機能および生化学についての基本および診断情報を得ることができる。これらの技術は、生体に投与された放射性追跡子から放射される放射線を検出できる撮影装置の使用に依存する。得られる情報を、再構築して、平面および断層画像を提供することができ、これらの画像は、時間の関数としての放射性追跡子の分布および/または濃度を明らかにする。
【0004】
陽電子放出断層撮影法(PET)は、すべての核医学画像モダリティーの最高の空間および時間分解能を提供し、組織におけるトレーサー濃度の真の定量を可能にできる追加された利点を有する断層撮影技術である。この技術は、生体組織における様々なプロセスの生理学または生化学に関するパラメータの測定を可能にするインビボ特性を有するように設計された、陽電子放出放射線核種で標識された放射性追跡子の使用を含む(例えば、J.Passchier、A.Gee、A.Willemsen、W.Vaalburg、A.van Waarde.Measuring drug−related receptor occupancy with Positron Emixxion Tomography.Methods.2002、27(3)、278−86;およびV.J. Cunningham、R.N.Gunn、J.C.Matthews.Quantification in Positron Emixxion Tomography for research in pharmacology and drug development.Nucl Med Commun.2004、25(7)、643−6.を参照のこと)。
【0005】
化合物は、陽電子またはガンマ放出放射線核種で標識することができる。最もよく用いられる陽電子放出放射線核種は、15O、13N、11Cおよび18Fであり、これらは生じる促進物質であり、それぞれ、2、10、20および110分の半減期を有する。最も広く用いられるガンマ放出放射線核種は、18F、99mTc、201Tlおよび123Iである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】公開国際特許出願WO03/055478公報
【特許文献2】公開国際特許出願WO2006/067423公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】V.Eulenburg、W.Armsen、H.Betz、J.Gomeza.著Trends Biochem Sci.2005、30(6):325−33
【非特許文献2】H.Betz、J.Gomeza、W.Armsen、P.Scholze、V.Eulenburg.著Biochem Soc Trans.2006、34(Pt 1)、55−8
【非特許文献3】D.Javitt.Curr Opin Psychiatry.2006、19(2):151−7)
【非特許文献4】L.G.Harsing Jr.、Glycine Transporter type−1 and its inhibitors.Curr Med Chem.2006、13(9)、1017−44
【非特許文献5】J.Passchier、A.Gee、A.Willemsen、W.Vaalburg、A.van Waarde.Measuring drug−related receptor occupancy with Positron Emixxion Tomography.Methods.2002、27(3)、278−86
【非特許文献6】V.J.Cunningham、R.N.Gunn、J.C.Matthews.Quantification in Positron Emixxion Tomography for research in pharmacology and drug development.Nucl Med Commun.2004、25(7)、643−6.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
今日まで、例えば、PETまたはSPECT(単光子放出{たん こうし ほうしゅつ}コンピュータ断層撮影)に使用できる良好な放射性標識化合物は報告されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、式(I)またはその塩もしくは溶媒和物を提供する:
【化1】

(式中、Rは、H、11C、14C、13N、15O、76Br、18F、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Brおよび82Brから選択される放射性核種を含むか、またはこれからなる放射標識基である)。
【0010】
本明細書において用いられる場合、「塩」という用語は、無機または有機酸または塩基から調製された本発明の化合物の任意の塩、第四アンモニウム塩および内部形成塩を意味する。医薬的に許容される塩は、親化合物と比べて水溶性が高いので、医療用途に特に適している。このような塩は明らかに、医薬的に許容されるアニオンまたはカチオンを有さなければならない。本発明の化合物の好適な塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸などの無機酸、ならびに酒石酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、マレイン酸、コハク酸、カンファー硫酸、イソチオン酸、粘液酸、ゲンチシン酸、イソニコチン酸、糖酸、グルクロン酸、フロ酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモン酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ステアリン酸、スルフィニル酸(sulfinilic)、アルギン酸、ガラクツロン酸およびアリールスルホン酸、例えば、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−1,3−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp−トルエンスルホン酸などの有機酸を用いて形成される酸付加塩;アルカリ金属およびアルカリ土類金属および有機塩基、例えば、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(meglumaine)(N−メチルグルカミン)、リシンおよびプロカインを用いて形成される塩基付加塩;および内部形成塩が挙げられる。医薬的に許容されないアニオンまたはカチオンを有する塩は、医薬的に許容される塩を調製するため、および/または治療以外の、例えば、インビトロ状態における使用に有用な中間体として、本発明の範囲内に含まれる。これらの塩は、好適な化学量論を有する。例えば、塩は、1:1または2:1の化学量論を有する。非整数の化学量論比も可能である。
【0011】
本明細書において用いられる場合、「溶媒和物」という用語は、溶質(本発明においては、式(I)の化合物またはその塩)および溶媒により形成される、様々な化学量論の複合体を意味する。本発明のこのような溶媒は、溶質の生物活性を妨害しないものである。好適な溶媒の例としては、水、メタノール、エタノールおよび酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。一つの実施形態において、使用される溶媒は、医薬的に許容される溶媒である。好適な医薬的に許容される溶媒の例としては、水、エタノールおよび酢酸が挙げられる。一つの実施形態において、溶媒は水である。
【0012】
式(I)の化合物は、以下で矢印により示される不斉炭素を有し、従って、2つのエナンチオマー形態で存在する:
【化2】

これらの個々のエナンチオマーおよびラセミ混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0013】
従って、一つの実施形態において、本発明は、R−(±)−N−メチル]−N−[[1−(ジメチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]−2,6−ジメチルベンズアミドを提供し、式中、Rは、H、11C、14C、13N、15O、76Br、18F、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Brおよび82Brから選択される放射性核種を含むか、またはこれらかなる、放射性標識された基である。
【0014】
