説明

グリセリンを有する高繊維栄養エマルジョン

高繊維含量を有する水性栄養エマルジョンが開示されている。約0.5%から約9.0重量%の乳タンパク質濃縮物、約2.0%から約6.0重量%のグリセリン、約2.3%から約9.0重量%の繊維、ならびに少なくとも2:1のフルクトース対ロイクロースの重量比のフルクトースおよび少なくとも約0.15重量%のロイクロースを含み、20℃で約300センチポアズ未満の粘度を有する、脂肪、タンパク質および炭水化物を含む水性エマルジョン。これらの高繊維エマルジョンは、安定であり、望ましい嗜好性、流動性、血糖プロフィールの鈍化および消化管耐性をもたらす。これらの高繊維エマルジョンは、有益な特徴(安定性、望ましい嗜好性、流動性の1つのまたは複数などを含む)、ならびに製品性能(血糖応答プロフィールの鈍化およびまたは消化管不耐性が極小もしくはないことなどを含む)をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年4月14日出願の米国仮特許出願第61/169,027号を参照し、これに遡って優先権を主張する。
【0002】
本発明は、低粘度および高繊維濃度を有する栄養エマルジョンに関する。
【背景技術】
【0003】
唯一のまたは補助的な栄養源としてヒトへの経口投与に適した、多くの様々なタイプの乳またはタンパク質ベースのエマルジョンが存在する。これらのエマルジョンは、脂肪、タンパク質、炭水化物、ビタミンおよびミネラルを含む水中油エマルジョンとして一般に製造される。このようなエマルジョンの例としては、Abbott Laboratories、Columbus、Ohio USAから入手可能なENSURE(登録商標)栄養液およびGLUCERNA(登録商標)シェークが挙げられる。
【0004】
これらの栄養エマルジョンの多くは、多数の利益のいずれかを提供するために繊維を添加して製造されている。繊維の適切な摂取は、心臓疾患、糖尿病、憩室性疾患および便秘などの様々な症状を発現させる危険性を低減すると考えられている。繊維は、栄養エマルジョン中にしばしば配合され、炭水化物含有エマルジョンの血糖指数の低減に役立ち、このことは糖尿病患者ならびに血糖応答の調節に関連する多くの利益に関心がある人を含めた、多くの人に有益である可能性がある。
【0005】
高繊維食は多くの利益を有するため、小児および成人は1日あたり少なくとも20グラムの食物繊維を摂取することが推奨されることが多い。実際、人が毎日摂取するカロリーが多いほど、その人が健康的な食事をとるために必要とする繊維が多い。例えば、十代の若者および男性は、彼らの個別の食事摂取量に応じて1日あたり30−35グラム以上の繊維を必要とする場合がある。
【0006】
大抵の食事において比較的高い繊維含有率が必要とされているにもかかわらず、平均的米国人は、多くの食品が繊維の添加により強化されているのに、1日あたり約15グラムの繊維しか摂取していない。したがって、一般的消費者の栄養必要量を十分に満たすための比較的高い繊維濃度を有するように製造されるタンパク質または乳ベースのエマルジョンなどの栄養製品が必要とされている。
【0007】
しかし、より高い繊維濃度を有する栄養エマルジョンの配合物は、多くの問題を引き起こすことが多く、これらの一部はエマルジョンベースのマトリックスに特有である。高繊維含有率により、エマルジョンの安定性が損なわれ、過酷な加工温度が必然的に必要となり、消化管耐性が低減し、口当たりの悪さ、ザラザラした食感、風味の変化などの望ましくない嗜好性が生じる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、より高い繊維濃度を含有するが、比較的低く、したがって飲用に適した粘度も有し、ただし、高繊維エマルジョンにこれまで付随していた不利点の一部または全てを有さない栄養エマルジョンが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
高繊維栄養エマルジョンの第1の実施形態は、脂肪、タンパク質および炭水化物を含み、約0.5重量%から約9.0重量%の乳タンパク質濃縮物、約2.0重量%から約6.0重量%のグリセリン、約2.3重量%から約9.0重量%の繊維、ならびに少なくとも2:1のフルクトース対ロイクロースの重量比のフルクトースおよび少なくとも約0.15%のロイクロースを含み、該エマルジョンは、約300cps未満の粘度を有する。
【0010】
高繊維栄養エマルジョンの第2の実施形態は、脂肪、タンパク質および炭水化物を含み、約0.5%から約9.0重量%の乳タンパク質濃縮物、約2.0%から約6.0重量%のグリセリン、約2.3%から約9.0重量%の繊維、ならびに少なくとも2:1のフルクトース対ロイクロースの重量比のフルクトースおよび少なくとも約0.15%のロイクロースを含み、該水性エマルジョンは約2.1重量%未満の糖質を含み、該エマルジョンは、少なくとも約5:1の総炭水化物対糖質の重量比およびまたは約1:1より大きい総食物繊維対糖質の重量比も有し得る。
【0011】
これらの栄養組成物は、繊維含有率が高いにもかかわらず、多様な条件下での望ましい物理的および化学的安定性ならびに望ましい嗜好性、流動性ならびに製品性能(血糖応答プロフィールの鈍化および消化管不耐性が極小またはないことを含む)を有する水性のエマルジョンである。該エマルジョンは、金属、ガラスまたは他の非プラスチック表面ではなくプラスチックである内部表面の過半が該栄養エマルジョンと接触しているパッケージ中に含有されている場合に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】A1、A2およびA3配合物を補充された飼料を給餌されたZucker fa/faラットにおける0、14および28日目の空腹時血漿インスリン濃度(mmole/L)を示している試験1のグラフである。
【図2】A1、A2およびA3配合物を補充されたZucker fa/faラットに関するインスリン耐性試験により求めたインスリン感受性(強制飼養後の規定の時間での血糖の変化)の差を示している試験Iのグラフである。
