説明

グリース組成物

【課題】高温環境下における使用においても長寿命であり、優れた低蒸発性を有し、かつ不燃性である上、高温で金属を腐食しにくいグリース組成物を提供すること。
【解決手段】基油と、増ちょう剤とを含むグリース組成物であって、前記基油は、下記一般式(1):
…(1)
(Zはカチオンを意味し、Aはアニオンを示す。)で表され、Zが2つの異なる側鎖を有する環状4級アンモニウムイオンであり、Aが共役アミドイオンであるイオン液体を含むことを特徴とするグリース組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
機械の進歩やメンテナンスフリーに対する意識の向上に伴い、グリースを用いた潤滑における使用条件はますます過酷になっている。特に高温環境で長期間安定なグリース組成物は、機械の寿命延長に直結するため、その性能向上が求められていた。
また、近年進歩が目覚しい電子機器部品やその製造設備においては、グリースの分解物による汚染が問題となることから、低蒸発性のグリースが求められていた。
こうした中、高温環境下でも長寿命なグリースとして、パーフルオロアルキルポリエーテル(以下「PFAE」という。)を基油としたグリースが提案されているが、高温摩擦環境下では、フッ素化油が分解するため、その使用条件には限界がある。従って、現状ではグリースの補給周期を短くするか、部品の交換周期を短くして対応している。
【0003】
一方、近年、カチオンとアニオンとから構成されたイオン液体が優れた熱安定性と低蒸発性を有し、空気中でも安定な液体となることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。そして、その熱安定性(難揮発性、難燃性)、高イオン密度(高イオン伝導性)、大熱容量、低粘性などの特徴を活かして様々な用途、例えば太陽電池などの電解液、抽出分離溶媒、反応溶媒、潤滑油(例えば、特許文献1参照)などとして、応用研究が積極的になされている。
そして、このようなイオン液体を基油としたグリース組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。イオン液体は、分子間が分子性液体のように分子間引力で結びついているのではなく、強力なイオン結合で結びついているため、揮発し難く、難燃性であり、熱や酸化に対して安定な液体である。そのため、イオン液体を基油としたグリース組成物は、高温環境下における使用においても長寿命であり、優れた低蒸発性を有し、かつ不燃性であるので、過酷な条件であっても良好な潤滑性を示すことができ、またメンテナンスフリーの要求にも応え得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/035702号
【特許文献2】特開2006−291011号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「J.Chem.Soc.,Chem.Commun.」、1992年、p.965
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の実施例に記載のイオン液体は、高温環境において金属を腐食しやすいという点で十分なものではない。また、特許文献2においては、グリース組成物に用いるイオン液体としてどのようなイオン液体の選定が最適であるかについて明らかではない。
【0007】
そこで本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高温環境下における使用においても長寿命であり、優れた低蒸発性を有し、かつ不燃性である上、高温で金属を腐食しにくいグリース組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ある特定のアニオンとカチオンからなるイオン液体を基油としてグリース組成物に用いることにより、上記目的が達成されることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明のグリース組成物(以下、「本組成物」ともいう)は、基油と増ちょう剤とを含むグリース組成物であって、前記基油は、下記一般式(1):
…(1)
(Zはカチオンを意味し、Aはアニオンを示す。)
で表され、Zが2つの異なる側鎖を有する環状4級アンモニウムイオンであり、Aが共役アミドイオンであるイオン液体を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明のグリース組成物において、前記増ちょう剤はウレア化合物、ベントナイト、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと言う。)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明のグリース組成物は、滴点が230℃以上であることが好ましい。
【0011】
本発明のグリース組成物において、前記一般式(1)で表されるイオン液体におけるAは下記一般式(2):
【0012】
【化1】

【0013】
(一般式(2)中、nは1から4までの整数であり、mは1から4までの整数であり、それらは同一でも異なっていてもよい。)
で表される構造を有するアニオンの中から選ばれるものであることが好ましい。
【0014】
本発明のグリース組成物において、前記一般式(1)で表されるイオン液体におけるZは下記一般式(3):
【0015】
【化2】

【0016】
(一般式(3)中、nは1または2であり、Xはメチレンまたは酸素であり、R、Rはエーテル基、エステル基、ニトリル基、シリル基を有していてもよい炭素数1から12までのアルキル基から選ばれる基である。)
で表される構造を有するカチオンの中から選ばれるものであることが好ましい。
【0017】
本発明のグリース組成物においては、前記イオン液体の分子量が410以上570以下であることが好ましい。
本発明のグリース組成物においては、前記イオン液体の40℃動粘度が1mm/s以上100mm/s以下であることが好ましい。
【0018】
本発明のグリース組成物においては、前記イオン液体の流動点が0℃以下であることが好ましい。
本発明のグリース組成物において、前記増ちょう剤はグリース組成物全量に対して、3質量%以上50質量%以下含まれることが好ましい。
本発明グリース組成物は、真空機器または半導体製造装置の潤滑に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高温環境下における使用においても長寿命であり、優れた低蒸発性を有し、かつ不燃性である上、高温で金属を腐食しにくいグリース組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のグリース組成物は、基油と、増ちょう剤とを含んで構成されている。
基油は、一般式:
・・・(4)
(Zはカチオンを意味し、Aはアニオンを意味する。)
で表され、Zが2つの異なる側鎖を有する環状4級アンモニウムイオンであり、Aが共役アミドイオンであるイオン液体を含む。
同じ側鎖を有する環状4級アンモニウムイオンの場合、室温で固体となり、グリースとしての潤滑性が損なわれるため、広い温度範囲で使用する事ができない。
【0021】
前記一般式(4)におけるAとしては、下記一般式(5)で表される構造を有する共役アミドイオンの中から選ばれるものであることが好ましい。
【0022】
【化3】

【0023】
前記一般式(5)において、nは1から4までの整数であり、イオン液体の分子量の観点から、1または2であることが好ましい。また、mは1から4までの整数であり、イオン液体の分子量の観点から、1または2であることが好ましい。mとnとは同一でも異なっていてもよい。
【0024】
前記一般式(5)で表される構造を有する共役アミドイオンとしては、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)アミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)アミド、トリフルオロメタンスルホニル(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、ペンタフルオロエタンスルホニル(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)アミド、ヘプタフルオロプロパンスルホニル(ノナフルオロブタンスルホニル)アミド、トリフルオロメタンスルホニル(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)アミド、ペンタフルオロエタンスルホニル(ノナフルオロブタンスルホニル)アミド、およびトリフルオロメタンスルホニル(ノナフルオロブタンスルホニル)アミド等が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、イオン液体の分子量を後述する特定の範囲内とする観点から、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド、およびトリフルオロメタンスルホニル(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミドが好ましく、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドが特に好ましい。
【0026】
前記一般式(5)以外のアニオンとしてCl、Br、I、RSO、R0SO、RCO、NO、BF、PF、SCN、N(CN)、C(CN)、PF(C、B(C、B(CN)等が知られているが、高度に共役した分子構造ではないため、前記一般式(5)に比べ、熱安定性に劣るという欠点を有する。
【0027】
一方、Zとしては、下記一般式(6)で表される構造を有するカチオン(環状4級アンモニウムイオン)の中から選ばれるものであることが好ましい。
【0028】
【化4】

【0029】
前記一般式(6)において、nは1または2であり、Xはメチレンまたは酸素である。また、RおよびRはエーテル基(エーテル結合)、エステル基(エステル結合)、ニトリル基、シリル基を有していてもよい炭素数1から12までのアルキル基から選ばれる基である。このようなアルキル基の炭素数は、イオン液体の低粘度化や耐熱性(高温酸化安定性)の向上という観点から、1から6までであることがより好ましく、1から4までであることが特に好ましい。
【0030】
