説明

グルカゴンアンタゴニスト活性及びGLP−1アゴニスト活性を有するペプチド模倣体

本発明は、グルコース依存性インスリン分泌促進剤として主に作用する、式(I)の新規ペプチド模倣体を提供する。さらに、これらのペプチド模倣体がGLP−1受容体アゴニスト活性と共にグルカゴン受容体アンタゴニスト活性を示すことが明らかとなった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)の新規化合物、それらの互変異性体、それらの医薬として許容される塩、及びそれらを含む医薬組成物に関する。
【0002】
【化1】

【0003】
本発明はまた、一般式(I)の化合物、それらの互変異性体、それらの医薬として許容される塩、及びそれらを含む医薬組成物を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
糖尿病は、膵臓β細胞からのインスリン分泌の減少、インスリン抵抗性、又はそれらの両方によって特徴付けられる(Cavaghan,M.K.,et al.,J.Clin.Invest.2000,106,329)。2型糖尿病患者の大部分は、肝臓におけるグルコース産生を減少させる薬剤(グルカゴンアンタゴニスト)、GITからのグルコース吸収を減少させる薬剤、β細胞機能を刺激する薬剤(インスリン分泌促進剤)、又はインスリンに対する患者の組織感受性を向上させる薬剤(インスリン感受性改善薬(insulin sensitizer))で処理され得る。2型糖尿病を処置するために現在使用されている薬剤は、α−グルコシダーゼ阻害剤、インスリン感受性改善薬、インスリン分泌促進剤、及びKATPチャンネル遮断薬を含む(Chehade,J.M.,et al.,Drugs,2000,60,95)。しかし、ほぼ半数の2型糖尿病の対象は、長年にわたり、これらの薬剤に対する応答性を失い、それによりインスリン療法を必要とする。インスリン療法は、幾つかの欠点を有し、それは注射物質であり、低血糖を引き起こし、そして体重増加を引き起こす(Burge,M.R.,Diabetes Obes.Metab.,1999,1,199)。
【0005】
現在の治療における問題により、2型糖尿病を処置するための新規治療法が必要とされている。これに関連して、膵臓におけるグルコース依存性インスリン分泌を促進するグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)アゴニスト、並びに糖原病及び糖新生を阻害することによって肝臓におけるグルコース産生を阻害するグルカゴン受容体アンタゴニストが、治療への潜在性があることが見出された。したがって、GLP−1アゴニスト及びグルカゴンアンタゴニストは共に、循環グルコースレベルを減少させ、そして2型糖尿病の処置及び予防のための有用な治療剤となることが明らかとなった(Perry,T.A.,et al.,Trends Pharmacol.Sci,2003,24,377)。
【0006】
グルカゴン及びGLP−1は、構造的に関連のあるペプチドホルモンファミリー(セレクチンファミリー)のメンバーである。グルカゴン及びGLP−1は、共通の前駆体であるプレプログルカゴンが起源であり、そしてそれは組織特異的処理時において、主に腸におけるGLP−1の産生及び膵臓におけるグルカゴンの産生をもたらすため、これら二つのホルモンは、高い相同性を有する一連のペプチドを構成する(Jiang,G.,et al.,Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.,2003,284,E671−678)。これら二つのペプチドの受容体は相同的であり(58%の同一性)、そしてGタンパク質共役受容体(GPCR)のクラスBファミリーに属する。クラスB GPCRはまた、セクレチン受容体ファミリーと呼ばれ、そしてそれは15個のヒトにおけるペプチド結合性受容体からなる。GPCR受容体は、介在ループを有する、7回膜貫通αへリックスからなる膜近傍ドメイン(J−ドメイン)と連結する、100〜160残基の細胞外N末端ドメイン、及びC末端テールを含む(Brubaker,P.L.,et al.,Receptors Channels,2002,8,179)。クラスB GPCRは、中程度の大きさ、典型的には30〜40個のアミノ酸の内因性ペプチドリガンドによって活性化される(Hoare,S.R.J.,Drug.Discovery Today,2005,10,423;Gether,U.,Endocrine Reviews,2000,21,90)。
【0007】
グルカゴンは、PC2によって膵臓のα細胞中のプログルカゴンから処理された、29個のアミノ酸ペプチドホルモンである。グルカゴンは、485個のアミノ酸からなる、7回膜貫通GPCRを通じて作用する。循環グルコースが低いとき、グルカゴンが血流へと放出される。グルカゴンの主な生理学的役割は、肝臓のグルコース産出を刺激し、それにより血糖の増加を導くことである(Tan,K.,et al.,Diabetologia,1985,28,435)。グルカゴンは、インスリンがインビボにおけるグルコース恒常性を維持するときに、主な対抗制御的機構を提供する。グルカゴン及びその受容体は、糖尿病の治療のための潜在的標的となる。グルカゴン受容体において、分泌されたグルカゴンの作用を遮断することによって、又はグルカゴン産生自体を阻害する(抑制する)ことによってグルカゴンの作用をアンタゴナイズすることは、糖尿病及び代謝性疾患の治療介入のための新規手段を示す(Unson,C.G.,et al.,Peptides,1989,10,1171;Parker,J.C,Diabetes,2000,49,2079;Johnson,D.G.,Science,1982,215,1115;Ahn,J.M.,JMC,2001,44(9),1372−1379)。
【0008】
GLP1(7〜36)アミドは、食物消化に対する応答において、腸のL細胞から分泌される、プレプログルカゴン遺伝子の産物である。GLP−1の生理学的作用は、かなりの関心を得ている。GLP−1は、グルコース依存的に、膵臓のβ細胞からのインスリン分泌を刺激することによって(インスリン分泌作用)、複数の作用を発揮する。GLP−1は、α細胞からのグルカゴン分泌(産生)を阻害することによって、循環血漿グルカゴン濃度を低下させる(Drucker D.J.,Endocrinology,2001,142,521−527)。GLP−1はまた、ベータ細胞増殖の刺激、食欲抑制、胃内容排出の遅延、及びインスリン感受性の刺激のような特性を示す(Nauck,M.A.,Horm.Metab.Res.,2004,36,852)。現在、GLP−1及びEX−4の種々の類縁体、例えばリラグルチド(Liraglutide)/NN2211(Novo Nordisk;フェーズIII;国際公開第1998008871号)、BIM51077(Ipsen;フェーズII;国際公開第2000034331号)、CJC−1131(ConjuChem;フェーズII;国際公開第2000069911号)及びZP−10(Zealand及びAventis;フェーズII;国際公開第2001004156号)は、異なる段階の臨床開発にある。近年、バイエッタ(BYETTA)(登録商標)(エキセンディン(Exendin)−4)が、米国市場において上市された(Amylin及びLilly)。しかし、全ての既存のGLP−1アゴニストは、非経口経路の投与によって送達され、したがって、既存のGLP−1系治療における患者のインコンプライアンス(incompliance)が主な問題である。
【0009】
グルカゴン及びGLP−1受容体のエフェクター系は、アデニリル・シクラーゼ(AC)酵素である。グルカゴン又はGLP-1アゴニストと、グルカゴン又はGLP−1受容体(GLP−1 R)との相互作用はそれぞれ、ACの活性化を引き起こし、そしてそれはATPをcATPへと変換する。細胞内cAMPレベルの増大は、ADP/ATP比を増大させ、それによりKATPチャンネルの閉鎖による細胞脱分極を引き起こす。細胞内cAMPレベルの増大はまた、タンパク質キナーゼ(PK−A及びPK−C)を活性化し、そしてそれは、LタイプのCa2+チャンネルが開くことによってシストリック(cystolic)Ca2+濃度を増大させる。細胞内Ca2+濃度の増大は、膵臓のβ細胞におけるインスリンの、及びα細胞中のグルカゴンペプチドの開口分泌をもたらす(Fehmann,H.C.,Endocr.Rev.,1995,16,390)。
【0010】
以下に示されたGLP−1及びグルカゴン配列のアラインメントは、一次構造の関係を表す:
【0011】
【化2】

【0012】
C末端アミドを有するGLP−1ペプチドの、N末端の最初の1〜9個の残基は:
【0013】
【化3】

【0014】
であり、正味の電荷はマイナスである。
【0015】
C末端アミドを有するグルカゴンペプチドの、N末端の最初の1〜9個の残基は:
【0016】
【化4】

【0017】
であり、正味の電荷は中性である。
【0018】
アミノ酸の一文字略記は、Zubay,G.,Biochemistry 2nded.,1988,MacMillan Publishing,New York,p.33において見られる。
【0019】
天然の又は合成GLP−1ペプチドは、速やかに代謝される。タンパク質分解性酵素、例えばジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPP−IV)によって速やかに代謝されて不活性な代謝物となり、それによりGLP−1の薬剤としての使用が限定される(Deacon,C.F.,Regulatory Peptides,2005,128,117)。同様に、幾つかの、種々の構造の非ペプチジル及びペプチジルグルカゴン受容体アンタゴニストは近年報告されているが、それらのいずれも、活発に開発中又は臨床開発中ではない(Kurukulasuriya,R.,Expert Opinion Therapeutic Patents,2005,15,1739;Lau,J.,J.Med.Chem.,2007,50,113;Petersen,K.F.Diabetologia,2001,44,2018;Cascieri,M.A.,JBC,1999,274,8694)。クラスB GPCRのための非ペプチドリガンド(特にアゴニスト)を同定することが、創薬における主要な障壁であると考えられている。HTSは、一見幾つかのヒットを生み出したが(米国特許出願公開第2005/6927214号明細書;国際公開第2000/042026号;米国特許第2007/0043093号明細書)、対応する受容体に対してヒットしたスクリーニング物は、特にインビボ条件下(動物モデル)において、偽陰性である傾向にある(Murphy,K.G.,PNAS,2007,104,689)。
【0020】
グルカゴン及びGLP−1は、全体のグルコース恒常性において、いずれも大きな役割を果たす(Drucker,D.J.,J.Clin.Invest.,2007,117,24;Bollyky,J.,J.Clin,Endocrinol.Metab.,2007,92,2879)。グルカゴンは、肝臓中におけるグルコース新生を刺激することによって、血漿グルコース濃度を増大させる一方で、GLP−1はグルコース依存性インスリン分泌によって媒介される血漿グルコース濃度を低下させる(Mojsov,S.,et al.,JBC,1990,265,8001)。正常な血液グルコース濃度を維持するときに、グルカゴンペプチド及びGLP−1の両方の重要性を知ることによって、グルカゴン受容体アンタゴニスト及びGLP−1受容体アゴニストとして作用する、単一のリガンドを同定することへのかなりの関心が近年存在する(Claus,T.H.,J.Endocrinology,2007,192,371;Pan C.Q.,JBC,2006,281,12506)。
【0021】
強力な非ペプチドGLP−1アゴニストの同定は困難かもしれないが(Chen,D.,PNAS,2007,104,943;Knudsen,L.B.,PNAS,2007,104,937)、グルカゴンアンタゴニスト及びGLP−1受容体アゴニストの両方として作用するハイブリッドペプチド模倣体の設計は、2型糖尿病の処置のための新規方法を提供する可能性がある(Claus,T.H.,J.Endocrinology,2007,192,371)。近年、一連のキメラペプチドが報告され、そしてそれらはGLP−1受容体アゴニスト及びグルカゴン受容体アンタゴニストの両方として作用し、そしてそれらは、グルカゴンペプチドのN末端残基(1〜26番目の残基)を、GLP−1ペプチドの最後のC末端4残基(VKGR)と結合することによって主に構築された(Pan C.Q.,et al.,米国特許第6864069B2号明細書;Pan C.Q.,JBC,2006,281,12506)。
【0022】
グルカゴン及びGLP−1配列の両方における個々のアミノ酸の役割を決定するための構造活性相関(SAR)研究が、文献において報告された(Runge,S.,JBC,2003,278,28005;Mann,R.,Biochem.Soc.Trans.,2007,35,713)。グルカゴン及びGLP−1は、水溶液中で明確な構造を有していないが、ミセルの存在下又は膜模倣環境下において、それらは中央部において、柔軟なN末端及びC末端領域を有する、アルファ−へリックス構造をとっている(Thornton,K.,Biochemistry,1994,33,3532;Neidigh,J.W.,Biochemistry,2001,40,13188)。これは、当該へリックス構造が、ペプチドリガンドの、それらの各々の受容体への結合のために必要とされることを示唆している。当該両方のペプチドのN末端領域におけるアミノ酸の変異又は欠失は、受容体アンタゴニスト又は不活性化合物をもたらし、そしてそれはグルカゴン及びGLP−1ペプチドの両方による受容体の活性化のための、N末端の重要性を示唆している(Hjorth,S.A.,JBC,1994,269,30121;Green,B.D.,J.Mol.Endocrinology,2003,31,529)。N末端の最後から2番目に位置するプロリン又はアラニン残基を含むペプチドを切断することに関与するプロテアーゼであるジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)によって、インビボにおいてGLP−1は速やかに分解され、それにより不活性な代謝産物が生じる。DPP−IVと反応する部位の置換、例えばGLP−1ペプチドの2番目の位置にあるAlaを、D−Ala、Aib、又はHfl(ヘキサフルオロロイシン)へと置換することにより、血漿中における安定性が非常に改善される(Deacon,C.F.,Diabetes,1998,47,764;Meng,H.,J.Med.Chem.,2008,51,7303−7307)。
【発明の概要】
【0023】
本研究において、我々は、グルカゴンペプチドのN末端配列(最初の1〜9個の残基、配列番号4)と、2つの非天然アミノ酸のジペプチドとのカップリングにより、多様な程度の選択性で、グルカゴンアンタゴニスト及びGLP−1アゴニスト活性の両方を有する、新規クラスのペプチド模倣体が同定されることを見出した。作用の持続性及びDPP−IV酵素に対する安定性を向上させるために、我々は部位特異的に当該ハイブリッドペプチド模倣体を、Z2位選択的に、非天然アミノ酸、例えばD−Ala、Aib、α−メチルプロリン(α−Me−Pro)、1−アミノ−シクロペンタンカルボン酸(APP)、及び1−アミノ−シクロプロパンカルボン酸(ACP)を用いて修飾し、そして短いペプチド模倣体を同定することに成功した。幾つかのペプチド模倣体は、経口投与経路によってでさえ有効性を示し、一方でグルカゴンアンタゴニスト活性及びGLP−1アゴニスト活性の両方の維持を示した。
【0024】
先行技術及び設計戦略
一連のN末端修飾されたGLP−1モジュレータが、一般式Xaa1−Xaa11で報告されており、ここで式中、Xaa1−Xaa9は、幾つかの類縁体を有する、GLP−1ペプチドの最初1〜9個の残基
【0025】
【化5】

