グリセロールまたはグリセリンからアクロレインを調製する方法

本発明は、グリセロールまたはグリセリンからアクロレインを調製する方法であって、グリセロールまたはグリセリンを、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンもしくは三酸化タングステンまたは前記酸化物の任意の組み合わせによって改質された少なくとも1種のシリカとヘテロポリ酸とからなる触媒の存在下で脱水する方法に関する。前記方法は、アクロレインを使用する3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(MMP)、2−ヒドロキシ−4(メチルチオ)ブチロニトリル(HMTBN)、メチオニンまたはそれらの類似物の製造のために使用できる。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、グリセロールまたはグリセリンの脱水によってアクロレインを作る触媒的な方法とこの方法の適用とに関する。
【0002】
グリセロールは、精製したまたは精製していない、好ましくはバイオマスに由来するグリセロール、および特には高純度のまたは部分的に精製したグリセロールを意味する。精製したグリセロールは、純度が98%以上であり、グリセリンの蒸留によって得られる。グリセリンは、天然起源の、植物油および動物性脂肪の加水分解に由来するグルセリン、または合成起源の、石油に由来するグリセリンであって、多少精製もしくは精錬しているか、でなければ未精製のグリセリンを特に意味する。したがって、以下の説明においては、バイオマスに由来するグリセロールまたはグリセリンの変換について主に言及するが、本発明はもちろんそれに限定されず、その利益は、それらの起源および純度とは無関係に、全てのグリセロールおよびグリセリンまでに及ぶ。
【0003】
化石エネルギーの段階的な枯渇は、生産業者に、バイオマスに由来する再生可能な原材料の燃料を製造するための使用を考えさせる。この状況においては、バイオディーゼルは植物油または動物油から製造される燃料である。
【0004】
この製品は、化石エネルギーと比べた場合に明らかに好ましいCO2収支のおかげで、グリーンオーラ(vert aura)から利益を得る。diester(登録商標)(すなわちVOME、植物油メチルエステル)は、油性液体、特にコプラ、ナタネおよびひまわりの植物油中に存在するトリグリセリドのメタノールによるエステル交換反応により作られるバイオディーゼルであって、およそおよび企図する方法に依存して、diester(登録商標)1トンあたり100kgのグリセロールを同時に生じさせる。使用する原材料の非液体部分、ケークは主に動物飼料で使用される。
【0005】
このバイオディーゼルは軽油における混合物として使用される。近い将来施行される欧州指令2001/77/ECおよび2003/30/ECは、2010年で7%および2015年の年までに10%のdiester(登録商標)を軽油に導入することを計画している。製造されるバイオディーゼルの量のこの大幅な増加は、年あたり数十万トンに相当する大量のグリセロールを生み出すだろう。
【0006】
グリセロールに関する約1,500の用途が既に列挙されており、その中で以下のものがたとえば多くの様々な組成物におけるその存在を例証する:
−薬学における(坐薬およびシロップとしての)、またはモイスチャークリーム、グリセリン石鹸、練り歯磨きとしての化粧品学におけるモイスチャライザー、
−食品産業における溶媒、
−化学産業における可塑剤または潤滑剤。
【0007】
これらの用途はバイオディーゼルと共に生じるであろうグリセロールの量を吸収するのには明らかに不十分であることが判明するであろうし、それらが進んだとしても、従来のグリセロール市場(石鹸、薬学、...)はこのような過剰量を吸収することはできないであろう。それゆえに、非常に大量のグリセロールを完全に使用することのできる新たな用途見つけることが極めて重要である。
【0008】
実際にこの声明を前にして、多くの手段がこの数年で研究されており(M. Pagliaroら、Angew. Chem. Int. Ed. (2007) 46, 4434-4440およびM. Pagliaro, M. Rossi: The Future of Glycerol, RSC Publishing, Cambridge (2008)を参照のこと)、これらは特に以下の6つの価値付与経路を用いる:
−1,3−プロパンジオールおよび1,2−プロパンジオールへの変換(特にこれらは、ポリエステルおよびポリウレタンの合成におけるベースモノマーとして使用される)、
−潤滑剤の化学のためのモノエステルへの変換、
−乳化剤、食品添加剤として使用されるポリグリセロールへの変換、
−(脱水による)アクロレインへのおよび(脱水および酸化による)アクリル酸への変換、