前記一般式(6)で表される構造を有する環状4級アンモニウムイオンとしては、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−ペンチル−1メチルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム、1−ヘプチル−1メチルピロリジニウム、1−オクチル−1メチルピロリジニウム、1−ノニル−1メチルピロリジニウム、1−デシル−1メチルピロリジニウム、1−ウンデシル−1メチルピロリジニウム、1−ドデシル−1メチルピロリジニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウム、1−(2−メトキシ−2−オキソエチル)−1−メチルピロリジニウム、1−シアノメチル−1−メチルピロリジニウム、1−トリメチルシリルメチル−1−メチルピロリジニウム、1−ブチル−1−メチルピペリジニウム、1−ペンチル−1−メチルピペリジニウム、1−ヘキシル−1−メチルピペリジニウム、1−ヘプチル−1−メチルピペリジニウム、1−オクチル−1−メチルピペリジニウム、1−ノニル−1−メチルピペリジニウム、1−デシル−1−メチルピペリジニウム、1−ウンデシル−1−メチルピペリジニウム、1−ドデシル−1−メチルピペリジニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピペリジニウム、1−(2−メトキシ−2−オキソエチル)−1−メチルピペリジニウム、1−シアノメチル−1−メチルピペリジニウム、1−トリメチルシリルメチル−1−メチルピペリジニウム、1−ブチル−1−メチルモルホリニウム、1−ペンチル−1−メチルモルホリニウム、1−ヘキシル−1−メチルモルホリニウム、1−ヘプチル−1−メチルモルホリニウム、1−オクチル−1−メチルモルホリニウム、1−ノニル−1−メチルモルホリニウム、1−デシル−1−メチルモルホリニウム、1−ウンデシル−1−メチルモルホリニウム、1−ドデシル−1−メチルモルホリニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルモルホリニウム、1−(2−メトキシ−2−オキソエチル)−1−メチルモルホリニウム、1−シアノメチル−1−メチルモルホリニウム、および1−トリメチルシリルメチル−1−メチルモルホリニウム等が挙げられる。
【0031】
これらの中でも、イオン液体の低粘度化や耐熱性(高温酸化安定性)の向上という観点から、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−ペンチル−1メチルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウム、1−ブチル−1−メチルピペリジニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピペリジニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルモルホリニウムが好ましく、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウム、および1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピペリジニウムが特に好ましい。
【0032】
前記一般式(6)以外のカチオンとしてイミダゾリウム、ピリジニウム、グアニジウム、脂肪族4級アンモニウム、脂肪族4級ホスホニウム、脂肪族スルホニウムなどが知られているが、ルイス酸性が高いため、前記一般式(6)に比べ、高温金属腐食性が強いという欠点を有する。
【0033】
イオン液体の分子量は、410以上570以下であることが好ましく、410以上470以下であることがより好ましく、420以上440以下であることが特に好ましい。分子量が前記範囲内である場合には、電荷密度およびカチオンのアルキル鎖が適当な範囲となり、イオン液体の低粘度化や耐熱性(高温酸化安定性)の向上を図ることができる。
また、イオン液体の40℃における動粘度は、蒸発損失、および粘性抵抗による動力損失を抑えるという観点から、1mm/s以上100mm/s以下であることが好ましく、10mm/s以上70mm/s以下であることがより好ましく、20mm/s以上 40mm/s以下であることが特に好ましい。
さらに、イオン液体の流動点は、低温時に粘性抵抗が増大することを抑える点から、0℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましく、−20℃以下であることが特に好ましい。
【0034】
イオン液体の酸価は、金属等の腐食を防止する観点から、1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.5mgKOH/g以下であることがより好ましく、0.3mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
イオン液体の引火点は、基油の蒸発量を少なくするという観点から、200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることが特に好ましい。
イオン液体の粘度指数は、温度に対する粘度変化が大きくなりすぎないようにするという観点から、80以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、120以上であることが特に好ましい。
【0035】
イオン液体においては、20℃において測定したイオン濃度が1mol/dm以上であることが好ましく、1.5mol/dm以上であることがより好ましく、2mol/dm以上であることが特に好ましい。ここで、イオン濃度とは、イオン液体において、[密度(g/cm)/分子量Mw(g/mol)]×1000で算出される値である。イオン液体のイオン濃度が1mol/dm未満であると、イオン液体の特徴である低蒸発性、耐熱性が低下してしまい好ましくない。
【0036】
本発明のグリース組成物の滴点は、230℃以上であることが好ましく、260℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることが特に好ましい。