もう一つ別の実施形態において、本発明は、R−(+)−N−メチル]−N−[[1−(ジメチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]−2,6−ジメチルベンズアミドを提供し、式中、Rは、H、11C、14C、13N、15O、76Br、18F、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Brおよび82Brから選択される放射性核種を含むか、またはこれからなる、放射性標識された基である。
【0015】
もう一つ別の実施形態において、本発明は、R−(−)−N−メチル]−N−[[1−(ジメチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]−2,6−ジメチルベンズアミドを提供し、式中、Rは、H、11C、14C、13N、15O、76Br、18F、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Brおよび82Brから選択される放射性核種を含むか、またはこれらからなる、放射性標識された基である。
【0016】
一つの実施形態において、光学的に純粋なエナンチオマーが望ましい。「光学的に純粋なエナンチオマー」という用語は、約90重量%を超える所望の異性体、例えば、約95重量%を超える所望の異性体、または約99重量%を超える所望の異性体を含有する化合物を意味し、前記重量パーセントは化合物の異性体の合計重量基準である。数例において、特定の構造の一つのエナンチオマーは、同じ構造の他のエナンチオマーよりも著しく高い活性を有し得る。キラル純粋、またはキラルリッチにされた化合物を、キラル選択的合成またはエナンチオマーの分離により調製することができる。エナンチオマーの分離は、最終生成物に関して行うことができるか、あるいは別法として、好適な中間体に関して行うことができる。
【0017】
式(I)の化合物は、式で示されるもの以外の互変異性型で存在することができ、これらも本発明の範囲内に含まれると理解すべきである。
【0018】
式(I)の化合物は:H、11C、14C、13N、15O、76Br、18F、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Brおよび82Brから選択される放射性核種を組み入れる。放射性核種の選択は、特異的分析または医薬用途に依存するであろう。したがって、一つの実施形態において、グリシントランスポーターサブタイプ1(GlyT1)のインビトロ標識に関して、また競合アッセイに関して、H、123Iまたは77Brを組み入れた化合物を使用できる。一つの実施形態において、診断および研究用造影剤として、11C、18F、123Iまたは76Brを組み入れた化合物を使用できる。キレート放射性核種の組み入れは、ある用途において有用である。
【0019】
一つの実施形態において、Rは、H、11C、14C、13N、15O、76Br、18F、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Brおよび82Brから選択される放射性核種である。
【0020】
もう一つ別の実施形態において、Rは、H、11C、14C、13N、15O、76Br、18F、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Brおよび82Brから選択される放射性核種を組み入れたC1−6アルキル基である。「C1−6アルキル」という用語は、あらゆる異性体形態の1から6個の炭素原子を有するアルキル基をさし、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、sec−ペンチル、n−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチルおよびヘキシルである。
【0021】
一つの実施形態において、放射性核種は11Cである。
【0022】
一つの実施形態において、Rは、11Cを組み入れたC1−6アルキル基である。
【0023】
一つの実施形態において、[11C−(±)−N−メチル]−N−[[1−(ジメチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]−2,6−ジメチルベンズアミド(以下、「化合物A」と称する)またはその塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0024】
一つの実施形態において、[11C−(+)−N−メチル]−N−[[1−(ジメチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]−2,6−ジメチルベンズアミドまたはその塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0025】
一つの実施形態において、[11C−(−)−N−メチル]−N−[[1−(ジメチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]−2,6−ジメチルベンズアミドまたはその塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0026】
一つの実施形態において、Rは、1、2または3以上のHを組み入れたC1−6アルキル基である。例えば、Rは[H]CHであるか;またはRは[H]CHであるか;またはRは[H]Cである。
【0027】
一つの実施形態において、放射性核種はHである。
【0028】
一つの実施形態において、[H−(±)−N−メチル]−N−[[1−(ジメチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]−2,6−ジメチルベンズアミドまたはその塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0029】
一つの実施形態において、[H−(+)−N−メチル]−N−[[1−(ジメチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]−2,6−ジメチルベンズアミドまたはその塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0030】
一つの実施形態において、[H−(−)−N−メチル]−N−[[1−(ジメチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]−2,6−ジメチルベンズアミドまたはその塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0031】
式(I)の化合物は、1より多い形態で結晶化することができる。これは、多形として知られる特徴であり、かかる多形相(「多形体」)は式(I)の範囲内に含まれると理解される。多形は、一般に、温度もしくは圧力または両者における変化に反応して起こり得、晶析プロセスにおける変化の結果でもあり得る。多形体は、当該分野において公知の様々な物理的特性、例えば、X線回折パターン、溶解度、および融点により区別することができる。
【0032】
本発明の化合物は、標準的化学反応をはじめとする様々な方法により調製できる。すでに定義された変数は、特に記載しない限り、引き続きすでに定義された意味を有する。一般的合成法の例を以下に記載し、本発明の具体的な化合物を実施例で調製する。
【0033】
スキーム1は、式(I)の化合物(式中、Rは放射性標識された基である)の合成経路を表す:
スキーム1
【化3】

【0034】
前記式(II)の化合物は、2,6−ジメチル−N−[[1−(メチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]ベンズアミドである。この化合物の合成経路をスキーム2に示す。
スキーム2
【化4】

【0035】
段階aを、シアン化カリウムなどの無機シアン化物の存在下、水などの溶媒中で行うか;あるいは溶媒の非存在下、または酢酸などの溶媒中のいずれかでのピロリジノンのアミンおよびトリメチルシリルシアニドとの反応により行う。段階bは、有機金属試薬、例えば、フェニルリチウムを、好適な不活性溶媒、例えば、テトラヒドロフラン中、適切な有機金属試薬、例えば、フェニルリチウムと連続して反応させ、続いて還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウムを用いて、好適な溶媒、例えば、メタノール中で還元することにより行うことができる。アシル化段階dは、式(III)の化合物:
【化5】

(III)