−動物飼料のための添加剤としての直接的な価値付与。
【0009】
アクロレインおよびアクリル酸は、従来、モリブデンおよび/またはビスマスの酸化物をベースにした触媒の存在下での、空気からの酸素によるプロピレンの気相中での制御酸化によって製造される。このようにして得られたアクロレインは、アクリル酸を製造する2段階方法に直接組み込むことができるし、または合成中間体として使用できる。それゆえに、これらの2種のモノマーの製造は、物質として石油留分の蒸発分解または接触分解によって作られるプロピレンに密接に関連する。
【0010】
最も単純な不飽和アルデヒドであるアクロレインおよびアクリル酸の市場は、これらのモノマーが多くの大量生産物の組成に関与するため巨大である。
【0011】
さらに、アクロレインは、その構造のおかげで非常に反応性の化合物であり、多くの用途、特には合成中間体としての用途があり、最も詳細には、それは、D,L−メチオニンおよびそのヒドロキシ類似誘導体、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸(HMTBA)の合成に関与する重要な中間体として使用される。これらの食品添加剤は、それらが動物(家禽、豚、反芻動物、魚、...)の成長に不可欠な食品サプリメントの組成物に関与するので大量に使用される。いくつかの場合では、関与する原材料を多様化させることによって既存の産業ユニットの生産能力を高めることができること、またはそうでなくともそれを確保できることが有利でありうる。それゆえに、もっとも詳細には、プロピレンであるこの化石資源に対する依存性を下げながら、アクロレインの生産性を高めることができることが興味深いと思われる。
【0012】
本発明の対象は、堅牢で、活性で、選択性がありかつ再生可能な触媒の利用であって、アクロレインをグリセロールまたはグリセリンから、特にバイオマスから以下の反応に従って直接製造できる利用にある:
HO−CH2−CH(OH)−CH2−OH → CH2=CH−CHO + 2H2
それゆえに、この選択肢では、プロピレン石油資源に依存しない、他の再生可能な原材料からのアクロレインの競争力のある合成方法を行うことができる。
【0013】
この可能性は、バイオマスから直接のメチオニンまたはその類似物、たとえばそのヒドロキシ類似物(HMTBA)の合成にとって特に有利である。
【0014】
たとえば、本発明は、この反応の、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(MMP)、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリル(HMTBN)、メチオニンおよびその類似物たとえば2−ヒドロキシ−4メチルチオブタン酸(HMTBA)、HMTBAエステルたとえばイソプロピルエステル、2−オキソ−4−メチルチオブタン酸のアクロレインからの合成への利用にもさらに関する。
【0015】
メチオニン、HMTBAおよび後者の類似物は、動物栄養学、およびそれらの産業的合成方法において使用され、アクロレインはプロピレンおよび/またはプロパンの酸化によって一般に得られる。水の存在下での空気によるプロピレンのアクロレインへの酸化は部分的であり、アクロレインをベースにした得られる粗生成物も未反応のプロピレンおよびプロパン、水ならびにこの酸化反応の副生物、特に酸、アルデヒドおよびアルコールをさらに含有する。
【0016】
グリセロール(グリセリンとも呼ばれる)は280℃を超える温度まで上げると分解してアクロレインを与えることが長い間知られてきた。このわずかに選択的な反応は、完全酸化生成物であるCOおよびCO2に加えて、アセトアルデヒド、ヒドロキシアセトンなどの多くの副生物の形成が伴う。それゆえに、エネルギーの観点でコストのかかる後段の分離もアクロレインを精製する複雑な方法もなしで済ますには、触媒の作用によって、グリセロールをアクロレインへと変換する反応を制御することが不可欠である。
【0017】
多くの学術的研究者および産業的研究者がこの反応を研究してきた。反応媒体としての超臨界水の使用が特に考えられ、これは、反応媒体の温度および圧力に作用することによってそれが酸性媒体中におかれることを可能にし、それにより触媒の使用を節約することを可能にする。しかしながら、工業的規模での超臨界溶媒の使用は、それが必要とする特に大がかりなインフラストラクチャ―(非常に高圧で動作しかつ特に腐食性の媒体に耐えるオートクレーブ)のせいで、依然として連続的な方法では難しい。
【0018】
一方、実行でき、選択性があり、抵抗性がある触媒系が確認され適用されるならば、気相でのおよび大気圧での連続的な方法の設定が考えられるようになる。このような選択肢の利点を高めることを前にして、担持されたリンタングステンヘテロポリ酸または珪素タングステンヘテロポリ酸と、混合酸化物と、ゼオライトとをベースとする触媒系であって、液相または気相中での連続的または非連続的な方法のために使用できる触媒系の使用に関する数多くの研究が文献に記載されている。
