説明

グリッパ装置およびロボット

【課題】 様々なワークを一つのグリッパで把持することができ、アームチェンジャ無しに作業することができ、リンク構造など複雑な構成にならず簡単な構造で構成でき、グリッパを安価に軽量に製作することができ、ロボットや、グリッパの外にケーブルがでないグリッパ装置を提供する。
【解決手段】 ドライブモジュール10を用いてシリーズに接続された複数のアクチュエータと、アクチュエータに取付けられた指部と、を備え、アクチュエータ制御用ケーブルを中空のロボットフランジを通して接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット先端に設けられた、ワークを自在に把持できるグリッパ装置およびこれを備えたロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロボット用グリッパ装置は、一つのモータを使用してワークを把持している(例えば、特許文献1参照)。
図4は、当該従来例1のロボット用グリッパ装置の全体構成図である。図において、38はグリッパ(ハンド)ツールであり、サーボモータ39を用いてハンドツール先端指部を開閉してワークを把持する。40はサーボモータを制御する制御装置であり、41はハンドツールを着脱可能とする着脱側アームチェンジャ、29は固定側アームチェンジャである。
また、直線運動するアクチュエータを使用してリンク動作によりワークを把持しているものもある(例えば、特許文献2参照)。
図5は、当該従来例2のロボット用グリッパ装置の図である。図において、アクチュエータ2aが駆動すると、ロッド2bが直線動作するので、下レバ3bが動作し、ピン4cを支点に下レバ8bが回転し下爪7bでワークを把持する。
このように、従来のロボット用グリッパ装置は、1ヶのモータまたはアクチュエータを使用してワークを把持するのである。
【特許文献1】特開平6−320475号公報(図1)
【特許文献2】実開平7−40083号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のロボット用グリッパ装置は、一方向動作となっていてワークサイズの変更に対応することができないので、グリッパそのものを交換しないと対応できないという問題があった。また、確実にワークを把持するためにリンク機構など複雑な機構をグリッパに持たせる必要があった。また、アクチュエータを複数個配置してワークを把持するような場合はロボット機内配線にアクチュエータ個数分の制御及び電源供給用ケーブルが必要となるので、ロボットとグリッパの外側に配線するか、ロボット機内を通す場合にはケーブル径が大きいためロボットアームが大きくなるというような問題もあった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、ハンドの交換無しに様々なワークに対応するとともに、構造を簡単にし、省配線化することでグリッパ用配線をロボットアーム内に内蔵しながらロボットアームを細くすることができるロボット用グリッパ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、ワークを把持する複数の指部と、前記複数の指部を駆動する複数のアクチュエータと、を備えたロボット用のグリッパ装置において、前記複数のアクチュエータを制御するための1つの分散処理型コントローラと、前記複数のアクチュエータを駆動する複数のドライブモジュールと、を備え、前記複数のドライブモジュールは前記分散処理型コントローラにシリーズ接続されることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、前記複数の指部は前記アクチュエータに取付けられ、前記複数の指部が相対回転することによりワークを把持することを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、ホルダと、前記ホルダに固定された固定側指と、前記ホルダに固定された第1アクチュエータによって駆動される可動側指と、を備えたロボット用グリッパ装置において、前記固定側指の先端に設けられた第2アクチュエータによって駆動される固定側爪と、前記可動側指の先端に設けられた第3アクチュエータによって駆動される可動側爪と、を備えたことを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、前記第1アクチュエータは中空型アクチュエータであり、前記第3アクチュエータを駆動するためのケーブルが前記第1アクチュエータ内部に挿通されることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4いずれかに記載のグリッパ装置を備えたことを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至4いずれかに記載のグリッパ装置と、アーム先端に設けられた、中空部を有するロボットフランジと、を備え、前記グリッパ装置が、前記ロボットフランジに取付けられるとともに、前記グリッパ装置のアクチュエータを駆動するためのケーブルが、前記中空部を通って配設されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明によると、複数のアクチュエータを用いることで様々なワークを一つのグリッパで把持することができ、アームチェンジャ無しに作業することができる。また、グリッパ内のアクチュエータはシリーズに接続されているため、取付けているグリッパでは把持できない場合に、別のグリッパを取付ける作業が発生した場合でも配線が少ないため簡便に交換作業を実施できる。
また、請求項2、3に記載の発明によると、グリッパは簡単な構造で構成できるため、リンク構造など複雑な構成にならず、グリッパを安価に軽量に製作することができる。また、メンテナンス時も構成部品が少ないため容易に実施することができる。