(式中、Lは好適な脱離基である)との反応により行うことができる。脱離基の例としては、ハロゲン、ヒドロキシ、OC(=O)アルキル、OC(=O)O−アルキルおよびOSOMeが挙げられる。Lはハロゲンであり、段階(iii)は、ジクロロメタンなどの不活性溶媒中、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で行うことができる。Lがヒドロキシを表す場合、反応はジクロロメタンなどの不活性溶媒中、カップリング試薬、例えば、ジイミド試薬、例えば、N,Nジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、ポリマー担持EDC、ポリマー担持DCCまたはO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)の存在下で起こり得る。
【0036】
本発明は、式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物の調製法であって、2,6−ジメチル−N−[[1−(メチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]ベンズアミドを式(IV):
−X(IV)
(式中、Rは、H、11C、14C、13N、15O、76Br、18F、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Brおよび82Brから選択される放射性核種を含有する基であり、Xは脱離基である)の化合物と反応させ;その後、任意に、その塩または溶媒和物を形成することを含む方法を提供する。一つの実施形態において、Xはハロゲン、例えば、ヨウ素である。
【0037】
一つの実施形態において、2,6−ジメチル−N−[[1−(メチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]ベンズアミドを[11C]ヨウ化メチルと反応させて、[11C−N−メチル]−N−[[1−(ジメチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]−2,6−ジメチルベンズアミドを得る。
【0038】
式(I)の化合物を前臨床試験において、例えば、GlyT1結合試験およびGlyT1分布試験、ならびに臨床試験において、例えば、グリシントランスポーターサブタイプ1(GlyT1)の、GlyT1が関与していると考えられる様々な疾患部分における役割を評価するために使用できる。これらは健常な対象ならびにGlyT1が関与する疾患をはじめとする疾患に罹っている対象において用いることができる。例えば、健常な対象と疾患に罹っている対象との違いを特徴づけるために使用でき、これらは、例えば、どの医薬を処方するかを決定する決定過程において助けとなり得る。
【0039】
従って、本発明は、治療において用いられる式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を提供する。一つの実施形態において、本発明は、GlyT1リガンドとして使用される式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を提供する。一つの実施形態において、本発明は、GlyT1結合試験において使用される式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を提供する。一つの実施形態において、本発明は、PETリガンドまたはSPECTリガンドとして使用される式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0040】
本発明は、哺乳動物においてGlyT1を標識する方法であって、哺乳動物に有効量の式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む方法を提供する。
【0041】
即ち、本発明は、哺乳動物におけるGlyT1を発現させる方法であって、哺乳動物に有効量の式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む方法を提供する。
【0042】
本発明は、GlyT1の画像診断法であって、哺乳動物に有効量の(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む方法も提供する。
【0043】
本発明は、哺乳動物においてGlyT1を発現する組織の画像診断法であって、哺乳動物に有効量の式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む方法も提供する。
【0044】
本発明は、哺乳動物の脳におけるグリシントランスポーターサブタイプ1(GlyT1)の画像診断法であって、哺乳動物に有効量の式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む方法も提供する。
【0045】
本発明はさらに、哺乳動物組織におけるGlyT1機能を検出または定量化する方法であって、かかる検出または定量化が望まれる哺乳動物に有効量の式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む方法を提供する。
【0046】
本発明は、哺乳動物におけるGlyT1を標識する組成物の製造での式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物の使用も提供する。
【0047】
本発明は、哺乳動物においてGlyT1を発現させる組成物の製造における式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物の使用も提供する。
【0048】
本発明は、GlyT1の画像診断用組成物の製造における式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物の使用も提供する。
【0049】
本発明は、哺乳動物においてGlyT1を発現させる組織の画像診断用組成物の製造における式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物の使用も提供する。
【0050】
本発明は、哺乳動物の脳におけるグリシントランスポーターサブタイプ1(GlyT1)の画像診断用組成物の製造における、式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物の使用も提供する。
【0051】
本発明はさらに、哺乳動物組織におけるGlyT1機能の検出または定量化のための組成物の製造における式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物の使用を提供する。
【0052】
本発明の前記使用および方法での一つの実施形態において、哺乳動物はヒトである。一つの実施形態において、このヒトはGlyT1が関与する障害にかかっていない。一つの実施形態において、ヒトはGlyT1が関与する障害に罹っている。
【0053】
本明細書において用いられる場合、「GlyT1が関与する障害」および「GlyT1が関与する疾患」という用語は、GlyT1トランスポーターの活性を変更する医薬の投与により治療することができる障害または疾患をさす。GlyT1トランスポーターの作用は、NMDAレセプターの周りのグリシンの局所濃度に影響を及ぼす。ある量のグリシンがNMDAレセプターの有効な機能に必要であるので、この局所濃度に対する変更は、NMDAが関与する神経伝達に影響を及ぼし得る。NMDAが関与する神経伝達における変化は、ある精神神経疾患、例えば、認知症、鬱病および精神病、例えば、統合失調症、ならびに学習障害および記憶障害、例えば、注意不足障害および自閉症に関与する。即ち、GlyT1トランスポーターの活性における変更は、かかる障害に影響を及ぼすことが予想される。
【0054】
本明細書において言及されるGlyT1が関与する障害としては、統合失調症などの精神病をはじめとする神経および精神神経疾患、認知症ならびに注意不足障害および器質脳症候群などの認知障害の他の形態が挙げられる。他の精神神経疾患としては、薬剤誘発性(フェンシクリジン、ケタミンおよび他の解離性麻酔薬、アンフェタミンおよび他の精神刺激薬およびコカイン)精神病、情動障害を伴う精神病、短期反応精神病、統合失調性精神病、および精神病NOS、「統合失調症スペクトル」障害、例えば、統合失調症的もしくは統合失調症型人格障害、または精神病に関連する疾患(例えば、大鬱病、躁鬱(双極性)障害、アルツハイマー病および心的外傷後ストレス症候群)、およびNMDAレセプター関連障害、例えば、自閉症、鬱病、良性健忘症、小児期における学習障害ならびに閉鎖性頭部外傷が挙げられる。
【0055】