【0026】
を示し、Xaa2は、Ala又は場合によりAibで置換されたもののいずれかを示し、Xaa3は、カルボン酸の側鎖を有するアミノ酸、例えばグルタミン酸及びアスパラギン酸を示し、しかしそしてそれはグルカゴンペプチドのN末端配列
【0027】
【化6】

【0028】
中に保存されているGln(Q)ではない。Xaa6は、Phe又は場合により−α−Me−2F−Phe−で置換されたものを示し、Xaa9は、カルボン酸又はアミド側鎖を有するアミノ酸、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギンなどを示し、Xaa10は、置換又は未置換のビフェニルアラニン(Bip)誘導体を示し、及びXaa11は、置換若しくは未置換のビフェニルアラニン(Bip)誘導体、又は置換若しくは未置換の2−アミノ−5−フェニル−ペンタン酸(APPA)誘導体を示す(国際公開第2003/033671A2号;米国特許出願公開第2004/0127423Al号明細書;国際公開第2004/094461A2号;米国特許出願公開第2006/0004222A1号明細書;国際公開第2006/014287A1号;国際公開第2006/127948A2号;国際公開第2007/082264A2号;米国特許出願公開第2007/0021346A1号明細書;米国特許出願公開第2007/0099835号明細書;米国特許出願公開第2007/0238669A1号明細書;国際公開第2007/140284A2号;米国特許出願公開第2006/7145040B2号明細書;米国特許出願公開第2007/7238671B2号明細書;米国特許出願公開第2007/7238670B2号明細書;米国特許出願公開第2007/0287670A1号明細書;米国特許出願公開第2008/0045461A1号明細書)。
【0029】
活性成分として主にグルカゴンペプチドのN末端配列(配列番号4の最初の1〜9個の残基)からなり、そしてそれらは結合成分としての2つの非天然アミノ酸(置換又は無置換のビフェニルアラニン(Bip)誘導体)のジペプチドと共有結合しており、そしてグルコース依存的インスリン分泌を主に示す、一連の新規な11個のアミノ酸ペプチド模倣体が以前に報告されている。さらに、これらのペプチド模倣体は、GLP−1受容体活性と共に、グルカゴン受容体アンタゴニスト活性を示した(国際公開第2008/062457A2号)。
【0030】
本発明において、式(I)の新規ペプチド模倣体(以降、ペプチド模倣体と呼ぶ)が報告される。本発明において、ビフェニルアラニン(Bip)系ジペプチド結合成分の代わりに、我々は、結合成分として置換又は無置換Bip(OMe)−APPA系ジペプチド誘導体を使用した。驚くべきことに、GLP−1ペプチドのN末端配列の最初の9個の残基
【0031】
【化7】

【0032】
の代わりに、我々がこのジペプチドを、グルカゴンペプチドのN末端の最初の9個の残基
【0033】
【化8】

【0034】
へと結合させたとき、このペプチド模倣体
【0035】
【化9】

【0036】
が、図1の通り、GLP−1受容体アゴニスト活性と共に、グルカゴン受容体アンタゴニスト活性を主に示すことを見出した。
【0037】
式(I)の新規ペプチド模倣体は、グルカゴン受容体アンタゴニストとして主に作用し、そしてまた、GLP−1Rアゴニスト効果を示す。本発明において報告された異なるペプチド模倣体は、グルカゴン及びGLP−1受容体に対する異なるレベルの親和性/選択性と共に、(インビトロにおいて)著しいグルコース依存性インスリン分泌を示し、そして(インビボにおいて)循環グルコースレベルの減少を示した。さらに、先に報告されたペプチド模倣体(例えば、国際公開第2008/062457A2号中のもの)と比較して、結合成分として置換又は無置換のBip(OMe)−APPA系ジペプチド誘導体を有するこれらのペプチド模倣体は、タンパク質分解性の切断への、特にDPP−IV、胃内酵素、及び腸内酵素に対する増大した安定性を示した。したがって、幾つかのペプチド模倣体は、GIT酵素及び胃の酸性pHに対して安定であり、改善された経口バイオアベイラビリティを有し、それによりそれらが1型及び2型糖尿病の両方、代謝性疾患並びに関連疾患の処置/軽減/予防のための好適な候補品となることを見出した。
【0038】
発明の概要
本発明は、グルカゴン受容体のアンタゴニスト及びGLP−1受容体のアゴニストの両方として機能し、両方の受容体に対して異なる程度の親和性/選択性を有し、そして循環グルコースレベルの減少のために、及び糖尿病の処置のために有用である、一群の新規ペプチド模倣体を説明する。これらのペプチド模倣体は、以下の一般式(I)によって定義される。本発明のペプチド模倣体は、インスリン及びグルカゴンの作用を制御することによって、ヒト又は動物の体の処置に有用である。新規の、及び代謝的に安定な結合成分の組み合わせにより、本発明のペプチド模倣体は、改善された経口バイオアベイラビリティを示し、したがって、1型及び2型糖尿病並びに関連する代謝性疾患の処置/軽減/制御のために好適であることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、配列番号5を用いた、インビトロでのヒトグルカゴン受容体アンタゴニスト活性及びGLP−1受容体アゴニスト活性を示す。
【図2】図2は、ペプチド模倣体のFmoc系固相ペプチド合成(SPPS)において使用される、オルソゴナルに(orthogonally)保護されたアミノ酸の例を示す。
【図3】図3は、H GLP−1Rアッセイにおける、エキセンディン(Exendin)(図A)、及び配列番号38(図B)のインビトロにおけるDRC及びEC50の決定を示す。
【図4】図4は、配列番号38の腹腔内(i.p.)投与後における、C57マウス中のインビボでのグルコース減少を示す。
【図5】図5は、配列番号38の経口(p.o.)投与後における、C57マウスにおけるインビボでのグルコース減少を示す。
【図6】図6は、配列番号38の経口(p.o.)投与後における、db/dbマウスにおけるインビボでのグルコース減少を示す。
【図7】図7は、ビヒクル/試験ペプチド模倣体(配列番号10、20、及び25)の単回経口投与後における、C57BL/6Jマウス(インビボ)中の血清インスリンレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
好ましい実施形態
本発明の好ましい実施形態は、糖尿病の処置/軽減/制御のために好適である、一般式(I)の新規ペプチド模倣体、それらの互変異性体、それらの合成に関する新規中間体、それらの医薬として許容される塩、それらの医薬として許容される溶媒和物、及びそれら又はそれらの混合物を含む医薬組成物を提供することである。
【0041】
別の好ましい実施形態において、一般式(I)の新規ペプチド模倣体、それらの互変異性体、それらの医薬として許容される塩、医薬として許容される溶媒和物、及びそれらを含む医薬組成物の製造方法が提供される。
【0042】
さらに好ましい実施形態において、医薬上許容される担体、溶媒、希釈剤、賦形剤及びそれらの製造において通常使用される他の媒体を有する、一般式(I)のペプチド模倣体、それらの互変異性体、それらの医薬として許容される塩、溶媒和物、及びそれらの混合物を含む、医薬組成物が提供される。
【0043】
もう一つのさらなる実施形態において、かかる処置を必要とする哺乳動物へ、治療上有効量かつ無毒性量の、一般式(I)のペプチド模倣体、又はそれらの医薬として許容される組成物を投与することによる、抗糖尿病剤としての本発明の新規ペプチド模倣体の使用が提供される。
【0044】
使用される略語
以下の略語は、実施例及び本明細書の他の場所で使用される。
Aib=α−アミノイソ酪酸、
ACN=アセトニトリル、
APPA=2−アミノ−5−フェニルペンタン酸、
ACPP=2−アミノ−5−(3−クロロフェニル)ペンタン酸、
ADMP=2−アミノ−5−(3,5−ジメチルフェニル)ペンタン酸、
AMCB=2−アミノ−5−(4−クロロ−2−メチルフェニル)ペンタン酸、
2F−APPA=2−アミノ−5−(2−フルオロフェニル)ペンタン酸、
2,4−diF−APPA=2−アミノ−5−(2,4−ジフルオロフェニル)ペンタン酸、
2CF3−APPA=2−アミノ−5−(2−(トリフルオロメチル)フェニル)ペンタン酸、
2CF3,4F−APPA=2−アミノ−5−(4−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)フェニル)ペンタン酸、
2F,4CF3−APPA=2−アミノ−5−(2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル)ペンタン酸、
2Cl−APPA=2−アミノ−5−(2−クロロフェニル)ペンタン酸、
2Cl,4OMe−APPA=2−アミノ−5−(2−クロロ−4−メトキシフェニル)ペンタン酸、
Bip=ビフェニルアラニン、
Bip(OMe)=2’−エチル−4’−メトキシ−ビフェニルアラニン、
α−Me−Bip(OMe)=α−メチル化Bip(OMe)、
N(Me)−Bip(OMe)=N−メチル化Bip(OMe)、
Bn=ベンジル、
Boc=tert−ブトキシカルボニル、
But=O−tert−ブチル基、
cAMP=アデノシン3’,5’−環状モノリン酸、
DCM=ジクロロメタン、
DMF=N,N−ジメチルホルムアミド、
DIPCDI=ジイソプロピルカルボジイミド、
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン、
Et=エチル、
Et2O=ジエチルエーテル、
Fmoc=フルオレニルメトキシカルボニル、
g=グラム(単数又は複数)、
GLP−1R=グルカゴン様ペプチド−1受容体、
グルカゴンR=グルカゴン受容体、
h=時間(単数又は複数)、
Hfl=5,5,5,5’,5’,5’−2S−ヘキサフルオロロイシン、
HOBt=ヒドロキシベンゾトリアゾール、
HOAt=7−アザ−ヒドロキシベンゾトリアゾール、
HBTU=2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート、
HPLC=高速液体クロマトグラフィー、
i.p.=腹腔内、
L=リットル、
LC/MS=液体クロマトグラフィー/質量分析、
Me=メチル、
Min=分(単数又は複数)、
mL=ミリリットル、
μl=マイクロリットル、
mg=ミリグラム(単数又は複数)、
mmol=ミリモル(単数又は複数)、
MS=質量分析、
PyBOP=ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、
SPPS=固相ペプチド合成、
sc=皮下、
TMS=トリメチルシリル、
TIPS=トリイソプロピルシラン、
TFA=トリフルオロ酢酸、
TBTU=2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート、
Trt=トリチル基。
【0045】
発明の詳細な説明
本発明に従って、合成ペプチド模倣体は構造式(I)を有し、そしてそれはグルコース依存的インスリン分泌を示す。さらに、これらのペプチド模倣体は、GLP−1受容体アゴニスト活性と共に、グルカゴン受容体アンタゴニスト活性を示すことが見出された。これらの二作用性ペプチド模倣体は、タンパク質分解性切断に対する、特にDPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼ−IV)酵素に対する増大した安定性を示す。大部分のペプチド模倣体は、24時間、ラット血漿中(インビトロ)において安定であることが見出され、GIT酵素、例えばペプシンに対して、及び酸性の胃のpHに対して、並びに肝臓のミクロソーム(インビトロ)に対して増大した安定性を示した。増大した代謝安定性のために、幾つかのこれらのペプチド模倣体はまた、糖尿病及び関連する代謝性疾患の処置又は予防のために、経口投与経路で送達され得る。
【0046】
【化10】