【0019】
たとえば、Tsukudaら(Cat. Comm. (2007), 8, 1349)、Chaiら、(Appl. Catal. A (2009) 353, 213)およびNingら(J. Catal. (2008), 29, 212)は、気相でのグリセロールのアクロレインへの触媒的脱水の方法を記載しており、これはシリカ、活性炭または酸化ジルコニウム上に担持させたヘテロポリ酸の形態にある強酸触媒を適用する。Duboisら(WO 2009/127889)は、触媒としてヘテロポリアニオン酸のアルカリ塩を使用することによってグリセロールを脱水する方法を提案している。なお、これらの研究では、触媒の表面にあるコークスの形成が後者を非常に迅速に触媒毒し、そのためそれらは多くの場合、十分な触媒活性を再び得るために触媒を再生することがしばしば必要である。
【0020】
周知の方法と比較すると、本発明は、最初のグリセロールの全体の変換を可能にしながら、同時に非常に容易に再生可能でありかつ優れたアクロレイン選択性および長い寿命を有する触媒の存在下でのグリセロールの触媒的脱水によって、グリセロールまたは粗グリセリンからアクロレインを調製する方法を提供する。
【0021】
本発明の筆者は、この触媒が、少なくとも1種の無機酸と、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、もしくは三酸化タングステンまたはこれら酸化物の任意の組み合わせによって改質されたシリカとからなることを発見した。
【0022】
本発明に従う無機酸は、ヘテロポリ酸(HPA)から選択され、好ましくはリンタングステン酸、タングストケイ酸およびリンモリブデン酸、ならびにそれらのヘテロ置換体から選択される。好ましくは、本発明のHPAはタングステンをベースにする。
【0023】
ヘテロポリ酸(HPA)は、当業者に周知されている酸素金属的(oxygeno-metalliques)の原子的構造体であり、一般的に1種類の元素または様々な元素(たとえば元素の周期表の第I族〜第VIII族のそれから選択され、珪素およびリンが好ましい)の原子のコア(その周りに、多くの場合モリブデン、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタルおよび他の金属から選択される1種類の元素または様々な元素の周辺原子が対称的に分布している)によって形成されている。HPAは酸性型のヘテロポリアニオン、特にケギン型のそれおよびドーソン型のそれである。本発明によるHPAの命名には、前記ヘテロポリアニオンが含まれる。HPAのヘテロ置換体とは、本発明に従うと、1つ以上の原子が他の原子で置換された構造のHPAを意味し、たとえば、H4PMo11VO40は、HPAであるH3PMo12VO40のヘテロ置換体である。
【0024】
本発明のシリカは、アモルファスシリカから選択されるか、またはより好ましくはメソポーラスシリカ、たとえば市販のSBA−15、SBA−16、MCM−41またはKIT−6から選択され、その後ジルコニアによって改質される。
【0025】
本発明のある選択肢に従うと、ヘテロポリ酸を改質シリカ上に担持させる。
【0026】
たとえば、触媒は、シリカを二酸化ジルコニウムによって改質し、続けて高温でか焼し、次にこの担体に無機酸を含浸させることによって得られる。
【0027】
この担体は、当業者に周知の技術である様々な方法、たとえば含浸、グラフト、共沈、水熱合成で調製できる。メソポーラスシリカを調製する手順は、Kleitzら(Chem. Com. (2003)17 2136)、Zhaoら(Science (1998) 279, 548)によって説明されている。シリカを二酸化ジルコニウムによって改質する手順はGutierrezら(J. Catal. (2007), 249, 140)およびKostovaら(Catal. Today (2001),65, 217)によって説明された。
【0028】
上で定義した触媒は、以下の好ましい特徴を、単独または組み合わせとしてさらに備えてもよい:
二酸化ジルコニウム/シリカの質量比は0.02から5までに及び、より有利にはそれは0.05から1までに及ぶ、
Ti二酸化物/シリカの質量比は0.02から5までに及び、より有利にはそれは0.05から1までに及ぶ、
W三酸化物/シリカの質量比は0.02から5までに及び、より有利にはそれは0.05から1までに及ぶ、
Zr二酸化物/Ti二酸化物/シリカの質量比は、0.02/0.02/1から2/2/1までに及び、より有利にはそれは0.05/0.05/1から1/1/1までに及ぶ、
Zr二酸化物/W三酸化物/シリカの質量比は、0.02/0.02/1から2/2/1までに及び、より有利にはそれは0.05/0.05/1から1/1/1までに及ぶ、
Ti二酸化物/W三酸化物/シリカの質量比は、0.02/0.02/1から2/2/1までに及び、より有利にはそれは0.05/0.05/1から1/1/1までに及ぶ、
Zr二酸化物/Ti二酸化物/W三酸化物/シリカの質量比は、0.02/0.02/0.02/1から2/2/2/1までに及び、より有利にはそれは0.05/0.05/0.05/1から1/1/1/1までに及ぶ、
担体のか焼温度は50から1,200℃まで、より有利には450から750℃までに及ぶ、
無機酸/担体の質量比は0.02から5までに及び、より有利には0.05から1までに及ぶ。
【0029】
先に述べたように、および以下の例で示すように、本発明の触媒は、容易に再生でき、これが脱水の収率にもアクロレインの選択性にも悪影響を与えないという利点を有する。したがって、本発明の対象は、上で説明した方法であって、前記触媒を再生する方法にある。
【0030】
グリセロールをアクロレインに変換する反応を気相で行う場合、様々な方法技術が、すなわち固定床、流動床または循環流動床で使用できる。最初の2つの方法では、触媒の再生を反応から引き離すことができる。たとえば、それは従来の再生方法、たとえば空気中でのまたは分子酸素を含有するガス混合物を用いる燃焼によって域外(ex site)で達成することができる。本発明の方法によると、再生はその場(in situ)で行うこともできる。なぜなら、再生を行う温度および圧力は前記方法の反応条件に近いからである。
【0031】
本発明の方法のもう1つの利点は、最初のグリセロールまたはグリセリンの形態にあり、これは純粋もしくは部分的に精製された形態または溶液、特には水溶液でありうる。有利には、グリセロールの水溶液を使用する。水溶液では、グリセロールの濃度は少なくとも1質量%であり、最適にはそれは5かから50質量%に及び、好ましくは10〜30質量%である。有利には、グリセロールの濃度は、アクロレインの収率を悩ませる寄生反応、たとえばグリセロールエーテルの形成または生成したアクロレインと未変換のグリセロールとの間のアセタール化反応を避けるために、高すぎない方がよい。さらに、グリセロールの溶液は、水の蒸発によって導入されるレドヒビトリー(redhibitoire)エネルギーコストのせいで、あまり希釈しない方がよい。どの場合においても、グリセロール溶液の濃度を関連性のある反応により生じる水を部分的にまたは全体的にリサイクルすることによって調節することが容易である。
【0032】
本発明のもう1つの対象は、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(MMP)、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリル(HMBTN)、メチオニンまたはその上述の類似体をアクロレインから作る方法であって、それによるとアクロレインは上述の方法によって得られる。プロピレンの制御酸化によってアクロレインを作る従来の方法と比較すると、上述の方法に従って製造したアクロレインは、従来の方法のそれとはそれらの量およびそれらの性質の両方の見地で異なる不純物を含みうる。企図される用途によると、当業者に知られている技術によるアクリル酸またはメチオニンまたはその類似物の合成、アクロレインの精製が考えられうる。たとえば、その1つが本出願人の名義の文献WO 2008/006977Aに記載されている。
【0033】
このように、アクロレインが本発明に従って直接得られるまたは精製後に得られると、それはメチルメルカプタン(MSH)と反応して3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(すなわちMMP)を生じる。後段の工程では、MMPをシアン化水素酸に接触させて、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブチロニトリル(HMBTN)を生成させる。HMBTNの合成後、様々な反応工程がメチオニンおよびその類似体たとえばヒドロキシ類似体(HMTBA)をもたらす。アクロレインの合成からのこれらの全ての工程は当業者に周知されている。
【0034】
ここで、以下に本発明を、その範囲を限定しない例および図面によって、より詳細に説明しかつ例証する。
【0035】
変換およびアクロレイン選択性を決定するのに使用する反応条件および計算方法を以下に説明する。
【0036】