上記滴点を得るために使用される増ちょう剤としてはウレア化合物、ベントナイト、PTFEからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。リチウム石鹸やカルシウム石鹸などでは前記一般式(4)に示すイオン液体をグリース化する事が難しく、また、仮に出来てもグリース組成物の滴点が230℃以下となり、耐熱性が不十分である。シリカ化合物の場合、グリース組成物は摩擦・摩耗が増大し、場合によっては焼き付きに至り潤滑不能になる恐れがある。
【0037】
さらに、本発明のグリース組成物では、増ちょう剤がグリース組成物全量に対して、3質量%以上50質量%以下であることが好ましい。増ちょう剤量が少なすぎると軟らかすぎてグリース化しない場合があり、多すぎると硬くなり潤滑不良を起こす場合がある。硬さと軟らかさのバランスから5質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上40質量%以下であることが特に好ましい。
【0038】
本発明のグリース組成物には、所定の添加剤を配合することによりグリース組成物として種々の用途に使用することができる。添加剤としては、酸化防止剤、油性剤、極圧剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、金属不活性化剤および消泡剤などを挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、用途によっては、添加剤を配合せず、グリース組成物をそのままグリースとして使用してもよい。
酸化防止剤としては、従来のグリース組成物に使用されているアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤,硫黄系酸化防止剤を 使用することができる。これらの酸化防止剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。アミン系酸化防止剤としては、例えば、モノ オクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン系化合物、4,4’−ジブチルジフェニルアミン、4,4’−ジ ペンチルジフェニルアミン、4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4,4’−ジノニルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン系化合物、テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラ オクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン系化合物、α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、ブチルフェニル−α−ナフチルアミン、ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘプチルフェニル−α−ナフチ ルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン系化合物が挙げられる。
【0039】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール などのモノフェノール系化合物、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)などのジフェノール系化合物が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、五硫化リンとピネンとの反応物などのチオテルペン系化合物、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどのジアル キルチオジプロピオネートなどが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては,トリフェニルフォスファイト,ジエチル[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネートなどが挙げられる。
これらの酸化防止剤の配合量は、グリース組成物全量基準で、通常0.01質量%以上10質量%以下程度であり、好ましくは0.03質量%以上5質量%以下である。
【0040】
油性剤としては、脂肪族アルコール、脂肪酸や脂肪酸金属塩などの脂肪酸化合物、ポリオールエステル、ソルビタンエステル、グリセライドなどのエステル化 合物、脂肪族アミンなどのアミン化合物などを挙げることができる。これらの油性剤の配合量は、配合効果の点から、グリース組成物全量基準で、通常0.1質量%以上30質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0041】
極圧剤としては、硫黄系極圧剤、リン系極圧剤、硫黄および金属を含む極圧剤、リンおよび金属を含む極圧剤が挙げられる。これらの極圧剤は1種を単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。極圧剤としては、分子中に硫黄原子およびリン原子のうち少なくともいずれかを含み、耐荷重性や耐摩耗性を発揮しうるものであればよい。分子中に硫黄を含む極圧剤としては、例えば、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリサルファイド、チアジアゾール化合物、アルキルチオカルバモイル化合物、トリアジン化合物、チオテルペン化合物、ジアルキルチオジプロピオネート化合物などを挙げることができる。