本発明に関して、本明細書において用いられる用語は、Diagnostic andStatistical Manual of Mental Disorders、第4版、American Psychiatric Association出版(DSM−IV)および/またはInternational Classification of Diseases、第10版(ICD−10)で分類されている。本明細書において言及される障害の様々なサブタイプは、本発明の一部として想定される。下記の列挙された障害の後のかっこ内の数字は、DSM−IV中の分類コードである。
【0056】
特に、式(I)の化合物を、サブタイプ妄想型(295.30)、解体型(295.10)、緊張型(295.20)、非定型型(295.90)および残留型(295.60)をはじめとする統合失調症;統合失調症様障害(295.40);サブタイプ双極型および鬱型をはじめとする統合失調性感情障害(295.70);サブタイプ異常性欲型、誇大型、嫉妬型、被害型、身体運動型、混合型および不特定型をはじめとする妄想性障害(297.1);短期精神病性障害(298.8);共有精神病性障害(297.3);妄想を伴うサブタイプおよび幻覚を伴うサブタイプをはじめとする全身病状による精神病性障害;妄想を伴うサブタイプ(293.81)および幻覚を伴うサブタイプ(293.82)をはじめとする薬物誘発性精神病性障害;ならびに特定不能の精神病性障害(298.9)に罹っている哺乳動物において用いることができる。
【0057】
式(I)の化合物を、大鬱病エピソード、躁病エピソード、混合エピソードおよび軽躁エピソードをはじめとする気分障害;大鬱病性障害、気分変調性障害(300.4)、特定不能の抑鬱障害(311)をはじめとする抑鬱障害;双極性I障害、双極性II障害(軽躁エピソードを伴う再発性大鬱病エピソード)(296.89)、気分循環性障害(301.13)および特定不能の双極性障害(296.80)をはじめとする双極性障害;抑鬱性を伴うサブタイプ、大鬱病様エピソードを伴うサブタイプ、躁病性を伴うサブタイプおよび混合性を伴うサブタイプを包含する全身病状による気分障害(293.83)をはじめとする他の気分障害、薬物誘発性気分障害(抑鬱性を伴うサブタイプ、躁病性を伴うサブタイプおよび混合性を伴うサブタイプを包含する)ならびに特定不能の気分障害(296.90)をはじめとする情緒障害に罹っている哺乳動物において用いることができる。
【0058】
式(I)の化合物は、パニック発作、広場恐怖症、パニック障害、パニック障害の病歴がない広場恐怖症(300.22)、サブタイプ動物型、自然環境型、血液注入傷害型、状況型および他の方をはじめとする特定恐怖症(300.29)、対人恐怖症(300.23)、強迫神経症(300.3)、心的外傷後ストレス障害(309.81)、急性ストレス障害(308.3)、全般性不安障害(300.02)、全身病状による不安障害(293.84)、薬物誘発性不安障害および特定不能の不安障害(300.00)をはじめとする不安障害に罹っている哺乳動物においても有用である。
【0059】
式(I)の化合物を、薬物使用障害、例えば、薬物依存症および薬物濫用をはじめとする薬物関連障害;薬物誘発性障害、例えば、薬物中毒、薬物離脱症状、薬物誘発性せん妄、薬物誘発性持続性認知症、薬物誘発性持続性健忘障害、薬物誘発性精神病性障害、薬物誘発性気分障害、薬物誘発性不安障害、薬物誘発性的機能不全、薬物誘発性睡眠障害および幻覚薬持続性知覚障害(フラッシュバック);アルコール関連障害、例えば、アルコール依存症(303.90)、アルコール濫用(305.00)、アルコール中毒(303.00)、アルコール離脱症状(291.81)、アルコール中毒せん妄、アルコール離脱せん妄、アルコールにより誘発される持続性認知症、アルコールにより誘発される持続性健忘障害、アルコールにより誘発される精神病性障害、アルコールにより誘発される気分障害、アルコールにより誘発される不安障害、アルコールにより誘発される性的機能不全、アルコールにより誘発される睡眠障害および特定不能のアルコール関連障害(291.9);アンフェタミン(またはアンフェタミン様)関連障害、例えば、アンフェタミン依存症(304.40)、アンフェタミン濫用(305.70)、アンフェタミン中毒(292.89)、アンフェタミン離脱症状(292.0)、アンフェタミン中毒せん妄、アンフェタミンにより誘発される精神病性障害、アンフェタミンにより誘発される気分障害、アンフェタミンにより誘発される不安障害、アンフェタミンにより誘発される性的機能不全、アンフェタミンにより誘発される睡眠障害および特定不能のアンフェタミン関連障害(292.9);カフェイン関連障害、例えば、カフェイン中毒(305.90)、カフェインにより誘発される不安障害、カフェインにより誘発される睡眠障害および特定不能のカフェイン関連障害(292.9);大麻関連障害、例えば、大麻依存症(304.30)、大麻濫用(305.20)、大麻中毒(292.89)、大麻中毒せん妄、大麻により誘発される精神病性障害、大麻により誘発される不安障害および特定不能の大麻関連障害(292.9);コカイン関連障害、例えば、コカイン依存症(304.20)、コカイン濫用(305.60)、コカイン中毒(292.89)、コカイン離脱症状(292.0)、コカイン中毒せん妄、コカインにより誘発される精神病性障害、コカインにより誘発される気分障害、コカインにより誘発される不安障害、コカインにより誘発される性的機能不全、コカインにより誘発される睡眠障害および特定不能のコカイン関連障害(292.9);幻覚薬関連障害、例えば、幻覚薬依存症(304.50)、幻覚薬濫用(305.30)、幻覚薬中毒(292.89)、幻覚薬持続性知覚障害(フラッシュバック)(292.89)、幻覚薬中毒せん妄、幻覚薬により誘発される精神病性障害、幻覚薬により誘発される気分障害、幻覚薬により誘発される不安障害および特定不能の幻覚薬関連障害(292.9);吸入剤関連障害、例えば、吸入剤依存症(304.60)、吸入剤濫用(305.90)、吸入剤中毒(292.89)、吸入剤中毒せん妄、吸入剤により誘発される持続性認知症、吸入剤により誘発される精神病性障害、吸入剤により誘発される気分障害、吸入剤により誘発される不安障害および特定不能の吸入剤関連障害(292.9);ニコチン関連障害、例えば、ニコチン依存症(305.1)、ニコチン離脱症状(292.0)および特定不能のニコチン関連障害(292.9);オピオイド関連障害、例えば、オピオイド依存症(304.00)、オピオイド濫用(305.50)、オピオイド中毒(292.89)、オピオイド離脱症状(292.0)、オピオイド中毒せん妄、オピオイドにより誘発される精神病性障害、オピオイドにより誘発される気分障害、オピオイドにより誘発される性的機能不全、オピオイドにより誘発される睡眠障害および特定不能のオピオイド関連障害(292.9);フェンシクリジン(またはフェンシクリジン様)関連障害、例えば、フェンシクリジン依存症(304.60)、フェンシクリジン濫用(305.90)、フェンシクリジン中毒(292.89)、フェンシクリジン中毒せん妄、フェンシクリジンにより誘発される精神病性障害、フェンシクリジンにより誘発される気分障害、フェンシクリジンにより誘発される不安障害および特定不能のフェンシクリジン関連障害(292.9);鎮静剤−、睡眠薬−、または抗不安薬関連障害、例えば、鎮静剤、睡眠薬、または抗不安薬依存症(304.10)、鎮静剤、睡眠薬、または抗不安薬 濫用(305.40)、鎮静剤、睡眠薬、または抗不安薬中毒(292.89)、鎮静剤、睡眠薬、または抗不安薬離脱症状(292.0)、鎮静剤、睡眠薬、または抗不安薬中毒せん妄、鎮静剤、睡眠薬、または抗不安薬離脱せん妄、鎮静剤−、睡眠薬−、または抗不安薬−持続性認知症、鎮静剤−、睡眠薬−、または抗不安薬−持続性健忘障害、鎮静剤−、睡眠薬−、または抗不安薬により誘発される精神病性障害、鎮静剤−、睡眠薬−、または抗不安薬により誘発される気分障害、鎮静剤−、睡眠薬−、または抗不安薬により誘発される不安障害 鎮静剤−、睡眠薬−、または抗不安薬により誘発される性的機能不全、鎮静剤−、睡眠薬−、または抗不安薬により誘発される睡眠障害および特定不能の鎮静剤−、睡眠薬−、または抗不安薬関連障害(292.9);多薬物関連障害、例えば、多薬物依存症(304.80);および例えば、タンパク同化ステロイド、ニトレート吸入剤および亜酸化窒素などの他の(または未知の)薬物関連障害に罹っている哺乳動物において用いることができる。
【0060】
式(I)の化合物を、一次睡眠障害、例えば、睡眠異常、例えば、一次不眠症(307.42)、一次過眠症(307.44)、ナルコレプシー(347)、呼吸関連睡眠障害(780.59)、日周期リズム睡眠障害(307.45)および特定不能の睡眠異常(307.47)をはじめとする睡眠障害;一次睡眠障害、例えば、睡眠時異常行動、例えば、悪夢障害(307.47)、夜驚症(307.46)、夢遊病(307.46)および特定不能の睡眠時異常行動(307.47);別の精神障害に関連する睡眠障害、例えば、別の精神障害に関連する不眠症(307.42)および別の精神障害に関連する過眠症(307.44);全身病状による睡眠障害;ならびにサブタイプ不眠症型、過眠症型、睡眠時異常行動型および混合型をはじめとする薬物誘発性睡眠障害に罹っている哺乳動物において用いることができる。