グリセロールの脱水反応は、触媒上で、大気圧で、15mmの径および120mmの長さの固定床を有する管状リアクタ内で行う。このリアクタを、触媒を反応温度、典型的には275℃に維持することを可能にするオーブン内に入れる。リアクタに挿入する触媒の質量は0.3g(約1mL)である。リアクタに1.5g/時の流量の10質量%のグリセロールを有した水溶液を供給する。このグリセロールの水溶液を不活性固体上で30mL/分のヘリウムの流れの圧力で蒸発させる。グリセロール/水/窒素の相対的モル比は1.1/50.7/48.1である。計算した接触時間は約0.7秒であり、すなわち6,000-1のGHSVである。接触時間およびGHSVは以下のように定義される:
GHSV=グリセロール体積流量/触媒体積
接触時間=触媒体積/合計体積流量
275℃での合計体積流量=グリセロールの体積流量+水の体積流量+不活性ガスの体積流量。
【0037】
反応後、生成物を冷却トラップにおいて低温維持浴を用いて凝縮させる。より十分なトラップのために、トラップは最初の知られている質量の水を含有する。トラップ時間は1時間であり、トラップの交換を1時間毎に行う間には供給流は中断しない。
【0038】
生じる生成物はガスクロマトグラフィーによっておよび高速液体クロマトグラフィーによって分析する。
【0039】
−前記反応の主生成物は、液体クロマトグラフィー(カラムTHERMO HyperRez、250mm、8μm粒子)により、RI検出器を備えたクロマトグラフTHERMO SpectraSystem(THERMO Surveyor plus)を用いて分析する。この分析中に定量した生成物は以下である:アクロレイン、アセトール、アリルアルコールおよびグリセロール。
【0040】
グリセロールへの変換、アクロレインの選択性および様々な生成物の収率は以下のように定義される:
グリセロールへの変換「C」(%)=100×(1−残留グリセロールモル流量/導入したグリセロールモル流量);
アクロレイン選択性「S」(%)=100×(生成したアクロレインモル流量/反応したグリセロールモル流量);
アクロレイン収率「R」(%)=100×X生成物のモル流量/導入したグリセロールのモル流量。
【0041】
本発明を、その詳細および従来技術と比較した利点を与える以下の例によって、図面を確認しながら以下に例証する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、20SiW−CARiACTおよび20SiW−SBA15触媒(例2)の場合と、20SiW−20Zr−SBA15−650(例1a)の場合とでの、24時間後のアクロレイン収率の比較を示している。
【図2】図2は、再生前(例1a)および再生後(例3)の触媒20SiW−20Zr−SBA15−650を用いた、経時的なアクロレイン収率の離隔を示している。各点について示した時刻は1時間の期間でのトラップの終わりのそれである。
【0043】
例1:本発明による、ジルコニアグラフトによって改質されたシリカ担持触媒の調製および性質決定
シリカの修飾:
例は、250m2/gから700m2/gまでに及ぶ比表面積と、5nmから12nmまでに及ぶ孔径とを有する様々なシリカを扱う。
【0044】
1)SBA−15タイプのシリカ担体は、購入して得られるか、または文献に記載された手順に従って調製される(たとえば、Zhaoら、Science (1998), 279, 548を参照のこと)。その合成例を以下に示す:
3.2gのポリエチレングリコール(5,800g/mol)を、101mLの蒸留水と8.7mLの塩酸(37%)とを含有した45℃の溶液中に溶解させる。次に、6.5gのテトラエチル−オルト−シリケート(99.9%)を添加する。溶液を24時間撹拌し続け、次にテフロン(登録商標)オートクレーブに移す。次に、溶液を入れたオートクレーブを140℃まで24時間かけて加熱する。ろ過によってシリカSBA−15を得る。100℃での乾燥後、シリカを空気中で550℃で3時間にわたってか焼する。
これは六方晶構造のメソポーラスシリカである。
【0045】
2)KIT−6タイプのシリカ担体は、購入して得られるか、または文献に記載された手順に従って調製される(たとえば、Kleitzら、Chem. Com. (2003), 17, 2136を参照のこと)。その合成例を以下に示す:
9gのポリエチレングリコール(5,800g/mol)を、325mLの蒸留水と18mLの塩酸(32%)とを含有した35℃の溶液中に溶解させる。次に、9gのn−ブタノール(99%)と6.5gのテトラエチル−オルト−シリケート(99.9%)とを添加する。テフロンオートクレーブに移す前に、溶液を24時間撹拌し続ける。溶液を入れたオートクレーブを100℃まで24時間かけて加熱する。シリカKIT−6がろ過によって得られる。100℃での乾燥後、シリカを空気中で550℃で3時間にわたってか焼する。
それは立方晶系のメソポーラスシリカである。
【0046】
3)CARiACT−Q10タイプのシリカ担体はFuji Silysia Chemical LTD(日本)から購入して得られる。それは六方晶構造のメソポーラスシリカである。
【0047】
次に、シリカ担体を、Gutierrezらによる文献、J. Catal. (2007), 249, 140に記載された方法に従って、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)でのグラフトによって改質する。20%のジルコニア担体を調製する標準的な手順は以下の通りである:
0.8gのシリカと20mLのエタノール(エキストラドライ)とのゲルに、0.76gのイソプロピル酸ジルコニウム(70%)を添加する。次に、このゲルを液体物質が完全に蒸発するまで撹拌し続ける。100℃での乾燥後、シリカを空気中で650℃で3時間にわたってか焼する。
【0048】
次に、担体にタングストケイ酸を含浸させる、20質量%の酸を有する触媒を調製する手順は以下の通りである:0.8gの担体を20mLの蒸留水中に懸濁させる。2mLの蒸留水中の0.2gのタングストケイ酸H4SiW1140の溶液を懸濁液に添加し、次に溶媒を完全に蒸発させた。
【0049】
この文章のこれ以降では、触媒を以下のように言及する:
XSiW−YZr−Sup−T
ここで:
X=タングストケイ酸の含有量(最終的な触媒における質量%)
Y=二酸化ジルコニウムの含有量(最終的な担体の質量%)
Sup=シリカのタイプ(KIT6=KIT−6、SBA15−SBA−15、CARiACT=CARiACT−Q10);
T=℃で表すか焼温度。
【0050】
例1a:ヘテロポリ酸(HPA)含有量の影響
【表1a】

【0051】
例1b:二酸化ジルコニウム含有量の影響
【表1b】

【0052】
例1c:担体の影響
【表1c】

【0053】
例1d:か焼温度の影響
【表1d】

【0054】
例2:非改質シリカタイプの触媒(従来技術の比較例)の調製および性質決定
従来技術のこれらの触媒は非改質シリカ上に担持されたHPAからなる。HPAおよび非改質シリカの性質は例1のそれと同じである。
【0055】
比較例の触媒は、CARiACT Q10(Fuji Silysia Chemical LTD)、SBA−15およびKIT−6タイプのシリカであって、20質量%のタングストケイ酸H4SiW1140(SiW)を含浸したそれをベースとする。触媒を以下のように言及する:
XSiW−Sup
ここで:
X=タングストケイ酸の含有量(最終的な触媒における質量%)
Sup=シリカのタイプ(KIT6=KIT−6、SBA15−SBA−15、CARiACT=CARiACT−Q10);
【表2】

【0056】
さらに、上述のTsukudaら(2007)の主題でもあるシリカに担持されたタングストケイ酸、Q10−SiW30(30%のタングストケイ酸)は、シリカに担持されたタングストケイ酸(20%のタングストケイ酸)と同じ触媒性能を示すことがWO2007/058221から知られている。
【0057】
例3:触媒の再生
反応混合物下で97時間後、本発明による触媒30SiW−20Zr−SBA15−650を、空気流の下で275℃で2時間にわたって再生した(空気流量:25mL/分)。再生後、触媒を再生前と同じ動作条件下で試験した。
【0058】
得られた結果を以下の表3に示す:
【表3】

【0059】
空気での275℃での再生により、触媒30SiW−20Zr−SBA15−650は、その初期収率を回復することができた。それゆえに、本発明による触媒30SiW−20Zr−SBA15−650は、短時間でかつ活性の損失も選択性の損失もなしに再生できる。触媒30SiW−20Zr−SBA15−650は活性でありかつ選択性があるだけでなく、それは完全にかつ容易に再成されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセロールまたはグリセリンからアクロレインを調製する方法であって、グリセロールまたはグリセリンの脱水を、少なくとも1種のヘテロポリ酸と、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンもしくは三酸化タングステンまたはこれら酸化物の任意の組み合わせによって改質された1種のシリカとからなる触媒の存在下で行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
二酸化ジルコニウム、二酸化チタンもしくは三酸化タングステンまたはこれら酸化物の任意の組み合わせによって改質された少なくとも1種のシリカを含む担体上に、前記ヘテロポリ酸を担持させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Zr二酸化物/シリカの質量比は0.02から5までに及び、より有利にはそれは0.05から1までに及ぶことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