【図3】A1、A2またはA3配合物を補充された飼料を給餌されたZucker fa/faラットにおける0および28日目の糖化ヘモグロビン(%)を示している試験Iのグラフである。0日目から28日目の糖化ヘモグロビンの変化は、各棒グラフの棒の上部により示されている。
【図4】試験用飼料またはA1配合物が自発的に補充された試験用飼料を給餌されたZucker fa/faラットにおける0、14および28日目の空腹時血漿インスリン濃度(pmol/L)を示している試験IIのグラフである。このグラフは、A1配合物の自発的摂取により対照群に見られる血漿インスリンの増大が抑制されたことを示している(:p<0.05)。
【図5】試験用飼料またはA1配合物が任意に補充された試験用飼料を給餌されたZucker fa/faラットにおけるインスリン注射の0、30、60、90および120分後の血糖(mg/dl)レベルを示している試験IIのグラフである(p<0.05)。
【図6】Zucker fa/faラットが試験用飼料またはA1配合物が任意に補充された試験用飼料を給餌される試験の0および28日目の各ラットにおける糖化ヘモグロビン(%)を示している試験IIのグラフである。棒の上部は、この試験の0日目から28日目の糖化ヘモグロビンの変化である。A1配合物の自発的摂取により、非補充群に見られる糖化ヘモグロビンの増大が抑制されている。
【図7】対照餌または半精製飼料(試験用飼料)を給餌されたZucker fa/faラットによる食餌の総摂取量(kcal)を示し、より美味な試験用飼料に対する嗜好を示唆している試験IIIのグラフである。
【図8】試験用飼料のみまたはA1配合物を補充された試験用飼料を給餌されたZucker fa/faラットによる食餌の累積摂取量(kcal)を示している試験IIIのグラフである。このグラフは、動物であるラットが、A1配合物として摂取したカロリーを相殺するために、美味で好ましい試験用飼料の摂取を減少させることを選択したことを示している(p<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
高繊維栄養エマルジョンは、ジアシルグリセロール油、繊維、フルクトースおよびロイクロース、乳タンパク質濃縮物およびグリセリン、ならびに他の場合によるまたは他の成分の様々な組合せを含み得る。該栄養エマルジョン、ならびに多くの場合による変形形態の一部の必要な特徴は以下に詳述されている。
【0014】
本明細書において使用される「栄養エマルジョン」という用語は、別段の定めのない限り、ヒトへの経口投与に適しており、脂肪、タンパク質、炭水化物を含む水性エマルジョンを意味する。
【0015】
本明細書において使用される「脂肪」および「油」という用語は、別段の定めのない限り、植物または動物に由来するまたはこれらを加工して得られる脂肪性物質を指すために互換的に使用される。
【0016】
本明細書において使用される「高繊維」という用語は、別段の定めのない限り、栄養エマルジョンの約1.5重量%から約9重量%、より一般に約2.3重量%から約9重量%の繊維濃度を意味する。
【0017】
本明細書において使用される「嗜好性」という用語は、別段の定めのない限り、以下の該栄養エマルジョンの性質:芳香、口当たり、テクスチャー、味および色または物理的外観の1つまたは複数を指すことができる。
【0018】
本明細書において使用される「流動性」という用語は、他の特徴の中でもとりわけ、該栄養エマルジョンの高められたエマルジョンおよびまたは懸濁液安定性を示すための、貯蔵温度の上昇または下降などの多様な条件下での性質を含めた該栄養エマルジョンの望ましい粘弾性を指すことができる。
【0019】
本明細書において使用される「製品性能」という用語は、別段の定めのない限り、本明細書に記載の包装された栄養エマルジョンの望ましい利益を指すことができ、このような利益としては、消化管耐性の増大、様々な時間および特定の環境下での血糖応答の望ましい鈍化、インスリン感受性の増大、食事に対する血糖応答の鈍化および望ましい製品パッケージの相互作用の1つまたは複数が挙げられる。
【0020】
本明細書において参照される全ての粘度値は、別段の定めのない限り、62本のスピンドルを有するBrookfield粘度計(モデルDV−II+)を室温(20℃)または指定された温度で使用して得られる。粘度は、目盛上の示度を読み取ることが可能な最高速度のスピンドル速度で該粘度計を操作することにより測定される。測定された粘度値は剪断応力対剪断速度の比を表し、ダイン秒/cm2もしくはポアズ、またはより一般にはセンチポアズ(cps)もしくは100分の1ポアズとして表される。
【0021】
本明細書において使用される全てのパーセンテージ、部および比は、別段の定めのない限り、組成物全体の重量基準である。列挙された成分に関する全てのこのような重量は、活性レベルに基づくものであり、したがって、別段の定めのない限り、市販の材料に含まれ得る溶媒または副生成物は含まない。
【0022】
本明細書において使用される場合、単数形の特性または特徴への任意の言及には、別段の定めのない限り、対応する複数の特性または特徴が含まれるべきであり、この逆も同様である。
【0023】
本明細書において使用される方法またはプロセスステップの任意の組合せは、別段の定めのない限り、任意の順番で実施され得る。
【0024】
該栄養エマルジョンの様々な実施形態は、残りの栄養エマルジョンが本明細書に記載の全ての必要な制限事項を含むならば、本明細書に記載の任意の特定の成分を実質的に含まなくてもよい。この文脈において、「実質的に含まない」という用語は、該組成物が本明細書に開示の特定の成分を機能量未満含むこと、一般に特定の成分を約1.0%未満(約0.5%未満を含み、また約0.1%未満を含み、またゼロパーセント含む)含むことを意味する。
【0025】
該栄養エマルジョンの様々な実施形態は、本明細書に記載の必要な特徴または成分のいずれか、ならびに本明細書に記載されている、またはそうでなければ栄養エマルジョンにおいて有用な任意の追加のまたは場合による特徴または成分を含む、これらからなる、または本質的にこれらからなることができる。
【0026】