【0061】
式(I)の化合物を、摂食障害、例えば、サブタイプ拘束型および過食/利通型をはじめとする神経性食欲不振(307.1);サブタイプ利通型および非利通型をはじめとする神経性食欲亢進(307.51);肥満症;心因性摂食障害;および特定不能の摂食障害(307.50)に罹っている哺乳動物において用いることができる。
【0062】
式(I)の化合物を、自閉症(299.00);サブタイプ注意欠陥/多動障害複合型(314.01)、注意欠陥/多動障害不注意優位型(314.00)、注意欠陥/多動障害活動過多衝動型(314.01)および特定不能の注意欠陥/多動障害(314.9)をはじめとする注意欠陥/多動障害;運動亢進症;破壊的行動障害、例えば、サブタイプ小児期開始型(321.81)、青年期開始型(312.82)および不特定開始(312.89)、反対反抗障害(313.81)および特定不能の破壊的行動障害をはじめとする行為障害;ならびにチック障害、例えば、トゥーレット障害(307.23)に罹っている哺乳動物において用いることができる。
【0063】
式(I)の化合物を、サブタイプ偏執性人格障害(301.0)、統合失調症的人格障害(301.20)、統合失調症型人格障害(301,22)、反社会的人格障害(301.7)、境界型人格障害(301,83)、演技性人格障害(301.50)、ナルシズム人格障害(301,81)、回避性人格障害(301.82)、従属的人格障害(301.6)、強迫性人格障害(301.4)および特定不能の人格障害(301.9)をはじめとする人格障害に罹っている哺乳動物において用いることができる。
【0064】
式(I)の化合物を、他の疾患、例えば、統合失調症、双極性障害、鬱病、認知障害に関連する他の精神障害および精神状態における認知障害に罹っている哺乳動物において用いることができる。本発明に関連して、認知障害という用語は、例えば、注意、適応、学習障害、記憶(即ち、記憶障害、健忘症、健忘障害、一過性全健忘症候群および加齢による記憶障害)および言語機能を包含する認識機能の障害;卒中の結果としての認知障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、ピック病、エイズに関連する認知症または他の認知症状態、例えば、多発脳梗塞性認知症、アルコール性認知症、甲状腺機能低下症に関連する認知症、および例えば、小脳萎縮症および筋萎縮性側索硬化症などの他の変性疾患に関連する認知症;認識衰退、たとえば、せん妄または鬱病(偽認知症状態)外傷、頭部外傷、加齢による認識衰退、卒中、神経変性、薬剤誘発性状態、神経毒性剤、軽度認知障害、加齢による認知障害、自閉症に関連する認知障害、ダウン症候群、精神病に関連する認知障害、および電気ショック療法後に関連する認知障害などを引き起こし得る他の急性または亜急性症状;ならびに運動障害、例えば、パーキンソン病、精神安定薬により誘発されるパーキンソニズム、および遅発性ジスキネジーを包含する認識機能障害の治療を包含する。
【0065】
式(I)の化合物を、性欲障害、例えば、性的欲求低下障害(302.71)、および性的嫌悪障害(302.79);性的興奮障害、例えば、女性の性的興奮障害(302.72)および男性の勃起障害(302.72);オルガスム障害、例えば、女性のオルガスム障害(302.73)、男性のオルガスム障害(302.74)および早漏(302.75);性交痛障害、例えば、性交疼痛(302.76)および膣痙(306.51);特定不能の性的機能不全(302.70);性的倒錯、例えば、自己顕示癖(302.4)、フェティシズム(302.81)、フロッタージュ性倒錯(302.89)、小児性愛(302.2)、性的マゾヒズム(302.83)、性的サディズム(302.84)、服装倒錯性フェティシズム(302.3)、のぞき見(302.82)および特定不能の性的倒錯(302.9);性同一性障害、例えば、小児期の性同一性障害(302.6)および青年期または成人の性同一性障害(302.85);ならびに特定不能の性的障害をはじめとする性的機能不全に罹っている哺乳動物において用いることができる。
【0066】
式(I)の化合物を、痙攣、特にヒトにおけるてんかんに罹っている哺乳動物において用いることができる。「てんかん」は、次の発作:単純部分発作、複雑部分発作、二次性全身性発作、アブサンス発作、ミオクローヌス発作、間代発作、強直発作、強直間代発作および強直発作をはじめとする全身発作を包含することが意図される。
【0067】
式(I)の化合物を、神経因性疼痛、例えば、糖尿病性神経障害におけるもの、坐骨神経痛、非特異性腰痛、多発性硬化症痛、線維筋痛、HIV関連神経障害、神経痛、例えば、ヘルペス後神経痛および三叉神経神経痛ならびに身体外傷、切断、癌、毒素または慢性炎症状態に起因する疼痛にかかっている哺乳動物において用いることができる。
【0068】
本発明のさらなる態様において、前述の式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、および少なくとも1つの医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0069】
担体は、受容者に対して医薬的に許容されるものでなければならず、組成物中の他の成分と適合性でなければならない。即ち、組成物中の他の成分に対して悪影響を及ぼさないものでなければならない。担体は固体または液体であってよく、単位投与処方として少なくとも1つの式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物と処方することができる。望ましいならば、他の医薬的に許容される成分も、本発明の医薬組成物中に組み入れることができる。
【0070】
可能な処方は、経口、舌下、口腔内、非経口(例えば、皮下、筋肉内、または静脈内)、直腸、局所および鼻内投与に適したもの、および吸入または吹送(口または鼻のいずれかを介する)による投与に適した形態のものを包含する。一つの実施形態において、経口投与を提供する。
【0071】
経口投与に適した処方は、それぞれ所定量の活性化合物を含有する独立した単位、例えば、錠剤、カプセル、カシェ剤、もしくはロゼンジとして;散剤または顆粒剤として;水性もしくは非水性液体中溶液もしくは懸濁液として;または水中油もしくは油中水エマルジョンとして提供できる。例えば、本発明の化合物を、制御放出特性を有する処方として調製できる。これは前記の医薬形態のいずれかであってよい。例えば、これは、非水性油性ビヒクル中ゲル処方、例えば、Miglyolであって、必要ならば好適なゲル化剤、例えば、メチルセルロースまたは疎水性コロイド状シリカを含むものであってよい。
【0072】
舌下または口腔内投与に適した処方としては、活性化合物および典型的には、フレーバー付基剤、例えば、糖およびアカシアまたはトラガカントを含むロゼンジ、ならびに不活性基剤、例えば、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア中に活性化合物を含むトローチが挙げられる。
【0073】
非経口投与に適した処方は、典型的には、所定の濃度の活性化合物を含有する無菌水性溶液を含み;溶液は意図される受容者の血液と等張である。かかる溶液は、静脈内投与できるが、皮下または筋肉内投与によって投与することもできる。
【0074】
直腸投与に適した処方は、活性成分および坐剤基剤を形成する1以上の固体担体、例えばカカオ脂を含む単位用量坐剤として提供することができる。
【0075】
局所または鼻内投与に適した処方としては、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアゾルおよびオイルが挙げられる。かかる処方に適した担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0076】
本発明の化合物の処方は、例えば、本発明の化合物の暴露特性を改善するように構成することができる。
【0077】
経皮投与に適した組成物としては、軟膏、ゲルおよび貼付剤が挙げられる。一つの実施形態において、組成物は、例えば、錠剤、カプセルまたはアンプルなどの単位投与形態である。
【0078】
本発明の処方は、好適な方法、典型的には、活性化合物と液体もしくは微粉化された固体担体または両者とを、必要とされる割合で、均一かつ密接に混合し、次いで、必要ならば、得られた混合物を所望の形状に成形することにより調製できる。