Ti二酸化物/シリカの質量比は0.02から5までに及び、より有利にはそれは0.05から1までに及ぶことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
W三酸化物/シリカの質量比は0.02から5までに及び、より有利にはそれは0.05から1までに及ぶことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
Zr二酸化物/Ti二酸化物/シリカの質量比は、0.02/0.02/1から2/2/1までに及び、より有利にはそれは0.05/0.05/1から1/1/1までに及ぶことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
Zr二酸化物/W三酸化物/シリカの質量比は、0.02/0.02/1から2/2/1までに及び、より有利にはそれは0.05/0.05/1から1/1/1までに及ぶことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
Ti二酸化物/W三酸化物/シリカの質量比は、0.02/0.02/1から2/2/1までに及び、より有利にはそれは0.05/0.05/1から1/1/1までに及ぶことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
Zr二酸化物/Ti二酸化物/W三酸化物/シリカの質量比は、0.02/0.02/0.02/1から2/2/2/1までに及び、より有利にはそれは0.05/0.05/0.05/1から1/1/1/1までに及ぶことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記ヘテロポリ酸/担体の質量比は0.02から5までに及び、より有利には0.05から1までに及ぶことを特徴とする請求項2または9に記載の方法。
【請求項11】
前記ヘテロポリ酸はタングステンをベースとしている請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記グリセロールは水溶液であり、少なくとも1重量%の濃度であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記グリセロール水溶液の濃度は5から50重量%、好ましくは10から30%に及ぶことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒を再生することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記脱水反応を気相中で行うことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記脱水反応を、固定床、流動床または循環流動床を有したリアクタで行うことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
アクロレインから、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(MMP)、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリル(HMTBN)、メチオニン、2−ヒドロキシ−4メチルチオブタン酸(HMTBA)、HMTBAエステルおよび2−オキソ−4−メチルチオブタン酸を作る方法であって、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−515044(P2013−515044A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545389(P2012−545389)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052855
【国際公開番号】WO2011/083254
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(507200961)アディッソ・フランス・エス.エー.エス. (12)
【氏名又は名称原語表記】ADISSEO FRANCE S.A.S.
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【出願人】(512163613)ウニベルジテ・リルル 1−サイセンシーズ・エ・テクノロジーズ (1)
【氏名又は名称原語表記】Universite Lille 1−Sciences et Technologies
【住所又は居所原語表記】Cite Scientifique, Bat A3, 59655 VILLEUNEUVE D’ASCQ CEDEX, FRANCE
【Fターム(参考)】