本明細書において使用される数値の範囲は、具体的に開示されているかどうかにかかわらずこの範囲内に含有されている全ての数および数の一部を含むことが意図されている。さらに、これらの数値の範囲は、この範囲内の任意の数または数の一部を対象とした請求項に対する支持を提供するものと解釈されるべきである。例えば、1から10という開示は、2から8、3から7、5から6、1から9、3.6から4.6、3.5から9.9などの範囲を支持するものと解釈されるべきである。
【0027】
製品形態
該栄養エマルジョンは、水中油、油中水または複合エマルジョンの形態の水性系であるが、最も一般に、該エマルジョンは、連続水相および不連続油相を有する水中油エマルジョンである。含水率は、エマルジョンによって変動するが、最も一般に、各エマルジョンの約70重量%から約90重量%、より一般に約75重量%から約85重量%の範囲である。
【0028】
該栄養エマルジョンは、室温でおよびまたは摂取の前に冷却されたときに飲用に適した粘度を有する。したがって、該エマルジョンは、室温(20℃)で測定されると約300cps未満、一般に約10cpsから約160cps、より一般に約20cpsから約70cpsの粘度を有し得る。
【0029】
該栄養エマルジョンは、唯一の主要なもしくは補助的な栄養源を提供するために、または、例えば、糖尿病もしくは他の異常なグルコース耐性の症状などの特定の疾患もしくは症状に悩まされている人において使用するための特別な栄養エマルジョンを提供するために十分な種類および量の栄養素と配合することができる。
【0030】
これらの栄養エマルジョンは、約1.055g/mL超(1.06g/mlから1.08g/mlを含む)の製品密度も有し得る。
【0031】
該栄養エマルジョンは、好適なガラス、プラスチック、金属または他の容器でレトルトまたは無菌包装することができるが、容器またはパッケージの内部表面の過半を占めるプラスチック内部表面が該エマルジョンと接触しているプラスチックまたは他の非金属および非ガラス容器またはパッケージを用いて配合することが有利であることが見出されている。これらのパッケージは、該エマルジョンと共に使用され、レトルト殺菌および包装に付される場合に特に有用である。
【0032】
ジアシルグリセロール
該栄養エマルジョンは、本明細書に定義のジアシルグリセロール油を含み得る。このようなジアシルグリセロール油濃度は、該エマルジョンの少なくとも約1重量%(約1.75重量%から約4重量%を含み、また約1.8重量%から約3重量%を含み、また約1.9重量%から約2.7重量%を含む)の範囲である。
【0033】
「ジアシルグリセロール油」という用語は、当技術分野で認められている用語であり、本明細書において使用される場合、約60重量%から100重量%(約70重量%から約85重量%を含む)のジグリセリドを含む加工油を指す。ジアシルグリセロール油は、該エマルジョン中の脂肪の約10重量%から100重量%(約40重量%から約80重量%を含み、また約50重量%から約70重量%を含む)を占め得る。
【0034】
ジアシルグリセロール油は、栄養学の分野においてよく知られており、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドのブレンドを一般に含み、ジグリセリドがその中のグリセロールエステルの大部分を占めている。これらの油は、一般に、約80重量%のジグリセリドおよび約20重量%の他のグリセロールエステル、すなわち、トリグリセリドおよびモノグリセリドを含むダイズおよびまたはカカオ油などの加工植物油である。ジグリセリドは、C16−20脂肪酸エステルなどを含めたC16−24脂肪酸エステル、最も一般にオレイン、リノールおよびまたはリノレン酸のエステルを含み得る。本明細書における使用に適したジアシルグリセロール油の非限定的な例は、Kao Health and Nutrition、Itasca、Illinois、USAから入手可能なEnova(登録商標)油である。
【0035】
該栄養エマルジョンは、そのほとんどまたは全てが少量のジアシルグリセロールエステル(ジグリセリド)を含む様々な天然油のいずれかを含み得るが、これらの天然油は、本明細書におけるエマルジョンのジアシルグリセロール油成分の代表となるのに十分な相対量のジグリセリドを含有していない。
【0036】
該栄養エマルジョンは、ジアシルグリセロール油と組み合わせてレシチンをさらに含み得る。レシチン濃度は、該エマルジョンの少なくとも約0.1重量%(約0.16重量%から約0.5重量%を含む)の範囲とすることができる。
【0037】
繊維
該栄養エマルジョンは、該エマルジョンの少なくとも約1.5重量%(約2.3重量%から約9重量%を含み、また約2.5重量%から約6重量%を含み、また約2.9重量%から約4.3重量%を含む)を占めるレベルの繊維を含む。繊維は、該エマルジョン中の炭水化物全体の約10重量%から100重量%(約12重量%から約40重量%を含み、また約15重量%から約25重量%を含む)を占め得る。
【0038】
本明細書において使用される繊維とは、身体により吸収されないまたはヒト消化管において酵素により破壊されて小さい分子とならなければ吸収されない栄養製品の成分を一般に指す。繊維としては、可溶性およびもしくは不溶性、発酵性もしくは非発酵性の繊維もしくはこれらの供給源またはこれらの組合せもしくは変形形態などを含めた、栄養製品の形態での経口投与に適した任意の知られている繊維または繊維源を挙げ得る。
【0039】
本明細書において使用するための繊維は、規定のpHの緩衝液に可溶化される繊維の能力に基づいて可溶性および不溶性タイプに分類することができる。各繊維源は、これらが含有する可溶性および不溶性繊維の量が異なる。本明細書において使用される場合、別段の定めのない限り、可溶性および不溶性繊維という呼称ならびにこれらの濃度または量は、総繊維濃度も含めて、公認分析化学者協会(Association of Official Analytical Chemists)(AOAC)公定法991.43を使用して決定される。
【0040】