硫黄、リンおよび金属を含む極圧剤としては、ジアルキルチオカルバミン酸亜鉛(Zn−DTC)、ジアルキルチオカルバミン酸モリブデン(Mo−DTC)、ジアルキルチオカルバミン酸鉛、ジアルキルチオカルバミン酸錫、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP)、ジアルキルジチオリン酸モリブデン(Mo−DTP)、ナトリウムスルホネート、カルシウムスルホネートなどが挙げられる。分子中にリンを含む極 圧剤として代表的なものは、トリクレジルフォスフェートなどのリン酸エステル類およびそのアミン塩である。これら極圧剤の配合量は、配合効果および経済性の点から、グリース組成物全量基準で、通常0.01質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0042】
清浄分散剤としては、金属スルホネート、金属サリチレート、金属フィネート、コハク酸イミドなどが挙げられる。これら清浄分散剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、通常0.1質量%以上30質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体な ど)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−ジエン水素化共重合体など)などが挙げられる。これら粘度指数向上剤の配合量は、配合効果の点から、潤滑油全量基準で、通常0.5質量%以上35質量%以下であり、好ましくは1質量%以上15質量%以下である。
防錆剤としては、金属系スルホネート、アルキルコハク酸エステル、ソルビタンモノエステル、カルボン酸金属石鹸、アルキルアミンおよびモノイソプロパノールアミン等のアルカノールアミンなどを挙げることがで きる。これら防錆剤の配合量は、配合効果の点から、グリース組成物全量基準で、通常0.01質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.05質量%以上5質量%以下である。
金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、チアジアゾールなどを挙げることができる。これら金属不活性化剤の好ましい配合量は、配合効果の点から、潤滑油全量基準で、通常0.01質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以上1質量%以下である。
消泡剤としては、メチルシリコーン油、フルオロシリコーン油、ポリアクリレートなどを挙げることができる。これらの消泡剤の配合量は、配合効果の点から、グリース組成物全量基準で、通常0.0005質量%以上0.01質量%以下である。
【0043】
本発明のグリース組成物には、基油として、上記イオン液体の他、本発明の目的が損なわれない範囲でその他の基油を併用することができる。その他の基油としては、例えば、鉱油や合成油の中から適宜選ぶことができる。鉱油としては、例えば、パラフィン基原油、中間基原油またはナフテン基原油を常圧蒸留するか、あるいは常圧蒸留残渣油を減圧蒸留して得られる留出油、これらの留出油を常法に従って精製することによって得られる精製油、具体的には溶剤精製油、水添精製油、脱ロウ処理油、白土処理油などが挙げられる。
また、合成油としては、例えば、低分子量ポリブテン、低分子量ポリプロピレン、炭素数8〜14のα−オレフィンオリゴマーおよびこれらの水素化物、ポリ オールエステル(例えば、トリメチロールプロパンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステルなど)、二塩基酸エステル、芳香族ポリカルボン 酸エステル(例えば、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステルなど)、リン酸エステルなどのエステル化合物、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンなどのアルキルアロマ系化合物、シリコーン油、フッ素系オイル(例えば、フルオロカーボン、パーフルオロポリエーテルなど)などが挙げられる。
これらのその他の基油は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ただし、本発明のグリース組成物として効果を発揮するためには、グリース組成物中の基油における前記イオン液体の割合が、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらにより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0044】
また、本発明のグリース組成物においては、粘度の低下や腐食を防止する点から、水分混入量が組成物基準で3000質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500質量ppm以下、特に好ましくは100質量ppm以下である。
【0045】
本発明のグリース組成物は、高温環境下における使用においても長寿命であり、低蒸発性を示し、かつ不燃性である上、高温で金属を腐食しにくいので、種々の分野に適用できる。
例えば、真空機器または半導体製造装置等の潤滑用として好適である。
【実施例】
【0046】