【0047】
[式中、
Aは−NH−R1、R3−CO−、R3−O−CO−、又はR3−SO2−を示し、ここでR1は、水素、又は場合により置換された直鎖又は分岐の(C1−C10)アルキル鎖を示し;R3は、直鎖又は分岐の(C1−C10)アルキル、(C3−C6)シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はアリールアルキル基から選択される。]
【0048】
好ましい実施形態において、アリール基は、フェニル、ジフェニル、ナフチル、インダニル、フルオレニル、又はビフェニル基から選択され、ヘテロアリール基は、ピリジル、チエニル、フリル、イミダゾリル、ベンゾフラニル基から選択される。
【0049】
Bは、−COOR2、−CONHR2、又はCH2OR2を示し、ここでR2は、水素、先に定義された、直鎖若しくは分岐の(C1−C10)アルキル基、アリール又はアラルキル基から選択される、場合により置換された基を示す。
【0050】
1〜Z11は、他に指定されない限り、アミド結合によって連結した、天然又は非天然アミノ酸を示す。
【0051】
1は、L−ヒスチジン(H)、D−ヒスチジン(dH)、又はウロカニン酸(UA)を示す。
【0052】
【化11】

【0053】
2は、L−セリン(S)、D−セリン(dS)、L−アラニン(A)、D−アラニン(dA)、α−メチルプロリン(α−Me−Pro)、α−アミノ−イソ酪酸(Aib)、1−アミノシクロプロパンカルボン酸(ACP)、1−アミノ−シクロペンタンカルボン酸(APP)を含む群から選択される、天然又は非天然のアミノ酸を示す。
【0054】
【化12】

【0055】
3は、L−グルタミン(Gln;Q)、D−グルタミン(dQ)、又は式IIの化合物(CNB、又はHfl)を示す。
【0056】
【化13】

【0057】
4は、グリシン(G)、又は非天然アミノ酸である1−アミノシクロプロパンカルボン酸(ACP)、又は1−アミノ−シクロペンタンカルボン酸(APP)を示す。
【0058】
5は、ヒドロキシル側鎖を含む、天然又は非天然のアミノ酸を示し;好ましいZ5は、L−スレオニン(T)、D−スレオニン(dT)、L−アロスレオニン(allo−Thr;allo−T)、D−アロスレオニン(d−allo−Thr;d−allo−T)である。
【0059】
6は、二つの側鎖を有する、二置換されたアルファ炭素を有する、天然又は非天然のアミノ酸を示し、ここで前記側鎖の各々は独立して、場合により置換されたアルキル又はアリール又はアラルキル基であり得、ここで前記置換基は、1個以上のアルキル基又は1個以上のハロ基から選択され得る。好ましいZ6は、フェニルアラニン(Phe;F)、アルファ−メチル−フェニルアラニン(−α−Me−Phe−)、アルファ−メチル−2−フルオロフェニルアラニン(−α−Me−2F−Phe−)、又はアルファ−メチル−2,6−ジフルオロフェニルアラニン(−α−Me−2,6−F−Phe−)、又は2−フルオロフェニルアラニン(−2F−Phe−)を示す。
【0060】
【化14】

【0061】
7及びZ8は独立して、ヒドロキシル側鎖を有する天然又は非天然アミノ酸を示し、好ましいZ7及びZ8は、先に定義されたスレオニン、セリン、1−アミノシクロプロパンカルボン酸(ACP)から独立して選択される。
【0062】
9は独立して、酸性基を含むアミノ酸側鎖を有する、天然又は非天然のアミノ酸を示す。好ましいZ9は、L−アスパラギン酸(D)、D−アスパラギン酸(dD)、又は先に定義した式IIの化合物から選択される。
【0063】
10は、置換又は無置換の2’−エチル−4’−メトキシ−ビフェニルアラニン(Bip(OMe))及びその誘導体から選択される、式III(a〜c)のL又はD非天然アミノ酸を示す。
【0064】
【化15】

【0065】
11は、置換又は無置換の2−アミノ−5−フェニル−ペンタン酸(APPA)及びその誘導体から選択される、式IV(a〜l)の、L又はD非天然アミノ酸を示す。
【0066】
さらなる実施形態において、Z9とZ10との間の、又はZ10とZ11との間の、又はZ9〜Z11のアミド結合は、N−メチル化され得、D−(NMe)−(Bip(OMe));(Bip(OMe))−(NMe)−APPA;D−(NMe)−(Bip(OMe))−(NMe)−APPAのように、略語「(NMe)」で示され;チオアミド結合であり得、D−(C=S)−(Bip(OMe));Bip(OMe)−(C=S)−(APPA);D−(C=S)−(Bip(OMe))−(C−S)−(APPA)のように、略語「C=S」で示され、或いはZ9とZ10との間の、又はZ10とZ11との間の、又はZ10〜Z11のチオアミド結合は、D−(CH2)−(Bip(OMe));Bip(OMe)−(CH2)−(APPA);D−(CH2)−(Bip(OMe))−(CH2)−(APPA)のように、「−CH2−」基(デスオキソペプチド)へと還元され得る。
【0067】
【化16】

【0068】
定義:
用語「天然アミノ酸」は、天然に存在する20個のアミノ酸の全てを示す。
【0069】
用語「非天然アミノ酸」又は「天然ではないアミノ酸」は、L−アミノ酸と、対応するD−アミノ酸との置換、例えばL−AlaとD−Alaとの置換など、或いは以下のいずれかによる、L若しくはDアミノ酸又はアミノアルキル酸の好適な修飾を示す;
−α−アルキル化、例えばAlaとα−メチルAla(Aib)との置換、Pheとアルファ−メチル−フェニルアラニン(−α−Me−Phe−)、アルファ−メチル−2−フルオロフェニルアラニン(−α−Me−2F−Phe−)、又はアルファ−メチル−2,6−ジフルオロフェニルアラニン(−α−Me−2,6−F−Phe−)との置換;
−アミノ酸の側鎖の置換、例えば、芳香族アミノ酸側鎖とハロゲン、(C1−C3)アルキル、アリール基との置換、より具体的には、Pheとアルファ−メチル−2−フルオロフェニルアラニン(−α−Me−2F−Phe−)、又はアルファ−メチル−2,6−ジフルオロフェニルアラニン(−α−Me−2,6−F−Phe−)との置換;
−(NMe)−Bip(OMe)又は(NMe)−APPAのような、略語「(NMe)」で示される、アミノ酸のN−メチル化;
−アミド結合と、略語「C=S」で示されるチオアミド結合との置換、ジペプチドのアミドからチオアミドへの修飾は、ローソン試薬を使用する保護されたジペプチドの処理によって、化学的に、液相中又は固相上のいずれかでなされ得る。さらに、ジペプチド間のチオアミド結合は、ホウ化ニッケルを用いた還元を使用して、「−CH2−」基(デスオキソペプチド)へと変換され得る。(Jr.Guziec,F.S.,Tetrahedron Letters,1990,31(1),23−26)。
【0070】
本明細書中、任意の場所で使用される種々の基、ラジカル、及び置換基は、以下の段落中で説明される。
【0071】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、単体で、又は他の基と組み合わせて、1〜10個の炭素を含む、直鎖又は分岐の基を意味し、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アミル、t−アミル、n−ペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシルなどである。
【0072】
本明細書で使用される用語「シクロアルキル」は、単体で、又は他の基と組み合わせて、3〜7個の炭素を含む基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどである。
【0073】
本明細書で使用される用語「アリール」又は「芳香族」は、単体で、又は他の基と組み合わせて、1個、2個、又は3個の環を含む芳香族系を意味し、かかる環は、ペンダント型に結合されているか、又は縮合されており、例えばフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダン、ビフェニルなどである。
【0074】
用語「アリールアルキル」は、アリールと結合した、上で定義されたアルキル基を意味し、例えばベンジル、フェニルエチル、ナフチルメチルなどである。用語「アリールオキシ」は、アルコキシ基と結合した、上で定義されたアリール基のことであり、例えばフェノキシ、ナフチルオキシなどであり、そしてそれらは置換され得る。
【0075】
用語「アラルコキシ」は、上で定義されたアリールアルキル基を意味し、例えば、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ、ナフチルメチルオキシ、フェニルプロピルオキシなどであり、そしてそれらは置換され得る。
【0076】
本明細書において使用される用語「ヘテロアリール」又は「複素環」は、単体で、又は他の基と組み合わせて、1個、2個、又は3個の環を含む芳香族系を意味し、かかる環は、O、N又はSから選択される1個以上のヘテロ原子を含み、ペンダント型に結合されているか、又は縮合されている。
【0077】
本明細書において使用される用語「ヘテロアラルキル」は、単体で、又は他の基と組み合わせて、1〜6個の炭素を含む、直鎖又は分岐の飽和炭素鎖と結合した、上で定義されたヘテロアリール基を意味する。用語「ヘテロアリールオキシ」、「ヘテロアラルコキシ」、「ヘテロシクロキシ」はそれぞれ、酸素原子と結合した、上で定義されたヘテロアリール基、ヘテロアリールアルキル基を意味する。
【0078】
本明細書において使用される用語「アシル」は、単体で、又は他の基と組み合わせて、1個〜8個の炭素を含む基を意味し、例えばホルミル、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、イソブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、ベンゾイルなどであり、そしてそれらは置換され得る。
【0079】
本明細書において使用される用語「カルボン酸」は、単体で、又は他の基と組み合わせて、−COOH基を意味し、そしてカルボン酸誘導体、例えばエステル及びアミドを含む。本明細書において使用される用語「エステル」は、単体で、又は他の基と組み合わせて、−COO−基を意味し、そしてカルボン酸誘導体を含み、ここでエステル基は、アルコキシカルボニル、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどであり、そしてそれらは置換され得る。
【0080】
他で示されない限り、単体で又は他の基の一部として本明細書中で使用される用語「アミノ酸」は、限定されないが、アミノ基及びカルボキシル基が、「α」炭素と呼ばれる同一炭素で結合したものを含む。
【0081】
「α」炭素における「S」絶対配置は、一般的に「L」、又は天然の立体配置のことである。「α」炭素における「R」絶対配置は、一般的に「D」アミノ酸のことである。「α置換基」の両方が同一である場合、例えば水素又はメチルである場合において、アミノ酸は、Gly又はAibであり、そしてそれはキラルではない。小文字のdは、D−アミノ酸のキラリティを示す。本明細書において、任意のアミノ酸が記載される場合においてはいつでも、特に他に指定されない限り、それはL及びD体の両方を含む。したがって、表2は、本発明において製造されたペプチド模倣体のリストを提供し、そしてその中において、個々のアミノ酸は「L」又は「D」のいずれかで存在し得る。
【0082】
用語「受容体アンタゴニスト」は、受容体の活性化、及びセカンドメッセンジャー、例えば環状AMPの発生を、競合的又は非競合的結合のいずれかによって阻害する。
【0083】
用語「グルカゴン受容体アンタゴニスト」は、グルカゴン受容体の活性化を阻害する化合物のことである。
【0084】
用語「GLP−1受容体モジュレータ又はアゴニスト」は、GLP−1受容体において、下流シグナリング事象、例えばcAMP産生及びインスリン放出を制限するその能力を変化させるように作用する化合物のことである。受容体モジュレータの例は、アゴニスト、パーシャルアゴニスト、インバースアゴニスト、及びアロステリックポテンシエーターを含む。
【0085】
本発明に従って、本明細書に記載された、単離された合成ペプチド模倣体は、グルカゴン受容体アンタゴニストとして主に作用する。さらに、これらのペプチド模倣体はまた、GLP−1受容体アゴニストとして作用することが見出された。これらの合成ペプチド模倣体は、ヒトグルカゴン又はGLP−1受容体(H グルカゴンR、又はHGLP−1R)をトランスフェクトされたCHO細胞中、インビトロで、1〜100nMの濃度範囲内で、所望のグルカゴン受容体アンタゴニスト特性、及びGLP−1受容体アゴニスト活性を示す。H GLP−1Rアゴニスト活性は、放出されたcAMP量を定量することによって評価されるが、一方でグルカゴンアンタゴニスト活性は、グルカゴンペプチド存在下、試験ペプチド模倣体によって阻害されるcAMP産生量を測定することによって評価される。新規ペプチド模倣体は、ヒトグルカゴン受容体をトランスフェクトされたCHO細胞において、1〜100nMの濃度範囲内で、所望のインビトログルカゴン受容体アンタゴニスト活性を示す。製造された試験ペプチド模倣体の幾つかは、グルコース依存性インスリン放出を示し、そして異なる糖尿病動物モデル、例えば高血糖性のC57マウス、ob/ob、及びdb/dbマウスにおいてインビボで試験されたとき、低血糖を引き起こすことなく空腹時高血糖を減少させ、したがってそれらは、2型糖尿病の処置及び予防のための理想的な治療候補品となった。これらの新規クラスのペプチド模倣体は、経口経路又は非経口経路の投与によって投与され得る。
【0086】
本発明は、単体か又は併用のいずれかで使用される、式(I)のペプチド模倣体の医薬組成物を提供し、及びかかるペプチド模倣体を使用する方法を提供する。特に本発明は、医薬上許容される担体と共に、治療上有効な量の、式(I)のペプチド模倣体を、単体で又は組み合わせ(単数又は複数)で含む医薬組成物を提供する。
【0087】
糖尿病、特に2型糖尿病の進行又は発病を処置又は遅延させるための方法をさらに提供し、ここで当該糖尿病は糖尿病の合併症を含み、網膜症、ニューロパシー、ネフロパシー、及び創傷治癒の遅延、並びに関連疾患、例えばインスリン耐性(グルコース恒常性の低下)、高血糖、高インスリン血症、脂肪酸又はグリセロールの血液レベルの上昇、高トリグリセリド血症を含む脂質異常症、シンドロームX、アテローム性動脈硬化、及び高血圧を含み、ここで、式(I)のペプチド模倣体の治療上の有効量又はそれらの組み合わせ(単数又は複数)が、哺乳動物へ、例えばヒト、処理を必要とする患者へと投与される。
【0088】
へプチド模倣体の製造:
本発明のペプチド模倣体を製造するために、ペプチド合成の分野における当業者にとって周知の幾つかの合成経路が使用され得る。全ての記号が先に定義されたとおりである式(I)のペプチド模倣体は、ペプチド合成の分野における当業者に周知の従来技術と共に、以下に記載された方法を使用して、又は当業者によって理解されるそれらの変形を使用して合成され得る。言及される方法は以下に記載されたものを含むが、それらに限定されない。
【0089】
本明細書において記載されたそれらのペプチド模倣体は、一般的に知られている種々の固相技術、例えば、G.Barany and R.B.Merrifield,”The peptides:Analysis,synthesis,Biology”;Volume2−”Special methods in peptide synthesis,Part A”,pp.3−284,E.Gross and J.Meienhofer,Eds.,Academic Press,New York,1980;及びJ.M.Stewart and J.D.Young,”Solid−phase peptide synthesis”2nd Ed.,Pierce chemical Co.,Rockford II,1984に記載されたものの好適な変形を使用する化学合成によって製造され得る。
【0090】
本発明のペプチド模倣体を製造するための好ましい方策は、Fmoc系SPPS法の使用に基づき、ここでアミノ酸側鎖の一時的保護のための酸に不安定な保護基、例えばt−ブチルオキシカルボニル(Boc)、tert−ブチル(But)、トリチル(Trt)基と組み合わせて、Fmoc(9−フルオレニル−メチル−メチルオキシカルボニル)基は、α−アミノ基の一時的保護のために使用される(図2)(例えば、E.Atherton and R.C. Sheppardの”The peptides:Analysis,synthesis,Biology”;Volume9に記載されている、”The Fluorenylmethoxycarbonyl amino protecting group”、及び”Special methods in peptide synthesis,Part C”,pp.1−38,S.Undenfriend and J.Meienhofer,Eds.,Academic Press,San Diego,1987を参照)。
【0091】
ペプチド模倣体は、不溶性のポリマー支持体(レジン)上で、C末端のペプチドから開始して、段階的な方法で合成され得る。一つの実施形態において、当該合成は、ペプチドのC末端アミノ酸をレジンへと、アミド、エステル、又はエーテル結合の形成を通じて連結することによって開始される。これにより、生成されたペプチドは、C末端アミド、カルボン酸、又はアルコールとしてそれぞれ最終的に放出され得る。
【0092】
Fmoc系SPPSにおいて、C末端アミノ酸及び合成中に使用される他の全てのアミノ酸は、(存在するならば)別々に保護された(オルソゴナル保護)、α−アミノ基及び側鎖の官能性を有することが必要とされ、ここでα−アミノ保護基は、合成中にレジンからのペプチドの早期切り出し、又は酸に不安定な保護基を用いて通常保護された側鎖保護基の脱保護をすることなく、好適な塩基、例えば20%ピペリジン溶液を使用して選択的に除去される。
【0093】
アミノ酸のカップリングは、そのカルボキシル基を活性化して活性化エステルとし、そしてレジンと結合されたN末端アミノ酸の保護されていないα−アミノ基と当該活性化エステルとの反応によって行われる。全てのカップリング及び脱保護の後、ペプチジル−レジンが、過剰の溶媒、例えばDMF、DCM、及びジエチルエーテルを用いて洗浄された。一連のα−アミノ基の脱保護及びカップリングが、所望のペプチド配列が組み立てられるまで繰り返される(スキーム1)。ペプチドはその後、副反応を制限するために通常好適なスカベンジャーの存在下、好適な切り出し混合物を使用して、側鎖官能基の付随的脱保護と共にレジンから切り出される。生じるペプチドは、最終的に逆相HPLCによって精製される。
【0094】
最終体のペプチドへの前駆体として必要とされるペプチジル−レジンの合成は、市販の架橋されたポリスチレンポリマーレジン(Novabiochem,San Diego,CA)を利用する。C末端アミノ酸が既に結合した、又は結合していない、Fmoc−PAL−PEG−PSレジン、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmoc−アミノメチル)−フェノキシアセチル−p−メチルベンズヒドリルアミンレジン(Fmoc−リンクアミドMBHAレジン)、2−クロロ−トリチル−クロリドレジン、又はp−ベンジルオキシベンジルアルコールレジン(HMPレジン)が、本発明における使用のために好ましい。C末端アミノ酸が結合されていない場合、DIPCDIとの反応によって形成された、Fmoc保護されたアミノ酸のHOBt活性化エステルによって、その結合が達成される。2−クロロトリチルレジンの場合、第一のFmoc保護されたアミノ酸のカップリングが、DIPEAを使用して達成される。次のアミノ酸の組み立てのために、ペプチジルレジンのN末端保護は、10〜20%ピペリジン溶液を使用して選択的に脱保護された。全てのカップリング及び脱保護の後に、過剰のアミノ酸及びカップリング試薬を、DMF、DCM及びエーテルを用いた洗浄により除去した。その後のアミノ酸のカップリングは、DIPCDI/HOBt、又はDIPCDI/HOATから各々製造される、HOBt又はHOAT活性エステルを使用して達成され得る。幾つかの困難なカップリングの場合において、特に疎水性であるアミノ酸、又は嵩高い側鎖保護基を有するアミノ酸のカップリングにおいて、完全なカップリングは、非常に効率的なカップリング試薬、例えばHBTU、PyBOP、又はTBTUと、添加剤、例えばDIPEAとの組み合わせを使用して達成され得る。
【0095】
本明細書に記載されたペプチド模倣体の合成は、回分式又は連続的フローペプチド合成装置、例えばFmoc/t−ブチル保護法を利用するCS−Bio又はAAPPTECペプチド合成装置によって行われ得る。異なる位置に存在する非天然、非市販のアミノ酸は、一つ以上の当技術分野で既知の方法を使用して、ペプチド鎖へと組み込まれた。一つの方法において、Fmoc保護された非天然アミノ酸は、好適な文献記載の手順を使用して、溶液状態で製造された。例えば、Fmoc保護されたαメチル化アミノ酸、例えばFmoc−Aib−OH、Fmoc−(α−Me−2F−Phe)−OH、Fmoc−(α−Me−2,6−F−Phe)−OHは、改良された文献記載の手順(Boesten,W.H.J.,et al.,Org.Lett.,2001,3(8),1121;Kapadia,S.R.,et al.,JOC,2001,66,1903−1905)を使用して製造された。式IV(a〜l)に列挙されたような、N−Fmoc−2−アミノ−5−フェニル−ペンタン酸(Fmoc−APPA)及びその誘導体の合成は、改良された文献(Betshrugge,J.V.,Tetrahedron,1998,54,1753−1762;国際公開第2003/087036号)記載の方法を使用して行われた。Fmoc−Bip(OMe)−OH(2’−エチル−4’−メトキシ−ビフェニルアラニン;2−アミノ−3−(2’−エチル−4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−プロピオン酸)を、文献(Kotha,S.,et al.,Tetrahedron 2002,58,9633;米国特許出願公開第2006/0004222Al号明細書)記載の方法によって製造し、そしてFmoc−5,5,5,5’,5’,5’−2S−ヘキサフルオロロイシン(Fmoc−(Hfl)−OH)を、報告された手順(Chiu,H.P.,Cheng,R.P.,Org.Lett.,2007,9(26),5517−5520)によって製造した。生じる誘導体をその後、ペプチドの段階的合成で使用した。或いは、必要とされる非天然アミノ酸は、有機化学的手順を使用して、直接的にレジン上で構築され、そして直鎖ペプチド鎖が構築された。
【0096】
【化17】

【0097】
各々のペプチド模倣体のためのペプチド−レジン前駆体は、文献(King,D.S.,et al.,Int.J.Peptide Protein Res.,1990,36,255)に記載された、任意の標準的切り出し手順の好適な変形を使用して切り出しがなされ、そして脱保護がなされ得る。本発明における使用のための好適な使用は、スカベンジャーとしての水及びTIPSの存在下における、TFA切り出し混合物の使用である。通常、ペプチジル−レジンを、TFA/水/TIPS(94:3:3;V:V:V;10ml/100mgのペプチジルレジン)中で1.5〜2時間、室温でインキュベートした。切り出しされたレジンをその後ろ過し、TFA溶液を濃縮し、又は減圧下乾燥した。生じる粗精製物のペプチドは沈澱させるか、又はEt2Oを用いて洗浄されるか、或いは分取HPLCによる精製のために、DMF又は50%酢酸水溶液へと直接再溶解される。
【0098】
所望の純度を有するペプチド模倣体は、分取HPLCを使用した精製によって得られる。粗生成物のペプチドの溶液は、セミ分取カラム(Luna 10μ;C18;100Å);体積250×50mmへと注入され、そしていずれも0.1%TFAで緩衝化されている、水中ACNの直線的グラジエントを用いて、流速15〜50ml/分で溶出され、溶出物はPDA検出器で220nmにて検出される。精製されたペプチド模倣体の構造は、エレクトロスプレー質量分析(ES−MS)によって同定され得る。
【0099】
調製された全てのペプチドは、分取HPLC精製の後、対イオンとしてTFAを使用して、トリフルオロ酢酸塩として単離された。しかし幾つかのペプチドは、好適なイオン交換樹脂床を通すことにより、好ましくは陰イオン交換樹脂であるDowex SBR P(Cl)、又は同等な塩基性陰イオン交換樹脂を通すことにより脱塩がなされた。幾つかの場合において、希釈された酢酸溶液で溶出させて、好適なイオン交換樹脂を通すことによって、TFA対イオンは酢酸イオンで置き換えられる。ペプチドの塩酸塩の調製のために、製造の最後の段階において、酢酸塩である選択されたペプチドは、4MのHClで処理された。生じる溶液を、メンブレンフィルター(0.2μm)を通じて濾過し、その後に凍結乾燥して白色〜灰色がかった白色のHCl塩を得た。当業者の十分範囲内である、同様の技術及び/又はかかる好適な改変に従って、本発明のペプチド模倣体の、他の好適な医薬として許容される塩が製造された。
【実施例】
【0100】
SPPS法を使用する、ペプチド模倣体の一般的製造方法:
レジン上におけるペプチド模倣体の構築:
十分な量(50〜100mg)のFmoc−PAL−PEG−PSレジン又はFmoc−リンクアミドMBHAレジン、ローディング:0.5〜0.6mmol/gを、DMF中で2〜10分間膨潤させた(10〜20ml/100mgレジン)。レジン上のFmoc基をその後、10〜30分間の10〜20%ピペリジン−DMF溶液(10〜30ml/100mレジン)を用いたレジンのインキュベーションによって除去した。脱保護されたレジンをろ過し、そして過剰のDMF、DCM及びエーテル(50ml×4)で洗浄した。洗浄されたレジンを、新しく蒸留されたDMF(1ml/100mgのレジン)中で、窒素雰囲気下、5分間インキュベートした。第一のFmoc保護されたアミノ酸(1〜3当量)、あらかじめ活性化されたHOBt(1〜3当量)、及びDIPCDI(1〜2当量)の0.5M DMF溶液を当該レジンへと加え、その後当該レジンを、窒素雰囲気下で1〜3時間振盪した。カップリングの終結を、定量的ニンヒドリン試験を使用して測定した。最初のアミノ酸のカップリングの後、当該レジンをDMF、DCM及びエーテル(50ml×4)で洗浄した。次のアミノ酸のカップリングのために、最初にレジンとカップリングされた第一のアミノ酸におけるFmoc保護を、20%ピペリジン溶液を使用して脱保護し、その後好適なカップリング試薬を使用して、及び上記の通りに、Fmoc保護された第二のアミノ酸をカップリングした。上記の一般的スキーム1のように、脱保護、洗浄、カップリング及び洗浄の繰り返しサイクルは、所望のペプチド鎖がレジン上に構築されるまで行われた。
【0101】
最終的に、上で製造されたFmoc保護されたペプチジル−レジンは、上記の20%ピペリジン処理によって脱保護され、そして当該ペプチジル−レジンを、DMF、DCM及びエーテル(50ml×4)で洗浄した。所望のペプチドを含有するレジンは窒素圧下、10〜15分間乾燥され、そして切り出し/脱保護がなされた。
【0102】
配列番号37のペプチド(H2N−H−Aib−QGT−(α−Me−2F−Phe)−TSD−Bip(OMe)−(APA)−CONH2)の、自動化固相合成の代表的実施例
【0103】
直鎖ペプチド鎖であるH2N−H−Aib−QGT−(α−Me−2F−Phe)−TSD−Bip(OMe)−(APPA)−PAL−PEG−PSを、Fmoc固相ペプチド合成(SPPS)法を使用する、自動化CS−Bio536 PepSynthesiser(商標)で構築した(スキーム2)。Fmocアミノ酸、及び2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)を、一緒にバイアル中に詰め、そして合成機のアミノ酸モジュール中に配置した。ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA;0.9M)及びDMFのストック溶液を、試薬ボトル中に乾燥窒素雰囲気下で貯蔵した。レジン、Fmoc−PAL−PEG−PS(0.38mmol/g;1g)を真空下P25で乾燥し(1時間)、新たに蒸留したDMF(5mL)で膨潤させた。当該膨潤させたレジンをガラス製カラムへとスラリーにして封入し、そして合成機に配置した。全ての合成サイクルは、流速5mL/分で行われた(表1)。レジンを新たに蒸留したDMFで10分間洗浄した。Fmoc基の脱保護を、20%ピペリジン−DMF液で10分間行い、そしてカラム流出物の304nmでのUV検出によって脱保護を測定した。
【0104】
【化18】

【0105】
過剰のピペリジンを3度の補助的洗浄サイクル、及び蒸留されたDMFでの洗浄サイクルで、各々15分のサイクルで除去した。アミノ基を、DIPEA(8当量)の存在下TBTU(3.9当量)であらかじめ活性化されたFmocアミノ酸(4当量)で処理し、そして120分で回収した。各々のサイクルを10分のサイクルで行う、4度の補助的洗浄サイクル及び蒸留されたDMFによる洗浄サイクルによって、過剰のアミノ酸及び溶解性の副生物をカラム及びループから除去した。さらに、合成サイクル(脱保護、洗浄、アシル化及び洗浄)を直鎖ペプチドの完全な構築のために繰り返した。最終的な脱保護サイクルを、20%ピペリジン−DMF液を用いて15分間行い、末端Fmoc基を除去し、その後洗浄サイクルを行った(10×4分間)。完成したペプチド−レジンをガラスろ過器でろ過し、DMF、DCM、メタノール、DMF及びジエチルエーテル(各々100mLずつ)を用いて連続的に3回洗浄した。ペプチド−レジンを真空下、−20℃にてP25で2時間乾燥した。ニンヒドリンレジン試験を行い、ペプチドと連結したレジンのN末端の遊離のアミノ基を確認した。溶液及びレジンビーズにおける青〜紫の着色の出現は、ペプチドと結合したレジン上における遊離のアミノ基の存在を示し、そして陽性試験であると考えられる。
【0106】
【表1】

【0107】
小スケールでの切り出しが行われ、ペプチドと結合したレジンの純度が評価された。乾燥ペプチド−レジン(約10mg)を、TFA、水、トリイソプロピルシラン(95:2.5:2.5 v/v)の混合物(1mL)で、時折緩やかに攪拌しながら室温にて90分間処理した。当該レジンをろ過し、ニートのTFA(1mL)で十分に洗浄し、そして全ろ液を減圧下で蒸発乾燥した。残余のTFAを、ジエチルエーテル(2mL)を用いて3回共沸した。得られた残渣を蒸留水(2mL)に懸濁し、そして水層をジエチルエーテル(3mL)にて3回抽出した。水層を分離し、凍結乾燥し、粗精製のペプチドであるH2N−H−Aib−QGT−(α−Me−2F−Phe)−TSD−Bip(OMe)−(APPA)−CONH2を得た。当該凍結乾燥されたペプチド、H2N−H−Aib−QGT−(α−Me−2F−Phe)−TSD−Bip(OMe)−(APPA)−CONH2を、0.1%のTFA水溶液(約1mg/1mL)に溶解し、そしてその純度を分析RP−HPLCで分析し、そしてエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)で評価した。パーセント純度:90%(粗精製のペプチド)。ESI−MS;H2N−H−Aib−QGT−(α−Me−2F−Phe)−TSD−Bip(OMe)−(APPA)−CONH2における計算値:1465(M+)、1487(M+Na+)及び1503(M+K+);実測値(m/z):1465(M+)、1487(M+Na+)、及び1503(M+K+)。
【0108】
上記手順、及び当業者の範囲内にあるその好適な変形を用いて、Fmoc−SPPS法を使用して、本発明で設計されたペプチド模倣体を製造した。さらに、レジンに結合したペプチド模倣体の切り出し及び脱保護を行い、精製し、そして以下の手順を使用して評価した。
【0109】
切り出し及び脱保護:
所望のペプチド模倣体をそれらの各々のペプチジル−レジンから、TFA切り出し混合物を用いて、以下のように切り出し及び脱保護を行った。TFA/水/トリイソプロピルシラン(95:2.5:2.5)(10ml/100mgのペプチジル−レジン)の溶液をペプチジル−レジンへと加え、そして当該混合物を、時折攪拌しながら室温で維持した。当該レジンをろ過し、切り出し混合物で洗浄し、そして合わせたろ液を蒸発乾燥させた。得られた残渣を10mlの水に溶解し、そして水層をエーテル(各々20mL)で3回抽出し、そして最終的に当該水層を凍結乾燥した。凍結乾燥後に得られた粗精製のペプチドを以下のように分取HPLCによって精製した:
【0110】
粗精製ペプチド模倣体の分取HPLC精製
分取HPLCを、Shimadzu LC−8A液体クロマトグラフで行った。DMF又は水に溶解された粗精製ペプチドの溶液を、セミ分取カラム(Luna 10μ;C18;100Å)、体積250×50mmへと注入し、そしていずれも0.1%TFAで緩衝化された水中ACNの直線的グラジエントで、220nmにてPDA検出器で流出物を測定しながら、流速15〜50ml/分で溶出された。50分間で、1分間あたり1%のグラジエント変化をさせながら、0.1%TFAで緩衝化された、水−ACN混合物の20%〜70%の典型的グラジエントを使用した。溶出される所望の産物を、単一の10〜20mlのフラクションに回収し、そして各々のHPLCフラクションの凍結乾燥により、純水なペプチド模倣体をアモルファスの白色粉末として得た。
【0111】
精製されたペプチド模倣体のHPLC分析
上記の分取HPLCによる精製の後、各々のペプチドを、Shimadzu LC−10AD分析HPLCシステムによる分析RP−HPLCで分析した。ペプチド模倣体の分析HPLCによる分析のために、0.1%TFA及びACNバッファーの直線的グラジエントで、Luna 5μ;C18;100Å、体積250×4.6mmカラムを使用し、そしてクロマトグラムの取得を、PDA検出器を使用して220nmにて行った。
【0112】
質量分析による評価
個々のペプチドを、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)によって、フローインジェクションか又はLC/MSモードのいずれかで評価した。三連四重極型質量分析装置(API−3000(MDS−SCIES、カナダ)が、陽イオン及び陰イオンエレクトロスプレーモードにおける全ての分析において使用された)。全スキャンデータを、単位分解能(unit resolution)で行われる四重極のマスレンジで得た。全ての場合において、実験的に測定される分子量は計算されたモノアイソトピック分子量の0.5ダルトン以内であった。マスクロマトグラムの定量化が、Analyst 1.4.1ソフトウェアを使用してなされた。
【0113】
本明細書に記載された合成法を利用して、他の一般的に既知の技術及びその好適な変形を利用して、以下の新規ペプチド模倣体を製造した。このリストは、種々の群のペプチド模倣体を示し、そしてそれらは本発明に従って合成され、そしてこれらのペプチド模倣体の明らかな変形を少なくとも含むことが期待される。しかし、かかる開示は、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。表2(i〜v)において、本発明の新規ペプチド模倣体は、それらの対応する配列番号と共に列挙される。
【0114】
【表2】

【0115】
【表3】

【0116】
【表4】

【0117】
【表5】

【0118】
【表6】

【0119】
【表7】

【0120】
【表8】

【0121】
【表9】

【0122】
新規ペプチド模倣体のインビトロ及びインビボ試験:
上記で製造されたペプチド模倣体を、以下に関して試験した:
a)インビトロにおけるグルコース依存性インスリン分泌(RIN5F細胞アッセイスクリーニング手順);
b)インビトロにおけるGLP−1Rアゴニスト活性(環状AMPの決定);
c)インビトロにおけるヒトグルカゴンアンタゴニスト活性(環状AMPの決定);
d)DPP IV酵素、ヒト血漿、擬似胃液、腸液、及び肝ミクロソームに対するペプチド模倣体の安定性;及び
e)以下に記載された種々のインビトロ及びインビボアッセイを使用する、試験化合物(ペプチド模倣体)の、C57BL/6Jマウス(インビボ)におけるインビボにおける有効性の実証。
【0123】
インビトロ試験:インビトログルコース依存性インスリン分泌(RIN5F細胞アッセイスクリーニング手順)
加湿インキュベータ(5%CO2)中37℃で、RIN5F(ラットインスリノーマ)細胞を、ピルビン酸ナトリウム(1mM)、HEPES、及びグルコース(4.5g/L)を追加したRPMI 1640培地にて培養した。トリプシン処理の後、RIN5F細胞を、12ウェルプレートに、1ウェルあたり0.2×106細胞の濃度で蒔いた。当該細胞を一晩増殖させて80%のコンフルエンスとし、そしてインスリン分泌実験を以下のように行った(Montrose−Rafizadeh C,et al.,Mol.Cell.Endo.1997,130,109.;Wang,X.,et al.,Endocrinology 2001,5,1820)。
【0124】
細胞をPBS溶液で一度洗浄し、その後、NaCl(115mmol/L)、KCl(4.7mmol/L)、CaCl2(1.28mmol/L)、MgSO4・7H2O(1.2mmol/L)、KH2PO4(1.2mmol/L)、NaHCO3(10mmol/L)及びHEPES(25mmol/L)を含有し、グルコース(1.1mM)及びB.S.A(0.5%)を含有する、pH7.4の新鮮なクレブス−リンゲル平衡緩衝液で40分間インキュベーションした。40分後に緩衝液を交換し、そしてグルコースの存在下(16.7mM)及び不在下(0mM)の両方で、異なる濃度の試験ペプチド模倣体と共に、当該細胞を30分間(37℃にて)インキュベートした。上清を回収し、そして超高感度ラットインスリンELISAキット(Crystal Chem,IL)によって、インスリン量を測定した。ビシンコニン酸キットを使用して、製造業者(Sigma Aldrich,MO)の手順に従って、上清中のタンパク質を推測した。ウェル間の細胞密度における差を正規化するために、ピコグラム(pg)で得られた全インスリン量を、全タンパク質(μg)で割った。代表的ペプチド模倣体の、インビトロにおけるグルコース依存性インスリン分泌活性を表3に列挙する。
【0125】
【表10】

【0126】
【表11】

【0127】
【表12】

【0128】
インビトロにおけるヒトGLP−1Rアゴニスト活性(環状AMPの決定)
安定にトランスフェクトされたCHO/ヒトGLP1R細胞におけるcAMP細胞系アッセイを使用して、新規ペプチド模倣体は、ヒトGLP−1受容体(HGLP−1R)アゴニスト活性(インビトロ)に関してスクリーニングされた。CHO−K1細胞(CRL9618)を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Rockville,MD)から得た。L−グルタミン(2mM)、HEPES(25mM)、NaHCO3(1.1g/L)を含有し、そして新生のウシ血清(NBCS;10%)、ペニシリン(50U/ml(v/v))及びストレプトマイシン(50ug/ml(v/v))を追加されたHam’s F12培地中でCHO細胞を増殖させた。細胞を3日ごとに1:8に分割した。
【0129】
ヒトGLP−1受容体を発現する安定なCHO細胞株の産生
ヒトGLP−1受容体をコードするcDNAを、標準的手順に従って、RT−PCRによって単離した。完全長cDNAをpcDNA3.1(+)にクローニングした。GLP−1受容体を発現するCHO細胞株の産生のために、CHO細胞は、標準的手順に従って、CaPO4を使用して、10μgの発現プラスミドpcDNA/hGLP−1Rを用いてトランスフェクトされた(Wheeler,M.B.,et al.,Endocrinology 1993,133,57)。当該受容体を発現するクローンは、G418(800μg/ml活性,Sigma)選択によって産生された。安定なクローンをその後、500μg/ml(G418)で維持した。選択されたクローンを、cAMPアッセイのために、9〜25代継代の間で使用した。
【0130】
cAMP産生の決定
ヒトGLP−1Rを安定にトランスフェクトされたCHO細胞は、Ham’s F12+10% NBCS+500ug/ml G418中で、70〜75%の集密度で維持された。細胞は、2mlのTPVG(0.25%トリプシン、0.53mM EDTA、1.38mMグルコース)を使用してトリプシン処理された。
【0131】
10%NBCSを含むHam’s F12培地を使用してトリプシンを不活性化し、そして当該細胞を2mlの完全培地中で懸濁した。2×105細胞/ウェルをその後、12ウェルプレートへ蒔き、そして当該プレートを湿気のある雰囲気下、37℃にて16〜18時間インキュベートした(Fehmann,H.C.,et al.,Peptides 1994,15,453)。次の日にアッセイを行い、このとき当該細胞は90〜95%の集密度を示した。12ウェルプレートから培地を吸引して除き、そして当該細胞をHam’s F12(単純(plain))を使用して一度洗浄した。当該細胞を37℃で、500μlのHam’s F12+1%BSA+0.125mM RO−20を用いて30分間インキュベートした。インキュベーションの後、当該培地を吸引して除き、そして水(MilliQ)に溶解された5μlの試験化合物(ペプチド模倣体)を含む新鮮培地(単純Ham’s F12+1%BSA+0.25mM RO−20)を加えた。湿気のある雰囲気下37℃にて、試験化合物と共に細胞を30分間インキュベートした。インキュベーションの後、当該培地を除き、そして細胞を単純Ham’s F12で一回洗浄した。その後、各々のウェルへ500μlの0.1N氷冷HClを加え、そして200rpmで30分間振盪することによって当該細胞を溶解した。細胞をその後廃棄し、微小遠心管に溶解物を回収し、そして12000rpmにて10分間遠心分離して細片を除いた。各々の微小遠心管からの300μlの上清はその後、ガラス管へと除去され、そしてcAMP測定のために、N2下で30分間乾燥された。全cAMPは、環状AMPイムノアッセイキット(R&D systems,Minneapolis.MN)を使用して、製造業者の手順に従って、当該試料から測定された。マイクロBCA(Sigma)を使用してタンパク質濃度を決定するために、残存する上清を使用した。データをパーセント対照(ビヒクル:水)として計算し、そして平均±SDとして表現した。代表的ペプチド模倣体のインビトロにおけるヒトGLP−1受容体アゴニスト活性を表4に示す。
【0132】
【表13】

【0133】
【表14】

【0134】
【表15】

【0135】
インビトロにおけるヒトGLP−1受容体アゴニスト活性に基づいて、新規ペプチド模倣体についてEC50値を決定した。エキセンディン(EC50=0.56nM)、及び配列番号38:H−Aib−QGT−(α−Me−2F−Phe)−TSD−Bip(OMe)−(ADMP)(EC50=0.34nM)における、比較による用量−反応曲線(DRC)を、代表例として図3に示す。
【0136】
インビトロにおける、ヒトグルカゴンアンタゴニスト活性(試験ペプチド模倣体を用いた、環状AMP産生量の阻害の測定)
【0137】
ヒトグルカゴン受容体(H−グルカゴン−R)アンタゴニスト活性(インビトロ)に関して、安定にトランスフェクトされたCHO/ヒトグルカゴンR細胞におけるcAMP細胞系アッセイを使用して、新規ペプチド模倣体をスクリーニングした。CHO−K1細胞(CRL9618)を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Rockville,MD)から得た。L−グルタミン(2mM)、HEPES(25mM)、NaHCO3(1.1g/L)を含有し、そして新生のウシ血清(NBCS;10%)、ペニシリン(50U/ml(v/v))及びストレプトマイシン(50ug/ml(v/v))を追加されたHam’s F12培地中でCHO細胞を増殖させた。細胞を3日ごとに1:8に分割した。
【0138】
ヒトグルカゴン受容体を発現する安定なCHO細胞株の産生
ヒトグルカゴン受容体をコードするcDNAを、標準的手順に従って、RT−PCRによって単離した。完全長cDNAをpcDNA3.1(Invitrogen)にクローニングした。グルカゴン受容体を発現するCHO細胞株の産生のために、CHO細胞は、標準的手順に従って、CaPO4を使用して、10μgの発現プラスミドpcDNA/hGLP−1Rを用いてトランスフェクトされた(Wheeler,M.B.,et al.,Endocrinology 1993,133,57)。当該受容体を発現するクローンは、G418(800μg/ml活性,Sigma)選択によって産生された。安定なクローンをその後、500μg/ml(G418)で維持した。選択されたクローンを、cAMPアッセイのために、9〜25代継代の間で使用した。
【0139】
グルカゴンペプチド及び試験ペプチド模倣体の添加後において阻害されるcAMP産生量を測定することによる、グルカゴンアンタゴニスト活性の決定
【0140】
ヒトグルカゴンRを安定にトランスフェクトされたCHO細胞は、Ham’s F12+10%NBCS+500μg/ml G418中で、70〜75%の集密度で維持された。細胞は、2mlのTPVG(0.25%トリプシン、0.53mM EDTA、1.38mMグルコース)を使用してトリプシン処理された。10%NBCSを含むHam’s F12培地を使用してトリプシンを不活性化し、そして当該細胞を2mlの完全培地中で懸濁した。2×105細胞/ウェルをその後、12ウェルプレートへ蒔き、そして当該プレートを湿気のある雰囲気下、37℃にて16〜18時間インキュベートした。次の日にアッセイを行い、このとき当該細胞は90〜95%の集密度を示した。12ウェルプレートから培地を吸引して除き、そして当該細胞をHam’s F12(単純)を使用して一度洗浄した。当該細胞を37℃で、500μlのHam’s F12+1%BSA+0.125mM RO−20を用いて30分間インキュベートした。インキュベーションの後、当該培地を吸引して除き、そして水(MilliQ)に溶解された5μlの試験化合物(ペプチド模倣体)を含む新鮮培地(単純Ham’s F12+1%BSA+0.25mM RO−20)を加え、その後グルカゴンペプチド(又はアゴニスト)を加えた。湿気のある雰囲気下37℃にて、ペプチド模倣体及びグルカゴンペプチドと共に細胞を30分間インキュベートした。インキュベーションの後、当該培地を除き、そして細胞を単純Ham’s F12で一回洗浄した。その後、各々のウェルへ500μlの0.1N氷冷HClを加え、そして200rpmで30分間振盪することによって当該細胞を溶解した。細胞をその後廃棄し、微小遠心管に溶解物を回収し、そして12000rpmにて10分間遠心分離して細片を除いた。各々の微小遠心管からの300μlの上清はその後、ガラス管へと除去され、そしてcAMP測定のために、N2下で30分間乾燥された。全cAMPは、環状AMPイムノアッセイキット(R&D systems,Minneapolis.MN)を使用して、製造業者の手順に従って、当該試料から測定された。マイクロBCA(Sigma)を使用してタンパク質濃度を決定するために、残存する上清を使用した。データをパーセント対照(ビヒクル:水)として計算し、そして平均±SDとして表現した。代表的ペプチド模倣体のインビトロにおけるヒトグルカゴン受容体アゴニスト活性を表5に示す。
【0141】
【表16】

【0142】
【表17】

【0143】
【表18】

【0144】
DPP IV酵素、ヒト血漿、擬似胃液、腸液、及び肝ミクロソームに対するペプチド模倣体の安定性
【0145】
異なるペプチド模倣体(最終濃度2μM)は、DPP IV(1:25mU)、又は貯蔵されたヒト血漿(7.5μL)、又は擬似胃液(pH1.5;HCl、NaCl、及びペプシンを配合)、又は擬似腸液(pH7.5)、又はヒト肝ミクロソームのいずれかを用いて、0、2、4、6、12及び24時間インキュベートされた(37℃;50mMトリエタノールアミン−HClバッファー;pH7.8)。2〜4時間以内に約50%の分解が起き、したがって時間依存的分解が24時間を超えて見られる、DPP IV酵素/ヒト血漿/擬似胃液/擬似腸液/ヒト肝ミクロソームの濃度を、予備試験において選択した。TFA/水(15mL,10%(v/v))を加えることによって反応を終結した。反応産物をその後、Vydac C18分析カラム(4.6×250mm)へ適用し、そして主要な分解断片を完全なペプチド模倣体から分離した。カラムをTFA/水を用いて流速1mL/分で平衡化した。70%アセトニトリル/水中、0.1%(v/v)TFAを使用して、溶出溶媒中のアセトニトリル濃度を、0%〜28%へと10分かけて、そして28%〜42%へと30分かけて増加させた。UV検出器を使用して、吸光度を206nmで測定し、そしてESI−MS分析に先立ってピークを手動で回収した。試験ペプチド模倣体及びそれらの代謝物について曲線下面積を測定し、そしてパーセント分解を、24時間の各々の時点において計算した。DPP IV酵素、ヒト血漿、擬似胃液、腸液、及び肝ミクロソームに対する、選択されたペプチド模倣体の安定性試験の結果(インビトロ)を表6に示す。
【0146】
【表19】

【0147】
【表20】

【0148】
【表21】

【0149】
インビボにおける有効性試験:
非経口(i.p.)、及び経口投与経路の両方による、C57BL/6J又はdb/dbマウスにおける、試験化合物(ペプチド模倣体)のインビボ有効性(抗高血糖/抗糖尿病活性)の実証
【0150】
動物
急性単回投与における120分間の経時変化実験を、社内で繁殖された8〜12週齢の雄のC57BL/6J又はdb/dbマウスで行った。飼育施設条件(25±4℃、相対湿度60〜65%、午前7時30分に明かりをつける、12時間:12時間の明:暗サイクル)にそれらを馴らすために、1週間、1ケージあたり6匹の動物のグループにして動物を飼育した。全ての実験は、「Zydus研究センター動物倫理委員会(Zydus Research Center animal ethical committee)」による承認に従う、国際的に有効なガイドラインに従って行われた。
【0151】
手順
幾つかの試験化合物(ペプチド模倣体)及びエキセンディン−4の、インビボにおけるグルコース低下特性を、以下に記載されたC57BL/6J(軽度の高血糖)又はdb/db動物モデルにおいて評価した。当該試験の2日前、動物を無作為で抽出し、そしてそれらに与えられたグルコースレベルに基づいて、5つのグループ(n=6)へと分けられた。実験日において、食餌を全てのケージから除き、水を適宜加え、そして一晩維持し、絶食させた。ビヒクル(標準的な生理食塩水)/試験/標準化合物を、体重に基づいて、腹腔内(i.p.)又は経口で投与した。エーテル浅麻酔下で、後眼窩から、0分後すぐに、各々の動物から血液を回収し、その後30分、60分及び120分又は240分まで血液の回収を行った(Chen,D.,et al.,Diabetes Obesity Metabolism,2005,7,307.Kim,J.G.et al.,Diabetes,2003,52,751)。
【0152】
血液試料を遠心分離し、そして分離した血清について速やかにグルコース定量をおこなった。インスリン定量のための血清は、インスリン定量に使用されるまで、−70℃で貯蔵された。DPEC−GOD/POD法(Ranbaxy Fine Chemicals Limited,Diagnostic division,India)を用いて、96マイクロウェルプレートリーダー中のSpectramax−190(Molecular devices Corporation, Sunnyvale, California)を使用してグルコース定量を行った。Microsoft excelを使用して重複した試料の平均値を計算し、そしてGraph Pad Prism ソフトウェア(Ver4.0)を使用して、0分ベースライン補正された直線グラフ、曲線下面積(0〜120分AUC)、及びベースライン補正された曲線下面積(0分BCAUC)を描いた。グラフから得られるAUC及びBCAUCは、Graph Pad prismソフトウェアを使用して、一元配置ANOVAで、その後Dunnett’s post検定で分析された。さらに、ラット/マウスインスリンELISAキット(Linco research,Missouri USA)を使用して、インスリン定量を行った。選択されたペプチド模倣体を用いた、0、30、60及び120分における血液グルコースレベルの変化を、表7(ip投与経路)、及び表8(経口投与経路)に各々示す。
【0153】
【表22】

【0154】
【表23】

【0155】
【表24】

【0156】
配列番号38(H−Aib−QGT−(α−Me−2F−Phe)−TSD−Bip(OMe)−(ADMP))を用いて、C57マウス中、異なる用量(2/5/8/10/15nM/kg)にてip投与経路で急性処置した後(図4)、100/200/500/1000/2000nM/kgの用量での経口投与経路(図5)、又はdb/db中、1000及び2000nM/kg用量での経口投与経路(図6)での、幾つかのベースライン補正された血清グルコースレベルが、代表的な図に示されている。図7は、C57BL/6Jマウス中、0.5/1/2μM/kg用量(インビボ)での、ビヒクル/試験化合物(配列番号10(H−(α−Me−Pro)−QGTFTSD−Bip(OMe)−(ADMP))、20(H−Aib−QGTFTSD−Bip(OMe)−(AMCB))、及び25(H−(APP)−QGTFTSD−Bip(OMe)−(APPA)))の急性経口投与後における血清インスリンレベルの変化を示す。
【0157】
ペプチド模倣体のインビボ及びインビトロでの結果の要約
上記の通り、本発明で製造された全てのペプチド模倣体を、インビトロ及びインビボで評価し、そして選択されたペプチド模倣体のデータを代表的なペプチド模倣体の例として上節で示した。RIN 5F(ラットインスリノーマ)細胞系アッセイにおいて、全てのペプチド模倣体は、1〜10nM濃度の範囲内でグルコース依存性インスリン分泌のみ示し(表3)、それによりこれらの群のペプチド模倣体は、高血糖性症状の発現を欠く傾向にあり、そしてそれは他の群のインスリン分泌促進剤、例えばスルホニルウレアで一般に観測される。ヒトグルカゴン受容体アッセイにおいて、ペプチド模倣体のインビトロにおけるアンタゴニスト活性を、グルカゴンペプチドと共にインキュベートしたときにおける、試験ペプチド模倣体を用いたcAMP産生量の阻害を測定することによって評価した。表5に示す通り、一般的に全てのペプチド模倣体は、1nM〜100nMの濃度範囲で著しいグルカゴン受容体アンタゴニスト活性を示した。HGLP−1Rアッセイにおいて、新規ペプチド模倣体は、濃度依存的cAMP産生(インビトロGLP−1アゴニスト活性)を示した(表4)。ペプチド模倣体のこの2重の性質(グルカゴン受容体のアンタゴニスト、かつGLP−1受容体のアゴニスト)は、それらを2型糖尿病及び関連する代謝性疾患の安全かつ効率的な処置のための理想的な候補品とする。
【0158】
DPP−IV酵素、ヒト血漿、擬似胃及び腸液、並びに肝ミクロソームに対する、選択されたペプチド模倣体の安定性試験の結果は、24時間インキュベートしたとき、大部分のペプチド模倣体がDPP−IV酵素に対して安定であることを示す。同様に、ヒト血漿、擬似胃及び腸液において、大部分のペプチド模倣体は24時間までインキュベートしたときに安定であることが明らかとなった。ペプチド模倣体を肝ミクロソームと共にインキュベーションしたとき、著しい安定性を示し、そして26〜35%の分解のみが24時間で観察され、そしてそれは幾つかのペプチド模倣体が経口投与経路によって送達され得ることを示した。
【0159】
非経口及び経口投与経路の両方による、ペプチド模倣体のインビボにおける抗高血糖/抗糖尿病活性が、C57又はdb/dbマウスにおいて、急性単回投与での120分/240分経時変化実験を使用して決定された。表7で示される通り、大部分のペプチド模倣体が、5〜50nMの用量範囲で、i.p.投与経路経由で活性であり、一方で経口経路においては、幾つかの選択されたペプチド模倣体(表8)は、0.5〜2μM/kg用量の範囲内で活性がある。したがって、新規ペプチド模倣体は、グルカゴンアンタゴニスト活性及びGLP−1アゴニスト活性を示し、そして経口で生物学的に利用可能であり、そしてそのことは、それらを2型糖尿病及び関連する代謝性疾患の安全かつ効率的な処置のための理想的な候補品とする。
【0160】
有用性:
好ましい実施形態において、本発明は、両方の受容体に対して異なる程度の親和性/選択性を有する、そして循環グルコースレベルを減少させるため、及び糖尿病の処置のために有用である、グルカゴン受容体のアンタゴニスト、かつGLP−1受容体のアゴニストの両方として作用するペプチド模倣体を製造する方法を提供する。
【0161】
本明細書に記載された合成ペプチド模倣体は、グルカゴン又はHGLP−1RをトランスフェクトされたCHO細胞中、インビトロにおいて、nM濃度での所望のグルカゴンアンタゴニスト活性及びGLP−1アゴニスト活性を示し、そしてインビボにおいて幾つかのペプチド模倣体は、グルコース依存性インスリン放出を示し、そして異なる糖尿病動物モデル、例えば高血糖のC57マウス及びdb/dbマウスで試験したときに、低血糖を引き起こすことなく空腹時高血糖を減少させた。
【0162】
本発明の新規ペプチド模倣体は、種々のタンパク質分解性酵素に対する安定性の増大を示し、そして増大した安定性かつ短い鎖長のために、かかるペプチド模倣体はまた、経口投与経路で、他の侵襲性及び非侵襲性投与経路で送達され得る。
【0163】
本発明の新規ペプチド模倣体は、周知である好適な賦形剤と組み合わせることによって、好適な医薬として許容される組成物へと製剤化され得る。
【0164】
医薬組成物は、従来技術を使用することによって提供される。好ましくは当該組成物は、有効量の活性成分、すなわち単体で又は組み合わせである本発明の式(I)のペプチド模倣体を含む単位剤形で存在する。
【0165】
医薬組成物及びその単位剤形中における活性成分、すなわち本発明の式(I)のペプチド模倣体の量は、特定の適用方法、特定のペプチド模倣体の効能、及び所望の濃度に依存して、高範囲で変化するか又は調節され得る。一般的に、活性成分の量は、組成物の重量に対して0.5%〜90%の範囲内であろう。
【0166】
したがって、本発明のペプチド模倣体は、限定されないが、糖尿病(好ましくは2型、糖耐性の減少、インスリン抵抗性、及び糖尿病性合併症、例えば腎症、網膜症、ニューロパシー、及び白内障)、高血糖、高インスリン血症、高コレステロール血症、遊離の脂肪酸又はグリセロールの血液レベルの上昇、脂質異常症、高トリグリセリド血症、創傷治癒、組織虚血、アテローム性動脈硬化症、高血圧、腸疾患(例えば壊死性腸炎、微絨毛封入体病(microvillus inclusion disease)又はセリアック病)の進行又は発病の処置又は遅延を含む種々の病状及び疾患の処置のために、哺乳動物へ、好ましくはヒトへ投与され得る。本発明のペプチド模倣体はまた、高濃度リポタンパク質(HDL)の血液レベルの上昇のために利用され得る。
【0167】
さらに、Johannsson G.,J.,Clin.Endocrinol.Metab.,1997,82,727に詳細に説明されている、「シンドロームX」又はメタボリック症候群とまとめて呼ばれる病状、疾患は、本発明のペプチド模倣体を用いて処理され得る。本発明のペプチド模倣体は、幾つかの上記疾患の処置のために、場合により好適なDPP−IV阻害剤と組み合わせて、連続的に当該化合物を投与することによって、又は好適なDPP−IV阻害剤と共に本発明のペプチド模倣体を含む組成物としてのいずれかで使用され得る。
【0168】
言及された本発明のペプチド模倣体のいずれにおいても、副作用効果が観測されなかった。本発明の化合物は、使用された実験動物中で、すぐれたグルコース血清低下活性を示した。これらのペプチド模倣体は、高インスリン血症、高血糖によって引き起こされる疾患、例えばNIDDM、代謝性疾患の検査/予防のために、かかる疾患が互いに関連しているために使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
Aは−NH−R1、R3−CO−、R3−O−CO−、又はR3−SO2−を示し、ここでR1は、水素、又は場合により置換された直鎖若しくは分岐の(C1−C10)アルキル鎖を示し;R3は、直鎖又は分岐の(C1−C10)アルキル、(C3−C6)シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はアリールアルキル基から選択され;Bは、−COOR2、−CONHR2、又はCH2OR2を示し、ここでR2は、水素、又は、直鎖若しくは分岐の(C1−C10)アルキル、アリール若しくはアラルキル基から選択される、場合により置換された基を示し;Z1〜Z11は、アミド結合によって連結された、天然又は非天然アミノ酸を示し、
ここでZ1は、L−ヒスチジン(H)、D−ヒスチジン(dH)、又はウロカニン酸(UA)
【化2】

を示し;
2は、L−セリン(S)、D−セリン(dS)、L−アラニン(A)、D−アラニン(dA)、α−メチルプロリン(α−Me−Pro)、α−アミノ−イソ酪酸(Aib)、1−アミノシクロプロパンカルボン酸(ACP)、1−アミノ−シクロペンタンカルボン酸(APP)
【化3】

を含む群から選択される、天然又は非天然のアミノ酸を示し;
3は、L−グルタミン(Gln;Q)、D−グルタミン(dQ)、又は式IIの化合物(CNB、又はHfl)
【化4】

を示し;
4は、グリシン(G)、又は非天然アミノ酸である1−アミノシクロプロパンカルボン酸(ACP)、若しくは1−アミノ−シクロペンタンカルボン酸(APP)を示し;
5は、ヒドロキシル側鎖を含む、天然又は非天然のアミノ酸を示し;好ましいZ5は、L−スレオニン(T)、D−スレオニン(dT)、L−アロスレオニン(allo−Thr;allo−T)、D−アロスレオニン(d−allo−Thr;d−allo−T)であり;
6は、二つの側鎖を有する、二置換されたアルファ炭素を有する、天然又は非天然のアミノ酸を示し、ここで前記側鎖の各々は独立して、場合により置換されたアルキル又はアリール又はアラルキル基であり得、ここで前記置換基は1個以上のアルキル基、又は1個以上のハロ基から選択され得;
7及びZ8は独立して、ヒドロキシル側鎖を有する天然又は非天然アミノ酸を示し;
9は独立して、酸性基を含むアミノ酸側鎖を有する、天然又は非天然のアミノ酸を示し;
10は、式III(a〜c)
【化5】

のL又はD非天然アミノ酸を示し;
11は、式IV(a〜l)
【化6】

のL又はD非天然アミノ酸を示す]
の配列を有する単離されたペプチド模倣体、その互変異性体、又は溶媒和物。
【請求項2】
6が、Phe(F)、アルファ−メチル−フェニルアラニン(−α−Me−Phe−)、アルファ−メチル−2−フルオロフェニルアラニン(−α−Me−2F−Phe−)、又はアルファ−メチル−2,6−ジフルオロフェニルアラニン(−α−Me−2,6−F−Phe−)、又は2−フルオロフェニルアラニン(−2F−Phe−)を示す、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
7及びZ8のそれぞれが、スレオニン、セリン、1−アミノシクロプロパンカルボン酸から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
9が、L−アスパラギン酸(D)、D−アスパラギン酸(dD)、又は式IIの化合物から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
前記アリール基が、フェニル、ナフチル、インダニル、フルオレニル、又はビフェニル基から選択され;前記ヘテロアリール基が、ピリジル、チエニル、フリル、イミダゾリル、ベンゾフラニル基から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
9とZ10との間の、又はZ10とZ11との間の、又はZ9〜Z11のアミド結合が、さらにNメチル化され、「NMe」と表される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
9とZ10との間の、又はZ10とZ11との間の、又はZ9〜Z11のアミド結合が、さらにチオアミド結合である、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
さらにZ9とZ10との間の、又はZ10とZ11との間の、又はZ9〜Z11の前記チオアミド結合が、「−CH2−」結合へと還元されている、請求項7に記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
式(I)
【化7】

[式中、
Aは−NH−R1、R3−CO−、R3−O−CO−、又はR3−SO2−を示し、ここでR1は、水素、又は場合により置換された直鎖又は分岐の(C1−C10)アルキル鎖を示し;R3は、直鎖又は分岐の(C1−C10)アルキル、(C3−C6)シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はアリールアルキル基から選択され;Bは、−COOR2、−CONHR2、又はCH2OR2を示し、ここでR2は、水素、又は、直鎖若しくは分岐の(C1−C10)アルキル基、アリール若しくはアラルキル基から選択される、場合により置換された基を示し;
1は、L−ヒスチジン(H)、D−ヒスチジン(dH)、又はウロカニン酸(UA)を示し;
2は、L−セリン、D−セリン、L−アラニン、D−アラニン、α−アミノ−イソ酪酸、1−アミノシクロプロパンカルボン酸
【化8】

から選択され;
3は、L−グルタミン(Gln;Q)、D−グルタミン(dQ)、又は式IIの化合物(CNB、又はHfl)
【化9】

を示し;
4は、グリシン(G)、又は非天然アミノ酸である1−アミノシクロプロパンカルボン酸(ACP)、若しくは1−アミノ−シクロペンタンカルボン酸(APP)を示し;
5は、L−スレオニン(T)、D−スレオニン(dT)、L−アロスレオニン(allo−Thr;allo−T)、D−アロスレオニン(d−allo−Thr;d−allo−T)を示し;
6は、フェニルアラニン(Phe;F)、アルファ−メチル−フェニルアラニン(−α−Me−Phe−)、アルファ−メチル−2−フルオロフェニルアラニン(−α−Me−2F−Phe−)、アルファ−メチル−2,6−ジフルオロフェニルアラニン(−α−Me−2,6−F−Phe−)、又は2−フルオロフェニルアラニン(−2F−Phe−)
【化10】

を示し;
7及びZ8は、スレオニン、セリン、1−アミノシクロプロパンカルボン酸(ACP)から独立して選択され;
9は、L−アスパラギン酸(D)、D−アスパラギン酸(dD)、又は式IIの化合物から選択され;
10は、式III(a〜c)
【化11】

のL又はD非天然アミノ酸を示し;
11は、式IV(a〜l)
【化12】

のL又はD非天然アミノ酸を示す]
の化合物。
【請求項10】
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

から選択される、式Iの化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、及び好適な医薬上許容される担体(単数又は複数)を含む医薬組成物。
【請求項12】
グルカゴン受容体のアンタゴニストとして作用する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、又はそれらの医薬組成物。
【請求項13】
GLP−1受容体のアゴニストとしてさらに作用する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、又はそれらの医薬組成物。
【請求項14】
高脂血症、高コレステロール血症、高血糖症、高インスリン血症、遊離の脂肪酸又はグリセロールの血液レベルの上昇、高トリグリセリド血症、創傷治癒、耐糖能の減少、レプチン抵抗性、インスリン抵抗性、又は他の糖尿病性合併症によって引き起こされる疾患を処置又は予防するために有用な、請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物、又はそれらの医薬組成物。
【請求項15】
高脂血症、高コレステロール血症、高血糖症、高インスリン血症、遊離の脂肪酸又はグリセロールの血液レベルの上昇、高トリグリセリド血症、創傷治癒、耐糖能の減少、レプチン抵抗性、インスリン抵抗性、又は他の糖尿病性合併症によって引き起こされる疾患を予防又は処置するための方法であって、無毒性な有効量の、請求項1〜14のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を、それを必要とする患者へ投与することを含む、前記方法。
【請求項16】
前記疾患が、2型糖尿病、耐糖能の減少、脂質異常症、高血圧、アテローム性動脈硬化、高脂血症、冠動脈疾患、心血管障害、及びインスリン抵抗性が、内在する病態生理学的機構である他の疾患である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、及び医薬上許容される担体、希釈剤、賦形剤、又は溶媒和物を、それを必要とする患者へ投与することを含む、請求項14〜16のいずれか一項に記載の任意の疾患症状を処置/軽減するための医薬。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の疾患の治療のために好適な薬剤としての、請求項1〜17のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、それらの医薬組成物、及びそれらを含む医薬の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−506428(P2011−506428A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537603(P2010−537603)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【国際出願番号】PCT/IN2008/000831
【国際公開番号】WO2009/125424
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(304023824)カディラ ヘルスケア リミティド (12)
【Fターム(参考)】