本明細書において使用するための可溶性食物繊維または繊維源の非限定的な例としては、アラビアゴム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、グアーガム、柑橘類ペクチン、低および高メトキシペクチン、エンバクおよびオオムギグルカン、カラギーナンおよびサイリウムが挙げられる。可溶性食物繊維の多数の市販の供給源が入手可能である。例えば、アラビアゴム、加水分解カルボキシメチルセルロース、グアーガム、ペクチンおよび低および高メトキシペクチンは、Belcamp、MarylandのTIC Gums,Inc.から入手可能である。エンバクおよびオオムギグルカンは、Omaha、NebraskaのMountain Lake Specialty Ingredients,Inc.から入手可能である。サイリウムは、North Bergen、New JerseyのMeer Corporationから入手可能であり、一方、カラギーナンは、Philadelphia、PennsylvaniaのFMC Corporationから入手可能である。
【0041】
本明細書において使用するための不溶性食物繊維または繊維源の非限定的な例としては、エンバク外皮繊維、エンドウ外皮繊維、ダイズ外皮繊維、ダイズ子葉繊維、ビート繊維、セルロースおよびトウモロコシフスマが挙げられる。不溶性食物繊維の多数の供給源も入手可能である。例えば、トウモロコシフスマはChicago、IllinoisのQuaker Oatsから、エンバク外皮繊維はCambridge、MinnesotaのCanadian Harvestから、エンドウ外皮繊維はWinnipeg、CanadaのWoodstone Foodsから、ダイズ外皮繊維およびエンバク外皮繊維はLaVale、MarylandのThe Fibrad Groupから、ダイズ子葉繊維はSt.Louis、MissouriのProtein Technologies Internationalから、ビート繊維はMinneapolis、MinnesotaのDelta Fiber Foodsから、セルロースはSaddle Brook、New JerseyのJames River Corp.から入手可能である。
【0042】
本明細書において使用するための繊維としては、2から10、最も一般に3−7という重合の程度を有するものなどを含めたフラクトオリゴ糖(FOS)、およびまたは少なくとも10(約20から約50を含む)という重合の程度を有するイヌリンなどを含めたイヌリン、およびまたはグルコオリゴ糖(GOS)も挙げ得る。FOS、GOSおよびまたはイヌリンは、該栄養エマルジョン中の繊維のゼロから約50重量%(約5重量%から約30重量%を含み、約10重量%から約20重量%を含む)を占め得る。本明細書において使用される場合、FOSの繊維含有率は、FOSの約96重量%であると公認分析化学者協会(AOAC)公定法997.08に従って求められるまたは他の方法で推定され得る。
【0043】
本明細書における使用に適した1種の市販の繊維源は、ADM Company、Decatur、Illinois、USAから入手可能なFibersol−2(商標)、約37重量%の食物繊維を含む可溶性繊維源である。
【0044】
該栄養エマルジョンは、少なくとも約1.20:1(約1.23:1から約5:1を含み、また約1.24:1から約1.8:1を含む)の繊維対ジアシルグリセロール油の重量比も含み得る。
【0045】
糖質
該栄養エマルジョンは、該エマルジョンのゼロから約2.1重量%(約0.5重量%から約1.8重量%を含み、また約0.9重量%から約1.7重量%を含む)の範囲の比較的低い糖質濃度を含み得る。このため、該エマルジョンは、約1:1超(約20:1から約1:1を含み、また約3:1から約1.4:1を含む)の高い繊維対糖質の比も有し得る。
【0046】
この文脈において、「糖質」という用語は、該エマルジョン中の単糖および二糖全体を指す。
【0047】
該栄養エマルジョン中の総炭水化物対糖質の比は、少なくとも約5:1(約5.5:1から約20:1を含み、約6:1から約10:1を含み、また約7:1から約9:1を含む)の範囲とすることができる。
【0048】
該栄養エマルジョンは、サッカリン、アスパルテーム、スクラロース、ネオターム、アセスルファムカリウムまたはこれらの組合せなどの人工甘味料をさらに含み得る。人工甘味料対糖質の比は、少なくとも約0.0060:1(約0.0070:1から約0.0300:1を含み、約0.0080:1から約0.0095:1を含む)の範囲とすることができる。
【0049】
該栄養エマルジョンは、甘味剤として、本明細書に記載の人工甘味料対糖質の比の(本明細書に記載の低糖濃度の)糖質および人工甘味料と組み合わせて使用され得るグリセリンも含み得る。
【0050】
乳タンパク質濃縮物
該栄養エマルジョンは、乳タンパク質濃縮物(MPC)を含むことができ、これは、該エマルジョン中のタンパク質の一部または全てを占め得る。該エマルジョンは、該エマルジョンの少なくとも約0.5重量%(約1重量%から約9重量%を含み、また約2重量%から約6重量%を含む)の濃度のMPCを含み得る。
【0051】
本明細書において使用するのに適した乳タンパク質濃縮物としては、経口栄養製品において使用するのに適した任意のこのような濃縮物が挙げられる。この文脈において、「乳タンパク質濃縮物」という用語は、該乳製品の約40重量%から約88重量%(約60重量%から約80重量%を含み、また約65重量%から約75重量%を含む)を占めるタンパク質含量を有するウシ乳製品を一般に指す。乳タンパク質濃縮物は、少量のラクトースおよび乳脂肪も一般に含む。
【0052】
グリセリン
該栄養エマルジョンは、グリセリンを含むことができ、この濃度は、該栄養エマルジョンの約2.0重量%から約6.0重量%(約2.1重量%から約4.0重量%を含み、また約2.2重量%から約3.0重量%を含む)を占め得る。
【0053】
好適なグリセリン源としては、経口栄養製品において使用するのに適した任意のグリセリン製品が挙げられる。
【0054】
フルクトースおよびロイクロース
該栄養エマルジョンは、フルクトースおよびロイクロースの組合せを含むことができ、ロイクロースは、該栄養エマルジョンの少なくとも約0.15重量%(該栄養エマルジョンの約0.15重量%から約1.0重量%を含み、また約0.30重量%から約0.40重量%を含む)を占め、フルクトース対ロイクロースの重量比は、少なくとも約1.5:1(約2:1から約20:1を含み、また約2.8:1から約8:1を含む)である。
【0055】
フルクトースおよびロイクロースは、該栄養エマルジョンに個別にまたは組み合わせて添加することができる。1種のこのような組合せの市販の供給源は、Cargill Sweetener Solutions、Minneapolis、Minnesota、USAから、Cargill’s スクロマルトSM05シロップとして入手可能であり、これは、乾燥重量基準で約37%のフルクトース、13%のロイクロース、48%の単糖および2%の他の二糖を含む。
【0056】
ピコリン酸クロム
該栄養エマルジョンは、経口投与に適した濃度のピコリン酸クロムを含み得る。このような濃度は、該エマルジョンの少なくとも約0.002重量%(約0.0020重量%から約0.00010重量%を含み、また約0.0010重量%から約0.00040重量%を含み、また約0.00090重量%から約0.00060重量%を含む)の範囲とすることができる。
【0057】
ピコリン酸クロムは、本明細書に記載の他の栄養素と組み合わせて使用された場合に血糖調節を補助するために本明細書に記載の栄養エマルジョン中に配合することができる。
【0058】
多量栄養素
該栄養エマルジョンは脂肪、タンパク質および炭水化物を含む。一般に、知られている、またはそうでなければ経口栄養製品において使用するのに適している脂肪、タンパク質および炭水化物の任意の供給源は、このような栄養素が配合物中の他の選択された成分とやはり相溶性であるならば、本明細書における使用にやはり適している。
【0059】
脂肪、タンパク質および炭水化物の合計の濃度または量は、意図された使用者の栄養必要量に応じて変動させ得るが、このような濃度または量は、本明細書に記載の他の必要な脂肪、タンパク質およびまたは炭水化物成分を含めて、最も一般に以下の具体化された範囲の1つに入る。
【0060】
炭水化物濃度は、最も一般に、該栄養エマルジョンの約5重量%から約40重量%(約7重量%から約30重量%を含み、約10重量%から約25重量%を含む)の範囲であり、脂肪濃度は、最も一般に、該栄養エマルジョンの約2重量%から約30重量%(約3重量%から約15重量%を含み、また約5重量%から約10重量%を含む)の範囲であり、タンパク質濃度は、最も一般に、該栄養エマルジョンの約0.5重量%から約30重量%(約1重量%から約15重量%を含み、また約2重量%から約10重量%を含む)の範囲である。
【0061】
本明細書に記載の栄養エマルジョンにおいて使用するのに適した脂肪またはこれらの供給源の非限定的な例としては、本明細書に記載のジアシルグリセロール油、本明細書に記載のレシチン、ヤシ油、分別ヤシ油、ダイズ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ベニバナ油、高オレイン酸ベニバナ油、MCT油(中鎖トリグリセリド)、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、パームおよびパーム核油、パームオレイン、カノーラ油、海産物油、綿実油ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0062】
本明細書に記載の栄養エマルジョンにおいて使用するのに適した炭水化物またはこれらの供給源の非限定的な例としては、マルトデキストリン、加水分解または加工デンプンまたはトウモロコシデンプン、グルコースポリマー、トウモロコシシロップ、トウモロコシシロップ固形分、コメ由来の炭水化物、グルコース、フルクトース、ラクトース、高フルクトーストウモロコシシロップ、ハチミツ、糖アルコール(例えば、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール)およびこれらの組合せを挙げ得る。
【0063】
該栄養エマルジョンにおいて使用するのに適したタンパク質またはこれらの供給源の非限定的な例としては、任意の知られているもしくは好適な供給源、例えば、乳(例えば、カゼイン、乳清)、動物(例えば、肉、魚)、穀類(例えば、コメ、トウモロコシ)、野菜(例えば、ダイズ)など、またはこれらの組合せに由来し得る加水分解、部分加水分解もしくは非加水分解タンパク質もしくはタンパク質源が挙げられる。このようなタンパク質の非限定的な例としては、乳タンパク質単離物、本明細書に記載の乳タンパク質濃縮物、カゼインタンパク質単離物、乳清タンパク質、カゼイン塩、全乳の牛乳、部分または全脱脂乳、ダイズタンパク質単離物、ダイズタンパク質濃縮物などが挙げられる。
【0064】
選択可能性分
該栄養エマルジョンは、該製品の物理的、化学的、嗜好性または加工の特性を改良するまたは標的集団において使用されると薬剤成分もしくは追加の栄養成分として作用することができる他の場合による成分をさらに含み得る。多くのこのような場合による成分は、知られている、またはそうでなければ栄養製品において使用するのに適しており、このような場合による成分が安全で経口投与に効果的であり、選択された製品形態で必要な他の成分と相溶性であるならば、本明細書に記載の栄養エマルジョンにおいて使用され得る。
【0065】
このような場合による成分の非限定的な例としては、保存剤、酸化防止剤、乳化剤、緩衝剤、薬剤活性成分、本明細書に記載の追加の栄養素、着色剤、風味、増粘剤および安定剤(例えば、カラギーナン、アビセル(avicel))、ステロール、植物ステロール、ウコン、潤滑剤などが挙げられる。
【0066】
該栄養エマルジョンは、ビタミンまたは関連する栄養素をさらに含むことができ、これらの非限定的な例としては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ビタミンB12、カロテノイド、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、コリン、イノシトール、これらの塩および誘導体ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0067】