本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、基油およびグリース組成物の諸特性は、下記の方法に従って測定した。
【0047】
基油の特性評価
(1)動粘度
JIS K2283に規定される「石油製品動粘度試験方法」に準拠して測定した。
(2)粘度指数
JIS K2283に規定される「石油製品動粘度試験方法」に準拠して測定した。
(3)流動点
JIS K2269に記載の方法に準拠して測定した。
(4)5%質量減温度
示差熱分析装置を用い、温度を10℃/minの割合で昇温し、初期質量から5質量%減少した温度を測定した。5%質量減温度が高いほど、耐蒸発性、耐熱性に優れると言える。
(5)摩擦特性(摩擦係数および摩耗幅)
ボール・オン・ディスク型の往復動摩擦試験機(バウデン・レーベン式)を用い、荷重20N、温度80℃、すべり速度30mm/s、ストローク15mmの条件にて摩擦係数および摩耗幅を測定した。ボールの材質はSUJ2であり、ボールの直径は10mmであり、ディスクの材質はSUJ2である。摩擦係数、摩耗幅が小さいほど潤滑性、耐摩耗性に優れると言える。
(6)金属腐食性
イオン液体8mLに、鉄系(鉄含量が99質量%以上)および、銅系(銅含量が93質量%以上98質量%以下、スズ含量が2質量%以上7質量%以下、その他金属の含量が1質量%以下)の焼結軸受各1個を同時に浸漬し、140℃で240時間静置した後、イオン液体の外観を観察した。軸受の寸法は、外径が12mmであり、厚みが4mmである。そして、以下に示す基準に基づいて、金属腐食性を評価した。
○:金属溶出がなく、腐食がない。
△:茶褐色または黒色状の溶出物がわずかに認められる(わずかに腐食あり)。
×:茶褐色または黒色状の溶出物がある(腐食あり)。
【0048】
グリース組成物の特性評価
(1)ちょう度番号:
JIS K2220−2003 表1に基づく分類に準拠した。
(2)滴点:
JIS K2220−2003 8 .に規定される試験方法に準拠して測定した。
(3)高温長期安定性:
JIS K2220−2003 21 .(湿潤試験)用のSPCC鋼板を溶剤で洗浄後、グリース組成物を2.0mm厚に塗布し、250℃で12時間加熱した後のグリースの状態を評価した。
○:グリース状を維持している。
×:固化している。
(4)5%質量減温度:
示差熱分析装置を用い、温度を10℃/分の速度で昇温し、初期の質量から5質量%減少した温度を測定した。5%質量減温度が高いほど、耐蒸発性・耐熱性に優れることを示す。
(5)高温金属腐食性:
JIS K2220−2003 21 .(湿潤試験)用のSPCC鋼板を溶剤で洗浄後、グリース組成物を1.0mm厚に塗布し、200℃で30分間加熱した後のSPCC鋼板の表面の状態を評価した。
○:腐食がない。
×:表面が暗褐色または黒色に変色している(腐食あり)。
【0049】
〔基油およびグリース組成物の調製〕
(1)イオン液体グリース1:イオン液体1(1−ブチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド)+PTFE
1Lフラスコに窒素雰囲気下で1−メチルピロリジン(50g,0.585mol)、2−プロパノール 70mLを加えた。この中へ1−ブロモブタン(96.5g、0.705mol)を滴下した後、40℃に昇温して6時間反応させた。反応終了後、酢酸エーテルで再結晶化を行い、ろ過により得られた結晶を酢酸エーテルで数回洗浄した。その後、真空ポンプで減圧しながら40℃で数時間乾燥することで、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミド(ハロゲン体)を得た(113g、0.510mol)。
次に、1Lフラスコへ上記ハロゲン体(113g、0.510mol)と純水110mLを準備し、これにリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(151g、0.525mol)を純水150mLに溶解させた水溶液を滴下した。この反応混合物を室温下約1時間攪拌した後、1L分液ロートに移し塩化メチレン230mLを加えて抽出し、集めた塩化メチレン溶液は純水で数回洗浄した。洗浄後、水層を1〜2mL採取して、0.5M硝酸銀水溶液約1mLと反応させ沈殿の有無を確認した(白色沈殿が見られた場合には、臭化物イオンが完全に除去できていないので、これが見えなくなるまで洗浄を繰り返した。)。水洗浄の完了後、ロータリーエバポレータで濃縮し、活性炭を少量加えて、室温下1日間攪拌した。この混合物を中性アルミナのカラムに通し、真空ポンプで減圧下加熱攪拌(60℃、4時間)することでイオン液体1(212g、0.50mol)を得た。
次に、300mLセパラブルフラスコへ上記イオン液体1(204g、0.482mol)を準備し、強攪拌下PTFE(住友3M製TF9207Z、96g)をゆっくりと添加した。更にこの反応混合物を3本ロールミルに数回通すことにより、イオン液体グリース1(300g)を得た。
【0050】
(2)イオン液体グリース2:イオン液体1+ベントナイト
300mLセパラブルフラスコへイオン液体1(160g、0.378mol)を準備し、強攪拌下ベントナイト(東新化成製ベントン27、40g)をゆっくりと添加した。更にこの反応混合物を3本ロールミルに数回通すことにより、イオン液体グリース2(200g)を得た。
【0051】
(3)イオン液体グリース3:イオン液体1+ジウレア