また、請求項4乃至6に記載の発明によると、中空部をケーブルが通るため、ケーブル挟みこみや引っ掛けることなどによる断線の問題が無い。挙動が安定しないケーブルがロボットの外側に無い構造であるためオフラインで想定した通りのロボット教示を行っても問題が無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明のロボット用グリッパ装置の実施例を表す構造図である。図2は通信及び電源の接続図である。図1において、固定側指1はホルダ4に固定されている。アクチュエータ3の固定部はホルダ4に固定されており、アクチュエータ3の回転部に可動側指2が取付けられている。また可動側指2は「く」の字形状をしている。固定側指1の先端には固定側爪用アクチュエータ5の固定部が取付けられており、回転部には固定側爪7が取付けられている。可動側指2の先端には可動側爪用アクチュエータ6の固定部が取付けられており、回転部には可動側爪8が取付けられている。ホルダ4の内部にはネットワークサーボコントロール機能を備えた分散処理型コントローラ9と前記各々のアクチュエータを駆動するためのドライブ機能を備えた小型ドライブモジュール10を配置している。
【0008】
グリッパはロボットフランジ11に取付けられている。ロボットフランジ11は中空部を有し、グリッパ内にある分散処理型コントローラ9と接続される通信ケーブルと小型ドライブモジュール10に電源を供給する電源ケーブルが通されており、ホルダ内で各々接続されている。通信ケーブルはロボット機内を通りロボットとは別置きの信号の入出力機能を持つIOボードに接続されている。電源ケーブルは通信ケーブルと同じくロボット機内を通りロボットとは別置きの電源供給ユニットに接続されている。
【0009】
本発明が従来技術と異なる部分は、サーボドライブ機能を使用したロボット用グリッパに、駆動用モータだけではなく、各指動作のためのアクチュエータ制御用ネットワークサーボコントロール機能を備えた分散処理型コントローラと、各々のアクチュエータ駆動用のドライブ機能を備えた小型ドライブモジュールとを備えた部分である。
【0010】
その動作は、図2に示すように、ロボット機外に設置された電源とIOボードからの動作指令によりアクチュエータを動作させる。
【0011】
図3はワークを掴んだ状態を示す平面図である。アクチュエータ動作により各指を任意の位置に開閉させ、グリッパが掴める範囲であれば任意のサイズのワークを把持することができる。固定側、可動側各々の指の開閉により比較的大型のワークを把持し、比較的小型のワークに対しては固定側、可動側各々の指を接近させた状態で爪を開閉することにより把持可能である。
【0012】
このように、複数のアクチュエータを用いることで様々なワークを一つのグリッパで把持することができ、アームチェンジャ無しに作業することができる。また、グリッパ内のアクチュエータはシリーズに接続されているため、取付けているグリッパでは把持できない場合に、別のグリッパを取付ける作業が発生した場合でも配線が少ないため簡便に交換作業を実施できる。
また、グリッパは簡単な構造で構成できるため、リンク構造など複雑な構成にならず、グリッパを安価に軽量に製作することができる。また、メンテナンス時も構成部品が少ないため容易に実施することができる。
さらに、ロボットフランジの中空部をケーブルが通るため、ケーブル挟みこみや引っ掛けることなどによる断線の問題が無い。挙動が安定しないケーブルがロボットの外側に無い構造であるためオフラインで想定した通りのロボット教示を行っても問題が無い。
【0013】
なお、アクチュエータ3を中空構造とし、その中空部に可動側爪用アクチュエータ6の通信ケーブルが挿通するように構成してもよい。そうすると、配線が邪魔にならないので、ロボットの動作範囲が拡大する。さらに、可動側指についても中空構造とし、同様の構成とすれば、より動作範囲が拡大する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例を示すロボット用グリッパ装置の平断面図
【図2】本発明の電気的構成を概略的に示す図
【図3】本発明のワーク把持状態を示す図
【図4】従来例1のロボット用グリッパ装置の全体構成図
【図5】従来例2のロボット用グリッパ装置の図
【符号の説明】
【0015】
1 固定側指
2 可動側指
3 アクチュエータ
4 ホルダ
5 固定側爪用アクチュエータ
6 可動側爪用アクチュエータ
7 固定側爪
8 可動側爪
9 分散処理型コントローラ
10 小型ドライブモジュール
11 ロボットフランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持する複数の指部と、前記複数の指部を駆動する複数のアクチュエータと、を備えたロボット用のグリッパ装置において、
前記複数のアクチュエータを制御するための1つの分散処理型コントローラと、
前記複数のアクチュエータを駆動する複数のドライブモジュールと、
を備え、
前記複数のドライブモジュールは前記分散処理型コントローラにシリーズ接続されることを特徴とするグリッパ装置。
【請求項2】
前記複数の指部は前記アクチュエータに取付けられ、前記複数の指部が相対回転することによりワークを把持することを特徴とする請求項1記載のグリッパ装置。
【請求項3】
ホルダと、前記ホルダに固定された固定側指と、前記ホルダに固定された第1アクチュエータによって駆動される可動側指と、を備えたロボット用グリッパ装置において、
前記固定側指の先端に設けられた第2アクチュエータによって駆動される固定側爪と、
前記可動側指の先端に設けられた第3アクチュエータによって駆動される可動側爪と、を備えたことを特徴とするグリッパ装置。
【請求項4】
前記第1アクチュエータは中空型アクチュエータであり、
前記第3アクチュエータを駆動するためのケーブルが前記第1アクチュエータ内部に挿通されることを特徴とする請求項3記載のグリッパ装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載のグリッパ装置を備えたことを特徴とするロボット。
【請求項6】
請求項1乃至4いずれかに記載のグリッパ装置と、アーム先端に設けられた、中空部を有するロボットフランジと、を備え、
前記グリッパ装置が、前記ロボットフランジに取付けられるとともに、
前記グリッパ装置のアクチュエータを駆動するためのケーブルが、前記中空部を通って配設されることを特徴とするロボット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate