説明

グリメピリド含有製剤

【課題】グリメピリドを長期間安定に含有することができる固形製剤の製造方法を提供すること、並びにその方法により製造された固形製剤を提供すること。
【解決手段】グリメピリドを含有する固形製剤の製造工程において、グリメピリドをヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロース含有溶液に懸濁もしくは分散させた液を用いて造粒する工程を含むことを特徴とする固形製剤の製造方法を提供するとともに、その製造方法により製造された細粒剤、顆粒剤又は錠剤である固形製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリメピリド(日本医薬品一般的名称)を長期間安定に含有することができる製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリメピリドはスルホニルウレア系の血糖降下剤であり、2型糖尿病の改善のために使用されている有用な医薬品である。
発明者らは、グリメピリドの製剤開発研究において、グリメピリドを通常使用される添加剤(賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等)を用い、通常の方法で錠剤化したところ、その錠剤の苛酷試験により原薬を長期間安定に保持できない問題があることが判明した。添加剤を替えて数回試みたが、同様な結果が得られた。
なお、グリメピリド含有製剤の従来技術としては、服用性に優れた製剤に関するものが開示されている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−218876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、グリメピリドを長期間安定に含有することができる製剤及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、グリメピリド含有顆粒の製造において、グリメピリドの微粒子をヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロース含有溶液に均一に分散した液を用いてD−マンニトール及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとともに造粒した場合、前記課題解決のために顕著な効果があることを見出した。そこで本発明者らは、その知見に基づいてさらに検討を加え、本発明を完成することができた。
【0006】
すなわち、本発明によれば、下記(1)に記載の固形製剤の製造方法、並びに(2)、(3)及び(4)に記載の固形製剤を提供することができる。
(1)グリメピリドを含有する固形製剤の製造工程において、グリメピリドをヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロース含有溶液に懸濁もしくは分散させた液を用いて造粒する工程を含むことを特徴とする固形製剤の製造方法。
(2)前記(1)の製造方法により製造されたグルメピリドを含有する固形製剤。
(3)固形製剤が細粒剤、顆粒剤又は錠剤である前記(2)に記載の固形製剤。
(4)固形製剤中のヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースの重量含有率が0.2%〜10%である前記(2)又は(3)に記載の固形製剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の固形製剤において、グリメピリドは、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドキシプロピルメチルセルロースの被覆効果により、長期間安定に維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において使用されるグリメピリドの原末は、錠剤化後の適度な溶出速度を得るために、平均粒子径(光散乱法による測定値)が1μm〜10μmのものが好ましく、より好ましくは1μm〜4μmである。その使用量は固形製剤全重量の0.2〜5重量%程度が好ましく、より好ましくは0.5〜3%である。
【0009】
本発明において使用される製剤上の添加物としては、賦形剤として乳糖、結晶セルロース、トウモロコシ澱粉、バレイショ澱粉、部分アルファー化澱粉、D−マンニトール、白糖、ショ糖、ブドウ糖、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。これらの賦形剤のうち、乳糖、D−マンニトールが好ましい。特にD−マンニトールが好ましい。なお、賦形剤の使用量は製剤の重量中、80〜90重量%程度が好ましい。
【0010】
本発明においてヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキプロピルメチルセルロース含有溶液にグリメピリドの微粉末を均一に分散させて造粒することができる。ヒドロキシプロピルセルロース又はドロキプロピルメチルセルロースの使用量は、固形剤全重量の0.2〜10重量%程度が好ましく、より好ましくは1〜5重量%程度である。前記溶液の溶媒としては水又は水溶性の溶媒が好ましい。
【0011】
また、本発明において使用される崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、部分アルファー化澱粉等が挙げられ、なかでも低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。なお、崩壊剤の使用量は、製剤の重量中、0.1〜10重量%程度が好ましい。
【0012】
さらに、滑沢剤としてタルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、脂肪酸グリセリンエステル等を使用することができる。これらの滑沢剤のうちステアリン酸マグネシウムが好ましい。なお、滑沢剤の使用量は、製剤の重量中、0.1〜5重量%程度が好ましい。
【0013】
本発明の固形製剤は、細粒、顆粒又は錠剤の形態として使用することができる。
【実施例1】
【0014】
D−マンニトール443.1g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース15.3gを流動層造粒機(パウレック製:MP−01型)に投入し、平均粒子径1.5μmのグリメピリド9.0gをヒドロキシプロピルセルロース(10.2g)の水溶液204.0gに分散した液を用いて造粒した。なお、分散には高速分散機(特殊機化工業製:T.K.ロボミックス f model)を使用した。引き続きコーンスターチ14.1gと水457gから加温調製した溶液をスプレーすることにより流動層造粒した。得られた顆粒を乾燥し、JIS24メッシュの篩にて篩過した。得られた整粒品の一部82.0gに、クロスポビドン2.2g及びステアリン酸マグネシウム0.9gを加え、ポリエチレン製の袋内にて手で均一に混合した。次いで、この混合物をロータリー式打錠機(菊水製作所製:VIRGO型)で圧縮成型し、下記組成の錠剤を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
グリメピリド 3.0
D-マンニトール 147.7
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 5.1
ヒドロキシプロピルセルロース 3.4
コーンスターチ 4.7
クロスポビドン 4.4
ステアリン酸マグネシウム 1.7
【実施例2】
【0015】
D−マンニトール443.1g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース15.3gを流動層造粒機(パウレック製:MP−01型)に投入し、平均粒子径1.5μmのグリメピリド9.0gをヒドロキシプロピルメチルセルロース(10.2g)の水溶液204.0gに分散した液を用いて造粒した。
なお、分散には高速分散機(特殊機化工業製:T.K.ロボミックス f model)を使用した。引き続きコーンスターチ14.1gと水457gから加温調製した溶液をスプレーすることにより流動層造粒した。得られた顆粒を乾燥し、JIS24メッシュの篩にて篩過した。得られた整粒品の一部82.0gに、クロスポビドン2.2g及びステアリン酸マグネシウム0.9gを加え、ポリエチレン製の袋内にて手で均一に混合した。次いで、この混合物をロータリー式打錠機(菊水製作所製:VIRGO型)で圧縮成型し、下記組成の錠剤を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
グリメピリド 3.0
D-マンニトール 147.7
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 5.1
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 3.4
コーンスターチ 4.7
クロスポビドン 4.4
ステアリン酸マグネシウム 1.7
【0016】
[比較例1]
平均粒子径が1.5μmのグリメピリド9.0g、D−マンニトール443.1g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース15.3gを流動層造粒機(パウレック製:MP−01型)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース(10.2g)の水溶液204.0gを用いて造粒した。引き続きコーンスターチ14.1gと水457gから加温調製した溶液をスプレーすることにより流動層造粒した。得られた顆粒を乾燥し、JIS24メッシュの篩にて篩過した。得られた整粒品の一部82.0gに、クロスポビドン2.2g及びステアリン酸マグネシウム0.9gを加え、ポリエチレン製の袋内にて手で均一に混合した。次いで、この混合物をロータリー式打錠機(菊水製作所製:VIRGO型)で圧縮成型し、下記組成の錠剤を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
グリメピリド 3.0
D-マンニトール 147.7
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 5.1
ヒドロキシプロピルセルロース 3.4
コーンスターチ 4.7
クロスポビドン 4.4
ステアリン酸マグネシウム 1.7
【0017】
[比較例2]
D−マンニトール608.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース20.4gを流動層造粒機(パウレック製:MP−01型)に投入し、平均粒子径が1.5μmのグリメピリド12.0gをコーンスターチ18.8gと水452gから加温調製した溶液に分散した液を用いて流動層造粒した。なお、分散には高速分散機(特殊機化工業製:T.K.ロボミックス f model)を使用した。得られた顆粒を乾燥し、JIS24メッシュの篩にて篩過した。得られた整粒品の一部82.4gに、クロスポビドン2.2g及びステアリン酸マグネシウム0.4gを加え、ポリエチレン製の袋内にて手で均一に混合した。次いで、この混合物をロータリー式打錠機(菊水製作所製:クリンプレスコレクト19K型)で圧縮成型し、下記組成の錠剤を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
グリメピリド 3.0
D−マンニトール 152.0
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 5.1
コーンスターチ 4.7
クロスポビドン 4.4
ステアリン酸マグネシウム 0.8
【0018】
[試験例1](苛酷試験での錠剤中の分解物増加量の測定)
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2で得た錠剤について各15錠をとり、それぞれ硝子瓶に収容し、恒温槽に入れ、温度60℃及び温度60℃、相対湿度75%の条件下に保存した。保存開始から7日経過後、各錠剤中の分解物を高速液体クロマトグラフィーにより測定した。その測定結果から、それぞれ分解物増加量(%)を算出し、表1の結果を得た。
【表1】

表1の結果から、本発明に係る実施例1及び実施例2の錠剤は、比較例1及び比較例2の錠剤と比べ、グリメピリドを極めて効果的に安定に保持し得ることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によれば、グリメピリドを長期間安定に維持した安全な固形製剤を医療現場に提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリメピリドを含有する固形製剤の製造過程において、グリメピリドをヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロース含有溶液に懸濁もしくは分散させた液を用いて造粒する工程を含むことを特徴とする固形製剤の製造方法。
【請求項2】
請求項1の製造方法により製造されたグルメピリドを含有する固形製剤。
【請求項3】
固形製剤が細粒剤、顆粒剤又は錠剤である請求項2に記載の固形製剤。
【請求項4】
固形製剤中のヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースの重量含有率が0.2%〜10%である請求項2又は請求項3に記載の固形製剤。

【公開番号】特開2009−57331(P2009−57331A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226778(P2007−226778)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(593030071)大原薬品工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】