該栄養エマルジョンは、ミネラルをさらに含むことができ、これらの非限定的な例としては、カルシウム、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、銅、ナトリウム、カリウム、モリブデン、クロム、セレン、塩化物およびこれらの組合せが挙げられる。
【0068】
製造方法
該栄養エマルジョンは、栄養エマルジョンを作製するため、最も一般に水性栄養エマルジョンもしくは乳ベースのエマルジョンを作製するための任意の従来の、またはそうでなければ知られている方法により製造することができる。
【0069】
1つの好適な従来の製造プロセスにおいて、2種以上の別々のスラリーが調製され、その一方は脂肪を実質的に含まない水性スラリーである。1種または複数の追加のスラリーとしては、脂肪/油中タンパク質スラリー(例えば、タンパク質、脂肪、乳化剤または界面活性剤等。)水中タンパク質スラリー(例えば、水中タンパク質)および追加の炭水化物−ミネラルスラリーを挙げ得る。複数のスラリーは、最後にはブレンドタンク中で混ぜ合わされ、超高温加工に付され、均質化され、追加のビタミン、ミネラルまたは他の場合による成分を注入され、必要に応じて水で希釈される。
【0070】
該製造プロセスは、例えば、金属、ガラスまたはプラスチックでもよく、再び密閉し得る好適な容器で得られた栄養エマルジョンを包装するステップをさらに含み得る。該方法は、包装された栄養エマルジョンをレトルト殺菌に供してレトルト包装された栄養エマルジョンを製造するステップもさらに含み得る。レトルト殺菌は、配合分野における当業者によく知られているプロセスステップであり、包装された液体栄養製品の高温処理を一般に伴う。該栄養エマルジョンは、また、レトルト殺菌ではなく無菌包装されてもよい。
【0071】
該栄養エマルジョンの製造プロセスは、必要不可欠なものではなく、本発明の精神および範囲から逸脱することなく本明細書に記載のもの以外の様式で実施され得る。したがって、本実施形態は、あらゆる点において例示的および非限定的であり、全ての変更および等価物も本発明の記述の範囲内に入ると見なされる。
【0072】
驚くべきことに、本明細書に開示および記載の特定の成分の組合せが予想外の利益を高繊維栄養エマルジョンにもたらし得ることが今や発見された。これらの予想外の利益の1つまたは複数は、本明細書に記載の成分の2種以上の相乗的組合せの結果とすることができる。本明細書に記載の特定の成分の組合せの1つまたは複数は、従来の栄養エマルジョンと比較して改善されたおよび予想外の特性を高繊維エマルジョンに付与し得る。一実施形態において、高繊維エマルジョン中の成分の組合せは、より高いカロリー含量と組み合わせると改善された血糖応答をもたらし得る。別の実施形態において、高繊維エマルジョン中の成分の組合せは、繊維含有率が高いにもかかわらず、より望ましい低温加工を使用して製造することができる非常に安定な高繊維エマルジョンをもたらし得る。さらに別の実施形態において、高繊維エマルジョンの成分は、多くの繊維、より高いカロリーおよび改善された血糖応答の鈍化をもたらすと同時に、改善された嗜好性および改善された消化管耐性をもたらし得る。
【0073】
本明細書に記載の高繊維エマルジョンにおいて利用される新規の成分ブレンドとしては、以下の成分の任意の2つ、3つ、4つ、5つ以上の任意の組合せを挙げることができ、これらはそれぞれ個別にまたは組み合わせて(さらには相乗的に組み合わせて)上記の高繊維エマルジョンの驚くべき利益に寄与し得る:ジアシルグリセロール油、乳タンパク質濃縮物、スクロマルト(sucromalt)、繊維、フラクトオリゴ糖、不溶性繊維、ウコン、グリセリン、ピコリン酸クロム、16−24個の炭素原子を有するモノ不飽和脂肪酸、ロイクロースおよびフルクトース。すなわち、これらの成分のいずれか1つは、他の成分のいずれか1つまたは複数と組み合わせることができ、得られる高繊維エマルジョンに驚くべき利益をもたらし得る。
【実施例】
【0074】
以下の実施例は、該栄養エマルジョンの特定の実施形態およびまたは特徴を例示している。各実施例は、単に例示の目的で示されており、本発明の精神および範囲から逸脱することなく多くのそれらの変形が可能であるため、制限するものと解釈されるべきではない。
【0075】
実施例1−4
これらの実施例は、本開示の栄養実施形態を例示しており、この成分は以下の表に列挙している。全ての成分量は、別段の定めのない限り、製品のバッチ1000kgあたりのkgとして列挙している。各配合物は、常温で長期保存可能な水性エマルジョンである。
【0076】
各配合物は、適切な成分を別個の炭水化物−ミネラルスラリー、別個の水中タンパク質スラリーおよび別個の油中タンパク質スラリー中に混ぜ合わせることにより、従来の方法により調製する。個々のスラリーについて、各成分は、選択した材料に適した温度および剪断下で一緒に混合し、その後、異なるスラリーをブレンドタンク中で混ぜ合わせ、超高温処理(UHT)に付し、次いで、約3000psiで均質化する。次いで、ビタミン、風味および他の熱感受性物質を均質化した混合物に添加する。得られた混合物は、所望の濃度および密度(約1.0628g/mL)を達成するために必要に応じて水で希釈する。次いで、得られた栄養エマルジョンを殺菌し、8オンスのプラスチックボトルでレトルト包装する。選択したボトルは、幅の広いパッケージ本体から狭いネック部が1−5cm伸びている。
【0077】
例示した組成物を包装すると、望ましい特徴(物理的もしくは化学的もしくはエマルジョン安定性、望ましい嗜好性、好ましい流動性または粘弾性などの1つまたは複数の望ましい特徴を含む)および本明細書に定義の製品性能が得られる。各配合物は、包装し、20℃で最大で18か月間貯蔵した場合に物理的に安定であり、特にこのような血糖応答の鈍化が有益である糖尿病患者または他の人において使用した場合に、血糖応答の鈍化をもたらし、消化管不耐性を極小にするまたは起こさせない。
【0078】
【表1】


【0079】
実施例5−8
これらの実施例は、本開示の栄養実施形態を例示しており、この成分は以下の表に列挙している。全ての成分量は、別段の定めのない限り、製品のバッチ1000kgあたりのkgとして列挙している。各配合物は、実施例1−4に記載のプロセスに従って調製および包装した常温で長期保存可能な水性エマルジョンである。
【0080】
【表2】

【0081】
実施例9−12
これらの実施例は、本開示の栄養実施形態を例示しており、この成分は以下の表に列挙している。全ての成分量は、別段の定めのない限り、製品のバッチ1000kgあたりのkgとして列挙している。各配合物は、実施例1−4に記載のプロセスに従って調製および包装した常温で長期保存可能な水性エマルジョンである。
【0082】
【表3】

【0083】
実施例13−16
これらの実施例は、本開示の栄養実施形態を例示しており、この成分は以下の表に列挙している。全ての成分量は、別段の定めのない限り、製品のバッチ1000kgあたりのkgとして列挙している。各配合物は、実施例1−4に記載のプロセスに従って調製および包装した常温で長期保存可能な水性エマルジョンである。
【0084】
【表4】

【0085】
実施例17−20
これらの実施例は、本開示の栄養実施形態を例示しており、この成分は以下の表に列挙している。全ての成分量は、別段の定めのない限り、製品のバッチ1000kgあたりのkgとして列挙している。各配合物は、実施例1−4に記載のプロセスに従って調製および包装した常温で長期保存可能な水性エマルジョンである。
【0086】
【表5】

【0087】
試験I
この試験において、本発明の実施形態(A1)のインスリン感受性という利益を、別々の対照(A2およびA3)に対して評価する。A1は、本発明のバランスのとれた栄養配合物であり、A1の選択された成分のみを含有し、本発明に要求される必要なバランスのとれた配合物を含有していない配合物A2(炭水化物−クロム)およびA3(炭水化物−タンパク質−クロム)と比較されている。
【0088】
【表6】

【0089】
この実施例の準備において、32匹の雄のZucker fa/faラット(試験の開始時に9週と5日齢)、体重0.423kg)を、3つの群(n=10−11)に分別し、体重が同等になるようにする。各ラットは、飽和脂肪および高血糖な炭水化物が豊富な点で低品質の米国標準食を模倣することを意図した半精製ペレット飼料(「試験用飼料」)を自由に摂取することができる。さらに、各ラットは、3種の液体サプリメントA1、A2またはA3の1種を摂取することができる。A1は本発明のバランスのとれた栄養実施形態である。A2はA1の機能性炭水化物およびピコリン酸クロムを含む溶液である。A3はA1の機能性炭水化物、クロムおよびタンパク質を含む溶液である。A2およびA3溶液はいずれも、各ラットがA1配合物中に存在するレベルの機能性炭水化物(Fibersol、スクロマルトおよびグリセロール)(2.83キロカロリー/グラム)およびタンパク質(乳タンパク質濃縮物およびダイズタンパク質濃縮物)(3.46キロカロリー/グラム)を摂取するように調製する。
【0090】
栄養補助ありまたはなしの試験用飼料の給餌の0、14および28日後に、グルコース、インスリン糖化ヘモグロビンのアッセイのために終夜絶食時血液試料を採取する。インスリン耐性は、ラットに試験用飼料を与える直前および給餌の28日後に測定する。インスリン耐性を測定するために、終夜絶食ラットにレギュラーインスリン(1U/kg体重;Humulin(登録商標)、Eli Lilly Company)を注射する。インスリン注射の前ならびに30、60、90および120分後に血液試料を尾の先端から得る。試験の最後に再び食餌を与える。
【0091】
栄養補助組成物は、28日目の給餌期間にわたって空腹時血糖濃度に影響を及ぼしていない。驚くべきことに、A3およびA2により、A1と比較して血漿インスリンが増大している(図1を参照、A2対A1について14日目にp<0.01)。A3により、インスリン感受性がA1と比較して著しく悪化している(図2を参照)。A2の補充により、糖化ヘモグロビンの増大がA1は0.2%であったのに対して、0日目から28日目に0.9%拡大している(図3)。
【0092】
上記の評価に基づいて、驚くべきことに、A1配合物の推定される機能性成分(Fibersol、スクロマルト、グリセロール、ピコリン酸クロム、乳タンパク質濃縮物およびダイズタンパク質濃縮物)の自発的摂取により、インスリン感受性および代謝調節が、完全なA1配合物の自発的摂取と比較して悪化することを見出した。したがって、A1配合物の有益な作用は任意の個々の成分により説明することができず、本明細書に開示の完全なバランスのとれた配合物に帰するに違いない。
【0093】
試験II
本発明の実施形態をインスリン感受性および糖化ヘモグロビンについて評価する試験を実施する。
【0094】
この試験の準備において、20匹の雄のZucker fa/faラット(試験の開始時に9週齢、体重0.36kg)を10匹ずつの2つの群に分別し、体重が同等になるようにする。「試験用飼料」、飽和脂肪および高血糖な炭水化物(スクロースおよびマルトデキストリンなどを含む)が豊富な点で低品質の米国標準食を模倣することを意図した半精製ペレット飼料を各ラットに給餌する。各ラットに試験用飼料のみを給餌する(「栄養補助なし」)または先に記載の配合物A1を補充する。
【0095】
栄養補助ありまたはなしの試験用飼料の給餌の0、14および28日後に、グルコース、インスリン糖化ヘモグロビンのアッセイのために終夜絶食血液試料を採取する。インスリン耐性は、ラットに試験用飼料を与える直前および給餌の14日後に測定する。終夜16hrラットを絶食させ、ゼロ時に空腹時血液試料を尾の先端から採取する。この直後に、ラットにレギュラーインスリン(1U/kg体重;Humulin(登録商標)、Eli Lilly Company)を注射する。インスリン注射の30、60、90および120分後に血液試料を尾の先端から得る。試験の最後に再び食餌を与える。
【0096】
A1配合物の補充は血糖濃度に影響を及ぼしていない。驚くべきことに、A1の自発的摂取により血漿インスリン濃度が低減し(図4を参照)、インスリン耐性が改善した(図5を参照)。試験の期間中に糖化ヘモグロビン濃度が2.1%増大する(図6)が、驚くべきことに、Viking 2のたった4週間の自発的摂取により、増大がたった0.6%に制限されている。これらの実験における各ラットにはViking 2を摂取することを強制していない。単に、これらが脂肪および糖質が豊富なこれらの非常に美味な飼料の他に該配合物を摂取できるようにしているだけである。驚くべきことに、これらの前糖尿病症のラットは、血漿インスリン濃度およびインスリン耐性試験により測定する彼らのインスリン感受性を改善するのに十分なA1配合物を自発的に摂取している。さらに、A1配合物のたった4週間の自発的摂取により、これらの前糖尿病症のラットにおいて高脂肪、高スクロースの試験用飼料により誘発された糖化ヘモグロビンの上昇を急激に制限できることは驚くべきことである。
【0097】
試験III
本発明の実施形態を満腹効果について評価する試験を実施する。
【0098】
この試験の準備において、40匹の雄のZucker fa/faラット(試験の開始時に9週齢、体重0.36kg)を10匹ずつの4つ群に分別する。各群は体重が同等である。各ラットに2種の固形飼料の一方を給餌する。第1の固形飼料は対照餌Harlan 2018(Harlan−Teklad、Madison、WI)であり、第2の固形飼料は、飽和脂肪および高血糖な炭水化物(スクロースおよびマルトデキストリンなどを含む)が豊富な点で低品質の米国標準食を模倣することを意図した半精製ペレット飼料である「試験用飼料」である。各ラットに非栄養補助固形飼料(対照餌または試験用飼料のみまたは先に記載の配合物A1(液体)を補充されている同じ固形飼料を給餌する。
【0099】
実験用の飼料を28日間与える。約50グラムの食餌をワイヤーケージのふたの上に置いて各ラットに与えることにより固形ペレット飼料を給餌し、残ったものを毎日秤量する。こぼれた量を考慮に入れる。ケージの正面にボトルを取り付けることにより液体飼料(A1配合)を給餌する。ボトルを秤量することにより摂取量を測定する。古い飼料は廃棄し、清浄なボトルならびに新鮮な液体および固形飼料を毎日与える。全てのラットに固形および液体飼料を不断給餌する。
【0100】
予想通り、試験用飼料により、対照餌と比較して食餌摂取量および体重が増大した(p<0.05、図7を参照)。このことは、高脂肪、高スクロースの試験用飼料が通常の固形飼料と比較して好ましいことを示しており、各ラットが試験用飼料を非常に美味であると感じたことを示唆している。しかし、A1配合物を摂取できるようにすると、各ラットは、試験の間に約1000kcalを自発的に摂取した。驚くべきことに、各ラットは、A1配合物として摂取したカロリーを相殺するために、美味で好ましい試験用飼料の摂取量を減少させることを選択した(p<0.05、図8を参照)。このことは、A1配合物が驚くほど美味で満腹感をもたらし、ラットに好ましい固形飼料の摂取量を低減させることを示唆している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.5重量%から約9.0重量%の乳タンパク質濃縮物、約2.0重量%から約6.0重量%のグリセリン、約2.3重量%から約9.0重量%の総食物繊維、ならびに少なくとも2:1のフルクトース対ロイクロースの重量比のフルクトースおよび少なくとも約0.15重量%のロイクロースを含み、20℃で約300cps未満の粘度を有する、脂肪、タンパク質および炭水化物を含む水性エマルジョン。
【請求項2】
約5重量%から約40重量%の炭水化物、約2重量%から約30重量%の脂肪および約1重量%から約15重量%のタンパク質を含む、請求項1に記載の水性エマルジョン。
【請求項3】
エマルジョンの約2重量%から約6重量%の乳タンパク質濃縮物を含む、請求項2に記載の水性エマルジョン。
【請求項4】
エマルジョンの約2.1重量%から約4.0重量%のグリセリンを含む、請求項2に記載の水性エマルジョン。
【請求項5】
エマルジョンの約2.5重量%から約6重量%の総食物繊維を含む、請求項2に記載の水性エマルジョン。
【請求項6】
繊維が、エマルジョン中の炭水化物の約12重量%から約40重量%を占める、請求項2に記載の水性エマルジョン。
【請求項7】
繊維が、エマルジョン中の繊維の約5重量%から約50重量%を占めるフラクトオリゴ糖を含む、請求項2に記載の水性エマルジョン。
【請求項8】
フルクトース対ロイクロースの重量比が2:1から約8:1の範囲である、請求項2に記載の水性エマルジョン。
【請求項9】
約0.15重量%から約1.0重量%のロイクロースを含む、請求項2に記載の水性エマルジョン。
【請求項10】
約2.1重量%未満の糖質を含む、請求項2に記載の水性エマルジョン。
【請求項11】
少なくとも約5:1の総炭水化物対糖質の重量比を有する、請求項10に記載の水性エマルジョン。
【請求項12】
約1:1より大きい総食物繊維対糖質の重量比を有する、請求項10に記載の水性エマルジョン。
【請求項13】
少なくとも約0.0060:1の全人工甘味料対糖質の重量比で少なくとも1種の人工甘味料をさらに含む、請求項10に記載の水性エマルジョン。
【請求項14】
組成物が、20℃で約10cpsから約160cpsの粘度を有する、請求項2に記載の水性エマルジョン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−523841(P2012−523841A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506128(P2012−506128)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/030884
【国際公開番号】WO2010/120772
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】