【0079】
例えば、錠剤は、活性成分および1以上の任意の成分、例えば、バインダー、潤滑剤、不活性希釈剤、または界面活性分散剤を含む緊密混合物を圧縮することによるか、または粉末活性成分および不活性液体希釈剤の緊密混合物を成形することにより、調製できる。
【0080】
典型的には、所望の濃度を得るために十分な水中に活性化合物を溶解させ、次いで得られた溶液を滅菌かつ等張にすることにより、非経口投与用水性溶液を調製する。
【0081】
略号:
THF テトラヒドロフラン
DCM ジクロロメタン
DMF ジメチルホルムアミド
HATU O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
EDC N−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩
HOAt 3H−(1,2,3)−トリアゾロ(4,5−b)ピリジン−3−オール
NMP N−メチルピロリジノン
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物
分析的LC/MSクロマトグラフィー条件:
方法A
カラム:Waters Atlantis 50mmx4.6mm、3um 粒子サイズ
移動相:A:0.05%ギ酸+水
B:アセトニトリル+0.05%ギ酸
勾配:5分の実行時間:4分にわたって3%Bから97%B
流量:3ml/分
UV波長範囲:220〜330nm
温度:30℃
【0082】
実施例部分全体にわたって、キラル化合物に関して次の用語を採用する。即ち、2つのエナンチオマーの混合物を調製した場合、化合物は(±)と記載され;1つのエナンチオマー(即ち、エナンチオマーのうちの1つがキラル的に多い混合物)が調製された場合、「キラル」と称する。
【0083】
反応が、先のより詳細に記載された反応と同様に行ったと記載されている場合、使用された一般的な反応条件は本質的に同じである。使用した検査条件は、当該分野において標準的な種類のものであるが、反応ごとに適合させることができる。
【0084】
種類1:1−[メチル(フェニルメチル)アミノ]シクロペンタンカルボニトリル
【化6】

水(45ml)中シアン化カリウム(5.41g;83ミリモル)を、10分にわたって、シクロペンタノン(7g;83ミリモル)およびN−メチルベンジルアミン(10.08g;83ミリモル)の、攪拌され、氷冷された混合物に滴下した。18時間室温で撹拌後、混合物をジエチルエーテルで抽出した(2x100ml)。合した抽出物を塩水(100ml)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、溶媒を減圧下で除去して、1−[メチル(フェニルメチル)アミノ]シクロペンタンカルボニトリルを得た。H NMR(CDCl3)δ:1.90(6H、m)、2.20(3H、s)、2.3(2H、m)、3.62(2H、s)、7.25(1H、m)、7.32(4H、m);質量スペクトル(エレクトロスプレーLC/MS):実測値 188(MH−HCN)。C1418 理論値214。保持時間1.21分。
【0085】
種類2(±)−{1−[アミノ(フェニル)メチル]シクロペンチル}メチル(フェニルメチル)アミン
【化7】

−70℃、アルゴン下の、1−[メチル(フェニルメチル)アミノ]シクロペンタンカルボニトリル(D1(6.0g;28ミリモル)のTHF中攪拌溶液に、ジ−n−ブチルエーテル中フェニルリチウム(1.9M溶液を16.21ml;30.8ミリモル)をゆっくりと添加した。反応混合物を3時間かけて室温まで昇温させた後、0℃に再冷却した。メタノール(60ml)を添加し、続いて水素化ホウ素ナトリウム(3.2g、84ミリモル)を数回に分けて添加した。反応物を一夜20℃で撹拌し、0℃に冷却し、飽和炭酸水素ナトリウムを添加した。混合物を酢酸エチルで抽出し(2x50ml)、合した抽出物を乾燥し(NaSO)、溶媒を蒸発させた。シリカ上クロマトグラフィー(0〜10%ジクロロメタン中メタノール勾配で溶出)により、標記化合物(3.90g、47%)を得た。質量スペクトル(エレクトロスプレーLC/MS)、API:実測値295(MH)。C2026 理論値294。保持時間2.12分。
【0086】
種類3(±)−{1−[アミノ(フェニル)メチル]シクロペンチル}メチルアミン二塩酸塩
【化8】

(±)−{1−[アミノ(フェニル)メチル]シクロペンチル}メチル(フェニルメチル)アミン(D2(0.5g;1.7ミリモル)のエタノール中溶液に、3N HCl(1ml)および10%炭素上パラジウム(0.1g)を添加した。接触水素化を16時間、室温および大気圧で行った。触媒を、珪藻土を通して濾去し、濾液を減圧下で蒸発させて、標記化合物(0.32g;69%)を得た。H NMR(DMSO)δ:1.3−2.2(8H、m)、2.5(3H、s)、4.6(1H、s)、7.4(3H、m)、7.6(2H、m)、8.0(2H、bs)、9.0(1H、bs)。
【0087】
種類4 {1−[アミノ(フェニル)メチル]シクロペンチル}メチルアミン
エナンチオマー1およびエナンチオマー2
【化9】


ラセミ(±)−{1−[アミノ(フェニル)メチル]シクロペンチル}メチルアミン二塩酸塩(D3(2g)をジクロロメタンおよび1N水酸化ナトリウム間で分配した。有機層を塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、蒸発させて、対応する遊離塩基(1.435g)を得た。これ(0.342g;1.67ミリモル)から、分取キラルHPLCにより分離して、標記生成物エナンチオマー1(0.134g)を得た;キラルHPLC:99.8% ee;H NMR(CDCl)δ:1.30−1.78(11H、m)、2.33(3H、s)、4.08(1H、s)、7.22(1H、m)、7.28(2H、m)、7.35(2H、m)、およびエナンチオマー2(0.127g);キラルHPLC:99.8%ee;H NMR(CDCl)δ:1.30−1.78(11H、m)、2.33(3H、s)、4.08(1H、s)、7.22(1H、m)、7.28(2H、m)、7.35(2H、m)。
分析的HPLC条件:
カラム:キラルOD 10ミクロン 粒子サイズ 20mm i.d.x250mm
移動相:ヘプタン:無水エタノール(90:10 v/v)
勾配:アイソクラチック
UV波長:215nm
流量:1ml/分
保持時間:7.5分(エナンチオマー1);15.6分(エナンチオマー2)
分取HPLC条件:
カラム:キラルOD 10ミクロン 粒子サイズ 20mm i.d.x250mm
移動相:ヘプタン:無水エタノール(90:10 v/v)
勾配:アイソクラチック
UV波長:215nm
流量:17ml/分
【0088】
種類5:2,6−ジメチル−N−[[1−(メチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]ベンズアミドキラル

【化10】

2,6−ジメチル安息香酸(0.100g;0.668ミリモル)のDMF(5ml)およびDIPEA(0.12ml)中溶液に、{[アミノ(フェニル)メチル]シクロペンチル}メチルアミン(D4)エナンチオマー2(0.124g;0.608ミリモル)およびHATU(0.254g;0.668ミリモル)を添加した。得られた混合物を室温で3日間攪拌し、次いでDMFを減圧下で蒸発させた。残存する物質を酢酸エチルおよび水間で分配し、水で洗浄し、有機層を乾燥させ(NaSO)、蒸発させた。残存する物質をDCM(2ml)中に溶解させ、SCXカートリッジ上にロードした。DCM、次いでメタノールで洗浄し、続いてメタノール中アンモニアで洗浄して、標記生成物(155mg;76%)を得た。H NMR(CDCl3)δ:1.3−1.8(9H、m)、2.21(3H、s)、2.28(6H、s)、5.07(1H、m)、7.0(2H、m)、7.1−7.4(7H、m)。質量スペクトル(エレクトロスプレーLC/MS)。実測値337(MH)。C2228O理論値336。保持時間:1.86分。
【実施例1】
【0089】
11C−N−メチル]−N−[[1−(ジメチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]−2,6−ジメチルベンズアミド(化合物A)
【化11】