300mLセパラブルフラスコへイオン液体1(156g、0.369mol)、MDI(三井化学社製コスモネートPH、21.97g、0.088mol)を加え、攪拌しながら80℃へ昇温した。ノルマルオクチルアミン(22.03g、0.170mol)を滴下した後、更に160℃へ昇温して1時間保持した。冷却後、この反応混合物を3本ロールミルに数回通すことにより、イオン液体グリース2(200g)を得た。
【0052】
(4)イオン液体グリース4:イオン液体2(1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド)+PTFE
イオン液体1の合成において、1−ブロモブタンを用いる代わりに、2−ヨードエチルメチルエーテル(131g、0.705mol)を用いたこと以外は同様に操作して1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウムヨージド(146g、0.538mol)を得た。更にイオン液体1の合成において、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミドを用いる代わりに1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウムヨージド(146g、0.538mol)を用いたこと以外は同様に操作してイオン液体2(212g、0.500mol)を得た。
続いてイオン液体グリース1の合成において、イオン液体1を用いる代わりにイオン液体2(131g、0.309mol)を用い、PTFE(TF9207Z)(62g)を用いたこと以外は同様に操作してイオン液体グリース4(193g)得た。
【0053】
(5)イオン液体グリース5:イオン液体3(1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド)+PTFE
イオン液体2の合成において、1−メチルピロリジンを用いる代わりに、1−メチルピペリジン(58g、0.585mol)を用いて、60℃で反応させたこと以外は同様に操作して1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピペリジニウムヨージド(161g、0.563mol)を得た。更にイオン液体2の合成において、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウムヨージドを用いる代わりに1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピペリジニウムヨージド(161g、0.563mol)を用いたこと以外は同様に操作してイオン液体3(241g、0.549mol)を得た。
続いてイオン液体グリース1の合成において、イオン液体1を用いる代わりにイオン液体3(141g、0.322mol)を用い、PTFE(TF9207Z)(59g)を用いたこと以外は同様に操作してイオン液体グリース5(200g)を得た。
【0054】
(6)イオン液体グリース6:イオン液体4(1−(2−メトキシエチル)−1−メチルモルホリニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド)+PTFE
イオン液体3の合成において、1−メチルピペリジンを用いる代わりに、1−メチルモルホリン(59g、0.585mol)を用いて、80℃で反応させたこと以外は同様に操作して1−(2−メトキシエチル)−1−メチルモルホリニウムヨージド(145g、0.505mol)を得た。更にイオン液体3の合成において、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピペリジニウムヨージドを用いる代わりに1−(2−メトキシエチル)−1−メチルモルホリニウムヨージド(145g、0.505mol)を用いたこと以外は同様に操作してイオン液体4(202g、0.460mol)を得た。
続いてイオン液体グリース1の合成において、イオン液体1を用いる代わりにイオン液体4(142g、0.322mol)を用い、PTFE(TF9207Z)(58g)を用いたこと以外は同様に操作してイオン液体グリース6(200g)を得た。
【0055】
(7)イオン液体グリース7:イオン液体5(1−ブチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド)+PTFE
イオン液体1の合成において、1−メチルピロリジンを用いる代わりに、ピリジン(46g、0.585mol)を用い、イソプロパノールをアセトニトリル200mLに変えて80℃で反応させたこと以外は同様に操作して1−ブチルピリジニウムブロミド(125g、0.579mol)を得た。更にイオン液体1の合成において、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミドを用いる代わりに1−ブチルピリジニウムブロミド(125g、0.579mol)を用いたこと以外は同様に操作してイオン液体5(234g、0.562mol)を得た。
続いてイオン液体グリース1の合成において、イオン液体1を用いる代わりにイオン液体5(137g、0.329mol)を用い、PTFE(TF9207Z)(63g)を用いたこと以外は同様に操作してイオン液体グリース7(200g)を得た。
【0056】
(8)イオン液体グリース8:イオン液体6(N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド)+PTFE
続いてイオン液体グリース1の合成において、イオン液体1を用いる代わりにイオン液体6(133g、0.312mol)を用い、PTFE(TF9207Z)(67g)を用いたこと以外は同様に操作してイオン液体グリース8(200g)を得た。
【0057】
(9)イオン液体グリース9:イオン液体7(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド)+PTFE
1Lフラスコに窒素雰囲気下で1−メチルイミダゾール(173g、2.100mol)、1−クロロブタン(234g、2.528mol)を加え、90℃で数時間反応させた。反応終了後、酢酸エーテルとアセトニトリルで再結晶化を行い、ろ過により得られた結晶を真空ポンプで減圧しながら40℃で数時間乾燥することで、1−ブチル−1−メチルイミダゾリウムクロリド(352g、2.016mol)を得た。この4級塩をイオン液体1の合成において、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミドの代わりに用いたこと以外は同様に操作してイオン液体7(837g、1.996mol)を得た。
続いてイオン液体グリース1の合成において、イオン液体1を用いる代わりにイオン液体7(138.8g、0.331mol)を用い、PTFE(TF9207Z)(61.2g)を用いたこと以外は同様に操作してイオン液体グリース9(200g)を得た。
【0058】
〔実施例1〜6、比較例1〜3〕
得られた基油及びグリースの各特性について測定した結果を表1〜2に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
表1〜2に示す評価結果から実施例1〜6のイオン液体は、高温で金属を腐食しにくく、耐熱性が良好であるため、そのグリース組成物は高温環境下における使用においても長寿命であり、低蒸発性を示し、かつ不燃性である上、高温で金属を腐食しにくい。一方、比較例1〜3のようなイオン液体は、耐熱性や潤滑性等に優れるものの、高温での耐金属腐食性が劣るため、グリース組成物としては適切でないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油と、増ちょう剤とを含むグリース組成物であって、
前記基油は、
下記一般式(1):
…(1)
(Zはカチオンを意味し、Aはアニオンを示す。)
で表され、Zが2つの異なる側鎖を有する環状4級アンモニウムイオンであり、Aが共役アミドイオンであるイオン液体を含む
ことを特徴とするグリース組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のグリース組成物において、
前記増ちょう剤はウレア化合物、ベントナイト、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選ばれる少なくとも1種である
ことを特徴とするグリース組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のグリース組成物において、
滴点が230℃以上である
ことを特徴とするグリース組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のグリース組成物において、
前記一般式(1)で表される前記イオン液体におけるAは下記一般式(2):
【化1】


(一般式(2)中、nは1から4までの整数であり、mは1から4までの整数であり、それらは同一でも異なっていてもよい。)
で表される構造を有するアニオンの中から選ばれるものである
ことを特徴とするグリース組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のグリース組成物において、
前記一般式(1)で表される前記イオン液体におけるZは下記一般式(3):
【化2】


(式(3)中、nは1または2であり、Xはメチレンまたは酸素であり、R、Rはエーテル基、エステル基、ニトリル基、シリル基を有していてもよい炭素数1から12までのアルキル基から選ばれる基である。)
で表される構造を有するカチオンの中から選ばれるものである
ことを特徴とするグリース組成物。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のグリース組成物において、
前記イオン液体の分子量が410以上570以下である
ことを特徴とするグリース組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のグリース組成物において、
前記イオン液体の40℃動粘度が1mm/s以上100mm/s以下である
ことを特徴とするグリース組成物。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のグリース組成物において、
前記イオン液体の流動点が0℃以下である
ことを特徴とするグリース組成物。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のグリース組成物において、
前記増ちょう剤はグリース組成物全量に対して、3質量%以上50質量%以下含まれる
ことを特徴とするグリース組成物。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のグリース組成物が、真空機器または半導体製造装置の潤滑に用いられる
ことを特徴とするグリース組成物。

【公開番号】特開2012−136649(P2012−136649A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290637(P2010−290637)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】