サイクロトロンにより製造した[11C]ヨウ化メチルを用いて、ベンズアミド前駆体1BのN−アルキル化により、化合物Aを調製した。16.5MeVプロトンを用いて14N(p,α)11C反応に従って窒素を照射することにより炭素−11を[11C]COとして製造し、標的ガス中に少量の酸素(0.5%)が存在することにより、11Cが[11C]COに変換された。その後、[11C]CH中間体をもたらす接触還元(Ni)により[11C]COを[11C]MeIに変換し、続いてヨウ素で気相ヨウ素化を行った。[11C]ヨウ化メチルをオンラインで、AgOTfで満たされた加熱石英管(200℃)中を通過させることにより、[11C]MeOTfに変換した。[11C]MeOTfをその後、前駆体1Bアセトンを含有する反応バイアルに室温で送達した。反応混合物を5分間30℃に加熱した。70分の照射後、典型的な合成により、0.6から3.5GBqの化合物Aを得た。全製造に関して、放射化学的純度は、99%より高く、比活性は24から1000GBq/umolの範囲であった。HPLC精製および処方を含む平均全合成時間は、照射の最後から約40分であった。
【0090】
アセトン(300uL)中に溶解させた前駆体(1.0mg)を1mLガラスバイアル中に入れた。[11C]CHOTfを反応バイアルにガスとして送達し、前駆体を含有する溶液中に室温で吹き込んだ。[11C]CHIの送達後、密封された容器を5分間30℃に加熱し、semi−prepHPLCカラム(Sphereclone ODS(2)C−18 250x10mm)に注入した。HPLC精製を、8mL/分の流量で、アセトニトリルおよびリン酸二水素ナトリウム(70mM)(40:60)の溶液からなる移動相を用いて行った。約7.7分後に集められた生成物フラクションを蒸発乾固させ、9mLの0.9%NaClおよび0.2mLエタノール中で再処方した。Sphereclone上、アセトニトリルおよびリン酸二水素ナトリウム(70mM)(70:30)の溶液を移動相として、1ml/分の流量で用いたODS(2)C−18 250x4.6mmカラム上分析的HPLCを用いて、品質管理を行った。
【実施例2】
【0091】
H−N−メチル]−N−[[1−(ジメチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]−2,6−ジメチルベンズアミド(化合物B)
H]メチルノシレートの酢酸エチル中溶液(33mCi/mlで1200mCi)をロータリーエバポレーターで蒸発乾固させ、酢酸エチル(2ml)中に再溶解させた。ペンタメチルピペリジン(2μl)を含有する酢酸エチル(0.5ml)中に溶解させた2,6−ジメチル−N−[[1−(メチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]ベンズアミドキラル(7mg)を添加した。溶液を50℃で18時間撹拌し、加熱した。エタノールとともにロータリーエバポレーターで繰り返し蒸発化させることにより、不安定な活性成分を除去した。(3x5ml)。残留物をエタノール(25ml)中に溶解させた。粗生成物の一部を、Beckman Ultrasphere ODSカラム上で、トリフルオロ酢酸を含有する水からアセトニトリルへの勾配で溶出して、精製した。集められた生成物は依然として不純物を含有することが判明し、従って、同じカラムおよび溶離液を用い、ただし異なる勾配で再度精製した。標記化合物を集め、ロータリーエバポレーターで蒸発乾固させ、残留物をエタノール中に溶解させた。
【0092】
生物学的データ
1.インビボ画像化
1.1 化合物Aに関するPET画像化
動物(ブタ、Yorkshire/Danish Landrace(〜 40Kg;n=2)を単独で一定温度に調節(20℃)された、自然光のストール中に収容した。動物を終末麻酔(ケタミンにより誘発されるイソフルラン麻酔)下、異なる日にスキャンした。各動物の左大腿動脈および静脈にカテーテル(Avanti(登録商標)サイズ4F−7F)を用いて外科手術によりカニューレを挿入した。血液サンプルを大腿動脈から集め、放射標識された薬剤および標識されていない薬剤を大腿静脈中に注射した。動物をSiemens ECAT EXACT HR断層撮影機中、頭部をオーダーメードの保持装置中に固定して、仰向けに入れた。試験中、血液pH、pCOおよびpOレベルをモニターし、正常な生理的レベル範囲内に維持した。加えて、BPおよび心拍数を試験の間中、記録した。化合物Aを大腿静脈中に1分ボーラス注入として静脈内注射した。PETスキャンおよび動脈採血を、放射リガンド投与の開始により開始した。
【0093】
化合物Aの投与後0から90分でPET画像を取得した。化合物Aは容易にブタの脳に侵入し;放射能は、放射性追跡子の投与後25分でその最大吸収値に達し、次いで試験の残り全体にわたって一定して減少した。化合物Aの局所的脳の分布は、既知のグリシントランスポーターサブタイプ1(GlyT1)の分布を反映し、中脳、視床および小脳における蓄積は、皮質領域と比べて高かった(B.Cubelos、C.Gimenez、F.Zafra.、Cereb Cortex.2005、15(4)、448−59.)。
【0094】
1.2 薬理学的攻撃に関するPET画像化
最初の試験において、高比活性iv放射リガンド化合物Aを同じ動物に同じ日に2回連続して投与した。ベースラインスキャン後、動物を高静脈内用量の選択的グリシントランスポーターサブタイプ1(GlyT1)2−クロロ−N−[(S)−[(2S)−1−メチル−2−ピペリジニル](フェニル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミド(0.5mg/kg)で、化合物A投与の5分前に前処理した。第二実験において、選択的グリシントランスポーターサブタイプ1(GlyT1)2−クロロ−N−[(S)−[(2S)−1−メチル−2−ピペリジニル](フェニル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミド(0.001、0.01および0.1mg/kg)を、用量を段階的に増加させて、化合物A投与の5分前に投与した。[15O]COおよび[15O]HOを、標識されていない化合物の投与前および投与後に投与して、それぞれ、脳血液容積を評価し、解剖情報を得た。高用量の選択的グリシントランスポーターサブタイプ1(GlyT1)2−クロロ−N−[(S)−[(2S)−1−メチル−2−ピペリジニル](フェニル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミドの投与後、放射性追跡子の特異的吸収をブロックし、脳全体にわたる放射能の均一な分布に至った。増加量の選択的グリシントランスポーターサブタイプ1(GlyT1)2−クロロ−N−[(S)−[(2S)−1−メチル−2−ピペリジニル](フェニル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミドの投与後、脳において、化合物A吸収の用量依存的減少が観察された。
【0095】
1.3 PETデータ分析
組織デリバリー(K1)および分配係数(分布のPET容積−Vd)の評価を導くトレーサー運動モデル技術を用いることにより、PETデータを分析した。血漿中の未変化の放射性追跡子の濃度を表す入力関数を、全血漿放射能の個別の測定値および親放射性追跡子フラクションを決定するHPLC測定値を用いて得た。組織インパルス応答機能を評価する一般的なトレーサー運動モデル(DEPICT)を各組織時間活性曲線のそれぞれに適合させて、各領域に適切なパラメータを導き出した(K1,Vd)(R.N.Gunn、S.R.Gunn、V.J.Cunningham.Cereb Blood Flow Metab.2001、21(6)、635−52;R.N.Gunn、S.R.Gunn、F.E.Turkheimer、J.A.Aston、V.J.Cunningham.J Cereb Blood Flow Metab.2002、22(12)、1425−39)。抽出フラクション(K1)は脳領域全体にわたって0.06min−1で安定であり、選択的グリシントランスポーターサブタイプ1(GlyT1)2−クロロ−N−[(S)−[(2S)−1−メチル−2−ピペリジニル](フェニル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミドの予備処理により変更されなかった。分布容積(Vd)は、中脳での5.6から皮質領域での3まで変化し、最低吸収は嗅球で観察された(Vd=2)。高用量(0.5mg/kg)の選択的グリシントランスポーターサブタイプ1(GlyT1)2−クロロ−N−[(S)−[(2S)−1−メチル−2−ピペリジニル](フェニル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミドの後、Vdは全脳領域において、嗅球において観察される値まで減少し、このことは、ほぼ完全なGlyT1飽和を示す。選択的グリシントランスポーターサブタイプ1(GlyT1)2−クロロ−N−[(S)−[(2S)−1−メチル−2−ピペリジニル](フェニル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミドの用量を増加させて投与した後の化合物AによるVdの変化の分析から、0.0225mg/kgの静脈内ED50を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


(式中、Rは、H、11C、14C、13N、15O、76Br、18F、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Brおよび82Brから選択される放射性核種を含むか、またはこれらからなる放射標識基である)
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
が、H、11C、14C、13N、15O、76Br、18F、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Brおよび82Brから選択される放射性核種を組み入れたC1−6アルキル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が、11Cを含むC1−6アルキル基である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
11C−N−メチル]−N−[[1−(ジメチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]−2,6−ジメチルベンズアミドまたはその塩もしくは溶媒和物である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
2,6−ジメチル−N−[[1−(メチルアミノ)シクロペンチル](フェニル)メチル]ベンズアミドを式(IV):
−X(IV)
(式中、Rは、H、11C、14C、13N、15O、76Br、18F、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Brおよび82Brから選択される放射性核種を含有する基であり、Xは脱離基である)
の化合物と反応させ;その後、任意にその塩または溶媒和物を形成することを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物の調製法。
【請求項6】
療法において使用される請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
GlyT1リガンドとして使用される、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
GlyT1結合試験において使用される請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
PETリガンドまたはSPECTリガンドとして使用される請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
哺乳動物においてGlyT1を標識する方法であって、有効量の、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項11】
哺乳動物においてGlyT1を発現させる方法であって、有効量の、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項12】
GlyT1の画像診断法であって、有効量の、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項13】
哺乳動物においてGlyT1を発現させる組織の画像診断法であって、有効量の、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項14】
哺乳動物の脳におけるGlyT1の画像診断法であって、有効量の、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項15】
哺乳動物組織におけるGlyT1機能を検出または定量化する方法であって、かかる検出または定量化が望まれる哺乳動物に、有効量の、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項16】
前記哺乳動物がヒトである、請求項10〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
療法において使用される請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項18】
GlyT1リガンドとして使用される請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項19】
GlyT1結合試験において使用される、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項20】
PETリガンドまたはSPECTリガンドとして使用される、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項21】
哺乳動物においてGlyT1を標識する方法であって、有効量の、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項22】
哺乳動物におけるGlyT1の発現法であって、有効量の、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項23】
GlyT1の画像診断法であって、有効量の、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項24】
哺乳動物においてGlyT1を発現させる組織の画像診断法であって、有効量の、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項25】
哺乳動物の脳におけるGlyT1の画像診断法であって、有効量の、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項26】
哺乳動物組織におけるGlyT1機能を検出または定量化する方法であって、かかる検出または定量化が望まれる哺乳動物に、有効量の、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項27】
前記哺乳動物がヒトである、請求項10〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
哺乳動物におけるGlyT1を標識する組成物の製造における、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項29】
哺乳動物におけるGlyT1の発現用組成物の製造における、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項30】
GlyT1の画像診断用組成物の製造における、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項31】
哺乳動物においてGlyT1を発現させる組織の画像診断用組成物の製造における、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項32】
哺乳動物の脳におけるグリシントランスポーターサブタイプ1(GlyT1)の画像診断用組成物の製造における、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項33】
哺乳動物組織におけるGlyT1機能の検出または定量化用組成物の製造における、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項34】
前記哺乳動物がヒトである、請求項17〜22のいずれか1項記載の使用。
【請求項35】
請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物および少なくとも1つの医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物。

【公表番号】特表2009−541262(P2009−541262A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515865(P2009−515865)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056117
【国際公開番号】WO2007/147838
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】